JP2008156523A - インクジェット記録用水系インク - Google Patents

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Abstract

【課題】吐出信頼性、印字濃度、彩度等の印字性能に優れた印刷物を得ることができる、インクジェット記録用顔料組成物、それを含有する水分散体及び水系インクを提供する。
【解決手段】無置換銅フタロシアニン顔料(A)と分子中にハロゲン原子を平均10〜16個有するポリハロゲン銅フタロシアニン顔料(B)とを含有する顔料組成物であって、無置換銅フタロシアニン顔料(A)100重量部に対して、1分子中にハロゲン原子を平均10〜16個有するポリハロゲン銅フタロシアニン顔料(B)が0.5〜50重量部であるインクジェット記録用顔料組成物、その顔料組成物を含有するポリマー粒子を含むインクジェット記録用水分散体、及び水系インクである。
【選択図】なし

Description

本発明は、印字性能に優れたインクジェット記録用顔料組成物、それを含有する水分散体及び水系インクに関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて、文字や画像を得る記録方式である。この方式は、フルカラー化が容易で、かつ安価であり、記録部材として普通紙が使用可能、被印字物に対して非接触、という数多くの利点があるため普及が著しい。
特に印字物の耐候性や耐水性の観点から、着色剤に顔料系インクを用いるものが主流となってきている。
顔料系のシアンインクには銅フタロシアニン顔料が汎用されている。しかし、銅フタロシアニン顔料は、銅フタロシアニン系の染料であるダイレクト・ブルー86、同199等が持つ緑味の青色の色相を有さないため、組み合わせるインクによっては色再現範囲を狭くしたり、見る角度により赤味を増すなど色味が不安定であるという問題がある。
顔料系シアンインクについては、種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、1分子中の塩素原子数が7〜13個のポリクロル銅フタロシニンからなり、平均塩素原子数が9〜11個の範囲にあるポリクロル銅フタロシアニン顔料組成物が開示されている。しかしながら、この顔料組成物は、色再現領域、保存安定性等において満足できるものではない。
特許文献2には、着色剤として、無置換銅フタロシアニン顔料と1分子中にハロゲン原子を平均9〜11個有するポリハロゲン銅フタロシアニン顔料とを含有するカラートナーが開示されており、特許文献3には、ハロゲン化フタロシアニンとアミノ樹脂とを含有するカラーフィルター用インキ組成物が開示されている。特許文献2は、静電荷像を現像するためのカラートナーに関するものであり、特許文献3は、耐熱性、耐溶剤性及び耐光性に優れたカラーフィルターを得るためのものであり、いずれもインクジェット記録用水系インクとは使用方法及び求められる性能が異なるものである。
特開平8−291260号公報 特開平11−160912号公報 特開2003−192948号公報
本発明は、吐出信頼性、印字濃度、彩度等の印字性能に優れた印刷物を得ることができる、インクジェット記録用顔料組成物、それを含有する水分散体及び水系インクを提供することを課題とする。
本発明者らは、無置換銅フタロシアニン顔料とポリハロゲン銅フタロシアニン顔料を特定量で併用することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は次の(1)〜(3)を提供する。
(1)無置換銅フタロシアニン顔料(A)と分子中にハロゲン原子を平均10〜16個有するポリハロゲン銅フタロシアニン顔料(B)とを含有する顔料組成物であって、無置換銅フタロシアニン顔料(A)100重量部に対して、1分子中にハロゲン原子を平均10〜16個有するポリハロゲン銅フタロシアニン顔料(B)が0.5〜50重量部である、インクジェット記録用顔料組成物。
(2)前記(1)の顔料組成物を含有するポリマー粒子を含む、インクジェット記録用水分散体。
(3)前記(2)の水分散体を含有する、インクジェット記録用水系インク。
本発明のインクジェット記録用顔料組成物、それを含有する水分散体及び水系インクによれば、吐出信頼性、印字濃度、彩度の他、画像均一性、定着性に優れ、色間滲みのない優れた印刷物を得ることができる。
本発明のインクジェット記録用水分散体及び水系インクには、吐出信頼性、印字濃度、彩度等の印字性能に優れた印刷物を得る観点から、無置換銅フタロシアニン顔料(A)100重量部に対して、1分子中にハロゲン原子を平均10〜16個有するポリハロゲン銅フタロシアニン顔料(B)を0.5〜50重量部含有するインクジェット記録用顔料組成物を用いる。以下、本発明に用いる各成分について説明する。
〔無置換銅フタロシアニン顔料(A)〕
無置換銅フタロシアニンは、銅原子のまわりに4個のイソインドール構造を有する多環芳香環化合物であり、該芳香環が、ハロゲン原子等で置換可能な合計16個の水素原子を有している。
無置換銅フタロシアニン顔料に特に制限はなく、α型銅フタロシアニン顔料、β型銅フタロシアニン顔料、ε型銅フタロシアニン顔料等を用いることができる。より具体的には、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6等が挙げられる。これらの中では、フルカラー用途における印字濃度、彩度等の観点から、C.I.ピグメントブルー15:3及びC.I.ピグメントブルー15:4が特に好ましい。
無置換銅フタロシアニン顔料の平均粒径は特に制限はないが、印字濃度、彩度等の観点から、好ましくは5〜60nm、より好ましくは5〜50nm、特に好ましくは10〜50nmである。なお、平均粒径は、電子顕微鏡(TEM)による画像解析(2万倍)により、100個の顔料の長径の平均値より求めた。
