JP2008166516A - 半導体基板の製造方法 - Google Patents

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宏治 泉妻
Hiromichi Isogai
宏道 磯貝
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剛士 仙田
Eiji Toyoda
英二 豊田
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Abstract

【課題】半導体基板表層の酸素濃度低下を抑制しつつ、半導体基板表層のCOPを低減させることによって、半導体デバイスの高歩留まりを実現する半導体基板の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体単結晶インゴットをスライスする工程と、このスライスする工程によって得られた半導体ウェーハを、常圧より高い圧力において、還元性ガス、不活性ガス、または、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気中、1000℃以上1350℃以下の温度範囲で熱処理する工程を有することを特徴とする半導体基板の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、半導体基板の製造方法に関し、特に半導体基板表層の酸素濃度の低下を抑制しつつ、半導体基板表層のCOPを減少させる半導体基板の製造方法に関する。
半導体基板の酸化膜耐圧等の電気特性を改善するためには、半導体デバイスが形成される半導体基板表層を結晶欠陥のない無欠陥層とすることが望ましい。例えば、シリコンウェーハの表層にはシリコン単結晶成長時にGrown−in欠陥として導入されるCOP(Crystal Originated Particle)と呼ばれる正八面体構造の結晶欠陥が存在する。このCOPは、空孔の凝集によってできた結晶欠陥(Void欠陥)である。このようなCOPがシリコンウェーハ表層に存在すると、例えば、シリコンウェーハ酸化膜の初期酸化膜耐圧(Time Zero Dielectric Break Down:TZDB)や経時絶縁破壊特性(Time Dependent Dielectric Break Down:TDDB)を劣化させ、半導体デバイス製造プロセスにおける歩留まり低下の原因となることが知られている。
上記の初期酸化膜耐圧や経時絶縁膜破壊特性を改善するために、還元性ガス等の雰囲気中で、高温の熱処理を施し、シリコンの空孔(Vacancy)や格子間シリコン(Interstitial Silicon)を移動させ、結果的にCOPを低減させる方法が報告されている(例えば、特許文献1)。
特開平6−295912号公報
もっとも、このような従来の製造方法では、シリコンウェーハ表層のCOPが減少するとともに、シリコンウェーハ表層の酸素濃度も外方拡散により減少していた。このため、シリコンウェーハ表層での結晶欠陥等の発生による歩留まりの低下が生じるという問題が生じていた。すなわち、CZ(チョクラルスキー)法によりシリコン単結晶を製造する場合、シリコン融液を貯蔵する石英ルツボから、酸素がシリコン単結晶中の格子間位置に取り込まれる。そして、この酸素は、後にウェーハ内部の酸素析出物であるBMD(Bulk Micro Defect)形成に寄与して、金属不純物や結晶欠陥のゲッタリングに利用されるとともに、ウェーハの機械的強度の向上にも寄与している。しかし、COPを減少させるための熱処理により、シリコンウェーハ表層部の酸素濃度が低減し、酸素濃度の高いシリコンウェーハ内部との間に、格子不整合が生じるためシリコンウェーハ表層に格子歪が生ずる。そして、シリコンウェーハの機械的強度と酸素濃度には、正の相関関係があるところ、生じた格子歪によって、ウェーハ上に、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)のようなデバイス構造を形成する際に、酸素濃度の低いシリコンウェーハ表層に転位等の結晶欠陥等が生じ、半導体デバイスの歩留まりを低下させるのである。
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、半導体基板表層の酸素濃度低下を抑制しつつ、半導体基板表層のCOPを低減させることによって、半導体デバイスの高歩留まりを実現する半導体基板の製造方法を提供することにある。
本発明の第1の半導体基板の製造方法は、
半導体単結晶インゴットをスライスする工程と、
