JP2008167190A - 基体シート - Google Patents
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Abstract
【課題】紙の上の1mm以下の粒子状のパウダーチップであっても、アンテナ線と物理的に接触させるのでなく、近接してあるだけで安定に結合する構造を有する基体シートを提供する。
【解決手段】本発明の基体シート12は、少なくとも1巻きのスパイラル状のコイル13を表面または表面近くの内部に配置したチップ11と、このチップ11のコイル13と磁界結合するようにコイル13の周辺またはその直上もしくは直下を周回する導体部分14aを有するアンテナ線14とを配置することにより構成される。
【選択図】図1
【解決手段】本発明の基体シート12は、少なくとも1巻きのスパイラル状のコイル13を表面または表面近くの内部に配置したチップ11と、このチップ11のコイル13と磁界結合するようにコイル13の周辺またはその直上もしくは直下を周回する導体部分14aを有するアンテナ線14とを配置することにより構成される。
【選択図】図1
Description
本発明は、チップとアンテナと搭載した基体シートに関し、特に、リーダ/ライタからの信号電波により読出し可能または識別可能な情報を記憶する回路を有するチップと、リーダ/ライタからの信号電波を受信するためのアンテナとを非接触で接続する技術に関する。
現在、無線ICタグまたは無線ICカード(以下では「無線ICタグ/カード」と記す)はユビキタス時代の入り口にある商品と考えられている。例えばRFID(無線識別)は、名札や商品の識別、工場における部品・材料や中間製品・完成品などの仕分けなどの管理といった用途に供されている他、繰り返し使用可能なプリペイド方式の乗車券カード(JR東日本のスイカカードなど)に用いられている。これらの無線ICタグ/カードは、一般的に内部に電池などの電源を持たず、リーダ/ライタからの読み取り信号電波を受信・整流して制御回路やメモリを駆動する直流電源を生成している。また、RFIDとして使用される場合は、数十cmから数mの読み取り距離を確保するために、900MHz帯あるいは2450MHzといった高い周波数を無線周波数として用い、またダイポールアンテナなどの電波を放射したり、放射電波を受信したりするアンテナを内蔵している。リーダ/ライタにも同様に読み取り信号電波を放射するアンテナを用いている。放射電波を用いることにより、数十cm〜数m離れた距離からもRFIDに記憶されている情報を読み取り、例えば商品などの貨物の仕分けをしたりすることができる。
一方、上記のプリペイド方式の乗車券カードでは、簡単な制御によりレーン間の混信を避ける目的もあって、改札口の数cmの距離に近づけたときにのみ信号のやりとりができるように、13.5MHzといった低い周波数を無線周波数として用い、無線周波数における波長に比してはるかに小さい(数cm程度の)スパイラルコイルを、それに接続する無線ICと共に内蔵している。その構造の一例を図17に示す。このスパイラルコイルにより、乗車券カードが接近した場合に、改札機の中のリーダ/ライタ用コイルと磁界結合して改札業務に必要な情報のやりとりを自動的に行えるようにしている。
後ほどの説明を容易にするために、まず無線ICタグ(RFID)の動作について、その概略を図14を用いて説明する。
図14には、無線ICタグ803の構造を示す。図14において(A)は平面図を示し、(B)はX1−X1線断面図を示す。無線ICタグ803には半導体チップ805が搭載されている。半導体チップ805はカード基板803Aの上に固定される。また半導体チップ805は、無線回路、制御回路、メモリ回路、電源回路などを含むIC回路を内蔵している。一般的には、カード基板803A上にさらに印刷基板技術により半波長ダイポール(またはループ状)の送受信アンテナ804が形成されている。送受信アンテナ804は、異方導電接着剤で半導体チップ805に接続されているリード807と接続される。カード基板803A上に形成された送受信アンテナ804の長さは、送受信効率を最大にするため、通常、ダイポールアンテナの場合は無線周波数における空間波長の約半分の長さに設定され、ループアンテナの場合は一波長に相当する長さに設定される。このようなアンテナは、どのような方向からの電波も受信できるように、あまり狭い指向性を持たせないために、ダイポールアンテナやループアンテナを用いている。
一方、このRFIDに情報を書き込んだり、読み取ったりするためのシステム構成の例を図15に示す。この図は、平成17年に開催された愛・地球博の入場券システムの模式図として非特許文献2から転記したものである。