無置換銅フタロシアニン顔料の形態は特に制限はなく、粉末状、顆粒状、塊状の乾燥顔料でもよく、ウエットケーキやスラリーでもよい。
〔ポリハロゲン銅フタロシアニン顔料(B)〕
ポリハロゲン銅フタロシアニンは、銅フタロシアニンが有する上記16個の水素原子の一部または全てを、ハロゲン原子で置換したものであり、ハロゲン原子が様々な比率で導入されたハロゲン化銅フタロシアニン又はそれらの混合物からなる。
本発明においては、分子中にハロゲン原子を平均10〜16個有するポリハロゲン銅フタロシアニン顔料が用いられる。ハロゲン原子の置換数が平均10〜16個の範囲であれば特に制限はないが、吐出信頼性、印字濃度、彩度等の印字性能の観点から、分子中にハロゲン原子を平均10〜16個、好ましくは平均12〜16個、より好ましくは平均13〜16個有することが好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子又は臭素原子が好ましく、ポリクロロ銅フタロシアニン顔料又はポリブロモ銅フタロシアニン顔料、又はそれらの混合物が好ましい。より具体的には、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36等が挙げられるが、ポリクロロ銅フタロシアニン顔料であるC.I.ピグメントグリーン7が特に好ましい。
なお、ハロゲン原子の平均個数は質量分析等で確認することができる。
ポリハロゲン銅フタロシアニン顔料の平均粒径は特に制限はないが、印字濃度、彩度等の観点から、好ましくは5〜60nm、より好ましくは5〜50nm、特に好ましくは10〜50nmである。なお、平均粒径の測定法は前記と同じである。
ポリハロゲン銅フタロシアニン顔料(B)の形態は特に制限はなく、粉末状、顆粒状、塊状の乾燥顔料でもよく、ウエットケーキやスラリーでもよい。
本発明に用いられるポリクロロ銅フタロシアニン顔料は、特開平8−291260号公報等に開示されている公知の方法、例えば、下記の(i)又は(ii)の方法によりまず粗製ポリクロロ銅フタロシアニンを製造した後、顔料化することによって得ることができる。
(i)無水フタル酸、尿素、銅源を有機溶媒中で反応させて得られた粗製銅フタロシアニンを、触媒の存在下でクロルスルホン酸中で80〜100℃で塩素ガスを導入して、1分子中の塩素原子数が平均10〜16個の範囲となるように塩素化する方法。
(ii)粗製銅フタロシアニンを、無水塩化アルミニウムと食塩との共融混合物中で、150〜200℃で塩素ガスを導入して塩素化する方法。
上記で得られた粗製ポリクロロ銅フタロシアニンを顔料化するが、顔料化方法としては、湿式磨砕法、結晶化溶剤法、硫酸法、乾式磨砕法等が挙げられ、具体的には、下記の(iii)〜(v)の方法が挙げられる。
(iii)粗製ポリクロロ銅フタロシアニンを、食塩、ボウ硝、塩化カルシウム等の磨砕助剤、キシレン、クロロベンゼン、ニトロトルエン等の結晶化溶剤、及びエチレングリコール、ポリエチレングリコール等の粘結剤と共に、加熱下でニーダー等で磨砕処理した後、結晶化溶剤を留去する方法。
(iv)粗製銅フタロシアニンを上記の結晶化溶剤の存在下でボールミル、アトライター、ビーズミル等の分散機を用いて磨砕し、加熱処理した後、溶剤を留去する方法。
(v)粗製ポリクロロ銅フタロシアニン又はその磨砕物を、硫酸換算で6〜10倍量の75〜98%硫酸に湿潤させた後、水中で顔料化する方法。
ポリブロモ銅フタロシアニン顔料も上記と同様の方法により製造することができる。
〔インクジェット記録用顔料組成物〕
本発明のインクジェット記録用顔料組成物においては、無置換銅フタロシアニン顔料(A)及びポリハロゲン銅フタロシアニン顔料(B)のそれぞれ1種又は2種以上を所定の割合で混合して用いる。
顔料組成物中、ポリハロゲン銅フタロシアニン顔料(B)の含有量は、無置換銅フタロシアニン顔料(A)100重量部に対して、0.5〜50重量部であり、好ましくは1〜30重量部、更に好ましくは2〜20重量部である。前記の使用量が0.5重量部以上であれば印字濃度や彩度等の向上効果が発現され、50重量部以下であれば、色相の変化、彩度の低下、インク滲み等の悪影響を抑制することができる。
無置換銅フタロシアニン顔料(A)とポリハロゲン銅フタロシアニン顔料(B)を混合する場合は、それらを同一の合成槽で合成混合してもよいし、それらを別々に合成し、その後の乾燥工程、粉砕工程、分級工程、及び顔料分散工程等のいずれかの工程で混合してもよい。一次粒子径を揃えたり、分散安定性を高める観点から、両者を同一の合成槽で合成することが好ましい。該混合物は、両者が混合されていればよく、必ずしも全体が均一に混合されていなくてもよい。
〔ポリマー〕
本発明に用いられるポリマー粒子を構成するポリマーとしては、ポリマーを105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が好ましくは10g以下、より好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である水不溶性ポリマーが好ましい。溶解量は、ポリマーが塩生成基の種類に応じて、ポリマーの塩生成基を酢酸又は水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
水不溶性ポリマーとしては、塩生成基含有モノマー(a)(以下「(a)成分」ということがある)と、マクロマー(b)(以下「(b)成分」ということがある)と、炭素数12〜22の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基含有モノマー(c)(以下「(c)成分」ということがある)及び/又は芳香環含有モノマー(d)(以下「(d)成分」ということがある)由来の構成単位とを含むモノマー混合物(以下「モノマー混合物」ということがある)を共重合させてなるグラフトポリマーが好ましい。このグラフトポリマーは、(a)成分由来の構成単位と、(b)成分由来の構成単位と、(c)成分由来の構成単位及び/又は(d)成分由来の構成単位を有する。より好適なポリマーは、(a)成分由来の構成単位と、(c)成分由来の構成単位及び/又は(d)成分由来の構成単位を主鎖に有し、(b)成分由来の構成単位を側鎖に有するグラフトポリマーである。