前記スライスする工程によって得られた半導体ウェーハを、常圧より高い圧力において、還元性ガス、不活性ガス、または、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気中、1000℃以上1350℃以下の温度範囲で熱処理する工程を有することを特徴とする。
本発明の第2の半導体基板の製造方法は、
半導体単結晶インゴットをスライスする工程と、
前記スライスする工程によって得られた半導体ウェーハを、常圧下において、700℃以上1000℃以下の温度範囲で熱処理する第1の熱処理工程と、
前記半導体ウェーハを、常圧より高い圧力において、還元性ガス、不活性ガス、または、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気中、1000℃以上1350℃以下の温度範囲で熱処理する第2の熱処理工程を有することを特徴とする。
本発明の第3の半導体基板の製造方法は、
2枚の半導体ウェーハが直接接合した半導体基板の製造方法であって、
第1の半導体ウェーハと第2の半導体ウェーハを貼り合わせる工程と、
前記貼り合わせる工程によって得られた半導体基板を、常圧より高い圧力において、還元性ガス、不活性ガス、または、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気中、1000℃以上1350℃以下の温度範囲で熱処理する工程を有することを特徴とする。
本発明の第4の半導体基板の製造方法は、
2枚の半導体ウェーハが直接接合した半導体基板の製造方法であって、
第1の半導体ウェーハと第2の半導体ウェーハを貼り合わせる工程と、
前記貼り合わせる工程によって形成された半導体基板の前記第2の半導体ウェーハ部分を所定の厚さに加工してデバイス形成用の半導体層を形成する工程と、
前記半導体基板を、常圧下において、700℃以上1000℃以下の温度範囲で熱処理する第1の熱処理工程と、
前記半導体基板を、常圧より高い圧力において、還元性ガス、不活性ガス、または、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気中、1000℃以上1350℃以下の温度範囲で熱処理する第2の熱処理工程を有することを特徴とする。
ここで、第1ないし第4の半導体基板の製造方法において、常圧より高い圧力とは、常圧より高く5MPa以下の圧力であることが望ましい。
ここで、第2および第4の半導体基板の製造方法において、前記第1の熱処理工程において、窒素雰囲気またはアンモニア雰囲気中で、熱処理することが望ましい。
ここで、第2および第4の半導体基板の製造方法において、前記第1の熱処理工程および前記第2の熱処理工程を、同一の処理炉内で連続して行うことが望ましい。
さらに、第3および第4の半導体基板の製造方法において、前記第1の半導体ウェーハ表面の結晶面方位と前記第2の半導体ウェーハ表面の結晶面方位とのいずれか一方が、{100}面に対して0度以上5度以下の傾斜角(オフ角)を有する範囲にあり、他方の結晶面方位が{110}面に対して0度以上10度以下の傾斜角(オフ角)を有する範囲にあることが望ましい。
本発明によれば、半導体基板表層の酸素濃度低下を抑制しつつ、半導体基板表層のCOPを低減させることによって、半導体デバイスの高歩留まりを実現する半導体基板の製造方法を提供することが可能になる。
従来技術では、上述したように、COPを低減させることを目的とする熱処理において、半導体基板表層の酸素濃度も減少することが回避できなかった。
発明者らは、COPを低減させる熱処理を、常圧下ではなく高圧下で行うことにより、半導体基板表層の酸素濃度を低減させることなく、COPの低減が可能であることを見出した。
以下、本発明に係る半導体基板の製造方法についての実施の形態につき、添付図面に基づき説明する。
なお、実施の形態においては、半導体ウェーハとしてシリコンウェーハを用いる場合を例にして説明するが、本発明は必ずしもシリコンウェーハを用いた半導体基板の製造方法に限定されるわけではない。
また、本明細書中においては、(100)面、(110)面と結晶学的に等価な面を代表する表記として、それぞれ、{100}面、{110}面という表記を用いる。
また、本実施の形態において、常圧とは、いわゆる大気圧、すなわち、概ね101325Pa(1atm)のことを言うものとする。また、高圧とは、常圧より高い圧力のことを言うものとする。
〔第1の実施の形態〕