図15において、入場券製造工場811からチップを搭載したRFIDが製作されると共に、IDデータが作製される。IDデータは、入場券管理DB812に保管される。基盤機能813では、発券データ、入退場の認証などがリアルタイムで集計管理される。入退場認証ゲート814では、リーダ/ライタが備えられ、信号源と共にアンテナが接続されており、所定範囲の距離だけ離れた所から、RFIDに向けて、読み取りのための信号電波を放射する。RFIDでは、その電波を受けて、その電力を直流に変えて制御回路やメモリ回路を動作させて、メモリ回路に送られてきた情報を書き込んだり、また記憶されている情報を同じ周波数の電波に載せてリーダ/ライタに送り返す。
次に、他の無線ICカードの一例として前記乗車券カードの動作について、図16を参照して説明する。この乗車券カードの読み取り・書き込みシステム、すなわち改札装置の基本部分は、例えば改札口の入出ゲート701に備えられたリーダ/ライタ702と、各利用者に個別に所持される乗車券カード703とから構成される。利用者が入出ゲート701を通過するとき、乗車券カード703をリーダ/ライタ702にかざす。このとき、リーダ/ライタ702と乗車券カード703との間で、磁界/磁束704による結合の関係を作り、情報送受(通信)と電力伝送とが実行される。
乗車券カード703の内部の概略構造を図17に示す。乗車券カード703は、情報の格納・読み出しを行う半導体チップとスパイラル状のコイルから構成されている。
リーダ/ライタ702内のスパイラル状のコイルで生成された磁界/磁束704は、図17において、構造を示す乗車券カードの周辺に設けられているスパイラル状のコイルと鎖交することにより、両コイルが結合し、無線による電力の伝送が行われる。図16では磁界/磁束704の発生状態を模式的に示している。
このことからもわかるように、リーダ/ライタ側コイルとカード側コイルとが少ない漏洩磁束で鎖交するには、両コイル間の距離が一定値(13.5MHzを用いる。この乗車券カードシステムの場合は数cm)以下であることが必要がある。この距離は、両コイルの大きさとほぼ比例する関係にあるので、コイルが小さくなれば同じような結合度確保するには、大きさに比例して両コイル間の間隔を短くする必要がある。
乗車券カード703は、定期券、電子マネーなどに置き換えても動作の基本は同じである。
無線ICタグ/カードは、徐々に製造コストも下がり、乗車券カードや電子マネーなどは実用化されているが、RFIDとしてはまだ製造コストが相対的に高いので、まだその利用も限定されており、全面的に普及するには至っていない。
このRFIDが、例えば1辺が数百μm以下の超小型チップになり、そしてより安価になれば、紙幣や有価証券等の財産的価値を有する書面の識別への応用も考えられる。すなわち、カードよりも曲がりやすい紙幣や有価証券に超小型のRFIDを埋め込むことができれば、これら紙幣などの偽造を容易に発見したり、発見の容易さの故に偽造を抑止したりすることも可能になると考えられる。そして、そのような試みが非特許文献1に見られるようにすでに各方面でなされている。
本発明は、このような背景の下に生まれたものであり、リーダ/ライタからの信号電波により読み出しあるいは識別可能な情報を記憶する回路を有するチップとリーダ/ライタからの信号電波を受信するためのアンテナとを非接触で接続する技術、そしてそのようなチップとアンテナを搭載した基体シートに関するものである。
非特許文献1に示されたRFID機能を持つICチップは、1辺の長さが450μmの正方形で厚さが数十μmの大きさ・形状を有する非常に小さいチップである。このように小さくしたのは、半導体(シリコン)により作られたチップに、曲げ応力などに対する耐破壊性を持たせるためである。また、このように小さくすることにより、チップ1個あたりの製造コストとも大きく低減することができる。
このチップ内の128ビットのリード・オンリー・メモリ(ROM)に収納された情報・データを、リーダアンテナから出す2.45GHzのマイクロ波帯の電波による質問信号により、チップ内の整流回路を含む電源回路で生成した直流電源により制御回路を駆動し、読み取るようにしている。この場合には、リーダアンテナとICチップとを実用上十分な距離だけ離しても情報を読み取れるようにするには、ICチップを使用周波数の2.45GHzにおける波長に対して半分程度の長さ(約60mm)を持つ、いわゆるダイポールアンテナなどと接続して使用する必要がある。非特許文献1ではその接続方法として、ICチップの上下に接続用の電極を形成し、ダイポールアンテナによりチップを挟み込んで接続を確保する方法をとっている。しかしながら、この方法は、チップそのものは半導体の製造プロセスを用いることにより安価に製造できるが、アンテナとの接続には、微細物の曲げ加工および圧着などの機械的な加工作業が必要であり、かなり細かな作業が必要であると共に、アンテナとの接続部の屈曲などのストレスによる接続の信頼性の低下を無視できないという問題がある。