塩生成基含有モノマー(a)は、得られる水分散体の分散安定性を高める観点から用いられる。塩生成基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、アンモニウム基等が挙げられるが、特にカルボキシ基が好ましい。
塩生成基含有モノマー(a)としては、特開平9−286939号公報段落〔0022〕等に記載されているカチオン性モノマー、アニオン性モノマー等が挙げられる。
カチオン性モノマーの代表例としては、不飽和アミン含有モノマー、不飽和アンモニウム塩含有モノマー等が挙げられる。これらの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(N',N'−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びビニルピロリドンが好ましい。
アニオン性モノマーの代表例としては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。不飽和リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中では、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
マクロマー(b)は、顔料を含有するポリマー粒子の分散安定性を高める観点から用いられる。マクロマーとしては、数平均分子量500〜100,000、好ましくは1,000〜10,000の重合可能な不飽和基を有するモノマーであるマクロマーが挙げられる。なお、マクロマー(b)の数平均分子量は、カラムとして東ソー株式会社製、G4000HXL+G2000HXLを用い、溶離液として50mM CH3COOH/1級を含有するテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
マクロマー(b)の中では、ポリマー粒子の分散安定性等の観点から、片末端に重合性官能基を有する、スチレン系マクロマー及び芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマーが好ましい。
スチレン系マクロマーとしては、スチレン系モノマー単独重合体、又はスチレン系モノマーと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、クロロスチレン等が挙げられる。
芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマーとしては、芳香族基含有(メタ)アクリレートの単独重合体又はそれと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数7〜22、好ましくは炭素数7〜18、更に好ましくは炭素数7〜12のアリールアルキル基、又は、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6〜22、好ましくは炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数6〜12のアリール基を有する(メタ)アクリレートであり、ヘテロ原子を含む置換基としては、ハロゲン原子、エステル基、エーテル基、ヒドロキシ基等が挙げられる。例えばベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート等が挙げられ、特にベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。
また、それらのマクロマーの片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、共重合される他のモノマーとしては、アクリロニトリル等が好ましい。
スチレン系マクロマー中におけるスチレン系モノマー、又は芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマー中における芳香族基含有(メタ)アクリレートの含有量は、顔料との親和性を高める観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
マクロマー(b)は、オルガノポリシロキサン等の他の構成単位からなる側鎖を有するものであってもよい。この側鎖は、例えば下記式(1)で表される片末端に重合性官能基を有するシリコーン系マクロマーを共重合することにより得ることができる。
CH2=C(CH3)−COOC36−〔Si(CH32O〕t−Si(CH33 (1)
(式中、tは8〜40の数を示す。)。
(b)成分として商業的に入手しうるスチレン系マクロマーとしては、例えば、東亜合成株式会社の商品名、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)等が挙げられる。
炭素数12〜22の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基含有モノマー(c)は、保存安定性、印字濃度、画像均一性の向上の観点から用いられる。(c)成分としては、炭素数12〜22、特に炭素数14〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
