JP2008159533A - リチウム二次電池用電極及びその製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池用電極及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Liと合金化しない金属に主としてFeを用い、充放電に伴う電池容量の低下を抑制することができるリチウム二次電池用電極とその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のリチウム二次電池用電極は、集電体と、この集電体上に形成される活物質薄膜とを備え、この活物質薄膜がLiを吸蔵・放出する活物質を含有する。この活物質薄膜は、Liを吸蔵・放出する活物質以外の含有元素が実質的にFeとNiとから構成される。そして、活物質薄膜に含有するFeとNiの濃度は、各々質量%で10%<Fe<30%、1%<Ni<4%の範囲を満たす。
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウム二次電池用電極及びその製造方法に関するものである。特に、充放電に伴う電池容量の低下を抑制することができるリチウム二次電池用電極及びその製造方法に関するものである。
リチウム二次電池は、長寿命・高効率・高容量であり、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの電源としてその需要は益々拡大している。そして、リチウム二次電池のさらなる高性能化を目指して、活物質や集電体の研究開発が活発に行われている。
リチウム二次電池は、正極と負極との間でLiイオンをやり取りすることによって、充放電が行われる。最近では、このリチウム二次電池の活物質にLiを吸蔵して合金化するシリコン(Si)やスズ(Sn)等を用いることが提案されている。具体的には、このような活物質を薄膜として集電体上に形成し、この薄膜にLiを吸蔵・放出させることで電池の充放電を行うようにする。しかし、このような活物質は充放電の際にLiの吸蔵・放出に伴い体積が膨張・収縮し、薄膜自身の体積変化により薄膜が集電体から剥離するという問題があった。このような電極を用いたリチウム二次電池は、充放電の繰り返しに伴い電池容量が低下してしまうので、良好な充放電サイクル特性が得られなかった。
この膨張・収縮を抑制するために、例えば特許文献1に記載のリチウム二次電池用電極が提案されている。このリチウム二次電池用電極は、Liと合金化する金属(Sn)と、Liと合金化しない金属(Co、Ni、Fe等)とからなる合金薄膜(Sn-Co合金等)が集電体上に形成されている。また、この合金薄膜は、電解メッキ法を用いて集電体上に形成する。この特許文献1によれば、特にLiと合金化しない金属にCo又はNiを用いること、つまりSn-Co合金薄膜、Sn-Ni合金薄膜、Sn-Ni-Co合金薄膜が形成された電極が良好な充放電サイクル特性を有することが示されている。
特開2002−373647号公報
しかし、特許文献1に示されるように、Liと合金化しない金属に安価なFeのみを用いたSn-Fe合金の場合、合金薄膜の膨張・収縮を十分に抑制することができず、電池の容量維持率を十分に維持できていない。また、Feと比較して高価なCo又はNiを用いた上記合金薄膜では、Co又はNiを合わせて20質量%程度含有する必要があり、リチウム二次電池用電極のコストを低く抑えることが難しい。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、Liと合金化しない金属に主としてFeを用い、充放電に伴う電池容量の低下を抑制することができるリチウム二次電池用電極を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、Liと合金化しない金属に主としてFeを用いて、充放電に伴う電池容量の低下を抑制することができるリチウム二次電池用電極の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、活物質薄膜に含まれる活物質以外の物質の主成分をFeとする活物質薄膜を集電体上に形成して、種々のリチウム二次電池用電極を作製し、各電極の性能評価を行った。その結果、本発明者らは、活物質薄膜の構成元素のうち、活物質以外の含有元素を実質的にFeとNiに限定し、その活物質薄膜に含有されるFe、Niの濃度を各々規定することで、Feのみを含有元素とする場合に比較して、充放電に伴う電池容量の低下を効果的に抑制できるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
本発明のリチウム二次電池用電極は、集電体と、この集電体上に形成される活物質薄膜とを備え、この活物質薄膜がLiを吸蔵・放出する活物質を含有する構造である。この活物質薄膜は、Liを吸蔵・放出する活物質以外の含有元素が実質的にFeとNiとから構成される。そして、活物質薄膜に含有するFeとNiの濃度は、各々質量%で10%<Fe<30%、1%<Ni<4%の範囲を満たすことを特徴とする。
