本発明は、電子線応用技術に係り、特に、半導体プロセス等において用いられる、検査装置および顕微鏡等の電子線応用装置に関する。
半導体プロセスにおいては、ウェハやチップ上に形成された回路パターンの観察、計測、欠陥レビュー・分類、検査等を目的として、各種の電子線応用装置が使用されている。このような電子線応用装置においては、試料上に一次ビームと呼ばれる電子線を照射し、発生した二次電子や反射電子等を検出して得られる信号に対して各種の演算処理を行うことにより、上記の観察、計測、欠陥レビュー・分類、検査等を行っている。
上記観察、計測、欠陥レビュー・分類、検査いずれを目的とする装置においても、欠陥検出・計測精度の向上が重要な課題となっている。二次電子や反射電子の検出精度は試料表面の帯電状態に非常に影響を受けるため、高精度な検査・計測を行うためには、試料表面の帯電制御が重要である。
例えば、特開平10-294345号報(特許文献1)には、一次電子ビーム用電子源とは別に予備照射用電子源を設け、当該予備照射用電子源から照射される電子線を試料に照射することにより、試料の帯電状態を制御する発明が開示されている。一方、特表2002-524827号報(特許文献2)には、一次電子ビームを試料上に走査して試料の帯電状態を制御する発明が開示されている。当文献に開示された発明においては、画像形成用電子線の照射と帯電制御用電子線の照射を時間的にずらすことにより、同一ビームでの帯電制御・画像取得を可能としている。また、特開平10-339711号報(特許文献3)には、バイプリズムを用いて電子線を2本に分割し、一方を帯電制御用、もう一方を検査用として試料に照射する電子線応用装置が開示されている。一次ビームを分離して照射するため、特開平10-294345号報に開示されるような予備照射方式よりも、検査用電子線の照射位置と帯電制御用電子線の照射位置の間隔が小さくでき、よって、帯電制御用電子ビーム照射から画像形成用電子ビーム照射までのタイムラグを少なくできるという利点がある。
一方、電子線応用装置においては、計測・検査精度と並んで、上述した観察、計測、欠陥レビュー・分類、検査等の実行速度、即ちスループットの向上が重要である。スループットを向上するための最も単純な手法は、検査・計測に必要な信号量を確保できるだけの二次電子/反射電子検出量を確保しつつ、単位時間あたりに二次電子/反射電子を検出する領域の面積をなるべく大きくすることである。このため、複数の電子線カラムを用いて、複数の電子線を同時並行的に試料上に走査して信号検出を行うマルチカラム方式や、集束電子ビームではなくある程度の広がりを持った面積ビームを試料に照射し、発生する二次荷電粒子を一括結像して検査・計測に必要な信号を取得する一括照射結像方式など、種々の電子線応用装置が提案されている。例えば、米国特許6914441号公報(特許文献4)には、マルチカラム方式の電子線応用装置が開示されている。
特開平10-294345号
特表2002-524827号
特開平10-339711号
米国特許6914441号
上述の通り、電子線応用装置においては、試料の帯電制御は重要である。しかし、特許文献1に記載された技術は、電子光学鏡筒と予備照射用電子源の大きさの問題により、検査用電子線の照射位置と帯電制御用電子線の照射位置の間隔を小さくすることが困難である。このため、帯電制御のための電子線照射と信号取得のための電子線照射の時間差を充分に短くすることが出来ず、帯電状態を維持できない場合がある。特許文献2に開示された技術は、一次電子ビーム自体を帯電制御陽電子線として用いるもので、同じ領域を同一電子線で2回照射する必要があることから、計測・検査効率の点では不利である。また、特許文献3に記載された技術では、帯電制御用電子線と信号取得用電子線の双方の照射によって試料から発生する二次電子線の分離検出ができない。従って、帯電制御用電子線照射と信号取得用電子線照射によって発生する二次荷電粒子が混在して検出されてしまい、検出信号から二次荷電粒子発生位置の位置情報が失われる。
本発明の課題は、一次ビームの良好な集束と、帯電制御性とを両立する電子線応用装置を実現することである。または、上記に加えて、従来よりも検査・計測スループットの高い電子線応用装置を実現することを課題とする。
本発明では、同一の電子源から発生した電子線を少なくとも2本以上に分離し、1本を帯電制御用、もう1本を二次荷電粒子(二次電子や後方散乱電子)を発生用の電子ビームとして試料に照射し、かつ二次荷電粒子発生用電子ビーム(以下、信号取得用電子線と略)の照射により発生した二次荷電粒子を、帯電制御用電子ビームの照射によって発生する二次荷電粒子と弁別して検出できる機構を備えることにより、上記の課題を解決する。
信号取得用電子線の本数は、一本であっても複数であっても良い。本数が一本のみの場合をシングルビーム方式、複数の場合をマルチビーム方式に該当するが、信号取得用電子線の本数をマルチビーム方式とすることにより、一次ビームの集束性・帯電制御性に加えて、スループットの高い荷電粒子線応用装置を実現することができる。
本発明によれば、信号取得用一次ビームの集束性と、帯電制御性を両立した電子線応用装置を実現することが出来る。さらに、本発明をマルチビーム型の電子線応用装置に適用することにより、一次ビームの集束性と帯電制御性を両立した上で、スループットの高い電子線応用装置を実現することが出来る。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施例を説明するための全図において、同一部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
以下、図面を用いて各実施形態を説明する。
本実施例では、いわゆるシングルビームタイプの走査電子顕微鏡における実施形態について説明する。まず、図1(a)から図1(d)を用いて、本実施例の電子線応用装置の類型を説明する。
図1(a)は、第1の実施例に係る電子顕微鏡の電子光学系の概略構成を示す図である。図1(a)に示す電子光学系は、電子源101、電磁レンズで構成したコンデンサーレンズ103、複数の孔を持つアパーチャーアレイ104とレンズアレイ105、対物レンズ106a、106b、走査偏向用の偏向器107等により構成される照射光学系、二次電子検出器113、一次ビーム102aの照射によって発生する二次荷電粒子110aを集めるためのコレクター電極111等により構成される検出光学系、ステージ109、などで構成されている。図示していないが、上記の各構成要素は、内部が真空排気された電子光学系鏡筒内に保持されている。同様に、図示されてはいないが、これらの電子光学系の各構成要素部や試料ステージ109、検出光学系にはそれぞれ駆動電源、制御装置が接続されている。また、各構成要素の制御装置は、それらを統括するコンピュータに接続されており、装置全体の制御は、当該ホストコンピュータにて実行されるようになっている。上記の電子光学鏡筒は、回転対称な形状を有しており、図中の一点鎖線は電子光学鏡筒の中心軸を示す。電子光学鏡筒の中心軸は、設計上は、光学系の対称軸が一致し、一次電子ビーム光路の基準となる。上の光学系の対称軸を、以下、中心軸と呼ぶ。
電子源101から発生した一次ビーム102は、コンデンサーレンズ103によって平行に整えられた後、アパーチャーアレイ104によって2本の一次ビーム、信号取得用一次ビーム102aおよび帯電制御用一次ビーム102bに分割される。その後、信号取得用一次ビーム102aおよび帯電制御用一次ビーム102bはレンズアレイ105によって個別に集束された後、対物レンズ106aおよび106bによりステージ109上に搭載された試料108上に焦点を結ぶ。107は時間的に変化する電場または磁場を発生する偏向器であり、試料108上の所望の位置に信号取得用一次ビーム102aおよび帯電制御用一次ビーム102bを走査する。
図1(a)に示す電子光学系においては、一次ビームの分離手段であるアパーチャアレイ104の下方のクロスオーバ位置に回転コイル114が配置されている。回転コイル114は、光学系の中心軸に対して同軸となるように配置された円環状コイルであって、円環内部に中心軸に平行な向きの磁場を発生させることができる。回転コイル114により誘起される磁場によって、試料上における信号取得用一次ビーム102aおよび帯電制御用ビーム102bの位置を中心軸周りに回転させることが出来る。これを用いて、信号取得用一次ビーム102aおよび帯電制御用ビーム102bをステージの進行方向に平行に整列させる。なお、本実施例ではステージ109はステップアンドリピートと呼ばれる、一時停止と移動を繰り返すように制御されている。一時停止中に一次電子ビームが試料108を二次元的に走査しながら照射して、二次電子信号が走査信号と同期して取得される。ビームの照射が終了すると、終了したことを示す信号が電子光学系の制御装置から試料ステージの制御装置へ伝送され、試料ステージ制御装置が、ステージが移動を開始するよう制御を行う。
信号取得用一次ビーム102aおよび帯電制御用ビーム102bの照射位置の位置関係をステージの進行方向に対して平行になるように制御することにより、信号取得用一次ビーム102aの照射領域をほぼトレースしながら、帯電制御用ビーム102bがビーム照射を行うことが可能になり、帯電制御用ビーム102bの照射領域と信号取得用一次ビーム102aの照射領域のずれが低減された。なお、試料ステージとして、XY移動ステージに回転ステージを付加すれば、XY方向のステージ移動に対する信号取得用一次ビーム102aおよび帯電制御用ビーム102bの照射位置の調整を、回転コイル114だけでなくステージ側でも補正することが可能となる。このステージ制御は、ステージが連続移動し、一次ビームが一次元走査されてステージと連動制御されて二次電子信号を取得するように行うことも可能である。
信号取得用一次ビーム102aおよび帯電制御用一次ビーム102bの照射によって、二次電子や反射電子などの二次荷電粒子が試料108から発生する。検出器113は、このうち、信号取得用一次ビーム102aの照射によって発生する二次荷電粒子110aを検出する。この時、帯電制御用ビーム102bの照射によって発生する二次荷電粒子110bが混入すると、検出された信号のS/N比が低下するため、信号取得用一次ビーム102aの照射によって発生する二次荷電粒子110aと、帯電制御用ビーム102bの照射によって発生する二次荷電粒子110bを分離するべく、検出器113の位置や検出面の向き、さらに、信号取得用一次ビーム102aおよび帯電制御用一次ビーム102bが照射される位置と検出器113の間の電場分布を調整する。本実施例では、検出器113の前面に信号取得用一次ビーム102aの照射によって発生する二次荷電粒子110aを集めるためのコレクター電極111とこれに電圧を供給する電源112を設置した。検出器113により検出された信号は、信号処理系(図示せず)により、増幅、デジタル化された後、画像データ等に変換される。この画像データあるいは取得した信号を元に、試料上に形成されたパターンの形状・欠陥の有無等を調べることが出来る。
信号取得用一次ビーム102aの照射によって発生する二次荷電粒子110aと帯電制御用ビーム102bの照射によって発生する二次荷電粒子110bの分離手段としては、図1(a)の構成では、検出器113の前面にコレクター電極111を設けた。コレクタ電極111には、電圧供給電源112を接続した。
