JP2008157070A - バキュームポンプ - Google Patents

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Abstract

【課題】外部への潤滑油の流出を抑制するとともに、負圧の発生を停止したときにおける負圧発生室への潤滑油の流入を抑制したバキュームポンプを提供する。
【解決手段】ロータを回転させることにより負圧を発生させるバキュームポンプにおいて、油路20aは、オイル供給孔12aとロータの回転摺動部とを連通させる。大気連通孔20bは、第1油路18aと大気空間とを連通させる。給油パイプ20は、負圧発生中にはリターンスプリング46の付勢力によって連通阻止位置に移動し、大気連通孔20bを通じた油路20aと大気空間との連通を阻止する。負圧発生中でないときにはパイプ挿通孔12cに供給された潤滑油の油圧を利用して初期位置に移動し、大気連通孔20bを通じた油路20aと大気空間との連通の阻止を解除する。
【選択図】図3

Description

本発明はバキュームポンプに関し、特にロータを回転させることにより負圧を発生させるバキュームポンプに関する。
運転者によってブレーキペダルが踏み込み操作されるときに、その踏み込み操作を補助する倍力装置として、バキュームポンプによって負圧を発生させる真空式倍力装置が知られている。このような真空式倍力装置では性能を良好に維持すべく、ロータなどの回転部材が回転しているときに、その回転摺動部分に適切な供給量の潤滑油が供給されることが要求される。このため、潤滑油通路とパイプ外周面とを連通させる潤滑油逃がし孔を設けた給油パイプが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、負圧発生時における潤滑油の供給量を適切なものとすべく、負圧発生時にスプールが変位し、可変オリフィスの開孔度を減少させて給油量を減少させる油回転形真空ポンプが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2003−239882号公報 実開昭64−11385号公報
例えば上述の特許文献1に記載される技術では、ロータ回転時においても潤滑油逃がし孔から潤滑油が流出するため、潤滑油の流出量を抑制することが困難である。また、負圧の発生を停止した直後はバキュームポンプに負圧が残存しているため、例えば上述の特許文献2に記載される技術では、負圧の発生を停止したときに給油孔の開口面積が増大し、バキュームポンプに残存する負圧によって潤滑油がバキュームポンプの負圧室内に引き込まれる可能性がある。負圧室内に多くの潤滑油が引き込まれた場合、次に速やかに負圧を発生させることができないおそれがある。
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、外部への潤滑油の流出を抑制するとともに、負圧の発生を停止したときにおける負圧発生室への潤滑油の流入を抑制したバキュームポンプを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様のバキュームポンプは、ロータを回転させることにより負圧を発生させるバキュームポンプにおいて、潤滑油供給源と、ロータの摺動部および負圧を発生させる負圧発生室内部とを連通させる油路と、油路と大気空間とを連通させる大気連通孔と、負圧発生中には大気連通孔を通じた油路と大気空間との連通を阻止し、負圧発生中でないときには大気連通孔を通じた油路と大気空間との連通の阻止を解除する連通制御機構と、を備える。
この態様によれば、負圧発生中でないときに大気連通孔を通じて油路と大気空間とが連通することにより、負圧の発生停止後にロータ周辺に潤滑油が引き込まれることを抑制することができる。また、負圧発生中には回転摺動部への潤滑油の供給を可能としつつ大気連通孔を通じた油路と大気空間との連通を阻止することができるため、大気連通孔を通じた潤滑油の流出を抑制しながらロータの回転摺動部に適切な量を潤滑油を供給することができる。