(c)成分の好適例としては、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)テトラデシル(メタ)アクリレート、(イソ)パルミチル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(イソ)」は、これらの基が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの基が存在しない場合には、ノルマルを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート又はそれらの両方を示す。
モノマー混合物には、印字濃度、画像均一性の向上の観点から、芳香環含有モノマー(d)が含有される。(d)成分としては、炭素数6〜22の芳香環含有モノマーが好ましい。
(d)成分の好適例としては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6〜22、好ましくは炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族基を有するビニルモノマーが好ましく、例えば、前記のスチレン系モノマー(d−1成分)、前記の芳香族基含有(メタ)アクリレート(d−2成分)が挙げられる。ヘテロ原子を含む置換基としては、前記のものが挙げられる。
(d)成分の中では、印字濃度向上の観点から、スチレン系モノマー(d−1成分)が好ましく、スチレン系モノマー(d−1成分)としては特にスチレン及び2−メチルスチレンが好ましい。(d)成分中の(d−1)成分の含有量は、印字濃度向上の観点から、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜80重量%である。
また、芳香族基含有(メタ)アクリレート(d−2)成分としては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましい。(d)成分中の(d−2)成分の含有量は、印字濃度及び光沢性の向上の観点から、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜80重量%である。
また、(d−1)成分と(d−2)成分を併用することも好ましい。
モノマー混合物には、更に、水酸基含有モノマー(e)(以下「(e)成分」ということがある)が含有されていてもよい。水酸基含有モノマー(e)は、分散安定性を高めるという優れた効果を発現させるものである。
(e)成分としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ。)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール(n=1〜15)・プロピレングリコール(n=1〜15))(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレートが好ましい。
モノマー混合物には、更に、下記式(2)で表されるモノマー(f)(以下「(f)成分」ということがある)が含有されていてもよい。
CH2=C(R1)COO(R2O)q3 (2)
(式中、R1は、水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基、R2は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基、R3は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜11の1価の炭化水素基又は炭素数1〜8のアルキル基を有していてもよいアリール基、qは、平均付加モル数を意味し、1〜60の数、好ましくは1〜30の数を示す。)
(f)成分は、吐出性を向上するという優れた効果を発現する。
式(2)において、ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子及び硫黄原子が挙げられる。
1の好適例としては、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基等が挙げられる。
2O基の好適例としては、オキシエチレン基、オキシトリメチレン墓、オキシプロパン−1,2−ジイル基、オキシテトラメチレン基、オキシヘプタメチレン基、オキシヘキサメチレン基及びこれらの2種以上の組合せからなる炭素数2〜7のオキシアルカンジイル基(オキシアルキレン基)が挙げられる。
3の好適例としては、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜8の脂肪族アルキル基、フェニル基、ベンジル基が挙げられる。
(f)成分の具体例としては、メトキシポリエチレングリコール(1〜30:式(2)中のqの値を示す。以下、同じ)(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート2−エチルヘキシルエーテル、(イソ)プロポキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(1〜30、その中のエチレングリコール:1〜29)(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、オクトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート2−エチルヘキシルエーテルが好ましい。
商業的に入手しうる(e)、(f)成分の具体例としては、新中村化学工業株式会社の多官能性アクリレートモノマー(NKエステル)M−40G、同90G、同230G、日本油脂株式会社のブレンマーシリーズ、PE−90、同200、同350、PME−100、同200、同400、同1000、PP−500、同800、同1000、AP−150、同400、同550、同800、50PEP−300、50POEP−800B、43PAPE600B等が挙げられる。
上記(a)〜(f)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