図1(e)には、信号取得用一次ビーム102aおよび帯電制御用一次ビーム102bの照射量と試料の表面電位の関係を表すタイムチャートを示した。図1(a)においてステージ109が矢印の方向(紙面の左から右)に移動すると、図1(e)上の時刻t1からt2にかけて帯電制御用一次ビーム102bが照射され、その後、ビーム102bの照射領域と同じ位置に、時刻t3からt4にかけて信号取得用一次ビーム102aが照射される。試料の表面電位は、帯電制御用ビーム102bの照射により、時刻t1からt2にかけて電位が変化する。時刻t2でビームの照射が停止すると、試料の電位状態は減衰してt1以前の電位状態に戻り始める。その後、時刻t3からt4にかけて、信号取得用一次ビーム102aの照射によって試料は再度帯電して電位が変化する。
これらの照射によって、絶縁膜で覆われた試料を所望の電位まで帯電させ、試料からの二次電子発生効率を変化させることが出来れば、検出器113から得られる信号のS/N比を向上させることが出来る。しかしながら、試料表面の材質・膜厚等の条件によっては、試料の帯電の減衰の時定数が短い場合がある。したがって、帯電制御用一次ビーム102bの照射位置と信号取得用一次ビーム102aの照射位置との間隔が大きい場合、帯電制御用一次ビーム102bの照射時刻によって試料の表面電位が所望電位に達してから、信号取得用一次ビーム102aが照射されるまでの時間が長くなるため、二次荷電粒子の信号検出前に帯電が大きく減衰してしまい、帯電制御用一次ビームの効果が小さくなる。
従来、試料の帯電制御は、信号取得用一次ビームを発生する電子源とは別に設けた予備照射電子源を用いて行われる場合が多かった。しかし、電子光学鏡筒や電子源の物理的なサイズの問題から、従来技術では信号取得用一次ビームの照射位置と帯電制御用ビームの照射位置とを一定距離以内に近づけることは困難であった。このため、従来技術では、予備照射電子線の照射から信号取得用一次ビーム照射までに、少なくとも数十秒程度の時間を要し、試料表面の材質や膜厚などによっては、試料の帯電状態を一次ビーム照射まで保持できない場合があった。
一方、本実施例では、同一電子源から発生した一次ビームを二つに分割し、一方を帯電制御用一次ビーム102b、もう一方を信号取得用一次ビーム102aとして試料に照射するため、物理的に別の電子源から電子ビームを照射する場合に比べて、帯電制御用一次ビーム102bと信号取得用一次ビーム102aの距離が短くてすむ。そのため、試料表面の材質・膜厚などによらず、試料の帯電電位の減衰前に二次荷電粒子の信号検出が出来る。これにより、高いコントラストと均質な画質を持った画像を形成することが可能となる。加えて、本実施例では、ステージ109の移動速度を制御することにより、試料上の所望位置への信号取得用ビームの到達時刻と帯電制御用ビームの到達時刻との間隔(すなわち図1(e)の時刻t2とt3の間隔)を制御することができる。この到達時刻の間隔制御は、一次ビームの集束レンズの集束条件を調整し、信号取得用一次ビームの照射位置と帯電制御用ビームの照射位置を変えることによっても実現可能である。より具体的には、試料の材質、膜厚に応じた最適なt2とt3の間隔を予め求めておき、データベースに格納しておく。データベースは、例えば、前述のコンピュータに接続あるいは内蔵された記憶装置に、材質、膜厚などの試料の特性情報とt2-t3の最適値を対にして格納しておくことにより実現可能である。ステージ制御により到達時刻の間隔制御を行う場合には、コンピュータが、試料の特性情報をキーにしてt2-t3の間隔値を検索し、得られた値を元にステージの最適な送り速度を計算し、ステージ制御手段に伝送する。一次ビームの集束レンズの集束条件調整により到達時刻の間隔制御を行う場合には、同じく検索されたt2-t3の間隔値と現在のステージ送り速度の関係から信号取得用一次ビームの照射位置と帯電制御用ビームの照射位置の間隔の最適値を計算し、当該最適値を制御目標として集束レンズへの励磁電流ないし印加電圧を計算する。計算された値は、電子光学系制御装置へ伝送され、信号取得用一次ビームの照射位置と帯電制御用ビームの照射位置の間隔が調整される。以上、図1(a)の構成により、試料によって異なる帯電緩和の特性に応じた帯電制御が可能になる。
図1(b)から図1(d)には、本実施例の別な構成例を示した。以下説明を行うが、図1(a)と同じ構成要素については、説明は省略する。
図1(b)には、信号取得用一次ビーム102aの照射起因の二次荷電粒子110aと帯電制御用ビーム102b起因の二次荷電粒子110bの分離手段を、フィルター電極115と、電圧供給電源116とにより構成した例を示す。フィルター電極115により、帯電制御用ビーム102bの照射によって発生する二次荷電粒子110bの軌道を試料に引き戻され、検出器113への混入が防止される。
図1(c)には、試料108に電源117を接続し、試料の電子銃方向上流に接地電極118を設け、試料108が接地電極118に対して低い、すなわち相対的に負となるように試料108と接地電極118へ電圧を印加して、試料108から発生した二次荷電粒子を試料から離れる方向に加速してもよい。図1(c)では、接地電極118にはアース電圧を常に接続し、試料108には負の電圧を印加した。これにより、同一箇所から発生した二次荷電粒子の方向が揃うため、信号取得用一次ビーム102aの照射によって発生する二次荷電粒子110aと帯電制御用ビーム102bの照射によって発生する二次荷電粒子110bはそれぞれ独立して局在し、混じり合うことはない。したがって、図1(a)のような分離のための吸引電界を生成しなくてもそのままで両者の分離が可能になる。例えば、信号取得用一次ビーム102aの行路にこれを通過させるための貫通孔を有する検出器113を設置することにより、信号取得用一次ビーム102aの照射によって発生する二次荷電粒子110aだけを分離して検出することができる。また、図1(b)と図1(c)を組合せれば、さらに効果的に二次電子を分離することができる。即ち、試料に108に電源117を接続し、試料108から発生した二次荷電粒子を試料から離れる方向に加速しつつ、フィルター電極115を用いて帯電制御用ビーム102bの照射によって発生する二次荷電粒子110bの軌道を試料に引き戻すなどのように制御すれば良い。
図1(d)には、二次荷電粒子検出器113の配置とウィーンフィルタで分離手段を構成した例を示した。ウィーンフィルターは電磁界を重畳させた偏向器であって一次ビームに対しては偏向作用がなく、二次荷電粒子に対してのみ偏向作用を持つ一種の偏向器である。ExB偏向器と呼ばれることもある。図1(d)の構成では、ウィーンフィルタ119は、レンズアレイ105、対物レンズ106a間に形成される一次ビームのクロスオーバ位置に配置される。二次荷電粒子検出器113は、信号取得用一次ビーム102aの照射光軸から二次荷電粒子が分離されて進む進行方向に配置する。この際、試料108に電圧を印加し、試料108と接地電極118の間に、波二次粒子に対しては加速電界となるような電界を形成する。試料から発生した二次荷電粒子は、加速電界と対物レンズ106aおよび106bの集束効果により、ほぼ信号取得用一次ビーム102aと帯電制御用ビーム102bと同じ光路を通ってウィーンフィルタ119まで到達する。但し、信号取得用一次ビーム102aと帯電制御用ビーム102bとでは照射光軸が異なるため、発生した二次荷電粒子のウィーンフィルタによる集束位置も互いに異なる。よって、二次荷電粒子113の配置の位置を工夫すれば、信号取得用一次ビーム102aの照射によって発生する二次荷電粒子110aだけを検出することが可能である。なお、図示しないが、信号取得用一次ビーム102aと帯電制御用一次ビーム102bの照射位置の間に遮蔽板を設けて二次電子の混入を防止する構造としてもよい。
尚、本実施例では、電子顕微鏡を例に、本発明の効果を説明したが、本発明の効果は試料上に形成されたパターンの寸法を測定する測長SEM、試料上に形成されたパターン内における欠陥の有無を調べる検査装置、試料上に形成されたパターンの欠陥を観察するレビューSEM等においても同様に得られる。
本実施例では、マルチビーム型の走査電子顕微鏡において、同一電子源から放射された電子線を複数の電子線に分離し、少なくとも1つあるいはそれ以上の電子線を帯電制御用電子ビームとして使用した装置構成について説明する。
図2は本発明の第2の実施例に係る電子線検査装置の概略構成を示す図である。本実施例では、帯電制御用一次ビームと検査用一次ビームの照射位置において試料上の電位分布を異なる分布にさせる電界強度制御手段を持たせて構成している。具体的には、この電界強度制御手段として、表面電界制御電極を設置して、試料上の電界分布を制御する。この試料上電界分布の制御については後で詳述する。まず、装置構成を説明する。電子銃201は仕事関数の低い物質よりなる電子源202、電子源202に対して高い電位を持つ陽極205、電子源と陽極の間に形成される加速電界に磁場を重畳する電磁レンズ204からなる。本実施形態では、大きな電流が得やすく電子放出も安定したショットキー型の電子源を用いた。電子銃201から一次電子ビーム203が引出される下流方向には、図2に示すように、コンデンサーレンズ207、同一基板に複数の開口を配列したアパーチャーアレイ208、複数の開口を有するレンズアレイ209、ウィーンフィルター211、対物レンズ212a、212b、走査偏向用偏向器213、ステージ217、二次電子検出器221等を配置して構成している。さらに、電子光学系には、電流制限用絞り、一次ビームの中心軸(光軸)調整用アライナー、収差補正器等も付加されている(図示せず)。ステージ217は上にウェハ216を載置して移動する。ウェハ216には後述するように負の電位(以下、リターディング電位と称する)を印加する。図示していないが、ウェハ216とステージ217の間にはウェハと導通の取れた状態でウェハホルダが介在し、このウェハホルダにリターディング電源220を接続してウェハホルダ、およびウェハ216に所望の電圧を印加する構成としている。ウェハ216から電子銃方向側には、接地した接地電極214、および表面電界制御電極215を設置している。走査偏向用偏向器213には走査信号発生装置228、表面電界制御電極215には表面電界制御電源219を接続している。電子銃202、コンデンサーレンズ207、レンズアレイ209、ウィーンフィルター211、対物レンズ212aおよび212b、表面電界制御電源219a、219b、およびリターディング電源220の各部には、光学系制御回路231が接続し、さらに光学系制御回路231にはシステム制御部224が接続している。ステージ217にはステージ制御装置229が接続し、さらに、二次電子検出器221、走査偏向用偏向器213と同様にシステム制御部224に接続している。システム制御部224には記憶装置225、演算部226、欠陥判定部227が配置され、画像表示部230が接続している。また、図示していないが、制御系、回路系以外の構成要素は真空容器内に配置しており、真空排気して動作させていることは言うまでもない。また、真空外からウェハをステージ上に配置するウェハ搬送系が具備されていることも言うまでもない。ステージ上には電子光学条件の調整や調整状態の測定に用いる基準マーク232、および電子ビームの電流量を測定するファラデーカップ233が備わっている。