連通制御機構は、大気連通孔を通じた油路と大気空間との連通を阻止する第1位置と、連通の阻止を解除する第2位置との間を摺動可能な連通制御部材と、連通制御部材を第2位置に向かって付勢する付勢手段と、を有してもよい。連通制御部材は、負圧発生中には油路に供給された潤滑油の油圧を利用して第1位置に移動し、負圧発生中でないときには付勢手段の付勢力によって第2位置に移動してもよい。
この態様によれば、潤滑油の油圧を利用して、大気連通孔を通じた油路と大気空間との連通および連通の阻止を切り換えることができる。このため、簡易な構成によって潤滑油の流出を抑制しつつ回転摺動部に適切な量の潤滑油を供給することができる。
連通制御機構は、大気連通孔を通じた油路と大気空間との連通を阻止する第1位置と、連通の阻止を解除する第2位置との間を摺動可能な連通制御部材と、連通制御部材を第2位置に向かって付勢する付勢手段と、を有してもよい。連通制御部材は、負圧発生中にはロータを回転させる駆動力を利用して第1位置に移動し、負圧発生中でないときには付勢手段の付勢力によって第2位置に移動してもよい。
この態様によれば、ロータを回転させる駆動力を利用して、大気連通孔を通じた油路と大気空間との連通および連通の阻止を切り換えることができる。このため、簡易な構成によって潤滑油の流出を抑制しつつ回転摺動部に適切な量の潤滑油を供給することができる。
本発明のバキュームポンプによれば、外部への潤滑油の流出を抑制するとともに、負圧の発生を停止したときにおける負圧発生室への潤滑油の流入を抑制することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という。)について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るバキュームポンプ10の断面図である。バキュームポンプ10は、カムシャフト12、カップリング14、中央支持部材16、ロータ18、給油パイプ20、ハウジング24、カバー26、およびベーン28を有する。
ハウジング24は、エンジン本体22の取付孔に嵌挿され固定される。ハウジング24にはロータ挿通孔24cが設けられており、ロータ18には円柱状の回転摺動部18dが形成されている。ロータ18の回転摺動部18dがハウジング24のロータ挿通孔24cに挿通され、ロータ18がハウジング24に対して回転可能に支持される。
回転摺動部18dの一端にロータ本体部18eが設けられており、ベーン28は、ロータ18と共に回転するようロータ本体部18eに支持される。カバー26はカップ型に形成され、ハウジング24と共にロータ本体部18eおよびベーン28を覆うようにハウジング24に取り付けられる。
この結果、カバー26とハウジング24とによって囲われる領域に、負圧を発生させる領域としての負圧発生室S1が形成される。ハウジング24には、負圧発生室S1と外部とを連通させる排気孔24bが形成され、排気孔24bの外部側の開口部には排気バルブ32が設けられる。排気バルブ32は、外部から負圧発生室S1への空気や油などの流体の進入を阻止する。
回転摺動部18dの他端には係合部18cが設けられている。係合部18cは軸方向に見て長方形に形成されている。カップリング14は円柱状に形成され、その一端に開口するように軸方向に見て係合部18cよりも僅かに大きい長方形の係合孔14aが設けられている。ロータ18の係合部18cがカップリング14の係合孔14aに挿通されることによりカップリング14とロータ18とが共に回転するよう、相互に回転方向に係止される。
カップリング14には、係合孔14aと貫通する円形の取付孔14bが設けられている。中央支持部材16は円盤状に形成されており、中央支持部材16がカップリング14の取付孔14bに嵌着される。中央支持部材16には、軸方向に貫通するよう、その中心に挿通孔16aが設けられている。挿通孔16aに、給油パイプ20が軸方向に摺動可能に挿通される。カムシャフト12の端部には取付孔12bが設けられ、この取付孔12bにカップリング14が嵌着される。こうしてバキュームポンプ10が構成され、カムシャフト12が回転することによって、その駆動力がカップリング14を介してロータ18に伝達され、ロータ18が回転する。