本実施の形態の半導体基板の製造方法は、シリコン単結晶インゴットをスライスする工程と、このスライスする工程によって得られたシリコンウェーハを、常圧より高い圧力において、還元性ガス、不活性ガス、または、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気中、1000℃以上1350℃以下の温度範囲で熱処理する工程を有することを特徴とする。
以下、本実施の形態の半導体基板の製造方法について、図面を参照しつつ、より具体的に記載する。
チョクラルスキー法(CZ法)により引上げた、例えば、結晶方位(100)のシリコン単結晶インゴットを、(100)面に対し、例えば、0度以上5度以下の傾斜角(オフ角)でスライスする。
次に、このスライスによって得られたシリコンウェーハについて、上記面方位を保ったまま、ミラーポリッシングを行う。
その後、RCA洗浄等の前処理を行った後、常圧より高い圧力において、還元性ガス、不活性ガス、または、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気中、1000℃以上1350℃以下の温度範囲で熱処理を行いシリコン基板表層のCOPを低減させる。
このように、従来、常圧下で行われていたCOPを低減させる熱処理を、常圧より高い圧力、すなわち、高圧下で行うことにより、シリコンウェーハ表層のCOPの低減効果を維持したまま、シリコンウェーハ表層の酸素濃度の低下を抑制することが可能となる。
なお、ここでシリコンウェーハ表層とは、半導体デバイスの特性に寄与する領域、すなわち、シリコンウェーハ表面から深さ約15μm程度までの領域をいう。
そして、本実施の形態により、表層の酸素濃度の低下が抑制されることにより、シリコンウェーハ表層の結晶欠陥等の発生による歩留まりの低下を抑制できるという作用・効果が得られる。
図1は、本実施の形態の作用・効果を説明する図である。図1(a)がシリコンウェーハ表面からの深さと酸素濃度の関係を示す図、図1(b)がシリコンウェーハ表面からの深さとCOP密度の関係を示す図である。
常圧下で熱処理する従来技術、高圧下で熱処理する本実施の形態(本発明)、いずれの場合においても、図1(b)に示すように、シリコンウェーハ表面近傍、すなわち、シリコンウェーハ表面から1μm程度の領域においてCOP密度は減少する。これは、COPの消滅が、COPの内壁酸化膜は酸素が拡散することで分解し、さらに内部のボイドに格子間シリコンが拡散して来ることにより起こるためである。すなわち、シリコン単結晶中の空孔および格子間シリコンの拡散に依存しており、これらの拡散速度は、熱処理雰囲気の圧力よりも、特に最高到達温度に大きく依存するからである。
これに対して酸素濃度についてみれば、図1(a)に示すように、従来技術ではシリコンウェーハ表層において酸素濃度の低減が見られるが、本実施の形態(本発明)においては酸素濃度のシリコンウェーハ表層での低下は生じない。これは、シリコンウェーハ表層の酸素濃度の低減が、シリコンウェーハ表面から熱処理雰囲気中への酸素の外方拡散によって生ずる酸素濃度勾配に大きく依存するからである。
すなわち、従来技術の常圧下における熱処理の場合、熱処理中にシリコン表面からシリコン単結晶中の格子間酸素が雰囲気中へと外方拡散する。このため、シリコンウェーハ表面の酸素濃度が低下する。そして、シリコンウェーハ内部から表面に向けての酸素濃度勾配が生ずる。この酸素濃度勾配によって格子間酸素の内部から表面に向けての拡散が生じて、シリコン表層の酸素濃度が低下するのである。
一方、本実施の形態の場合は、従来技術の場合と異なり、熱処理を高圧下で行っている。したがって、シリコンウェーハ表面からの雰囲気中への酸素の外方拡散が抑制される。このため、シリコンウェーハ表面の酸素濃度はほとんど低下せず、シリコンウェーハ内部から表面に向けての酸素濃度勾配もほとんど生じない。よって、格子間酸素の内部から表面に向けての拡散も生じえず、シリコン表層の酸素濃度は低下しないのである。
なお、本実施の形態の製造方法で使われる熱処理装置は特に限定されるものではなく、例えば、高圧処理の可能なバッチ式の縦型熱処理炉、あるいは、高圧処理の可能な枚葉式のRTP(Rapid Thermal Processing)装置を用いても構わない。
また、シリコン単結晶インゴットをスライスする場合の傾斜角(オフ角)は、特に限定されるわけではないが、円形のシリコンウェーハを製造する関係上、極端にシリコン単結晶インゴットに対して傾斜を設けることは好ましくなく、0度以上5度以下の範囲にあることが望ましい。また、後述するシリコン原子の再構成による平坦化を実現する上でも、上記範囲内に傾斜角をとどめておくことが望ましい。
