以下、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、まず、特定の構成単位を有するポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂又はポリカーボネート樹脂を含有する感光層または電荷輸送層、或いは第二の電荷輸送層、或いはまた保護層を設けたことを特徴とする電子写真感光体を提供する。
ここにおいて用いるポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂又はポリカーボネート樹脂は、少なくとも下記一般式(1)で表される構成単位を有する樹脂である。以下、これら樹脂を総称して「本件樹脂」ということがある。
〔式中、R1、R2はハロゲン原子、炭素数1〜6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1〜6の無置換もしくは置換アルコキシ基又は無置換もしくは置換アリール基を示し(R1、R2が各々複数個存在するときは、同一であっても別異であってもよい)、R3は炭素数1〜6の無置換もしくは置換アルキル基、又は一般式−(CH2)mCH3で表されるアルキル基を示し、a、bは各々0〜4の整数を示し、n、mは8〜27の整数を示す。〕
R1、R2で示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
R1、R2で示される炭素数1〜6の無置換もしくは置換アルキル基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられ、これらのアルキル基は、フッ素原子、シアノ基、フェニル基もしくはハロゲン原子又は炭素数1〜6の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基で置換されたフェニル基を含有していてもよい。
具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
R1、R2で示される炭素数1〜6の無置換もしくは置換アルコキシ基とは、上記のアルキル基をアルコキシ基に変えたものであり、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
R1、R2で示される無置換もしくは置換アリール基は、複素環基を含めた基を表し、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、フルオレニリデンフェニル基、5H−ジベンゾ〔a,d〕シクロヘプテニリデンフェニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、カルバゾリル基、ピリジニル基、ピロリジル基、オキサゾリル基等が挙げられ、これらの基は、上記アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を置換基として有していてもよい。
なお、R3で表される炭素数1〜6の無置換もしくは置換アルキル基は、上記と同義である。
一般式(1)で表される構成単位を有するポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂又はポリカーボネート樹脂は、下記一般式(4)で表される基を有していてもよい。
〔式中、X1はイミノカルボニルオキシ基、オキシカルボニル基又はオキシカルボニルオキシ基を示し、Xは炭素数2〜20の無置換もしくは置換脂肪族炭化水素2価基、無置換もしくは置換脂環式炭化水素2価基、炭素数6〜20の無置換もしくは置換芳香族炭化水素2価基、これら2価基が結合した2価基、下記式(i)、(ii)もしくは(iii)
〔式中、R4、R5、R6、R7はハロゲン原子、炭素数1〜6の無置換もしくは置換アルキル基又は無置換もしくは置換アリール基を示し(R4、R5、R6、R7が各々複数個存在するときは、同一であっても別異であってもよい)、c、dは0〜4の整数を示し、e、fは0〜3の整数を示し、Yは単結合、炭素数2〜12の直鎖状のアルキレン基、炭素数3〜12の無置換もしくは置換分岐状アルキレン基、一つ以上の炭素数1〜10のアルキレン基と一つ以上の酸素原子及び硫黄原子から構成される2価基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−COO−又は下記式(iv)〜(xiii)
(式中、Z1は炭素数2〜20の無置換もしくは置換脂肪族炭化水素2価基又は無置換もしくは置換アリレン基を示し、Z2は炭素数2〜20の無置換もしくは置換脂肪族炭化水素2価基又は無置換もしくは置換アリレン基を示し、R8はハロゲン原子、炭素数1〜6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1〜6の無置換もしくは置換のアルコキシ基又は無置換もしくは置換アリール基を示し、R9、R10は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1〜6の無置換もしくは置換のアルコキシ基又は無置換もしくは置換アリール基を示し、またR9、R10が結合して炭素数5〜12の炭素環を形成してもよく、R11、R12、R13、R14は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1〜6の無置換もしくは置換のアルコキシ基又は無置換もしくは置換アリール基を示し、R15はハロゲン原子、炭素数1〜6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1〜6の無置換もしくは置換のアルコシキ基又は無置換もしくは置換アリール基を示し、R16、R17は単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R18、R19は炭素数1〜6の無置換もしくは置換アルキル基又は無置換もしくは置換アリール基を示し、gは0〜4の整数、hは1又は2、iは0〜4の整数、jは0〜20の整数、kは0〜2000の整数を示す)の中から選ばれた1種を示す。〕
Xで示される無置換もしくは置換脂肪族炭化水素2価基、無置換もしくは置換脂環式炭化水素2価基の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ぺンタンジオール、3−メチル−1,5−ぺンタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,5−へキサンジオール、1,7−へプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオぺンチルグリコール、2−エチル−1,6−へキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、キシリレンジオール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)べンゼン、1,4−ビス(3−ヒドロキシプロピル)べンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシブチル)べンゼン、1,4−ビス(5−ヒドロキシぺンチル)べンゼン、1,4−ビス(6−ヒドロキシヘキシル)べンゼン、イソホロンジオール等のジオールからヒドロキシ基を2個除いた2価基を挙げらることができる。
Xで示される無置換もしくは置換芳香族炭化水素2価基としては、上記無置換もしくは置換アリール基から誘導される2価基を挙げることができ、無置換もしくは置換アルキレン基としては、上記無置換もしくは置換アルキル基から誘導される2価基を挙げることができる。
Yで示される一つ以上の炭素数1〜10のアルキレン基と一つ以上の酸素原子及び硫黄原子から構成される2価基に特に制限はないが、例えば具体例として、OCH2CH2O、OCH2CH2OCH2CH2O、OCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2O、OCH2CH2CH2O、OCH2CH2CH2CH2O、OCH2CH2CH2CH2CH2CH2O、OCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2O、CH2O、CH2CH2O、CHEtOCHEtO、CHCH3O、SCH2OCH2S、CH2OCH2、OCH2OCH2O、SCH2CH2OCH2OCH2CH2S、OCH2CHCH3OCH2CHCH3O、SCH2S、SCH2CH2S、SCH2CH2CH2S、SCH2CH2CH2CH2S、SCH2CH2CH2CH2CH2CH2S、SCH2CH2SCH2CH2S、SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2S等が挙げられる。
炭素原子数3〜12の分岐状のアルキレン基に修飾する置換基としては、無置換もしくは置換アリール基又はハロゲン原子が挙げられる。
Z1、Z2が無置換もしくは置換脂肪族炭化水素の2価基である場合としては、Xが脂肪族炭化水素の2価基、脂環式炭化水素の2価基である場合のジオールからヒドロキシ基を除いた2価基を挙げることができる。
また、Z1、Z2が無置換もしくは置換アリレン基である場合として、上記無置換もしくは置換アリール基から誘導される2価基を挙げることができる。