次に、装置の動作、および詳細について説明する。電子源202から放出された一次ビーム203は、電磁レンズ204による集束作用を受けながら陽極205の方向に加速され、第一の電子源像206(ビーム径が極小になる点)を形成する。図示しないが、一般的な電子銃によく見られるように電子銃201には絞りを配置しており、所望の電流範囲の電子ビームが絞りを通過するように構成している。陽極205、電磁レンズ204の動作条件を変えれば、絞りを通過する一次ビームの電流量を所望の電流量に調節することが可能となっている。また、図示しないが電子銃202とコンデンサーレンズ207の間には一次電子ビームの光軸を補正するアライナーが配置され、電子ビームの中心軸が絞りや電子光学系に対してずれている場合に補正できる構成となっている。
第一の電子源像206を光源として、コンデンサーレンズ207は一次ビームを平行に整える。本実施形態においてコンデンサーレンズ207は電磁レンズである。本実施形態においてアパーチャーアレイ208は同一直線上に配置された3つの開口を有し、一次ビーム203を1本の検査用一次ビーム203b、および2本の帯電制御用一次ビーム203a、203cの合計3本に分割する。分割された一次ビーム203a、203b、203cはレンズアレイ209によって個別に集束され、複数の第二の電子源像210a, 210b, 210cが形成される。レンズアレイ209は、それぞれ複数の開口を有する3枚の電極からなり、このうち中央の電極に電圧を印加することにより、開口部を通過する一次ビームに対してアインツェルレンズとして作用するものである。
レンズアレイ209により個別に集束された3本の一次ビーム203a、203b、203cはウィーンフィルター211内を通過する。ウィーンフィルター211は一次ビームの入射方向に対して概略垂直な面内に互いに直交する磁場と電場を発生させ、通過する電子に対してそのエネルギーに対応した偏向角度を与えるものである。本実施形態においては、一次ビームが直進するように磁場と電場の強さを設定し、さらに、反対方向から入射する二次電子ビームに対しては所望の角度に偏向するように電磁場の強さを調節・制御する。また、ウィーンフィルター211の位置については、一次ビームに対する収差の影響を考慮して、影響を低減するために一次ビームの第2電子源像の高さに合わせて配置している。212a, 212bは1組の対物レンズでありそれぞれ電磁レンズである。第二の電子源像210a, 210b, 210cを縮小投影する。
走査偏向用の偏向器213は、対物レンズ中に静電8極型で構成されている。走査信号発生装置228により偏向器213に信号が入力されると、中を通過する3本の一次ビームは、略同一方向に且つ略同一角度だけ偏向作用を受け、試料であるウェハ216をラスタ走査する。ウェハ216にはリターディング電源220により負の電位が印加されている。したがって、これと接地電位に接続された接地電極214の間には一次ビームを減速させる電界が形成されている。表面電界制御電源219a、219b、およびリターディング電源220は他の光学素子、即ち、電子銃202、コンデンサーレンズ207、レンズアレイ209、ウィーンフィルター211、対物レンズ212aおよび212bと同様に、光学系制御回路231を介してシステム制御部224により統一的に制御される。
ステージ217は、ステージ制御装置229により制御される。システム制御部224はウェハ216上の所定の領域を、ステージ進行方向に並んだ1ストライプずつ検査するべく、走査信号発生装置228およびステージ制御装置229を統一的に制御する。なお、本実施例の検査装置では、ステージが連続に移動していて、走査による偏向とステージ移動の組合せにより、一次ビームが帯状の領域を順次走査するように制御されている。この帯状領域は所定の検査領域を分割したものであり、複数の帯状領域を走査することによって所定の検査領域全体を走査している。この各帯状領域をストライプと称している。ステージの移動と検査用一次ビーム、帯電制御用一次ビームの配列関係は、第一の実施例と同様に、検査用一次ビームと帯電制御用一次ビームがステージ移動方向に対してほぼ平行になるように制御され、帯電制御用ビームとほぼ同一の領域、あるいは帯電制御用ビームの照射領域の内部領域を検査用ビームが照射できる構成となっている。ビームとステージの関係は、第一の実施例と同様に、ステージ制御部がステージのx、y方向を微小な回転角θに補正して制御してもよいし、回転コイル(図示せず)でビームの配列の回転を調整してもよい。これらの制御を、システム制御部224が統一的に制御している。
次に、ステージが図中に矢印で示したように、紙面の右方向に進行しているとし、表面電界制御電極215の作用について説明する。図3は図2の電子線検査装置における表面電界制御電極215およびウェハ216を含む部分の拡大図である。なお図3では、ウェハ216と表面電界制御電極215の配置・構成を分かりやすく示すために、表面電界制御電極215をウェハ216に対して相対的に拡大して表示している。実際には、ビーム203a、203b、203cの間隔は、ウェハ216に対して数分の1以下のサイズで構成している。また、模式的にウェハに表面電界制御電源219からの配線を接続させているよう図示しているが、実際にはウェハ直下のホルダ(図示せず)に電源からの配線を接続しており、ウェハに直接配線したり、接触させたりして直接ウェハ面を傷つけるものではない。
本実施例においては、図3(a)に示したように、表面電界制御電極215は二つの部分電極215aおよび215bに電気的に分離されている。部分電極215aと215bの間には、図示しないが絶縁物を介在させて構成している。部分電極215aには貫通孔301bが、部分電極215bには貫通孔301aおよび301cが設けられている。3つの貫通孔301a、301b、301cはいずれも等しい径を持つ円形であり、貫通孔301aには帯電制御用一次ビーム203aが、貫通孔301bには検査用一次ビーム203bが、貫通孔301cは帯電制御用一次ビーム203cがそれぞれ通過する。表面電界制御電源219aはウェハ216と部分電極215aの間に電位差を与え、表面電界制御電源219bはウェハ216と部分電極215bの間に電位差を与える。
一方、既に述べたようにウェハ216には、一次ビームを減速させるための負の電位が印加されている。この電位は、一次ビームとは逆の進行方向を持つ二次荷電粒子に対しては加速作用を持つ。一次ビームの照射に伴いウェハ216から発生する二次荷電粒子の振る舞いは、この加速作用と、部分電極215aおよび215bとウェハ216との間に印加された電位差による作用のバランスにより決定される。本実施例においては、部分電極215aには、ウェハ216に対して+100 Vの電位差を与え、部分電極215bには、ウェハ216に対して−100 Vの電位差を与える。これにより、帯電制御用一次ビーム203aおよび203cが照射される領域には、試料から発生する二次電子を試料へ引き戻す方向の電界が形成され、検査用一次ビーム203bが照射される領域には試料から発生する二次電子を電子銃方向へ加速する方向の電界が形成される。即ち、一次ビーム203aとウェハ216との相互作用によって発生した二次荷電粒子218a、および一次ビーム203cとウェハ216との相互作用によって発生した二次荷電粒子218cは試料の帯電状態を制御するべくウェハ216に戻される一方、一次ビーム203bとウェハ216との相互作用によって発生した二次荷電粒子218bはウェハ216から離れ、上方に向かって進行する。したがって、本実施例の表面電界制御電極215は帯電制御用一次ビームの照射により発生する二次荷電粒子と検査用一次ビームの照射により発生する二次荷電粒子を分離させる作用も持つ。また、信号取得用の一次ビームが照射される領域に二次電子を試料に引き戻す方向の電界を形成すると、同時に、一次ビームの光路上の電界分布が変化することになるため、色収差・非点収差などによる一次ビームのビームぼけが増大する場合があるが、本実施例では、二次電子を試料に引き戻すための電界は、信号取得用の一次ビームが照射される領域には形成されない。このため、信号取得用の一次ビームのぼけが増大することはない。
次に、帯電制御用一次ビーム203aおよび203cの役割について説明する。今、ウェハ216はステージと共に紙面の右方向に進行しているので、最初に検査領域を照射するのは帯電制御用一次ビーム203aである。既に述べたように、帯電制御用一次ビーム203aとウェハ216との相互作用により発生した二次荷電粒子208aは表面電界制御電極215の部分電極215aにより形成された電界によりウェハ216に戻されるので、検査領域は負に帯電する。次に検査領域を照射するのは検査用一次ビーム203bである。既に述べたように、検査用一次ビーム203bとウェハ216との相互作用により発生した二次荷電粒子208bはウェハ216から離れ、上方に向かって進行する。
この後の二次荷電粒子208bの振る舞いを、再び図2を用いて説明する。二次荷電粒子208bは対物レンズ212aおよび212bの集束作用を受け、さらに二次荷電粒子に対しては偏向作用を持つウィーンフィルター211により、一次ビームの軌道と分離され、検出器221に到達する。検出された信号は増幅回路222により増幅され、A/D変換機223によりデジタル化され、システム制御部224内の記憶装置225に画像データとして一旦格納される。その後、演算部226が画像の各種統計量の算出を行い、最終的には欠陥判定部227が予め求めておいた欠陥判定条件に基づき欠陥の有無を判定する。判定結果は画像表示装置230に表示される。
以上の手順で、ウェハ216内の検査するべき領域を、右端から順に、帯電制御用一次ビーム203aにより帯電制御し、検査用一次ビーム203bによりパターン検査を行う。検査するべき領域の左端まで検査が終了すると、隣のストライプの検査を行うべく、ステージの進行方向は紙面の左方向に反転する。そして、今度は帯電制御用一次ビーム203cがウェハ216の帯電状態を制御し、さらに、検査用一次ビーム203bにより、検査を行う。
以上の方法で、単一の電子銃を用いて3本の一次ビームを形成し、1本を検査用一次ビームとし、2本を帯電制御用一次ビームとすることにより、スループットを損なうことなく、帯電制御と検査を両立することが出来る。さらに、検査用一次ビームを発生させる電子銃とは別の電子源から放出されたビームを帯電制御用一次ビームとして用いる方法に比べて、同一の電子銃から放出され同一の電子光学系を用いてウェハ216上に照射されるビームを検査用一次ビームと帯電制御用一次ビームとして用いることにより、両者の距離を縮めることが出来た。これにより、帯電制御用のビームによりウェハの帯電状態が決定されてから検査用一次ビームによりパターン検査が行われるまでの時間差を短縮出来、帯電状態が良好に保存され、欠陥検出感度を向上させることが出来た。
次に半導体デバイス製造プロセスにおいて、この電子線検査装置を用いてウェハ上に形成された回路パターンの検査を行う手順を図4、図5および図6を用いて説明する。
図4は検査を行う手順を示したフローチャートである。オペレーターが図2の画像表示装置230に表示されたスタートボタンをクリックする(ステップ401)と、検査を行うべきウェハが格納されているカセット(図示せず)を指定させるべく、入力画面が表示される。カセットの番号を入力する(ステップ402)と、図5に示したような検査条件設定画面が表示される。オペレーターは、この画面を通じて、既に検査条件が書き込まれた条件ファイルを選択し、必要に応じてこれを書き換えるか、新規に作成することを選び、デフォルト値を元に検査条件を書き込むことが出来る。始めにウェハ指定タブ501をクリックすると、入力画面が表示され、オペレーターは検査するべきウェハが属するロットIDおよびウェハIDを入力する(ステップ403)。これらのIDを元に、システム制御部224はウェハサイズ等を判断し、ウェハローダー(図示せず)を用いてウェハをステージ217上に搭載する(ステップ404)。