水不溶性ポリマーの製造時における、上記(a)〜(f)成分のモノマー混合物中における含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)又は該ポリマー中における(a)〜(f)成分に由来する構成単位の含有量は、次のとおりである。
(a)成分の含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは2〜40重量%、より好ましくは2〜30重量%、特に好ましくは3〜20重量%である。
(b)成分の含有量は、特に着色剤との相互作用を高める観点から、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
(c)成分の含有量は、保存安定性、印字濃度向上、画像均一性の観点から、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは10〜60重量%である。
(d)成分の含有量は、印字濃度向上、画像均一性の観点から、好ましくは2〜70重量%、より好ましくは3〜60重量%である。
(e)成分の含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは7〜20重量%である。
(f)成分の含有量は、吐出性向上の観点から、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%である。
モノマー混合物中における〔(c)成分+(d)成分〕の合計含有量は、印字濃度向上、画像均一性の観点から、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20〜70重量%、30〜60重量%である。
また、〔(a)成分+(e)成分+(f)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の分散安定性及び吐出性の観点から、好ましくは6〜60重量%、より好ましくは7〜50重量%である。
また、〔(a)成分/{(b)成分+[(c)成分及び/又は(d)成分]}〕の重量比は、得られる分散体の分散安定性及び印字濃度の観点から、好ましくは0.05〜1、より好ましくは0.08〜0.67、更に好ましくは0.1〜0.5である。
〔水不溶性ポリマーの製造〕
水不溶性ポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、モノマー混合物を共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒としては、特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒が水混和性を有する場合には、水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましい。
重合の際には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。
ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物1モルあたり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
重合の際には、さらに、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の重合連鎖移動剤を添加してもよい。
モノマー混合物の重合条件は、使用するラジカル重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるので一概には決定することができない。通常、重合温度は、好ましくは30〜100℃、より好ましくは50〜80℃であり、重合時間は、好ましくは1〜20時間である。また、重合雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
本発明で用いられるポリマーの重量平均分子量は、印字濃度、光沢性及び着色剤の分散安定性の観点から、5,000〜50万が好ましく、1万〜40万がより好ましく、1万〜30万が更に好ましく、2万〜30万が特に好ましい。なお、ポリマーの重量平均分子量は、実施例で示す方法により測定する。
本発明で用いられるポリマーが、塩生成基含有モノマー(a)由来の塩生成基を有している場合は中和剤により中和して用いる。中和剤としては、ポリマー中の塩生成基の種類に応じて、酸又は塩基を使用することができる。例えば、塩酸、酢酸、プロピオン酸、リン酸、硫酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グリセリン酸等の酸、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン等の塩基が挙げられる。
塩生成基の中和度は、10〜200%であることが好ましく、さらに20〜150%、特に50〜150%であることが好ましい。
ここで中和度は、塩生成基がアニオン性基である場合、下記式(3)、(4)によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーの酸価 (KOHmg/g)×ポリマーの重量(g)/(56×1000)]}×100 (3)
塩生成基がカチオン性基である場合は、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーのアミン価 (HCLmg/g)×ポリマーの重量(g)/(36.5×1000)]}×100 (4)
酸価やアミン価は、ポリマーの構成単位から、計算で算出することができる。または、適当な溶剤(例えばメチルエチルケトン)にポリマーを溶解して、滴定する方法でも求めることができる。