Xが芳香族炭化水素2価基である場合の好ましい具体例としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス〈4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジメチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ぺンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルぺンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)へキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)へプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)へキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロぺンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルエーテル、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3'−ジメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、3,3'−ジメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3'−ジフェニル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3'−ジクロロ−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ケトン、3,3,3',3'−テトラメチル−6,6'−ジヒドロキシスピロ(ビス)インダン、3,3',4,4'−テトラヒドロ−4,4,4',4'−テトラメチル−2,2'−スピロビ(2H−1−べンゾピラン)−7,7'−ジオール、トランス−2,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブテン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)キサンテン、1,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,6−へキサンジオン、α,α,α',α'−テトラメチル−α,α'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α',α'−テトラメチル−α,α'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−キシレン、2,6−ジヒドロキシジベンゾ−p−ジオキシン、2,6−ジヒドロキシチアントレン、2,7−ジヒドロキシフェノキサチイン、9,10−ジメチル−2,7−ジヒドロキシフェナジン、3,6−ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6−ジヒドロキシジベンゾチオフェン、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、1,4−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシピレン、ハイドロキノン、レゾルシン、4−ヒドロキシフェニル−4−ヒドロキシベンゾエート、エチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、ジエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、トリエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、p−フェニレン−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、1,6−ビス(4−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−1H,1H,6H,6H−パーフルオロヘキサン、1,4−ビス(4−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−1H,1H,4H,4H−パーフルオロブタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラメチルジシロキサン等で示されるジオールからヒドロキシ基を2個除いた2価基が挙げられる。
なお、本明細書中、同一表現の置換基の具体例は、上記にあげたものと同定義である。
本発明において用いるポリウレタン樹脂は、上記一般式(1)で表される構成単位を有する樹脂であり、ジオールとジイソシアネートとの重付加やジアミンとビスクロロホーメートの重縮合等、公知の方法によって製造することができる(高分子学会編、共立出版(株)、「新高分子実験学3、高分子の合成・反応(2)縮合系高分子の合成」、P117〜119、P229〜233)。
具体的には、主として一般式HO−A−OH〔Aは上記一般式(1)における2価基を示す〕で表されるジオールと、ジイソシアネートとの反応によって製造される。反応温度、溶媒、触媒、分子量調節剤等についても、公知の条件が採用できる。
ジオールとジイソシアネートとの重合反応においては、分子量を調節するために、分子量調節剤として末端停止剤を用いることが望ましい。したがって、本発明で使用されるポリウレタン樹脂の末端部には、末端停止剤に起因する置換基が結合してもよい。
使用される末端停止剤には、公知の1価の芳香族ヒドロキシ化合物、1価の芳香族ヒドロキシ化合物のハロホーメート誘導体、1価のカルボン酸又は1価のカルボン酸のハライド誘導体等がある。これらの末端封止剤は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。
好ましい末端停止剤としては、1価の芳香族ヒドロキシ化合物であるフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール等又はクロロギ酸フェニル等を挙げることができる。
このようにして得られたポリウレタン樹脂は、重合中に使用した触媒や酸化防止剤、未反応のジオールや末端停止剤又は重合中に生成した無機塩等の不純物を除去して使用に供される。
本発明において用いるポリエステル樹脂は、上記一般式(1)で表される構成単位を有する樹脂であり、ジオール(ビスフェノールを含む)とジカルボン酸誘導体との求核アシル置換重合、ジカルボン酸塩と脂肪族炭化水素ジハライドとの求核脂肪族炭化水素基置換重合等によって製造することができる(高分子学会編、共立出版(株)、「新高分子実験学3、高分子の合成・反応(2)縮合系高分子の合成」、P49〜54、P77〜95)。反応温度、溶媒、触媒、分子量調節剤等についても、公知の条件が採用できる。
ジオールとジカルボン酸誘導体の重合反応においては、分子量を調節するために、分子量調節剤として末端停止剤を用いることが望ましい。したがって、本発明で使用されるポリエステル樹脂の末端部には、末端停止剤に起因する置換基が結合してもよい。
本発明において用いるポリカーボネート樹脂は、上記一般式(1)で表される構成単位を有する樹脂であり、ビスフェノールと炭酸誘導体との重合反応によって製造することができる(編者本間清一、日刊工業新聞社「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」)。
少なくともジオールの1種を使用するビスアリールカーボネートとのエステル交換法、ジオールとホスゲン等のハロゲン化カルボニル化合物との溶液重合法又は界面重合法、ジオールから誘導されるビスクロロホーメート等を用いる方法等により製造することができる。また、機械的特性を調節するために、共重合ポリカーボネート樹脂を使用することもできる。反応温度、溶媒、触媒、分子量調節剤等についても、公知の条件が採用できる。
ジオールとジカルボン酸誘導体の重合反応においては、分子量を調節するために、分子量調節剤として末端停止剤を用いることが望ましい。したがって、本発明で使用されるポリカーボネート樹脂の末端部には、末端停止剤に起因する置換基が結合してもよい。
本発明の電子写真感光体に使用されるポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂又はポリカーボネート樹脂の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で1000〜1000000であり、好ましくは、2000〜500000である。この分子量が1000未満では、機械的強度が小さくなり、成膜時にひびが入ったりして実用性に乏しくなり、1000000を越えると、一般溶媒に対する溶解性が悪くなったり、溶液の粘度が高くなって塗工が困難になったりして実用上、その取扱いに不都合を生じることとなる。
機械的特性等を改良するために、重合時に分岐化剤を少量加えることもでき、分岐化剤としては、芳香族ヒドロキシル基、ハロホーメート基、カルボン酸基、カルボン酸ハライド基又は活性なハロゲン原子等から選ばれる反応基を3個(同種でも異種でもよい)以上有する化合物が挙げられる。これらの分岐化剤は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。
本発明は、導電性支持体上に、少なくとも上記ポリウレタン樹脂、上記ポリエステル樹脂又は上記ポリカーボネート樹脂(本件樹脂)を含有した感光層を形成したことを特徴とする電子写真感光体である。本件樹脂は、バインダー樹脂として機能するものであり、感光層、電荷輸送層には、導電性支持体上から最も離れた部位に存在させることが好ましい。すなわち、感光体の最表層にこれらの樹脂を含有させた場合、表面エネルギーを低下させる効果を奏するからである。
つまり、本件樹脂は、構成単位の分子構造内に、必ず一個の長鎖アルキル基が存在することに由来するのである。一般に、分子内に長鎖アルキル基を有するものは、臨界表面張力がシロキサン系樹脂と同様に小さいことが知られている。このため、上記樹脂を最表層に用いた場合、感光体の表面摩擦抵抗が小さくなり、高耐久化が可能になるものである。また同時に、画質低下の原因と考えられるイオン性化合物が表面に付着する量を軽減する作用を持っているため、高画質が長時間にわたって維持されるという効果をも奏することとなる。