Fe、NiはいずれもLiと合金化しない金属であり、充放電の際に実質的に膨張・収縮することがない。活物質薄膜がこのような金属を含有することで、Liの吸蔵・放出に伴う活物質薄膜の膨張・収縮程度が緩和され、活物質薄膜が集電体から剥離することを抑制することができる。特に、活物質薄膜に含有するFe、Niの濃度が各々上記に規定する範囲を満たす場合、十分な電池容量を有しかつ良好な充放電サイクル特性を有するリチウム二次電池用電極を得ることができる。
本発明電極の一形態としては、Liを吸蔵・放出する活物質としてSiを用いることが好ましい。
シリコン(Si)はリチウムを吸蔵・離脱する能力がグラファイト(黒鉛)よりも大きく電池のエネルギー密度を高くすることができる。
一方、本発明のリチウム二次電池用電極の製造方法は、集電体上に、Liを吸蔵・放出する活物質が含有される活物質薄膜を形成するリチウム二次電池用電極の製造方法であって、以下の構成を具えることを特徴とする。
Niの濃度が質量%で40%<Ni<45%の範囲を満たし、残部が実質的にFeであるFe-Ni合金を用意する準備工程。
Fe-Ni合金の配合割合が、質量%で20%<Fe-Ni合金<50%となるように、前記活物質と前記Fe-Ni合金とを混合する混合工程。
この混合工程により得られた材料を原料として、気相法により集電体上に活物質薄膜を形成する成膜工程。
この構成によれば、集電体上に形成される活物質薄膜に含有するFe、Niの各々の濃度が、質量%で10%<Fe<30%、1%<Ni<4%の範囲を満たすリチウム二次電池用電極を作製することができる。
また、本発明製造方法の一形態としては、Liを吸蔵・放出する活物質としてSiを用いることが好ましい。
シリコン(Si)はリチウムを吸蔵・離脱する能力がグラファイト(黒鉛)よりも大きく電池のエネルギー密度を高くすることができる。
本発明のリチウム二次電池用電極は、Liの吸蔵・放出に伴う活物質薄膜の膨張・収縮程度を緩和して、充放電の際に活物質薄膜が集電体から剥離することを抑制することができる。また、Liと合金化しない金属にはFeを主に用いており、リチウム二次電池用電極のコストを低く抑えることができる。
そして、本発明の製造方法を利用すれば、充放電の際に活物質薄膜が集電体から剥離し難く、十分な電池容量を有しかつ充放電に伴う電池容量の低下を抑制することができるリチウム二次電池用電極を作製することができる。
以下、本発明の構成をより詳しく説明する。
[電池の基本構成]
本発明電極で構成される電池は、リチウムイオン電池として好適に利用でき、正極層、負極層、電解質層、正極集電体、負極集電体を備えることを基本構成とする。通常、いずれの層も薄膜状に形成されている。このうち、正極層と負極層は、電池を平面視した場合に、互いに重複する箇所がある積層構造の場合でもよいし、重複する箇所がない構造でもよい。前者の場合、電池の面積を小さくしやすく、後者の場合、電解質層の厚さ方向にピンホールが生じていても、両電極層間の短絡が抑制しやすい。電池を平面視した場合、両電極層に重複する箇所がない電極の構成としては、正極層と負極層とを各々櫛歯状に形成して、互いに嵌め合わされるように並列することが挙げられる。
(正極層)
<材質>
正極層は、イオンの吸蔵及び放出を行う活物質を含む層で構成する。リチウムイオン電池の場合、正極層は、酸化物、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)及びオリビン型鉄リン酸リチウム(LiFePO4)よりなる群より選ばれる1つ、若しくはこれらの混合物を好適に使用することができる。また、正極層は、硫化物、例えばイオウ(S)、硫化リチウム及び硫化チタニウム(TiS2)よりなる群より選ばれる1つ、若しくはこれらの混合物であっても良い。その他、正極層の材料としては、銅−リチウム酸化物(Li2CuO2)、あるいはLiV3O3、V2O、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物が挙げられる。上述した酸化物は、いずれも半田リフロー時の加熱温度(200〜250℃程度)に対して耐熱性を備えている。正極層の厚みは、10〜300μm程度が好適である。より好ましい正極層の厚みは100μm以下、さらに好ましい正極層の厚みは30μm以下である。
<正極層の形成方法>
正極層の形成方法としは、湿式法や乾式法を利用することができる。湿式法には、ゾルゲル法、コロイド法、キャスティング法等が挙げられる。乾式法には、気相堆積法である蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、レーザアブレーション法等が挙げられる。
(負極層)
<材質>