〔顔料組成物を含有するポリマー粒子(以下「顔料含有粒子」ともいう)の水分散体の製造〕
本発明の水分散体は、前記のインクジェット記録用顔料組成物(以下、単に「顔料組成物」という)を含有するポリマー粒子の水分散体である。その製造方法は特に限定されないが、下記工程I及びIIを有する方法によれば効率的に製造することができる。
工程I:ポリマー、顔料組成物、有機溶媒、及び水を含有する混合物を分散して、顔料(A+B)を含有するポリマー粒子の分散体を得る工程
工程II:工程Iで得られた分散体から有機溶媒を除去する工程
工程Iでは、まず、ポリマーを有機溶媒に溶解させ、次に顔料組成物、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、得られた有機溶媒溶液に加えて混合し、水中油型の分散体を得る方法が好ましい。混合物中、顔料組成物は、5〜50重量%が好ましく、10〜40重量%が更に好ましく、有機溶媒は、10〜70重量%が好ましく、10〜50重量%が更に好ましく、ポリマーは、2〜40重量%が好ましく、3〜20重量%が更に好ましく、水は、10〜70重量%が好ましく、20〜70重量%が更に好ましい。
ポリマーが塩生成基を有する場合は中和剤を用いることが好ましいが、中和度に特に制限はない。通常、最終的に得られる水分散体の液性が中性、例えばpHが4.5〜10であることが好ましい。ポリマーの望まれる中和度により、pHを決めることもできる。中和剤としては前記のものが挙げられる。また、ポリマーを予め中和しておいてもよい。
有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒及びジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒が挙げられる。好ましくは、水に対する溶解度が20℃において、50重量%以下でかつ10重量%以上のものであり、特に、メチルエチルケトンが好ましい。
工程Iにおける混合物の分散方法に特に制限はない。本分散だけでポリマー粒子の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは予備分散させた後、さらに剪断応力を加えて本分散を行い、ポリマー粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。工程Iの分散温度は、5〜50℃が好ましく、10〜35℃が更に好ましい。
混合物を予備分散させる際には、アンカー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。混合撹拌装置の中では、ウルトラディスパー〔浅田鉄鋼株式会社、商品名〕、エバラマイルダー〔株式会社荏原製作所、商品名〕、TKホモミクサー、TKパイプラインミクサー、TKホモジェッター、TKホモミックラインフロー、フィルミックス〔以上、特殊機化工業株式会社、商品名〕、クリアミックス〔エム・テクニック株式会社、商品名〕、ケイディーミル〔キネティック・ディスパージョン社、商品名〕等の高速攪拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、高圧ホモゲナイザー〔株式会社イズミフードマシナリ、商品名〕、ミニラボ8.3H型〔Rannie社、商品名〕に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー〔Microfluidics 社、商品名〕、ナノマイザー〔ナノマイザー株式会社、商品名〕、アルティマイザー〔スギノマシン株式会社、商品名〕、ジーナスPY〔白水化学株式会社、商品名〕、DeBEE2000 〔日本ビーイーイー株式会社、商品名〕等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等が挙げられる。これらの中では、顔料を用いる場合に、顔料の小粒子径化の観点から、高圧ホモジナイザーが好ましい。
工程IIでは、得られた分散体から、公知の方法で有機溶媒を留去して水系にすることで、顔料組成物を含有するポリマー粒子の水分散体を得ることができる。得られたポリマー粒子を含む水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されている。残留有機溶媒の量は0.1重量%以下であることが好ましく、0.01重量%以下であることがより好ましい。
得られた顔料組成物を含有するポリマー粒子の水分散体は、顔料組成物を含有するポリマーの固形分が水を主媒体とする中に分散しているものである。ここで、ポリマー粒子の形態は特に制限はなく、少なくとも顔料組成物とポリマーにより粒子が形成されていればよい。例えば、ポリマーに顔料組成物が内包された粒子形態、ポリマー中に顔料組成物が均一に分散された粒子形態、ポリマー粒子の表面に顔料組成物が露出された粒子形態等が含まれる。
無置換銅フタロシアニン顔料(A)と分子中にハロゲン原子を平均10〜16個有するポリハロゲン銅フタロシアニン顔料(B)とを含有する顔料組成物の合計量とポリマーとの重量比[ポリマー/顔料組成物の合計量]は、ポリマー粒子の分散安定性の観点から、90/10〜10/90であることが好ましく、80/20〜20/80であることが更に好ましく、60/40〜20/80が特に好ましい。
〔インクジェット記録用水分散体及び水系インク〕
本発明の水系インクは、本発明の水分散体を含有し、必要により、湿潤剤、分散剤、消泡剤、防黴剤、キレート剤等の添加剤を添加することができる。これらの添加剤の混合方法に特に制限はない。
インクジェット記録用水分散体及び水系インク中における、各成分の含有量は、印字濃度、彩度等の観点から次のとおりである。
顔料組成物を含有するポリマー粒子の含有量は、好ましくは1〜30重量%、2〜25重量%である。