本発明に用いる本件樹脂は、長鎖アルキル基部位の長鎖数は幅広く選択できるため、合成の自由度が高く、また、所望の表面物性に容易に調整できるという利点を有している。しかし通常は、長鎖アルキル基が上記一般式(1)において、n、mが7以下の場合は十分に臨界表面表力が小さくならないこと、n、mが28以上の場合はモノマーの結晶性が増し、本件樹脂の製造が困難となることから、本発明においては、n、mが8〜27のものが採用されるのである。
このように本発明に用いられる本件樹脂は、感光体の表面エネルギーを低下させる優れた機能をもっているため、感光層、電荷輸送層のバインダーとして好適である上に、導電性支持体上に感光層或いは電荷輸送層に保護層を順次設けた積層型電子写真感光体のその保護層にも用いることもできる。
一般式(1)で表される構成単位を有するポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂又はポリカーボネート樹脂において、一般式(1)の構成単位の含有する割合は、1モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは20モル%以上である。この割合が1モル%未満では、臨界表面張力が過大となり、実質的にその効果を示さない。
このように本発明で用いられる本件樹脂は、感光体の表面エネルギーを低下させる優れた機能を持っているため、感光層、電荷輸送層、保護層のバインダーとして好適である。
本発明は、本件樹脂を感光層、電荷輸送層または保護層に含有させることによって、表面エネルギーが低減され、高画質の維持等の所望の特性を得ることができるものであるが、機械的耐久性を調節するためにフィラーを含有させることができる。本発明においては、本件樹脂とフィラーとを同時に感光層、電荷輸送層または保護層に含有させることによって、一層の耐摩耗性の向上を図り、かつ高画質の維持、繰り返し使用しても電位変動のない、耐久性に富んだ高感度の電子写真感光体とすることができるものである。
フィラーとしては、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、窒化ケイ素、酸化カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、カーボンブラック、フッ素系樹脂微粉末、ポリシロキサン系樹脂微粉末、ポリエチレン系樹脂微粉末、コア−シェル構造を有するグラフト共重合体等が挙げられる。
これらフィラーは、分散性向上等のために無機物、有機物で表面処理されていてもよい。一般に、撥水性処理としてシランカップリング剤で処理したもの又はフッ素系シランカップリング剤処理したもの、高級脂肪酸処理したものがあり、無機物処理としては、フィラー表面をアルミナ、ジルコニア、酸化スズ、シリカ処理したものが挙げられる。
フィラー含有量は、フィラーを含有させる層に対し、重量基準で通常は、5〜50%、好ましくは、10〜40%である。5%未満では、摩耗性の向上が十分に図れないことがあり、50%を越えると、感光層全体の透明性が損なわれることがあるので望ましくない。
フィラーの平均粒径は、通常は、0.05〜1.0μm、好ましくは、0.05〜0.8μmである。0.05μm未満では、耐摩耗性の向上が望めず、1.0μmを越えると、フィラーを含有する表面の凹凸が大きくなり、フィラーがクリーニングブレードを傷つけ、クリーニング不良が発生することがあるので望ましくない。
本発明においては、感光層又は電荷輸送層に電荷輸送機能を付与するために電荷輸送物質を添加することもでき、電荷輸送層物質は単独又は2種以上混合して用いられる。
この電荷輸送物質のうち、正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体(特開昭52−139065号公報、同52−139066公報に記載)、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体(特開平3−285960号公報に記載)、ベンジジン誘導体(特公昭58−32372号公報に記載)、α−フェニルスチルベン誘導体(特開昭57−73075号公報に記載)、ヒドラゾン誘導体(特開昭55−154955号、同55−156954号公報、同55−52063号公報、同56−81850号公報に記載)、トリフェニルメタン誘導体(特公昭5−10983号公報に記載)、アントラセン誘導体(特開昭51−94829号公報に記載)、スチリル誘導体(特開昭56−29245号公報、同58−198043号各公報に記載)、カルバゾール誘導体(特開昭58−58552号公報に記載)、ピレン誘導体(特開平2−94812号公報に記載)等を挙げることができる。
高分子型正孔輸送物質としては例えば、ポリ−N−カルバゾール誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメート誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アセトフェノン誘導体(特開平7−325409号公報に記載)、ジスチリルベンゼン誘導体、ジフェネチルベンゼン誘導体(特開平9−127713号公報に記載)、a−フェニルスチルベン誘導体(特開平9−297419号公報に記載)、ブタジエン誘導体(特開平9−80783号公報に記載)、水酸化ブタジエン(特開平9−80784号公報に記載)、ジフェニルシクロヘキサン誘導体(特開平9−80772号公報に記載)、ジスチリルトリフェニルアミン誘導体(特開平9−222740号公報に記載)、ジフェニルジスチリルベンゼン誘導体(特開平9−265197号、同9−265201号公報に記載)、スチルベン誘導体(特開平9−211877号公報に記載)、m−フェニレンジアミン誘導体(特開平9−304956号、同9−304957号公報に記載)、レゾルシン誘導体(特開平9−329907号公報に記載)、トリアリールアミン誘導体(特開昭64−9964号、特開平7−199503号、特開平8−176293号、特開平8−208820号、特開平8−253568号、特開平8−269446号、特開平3−221522号、特開平4−11627号、特開平4−183719号、特開平4−124163号、特開平4−320420号、特開平4−316543号、特開平5−310904号、特開平7−56374号、特開平8−62864号各公報、米国特許5,428,090号、同5,486,439号各明細書)などが挙げられる。
電荷輸送物質のうち、電子輸送物質としては、ジフェノキノン誘導体、ベンゾキン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、テトラシアノエチレン誘導体、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン誘導体、ジニトロベンゼン誘導体、ジニトロアントラセン誘導体、ジニトロアクリジン誘導体、ニトロアントラキノン誘導体、ジニトロアントラキノ誘導体、無水コハク酸誘導体、無水マレイン酸誘導体、ジブロモ無水マレイン酸誘導体等が挙げられる。
これら電荷輸送物質の含有量は、本件樹脂1重量部に対して、0.2〜3重量部、好ましくは0.4〜1.5重量部である。
本発明の電子写真感光体、電子写真感光体を用いた電子写真方法、電子写真感光体を有する電子写真装置及び電子写真装置に用いるプロセルカートリッジにおける書込光源としては、従来から使用されている780〜800nm付近に発振波長を有する半導体レーザー(LD)や、740nmに発振波長を有する代表的な発光ダイオード(LED)等が用いられる。また書込み密度、解像度を上げることができるデジタル記録方式にも対応できる400〜450nmの範囲に発振波長を有する半導体レーザー(LD)もしくは発光ダイオード(LED)が用いられ、これらの光源は光強度波長分布が極めて狭いものではあるが、温度環境、製造ロット等によって発振ピーク波長が数nm波長ほど長波長もしくは短波長側に波長変動するため、本発明の電子写真感光体の電荷輸送層は390〜460nmの範囲の光を充分透過させるものであることが好ましい。また、これらLDは光強度波長分布が極めて狭いので、電荷輸送層は390〜460nmの波長全域の光を透過する必要はなく、この領域において少なくとも一つの所望の単色光を透過できればよい。この場合、照射光の透過率が50%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。
電荷輸送層は実際のところドラム、シート状などの感光体形状、または製造上の問題から、全くの平面性、平滑性を有するものではないため、書き込み光の散乱あるいは反射による光量減少は少なくない。本発明でいう透過率とは単純にこのような電荷輸送層内部での散乱や反射光を差し引いた光、すなわち電荷輸送層表面に入射した光とその反体面から出てくる光との比を意味する。例えば図1に電荷輸送層の透過スペクトルの模式図を示す。図1から390〜460nm波長領域内で波長λ2(nm)光における透過率は下記式(B)から求められる。
(式中、T1は390〜460nm波長領域内での波長λ2より短い波長λ1光における透過率、また同様にT2は波長λ2における透過率を示す。)
本発明の電子写真感光体の表面における純水に対する接触角は85°以上が好ましい。より好ましくは95°以上である。すなわち本件樹脂の長鎖アルキル基に由来する撥水性の発現によって、純水に対する接触角が85°以上であると感光体の表面エネルギーの低下が達成される。感光体表面の純水に対する接触角が85°未満の場合、電子写真プロセスによる繰り返し使用によって表面に帯電生成物やトナーや紙からもたらされる脱落物が付着し易く、クリーニング不良や表面抵抗の低下による潜像の劣化(画像流れ)を生じやすい。一方純粋に対する接触角があまり大き過ぎても、今度は感光体との接着が不十分となるので、140°以下が好ましい。