次にオペレーターが画像表示装置230に表示された光学調整ボタンをクリックすると、電子光学系の粗調整が開始する(ステップ405)。この電子光学系の粗調整の目的は、電子ビームをおおまかに所望の条件に合わせること、および、電子ビームの光軸が著しく光学系に対してずれている場合に補正することである。ビームの光軸が著しくずれていると、絞り等の光学系部品にさえぎられてビームの電流量が確保できないことがある。これを補正することにより、複数の一次ビームの電流量の予期しないばらつきを抑え、次のステップである検出系調整で正常に明るさ調整が可能になるという効果がある。粗調整では、まずステージ制御装置229からの信号により、ステージ217上に搭載された基準マーク232上に検査用一次ビーム203bが照射されるようステージが移動し、検査用一次ビーム203bのビーム径、および、偏向器213に信号を与えた時のビームの偏向量が測定される。ここで、ビーム径と偏向量は、基準マークで取得した画像を制御部が画像処理して測定値を算出している。さらに、ファラデーカップ233上に検査用一次ビーム203bが照射されるようステージが移動し、検査用一次ビーム203bのビーム電流が測定される。次に帯電制御用一次ビーム203a、203cについても同様にビーム径、偏向器213に信号を与えた時のビームの偏向量およびビーム電流が測定される。測定されたビーム径、偏向量、ビーム電流は、検査用一次ビーム203b、帯電制御用一次ビーム203a、203cのそれぞれについて、画像表示装置230に表示される。オペレーターはこの表示結果を見ながら、検査用一次ビーム203bおよび帯電制御用一次ビーム203a、203cのビーム径とビーム電流が所望の値となるよう、電子銃202、対物レンズ212a、212b、アライナー(図示せず)、収差補正器(図示せず)等に印加される電流や電圧の調整を行う。さらに、再び検査用一次ビーム203b、帯電制御用一次ビーム203a、203cのそれぞれについて、ビーム径、偏向量、ビーム電流が測定され、画像表示装置230に表示される。この測定と調整が繰り返され、所望の光学条件に近づいたと制御系、またはオペレーターが判断したときに調整は終了する。この光学調整は、上記のようにオペレーターが調整を繰り返してもいいし、あるいは、あらかじめ所望の値をオペレーターが入力しただけで、所望の条件になるまで自動的に制御系が光学調整を繰り返すように制御系を構成してもよい。
次にオペレーターが画像表示装置230に表示された検出系調整ボタンをクリックすると、検出器221に印加されるバイアス電圧、増幅回路222のオフセット電圧およびゲイン等の検出系調整が開始され、信号量が適正な範囲の明るさになるよう調整される(ステップ406)。次にオペレーターが画像表示装置230に表示されたアライメントボタンをクリックすると、ウェハに対するステージ座標の較正、すなわち、アライメントが実行される(ステップ407)。アライメント用指示画面が表示され、指示に従いウェハ上のアライメントチップを複数点指定すると、システム制御部224により、アライメントマークを自動的に検出し、アライメント座標が登録される。次に、オペレーターはウェハ内の検査するべきチップ、およびチップ内の検査するべき領域を指定する(ステップ408)。
次に、オペレーターは図5の検査条件設定画面を用いて検査条件を入力する(ステップ409)。まず、光学条件指定タブ502をクリックし、ファイル指定ボックス503を通じて既に作成したファイルから検査を行う光学条件を読み出すか、入射エネルギー設定ボックス504、電流設定ボックス505を通じて、検査条件として適した入射エネルギー、電流を改めて入力する。これを元に、システム制御部224は電子銃201に印加される電圧、電子銃内部の引き出し電極(図示せず)、およびリターディング電源220、および電子銃内に磁場を重畳する電磁レンズ204の出力電流、出力電圧を計算する。また、オペレーターが表面電界強度設定ボックス506を通じて検査条件として適した、検査用一次ビームが照射される領域の表面電界強度を入力すると、これを元に、システム制御部224は表面電界制御電源219bの出力電圧を決定する。
同時に、レンズ等他の光学素子の最適値が再計算されるとともに、光学パラメータ表示部507に再計算されたパラメータが表示される。オペレーターがこれらのパラメータをさらに調整したい場合は、調整ボタン508をクリックし、調整用画面を表示させることが出来る。光学条件の指定が終了し、オペレーターが適用ボタン509をクリックすると、決定された条件が各光学素子に反映される。また、光学条件を保存ボタン510あるいは別名で保存ボタン511をクリックし、保存しておくことも出来る。
次に、オペレーターが走査条件タブ512をクリックし、検査用一次ビーム203bがウェハ216上を走査する幅、および走査速度、走査フレーム数、ステージの速度信号検出のタイミング等を入力すると、システム制御部224は走査信号発生装置228およびステージ制御装置229に与えるべき信号を計算する。
次に、オペレーターが帯電制御タブ513をクリックし、検査条件として適した、帯電制御用一次ビームが照射される領域の表面電界強度を入力する。これを元に、システム制御部224は表面電界制御電源219aの出力電圧を決定し、電圧が印加される。
次に、オペレーターは画像処理条件タブ514をクリックし、検出された信号にかけるフィルタの種類の画像処理条件を入力する。
以上は光学条件、走査条件、帯電制御条件、画像処理条件のそれぞれをオペレーターがマニュアル走査で入力する手順であるが、ウェハ指定タブ501で入力されたロットIDまたはウェハIDを元に、レジストの種類・膜圧等を読み出し、検査履歴等を元に、自動的にこれらの条件を設定してもよい。
以上の手順で検査条件の入力が終了すると、オペレーターは必要に応じて、画像表示装置230に表示された光学調整ボタンをクリックし、再度、検査用一次ビーム203bおよび帯電制御用一次ビーム203a、203cのビーム径とビーム電流が所望の値となるよう光学素子に印加される電流および電圧を調整する(ステップ410)。このステップは、電子光学系の精調整、および調整状態の確認を行うことが目的である。
次に、試し検査を行う(ステップ411)。図6(a)は上記のステップにより設定された条件下で、所定のチップ内の小領域について行った試し検査により得られた画像の一例である。行列上に配列されたパターンのうち、正常に形成されたパターン601と導通不良パターン602とでは明るさが異なる。この画像の明るさをヒストグラム表示したものが図6(b)である。正常に形成されたパターンに相当するピーク603と導通不良パターンに相当するピーク604はかろうじて判別できるものの、分離しているとは言いがたい。オペレーターが画像およびヒストグラムを元に、誤検出の恐れがあり、最適条件ではないと判断した場合は(ステップ412)、再びステップ409に戻る。図6(a)の例では、帯電不足からコントラストが低くなっていると判断されるため、より強くウェハが帯電するよう、帯電制御用一次ビームが照射される領域の表面電界強度を調整した。その結果、再び試し検査を行ったところ、図6(c)に示した試し検査により得られた画像のように、正常に形成されたパターン605と導通不良パターン606の明るさの差が大きくなった。この時画像の明るさのヒストグラム表示は図6(d)のようになり、正常に形成されたパターンに相当するピーク608と導通不良パターンに相当するピーク607がはっきり分離した。このように導通不良部と正常部を明確に識別できる検査・帯電条件を、所望の帯電状態を形成できる条件であると判断して検査に適用することにする。なお、図6(a)と図6(c)とで導通不良パターンの位置が異なるのは、帯電の履歴を受けずに二度目の試し検査を行うために、一度目と二度目の試し検査の領域を変えたためである。
このように、調整により最適条件を見つけた後、オペレーターは画像表示装置230に表示された検査ボタンをクリックし、本検査を行う(ステップ413)。
以上は、同種のウェハが多数含まれるロットの一枚目のウェハを検査する際の手順であるが、同種のウェハを続けて検査する場合などは、検査条件の入力は省き、同一条件で繰り返し検査を行っても良い。また、適宜、光学調整、検出系調整を省けば、スループットの向上につながる。
なお、本実施形態においては、図3(a)に示したように表面電界制御電極を帯電制御用と検査用の二つに分離し、それぞれを別の電源に接続することにより、独立に電位を制御したが、より簡単には、図3(b)に示すように単一の表面電界制御電極215に帯電制御用の貫通孔と検査用の貫通孔を設けてもよい。この場合は、表面電界制御電極の電圧は単一の電圧として制御され、表面電界強度は貫通孔の径により決定される。即ち、帯電制御用一次ビームが通過する貫通孔301a、301cと検査用一次ビームが通過する貫通孔301bの大きさを異ならせしめることにより、表面電界制御電極が単一の電圧であっても、検査用一次ビームと帯電制御用一次ビームの照射位置の表面電界は異なる電界に制御することができる。その結果、帯電制御用一次ビームとウェハ216との相互作用により発生した二次荷電粒子218a、218cの一部をウェハ216に戻しつつ、検査用一次ビームとウェハ216との相互作用により発生した二次荷電粒子218bをウェハ216から離れる方向に進行させることもできる。この場合、検査用一次ビームと帯電制御用一次ビームの照射領域の表面電界強度は、一方が決定されれば表面電界制御電極の単一の電圧が決まり、その結果、他方は自動的に決定される。また、図3(c)に示すように、帯電制御用一次ビームと検査用一次ビームの双方が共通の貫通孔301を通過する場合でも、電極と両ビームの距離の差から生じる表面電界強度の差を利用すれば、帯電制御用一次ビームとウェハ216との相互作用により発生した二次荷電粒子218a、218cの一部をウェハ216に戻しつつ、検査用一次ビームとウェハ216との相互作用により発生した二次荷電粒子218bをウェハ216から離れる方向に進行させることができる。
また、図3(c)のように、帯電制御用一次ビームとウェハ216との相互作用により発生した二次荷電粒子218a、218cのうち一部が試料に戻されず、上方に向かって進行する場合であっても、検査用一次ビームとウェハ216との相互作用により発生した二次荷電粒子218bが対物レンズ212aおよび212bの集束作用等により充分に集束する位置に検出器221を設置すれば、帯電制御用一次ビームとウェハ216との相互作用により発生した二次荷電粒子と分離して、良好なS/N比で検出することが可能である。なお、図3(c)のように共通のビーム通過孔で検査用ビームと帯電用ビームを通す場合、帯電用ビームの照射位置を集束レンズ手段等の制御により変化させ、所望のビーム間距離に調製することも可能になる。これにより、帯電制御用ビームと検査用ビームの照射時間間隔も所望の時間間隔に制御することが可能になった。図3(a),(b)のようにビーム通過孔が個別に設置されていると、ビームはそれぞれの通過孔に対しほぼ中央を通るようにほぼ一義的にビーム間隔が決定してしまっていたため、このようなビーム間隔制御は図3(c)のビーム通過孔の場合の独自の効果である。
また、図3(a)においては、帯電制御用と検査用の二つの表面電界制御電極が同じ高さに設けられているが、異なる高さに設けても同様の効果を挙げることが出来る。
さらに、本実施形態においては、検査用一次ビーム1本に対して、帯電制御用のビームを2本設けたが、検査中ステージの移動方向が反転せずに一方向にのみ動く場合には、検査用一次ビームを1本にしても構わない。