一方、ICチップとアンテナとのこのような接続を避けるために、チップ上にアンテナを形成しようという方法も考えられる。しかし、チップ上にダイポールアンテナを形成するという方法では、ICチップのほとんどの面積をアンテナが占めることになるためICチップが大きくなりすぎて、製造コストは実用上全く受け入れがたいほどになる。
その問題を解決するために、前述した乗車券カードなどの無線ICカードに見られるのと同様の技術思想の下に、従来はカード基板上に形成していたスパイラルコイルを2.45GHzでインダクタンスとして動作するように波長に比して相当に小さくして、ICチップ上に形成することが考えられた。そして、乗車券カードと同様の技術思想の下に、リーダ/ライタコイルと近づけることにより、両コイル間の磁界結合を実現して、リーダ側からのマイクロ波帯の電波による質問信号を受けてチップを動作させてROMの情報を読み取るという方法も考えられた(非特許文献1)。
しかし、この方法では、リーダ側のコイルとチップ上のコイルとの間で、実用上必要な距離(例えば数十mm)をとろうとすると、ICチップの制御回路を駆動するだけの電力をマイクロ波帯の質問信号により確保することは不可能となる。
このような問題を解決すべく、従来のRFID以外の技術を用いた、紙幣やクレジットカード等の識別等に応用できる無線周波数自動識別(RF/AID)システムも考えられている。
宇佐美光雄、『超小型無線ICタグチップ「ミューチップ」』、応用物理、Vol.73、No.9、2004、p.1179−p.1183 宇佐美光雄、山田純、「ユビキタス技術ICタグ」、第1版、(株)オーム社、平成17年3月25日、p115
宇佐美光雄、『超小型無線ICタグチップ「ミューチップ」』、応用物理、Vol.73、No.9、2004、p.1179−p.1183 宇佐美光雄、山田純、「ユビキタス技術ICタグ」、第1版、(株)オーム社、平成17年3月25日、p115
以上述べてきたように、カードよりも曲がりやすい紙でできた紙幣や有価証券の識別用にRFIDの技術を適用しようとする場合、(1)識別用のチップは曲げ応力への耐性を確保するために非常に小さく(超小型に)することが必要であること、(2)このような超小型チップ内の識別用の回路に実用的な距離にあるリーダ/ライタと無線で接続するためには、このチップにダイポールアンテナなどのような放射型のアンテナを低コスト・高信頼度を確保しつつ結合させる必要があること、の2点が解決すべき課題である。
以上述べた課題を、紙幣認証応用に関連して以下にもう少し具体的に説明する。
第1に、紙の上に固定できるほど小さい半導体チップの表面上で無線周波数の波長に匹敵する大きさのアンテナを作製できないので、離れたリーダ/ライタとの間の電磁結合が困難になる。第2に、アンテナを大きくするためチップ大きくすると折り曲げられて破壊される。また大きくすると、チップ単価が高額になり実用の妨げである。第3に、十分に大きなアンテナを印刷して微小半導体チップと物理接合させることは難しく、またこれが出来たとしてもその接合が簡単に脆性破壊されて性能が維持できない。
紙幣認証応用などのためのRFIDを実用的なものにするためには、上記半導体チップを微小化し、安価なチップにするのは最初の必要条件になる。同時に微小なチップにおいても十分な電力を供給できるアンテナを配置しなくてはならないが、それと微小チップを電力伝達可能なように結合する必要がある。しかもそれは、使用する周波数において十分な結合が得られ、かつ信頼性の面からは、その結合が紙状の基体の折り曲げなどによっても破壊されない耐久性のある構造である必要がある。
本発明の目的は、上記の課題を解決することにあり、紙の上の1mm以下の粒子状のパウダーチップであっても、アンテナ線と物理的に接触させるのでなく、近接してあるだけで安定に結合する構造を有する基体シートを提供することにある。
さらに本発明の目的は、複数のチップと紙状の基体の上でアンテナ線が結合でき、粒子が集合したRFパウダーであっても、安価にアンテナ線への結合を実現することができ、安価でありながら紙状の基体の上でRFIDが使用できる構造を有する基体シートを提供することにある。