ここで、図2に関連して負圧の発生手順について説明する。図2は、第1の実施形態に係るバキュームポンプ10をロータ18側から見た正面図である。吸気ポート34はバキューム・サーボ(真空式制動力倍率装置)に接続されている。
カバー26は内面が円筒状に形成されている。ロータ18は、中心軸がカバー26の内面中心軸から外れた偏心位置に配置されている。ベーン28はロータ18の先端部において、ロータ18の軸方向と直交する方向に摺動可能に支持されている。ベーン28は、カバー26の両端部が内周面に当接して摺動するよう、両端部がカバー26の内周面のガイド部(図示せず)によって案内される。この結果、負圧発生室S1はベーン28によって2つのバキューム室に区画される。
エンジンが作動すると、カムシャフト12と共にロータ18が回転する。このとき、これら2つのバキューム室の容積が変化する。バキューム室の容積が減少すると排気孔24bおよび排気バルブ32を通じて負圧発生室S1から空気が排出される。その後再びバキューム室の容積が増大すると負圧が発生する。発生した負圧は吸気ポート34を介してバキューム・サーボに伝えられ、バキューム・サーボ内の空気を連続的に吸い出す。
図1に戻る。バキュームポンプ10には、ロータ18の良好な回転運動を維持させるため、回転摺動部18dの外周面や負圧発生室S1に潤滑油を供給するための油路がカムシャフト12やロータ18に形成されている。具体的には、カムシャフト12には軸方向に延在するオイル供給孔12aがその中心に設けられている。ロータ18には、軸方向に延在する第1油路18aがその中心に形成され、第1油路18aの一端と連通して、回転摺動部18dの外周面に向かってロータ18の軸方向と直交する方向に延在する第2油路18bが形成されている。ハウジング24のロータ挿通孔24cの内周面には給油溝24aが軸方向に伸びるよう形成されている。
潤滑油は、カムシャフト12のオイル供給孔12aから中空円筒状の給油パイプ20を介して第1油路18aに供給され、第1油路18aから第2油路18bを通過して給油溝24aに供給される。潤滑油が給油溝24aに供給されることにより、回転摺動部18dの外周面が軸方向にわたって潤滑され、ロータ18の安定した回転が可能となる。以下、図3および図4に関連して給油パイプ20の構成および動作について詳細に説明する。
図3は、第1の実施形態に係るバキュームポンプ10において、負圧発生中でないときの給油パイプ20の状態を示す図である。給油パイプ20は、円柱状の大径部20cと、大径部20cよりも径の小さい円柱状の小径部20dとが同軸に一体的に結合した形状に形成される。したがって、大径部20cの径をD1、小径部20dの径をD2とした場合、D1>D2となっている。給油パイプ20には、軸方向に貫通する油路20aがその中心に形成されている。
カムシャフト12には給油パイプ20の大径部20cよりもわずかに径の大きいパイプ挿通孔12cが設けられている。大径部20cには全周にわたる溝20eが設けられており、溝20eにOリング40が取り付けられた状態で大径部20cがパイプ挿通孔12cに嵌挿される。
ロータ18の係合部18cには給油パイプ20の小径部20dよりもわずかに径の大きいパイプ挿通孔18gが設けられている。小径部20dには全周にわたる溝20fが設けられており、溝20fにOリング42が取り付けられる。溝20gよりも大径部20c側に全周にわたる溝20fが設けられており、この溝20fに係止リング44が取り付けられる。この状態で小径部20dがパイプ挿通孔18gに嵌挿される。その後、係止突部18fがパイプ挿通孔18gの開口端部に取り付けられ、小径部20dのうち係止リング44よりパイプ挿通孔18g内部側にある部分の外部への移動が規制される。