電子線応用装置を用いて観察、計測、欠陥レビュー・分類、検査等の処理を実行するには、複数ビームの照射によって試料から放出される複数の二次荷電粒子を、照射されたビームに対応して分離検出することが必要である。ところが、帯電状態を制御するために、試料表面付近の電界を制御すると、試料上の複数箇所から発生した二次荷電粒子を分離して検出することが困難となる場合がある。一括結像方式とマルチカラム方式は長所も多いものの短所もある。一括結像方式の欠点は、スループットの向上限界が照射する面積ビームの面積によって決まるという点である。収差の少ない大面積のビームを形成するのは難しいため、スループットを劇的に向上するためには、面ビームの大面積化の点で何らかのブレークスルーが必要である。マルチカラム方式の欠点は、スループット向上限界が試料上に配置できる電子光学カラムの本数によって定まる点である。電子光学カラムの小型化には限界があり、従って試料上に配置できる光学カラムの数は劇的には増やせない。そこで、本発明においては、同一電子源で発生した電子線を複数に分割して試料に照射するマルチビーム方式を採用してスループット向上を図る。
実施例2においては、アパーチャーアレイを用いて一次ビームを3本に分割し、2本を帯電制御用、1本を検査用として用いた。その際、アパーチャーアレイの複数の開口の径を等しくさせることにより、3本の一次ビームにはほぼ等しい電流が与えられていた。しかしながら、この形態では、帯電制御用の一次ビームの照射量が充分でなく、ウェハが充分に帯電しない場合があった。
そこで、本実施例においては、帯電制御用の一次ビームの電流を大きくすることを試みた。図7は本発明の第3の実施例に係る電子線検査装置の概略構成を示す図である。本実施例においても、実施例2と同様に、アパーチャーアレイを用いて一次ビームを3本の一次ビーム203a、203b、203cに分割し、このうち203aおよび203cを帯電制御用一次ビーム、203bを検査用一次ビームとして用いる。
3本の一次ビーム203a、203b、203cの電流はアパーチャーアレイの開口径により決定される。本実施例においては、アパーチャーアレイ108の3つの開口のうち、帯電制御用一次ビーム203aおよび203cを形成する開口208a、208cの開口径を、実施例2に比べて大きくした。一方、検査用一次ビーム203bを形成する開口208bについては、レンズアレイ209および対物レンズ212a、212bの収差およびクーロン斥力を考慮した上で、実施例1と同様の開口径とした。これにより、検査用の一次ビームを充分に細く集束させつつ、ウェハ216を充分強く帯電させることが出来た。
実施例2においては、アパーチャーアレイを用いて一次ビームを3本の分割し、2本を帯電制御用、1本を検査用とした。その際、3本の一次ビームは共にウェハ上に集束され、ビーム径もほぼ等しかった。しかしながら、この形態では画像の中心と端とで画像の明るさおよび検査感度が不均一になる場合があった。
原因の一つとして、帯電量の不均一性が考えられる。図8を用いて説明する。図8(a)の左の図は、実施例2における、ウェハから見たビームの進行を示す概念図である。ウェハがステージと共に紙面右に進行するのに伴って、ウェハから見たビームが左に進行することを示している。紙面上下方向が偏向方向である。また図8(a)の右のグラフは、ストライプ内の帯電量分布を、帯電制御用一次ビーム203aが照射された直後と、帯電制御用一次ビームを照射してから0.1 secが経過した時について模式的に表したものである。
検査用一次ビーム203bがストライプ内を照射し、検査を行うのに先立ち、帯電制御用一次ビーム203aが同一ストライプ内を照射し、帯電制御を行っている。実施例2においては、帯電制御用一次ビーム203aが検査用一次ビームと同様にウェハ上に細く集束されていたため、帯電制御用一次ビームが照射された直後においては、帯電量分布は矩形分布に近いシャープな分布である。しかし、帯電制御用一次ビームを照射してから0.1 secが経過する間に、ストライプの端からは帯電がリークしてしまう。その結果、ストライプの中心に対してストライプの端では、帯電量が50 %まで低減してしまう。ここでは、一例として0.1sec後の帯電量を示したが、時間の経過とともにこのようなストライプ端部での帯電量の低下があるので、検査用一次ビームが照射するときにはストライプ内の帯電が不均一となっており、画像の中心と端部の画像の明るさ、検査感度の不均一性につながったと考えられる。
この問題を解決するために、本実施例においては、図9に示した概略構成図のように、検査用一次ビームと帯電制御用一次ビームの間で、試料面に対する焦点位置の高さ、即ち、試料面に垂直な方向における焦点位置をずらすことにより、ウェハ216面における帯電制御用一次ビームのビーム径を検査用一次ビームのビーム径よりも大きくする。即ち、帯電制御用一次ビームの第二の電子源像210a、210cが検査用一次ビームの第二の電子源像210bに比べてウェハ側に形成されるよう、レンズアレイ206の焦点距離を調整する。そのために、本実施例では、レンズアレイ206のレンズを検査用一次ビーム用のレンズと帯電制御用一次ビーム用のレンズとに分離して構成し、レンズ条件も独立に制御できるように構成した。これにより、検査用一次ビーム210bがウェハ216上に結像するよう調整された対物レンズ212a、212bは帯電制御用一次ビームをウェハ216上に結像させることが出来ず、ウェハ216上における帯電制御用一次ビーム218a、218cの径は、検査用一次ビーム218bの径に比べて大きくなる。
図8(b)は本実施例における、ウェハから見たビームの進行を示す概念図である。また図8(b)の右のグラフは、ストライプ内の帯電量分布を、帯電制御用一次ビーム203aが照射された直後と、帯電制御用一次ビームを照射してから0.1 secが経過した時について模式的に表したものである。検査用一次ビーム203bがストライプ内を照射し、検査を行うのに先立ち、帯電制御用一次ビーム203aが同一ストライプ内を照射し、帯電制御を行っている。本実施例においては、ストライプ内を照射する帯電制御用一次ビーム401がウェハ上に細く集束されていないため、帯電制御用一次ビームが照射された直後において、帯電量分布はなだらかな分布となる。帯電制御用一次ビームを照射してから0.1 secが経過する間に、リークにより帯電量分布はさらになだらかになるが、ストライプの中心に対するストライプの端における帯電量は78 %であり、図8(a)に示した実施例1の帯電量分布に比べて均一性が向上したと言える。
尚、本実施例においては、帯電制御用一次ビームの第二の電子源像210a、210cが検査用一次ビームの第二の電子源像210bに比べてウェハ側に形成されるようレンズアレイ209の焦点距離を調整したが、これとは逆に、帯電制御用一次ビームの第二の電子源像210a、210cを検査用一次ビームの第二の電子源像210bに比べてレンズアレイ側に形成されるようレンズアレイ106の焦点距離を調整しても同様の効果をあげることが出来る。また、図10の概略構成に示したように、帯電制御用一次ビーム203aおよび203cに対してレンズアレイ209を実質的に作用させないことによっても、同様の効果をあげることが出来る場合がある。さらに、帯電制御用一次ビームと検査用一次ビームが通過するレンズアレイ209の焦点距離が等しい場合でも、対物レンズ等の像面湾曲等の収差を利用すれば、ウェハ上における帯電制御用一次ビーム203a、203cの径を、検査用一次ビーム203bの径に比べて大きくすることが出来る場合がある。
一方、図11は帯電不均一性に対してさらに有効な効果を挙げる電子線検査装置の別の実施例における形態表面電界制御電極およびウェハを含む部分の拡大図である。図11でも、図3と同様に、表面電界制御電極のサイズをウェハに対して相対的に拡大して図示している。図11において、203bは検査用一次ビームであり、203aおよび203cはそれぞれ203bに対してステージの進行方向の前および後ろでウェハを照射する帯電制御用一次ビームである。一方、203dおよび203eもまた帯電制御用一次ビームであり、検査をしているストライプの(ステージの進行方向に対して)左側のストライプを照射する。また、図示していないが、ステージの進行方向に対して右側にも帯電制御用一次ビーム203fおよび203gが設けられている。この時のウェハから見た帯電制御用一次ビームと検査用一次ビームの進行を示す概念図、およびストライプ内の帯電量分布を図8(c)に示す。検査用一次ビーム203bがストライプ内を照射し、検査を行うのに先立ち、帯電制御用一次ビーム203aが同一ストライプ内を照射し、帯電制御を行っている。また、帯電制御用一次ビーム203dおよび203fがそれぞれ隣接するストライプを照射し、帯電制御を行っている。帯電制御用一次ビームが照射された直後における、帯電量分布は隣接したストライプをも覆う矩形分布である。このため、帯電制御用一次ビームを照射してから0.1 secが経過する間に、リークが発生しても、検査中のストライプについては、帯電量の減少はない。したがって、ストライプの中心に対するストライプの端における帯電量は100 %である。その結果、帯電不均一性に起因する画像の明るさ、検査感度の不均一性は大きく低減された。
実施例2では、アパーチャーアレイを用いて一次ビームを3本に分割し、2本を帯電制御用、1本を検査用とした。その際、ウェハ上の2本の帯電制御用一次ビームが照射される領域における表面電界強度は等しく設定された。しかしながら、この形態ではストライプ内で画像の明るさおよび検査感度が不均一になる場合があった。
原因の一つとして、帯電量の不均一性が考えられる。図12を用いて説明する。図12(a)は検査の順序を示す模式図であり、ウェハ上の検査するべき領域のうち、2ストライプ分を抽出した。検査の順序はストライプ1201、ストライプ1202の順である。ステージの進行方向はストライプ1201については右方向、ストライプ1202については左方向である。したがって、点線矢印で示したようにA地点、B地点、C地点、D地点の順に検査が行われる。
ストライプ内の帯電は以下のように変化する。ストライプ1201の検査においては、A地点からB地点まで順に、帯電制御用一次ビーム203a、検査用一次ビーム203b、帯電制御用一次ビーム203cが照射される。図2に示すように、実施例2では、帯電制御用一次ビーム203aおよび203cが照射される領域の表面電界強度は、単一の表面電位制御電極の部分電極215bによって制御されている。このため、帯電制御用一次ビーム203aを用いて例えばウェハを負に帯電させる場合、検査用一次ビーム203bによって検査された後、ウェハは再び帯電制御用一次ビーム203cの照射によって負に帯電する。この帯電は徐々に減衰する。減衰の速度は帯電量およびウェハの表面抵抗等によって決定される。
ストライプ1201の検査が終了すると、ステージの進行方向が反転し、隣接するストライプ1202のC地点からD地点までの順に検査が行われる。この時、例えば、ストライプ1201が著しく帯電していると、帯電により形成される電場が検査用一次ビーム203bの軌道を乱す場合がある。また、隣接するストライプ間で帯電がリークするため、検査領域の帯電量が変化する場合もある。このように、検査用一次ビームに隣接する領域の帯電状況が検査感度に影響を与える場合がある。