また、熱処理を1000℃以上1350℃以下の温度とするのは、これより低温の範囲では、COPが有効に消滅しないからである。また、これより高温の範囲では、シリコンウェーハの金属汚染が増大するからである。さらに、高温の範囲では、シリコンウェーハへのスリップ発生の可能性が高くなり、かつ、熱処理装置の部材寿命が短くなり現実的でないからである。
そして、COP密度を半導体デバイスの歩留まりに影響を与えないように十分低減させる観点からは、熱処理は1150℃以上1300℃以下の範囲で行われることがより望ましい。
そして、熱処理の雰囲気を、還元性ガス、不活性ガス、または、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気中とするのは、これら以外の雰囲気では、シリコンウェーハ中のシリコンの移動が生じにくく、COPが消滅しにくいためである。また、上記雰囲気において熱処理することにより、表面のシリコン原子の再構成が進み、原子レベルで平坦なシリコンウェーハ表面を形成することが可能となるからである。
熱処理雰囲気としては、特に、例えば、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で行われることがより望ましい。なぜなら、COP密度の低減の観点からは、水素ガス等の還元性ガス雰囲気で行うことが望ましいが、水素ガス等の還元性ガス雰囲気では同時に表層の酸素濃度の低下も促進するからである。また、安全性の観点からも水素ガス等の還元性雰囲気より不活性ガス雰囲気が望ましい。
また、熱処理雰囲気の圧力については、5MPa以下であることが望ましい。これは、5Mpa以上の耐圧を装置に持たせるためには、熱処理炉の設計が複雑になり処理炉自体のコストも増大するため、半導体基板の量産プロセスとして不適当だからである。
また、酸素の拡散を十分抑制する観点からは、常圧の約10倍である1MPa以上の圧力下で熱処理することがより望ましい。
また、本実施の形態の熱処理は、シリコン単結晶インゴットをスライスしてシリコンウェーハを形成した後、最初の高温熱処理(約100℃以上の熱処理)であることが望ましい。なぜなら、本実施の形態の高圧熱処理より前に、常圧の高温熱処理が存在すると、その常圧の高温熱処理によりシリコンウェーハ表層の酸素が失われることが考えられるからである。
また、熱処理前のシリコンウェーハの酸素濃度については特に限定されるものではないが、シリコンウェーハの機械的強度を保つ観点から、格子間酸素濃度([Oi])が1.3〜1.8×1018atoms/cm程度の高酸素濃度のシリコンウェーハを使用することが望ましい。
〔第2の実施の形態〕
本実施の形態の半導体基板の製造方法は、第1の実施の形態の熱処理の前に、常圧下において、700℃以上1000℃以下の温度範囲で熱処理する第1の熱処理工程を有すること以外は第1の実施の形態と同様であるので記述を省略する。
本実施の形態においては、上記常圧下での第1の熱処理工程と、これに続く高圧下での第2の熱処理工程を有することになる。
以下、本実施の形態の半導体基板の製造方法について、図面を参照しつつ、より具体的に記載する。
図2は、本実施の形態の半導体基板の製造方法で用いられる熱処理プロセスの一例を示す。まず、第1の実施の形態同様に、ミラーポリッシングしたシリコンウェーハをRCA洗浄等の前処理を行った後、700℃、常圧、窒素ガス雰囲気の条件で熱処理炉に導入する。その後、常圧、窒素ガス雰囲気を保ったまま、1000℃まで約10℃/分程度の昇温速度で温度を上げる。1000℃に達したところで温度を一定に保ち、雰囲気を窒素ガスからアルゴンガスへと切り替える。また、熱処理炉内の圧力を常圧から高圧へと切り替える。この切り替え前までが、本例においては第1の熱処理工程に相当する。雰囲気と圧力を切り替えた後に、昇温を開始し、1250℃まで約3℃/分程度の昇温速度で温度を上げる。その後、約30分程度の間、1250℃に維持した後、高圧、アルゴンガス雰囲気を保ったまま、1000℃までは約−3℃/分程度、1000℃から700℃までは約−10℃/分程度の降温速度で温度を下げる。切り替え後の熱処理が、本例においては第2の熱処理工程に相当する。
なお、上記の例において、1000℃以上の領域で、昇降温速度を約3℃/分程度とするのは、急激な温度変化を与えるとウェーハにスリップが生ずるおそれがあるためである。もっとも、炉内やウェーハの均熱性を向上させるよう設計されている熱処理炉においては、さらに昇降温速度を上げることも可能である。