パイプ挿通孔18g内部にはリターンスプリング46が配置されている。リターンスプリング46は、給油パイプ20をパイプ挿通孔18gの開口側に向かって付勢する。エンジンが作動していないためロータ18が回転していない状態では、オイル供給孔12aから潤滑油が供給されないため、給油パイプ20には油圧が与えられない。したがって給油パイプ20は、リターンスプリング46の付勢力によって、係止リング44が係止突部18fに係止する位置で保持される。第1の実施形態において、このときの給油パイプ20の位置を初期位置という。給油パイプ20およびリターンスプリング46は、後述するように油路20aと大気空間との連通および連通阻止を制御する連通制御機構として機能する。
作動していたエンジンが停止し、ロータ18の回転が停止すると、バキュームポンプ10による負圧の発生も停止する。しかし、負圧発生室S1内には負圧の発生停止後も負圧が残存している。負圧発生室S1と給油溝24aとは微小な隙間によって連通しており、エンジン停止後も負圧発生室S1内に残存する負圧によって負圧発生室S1に潤滑油が引き込まれる。引き込まれた潤滑油は負圧発生室S1内に蓄積されるため、次にロータ18を回転させるときに、ロータ18が円滑に始動することができない可能性がある。
このため、第1の実施形態に係る給油パイプ20は、大気連通孔20bを有する。大気連通孔20bは、油路20aと大気空間とを連通させるよう、給油パイプ20の中心軸から径外向きに放射状に給油パイプ20を貫通するよう設けられる。大気連通孔20bは、給油パイプ20が初期位置にあるときに係止突部18fよりもわずかにカムシャフト12側に設けられる。図3では上方向および下方向のそれぞれに貫通する2つの大気連通孔20bが示されているが、大気連通孔20bの数が2つに限られないことは勿論である。
このように大気連通孔20bが設けられることにより、負圧の発生停止後に、負圧発生室S1に負圧が残存していた場合でも、大気連通孔20bから空気が取り込まれ、この空気が負圧発生室S1に導入される。したがって、負圧の発生停止後に負圧発生室S1内に蓄積される潤滑油の量を抑制することができ、再び負圧を発生させるべくロータ18を回転させるときに、ロータ18の円滑な始動を実現することができる。
図4は、第1の実施形態に係るバキュームポンプ10において、負圧発生中の給油パイプ20の状態を示す図である。大気連通孔20bによって油路20aと大気空間とが連通した状態をロータ18の作動後も維持した場合、油路20a内の潤滑油が大気連通孔20bからバキュームポンプ10外部に流出する。このように潤滑油が流出することにより、潤滑油を頻繁に補充する必要が生じる。このため、第1の実施形態に係る給油パイプ20は、ロータ18が回転し負圧を発生させているときには、大気連通孔20bによる油路20aと大気空間との連通を阻止する。
具体的に以下に説明する。エンジンが始動すると、ロータ18が回転して負圧を発生させると共に、オイル供給孔12aから潤滑油がロータ18の回転摺動部18dの外周面に供給される。このため、カムシャフト12のパイプ挿通孔12c内、および係合部18cのパイプ挿通孔18g内にも潤滑油が供給され、潤滑油による油圧が与えられる。カムシャフト12のパイプ挿通孔12c内では、給油パイプ20は直径D1の円から油路20aの部分を除いた部分に油圧が与えられ、これにより給油パイプ20は係合部18cに向かう方向に押圧される。係合部18cのパイプ挿通孔18g内では、給油パイプ20は直径D2の円から油路20aの部分を除いた部分に油圧が与えられ、これにより給油パイプ20はカムシャフト12に向かう方向に押圧される。
D1>D2であることから、給油パイプ20は全体として係合部18cに向かう方向に油圧により力が与えられる。リターンスプリング46は、このとき油圧により給油パイプ20に与えられる力よりも弱い付勢力が予め設定されている。このため、バキュームポンプ10による負圧発生時は、給油パイプ20は係合部18cに向かう方向に押し進められる。これによって大気連通孔20bはパイプ挿通孔18g内に収容され、大気連通孔20bによる油路20aと大気空間との連通が阻止される。第1の実施形態において、このときの給油パイプ20の位置を連通阻止位置をいう。