従来公知の低表面エネルギーユニットをもつバインダー樹脂を用いた場合、感光体表面はその樹脂の表面配向により純水に対する接触角は初期的には100°以上の値を示すものもある。しかしながら、最表層が機械的摩耗等のため削れていくのに伴い、接触角は通常大幅に低下する。例えば低表面エネルギーバインダー樹脂として知られているシロキサン共重合ポリカーボネートをバインダー樹脂として用いた場合でも、減耗後の接触角は通常85°以下である。減耗後も低表面エネルギー状態を保つためには感光層のバルクとして低表面エネルギーユニットを多く有していることが必要である。
感光層のバルクの純水に対する接触角は実機中で感光体が1μm減耗した表面の接触角として定義される。最表面ではなく、感光体が1μm近くまで減耗した後は、接触角は一定となるので、1±0.3μm減耗した箇所の値を測定すればよい。これを測定するには実用に供されている複写機に感光体を装填して、実写テストを行なって摩耗させるのが実用的である。
しかし摩耗のさせ方として、例えば20℃、50%RH環境下で、荷重1000g、摩耗輪CS−5、回転速度60rpmの条件でテーバー摩耗試験機(東洋精機社製)にて1000回転程度させて表面を削っても良い。純水に対する接触角の測定は、接触角計CA−W型(協和界面化学社製)を用い、液滴法にて測定することができる。そして本発明のように電子写真感光体の最表面から1±0.3μm離れた位置の純水の対する接触角が85°以上140°以下であることが好ましい。より好ましくは95°以上である。
本発明の電子写真感光体の表面における純水に対する滑落角は65゜以下であることが好ましい。ここで滑落角とは、従来より転落角と表現されていた物性と同定義である。これまで電子写真感光体の低表面エネルギー化の物性評価としては摩擦係数、水接触角等が挙げられる。しかしながら、表面を低摩擦係数や高撥水性にしても必ずしも感光体の高耐久化に対して有効であるとは言えなかった。そこで水滴が基材表面から滑り始める臨界角、すなわち転落角を測定することで、帯電時に生成するイオン化合物が感光体に蓄積することを防ぐモデルとなることを見いだした。
この滑落角は接触角測定器に付属する機能としてついており、容易に測定することができる。また滑落角は水が滑り始める臨界角のため、着滴する水の重量によって値が異なり、重い(すなわち大きな体積)ほど滑落角は小さくなる。このため着滴する水は常に同重量でなくてはならない。本発明では水の体積を15〜20μlとして測定した場合の測定値で定義する。
実際に測定をおこなった結果、滑落角が65゜より大きい場合は実機評価テストにおいて画像流れがおきやすいことが確かめられた。また滑落角は小さいほど外部からの汚れがつきにくく効果があると予想されるが、滑落角が5゜より小さくなると、表面があまりに滑りやすく電子写真感光体の表面において潜像からトナーのドット形成の再現性において誤差が生じ、問題となることが分かった。よって電子写真感光体の表面における純水に対する滑落角が5゜以上65゜以下であることが好ましいが、より好ましくは5゜以上35゜以下である。これは優れていると判断した画像評価結果をより厳密に選別した結果から求められる。
本発明は本体樹脂を含有する感光層を設けた感光体について、その感光体表面における滑落角と画像流れの関係を明らかにした。しかしこの関係はなんら材料が限定されるものではなく、容易に類推されるように広く感光体の開発に応用することができる。また必要に応じて外部からの汚染物質のモデルとして、溶媒の種類を水に限らず、アルコール系の溶剤や汎用の有機溶剤にかえて評価し、開発の指針を得ることができる。その時、当然ながら着滴す各種溶剤の体積も前記の15〜20μlに限定されるものではない。
本発明の電子写真感光体を図2〜図5に示す。図2は、本発明の一つの電子写真感光体の概略断面図である。図2に示す電子写真感光体は、単層感光体であり、導電性支持体1上に電荷発生物質3を電荷輸送媒体4中に分散せしめた感光層2'が形成されているものである。
本件樹脂は、電荷輸送媒体中のバインダー樹脂(結合剤)として用いられている。この場合、感光体作成用塗工液の分散性および感光層強度向上等のために他の汎用の結合剤を併用することもできる。また、必要に応じてフィラーを含有させることもできる。
この電荷輸送媒体4に用いられる電荷輸送能を有する物質としては、前記正孔輸送物質、電子輸送物質が挙げられる。電荷発生物質3(無機又は有機顔料からなる電荷発生物質)は電荷担体を発生する。この場合、電荷輸送媒体4は、主として電荷発生物質3が発生する電荷担体を受入れ、これを輸送する機能を有している。そして、この電子写真感光体にあっては、電荷発生物質3と本件樹脂とが、互いに主として可視領域において、吸収波長領域が重ならないということが基本的条件となる。
これは、電荷発生物質3に電荷担体を効率よく発生させるためには、電荷発生物質表面まで光を透過させる必要があるからである。
図3は、本発明の他の電子写真感光体の概略断面図である。図3に示す電子写真感光体は、導電性支持体1上に電荷発生物質3を主体とする電荷発生層5と、電荷輸送媒体を有する電荷輸送層4との積層からなる感光層2''が形成されたものである。この電荷輸送媒体4に用いられる電荷輸送能を有する物質としては、前記正孔輸送物質、電子輸送物質が挙げられる。
本件樹脂は、電荷輸送媒体中のバインダー樹脂(結合剤)として用いられている。この場合も、上記同様の目的のため他の汎用の結合剤を併用することもできる。また、必要に応じてフィラーを含有させることもできる。
この電子写真感光体では、電荷輸送層4を透過した光が電荷発生層5に到達し、その領域で電荷担体の発生が起こり、一方、電荷輸送層4は電荷担体の注入を受け、その輸送を行うものであり、光減衰に必要な電荷担体の発生は電荷発生物質で行われ、また、電荷担体の輸送は電荷輸送層4で行われる。
図4は、本発明のさらに他の電子写真感光体の概略断面図である。図4に示す電子写真感光体は、電荷輸送層4−1上に第二の電荷輸送層4−2を形成したものである。第二の電荷輸送層4−2中には、本件樹脂をバインダー樹脂として用いることができ、また前記同様の目的のため他の汎用の結合剤を併用することもできる。また、必要に応じてフィラーを含有させることもできる。
図5は、本発明のさらにもう一つの電子写真感光体の概略断面図である。図5に示す電子写真感光体は、図3の電荷発生層5と本件樹脂をバインダー樹脂として含有する電荷輸送層4の積層順を逆にしたものである。その電荷担体の発生及び輸送の機構は上記と同様である。この場合、電荷発生層5の上に本件樹脂を含有する保護層6を形成する。保護層6にはフィラーや他の樹脂を含有させることができる。
これら図2〜図5に示す電子写真感光体には、導電性支持体1と感光層2'〜2''''との間に、帯電性向上、接着性向上もしくはレーザー書込光の干渉光によるモアレ画像防止などを目的として下引き層(図示せず)を形成してもよい。
本発明における導電性支持体1は、体積抵抗1010Ω以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金、鉄等の金属又は酸化スズ、酸化インジウム等の酸化物を蒸着もしくはスパッタリングによりフィルム状、円筒状のプラスチック、紙等に被覆したものあるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板及びこれらを押出し、引き抜き等の工法で素管化後、切削、超仕上げ、研磨等により表面処理した管等からなるものである。
本発明において電荷輸送層は機械的耐久性等を調節する目的で、本件樹脂以外のバインダー樹脂を併用することができる。本発明の電荷輸送層は390〜460nm波長域範囲の単色光を透過するものが好ましい。そのため、併用できるバインダー樹脂としては、この波長域の光を透過するものが好ましい。例えば具体的にポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
本発明において電荷輸送層は可塑剤やレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては、ハロゲン化パラフィン、ジメチルナフタリン、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、本件樹脂に対して0〜30重量%程度が適当である。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいは、オリゴマーが使用され、その使用量は本件樹脂に対して、0〜1重量%が適当である。
電荷輸送層を形成する場合の塗工方法としては浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。
電荷輸送層4及び4−1の膜厚は3〜50μm程度とすることが好ましい。また、電荷輸送層4−2の膜厚は0.15〜10μmが好ましく、より好ましくは0.5〜5μmである。