さらに本発明の目的は、複数のチップと紙状の基体の上でアンテナ線が結合でき、粒子が集合したRFパウダーであっても、安価にアンテナ線への結合を実現することができ、安価でありながら紙状の基体の上でRFIDが使用できる構造を有する基体シートを提供することにある。
本発明に係る基体シートは、上記の目的を達成するために、次のように構成される。
本発明に係る基体シートは、少なくとも1巻きのスパイラル状のコイルを表面または表面近くの内部に配置したチップと、このチップのコイルと磁界結合するようにコイルの周辺またはその直上もしくは直下を周回する導体部分を有するアンテナ線とを配置して成ることを特徴とする。
上記の構成において、好ましくは、チップはキャパシタンス要素を有し、このキャパシタンス要素とコイルとによってタンク回路が形成される。
上記の構成において、好ましくは、チップは、コイルをその周辺に配置すると共に、無線で読出し可能な情報を記憶する半導体回路を含み、コイルと半導体回路は電気的に接続されている。
上記の構成において、好ましくは、アンテナ線における導体部分はチップを囲むループ形状を有する。
上記の構成において、好ましくは、アンテナ線はダイポールアンテナであることを特徴とする。
上記の構成において、好ましくは、アンテナ線はループアンテナであることを特徴とする。
上記の構成において、好ましくは、アンテナ線はループ形状に形成され、このアンテナ線と電磁界結合するプローブは、ループ形状に形成され、アンテナ線に対向して結合することを特徴とする。
上記の構成において、好ましくは、アンテナ線における導体部分の形状は、チップの配置領域に対応して存在するスパイラル形状であることを特徴とする。
上記の構成において、好ましくは、アンテナ線におけるコイルと磁界結合する導体部分の形状は蛇行形状であることを特徴とする。
上記の構成において、好ましくは、複数のチップがアンテナ線に磁界結合するように配置されていることを特徴とする。
上記の構成において、好ましくは、アンテナ線が2層構造の各層に形成されていることを特徴とする。
本発明によれば次の効果を奏する。
紙のような屈曲する基体シートの上でも壊れないほどに微小な半導体デバイスや受動電気回路要素(インダクタやキャパシタ)を搭載したチップ(粒子チップ)と電磁エネルギの伝達可能な波長程度に大きいアンテナを安定に結合することができる。
従来の技術では、アンテナを用いないときは、チップと磁界結合を得るためにチップの微小なコイルに微小なプローブアンテナを近接させる必要があった。近接して読み取る応用には寧ろ適しているが、大きな電力を短時間に伝える方法でないために、メモリなどを搭載したRFIDを動作させることができなかった。従って、インダクタとしてのコイルとキャパシタで固有の周波数で共振するタンク回路を微小チップの上に構成させ、これのRF反射係数を周波数の関数として読み取る応用に限定された。これに対して、本発明によれば、遠くからでもメモリやロジックを動作させる電力を微小なデバイスに供給することができる。微小な半導体デバイスチップは安価であるので、安価な粒子状のRFIDの利用が紙幣や機密性を求められる紙状の基体(基体シート)で可能になる。
紙のような屈曲する基体シートの上でも壊れないほどに微小な半導体デバイスや受動電気回路要素(インダクタやキャパシタ)を搭載したチップ(粒子チップ)と電磁エネルギの伝達可能な波長程度に大きいアンテナを安定に結合することができる。
従来の技術では、アンテナを用いないときは、チップと磁界結合を得るためにチップの微小なコイルに微小なプローブアンテナを近接させる必要があった。近接して読み取る応用には寧ろ適しているが、大きな電力を短時間に伝える方法でないために、メモリなどを搭載したRFIDを動作させることができなかった。従って、インダクタとしてのコイルとキャパシタで固有の周波数で共振するタンク回路を微小チップの上に構成させ、これのRF反射係数を周波数の関数として読み取る応用に限定された。これに対して、本発明によれば、遠くからでもメモリやロジックを動作させる電力を微小なデバイスに供給することができる。微小な半導体デバイスチップは安価であるので、安価な粒子状のRFIDの利用が紙幣や機密性を求められる紙状の基体(基体シート)で可能になる。
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