負極層は、Liイオンの吸蔵及び放出を行う活物質、FeおよびNiで実質的に構成する。Liを吸蔵・放出する活物質としては、例えばLiと合金化する金属が好適である。より具体的には、Si、Sn、Ge、Al、Pb、Bi、Zn、In等が挙げられる。特にSiが好適に利用できる。また、活物質以外の負極層の構成元素をFeとNiで構成し、かつFeを構成元素の主成分とすることで、高価な元素の添加量を極力少なくすることができる。
ここで、活物質薄膜に含有するFeとNiの濃度は、各々質量%で10%<Fe<30%、1%<Ni<4%の範囲を満たすようにする。Fe、Niの濃度が各々上記に規定する下限値未満の場合には、充放電の際に活物質薄膜の膨張・収縮を十分に緩和することができない。逆に、上限値を超える場合には、活物質の濃度が相対的に低くなるため、電池容量の低下が顕著となり好ましくない。さらに、活物質薄膜に含有するFeとNiの合計の濃度は、質量%で12〜33%の範囲を満たすようにすることが好ましく、より好ましくは14〜28%の範囲を満たすようにする。
このようなFeとNiの濃度を持つ活物質薄膜は、Niの濃度が質量%で40%<Ni<45%の範囲を満たし、残部が実質的にFeであるFe-Ni合金を用いる。そして、Fe-Ni合金の配合割合が、質量%で20%<Fe-Ni合金<50%となるように、活物質とFe-Ni合金とを混合して薄膜原料を調整することで容易に得られる。
負極層の厚みは、0.5〜80μm程度が好適である。より好ましい負極層の厚みは1〜40μmである。
上述した合金からなる負極層は、別途集電体を設けてもよいことはもちろん、負極層自体に集電体としての機能を持たせることができ、かつリチウムイオンの吸蔵・放出能力が高く好ましい。特に、シリコン(Si)はリチウムを吸蔵・離脱する能力がグラファイト(黒鉛)よりも大きくエネルギー密度を高くすることができる。
<負極層の形成方法>
負極層の形成方法は、気相堆積法が好ましい。気相堆積法としては、例えば、PVD(物理的気相合成)法やCVD(化学的気相合成)法が挙げられる。具体的には、PVD法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法が、CVD法としては、熱CVD法、プラズマCVD法などが挙げられる。中でも真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法が好適に利用できる。気相法を用いることで、集電体との密着性が良好であると共に均質な活物質薄膜を形成することができる。また、薄膜原料を集電体上に成膜する際の雰囲気ガスとしては、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)といった不活性ガスが好適に利用できる。
(電解質層)
<材質>
電解質層にはイオン伝導性があり、電子伝導性が無視できるほど小さい材料を用いる。リチウムイオン電池用の電解質層の場合、Liイオン伝導体であり、電解質層のLiイオン伝導度(20℃)が10-5S/cm以上あり、かつLiイオン輸率が0.999以上である固体電解質層が好ましい。特に、Liイオン伝導度が10-4S/cm以上あり、かつLiイオン輸率が0.9999以上であれば良い。固体電解質層の材質としては硫化物系が良く、Li、P、Sより構成される固体電解質層が好ましく、さらに酸素を含有していても良い。例えば、Li3PO4や、Li3PO4に窒素を混ぜたLiPON、Li2S−SiS2、Li2S−P2S5、Li2S−B2S3等のリチウムイオン伝導性硫化物ガラス状固体電解質や、これらのガラスにLiIなどのハロゲン化リチウム、Li3PO4などのリチウム酸素酸塩をドープしたリチウムイオン伝導性固体電解質などが固体電解質層の材料として好適に利用できる。これらの複合酸化物などからなる固体電解質層は、半田リフロー時の加熱温度(200〜250℃程度)に対して耐熱性を備えている。固体電解質層の厚みは、3〜80μm程度が好適である。より好ましい固体電解質層の厚みは5〜20μmである。
<電解質層の形成方法>
電解質層の形成方法は、気相堆積法が好ましい。気相堆積法としては、例えば、PVD(物理的気相合成)法、CVD(化学的気相合成)法が挙げられる。具体的には、PVD法としては、真空蒸着法,スパッタリング法、イオンプレーティング法,レーザアブレーション法が、CVD法としては、熱CVD法、プラズマCVD法などが挙げられる。
(セパレータ、非水電解液)
固体電解質の代わりに、非水電解液とセパレータを用いてもよい。非水電解液は、非プロトン性有機溶媒とその溶媒に溶けるリチウム塩からなるものが利用できる。有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、 γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトンを挙げることができる。これらは、一種でもよいし、複数種を混合して用いることもできる。