このように、給油パイプ20が連通阻止位置にあるときには、大気連通孔20bからの潤滑油の流出が抑制される。また、カムシャフト12のオイル供給孔12aからロータ18の回転摺動部18dの外周面への油路の連通は阻止されないため、負圧発生時において回転摺動部18dの外周面や負圧発生室S1に適切な量の潤滑油を供給することができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係るバキュームポンプ10の構成は、特に言及しない限り第1の実施形態に係るバキュームポンプ10の構成と同様である。以下、第1の実施形態と同様の箇所は同一の符号を付して説明を省略する。
第2の実施形態に係るバキュームポンプ10は、給油パイプ20に代えて第1給油パイプ50および第2給油パイプ56を備える。図5は、第2の実施形態に係るバキュームポンプ10において、負圧発生中でないときの第1給油パイプ50および第2給油パイプ56の状態を示す図である。
第1給油パイプ50は、有底の円筒状に形成される。第1給油パイプ50の孔部には、開口部から軸方向の所定長さにわたって内周が円形となる大径挿通孔50aが形成され、更にその奥には内周が大径挿通孔50aよりも径の小さな円形となる小径挿通孔50bが形成される。第1給油パイプ50の底部には、軸方向に貫通する油路50cが形成されている。
第2給油パイプ56は、円柱状の大径部56aと、大径部56aよりも径の小さい円柱状の小径部56bとが同軸に一体的に結合した形状に形成される。したがって、大径部56aの径をD3、小径部56bの径をD4とした場合、D3>D4となっている。また、第2給油パイプ56には、軸方向に貫通する油路56cがその中心に形成されている。
第1給油パイプ50の大径挿通孔50aの内径は第2給油パイプ56の大径部56aの外径よりもわずかに大きなものとされている。また、第1給油パイプ50の小径挿通孔50bの内径は第2給油パイプ56の小径部56bの外径よりもわずかに大きなものとされている。大径部56aには全周にわたって溝56dが設けられており、この溝56dにOリング58が取り付けられる。また小径部56bには全周にわたって溝56eが設けられており、この溝56eにOリング60が取り付けられる。この状態で、第1給油パイプ50の開口部に小径部56bを先頭として第2給油パイプ56が挿入されることにより、大径挿通孔50aに大径部56aが嵌挿され、小径挿通孔50bに小径部56bが嵌挿される。
このとき、第2給油パイプ56は第1給油パイプ50に対し軸方向に摺動可能とされている。第1給油パイプ50には大径挿通孔50aから外周に貫通する摺動用連通孔50eが設けられている。摺動用連通孔50eは、第2給油パイプ56が第1給油パイプ50に対して摺動するときの大径挿通孔50a内の空気の圧縮を抑制し、第1給油パイプ50に対する第2給油パイプ56の円滑な摺動を可能にしている。
第2給油パイプ56が第1給油パイプ50に嵌挿された後、大径挿通孔50aの開口部の縁部に設けられた溝50fに係止リング62が取り付けられる。これにより、第2給油パイプ56の第1給油パイプ50外部への突出が規制される。
第1給油パイプ50の内底部と第2給油パイプ56の小径部56b側の端部との間にリターンスプリング64が配置される。リターンスプリング64は、第2給油パイプ56を第1給油パイプ50の内底部から離間する方向に付勢する。この結果、第2給油パイプ56は係止リング62によって係止された位置に保持される。第1給油パイプ50、第2給油パイプ56、およびリターンスプリング64は、後述するように油路としての小径部56bと大気空間との連通および連通阻止を制御する連通制御機構として機能する。
第1給油パイプ50の開口側の外周には、全周にわたって溝50gが設けられており、溝50gにはOリング52が取り付けられる。また、第1給油パイプ50の底部側の外周には、全周にわたって溝50hが設けられており、溝50hにOリング54が取り付けられる。この状態で、第1給油パイプ50の開口側がカムシャフト12のパイプ挿通孔12cに嵌着され、底部側が係合部18cのパイプ挿通孔18gに嵌着される。これにより、オイル供給孔12aと係合部18cの第1油路18aとが、第2給油パイプ56の油路56cを介して連通する。