一般的に、物理的に接触させないで、電力を伝達する方法として電磁誘導の原理がある。通常、この原理は電力トランスとして低周波における大電力伝達において一般に利用される。これをマイクロ波と言われる高い周波数領域において交流成分の伝達に利用する考え方が既にある(例えば、特願2004−159960号、「トランス回路およびその製造方法」)。これによれば、半導体チップ上の厚い絶縁層の上に絶縁されて上下2層で線が重なるように第1と第2のコイルを配置させ、第1のコイルに高周波を通すと磁界結合により、回路が閉じていれば同じ周波数の電流が第2のコイルに流れるようにしている。回路が開放されていれば両端に電圧を発生させる。これはマクスウエルの電磁方程式に従う作用である。この結合の良い点は、接触させる方法と違い、2つのコイルの距離が少しずれた程度(コイルの10分の1程度)では電力伝達のための結合に大きな変化がない。接触方式では接触が離れると電力伝達はできなくなるのと大きく異なる。磁界結合は互いの回路の距離に対して大きな余裕を与える。
従来はコイルのないチップとアンテナは物理的に接触させて用いていたのに対して、本発明においてはチップ上に磁界結合させるための第1のコイルを形成させ、アンテナ線の一部を上記特許文献(特願2004−159960号)の第2のコイルにすることにより、アンテナ線とチップを磁界結合させる。物理接触のときは微小なチップを正確にアンテナに接合させるという高価な実装工程を必要としていたが、磁界結合によれば、位置関係の接合させるほどの正確さは必要でない。また、2つのコイルは物理的に離れているので、屈曲する紙の上でも電気的な接触が切れて故障するという問題はおきない。
図を参照して典型的な本発明に係る基体シートの構造の例を説明する。この基体シートの平面図を図1と図2に示す。図1と図2に示すチップ(パウダーチップ)11は、シリコン基板(「基体」または「基体シート」ともいう)12の上に酸化膜を形成し、その上にインダクタとしてのコイル13を配置させたものである。このコイル13はチップ11内またはチップ11上に形成された回路要素または機能回路ブロックと接続されている。機能回路ブロックの一例としては、無線回路、制御回路、メモリ回路、電源回路などよりなるRFID回路などが挙げられる。また、回路要素の例として、MIMキャパシタなどのキャパシタがあり、上記コイル11と並列接続してタンク回路を形成する。この場合のチップ11は、特願2006−320337号の明細書・図面に示したように、設計した周波数で共振するタンク回路を有するRFパウダー粒子である。このようにチップ11のみを見るならば、前述した非特許文献1と何ら変わることはない。しかし、これだけでは、すでに述べたような技術的な難点があり、実用化の見通しがなかった。
そこで本発明の実施形態では、シリコン基板12の上でチップ11とアンテナ(またはアンテナ線)14との結合に極近接して配置した2つのコイル13,14aを用いることにより前記の難点を解消した。この発明に至るまでに、発明者は以下のように2つの重要な技術的な検討を行った。
そのひとつは、2つのコイル13,14aの結合度とその距離との関係である。この検討では、一辺が450μmの方形チップ状に形成したスパイラル巻き(1巻きまたは2巻き以上)のコイルを用いた実験により距離と結合度との関係を求めた。その結果、450μm角程度の大きさのコイルを用いて実用的な結合度を得るには両コイルを同程度の大きさにして上下に重ねると共に、その上下の間隔を200μm程度以下にすることが必要であることがわかった。さらに、この距離は通常の紙の厚さ(約100μm)と同程度であることも見出した。
もうひとつは、アンテナ14に接続されているチップ上コイル13との結合用コイル14aの接続のモデルを図13に示すように、基体シート12上のダイポールアンテナ等のアンテナが受信するマイクロ波信号を信号源アドミタンスが20ms(信号源インピーダンスが50Ω)の電流源とし、それに結合用コイル14aが接続され、そのコイルとチップ上のコイルが磁界結合し、チップに搭載されている回路である負荷と整合をとれるようにした場合として、負荷までの伝送損失を計算してみた。その結果、チップ上で負荷と適切な整合回路を設ければ、基体シート12上のアンテナが受信した電力は、ほぼ数dBの伝送損失で負荷に伝送されることが判明した。
以上の結果は、実験と理論の両面での検討により、初めて明確になったことであり、本発明の技術思想の実現性が基本的に実証された。
以上は、本発明の基本的な技術思想を図1および図2の例を基にして説明したものである。図1および図2において視覚的に説明する。図1においてはチップ11の3巻きのインダクタコイル13とそれを周回して囲むようにループ状に配置された1巻きのコイル14aが磁界結合する(この構成を「結合ユニット」と呼ぶことにする)。図1では、チップ11はアンテナコイル14aのほぼ中心に配置させてあるが、この中で位置ずれが起きても磁界結合の大きな障害にならない。