本発明において電荷発生層に含有される電荷発生物質3としては、例えば、セレン、セレン−テルル、硫化カドミウム、硫化カドミウム−セレン、α−シリコン等の無機材料、例えば、シーアイピグメントブルー25(カラーインデックスCI21180)、シーアイピグメントレッド41(CI21200)、シーアイアシッドレッド52(CI45100)、シーアイベーシックレッド3(CI45210)、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−95033号公報に記載)、ジスチリルベンゼン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−133445号公報)、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−132347号公報に記載)、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−21728号公報に記載)、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−12742号公報に記載)、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−22834号公報に記載)、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−17733号公報に記載)、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−2129号公報に記載)、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−14967号公報に記載)等のアゾ顔料、例えば、シーアイピグメントブルー16(CI74100)等のフタロシアニン系顔料、例えば、シーアイバットブラウン5(CI73410)、シーアイバットダイ(CI73030)等のインジゴ系顔料、アルゴスカーレットB(バイエル社製)、インダンスレンスカーレットR(バイエル社製)等のペリレン系顔料等の有機材料が挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これら電荷発生物質の中でも、特にフタロシアニン系顔料と組み合わせたものは、高感度で、かつ高耐久性を有する電子写真感光体を得ることができるものである。フタロシアニン顔料としては、下記一般式(5)
で表されるフタロシアニン骨格を有する化合物が挙げられる。
ここに、Mは、金属又は無金属(水素)である。M(中心金属)は、H、Li、Be、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、TI、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、Pa、U、Np、Am等の単体又は酸化物、塩化物、フッ化物、水酸化物、臭化物等の2種以上の元素からなるが、これらの元素に限定されるものではない。
このフタロシアニン骨格を有する電荷発生物質は、上記一般式(5)に示す基本骨格を有していればよく、2量体、3量体等の多量体構造を有するもの、さらに高次の高分子構造を有するものであってもよい。また、上記基本骨格には、各種々の置換基が存在していてもよい。
このようなフタロシアニンのうち、中心金属MにTiOを有するオキソチタニウムフタロシアニン、Hを有する無金属フタロシアニンは、感光体特性的に特に好ましいものである。
また、これらフタロシアニンは、様々な結晶系を持つことも知られており、例えば、オキソチタニウムフタロシアニンの場合、α、β、γ、m、y型等、銅フタロシアニンの場合、α、β、γ等の結晶多系を有している。
同じ中心金属を持つフタロシアニンにおいても、結晶系が変わるこることにより、種々の特性も変化する。その中で、感光体特性も、このような結晶系変化に伴い、変化することが報告されている(電子写真学会誌 第29巻第14号(1990))。このことから、各フタロシアニンは、感光体特性的に、最適な結晶系が存在し、特にオキソチタニウムフタロシアニンにおいては、Y型の結晶系が好ましい。
さらに、これら電荷発生物質は、フタロシアニン骨格を有する電荷発生物質を2種以上混合して用いてもよい。
電荷発生層は、電荷発生物質と適当な溶媒に、必要に応じてバインダー樹脂を加え溶解もしくは分散し、塗布して乾燥させるキャスティング法により設けることができる。
バインダー樹脂としては、絶縁性がよい従来から知られているバインダー樹脂であれば何でも使用でき、特に限定はない。例えば、ポリエチレン、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリスチレン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリプロピレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、シリコン樹脂、メラミン樹脂等の付加重合型樹脂、重付加型樹脂、重縮合型樹脂、ならびにこれらの樹脂の繰り返し単位のうち2つ以上を含む共重合体樹脂、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂等の絶縁性樹脂のほか、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。これらのバインダーは単独または2種類以上の混合物として用いることが出来る。
バインダー樹脂の量は、電荷発生物質1重量部に対し0〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部が適当である。
電荷発生層の分散液或いは溶液を調整する際に使用する溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼン、1,2−ジクロルエタン、1,1,1−トリクロルエタン、ジクロルメタン、1,1,2−トリクロルエタン、トリクロルエチレン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジオキサン等を挙げることができる。
電荷発生層用分散液の分散方法としては、例えば、ボールミル、超音波、ホモミキサー、アトライター、サンドミルを用いた方法が挙げられ、また塗布手段としては、ディッピング塗工法、ブレード塗工法、スプレー塗工法、ビートコート法等が挙げられる。
電荷発生物質を分散し、感光層を形成する場合、層中への分散性を良くするために、その電荷発生物質は2μm以下、好ましくは1μm以下の平均粒径のものが好ましい。ただし、上記の粒径があまりに小さいとかえって凝集しやすく、層の抵抗が上昇したり、結晶欠陥が増えて感度及び繰り返し特性が低下したり、或いは微細化する上で限界があるから、平均粒径の下限を0.01μmとするのが好ましい。電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
導電性支持体1に電荷発生層5を形成する方法としては、前記溶液分散系からのキャスティング法によって形成する方法以外に真空薄膜作製法によって形成する方法がある。真空薄膜作製法による方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が採用される。
いずれの方法もさらに必要であれば、バフ研磨等の方法によって表面仕上げ、膜厚調整等を行って電荷発生層5を形成する。
例えば、図2に示す電子写真感光体を作製するには、電荷輸送物質と本件樹脂、必要に応じて他の結合剤を併用し溶解した溶液に電荷発生物質3の微粒子を、必要に応じフィラーも併用して分散せしめ、これを導電性支持体1上に塗布し乾燥して感光層2'を形成すればよい。
感光層2'の厚さは、通常、3〜100μm、好ましくは、5〜40μmである。
感光層2'に占める本件樹脂の量は、重量基準で40〜90%、好ましくは、40〜80%であり、感光層2'に占める電荷発生物質3の量は、重量基準で0.1〜50%、好ましくは1〜20%である。
電子写真感光体の感光層2'には、電荷輸送物質を混合して用いることができる。
図3に示す電子写真感光体を作製するには、導電性支持体1に電荷発生層5を設け、さらにこの上に、電荷輸送物質(正孔輸送物質または電子輸送物質)と共に本件樹脂又は他の結合剤を併用し、溶解した溶液を、必要に応じこの溶液にフィラー微粒子を分散せしめた溶液を塗布し乾燥して、電荷輸送層4を形成すればよい。
電荷発生層5の厚さは、通常は、0.01〜5μm、好ましくは、0.1〜2μmであり、電荷輸送層4の厚さは、通常は、3〜50μm、好ましくは5〜40μmである。
電荷発生層5が、電荷発生層物質の微粒子3を結合剤中に分散させたタイプのものにあっては、電荷発生物質の微粒子3の電荷発生層5に占める割合は、重量基準で通常は、10〜100%、好ましくは、50〜100%である。
また、電荷輸送層4に占める本件樹脂の量は、重量基準で40〜90%である。
図4に示した電子写真感光体を作製するには、導電性支持体1上に第一の電荷輸送層4−1を設け、さらにその上に、電荷輸送物質と共に本件樹脂又は他の結合剤と併用して溶解し塗布し乾燥して、第2の電荷輸送層4−2を形成する。また、必要に応じてフィラーの微粒子を分散せしめた溶液を塗布し乾燥して第二の電荷輸送層6を形成してもよい。
第一の電荷輸送層4−1の厚さは通常3〜50μm、好ましくは5〜40μmであり、また、第二の電荷輸送層4−2の厚さは、通常は、0.15〜10μm、好ましくは、1〜10μmである。
第二の電荷輸送層4−2中に占める本件樹脂の量は、重量基準で通常は、40〜100%、好ましくは、40〜90%である。
図5に示した電子写真感光体を作製するには、導電性支持体1上に上記電荷輸送層4を形成した後、上記電荷発生層5を形成すればよい。電荷発生層、電荷輸送層の量比は、図3で説明したとおりである。このようにして得られた電荷発生層5の上に本件樹脂を含有する保護層6を形成することにより、図5に示す電子写真感光体体を作製することができる。
また、保護層6には必要に応じてフィラー微粒子や他の樹脂を含有させてもよい。これらのフィラー微粒子や他の樹脂として、フィラー微粒子としては前記感光層に用いられるものが同様に使用でき、また他の樹脂としては前記電荷輸送層に用いられる他のバインダー樹脂が同様に使用できる。
保護層6の厚さは通常0.15〜10μm、好ましくは1〜10μmである。
保護層6中に示す本件樹脂の量は、重量基準で通常40〜100%、好ましくは40〜90%である。