そこで、図12(a)に示した順序でストライプ1202の検査を行った場合に、検査用一次ビームに隣接するストライプ1201内の領域の帯電量について、C地点とD地点を比較する。ストライプ1201のB地点が帯電制御用一次ビーム203cによって負に帯電してからC地点の検査が行われるまでに経過する時間は、ストライプ1201のA地点が帯電制御用一次ビーム203cによって負に帯電してからD地点の検査が行われるまでに経過する時間に比べて長い。このため、帯電の減衰を考えると、図12(b)の帯電量の分布を示すグラフに示したように、C地点とD地点とでは、検査用一次ビームに隣接するストライプ1201内の領域の帯電量が異なる。図12(b)において、横軸はストライプ1202内の検査用一次ビームの位置、縦軸は検査用一次ビームに隣接したストライプ1201内の領域の帯電量である。これがストライプ内で画像の明るさおよび検査感度の不均一の原因と考えられる。
本実施例においては、表面電界制御電極を3つに分割することによって、この問題を解決する。図13は本実施例における電子線検査装置において表面電界制御電極およびウェハを含む部分の拡大図である。図13でも、図3と同様に、表面電界制御電極のサイズをウェハに対して相対的に拡大して図示している。表面電界制御電極は部分電極215a、215b、215cの3つに分割されており、それぞれ、表面電界制御電源219a、219b、219cにより独立に電位を与えられている。
この構成を用いてストライプ1201および1202の検査を行う場合ストライプ内の帯電は以下のように変化する。ストライプ1201の検査においては、A地点からB地点まで順に、帯電制御用一次ビーム203a、検査用一次ビーム203b、帯電制御用一次ビーム203cが照射される。帯電制御用一次ビーム203aおよび203cが照射される領域の表面電界強度は、独立に制御されている。このため、帯電制御用一次ビーム203aを用いて例えば二次荷電粒子218aをウェハ216に戻しウェハ216を負に帯電させる場合でも、検査用一次ビーム203bによって検査された後、帯電制御用一次ビーム203cによって二次荷電粒子218cのウェハ216への戻り量を調整し、ウェハ216の帯電量を所望の値に制御することができる。したがって、ストライプ1201の検査が終了し、隣接するストライプ1202のC地点からD地点までの順に検査が行う時、隣接するストライプ1201の帯電量は図12(c)に示すように一様にゼロにすることが出来る。これにより、ストライプ内で画像の明るさおよび検査感度を均一に保つことが出来る。
尚、ストライプ1202の検査に際しては、表面電界制御電極の部分電極215bおよび215cに印加される電圧を入れ替えることにより、帯電制御用一次ビーム203cを用いてウェハを負に帯電させ、検査用一次ビーム203bによって検査を行った後、帯電制御用一次ビーム203aによってウェハの帯電を除去させることができる。これにより、ストライプ1202についても検査後の帯電量を一様にすることが出来る。
実施例1から6では、一本の検査用一次ビームを備えたシングルビーム型の電子線検査装置において、検査用一次ビームを発生させる電子源を用いて、帯電制御用一次ビームをも形成することにより、ウェハ上において、検査用一次ビームと空間的に近い位置に帯電制御用一次ビームを照射し、帯電制御用一次ビームの照射によるウェハの帯電を検査用一次ビームによる検査まで充分保持させ、これにより高いコントラストの画像を形成し、欠陥検出の精度を向上させた。一方、本実施例では、実施例1から6と同様に一つの電子源から検査用と帯電制御用の複数のビームを引出すが、そのうち一本ではなく複数のビームを検査用ビームとして用いる構成とした。これにより、検査を同時並行で複数実施できるため、スループットの向上が図れる。その反面、実施例1から6では検査ビームは一本であったため、二次荷電粒子の分離の観点では、検査ビームによる二次荷電粒子と帯電制御用ビームによる二次荷電粒子という条件が大きく異なる二種類の電子を分離できればよかったが、本実施例では、検査ビームが複数になるので、同一の条件で制御する複数の検査ビームによる複数の二次荷電粒子が互いに混じり合わない状態となるように制御して分離検出するという新たな課題が生じる。
従来、スループットの向上を図るために提案された、マルチビーム型の電子線検査装置においては、複数の検査用ビームで検査すると同時に、検査用ビーム自身で試料の帯電も制御する必要があった。したがって、複数のビームが照射されることによって試料上の複数箇所から放出される複数の二次荷電粒子を分離して検出することが必要であった。更に、検査用一次ビーム自身で帯電状態を制御するために、試料に対向した電極を用いて試料から発生した二次電子の軌道を制御する必要もあった。その結果、複数の二次荷電粒子の分離検出が困難になる場合があった。特に、エネルギーの低い二次電子を試料に戻すための電界を発生させると、試料に戻らず検出されるべきエネルギーの高い二次電子の軌道もまた大きく乱されるため、試料上の複数箇所から発生した二次荷電粒子が互いに混ざりあい、分離して検出することが困難となる。即ち、従来の手法では、複数の検査用一次ビームを用いた帯電制御方法と二次電子の分離検出の両立が困難となる。なお、マルチビーム型の電子線検査装置において、検査ビーム自身で帯電を制御せず、ビーム光学系と別個に設けたフラッドガン等の手段で電子線を照射し帯電を制御することも可能である。しかし、この場合には、従来技術でも説明したように予備照射から検査用ビーム照射までに時間がかかってしまい、所望の帯電状態に制御することができないという問題がある。本発明では、マルチビームの一部を帯電制御に使うことで、この問題も解決する。
これに対して、実施例1から6と同様に、検査用一次ビームを発生させる電子源と同一の電子源から帯電制御用一次ビームをも引出し、これを用いて試料の帯電を制御する本実施例によれば、検査用一次ビームにより発生する二次荷電粒子については分離検出に適した条件、すなわち二次電子を電子銃方向へ引出す条件で制御することが可能になる。これにより、二次電子を試料の複数箇所から加速して引出し、それぞれ互いに混じり合わず局在した状態のまま電子銃側へ引出すことができる。したがって、後述する手法と構成により、複数の検査用一次ビームによる二次電子を分離して検出することが可能になる。これにより、複数の検査用一次ビームを有効に活用することでさらなる高スループットを図りつつ、帯電の制御と二次荷電粒子の分離検出が両立して、高いコントラストの画像を形成し、欠陥検出の精度を向上させることが出来る。
図14は、本実施例におけるマルチビーム型の電子線検査装置の概略図である。本実施例では、実施例2と概略同様の構成の検査装置により、10本の一次ビームを形成する。但し、10本のビームを形成するために、10個の開口を備えたアパーチャーアレイ208と、少なくとも10個のアインツェルレンズを形成するレンズアレイ209により、5本の検査用一次ビーム1401a、1401b、1401c、1401d、1401eと、5本の帯電制御用一次ビーム1401f、1401g、1401h、1401i、1401jを形成する。尚、図を簡単にするため、図14においては、5本の検査用一次ビームのうち、1401a、1401bのみを、5本の帯電制御用一次ビームのうち、1401f、1401gのみを図示している。
10本の一次ビームは、略同一方向に且つ略同一角度だけ偏向作用を受け、試料であるウェハ216上をラスタ走査する。図15は、本実施例におけるラスタ走査を説明する概念図である。5本の検査用一次ビーム1401a、1401b、1401c、1401d、1401eの照射領域と、5本の帯電制御用一次ビーム1401f、1401g、1401h、1401i、1401jが、ラスタ走査により、ストライプ内をラスタ走査する。ステージの進行方向に直角な軸に投影すると等間隔に配置された検査用一次ビーム1401a、1401b、1401c、1401d、1401eをウェハ上でラスタ走査することにより、ステージの移動に伴い、ストライプ内を余すところなくラスタ走査することが出来る。一方、帯電制御用一次ビーム1401f、1401g、1401h、1401i、1401jは、検査用一次ビームに先立ち、ストライプ内をラスタ走査し、帯電状態を制御する。
図16(a)は本実施例における表面電界制御電極215およびウェハ216を含む部分の拡大図である。表面電界制御電極215は二つの部分電極215aおよび215bに電気的に分離されている。それぞれの部分電極は、異なる電源によりウェハ216に対して電位差を独立に与えられる。部分電極215aには5本の検査用一次ビーム1401a、1401b、1401c、1401d、1401eが通過する単一の貫通孔が設けられている。一方、部分電極215bには帯電制御用一次ビーム1401f、1401g、1401h、1401i、1401jがそれぞれ通過する、5つの貫通孔が設けられている。それぞれのビームが照射される領域の表面電界強度は貫通孔の大きさと部分電極215aまたは215bに印加される電圧される電圧によって決まる。一方、図16(b)に示すように、帯電制御用一次ビーム1401f、1401g、1401h、1401i、1401jが共通に通過する貫通孔を設けても、同様の効果が挙げられる場合がある。さらに、図16(c) に示すように、表面電界制御電極を電気的に分離しなくても、同様の効果が挙げられる場合もある。即ち、単一の表面電界制御電極215に、5本の検査用一次ビーム1401a、1401b、1401c、1401d、1401eが通過する貫通孔と、5本の帯電制御用一次ビーム1401f、1401g、1401h、1401i、1401jが通過する貫通孔をそれぞれ設け、これら二つの貫通孔の径に差をつけることによって、検査用一次ビームが照射される領域と帯電制御用一次ビームが照射される領域の表面電界強度を変えることが出来る。
次に、図14を用いて5本の検査用一次ビーム1401a、1401b、1401c、1401d、1401eの検出方法を説明する。図を簡単にするため、図14では、5本の二次荷電粒子のうち、一次ビーム1401aの照射により発生した二次荷電粒子208a、および、一次ビーム1401bの照射により発生した二次荷電粒子208bのみを図示している。
本実施例においても実施例2と同様、ウェハ216には一次ビームを減速させるための負の電位が印加されている。これにより二次荷電粒子208aおよび208bは試料から離れる方向に加速され、対物レンズ208aおよび208bの集束作用を受けた後、ウィーンフィルター211により、一次ビームの軌道と分離される。さらに、検出器の前段に設けた二次荷電粒子集束用レンズ1402の集束作用により、二次荷電粒子はそれぞれ異なる方向へ軌道を曲げられ、検出器221aおよび221bにより分離して検出される。なお、複数の検査ビームによる二次電子を分離検出するには、基本的には、二次電子の電子銃方向への加速とウィーンフィルターによる偏向、および最適な位置に配置した複数の検出器を有して構成していればよい。しかし、実際には、これだけであると、二次荷電粒子が到達する位置は互いに接近してしまい、検出器の最適配置が困難であったり、光学条件の変化に対する尤度が不足したりするという問題が生じ、実質的には十分な分離検出が達成できない。そこで、本実施例では、さらに積極的に二次荷電粒子の到達位置を互いに大きく離して分離効果を上げるため、二次電子集束レンズをさらに設置している。これにより、検出器の最適配置が容易になり、光学条件の変化に対しても尤度が保たれるという効果が得られた。