リチウム塩としては、例えばLiClO4、LiBF4、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウムなどを挙げることができる。これらは、一種でもよいし、複数種を混合して用いることもできる。
セパレータとしては、イオンの透過性に優れ、機械的強度のある絶縁性薄膜を用いることができる。セパレータ材料としては、耐非水電解質性からポリプロピレンやポリエチレンといったポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニレンテレフタレートといったポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ガラス繊維、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、セルロース等が挙げられる。セパレータ形状としては、シート、微孔膜、不織布等が用いられる。
(集電体)
正極層、負極層の各々には、通常、集電体が接合されている。集電体には金属箔などが適する。負極集電体材料としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、及びこれらの合金から選択される1種が挙げられる。これらの金属は、リチウム(Li)と金属間化合物を形成しないため、リチウムとの金属間化合物による不具合、具体的には、充放電による膨張・収縮によって、負極層が構造破壊を起こし集電性が低下したり、負極層の接合性が低下して負極層が集電体から脱落し易くなるといった不具合を防止できる。正極集電体の具体例としては、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、これらの合金、ステンレスから選択される1種が挙げられる。
これらの集電体は、PVD法やCVD法により形成することができる。特に、所定のパターンに集電体を形成する場合、適宜なマスクを用いることで、容易に所定のパターンの集電体を形成することができる。
本発明のリチウム二次電池用電極の製造方法を用いて、Liと合金化しない金属の種類及び濃度を調整した薄膜原料を集電体上に成膜することで活物質薄膜を形成して、リチウム二次電池用電極を作製した。そして、作製したリチウム二次電池用電極を用いたリチウム二次電池を作製し、電極の性能評価を行った。
<電極の作製>
電極は、集電体上に活物質薄膜を形成したものであり、集電体にはCu箔、活物質にはSiを用いた。このCu箔は、厚さ18μmの圧延Cu箔の表面を中心線平均粗さ(Ra)が0.1〜1μm程度になるように電解めっき法により粗面化したものである。また、活物質薄膜は、下記の実施例に示すように、活物質であるSiにLiと合金化しない金属を添加した薄膜原料を集電体上に成膜することで形成した。
(実施例1)
まず、Fe-Ni合金(各金属の濃度は、Ni:42質量%で、残部が実質的にFe)を用意する。このFe-Ni合金とSiを、Fe-Ni合金の配合割合が40質量%となるように混合し、薄膜原料を作製する。この薄膜原料を真空蒸着法によりCu箔の表面上に堆積させて、Si-Fe-Ni合金からなる薄膜(Si合金薄膜)を形成した。具体的には、成膜室内を真空排気した後にArガスを導入して雰囲気圧力を2×10-3Paとし、薄膜原料に電子ビームを照射して、この原料を溶融して蒸発させることにより、Cu箔上にSi合金薄膜を形成した。形成するSi合金薄膜の厚さは7μmとし、Si合金薄膜の形成は成膜速度50nm/secで行った。このSi合金薄膜に含有するFe、Niの濃度は、エネルギー分散型蛍光X線分析法を用いて測定したところ、それぞれ23質量%、3.3質量%であった。
(実施例2)
Fe-Ni合金(各金属の濃度はNi:42質量%、残部が実質的にFe)を用意する。このFe-Ni合金とSiを、Fe-Ni合金の配合割合が30質量%となるように混合し、薄膜原料を作製する。そして、実施例1と同様にして、Cu箔の表面上にSi-Fe-Ni合金からなる薄膜(Si合金薄膜)を形成した。このSi合金薄膜に含有するFe、Niの濃度は、それぞれ13質量%、1.6質量%であった。
(比較例1)
Feの配合割合が30質量%となるようにSiにFeを混合した薄膜原料を作製する。この原料を用い、実施例1と同様にして、Cu箔の表面上にSi-Fe合金からなる薄膜(Si合金薄膜)を形成した。このSi合金薄膜に含有するFeの濃度は、20質量%であった。
(比較例2)
Niの配合割合が20質量%となるようにSiにNiを混合した薄膜原料を作製する。この原料を用い、実施例1と同様にして、Cu箔の表面上にSi-Ni合金からなる薄膜(Si合金薄膜)を形成した。このSi合金薄膜に含有するNiの濃度は、2.1質量%であった。
(比較例3)