顔料組成物の合計含有量は、好ましくは0.5〜20重量%、更に好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは1〜10重量%である。
ポリマーの含有量は、好ましくは0.5〜20重量%、更に好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは1〜10重量%である。
水の含有量は、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜80重量%である。
水分散体及び水系インクにおける顔料組成物を含有するポリマー粒子の平均粒径は、吐出信頼性、彩度、分散安定性等の観点から、好ましくは40〜400nm、より好ましくは50〜300nm、特に好ましくは60〜200nmである。なお、平均粒径の測定は、実施例記載の方法で行う。
水分散体の固形分10重量%における粘度(20℃)は、水系インクとした時に良好な粘度とするために、2〜6mPa・sが好ましく、2〜5mPa・sが更に好ましい。また、水系インクの粘度(20℃)は、良好な吐出性を維持するために、2〜12mPa・sが好ましく、2.5〜10mPa・sが更に好ましい。なお、水分散体及び水系インクの粘度の測定は、E型粘度計を用いて、測定温度20℃、測定時間1分、回転数100rpm、標準ローター(1°34′×R24)使用の条件で測定する。
本発明の水分散体及び水系インクの好ましい表面張力(20℃)は、水分散体としては、好ましくは30〜70mN/m、更に好ましくは35〜68mN/mであり、水系インクとしては、好ましくは25〜50mN/m、更に好ましくは27〜45mN/mである。また、水系インクのpHは4〜10が好ましい。
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「重量部」及び「重量%」である。なお、ポリマーの重量平均分子量、顔料含有ポリマー粒子の平均粒径の測定方法は以下のとおりである。
(1)ポリマーの重量平均分子量の測定
標準物質としてポリスチレン、カラムとして東ソー株式会社製、G4000HXL+G2000HXLを用い、溶離液として50mM CH3COOH/1級を含有するテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより重量平均分子量を測定した。
(2)顔料含有ポリマー粒子の平均粒径の測定
大塚電子株式会社製のELS−8000を用いて測定した。測定条件は、温度が25℃、入射光と検出器との角度が90°、積算回数が200回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。また標準物質としてセラディン(Seradyn)社製のユニフォーム・マイクロパーティクルズ(平均粒径204nm)を用いた。
製造例1及び2(ポリマー溶液の調製)
反応容器内に、メチルエチルケトン10部、重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.02部、及び表1に示す各モノマー(重量部表示)の各20%ずつを入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロート中に、表1に示す各モノマー(重量部表示)のうちの残りの80%ずつを仕込み、次いで前記の重合連鎖移動剤0.08部、メチルエチルケトン10部及び重合開始剤(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))1.0部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。滴下終了後、その混合溶液の液温を75℃で2時間維持した後、前記の重合開始剤0.6部をメチルエチルケトン10部に溶解した溶液を該混合溶液に加え、更に75℃で3時間、85℃で2時間熟成させ、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部を、減圧下、105℃で2時間乾燥させ、溶媒を除去することによってポリマーを単離した。結果を表1に示す。
Figure 2008156523
実施例1〜4及び比較例1〜2(顔料含有粒子の水分散体及び水系インクの製造)
製造例1又は2で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー40部を、メチルエチルケトン71.5部に溶かし、その中にイオン交換水209.7部と中和剤(5N−水酸化ナトリウム水溶液)を中和度65%になるように加えた混合物で塩生成基を中和し、更に表2に記載の無置換銅フタロシアニン顔料(A)とポリクロロ銅フタロシアニン顔料(B)との混合物60部を加え、ディスパーで分散した。得られた混合物をマイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名)で180MPaの圧力で15パス分散処理した。得られた分散体から、エバポレーターを用いて減圧下で60℃でメチルエチルケトンを除去し、固形分量が20%の顔料含有粒子の水分散体を得た。その結果を表2に示す。
上記で得られた顔料含有粒子の水分散体50部、グリセリン10部、2−エチル−1,3−ブタンジオール10部、2−ピロリドン2部、アセチレングリコールEO付加物(n=10)〔川研ファインケミカル株式会社製、商品名:アセチレノールE100〕1部及びイオン交換水27部を混合し、得られた混合液を1.2μmのメンブランフィルター〔Sartorius社製、商品名:Minisart〕で濾過し、水系インクを得た。
比較例1は、無置換銅フタロシアニン顔料(A)とポリクロロ銅フタロシアニン顔料(B)との混合物に代えて、無置換銅フタロシアニン顔料(A)を同量用いた以外は上記と同様に行った。比較例2は無置換銅フタロシアニン顔料(A)とポリクロロ銅フタロシアニン顔料(B)との混合物に代えて、ポリクロロ銅フタロシアニン顔料(B)を同量用いた以外は上記と同様に行った。