上記全ての場合において、フィラー含有層を形成する場合、用いる分散溶媒としては、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、クロロベンゼン、ジクロルメタン等のハロゲン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が挙げられ、ボールミル、サンドミル、振動ミル等のを用いて分散、粉砕する。塗工方法としては、浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。
本発明の全ての電子写真感光体においては、導電性支持体と感光層との間に下引き層を形成することができる。この下引き層は、接着性の向上とモワレ等の防止、上層の塗工性の改良と残留電位の低減等を目的として形成されるものである。
下引き層は、一般には樹脂を主成分とするが、樹脂はその上に感光層を溶剤を用いて塗布することから、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であるこことが望ましい。
このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。
また、モアレ防止、抵抗値の最適化等のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物等の微粉末を加えてもよい。
この下引き層は、上記感光層の場合と同様、適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。
さらに、下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用して、例えばゾル−ゲル法等により形成した金属酸化物層とすることも有用である。
この他に下引き層には、Al2O3を陽極酸化によって形成したもの、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物や、SiO,SnO2,TiO2,ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作製法によって形成したものも好適に使用することができる。
下引き層の膜厚は、通常は、0.01〜20μmであり、好ましくは、0.05〜15μm、さらに好ましくは0.05〜5μmである。
さらに上記感光層中には、帯電性の向上等を目的に、フェノール化合物、ハイドロキノン化合物、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、ヒンダードアミンとヒンダードフェノールが、同一分子中に存在する化合物などを添加することが出来る。
また、本発明の電子写真感光体においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、酸化防止剤を用いることができる。酸化防止剤は、有機物を含む層であればいずれに添加してもよいが、電荷輸送物質を含む層に添加することにより良好な結果を得ることができる。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネーート等のモノフェノール系化合物、2,2'−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、4,4'−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のビスフェノール系化合物、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン、ビス[3,3'−ビス(4'−ヒドロキシ−3'−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコールエステル、トコフェロ−ル類等の高分子フェノール系化合物、N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジメチル−N,N'−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミン等のパラフェニレンジアミン類、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノン等のハイドロキノン類、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3'−チオジプロピオネ−ト、ジテトラデシル−3,3'−チオジプロピオネ−ト等の有機硫黄化合物類、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィン等の有機燐化合物類等を挙げることができる。
これらの化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類等の酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
本発明における酸化防止剤の添加量は、重量基準で電荷輸送物質100部に対して、通常は、0.01〜100部、好ましくは、0.1〜30部である。
本発明は、次に、上記の電子写真感光体を用い、帯電、像露光及び転写を行うことを特徴とする電子写真方法を提供する。そして、また、上記の電子写真感光体を有すると共に、帯電手段、像露光手段及び転写手段を備えたことを特徴とする電子写真装置を提供する。さらに、上記の電子写真感光体と、帯電手段、像露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段から選ばれた少なくとも一つの手段とを一体的に形成し、電子写真装置本体に着脱自在としたことを特徴とする電子写真装置用プロセスカートリッジを提供する。
図面に基づいて、この電子写真方法、電子写真装置及び電子写真装置用プロセスカートリッジについて説明する。
図6は、本発明の電子写真装置及び電子写真装置用プロセスカートリッジの概略図である。
ここに、7は本発明の電子写真感光体を示し、感光体7はドラム状のものを示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。
帯電チャージャ8、転写前チャージャ9、転写チャージャ10、分離チャージャ11、クリーニング前チャージャ12には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラ等の公知の手段が用いられる。
転写手段には、一般に上記の帯電器が使用できるが、図6に示すように転写チャージャー10と分離チャージャー11を併設したものが効果的である。
画像露光部13と除電ランプ14等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般を用いることができ、特に画像露光部13には400〜450nmの範囲に発振波長を有するLDもしくはLEDが好適に用いられる。この時像露光部、書込光源のビーム径は1200〜2400dpi相当の高解像度を達成するために10〜30μmであることが好ましい。
そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
このような光源等は、図6に示される工程の他に、光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程又は前露光等の工程を設けることにより、感光体に光が照射される。
現像ユニット15により感光体7上に現像されたトナーは、転写紙16に転写されるが、全部が転写されるものではなく、感光体7上にはトナーが残存する。この残存トナーは、ファーブラシ17及びクリーニングブラシ18により、感光体から除去される。
このクリーニングは、クリーニングブラシ18のみで行なわれることもあり、クリーニングブラシには、ファーブラシ、マグファーブラシ等の公知のものが用いられる。
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られ、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
この現像手段には、公知の方法が適用でき、また、除電手段にも公知の方法が採用される。
図7は、本発明の他の電子写真装置の概略図である。感光体21は、本発明の感光体であり、駆動ローラ22a,22bにより駆動され、帯電器23による帯電、光源24による像露光、現像(図示せず)、帯電器25を用いる転写、光源26によるクリーニング前露光、ブラシ27によるクリーニング、光源28による除電が繰返し行なわれる。図7においては、感光体21(この場合は、支持体は透光性である)に支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行なわれる。
上記に図示した電子写真方法及び電子写真装置は、本発明における実施態様を例示したものであって、他の実施態様も可能である。例えば、図7においては、支持体側よりクリーニング前露光を行っているが、これを感光層側から行ってもよく、また、像露光、除電光の照射を支持体側から行ってもよい。また、光照射工程は、像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光及びその他公知の光照射工程を設けて感光体に光照射を行なうこともできる。
このようにして行う画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態によりこれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段を含んだ1つの装置であり、また部品である。