負圧を発生させていないときには、第2給油パイプ56は潤滑油の油圧による大きな影響を受けないため、第2給油パイプ56は係止リング62によって係止された位置に保持されたままとなる。このときの第2給油パイプ56の位置を第2の実施形態において初期位置という。
エンジン停止後における負圧発生室S1への潤滑油の引き込みを抑制すべく、第2の実施形態に係るバキュームポンプ10では第1給油パイプ50に大気連通孔50dが設けられる。大気連通孔50dは、カムシャフト12と係合部18cとの間の大気空間と、油路としての第1給油パイプ50の小径挿通孔50b内部とを連通させる。
このとき大気連通孔50dは、第2給油パイプ56が初期位置にある状態で第2給油パイプ56の小径部56bの端部と係合部18cの端部との間の軸方向位置に設けられる。このため、第2給油パイプ56が初期位置にある状態では、第2給油パイプ56によって大気連通孔50dを通じた小径挿通孔50b内部と大気空間との連通が阻止されず、大気連通孔50dから小径挿通孔50b内部に空気が入り込むことが可能となっている。これによって、負圧の発生停止後に負圧発生室S1に負圧が残存していた場合でも、大気連通孔50dから空気が取り込まれ、この空気が負圧発生室S1に導入されることにより、負圧の発生停止後に負圧発生室S1内に蓄積される潤滑油の量を抑制することができる。
図6は、第2の実施形態に係るバキュームポンプ10において、負圧発生中でないときの第1給油パイプ50および第2給油パイプ56の状態を示す図である。第2の実施形態に係るバキュームポンプ10は、負圧発生中における大気連通孔50dからの潤滑油の流出を抑制すべく、ロータ18が回転し負圧を発生させているときには、大気連通孔50dによる小径挿通孔50b内部と大気空間との連通を阻止する。
具体的に以下に説明する。エンジンが始動すると、前述のようにオイル供給孔12aから潤滑油が回転摺動部18dの外周面に向かって供給される。このため、第1給油パイプ50の大径挿通孔50a内部、および小径挿通孔50b内部に潤滑油が供給され、潤滑油による油圧が与えられる。第2給油パイプ56の大径部56a側の端面には、直径D3の円から油路56cの部分を除いた部分に油圧が与えられ、これにより第2給油パイプ56は係合部18cに向かう方向に押圧される。第2給油パイプ56の小径部56b側の端面には、直径D4の円から油路56cの部分を除いた部分に油圧が与えられ、これにより第2給油パイプ56はカムシャフト12に向かう方向に押圧される。
D3>D4であることから、第2給油パイプ56は全体として係合部18cに向かう方向に油圧により力が与えられる。リターンスプリング64は、このときの油圧より第2給油パイプ56に与えられる力よりも弱い付勢力が予め設定されている。このため、バキュームポンプ10による負圧発生時は、第2給油パイプ56は係合部18cに向かう方向に押し進められる。これによって第2給油パイプ56の小径部56b外周によって大気連通孔50dによる小径挿通孔50b内部と大気空間との連通が阻止される。第2の実施形態において、このときの第2給油パイプ56の位置を連通阻止位置という。
このように、第2給油パイプ56が連通阻止位置にあるときには、大気連通孔50dからの潤滑油の流出が抑制される。また、カムシャフト12のオイル供給孔12aからロータ18の回転摺動部18dの外周面への油路の連通は阻止されないため、負圧発生時において回転摺動部18dの外周面に適切な量の潤滑油を供給することができる。さらに、第2の実施形態では、第2給油パイプ56の大径部56aが嵌挿される大径挿通孔50a、および第2給油パイプ56の小径部56bが嵌挿される小径挿通孔50bを、第1給油パイプ50内部に一体的に形成することができる。このため、同軸となるよう精度良く大径挿通孔50aと小径挿通孔50bとを形成することができ、これによって第1給油パイプ50内における第2給油パイプ56の円滑な摺動を実現することができる。