本実施の形態のように、高圧下での第2の熱処理工程の前に、常圧下での第1の熱処理工程を行うことによって、シリコンウェーハ表層の酸素濃度を、表層のBMDが過剰にならない程度に維持することが可能となる。したがって、第1の実施の形態の作用・効果に加えて、COPと共に半導体デバイスの歩留まりを低下させる可能性のあるBMDが表層において過剰にならないようにコントロールできるという作用・効果を得ることが可能となる。
図3は、本実施の形態の作用・効果を説明する図である。図3(a)がシリコンウェーハ表面からの深さと酸素濃度の関係を示す図、図3(b)が、シリコンウェーハ表面からの深さとCOP密度の関係を示す図である。
常圧下で熱処理する従来技術、常圧下、高圧下の2段階の熱処理をする本実施の形態(本発明)、いずれの場合においても、図3(b)に示すように、シリコンウェーハ表面近傍、すなわち、シリコンウェーハ表面から1μm程度の領域においてCOP密度は減少する。これは、第1の実施の形態と同様、COPの消滅が、COPの内壁酸化膜の酸素が拡散することで分解し、さらに内部のボイドに格子間シリコンが拡散して来ることにより起こる。すなわち、シリコン単結晶中の空孔および格子間シリコンの拡散に依存しており、これらの拡散速度は、熱処理雰囲気の圧力よりも、特に最高到達温度に大きく依存するからである。
一方、本実施の形態の場合は、第2の熱処理については、第1の実施の形態と同様に高圧下で行っている。したがって、従来の常圧下での熱処理と比較して、シリコンウェーハ表面からの雰囲気中への酸素の外方拡散が抑制される点については、第1の実施の形態と同様である。
もっとも、第1の実施の形態と異なり、第1の熱処理工程として、常圧下における熱処理を700℃以上1000℃以下の範囲で行っている。700℃〜1000℃の温度範囲では、シリコン単結晶中に存在する格子間酸素が、析出核に集まりBMDとし成長する。このため、700℃〜1000℃の温度範囲での昇温中に、表層の酸素濃度が高すぎると、表層のBMD密度が高くなりすぎる恐れがある。そこで、本実施の形態においては、700℃〜1000℃の温度範囲において、まず常圧下で熱処理を行い、酸素の外方拡散を促進して表層の酸素濃度を所望の濃度まで下げることにより、表層のBMD密度の増加を抑えている。そして、その後、第2の熱処理工程において、高圧下で熱処理することにより酸素の外方拡散を抑制した状態でCOPを消滅させる。
この結果、酸素濃度の分布は図3(a)に示すように、表層がやや低下した状態になるが、従来技術に比較すると酸素濃度が高く、なお十分な機械的強度を保つことが可能となる。
以上のように、本実施の形態において、常圧下で行われる第1の熱処理工程、および、高圧下での第2の熱処理工程の条件、すなわち、温度、雰囲気、熱処理時間、圧力を適宜選択することにより、所望のCOP密度および酸素濃度の深さ方向分布を得ることが可能となる。
なお、上記の例においては、第1の熱処理工程を窒素ガス雰囲気としている。第1の熱処理工程の雰囲気は、非酸化性雰囲気であれば必ずしも限定されるものではない。しかしながら、シリコンウェーハ内部(バルク)のBMD密度とサイズを増加させ、イントリシック・ゲッタリング(IG)能力をあげるためには、BMDの核形成を促進する作用のある窒素ガス雰囲気、あるいは、アンモニアガス雰囲気で行われることが望ましい。
また、上記の例においては、第2の熱処理工程をアルゴンガス雰囲気としている。第2の熱処理工程の雰囲気は、第1の実施の形態の熱処理と同様の理由で、還元性ガス、不活性ガス、または、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気中であることが望ましいが、第1の実施の形態と同様の理由で、例えば、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で行われることがより望ましい。
また、上記の例においては、第1の熱処理工程と第2の熱処理工程を同一の熱処理炉で連続して行っている。2つの熱処理を不連続に行った場合、第2の熱処理工程の昇温時のBMD形成について別途考慮をする必要が生じプロセス設計が複雑になること、また、生産性が劣化することを考えると、同一処理炉で連続的に行うことが望ましい。しかし、不連続な別々の熱処理工程で行うことを本発明は排除するものではない。
また、上記の例にもあるように、2つの熱処理を同一処理炉内で連続して行う場合、第1の熱処理工程と第2の熱処理工程との条件を切り替える間は、熱処理温度を一定に維持することが望ましい。これは、半導体基板のCOP密度および酸素濃度分布の再現性をよくするためである。
〔第3の実施の形態〕