上記の構成において、基体シート12上のアンテナ14について、ダイポールアンテナ線の長さは1/2波長であるのが望ましいが、使用目的や製造上の制約で寸法は変更できる。また、このアンテナ14に接続されてチップ11との結合を図るコイル14aは、単巻でも、スパイラル巻でも、また単層基板あるいは多層基板の上下に導体を配したヘリカル巻でも、いずれの場合でも実現可能である。また、コイル14aの形が方形に巻かれていても、円形や楕円形、また多角形に巻かれていても同様にチップ11上のコイル13と結合するという目的を実現することができる。
また、同様のことがチップ11上のコイル13についても当てはまる。すなわち、チップ11上のコイル13も、単巻でも、スパイラル巻でも、ヘリカル巻でも実現可能であるし、コイルの形が方形、多角形、円形、楕円形などいずれの形でも実現可能である。
図1では磁界結合を効率よく起こさせるためにチップ11を取り巻くように配置したアンテナ線を明示するためにパウダー状チップを誇張して示した。図2にはアンテナ線全体の概観平面図を示す。
アンテナの第2の構造例を図3と図4に示す。基板シート21の上で、アンテナ22は閉じたループを形成する。図3はチップ23がアンテナ22が形成するループの内部に包含される例を示し、図4はチップ23がアンテナ22が形成するループの外部に包含される例を示す。それぞれチップ23のコイルと、アンテナ22のコイル22aとは磁界結合している。
図3と図4においてもアンテナ22の線の長さに比べてチップ23の大きさを誇張して示した。アンテナ22のループの実効長さは波長に相当させるのが一般的である。紙に固定して用いるチップ23は通常1mm以下であり、アンテナ22の長さは波長に応じて設計され、数センチメートルである。
原理的にはチップ23のコイル(第1の回路)とアンテナ線(第2の回路)が平行して近接していると、2つの回路は互いに磁界結合する。この結合は集積回路の配線設計ではクロストークとも言われ避けられる構造であるが、本発明では伝達電磁エネルギを増すために積極的に近接させ、その平行部分の長さを長くする。
平行部分を長くする方法は、結合部分となるアンテナ線をスパイラル巻きにする方法である。それを図5に示す。32はアンテナ、32Aはスパイラル巻きしたアンテナ線部分である。基体シート31の上でチップ33のコイル33Aは用いる周波数に依存して適宜に長さを設計する。スパイラル巻きを用いるこの場合、スパイラル巻きの内部線端をスパイラル巻きの外に取り出す。これは一層のアンテナ線では構成できないので、2層にしてアンテナ線を作る。
近接させる方法としてチップを包含するのでなく、チップのコイルと磁界結合させるアンテナ線を重ねる方法がある。この場合、チップのコイルは保護膜としてプラズマシリコン窒化膜などで絶縁されているので、チップコイルとアンテナ線は絶縁膜で隔離される。
アンテナ線に2つ以上の結合部(結合ユニット)を設けることにより、2つ以上のチップとアンテナを結合させることが可能である。また、アンテナの結合ユニットをチップより十分に大きくすることにより、1つの結合ユニットに2つ以上のチップを包含させることも可能である。
本発明によれば、微小なチップと電磁エネルギの伝達可能なアンテナを安定に余裕をもって結合させることが可能である。
図6と図7に、基体シート41上における典型的な本発明に係るチップ43とアンテナ42の磁界結合を示す。磁界結合は、コイル43Aを備えたチップ43と、そのコイル43Aに沿って取り巻くように配置されたアンテナ42の一部のループ42aで生じる。図6はチップ43がアンテナ42のループ42aと重ならない配置、図7はチップ43の一部がアンテナ42のループ42aに重なってしまう例を示す。どちらの場合も磁界結合に支障はない。
上記の各チップはシリコン基板の上に10μmの酸化膜を設け、その上にイダクタとしてのコイルと誘電膜で絶縁されてキャパシタとしてのコンデンサが形成され、タンク回路を構成する。コンデンサとインダクタは固有の振動数で共振するように設計される。シリコン基板は一辺が0.15mmであり、厚みは50μmである。コイルは銅で作られ両端はコンデンサの電極の片側を構成するように面積が設計されている。コンデンサの対向電極はアルミニウムで作られ誘電体をはさむ対向する銅電極との間で一個のコンデンサを構成し、2対のコンデンサの直列接続がタンク回路のコンデンサのキャパシタンスを決める。
チップはこれより大きくてコイルと重なっても良い。長方形の例を示したが、アンテナは正方形であっても、斜方形、六角形でも良い。アンテナ線の長さに比べチップは小さいがここでは誇張して示してある。ループ型であるとき、ループの長さは実効的に波長に相当するように設計する。またシート上でチップに磁界結合するアンテナの形はループ型のほかに、図1に示したように直線状に伸びたいわゆるダイポールアンテナであってもよい。ダイポールアンテナの場合はその全長は1/2波長に設計するのが普通である。アンテナ線はシートの表裏に2層で作ることも可能である。