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態に係るバキュームポンプ10の断面図である。第3の実施形態に係るバキュームポンプ10の構成は、特に言及しない限り第1の実施形態に係るバキュームポンプ10の構成と同様である。以下、第1の実施形態と同様の箇所は同一の符号を付して説明を省略する。
第3の実施形態に係るバキュームポンプ10は、給油パイプ20に代えて給油パイプ70を備える。給油パイプ70は円筒状に形成され、軸方向に貫通する油路70aがその中心に形成されている。給油パイプ70は、一端近傍に全周にわたる溝70cが設けられ、溝70cにOリング72が取り付けられる。また給油パイプ70は、他端近傍に全周にわたる溝70dが設けられ、溝70dにOリング74が取り付けられる。この状態で、Oリング72側の給油パイプ70の端部がパイプ挿通孔12cに挿通され、Oリング74側の給油パイプ70の端部が係合部18cのパイプ挿通孔18gに挿通される。
本実施形態では、大気連通孔が係合部18cに設けられる。以下、第3の実施形態における大気連通孔の連通の阻止、および連通の阻止の解除について、図8に関連して説明する。
図8(a)は、第3の実施形態に係るバキュームポンプ10において、ロータ18が回転していないときの図7におけるP−P断面図である。第3の実施形態に係る係合部18cは、ロータ18の軸方向に見た断面が、長方形の2つの長辺の各々が略中央から相互に逆方向にθの角度で削り取られた形状に形成されている。このθで削り取られた2つの部分の各々に向かって、油路としてのパイプ挿通孔18g内部と係合部18c外部とを連通させる大気連通孔18hが、ロータ18の中心軸から相互に逆方向に延在して設けられている。但し、大気連通孔18hの数が2つに限られないことは勿論である。以下、係合部18cの断面形状において、θの角度で削り取られパイプ挿通孔18gの開口部を有する面を連通面18jとし、係止突部18fとθの角度を成しパイプ挿通孔18gの開口部を有しない面を非連通面18iとする。
第3の実施形態に係るバキュームポンプ10はリターンスプリング76を有する。リターンスプリング76は、カップリング14の係合孔14a内に設けられた有底孔14cに収容され、一方の連通面18jを押圧するよう付勢する。カップリング14、ロータ18の係合部18c、およびリターンスプリング76は、後述するように油路としてのパイプ挿通孔18gと大気空間との連通および連通阻止を制御する連通制御機構として機能する。
ロータ18が回転していないとき、すなわち負圧を発生させていないときには、リターンスプリング76の付勢力によって係合孔14aの側面と非連通面18iとが当接し、係合孔14aの側面と連通面18jは互いに離間した状態となる。第3の実施形態において、このようなカップリング14の係合孔14aに対するロータ18の係合部18cの位置を初期位置という。
係合孔14aの側面と連通面18jとの間の間隔部は大気空間へ繋がっているため、ロータ18の係合部18cが初期位置にあるときには、パイプ挿通孔18gは大気連通孔18hを介して大気空間に連通した状態となる。これによって、負圧の発生停止後に負圧発生室S1に負圧が残存していた場合でも、大気連通孔18hを介して負圧発生室S1に空気が導入され、負圧の発生停止後に負圧発生室S1内に蓄積される潤滑油の量を抑制することができる。
図8(b)は、第3の実施形態に係るバキュームポンプ10において、ロータ18が回転しているときの図7におけるP−P断面図である。ロータ18が回転しているとき、すなわち負圧を発生させているときには、カップリング14の係合孔14aがロータ18の係合部18cに係合してロータ18に駆動力を伝達する。このときカップリング14の係合孔14aの側面が連通面18jに向かう方向に回転し、係合孔14aの側面が連通面18jに当接するため、大気連通孔18hによるパイプ挿通孔18g内部と大気空間との連通が阻止される。第3の実施形態において、このようなカップリング14の係合孔14aに対するロータ18の係合部18cの位置を連通阻止位置という。