本実施の形態の半導体基板の製造方法は、2枚のシリコンウェーハが直接接合したシリコン基板の製造方法であって、第1のシリコンウェーハと第2のシリコンウェーハを貼り合わせる工程と、これらの貼り合わせる工程で形成された半導体基板を、常圧より高い圧力において、還元性ガス、不活性ガス、または、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気中、1000℃以上1350℃以下の温度範囲で熱処理する工程を有することを特徴とする。
本実施の形態で製造されるシリコン基板は、2枚のシリコンウェーハが界面に絶縁膜等を介さずに直接接合(Dierct Silicon Bonding;DSB)するシリコン基板である。
また、以下では、概ね{110}面の結晶面方位、および、概ね{100}面の結晶面方位を有するシリコンウェーハを直接貼り合わせたシリコン基板の製造方法を例に説明する。このように異なる結晶面方位を有するウェーハ同士を貼り合わせた、いわゆるHOT(Hybrid crystal Orientation Technology)基板上にCMOS半導体デバイスを形成することにより、nMOSFET、pMOSFETそれぞれにキャリア移動度を最適化することが可能であることが従来報告されている。
以上、本実施の形態は、高圧下での熱処理を貼り合わせによって形成された半導体基板について適用する以外は、第1の実施の形態と同様であるので記述を省略する。
以下、本実施の形態の半導体基板の製造方法について、図4の製造工程フロー図を参照しつつ、より具体的に記載する。
まず、図4(a)に示す工程で、例えば、チョクラルスキー法(CZ法)により引上げた結晶方位{100}のシリコン単結晶インゴットを、所定の角度、例えば、{100}面に対して0度以上5度以下、例えば、0.2度程度の傾斜角(オフ角)を有するようにスライスしてシリコンウェーハを作成する。続いて、このシリコンウェーハを、例えば、RCA洗浄(SC−1処理+SC−2処理)を行った後に、ミラーポリッシングする。そうすることによって、表面が{100}面に対して所定の傾斜角(オフ角)を有するベースウェーハ(第1の半導体ウェーハ)102を準備する。
次に、やはり、図4(a)に示す工程で、例えば、チョクラルスキー法(CZ法)により引上げた結晶方位{110}のシリコン単結晶インゴットを、所定の角度、例えば、{110}面に対して0度以上10度以下、例えば、0.2度程度の傾斜角(オフ角)を有するようにスライスしてシリコンウェーハを作成する。続いて、このシリコンウェーハを、例えば、RCA洗浄を行った後に、ミラーポリッシングする。そうすることによって、表面が{110}面に対して所定の傾斜角(オフ角)を有するボンドウェーハ(第2の半導体ウェーハ)104を準備する。
なお、ここで、{110}のシリコン単結晶インゴットを、所定の角度、例えば、{110}面に対して0度以上10度以下でスライスするのは、上述のように、円形のシリコンウェーハを製造する関係上、極端にシリコン単結晶インゴットに対して傾斜を設けることは好ましくないからである。また、{110}面に対しては、シリコン原子の再構成による平坦化を実現する上で、6〜9度程度の傾斜角の範囲が、特に好ましいからである。
また、{100}面および{110}面に対する傾斜角を0度以上10度以下とするのは、この範囲を超えると、nMOSFET、pMOSFETそれぞれについて、キャリアの移動度の増大効果を十分に享受できなくなるおそれもあるためである
その後、ベースウェーハ102表面と、ボンドウェーハ104表面にシリコン酸化膜を形成する。
具体的には、例えば、上記ミラーポリッシング後にウェット洗浄処理、例えば、RCA洗浄を施すことによって両方のウェーハ表面に、それぞれ2nm程度のシリコン酸化膜(ケミカルオキサイド)を形成する。
このように、重ね合わせるウェーハの表面にシリコン酸化膜を形成するのは、2枚のウェーハを物理的に貼り合わせた際の水素結合による接合強度をあげるためである。
なお、ここではベースウェーハ102およびボンドウェーハ104の両方の表面にシリコン酸化膜が形成される方法を示したが、いずれか一方のウェーハ表面のみにシリコン酸化膜が存在するものであってもかまわない。
次に、図4(b)に示す工程で、ベースウェーハ102とボンドウェーハ104とを、例えば、常温、大気圧中で重ねて密着させる。重ね合わせたウェーハの界面には界面シリコン酸化膜108が存在する。
この工程においては、常温の清浄な雰囲気下で2枚のウェーハの表面同士を接触させることにより、OH基を介在したSi原子の結合、すなわち、水素結合により、接着剤等を用いることなくシリコンウェーハを接合させることが可能となる。