Fe-Ni合金(各金属の濃度は、Ni:42質量%で、残部が実質的にFe)を用意する。このFe-Ni合金とSiを、Fe-Ni合金の配合割合が50質量%となるように混合し、薄膜原料を作製する。この薄膜原料を用い、実施例1と同様にして、Cu箔の表面上にSi-Fe-Ni合金からなる薄膜(Si合金薄膜)を形成した。このSi合金薄膜に含有する含有するFe、Niの濃度は、それぞれ35質量%、4.8質量%であった。
(比較例4)
Fe-Ni合金(各金属の濃度は、Ni:42質量%で、残部が実質的にFe)を用意する。このFe-Ni合金とSiを、Fe-Ni合金の配合割合が20質量%となるように混合し、薄膜原料を作製する。この薄膜原料を用い、実施例1と同様にして、Cu箔の表面上にSi-Fe-Ni合金からなる薄膜(Si合金薄膜)を形成した。このSi合金薄膜に含有するFe、Niの濃度は、それぞれ5.0質量%、0.8質量%であった。
<電池の作製>
作製した各電極を負極として用いたコイン型リチウム二次電池をそれぞれ作製した。この電池は、負極、セパレータ、正極の順に積層された積層体を形成して、この積層体をステンレス製のケースに収納した後、有機電解液を封入することで作製した。
ここで、リチウム二次電池の正極は、一般的に使用されているLiCoO2を用いて作製した。具体的には、LiCoO2の粉末をAl箔に塗布して作製した。また、リチウム二次電池の有機電解液には、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの等体積混合溶媒にLiPF6を1モル/リットルの割合で溶解させたものを用いた。セパレータには、ポリプロピレンからなる多孔質材料を用いた。
そして、このような電池を用いて各電極の性能評価を行った。具体的には、充放電電流を1mA/cm2として、4.2Vまで充電した後、2.75Vまで放電する作業を1サイクルとする充放電サイクル試験を100サイクル行い、各電池の容量維持率を求めた。容量維持率は、次式により求められる。
容量維持率(%)=(各サイクル時の放電容量/最大放電容量)×100 (式1)
表1に各電池の100サイクル後の容量維持率を示す。
Figure 2008159533
表1から明らかなように、本発明のリチウム二次電池用電極である実施例1及び2は、100サイクル後の容量維持率が60%以上であり、比較例1〜4と比較して容量維持率が格段に高い。なお、比較例3の電極は、上記試験条件を満たす充放電を行うことができなかったため、充放電サイクル試験を実施しなかった。これは、Si合金薄膜に含有するSiの濃度が低いことが原因と考えられる。
また、実施例1と比較例3との結果から、薄膜原料はFe-Ni合金の配合割合が50質量%未満、特に45質量%以下となるようにすることがより好ましいと推測される。実施例2と比較例4との結果から、薄膜原料はFe-Ni合金の配合割合が20質量%超、特に25質量%以上となるようにすることがより好ましいと推測される。さらに、実施例1、2の結果から、Si合金薄膜に含有する添加物(Fe、Ni)の合計濃度は、質量%で12〜33%、特に14〜28%とすることがより好ましいと推測される。
以上の結果から、本発明電極によれば、高価なCoを含有せず、安価なFeを主たる添加元素としたSi合金薄膜であっても、FeとNiの含有量を特定することで、Si合金薄膜が集電体から剥離し難い電池を構築できることがわかる。
本発明のリチウム二次電池用電極は、リチウム二次電池に好適に利用することができる。

Claims (4)

  1. 集電体と、この集電体上に形成される活物質薄膜とを備え、この活物質薄膜がLiを吸蔵・放出する活物質を含有するリチウム二次電池用電極であって、
    この活物質薄膜は、Liを吸蔵・放出する活物質以外の含有元素が実質的にFeとNiとから構成され、
    この活物質薄膜に含有するFeとNiの濃度は、各々質量%で10%<Fe<30%、1%<Ni<4%の範囲を満たすことを特徴とするリチウム二次電池用電極。
  2. Liを吸蔵・放出する活物質がSiであることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用電極。
  3. 集電体上に、Liを吸蔵・放出する活物質が含有される活物質薄膜を形成するリチウム二次電池用電極の製造方法であって、
    Niの濃度が質量%で40%<Ni<45%の範囲を満たし、残部が実質的にFeであるFe-Ni合金を用意する準備工程と、
    前記Fe-Ni合金の配合割合が、質量%で20%<Fe-Ni合金<50%となるように、前記活物質と前記Fe-Ni合金とを混合する混合工程と、
    この混合工程により得られた材料を原料として、気相法により集電体上に活物質薄膜を形成する成膜工程とを具えることを特徴とするリチウム二次電池用電極の製造方法。
  4. Liを吸蔵・放出する活物質がSiであることを特徴とする請求項3に記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
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