プロセスカートリッジの形状等については数多くのものが挙げられるが、ここでは、図8にその1例を示す。このプロセスカートリッジは、本発明の電子写真感光体29、帯電チャージャ30、クリーニングブラシ31、画像露光部32、現像ローラ33からなるものである。
本発明一般式(2)で表わされる長期アルキル基含有ビスフェノール化合物は、分子内に2つの長鎖アルキル基を有し、かつ、その鎖長が左右対の新規化合物である。この新規化合物は濃塩酸又は塩化水素存在下で、2倍量のフェノールと長鎖アルキルケトンから合成されるが、この合成法自体は知られており、例えば日本化学会誌、1982、No.8、p1363に記載されている。
又は
上記合成は一段で行なわれるが、その反応性が低いため、反応温度、反応時間、触媒等を必要に応じて最適化する必要がある。例えば、反応温度は20〜110℃好ましくは50〜80℃の範囲がよい。触媒が用いられる場合には、3−メルカプトプロピオン酸などが用いられる。
かくして得られた新規ビスフェノール化合物は、耐光性にすぐれ、光安定剤としても有用なものである。また、この化合物はモノマーとしてだけでなく、撥水性ポリマーの原材料としても有用である。さらに、この化合物は分子内に長鎖アルキル基を2個有していることから良好な撥水性を有するだけでなく、該長鎖アルキル基は左右対称のため分子的にバランスがとれていることから良好な熱的安定性を有している。なお、この化合物においては、nが8以下であると撥水性に劣り、nが16以上であると融点が低すぎて好ましくない。
また、本発明の一般式(3)で表される構成単位を有するポリマーは、構成単位として新規骨格を有するものである。このポリマーの特徴は分子内に2個の長鎖アルキル基を左右対称に有しており、従来の長鎖アルキル基含有ポリマーに比べ高撥水性のものである。このポリマーは既述のとおり、前記一般式(2)で表わされるビスフェノール体から従来公知の方法で各種ポリマー(ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂など)の合成が可能である。そして、このポリマーは共重合種を選択することで所望の物性(撥水性、滑水性など)をもつポリマーの合成が可能となる上、このポリマーはシリコーン系のように表面配向性がないため、効果に持続性が認められ、また、感光体のバインダー樹脂としてだけでなく、幅広い応用・用途が期待できる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によってなんら限定されるものではない。なお、部とあるのは、すべて重量部である。
製造例1(一般式(2)で表わされる化合物の製造)
フェノール19部、14−ヘプタコサノン20部、濃塩酸13部、3−メルカプトプロピオン酸0.01部を撹拌反応容器に入れ、80℃で20時間反応させた。反応後冷却し、水と酢酸を加え有機層を抽出した。有機層を水で3回洗浄し、最後に無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ液を濃縮し、シリカゲルによるカラムクロマト処理をトルエン/酢酸エチル(5/1)混合溶媒を用いて行い、更にトルエンにより再結晶精製し、下記構造式(k)で表されるビスフェノール化合物を22部を得た。
この化合物の融点は114.5〜115.0℃で、元素分析の結果は次のとおりであり、構造式から計算される値と一致した。
C% H%
実測値 82.77 11.64
計算値 82.92 11.42
製造例2、3(一般式(2)で表わされる化合物の製造)
また14−ヘプタコサノンを11−ヘネアイコサノン及び17−トリトリアコンタノンに代えてそれぞれ対応するビスフェノール化合物を合成した。
製造例4(ポリカーボネート樹脂の製造)
前記構造式(k)で表されるビスフェノールとビスフェノールZとを等モル、分子量調節剤としての4−tert−ブチルフェノールを撹拌反応容器に入れ、窒素気流下で水酸化ナトリウムとナトリウムハイドロサルファイトを水に溶解させた液を加えて、撹拌して溶解させた。その後、20℃まで冷却し、ホスゲンの3量体であるビス(トリクロロメチル)カーボネートをジクロロメタンに溶解させた液を強く撹拌しながら加えて、エマルジョンを形成させながら反応させた。その後室温で15分撹拌した後、触媒としてトリエチルアミン0.01部を加えて、室温で120分撹拌反応させた。その後、ジクロロメタン200部を加えて有機層を分液した。この有機層を3%の水酸化ナトリウム水溶液、2%の塩酸水溶液の順で洗浄し、最後に水で洗浄した。この有機層を多量のメタノール中に滴下して白色のポリカーボネート樹脂を析出させ、下記構造式で表されるポリカーボネート樹脂(樹脂No.1)を得た。
このポリカーボネート樹脂の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、ポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で77500、重量平均分子量で198700であった。また、示差走査熱量測定から求めたガラス転移温度は46.1℃であった。また元素分析の結果は次のとおりであり、構造式から計算される値と一致した。
C% H%
実測値 80.07 9.36
計算値 80.05 9.11
製造例5(ポリカーボネート樹脂の製造)
下記構造式(m)で表されるビスフェノールとビスフェノールZとを等モル、分子量調節剤としての4−tert−ブチルフェノールを撹拌反応容器に入れ、窒素気流下で水酸化ナトリウムとナトリウムハイドロサルファイトを水に溶解させた液を加えて、撹拌して溶解させた。その後、20℃まで冷却し、ホスゲンの3量体であるビス(トリクロロメチル)カーボネートをジクロロメタンに溶解させた液を強く撹拌しながら加えて、エマルジョンを形成させながら反応させた。その後室温で15分撹拌した後、触媒としてトリエチルアミン0.01部を加えて、室温で120分撹拌反応させた。その後、ジクロロメタン200部を加えて有機層を分液した。この有機層を3%の水酸化ナトリウム水溶液、2%の塩酸水溶液の順で洗浄し、最後に水で洗浄した。この有機層を多量のメタノール中に滴下して白色のポリカーボネート樹脂を析出させ、下記構造式で表されるポリカーボネート樹脂(樹脂No.2)を得た。
このポリカーボネート樹脂の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、ポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で44700、重量平均分子量で116300であった。また、示差走査熱量測定から求めたガラス転移温度は71.3℃であった。また元素分析の結果は次のとおりであり、構造式から計算される値と一致した。
C% H%
実測値 78.59 8.02
計算値 78.74 7.87
製造例6(ポリウレタン樹脂の製造)
窒素気流下、4,4'−デシリデンビスフェノールを乾燥した1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン25mlに60〜65℃で溶解した。次に、乾燥した1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン10mlに4,4'−ジフェニルメタンジイソシアナートを溶解したものを15分で滴下した。その後、95〜100℃に加熱し、2時間攪拌した。触媒としてジブチルスズラウレート0.05gを加え、さらに2時間攪拌した後、フェノール0.08部を加えて30分攪拌した。続いて、室温まで冷却した後、反応液をメタノール460ml中に滴下した。得られた沈殿物をろ取し、メタノール洗浄した。このものに、テトラヒドロフラン溶解−メタノール沈殿の処理を2回実施し、下記構造式で表わされるポリウレタン樹脂(樹脂No.3)を得た。
このポリウレタン樹脂の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、ポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で10790、重量平均分子量で12900であった。また、元素分析の結果は次のとおりであり、構造式から計算される値と一致した。
C% H% N%
実測値 77.21 7.05 4.72
計算値 77.06 6.99 4.86
製造例7(ポリエステル樹脂の製造)
4,4'−デシリデンビスフェノールを2%水酸化ナトリウム水溶液80mlに溶解した後、攪拌機付反応容器に入れ、窒素気流下、水冷、強攪拌しながら、テレフタル酸クロライドを脱水クロロホルム60mlに溶解した溶液を加え、20℃で3時間重合反応を行った。その後、有機相を取り出し、350gの水で4回洗浄し、アセトン中に滴下して重合物を取り出し、さらにテトラヒドロフランに溶解させ、濾過してメタノール中に滴下して再沈殿による精製を3回行い、下記構造式で表わされるポリアリレート樹脂(樹脂No.4)を得た。
このポリアリレート樹脂の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、ポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で15400、重量平均分子量で26900であった。また、元素分析の結果は次のとおりであり、構造式から計算される値と一致した。
C% H%
実測値 78.80 7.03
計算値 78.92 7.06
製造例8(ポリカーボネート樹脂の製造)
4,4'−デシリデンビスフェノールと分量調節剤としての4−t−ブチルフェノールを、攪拌機付反応容器に入れ、窒素気流下、水酸化ナトリウムとナトリウムハイドロサルファイトを水に溶解した液に加え、攪拌して溶解させた。その後、20℃まで冷却し、ホスゲンの3量体であるビス(トリクロロメチル)カーボネートをジクロロメタンに溶解させた液を強攪拌しながら加えて、エマルジョンを形成させながら反応させた。15分間攪拌した後、触媒としてトリエチルアミン0.01gを加えて、室温で120分間、攪拌して反応させた。続いて、ジクロロメタン200gを加えて有機相を分液した。この有機相を3%水酸化ナトリウム水溶液、2%塩酸水溶液を用い、その順で洗浄し、最後に水で洗浄した。この有機相を多量のメタノール中に滴下して、白色の樹脂を析出させ、下記構造式で表わされるポリカーボネート樹脂(樹脂No.5)を得た。