次に、図4(c)に示す工程で、ベースウェーハ102とボンドウェーハ104の接合強度を上げるために、例えば、300℃〜600℃程度の温度で接合熱処理を行う。この接合熱処理により、Si原子とSi原子、あるいは、Si原子と酸素原子が直接ボンディング(共有結合)することによって接合強度が上昇する。
次に、図4(d)に示す工程で、ボンドウェーハ104側のシリコン基板表面を研削または研磨することによって所定の厚さに加工、すなわち薄膜化する。この加工によって、結晶面方位が概ね{110}のデバイス形成用の半導体層であるシリコン基板上側層112と、結晶面方位が概ね{100}のベースウェーハ102が、界面シリコン酸化膜108を介して接合されたシリコン基板が形成される。
次に、図4(e)に示す界面酸化膜除去熱処理を行う。この熱処理は、最終的に異なる結晶面方位を有するウェーハがDSB接合されたシリコン基板を製造するために、界面シリコン酸化膜108を消失させるための熱処理である。そして、この熱処理は、シリコン基板表面を原子レベルで平坦化するための平坦化熱処理をも兼ねている。
本実施の形態では、この界面酸化膜除去熱処理を、常圧より高い圧力において、還元性ガス、不活性ガス、または、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気中、1000℃以上1350℃以下の温度範囲で行うことを最大の特徴とする。
図4(e)の界面酸化膜除去熱処理により、図4(f)に示すように、結晶面方位が概ね{110}のシリコン基板上側層112と、結晶面方位が概ね{100}のベースウェーハ102が、シリコン酸化膜のない界面116で接合されたシリコン基板114が形成される。
本実施の形態のシリコン基板の製造方法によれば、従来の常圧下で界面酸化膜除去熱処理を行っていたDSB接合(直接接合)を有する半導体基板の製造方法によるよりも、ウェーハ内部のBMD密度の高いシリコン基板を製造することが可能であるという作用・効果が得られる。このように、ウェーハ内部のBMD密度の高いシリコン基板は、イントリシック・ゲッタリング能力が高いため、シリコン基板上に形成される半導体デバイスの歩留まりを一層向上させることが可能となる。
このウェーハ内部のBMD密度向上に加えて、第1の実施の形態と同様の作用・効果、すなわち、COP密度低減と表層酸素濃度低下の抑制という作用およびその効果を得ることが可能である。
従来の常圧下での界面酸化膜除去熱処理ではウェーハ表面から酸素が外方拡散することにより形成される酸素濃度勾配により、界面シリコン酸化膜の酸素を表面側に移動させて、界面シリコン酸化膜を消滅させていた。
本実施の形態によれば、熱処理時の雰囲気を高圧にすることにより、ウェーハ表面からの酸素の外方拡散が抑制されるため、酸素濃度勾配が小さくなる。したがって、界面の酸素はウェーハの内部側(バルク側)にも多数拡散し、この酸素がウェーハ内部でのBMD形成に寄与する。よって、ウェーハ内部のBMD密度が増大することになる。
ここでウェーハ内部のBMD密度を増大させる方法としては、シリコン単結晶インゴットをCZ法により引上げる時点であらかじめ酸素濃度をあげておくことでも可能である。しかし、この方法によれば、界面酸化膜除去熱処理の際に、バルクの酸素濃度が既に高いことから、界面シリコン酸化膜の酸素バルク中への拡散が抑制される。したがって、界面シリコン酸化膜の除去が困難になるため好ましくない。
なお、本実施の形態においては界面酸化膜除去熱処理を高圧下で行う場合について記載したが、第2の実施の形態のように、高圧下での熱処理に先立ち、常圧下での第1の熱処理を設けてもかまわない。この場合は、第2の実施の形態同様の作用・効果が得られる。
なお、本実施の形態においては、{100}面方位を有するシリコンウェーハをベースウェーハ、{110}面方位を有するシリコンウェーハをボンドウェーハとする場合について記載したが、必ずしも、この組み合わせである必要はなく、ベースウェーハとボンドウェーハが逆であっても、他の結晶面方位を有するシリコンウェーハを適用してもかまわない。
また、MEMS(メムス、Micro Electro Machinary Systems)で用いられるような、同一面方位のウェーハをDSB接合したシリコン基板の製造方法に本発明を適用しても同様の作用・効果を得ることが可能である。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。実施の形態の説明においては、半導体基板、半導体基板の製造方法等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる半導体基板、半導体基板の製造方法等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