タンク回路を有するこの微小チップとそのチップと磁界結合するループアンテナが上面に配置された基体であるシートと、このシートと一定距離をおいて配置され、上記ループアンテナと放射電磁界により結合する外部のループプローブアンテナとを組み合わせたものを一般例として図8に示す。
図8では、プローブアンテナ55は、基板シート51上のアンテナ52とほぼ同じ形で同じ大きさで示している。しかし、プローブアンテナ55とアンテナ52の形状および大きさを異ならせても良い。数cm上に配置したプローブアンテナ55に2.45GHzを中心として鋸歯状波形で幅400MHzの範囲で掃引されたマイクロ波を給電すると、プローブアンテナ55の近傍に形成された電磁界56を通じて、基板シート51上のループアンテナ52に周波数2.45GHzのマイクロ波の電流が流れる。基板シート51上のアンテナ線52に電流が流れて、それとチップ53上のコイル54が磁界結合するので、チップ53のタンク回路には2.45GHzの共振による循環電流が流れる。プローブ側では電力の反射係数を測定すると、タンク回路が2.45GHz±200MHzの範囲で共振すれば、この共振周波数を観測できる。もしチップ53がないとき、または共振周波数でないときは共振を観測できない。
次に第2の実施形態を図9に示す。この実施形態では、閉ループのアンテナ62とRFIDチップ63が磁気結合する例を示している。61は基体シートである。チップ63の表面にはコイル63Aのみを示したが、アンテナとマッチングさせるためのキャパシタンスはシリコン基板の中に設計されてあり、ここでは図示しない。RFIDはアンテナとマッチングする周波数で電力の送受を行う。
周波数2.45GHzでプローブアンテナ(前述の図8を参照)から電磁波が送られ、基板シート61上のアンテナ62がこれを受信する。同じ周波数の電流が誘起され、磁界結合するRFIDチップ63のコイル63Aがこれを受信する。チップ63の電力変換のための電源回路が動作に必要な直流電力を作り出し、これを蓄積する。これを用いて、記憶されているデータをチップコイル63Aからアンテナ62に磁界結合を通して送信する。読取りモードでプローバーはアンテナ同士の電磁界結合を通してデータを受信する。
以上はアンテナの共振周波数で電力を送る動作例を説明したが、電力送信は十分な電力を持つ外部プローブアンテナから行うので、周波数はチップ63と結合する基板シート61上のアンテナ62の共振周波数に完全には一致させなくても良い。
第3のアンテナの変形例としてアンテナ線の一端がループ状であり、その上にRFIDチップを配置した例を図10に示す。図10の(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるX2−X2線断面図である。図10において、71は基板シート、72はアンテナ線、72aはアンテナ線72bのスパイラル部(ループ部)、73はチップ、74はコイルである。チップ73の片面はシリコン基板と接続されたアルミニウムでできており、ループ72bの内側の一端に形成された接続パッドの上に導電接着剤(例えば銀ペーストなど)で固定される。
第4のアンテナの変形例として、複数の結合ユニットが一本のアンテナ線に構成されて、またチップが複数配置されている配置平面図を図11に示す。基板シート81の上に形成されるループ状のアンテナ82は蛇行部(ミアンダー)84を有する。複数のチップ83のそれぞれの大きさは結合ユニットの中に納まらない例も示した。このように屈曲するアンテナ82を「ミアンダーアンテナ(蛇行状アンテナ)」と呼ぶ。
またチップがミアンダーアンテナ82をまたぐ形の例も示した。アンテナ線がチップの中央を横切るように配置されると、方向が逆の磁界が横切るので実質的に磁界結合は得られない。多くのチップの配置を個別に制御しないで用いるパウダーの形式で用いるときは、これが起きるが、無視して用いる。
また、逆に電流が流れる2本のアンテナ線がチップを横切るときの磁界結合は起きないので、これは設計や製造工程の中で調節して避ける。
ミアンダーアンテナ線に対してチップがランダムに配置されてしまう製造方法ではアンテナ線と平行にならないチップのコイルの磁界結合度は低下するが、同じ特性のチップを多量に使用して配置する方法でこの不具合を実質的になくすことが可能である。
図11ではアンテナ線82における蛇行部84の屈曲周期(またはピッチ)を一定させて描いたが、用途によりピッチは場所に依存させて変えてよい。