図17は、第8の実施例に係る電子線検査装置の概略構成を示す図である。本実施例は、複数の検査用一次ビームと帯電制御用一次ビームを用いる検査装置であって、ビーム選択マスクとビーム選択ステージを新たに備えることによって所望のビームを照射させることを可能にしたものである。電子銃部201、コンデンサーレンズ207は実施例2、実施例7と同様であるので説明を省略する。なお、本実施例では、一つの電子源から複数の検査用、および帯電制御用一次電子ビームを分離して試料に照射させる構成とは別に、別個の電子源を設けて試料に照射させるフラッドガン1704を設置している。このフラッドガン1704は、帯電制御用一次ビームとは別に試料の帯電を制御する目的で設置している。フラッドガンの動作については後述する。
本実施例では、同一基板に開口を二次元に配列したアパーチャーアレイ208を設置して、一次ビーム203を20本の一次ビームに分割する。このうち4本は検査用一次ビーム、16本は帯電制御用一次ビームである。即ち、検査用一次ビーム1本が照射される領域に対して、4本の帯電制御用一次ビームが帯電制御を行う。図17においては簡単のため、4本の検査用一次ビームのうち1本のみを1701aの符号で図示する。また、16本は帯電制御用一次ビームのうち、1701aに対応する4本のみを、1701b、1701c、1701d、1701eの符号で図示する。1702はビーム選択マスクであり、複数のパターンの開口を有する。すなわち、ビーム選択マスク1702には、選択したいビームの組み合せの数だけ異なる開口パターンを形成してある。ビーム選択ステージ1703はシステム制御部224の制御により移動し、ビーム選択マスク1702に設けられた開口パターンのうち所望の開口パターンを用いて、20本の一次ビームのうち、所望のビームだけを遮断する。
図18は一次ビームとビーム選択マスクの開口の関係を示す模式図である。斜線で示された一次ビームのうち左の4本が検査用一次ビーム、残りの16本は帯電制御用一次ビームである。検査用一次ビーム1本に対して4本の帯電制御用一次ビームが配置されている。即ち、検査用一次ビーム1701aに対しては、帯電制御用一次ビーム1701b、1701c、1701d、1701eが配置されている。
図18(a)においては、ビーム選択マスク1702は20本の検査用一次ビームを全て通過させる。即ち、検査用一次ビーム用開口1801aに4本の検査用一次ビームが、帯電制御用一次ビーム用開口1801b、1801c、1801d、1801eにはそれぞれ4本ずつの帯電制御用一次ビームが通過すする。これに対して、図18(b)においては、ビーム選択マスク1702は20本の検査用一次ビームのうち12本を通過させる。即ち、検査用一次ビーム4本と、帯電制御用一次ビーム8本を通過させる。図18(c)においても、ビーム選択マスク1702は検査用一次ビーム4本と、帯電制御用一次ビーム8本を通過させる。但し、図18(b)と(c)とでは、通過させるビームが異なる。即ち、図18(b)においては、帯電制御用一次ビーム1701b、1701c、1701d、1701eのうち、検査用一次ビーム1701aから遠い帯電制御用一次ビーム1701dおよび1701eを通過させるのに対して、図18(c)においては、帯電制御用一次ビーム1701b、1701c、1701d、1701eのうち、検査用一次ビーム1701aに近い帯電制御用一次ビーム1701bおよび1701cを通過させる。このように通過させる帯電制御用一次ビームの数または位置を変化させることによって得られる効果については後で述べる。
ビーム選択マスク1702を通過した一次ビームはレンズアレイ209によって個別に集束された後、対物レンズ212aおよび212bにより、ウェハ216上に縮小投影される。ウェハ216にはリターディング電源220により負の電位が印加されている。したがって、これと接地電位に接続された接地電極214の間には一次ビームを減速させる電界が形成されている。215は表面電界制御電極、表面電界制御電源219a、219bは表面電界制御電極215に接続された電源である。
図19は図17の電子線検査装置において表面電界制御電極215およびウェハ216を含む部分の拡大図である。本実施例においては、一枚の表面電界制御電極に検査用一次ビームが通過するための1つの開口と、帯電制御用一次ビームが通過するための16個の開口が設けられている。図19(a)は図18(a)に対応する図であって、4本の検査用一次ビームと16本の帯電制御用一次ビームが全てビーム選択マスク1702を通過し、ウェハ216上に照射されていることを示す。帯電制御用一次ビームの電流が1本あたりおよそ500 nAとすると、1本の検査用一次ビームが照射される領域の帯電制御を行う帯電制御用一次ビームの電流は2 mAとなる。
これに対して図19(b)は図18(b)に対応する図であって、1本の検査用一次ビームが照射される領域の帯電制御を行う4本の帯電制御用一次ビームのうち、検査用一次ビームから遠い2本がビーム選択マスク1702を通過し、ウェハ216上に照射されていることを示す。したがって、1本の検査用一次ビームが照射される領域の帯電制御を行う帯電制御用一次ビームの電流は図19(a)の半分の1 mAである。一方、検査用一次ビームと帯電制御用の距離はLbである。従って、ステージ速度をvとすると、帯電制御用一次ビームが照射されてから、検査用一次ビームにより検査が行われるまでの時間的な間隔、即ちインターバルTbはLb/vで表される。この式から、ステージ速度vをかえればインターバルTbを変化させることができるのはもちろんのことであるが、ステージ速度vは他の要因、すなわち検査用ビームの画像形成のタイミングや照射領域の広さ等の条件から決まっている場合が多い。しかし、本実施例であれば、次のようにステージ速度以外からもインターバル時間を制御することが可能である。上述の制御は、システム制御部224により実行される。
図19(c)は図18(c)に対応する図であって、1本の検査用一次ビームが照射される領域の帯電制御を行う4本の帯電制御用一次ビームのうち、検査用一次ビームに近い2本がビーム選択マスク1702を通過し、ウェハ216上に照射されていることを示す。したがって、1本の検査用一次ビームが照射される領域の帯電制御を行う帯電制御用一次ビームの電流は図19(b)と同じく1 mAであるが、検査用一次ビームと帯電制御用の距離はLbより短いLcである。従って、ステージ速度をvとすると、帯電制御用一次ビームが照射されてから、検査用一次ビームにより検査が行われるまでのインターバルTcはLc/vであり、Tb > Tcである。
このように、ビーム選択マスク1702を用いて帯電制御用一次ビームを選択することによって、帯電制御用一次ビームの電流や帯電制御用一次ビームが照射されてから、検査用一次ビームにより検査が行われるまでの時間を制御することができる。したがって、ウェハ表面の膜の材質や厚さ、ウェハの抵抗などによって、条件を変えた検査が可能となる。
次に本実施例において帯電制御用一次ビームを選択する手順を図20、図21を用いて説明する。本手順は、検査全体のフロー(例えば実施例2の検査手順フロー(図4))における検査条件入力(図4の409)の中で帯電制御条件を設定する部分に相当する。それ以外の手順は他の実施例の検査フローと同様であるので説明を省略する。図20は手順を示したフローチャートであり、図21は図5の検査条件設定画面において、帯電制御条件指定タブ514をクリックすることにより表示される画面である。オペレーターはこの画面を用いて、帯電制御条件を入力する(ステップ2001)。ファイル設定ボックス2101を通じて既に作成した帯電制御条件ファイルを読み出すか、フラッドガン照射条件設定部2102、帯電制御ビーム設定部2103を通じて帯電制御条件を直接入力する。フラッドガン照射条件設定部2102では図17におけるフラッドガン1704の照射条件を決定する。ウェハのロード後、検査に先立ちフラッドガン1704を用いてウェハ216を照射するかしないかを、ONまたはOFFのラジオボタンで選択し、さらに、照射する場合は、フラッドガンからウェハ216に照射されるビームの入射エネルギー、位置、照射量等を入力する。帯電制御ビーム設定部2103では、帯電制御用一次ビームを選択するための条件を入力する。自動設定用フィールド2104と手動設定用フィールド2105とが設けられている。
まず、オペレーターがラジオボタンにより自動設定フィールドを選択した場合について説明する。オペレーターが電流設定ボックス2105、インターバル設定ボックス2107を入力すると、システム制御部214はステージの速度を読み出し(ステップ2004)、各帯電制御用一次ビームと検査用一次ビームの距離から各帯電制御用一次ビームと検査用一次ビームの時間的な間隔(インターバル)を計算した上で、オペレーターが入力した条件に最も近くなるための帯電制御用一次ビームの組合せを選択する(ステップ2005)。そして選択ステージに設けられた開口の位置・形状の情報を元に、選択ステージの最適な位置を決定する(ステップ2006)。オペレーターが選択ステージ移動ボタン2108をクリックすると、ビーム選択ステージ1703はシステム制御部214からの信号を受け、所望の一次ビームのみをウェハ上まで通過させるべく、移動する(ステップ2007)。
次に、ステージ上に設けられたファラデーカップ(図示せず)を用いて、検査用一次ビームとウェハ上まで到達しているべき帯電制御用一次ビームの電流が計測される(ステップ2008)。電流が不足していると判断された場合(ステップ2009)は、ビーム選択ステージが正しく動いていない可能性があるため、ビーム選択ステージを初期化し(ステップ2010)、再度、ステップ2007に戻る。またはアライナー(図示せず)によって、一次ビームのアライメントの調整を行う。ステップ2009において、電流が充分であると判断された場合は帯電制御用一次ビームの選択を終了する。
尚、電界強度設定ボックス2106は、帯電制御用一次ビームが照射される領域の表面電界強度を設定するためのボックスであり、ここに入力された値を元に、表面電界制御電極の部分電極215bに印加される電圧が決定される。
入力した条件を元に自動的に帯電制御用一次ビームを選択する自動設定フィールド2104に対して、手動設定用フィールド2105は、オペレーターが直接帯電制御用一次ビームを選択するためのフィールドである。ラジオボタンにより手動設定用フィールド2105を選択すると、4本の帯電制御用一次ビームのそれぞれについて、電流および検査用一次ビームとのインターバルが表示され、オペレーターはラジオボタンにより、それぞれの照射または非照射を決定することが出来る。
図22は、実施例8と効果がほぼ同じ電子線検査装置の別構成例を示す図である。図17と同様に4本の検査用一次ビームと16本の帯電制御用一次ビームが形成される。2201は基板上に個別に駆動可能な静電偏向器型のブランカーが二次元的に形成されたブランカーアレイである。対応する電子ビームをウェハ216上に照射するかしないかを個別に制御する。即ち、ブランカーにより進行方向を曲げられた電子ビームはブランキング絞り2202によって遮断され、ウェハ216上には到達しない。一方、ブランカーにより偏向されないビームは、ブランキング絞り2202の開口を通過し、ウェハ216上に到達する。このようにブランカーアレイを用いても、所望の帯電制御用一次ビームを選択することが出来るので、帯電制御用一次ビームの電流や帯電制御用一次ビームが照射されてから、検査用一次ビームにより検査が行われるまでの時間を制御することができる。