各実施例及び各比較例で得られた水系インクの物性を下記方法に基づいて評価した。その結果を表2に示す。
(1)吐出信頼性
株式会社リコー製のインクジェットプリンター(品番:IPSiO G717、ピエゾ方式)を用いて、普通紙a(6200紙、株式会社リコー製)に2000文字/枚を100枚連続印刷した後、文字、ベタ画像及び罫線を含むテスト文書を印字し、(i)シャープでハッキリとした文字、(ii)均一なベタ画像、及び(iii)ヨレのない罫線の3項目を評価し、以下の判断基準により評価した。
〔判断基準〕
○:3項目をいずれも満足する(問題なし)
△:3項目をいずれもほぼ満足する(実使用上問題なし)
×:1項目以上満足しない(実使用上問題あり)
(2)印字濃度
前記の普通紙a(6200紙)、普通紙b(4024紙、富士ゼロックス株式会社製)に対し、べた画像を印字し、1日放置後、光学濃度計SpectroEye(グレタグマクベス社製)を用いて任意の10箇所を測定し、平均値を求めた。
(3)画像均一性(隠蔽性)
前記の普通紙a(6200紙)に対し、ベタ画像を印字し、色むらがあるか否かを目視で、以下の判断基準により評価した。
〔判断基準〕
○:色むらなし(抜けなし)
×:色むらがある(白抜けあり)
(4)色間滲み
前記の普通紙a(6200紙)に対し、文字部のにじみを官能評価し、以下の判断基準により評価した。
〔判断基準〕
○:漢字、ひらがな全てが問題なく再現されている。
△:漢字の一部が再現されないが、一部は判読できる。
×:漢字、ひらがなの判読が不可能である。
(5)定着性
前記の普通紙a(6200紙)に対し、20mm×20mmの大きさのべた画像を印字し、10秒後の印字画像の上から別の普通紙P紙の裏面を重ね、さらに上から490g(荷重面積43mm×30mm)の荷重をかけた状態で、べた画像表面を移動させ、重ねた紙の汚れを測定した。評価は以下の判断基準により行った。
〔判断基準〕
○:ほとんど印字物はとれず、周りが青くならない。
△:ほとんど印字物はとれず、僅かに周りが青くなるが、実用上問題ないレベル。
×:印字物が擦りとられ、周りがひどく青くなり、指も相当汚れる。
(6)彩度
前記の普通紙a(6200紙)に対し、べた画像を印字し、1日放置後、光学濃度計SpectroEye(グレタグマクベス社製)を測定モードL***に設定し、任意の5箇所を測定し平均値を求め、その平均値から以下の判断基準により評価した。彩度とは、色のあざやかさの程度を表す尺度であり、等しい明るさの無彩色からの距離で表す。ここでは、彩度を、下記式で示すように、L***表色系(ここで、L*は明度、a*は赤−緑方向の色度、b*は黄−青方向の色度を示す。)で、中心(a**が共に0の位置:無彩色)からの距離で表す。
彩度={(a*2+(b*21/2
〔判断基準〕
○:46以上
△:45以上、46未満
×:45未満
Figure 2008156523
表2から、実施例1〜4の水系インクは、比較例1〜2の水系インクに比べて、吐出信頼性、印字濃度、画像均一性、定着性、彩度に優れ、色間滲みもないことが分かる。
本発明のインクジェット記録用水分散体を含有する水系インクによれば、印字濃度、彩度等の印字性能に優れた印刷物を得ることができる。本発明の水分散体及び水系インクは、シアン顔料を使用する場合において特に有用である。

Claims (9)

  1. 無置換銅フタロシアニン顔料(A)と分子中にハロゲン原子を平均10〜16個有するポリハロゲン銅フタロシアニン顔料(B)とを含有する顔料組成物であって、無置換銅フタロシアニン顔料(A)100重量部に対して、1分子中にハロゲン原子を平均10〜16個有するポリハロゲン銅フタロシアニン顔料(B)が0.5〜50重量部である、インクジェット記録用顔料組成物。
  2. 無置換銅フタロシアニン顔料(A)がC.I.ピグメントブルー15:3及び/又はC.I.ピグメントブルー15:4である、請求項1に記載のインクジェット記録用顔料組成物。
  3. ポリハロゲン銅フタロシアニン顔料(B)がポリクロロ銅フタロシアニン顔料及び/又はポリブロモ銅フタロシアニン顔料である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用顔料組成物。
  4. ポリハロゲン銅フタロシアニン顔料(B)がC.I.ピグメントグリーン7及び/又はC.I.ピグメントグリーン36である、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用顔料組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の顔料組成物を含有するポリマー粒子を含む、インクジェット記録用水分散体。
  6. ポリマー粒子を構成するポリマーが、塩生成基含有モノマー(a)由来の構成単位及びマクロマー(b)由来の構成単位、並びに炭素数12〜22の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基含有モノマー(c)及び/又は芳香環含有モノマー(d)由来の構成単位を含有するグラフトポリマーである、請求項5に記載のインクジェット記録用水分散体。
  7. グラフトポリマー中における、炭素数12〜22の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基含有モノマー由来の構成単位の含有量が10〜70重量%である、請求項6に記載のインクジェット記録用水分散体。
  8. グラフトポリマー中における、芳香環含有モノマー由来の構成単位の含有量が2〜70重量%である、請求項6に記載のインクジェット記録用水分散体。
  9. 請求項5〜8のいずれかに記載の水分散体を含有する、インクジェット記録用水系インク。
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