また、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての半導体基板の製造方法は、本発明の範囲に包含される。
第1の実施の形態の作用・効果の説明図。 第2の実施の形態半導体基板の製造方法で用いられる熱処理プロセスの一例を示す図。 第2の実施の形態の作用・効果の説明図。 第3の実施の形態の製造工程フロー図。
符号の説明
102 ベースウェーハ(第1の半導体ウェーハ、{100}面方位ウェーハ)
104 ボンドウェーハ(第2の半導体ウェーハ、{110}面方位ウェーハ)
108 界面シリコン酸化膜
112 シリコン基板上側層
114 シリコン基板
116 シリコン酸化膜のない界面

Claims (8)

  1. 半導体単結晶インゴットをスライスする工程と、
    前記スライスする工程によって得られた半導体ウェーハを、常圧より高い圧力において、還元性ガス、不活性ガス、または、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気中、1000℃以上1350℃以下の温度範囲で熱処理する工程を有することを特徴とする半導体基板の製造方法。
  2. 半導体単結晶インゴットをスライスする工程と、
    前記スライスする工程によって得られた半導体ウェーハを、常圧下において、700℃以上1000℃以下の温度範囲で熱処理する第1の熱処理工程と、
    前記半導体ウェーハを、常圧より高い圧力において、還元性ガス、不活性ガス、または、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気中、1000℃以上1350℃以下の温度範囲で熱処理する第2の熱処理工程を有することを特徴とする半導体基板の製造方法。
  3. 2枚の半導体ウェーハが直接接合した半導体基板の製造方法であって、
    第1の半導体ウェーハと第2の半導体ウェーハを貼り合わせる工程と、
    前記貼り合わせる工程によって形成された半導体基板を、常圧より高い圧力において、還元性ガス、不活性ガス、または、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気中、1000℃以上1350℃以下の温度範囲で熱処理する工程を有することを特徴とする半導体基板の製造方法。
  4. 2枚の半導体ウェーハが直接接合した半導体基板の製造方法であって、
    第1の半導体ウェーハと第2の半導体ウェーハを貼り合わせる工程と、
    前記貼り合わせる工程によって形成された半導体基板の前記第2の半導体ウェーハ部分を所定の厚さに加工してデバイス形成用の半導体層を形成する工程と、
    前記半導体基板を、常圧下において、700℃以上1000℃以下の温度範囲で熱処理する第1の熱処理工程と、
    前記半導体基板を、常圧より高い圧力において、還元性ガス、不活性ガス、または、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気中、1000℃以上1350℃以下の温度範囲で熱処理する第2の熱処理工程を有することを特徴とする半導体基板の製造方法。
  5. 前記常圧より高い圧力とは、常圧より高く5MPa以下の圧力であることを特徴とする請求項1ないし請求項4記載の半導体基板の製造方法。
  6. 前記第1の熱処理工程において、窒素ガス雰囲気またはアンモニアガス雰囲気中で、熱処理することを特徴とする請求項2または請求項4記載の半導体基板の製造方法。
  7. 前記第1の熱処理工程および前記第2の熱処理工程を、同一の処理炉内で連続して行うことを特徴とする請求項2、請求項4、または、請求項6記載の半導体基板の製造方法。
  8. 前記第1の半導体ウェーハ表面の結晶面方位と、前記第2の半導体ウェーハ表面の結晶面方位とのいずれか一方が、{100}面に対して0度以上5度以下の傾斜角(オフ角)を有する範囲にあり、他方の結晶面方位が{110}面に対して0度以上10度以下の傾斜角(オフ角)を有する範囲にあることを特徴とする請求項3または請求項4記載の半導体基板の製造方法。
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