このように、ロータ18の係合部18cが連通阻止位置にあるときには、大気連通孔18hからの潤滑油の流出が抑制される。また、カムシャフト12のオイル供給孔12aからロータ18の回転摺動部18dの外周面への油路の連通は阻止されないため、負圧発生時において回転摺動部18dの外周面や負圧発生室S1に適切な量の潤滑油を供給することが可能となっている。さらに、第3の実施形態に係るバキュームポンプ10では、潤滑油の供給を待つことなく油路と大気空間との連通および連通の阻止を切り換えることができるため、迅速な連通制御が実現可能となっている。
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。以下、そうした例をあげる。
バキュームポンプは、上記実施形態において例示したようなベーン型のバキュームポンプでなくてもよいことは勿論であり、他の形式のバキュームポンプであってもよい。また、カップリングを介さずに、カムシャフト12の端部に係合孔が形成され、カムシャフト12とロータ18とが直接係合してもよい。
第1の実施形態に係るバキュームポンプの断面図である。 第1の実施形態に係るバキュームポンプをロータ側から見た正面図である。 第1の実施形態に係るバキュームポンプにおいて、負圧発生中でないときの給油パイプの状態を示す図である。 第1の実施形態に係るバキュームポンプにおいて、負圧発生中の給油パイプの状態を示す図である。 第2の実施形態に係るバキュームポンプにおいて、負圧発生中でないときの第1給油パイプおよび第2給油パイプの状態を示す図である。 第2の実施形態に係るバキュームポンプにおいて、負圧発生中でないときの第1給油パイプおよび第2給油パイプの状態を示す図である。 第3の実施形態に係るバキュームポンプの断面図である。 (a)は、第3の実施形態に係るバキュームポンプにおいて、ロータが回転していないときの図7におけるP−P断面図であり、(b)は、第3の実施形態に係るバキュームポンプにおいて、ロータが回転しているときの図7におけるP−P断面図である。
符号の説明
10 バキュームポンプ、 12 カムシャフト、 14 カップリング、 18 ロータ、 18c 係合部、 18d 回転摺動部、 18e ロータ本体部、 20 給油パイプ、 20b 大気連通孔、 26 カバー、 28 ベーン、 46 リターンスプリング、 50 第1給油パイプ、 50d 大気連通孔、 56 第2給油パイプ、 64 リターンスプリング、 70 給油パイプ、 76 リターンスプリング。

Claims (3)

  1. ロータを回転させることにより負圧を発生させるバキュームポンプにおいて、
    潤滑油供給源と、ロータの摺動部および負圧を発生させる負圧発生室内部とを連通させる油路と、
    前記油路と大気空間とを連通させる大気連通孔と、
    負圧発生中には前記大気連通孔を通じた前記油路と大気空間との連通を阻止し、負圧発生中でないときには前記大気連通孔を通じた前記油路と大気空間との連通の阻止を解除する連通制御機構と、
    を備えることを特徴とするバキュームポンプ。
  2. 前記連通制御機構は、前記大気連通孔を通じた前記油路と大気空間との連通を阻止する第1位置と、連通の阻止を解除する第2位置との間を摺動可能な連通制御部材と、前記連通制御部材を第2位置に向かって付勢する付勢手段と、を有し、
    前記連通制御部材は、負圧発生中には前記油路に供給された潤滑油の油圧を利用して第1位置に移動し、負圧発生中でないときには前記付勢手段の付勢力によって第2位置に移動することを特徴とする請求項1に記載のバキュームポンプ。
  3. 前記連通制御機構は、前記大気連通孔を通じた前記油路と大気空間との連通を阻止する第1位置と、連通の阻止を解除する第2位置との間を摺動可能な連通制御部材と、前記連通制御部材を第2位置に向かって付勢する付勢手段と、を有し、
    前記連通制御部材は、負圧発生中にはロータを回転させる駆動力を利用して第1位置に移動し、負圧発生中でないときには前記付勢手段の付勢力によって第2位置に移動することを特徴とする請求項1に記載のバキュームポンプ。
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