以上説明したアンテナ線は基体シートの表裏2面に2層として作ることは自由である。ループアンテナを例として2層アンテナを図12に示す。図12の(A)は平面図であり、(B)は縦断面図である。図12において91は基板シート、92,93はアンテナ、94はチップである。ループアンテナ92,93は、基板シート91の上面と下面に配置され、かつ上下で位置的に同一位置に重ならないようにしている。これにより、基板シート91の面積を有効に利用することが可能となる。
また直線状のアンテナ(ダイポール型とモノポール型がある)のときは、上下で90度回転させて直交させることも自由に設計できる。またアンテナ線は限られた面積のなかで、設計した長さを得るために、屈曲させて設計しても良い。
RFIDを安価に利用したいという産業上の要請が強い。その実現にむけて半導体チップを微小にすればよいが、RF伝達のためのアンテナとの物理接続が信頼性の面から制限があるために困難であった。150μm以下に小さくすると紙のような屈曲する基体(シート)の上でもチップが破壊されない可能性があり、微小チップとRF伝達の両立を可能にすればRFIDの市場は大きいと言われていた。本発明はそれを可能にさせる。さらに磁界結合によるチップとアンテナのシートへの配置は、偽造紙幣等の防止にも利用可能である。
12,21,31,41,51,61,71,81,91,803:基体シート
14,22,42,52,62,82,804:基体シート上のアンテナ
11,23,43,53,73,83,94:インダクタコイルを備えたパウダーチップ
13,54,74:チップ上のインダクタコイル
32,72:一端がスパイラルのモノポールアンテナ
55:読取りのアンテナ
56:対向するループアンテナの電磁界結合
63:RFIDチップ
84:ミアンダーアンテナ
92:基体シート上面のアンテナ
14,22,42,52,62,82,804:基体シート上のアンテナ
11,23,43,53,73,83,94:インダクタコイルを備えたパウダーチップ
13,54,74:チップ上のインダクタコイル
32,72:一端がスパイラルのモノポールアンテナ
55:読取りのアンテナ
56:対向するループアンテナの電磁界結合
63:RFIDチップ
84:ミアンダーアンテナ
92:基体シート上面のアンテナ
Claims (11)
- 少なくとも1巻きのスパイラル状のコイルを表面または表面近くの内部に配置したチップと、このチップの前記コイルと磁界結合するように前記コイルの周辺またはその直上もしくは直下を周回する導体部分を有するアンテナ線とを配置して成ることを特徴とする基体シート。
- 前記チップはキャパシタンス要素を有し、このキャパシタンス要素と前記コイルとによってタンク回路が形成されることを特徴とする請求項1記載の基体シート。
- 前記チップは、前記コイルをその周辺に配置すると共に、無線で読出し可能な情報を記憶する半導体回路を含み、前記コイルと前記半導体回路は電気的に接続されていることを特徴とする請求項1記載の基体シート。
- 前記アンテナ線における前記導体部分は前記チップを囲むループ形状を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の基体シート。
- 前記アンテナ線はダイポールアンテナであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の基体シート。
- 前記アンテナ線はループアンテナであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の基体シート。
- 前記アンテナ線はループ形状に形成され、このアンテナ線と電磁界結合するプローブは、ループ形状に形成され、前記アンテナ線に対向して結合することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の基体シート。
- 前記アンテナ線における前記導体部分の形状は、前記チップの配置領域に対応して存在するスパイラル形状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の基体シート。
- 前記アンテナ線における前記コイルと磁界結合する前記導体部分の形状は蛇行形状であることを特徴とする請求項1または2記載の基体シート。
- 複数の前記チップが前記アンテナ線に磁界結合するように配置されていることを特徴とする請求項9記載の基体シート。
- 前記アンテナ線が2層構造の各層に形成されていることを特徴とする請求項1記載の基体シート。
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