さらに図23は、帯電制御用一次ビームの電流や帯電制御用一次ビームが照射されてから、検査用一次ビームにより検査が行われるまでの時間を制御することが可能な、別の実施例における電子線検査装置の概略構成を示す図である。本実施例では、帯電制御用ビームの試料への照射位置を制御することにより帯電制御ビームと検査ビームの照射する時間を制御している。4本の検査用一次ビームと16本の(?)帯電制御用一次ビームが形成されるが、ここではそれぞれ検査用一次ビーム2301aと帯電制御用一次ビーム2301bの1本ずつが図示されている。2302はアライナーであり、帯電制御用一次ビーム2301bの進行方向を曲げるためのものである。この図では図示しなかった他の帯電制御用一次ビームに対しても同様に作用する。このアライナーを用いることにより、ウェハ216上での帯電制御用一次ビームの位置を所望の位置に調整することができるので、帯電制御用一次ビーム2301bが照射されてから、検査用一次ビーム2301aにより検査が行われるまでの時間を制御することができる。これにより、検査ビーム照射時の試料の帯電状態を最適に制御することが可能になった。
実施例11では、ビーム選択マスクとビーム選択ステージを用いた電子線検査装置の別構成例について説明する。本実施例は、径の異なる複数の貫通孔を有する表面電解制御電極を併せ持ち、所望の孔を通過する帯電制御ビームをビーム選択マスクと選択ステージで選択するものである。これにより、帯電制御をさらに細かく調整でき、より高い精度で所望の帯電状態に近い帯電制御を実現することができた。
本実施例ではアパーチャーアレイとレンズアレイによって4本の検査用一次ビーム2と8本の検査用一次ビームが形成されている。
図24(a)は本発明の第11の実施例における電子線検査装置において表面電界制御電極およびウェハを含む部分の拡大図である。その他の部分の装置構成については、図17に示した装置の全体構成図と同じものとする。
ウェハに対向して設置された表面電界制御電極215には3つの貫通孔2402a、2402b、2402cが設けられている。検査用一次ビーム2401a、2401b、2401c、2401dは貫通孔2402aを、帯電制御用ビーム2401e、2401f、2401g、2401hは貫通孔2402bを、帯電制御用一次ビーム2401i、2401j、2401k、2401lは貫通孔2402cを通過するよう貫通孔の位置が決められている。
貫通孔の直径は、貫通孔2402aが最も大きく、貫通孔2402b、貫通孔2402cの順に小さくなる。図25は貫通孔の直径と表面電界強度の関係を示すグラフである。表面電界の向きはウェハ上方を正と定義している。表面電界制御電極215に印加する電圧が0 V、即ち表面電界制御電極215がウェハ216と同電位である時、リターディング電源によりウェハに印加された負の電圧と表面電界制御電極よりも電子銃側にある接地電極との電圧関係から、貫通孔の直径に依らず、表面電界強度は正である。但し、貫通孔の直径が小さいほど0に近づく。表面電界制御電極215に印加する電圧が-50 Vの時、直径の小さい貫通孔ほど表面電界制御電極215の影響が大きいため、貫通孔2402cの領域では表面電界強度は負になる。すなわち、試料から発生した二次荷電粒子を試料に戻す電界が形成される。一方、貫通孔2402aより直径の大きい貫通孔2402bの領域では、表面電界強度はほぼ0であり、さらに直径の大きい貫通孔2402cの領域では、表面電界強度は正である。
本実施例では、貫通孔の直径の差による表面電界強度の差を利用して、所望の表面電解郷土を形成する貫通孔を通過するビームを選択するように制御する。そのために、実施例8と同様のビーム選択マスクとビーム選択ステージを用いる。即ち、オペレーターが入力した表面電界強度を元に、所望の表面電界強度を実現する貫通孔を通過し試料に照射するべき帯電制御ビームを制御部が自動的に選択し、不要な帯電制御用一次ビームを試料に対して遮断する。この制御は制御部が自動的に行ってもよいし、オペレーターが選ぶようにボタンを表示する構成であってもよい。これにより、所望の帯電制御状態を形成することが出来る。
尚、本実施例においては、直径の異なる二つの円形の貫通孔に帯電制御用一次ビームを通過させることにより、二種類の表面電界強度を形成したが、これと同様の効果を挙げる方法として、単一の開口内でも位置によって表面電界強度が異なることを利用することも出来る。即ち、例えば図24(b)に示したように、台形の開口2402dを用いることにより、単一の開口で、異なる表面電界強度を形成することが出来る。
また、帯電制御用一次ビームの選択を行わない場合でも、表面電界制御電極をウェハ面に対して平行に移動できる機構を設ければ、表面電界強度の異なる帯電制御用一次ビームを形成させることが出来る。
(a)〜(d)本発明の第1の実施例を説明する電子線検査装置の概略構成を示す図。(e)検査用一次ビームと帯電制御用一次ビームと表面電位の関係を示すタイムチャート。
第2の実施例の電子線検査装置の概略構成図。
(a)(b)(c)図2の電子線検査装置における表面電界制御電極およびウェハ近傍の拡大図。
実施例2における検査を行う手順を示したフローチャート。
実施例2における検査条件設定画面。
(a) 試し検査により得られた画像の一例。(b)画像の明るさのヒストグラム表示。(c) 試し検査により得られた画像の一例。(d) 画像の明るさのヒストグラム表示。
第3の実施例の電子線検査装置の概略構成図。
(a) (a)(b)(c)ビームの走査領域と帯電量分布の対応を示す図。
第4の実施例の電子線検査装置の概略構成図。
第4の実施例の電子線検査装置の別構成例。
第5の実施例の電子線検査装置の表面電界制御電極およびウェハ近傍の拡大図。
(a)検査の順序を示す模式図。(b)帯電量の分布を示すグラフ。(c)実施例6における帯電量の分布を示すグラフ。
本発明の第6の実施例の電子線検査装置の表面電界制御電極およびウェハ近傍の拡大図。
本発明の第7の実施例の電子線検査装置の概略構成図。
実施例7におけるラスタ走査を説明する概念図。
(a) 実施例7(図15)の電子線検査装置における表面電界制御電極およびウェハを含む部分の拡大図。(b) 実施例7の別の形態を説明する表面電界制御電極およびウェハを含む部分の拡大図。(c) 実施例7の別の形態を説明する表面電界制御電極およびウェハを含む部分の拡大図。
第8の実施例を説明するマルチビーム型の電子線検査装置の概略図。
第8の実施例における一次ビームとビーム選択マスクの開口の関係を示す模式図。
第8の実施例における表面電界制御電極およびウェハを含む部分の拡大図。
第8の実施例における帯電制御用一次ビームの選択手順を示したフローチャート。
第8の実施例における検査条件設定画面。
第9の実施例の電子線検査装置の概略構成図。
第10の実施例の電子線検査装置の概略構成図。
(a)本発明の第11の実施例を説明する電子線検査装置の表面電界制御電極およびウェハを含む部分の拡大図。(b) 本発明の第11の実施例の別の形態を説明する電子線検査装置の表面電界制御電極およびウェハを含む部分の拡大図。
第11の実施例における貫通孔の直径と表面電界強度の関係を示すグラフ。
符号の説明
101―電子源、102―一次ビーム、102a―検査用一次ビーム、102b―帯電制御用一次ビーム、103―コンデンサーレンズ、104―アパーチャーアレイ、105―レンズアレイ、106a―対物レンズ、106b―対物レンズ、107―偏向器、108―試料、109―ステージ、110a―二次荷電粒子、110b―二次荷電粒子、111―コレクター電極、112―電源、113―検出器、114―回転コイル、115―フィルター電極、116―電源、117―電源、118―接地電極、119―ウィーンフィルター、201―電子銃、202―電子源、203―一次ビーム、203a―帯電制御用一次ビーム、203b―検査用一次ビーム、203c―帯電制御用一次ビーム、204―電磁レンズ、205―陽極、206―第一の電子源像、207―コンデンサーレンズ、208―アパーチャーアレイ、209―レンズアレイ、210a―第二の電子源像、210b―第二の電子源像、210c―第二の電子源像、211―ウィーンフィルター、212a―対物レンズ、212b―対物レンズ、213―偏向器、214―接地電極、215―表面電界制御電極、215a―部分電極、215b―部分電極、215c―部分電極、216―ウェハ、217―ステージ、218a―二次荷電粒子、218b―二次荷電粒子、218c―二次荷電粒子、219a―表面電界制御電源、219b―表面電界制御電源、219c―表面電界制御電源、220―リターディング電源、221―検出器、222―増幅回路、223―A/D変換機、224―システム制御部、225―記憶装置、226―演算部、227―欠陥判定部、228―走査信号発生装置、229―ステージ制御装置、230―画像表示装置、231―光学系制御回路、232−基準マーク、233−ファラデーカップ、301―貫通孔、301a―貫通孔、301b―貫通孔、301c―貫通孔、501―ウェハ指定タブ、502―光学条件指定タブ、503―ファイル指定ボックス、504―入射エネルギー設定ボックス、505―電流設定ボックス、506―表面電界強度設定ボックス、507―光学パラメータ表示部、508―調整ボタン、509―適用ボタン、510―保存ボタン、511―別名で保存ボタン、512―走査条件タブ、513―帯電制御タブ、514―画像処理条件、601―正常に形成されたパターン、602―導通不良パターン、603―正常に形成されたパターンに相当するピーク、604―導通不良パターンに相当するピーク、605―正常に形成されたパターン、606―導通不良パターン、607―正常に形成されたパターンに相当するピーク、608―導通不良パターンに相当するピーク、1201―ストライプ、1202―ストライプ、1401a―検査用一次ビーム、1401b―検査用一次ビーム、1401c―検査用一次ビーム、1401d―検査用一次ビーム、1401e―検査用一次ビーム、1401f―帯電制御用一次ビーム、1401g―帯電制御用一次ビーム、1401h―帯電制御用一次ビーム、1401i―帯電制御用一次ビーム、1401j―帯電制御用一次ビーム、1402―二次荷電粒子集束用レンズ、1701a―検査用一次ビーム、1701b―帯電制御用一次ビーム、1701c―帯電制御用一次ビーム、1701d―帯電制御用一次ビーム、1701e―帯電制御用一次ビーム、1702―ビーム選択マスク、1703―ビーム選択ステージ、1704―フラッドガン、1801a―検査用一次ビーム用開口、1801b―帯電制御用一次ビーム用開口、1801c―帯電制御用一次ビーム用開口、1801d―帯電制御用一次ビーム用開口、1801e―帯電制御用一次ビーム用開口、2101―ファイル設定ボックス、2102―フラッドガン照射条件設定部、2103―帯電制御ビーム設定部、2104―自動設定用フィールド、2105―手動設定用フィールド、2105―電流設定ボックス、2106―電界強度設定ボックス、2107―インターバル設定ボックス、2108―選択ステージ移動ボタン、2201―ブランカーアレイ、2202―ブランキング絞り、2301a―検査用一次ビーム、2301b―帯電制御用一次ビーム、2302―アライナー、2401a―検査用一次ビーム、2401b―検査用一次ビーム、2401c―検査用一次ビーム、2401d―検査用一次ビーム、2401e―帯電制御用一次ビーム、2401f―帯電制御用一次ビーム、2401g―帯電制御用一次ビーム、2401h―帯電制御用一次ビーム、2401i―帯電制御用一次ビーム、2401j―帯電制御用一次ビーム、2401k―帯電制御用一次ビーム、2401l―帯電制御用一次ビーム、2402a―貫通孔、2402b―貫通孔、2402c―貫通孔、2402d―貫通孔。