このポリカーボネート樹脂の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、ポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で65300、重量平均分子量で141000であった。また、元素分析の結果は次のとおりであり、構造式から計算される値と一致した。
C% H%
実測値 78.55 8.19
計算値 78.38 8.01
(実施例1)
φ30mmのアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布、乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、30±1μmの電荷輸送層を形成して、電子写真感光体を作製した。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂(ベッコゾール、1307−60−EL、
大日本インキ化学工業社製) 6部
メラミン樹脂(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 4部
酸化チタン 40部
メチルエチルケトン 50部
〔電荷発生層用塗工液〕
オキソチタニウムフタロシアニン顔料 3部
ポリビニルブチラール(UCC社製:XYHL) 2部
テトラヒドロフラン 95部
〔電荷輸送層用塗工液〕
下記構造式(a)で表される電荷輸送物質 7部
製造例6で得られたポリウレタン樹脂(樹脂No.3) 10部
塩化メチレン 150部
(実施例2)
φ30mmのアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布、乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、30±1μmの電荷輸送層を形成して、電子写真感光体を作製した。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂(ベッコゾール、1307−60−EL、
大日本インキ化学工業社製) 6部
メラミン樹脂(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 4部
酸化チタン 40部
メチルエチルケトン 50部
〔電荷発生層用塗工液〕
オキソチタニウムフタロシアニン顔料 3部
ポリビニルブチラール(UCC社製:XYHL) 2部
テトラヒドロフラン 95部
〔電荷輸送層用塗工液〕
前記構造式(a)で表される電荷輸送物質 7部
製造例7で得られたポリアリレート樹脂(樹脂No.4) 10部
塩化メチレン 150部
(実施例3)
φ30mmのアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布、乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、30±1μmの電荷輸送層を形成して、電子写真感光体を作製した。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂(ベッコゾール、1307−60−EL、
大日本インキ化学工業社製) 6部
メラミン樹脂(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 4部
酸化チタン 40部
メチルエチルケトン 50部
〔電荷発生層用塗工液〕
オキソチタニウムフタロシアニン顔料 3部
ポリビニルブチラール(UCC社製:XYHL) 2部
テトラヒドロフラン 95部
〔電荷輸送層用塗工液〕
前記構造式(a)で表される電荷輸送物質 7部
製造例8で得られたポリカーボネート樹脂(樹脂No.5) 10部
塩化メチレン 150部
(比較例1)
実施例1における電荷輸送層用塗工液を次のものに代えた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製した。
〔電荷輸送層用塗工液〕
前記構造式(a)で表される電荷輸送物質 7部
ビスフェノールZ型ポリカーボネート
(帝人化成社製、PCX−5) 10部
塩化メチレン 150部
〔評価〕
このようにして作製した実施例及び比較例の電子写真感光体を実装用にした後、リコー社製複写機イマジオMF200に装着し、帯電せしめた後、原図を介して光照射を行って静電潜像を形成せしめ、乾式現像剤を用いて現像し、得られた画像(トナー画像)を普通紙上に静電転写し、定着する5万枚を基準として画像の評価試験を行った。
実施例の電子写真感光体を用いた場合は、5万枚後も良好な転写画像が得られたのに対し、比較例1の電子写真感光体を用いた場合、5万枚後には画質の低下が観察された。また、実施例の電子写真感光体を用い、現像剤として湿式現像剤を用いた場合にも、同様に鮮明な転写画像が得られた。
このように、本発明の電子写真感光体を用いた電子写真方法によれば、従来の電子写真感光体を用いたものに比して、優れた画質を維持し、繰り返し使用に対しても電位変動のない耐久性に富んだ高感度のものであることが判明した。
(実施例4)
下記組成の混合物をボールミルポットに取り、φ10mのアルミナボールを使用し、48時間ボールミリングして下引き層用塗工液を調製した。この塗工液をアルミ板支持体上に塗布後、130℃で20分間乾燥し、厚さ約4μmの下引き層を形成した。次に、下記組成の混合物をボールミル中で粉砕混合し、得られた分散液を前記下引き層上にウエットギャップ約35μmにてドクターブレードで塗布し、自然乾燥して電荷発生層を形成した。さらに、下記組成の電荷輸送層用塗工液を前記電荷発生層上にドクターブレードで塗布し、80℃で2分間、ついで130℃で20分間乾燥して厚さ約25μmの電荷輸送層を形成し感光体を作成した。
〔下引き層用塗工液〕
オイルフリーアルキッド樹脂
(大日本インキ化学社製:ベッコライトM6401) 1.5部
メラミン樹脂
(大日本化学社製:スーパーベッカミンG−821) 1部
二酸化チタン(石原産業社製:タイペークCR−EL) 5部
2−ブタノン 22.5部
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造式(b)で表されるビスアゾ化合物 7.5部
ポリエステル樹脂[(株)東洋紡績製:バイロン200] 2.5部
テトラヒドロフラン 500部
〔電荷輸送層用塗工液〕
下記構造式(c)で表される電荷輸送物質 7部
製造例6で得られたポリウレタン樹脂(樹脂No.3) 10部
テトラヒドロフラン 100部
(実施例5)
実施例4と同様にアルミ板支持体上に下引き層、電荷発生層を順次形成した。次に、下記組成の第一電荷輸送層塗工液を前記電荷発生層上にドクターブレードで塗布し、80℃で2分間、ついで130℃で20分間乾燥して厚さ約20μmの第一電荷輸送層を形成した。さらに、下記組成の第二電荷輸送層用塗工液を第一電荷輸送層上にドクターブレードで塗布し、80℃で2分間、ついで130℃で20分間乾燥して厚さ約5μmの第二電荷輸送層を形成し感光体を作成した。
〔第一電荷輸送層用塗工液〕
下記構造式(d)で表される電荷輸送物質 7部
ポリカーボネート樹脂
[(株)帝人製:パンライトC−1400] 10部
テトラヒドロフラン 100部
〔第二電荷輸送層用塗工液〕
上記構造式(d)で表される電荷輸送物質 3部
樹脂No.5と同じ繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂
(重量平均分子量:237700) 5部
テトラヒドロフラン 40部
シクロヘキサン 140部
(実施例6)
実施例5と同様にアルミ板支持体上に下引き層、電荷発生層、第一電荷輸送層を順次形成した。次に下記組成の第二電荷輸送層用塗工液を第一電荷輸送層上にドクターブレードで塗布し、80℃で2分間、ついで130℃で20分間乾燥して厚さ約5μmの第二電荷輸送層を形成し感光体を作成した。
〔第二電荷輸送層用塗工液〕
下記構造式(e)で表される電荷輸送物質 3部
製造例7で得られたポリアリレート樹脂(樹脂No.4) 5部
酸化チタン微粒子(石原産業社製:CR97) 2部
テトラヒドロフラン 40部
シクロヘキサン 140部
(実施例7)
実施例4と同様にアルミ板支持体上に下引き層を形成し、次に、下記組成の混合物をボールミル中で粉砕混合し、得られた分散液を前記下引き層上にウエットギャップ約35μmにてドクターブレードで塗布し、自然乾燥して電荷発生層を形成した。さらに下記組成の第一電荷輸送層用塗工液を前記電荷発生層上にドクターブレードで塗布し、80℃で2分間、ついで130℃で20分間乾燥して厚さ約20μmの第一電荷輸送層を形成した。次に下記組成の第二電荷輸送層用塗工液を第一電荷輸送層上にドクターブレードで塗布し、80℃で2分間、ついで130℃で20分間乾燥して厚さ約5μmの第二電荷輸送層を形成し感光体を作成した。
〔電荷発生層用塗工液〕
Y型オキソチタニウムフタロシアニン 1.5部
ポリエステル樹脂[(株)東洋紡績製:バイロン200] 1部
ジクロロメタン 100部
〔第一電荷輸送層用塗工液〕
前記構造式(e)で表される電荷輸送物質 7部
ポリカーボネート樹脂
[(株)帝人製:パンライトC−1400] 10部
テトラヒドロフラン 100部
〔第二電荷輸送層用塗工液〕
前記構造式(e)で表される電荷輸送物質 3部
下記構造式(f)で表されるポリカーボネート樹脂
(重量平均分子量:116300) 5部
酸化チタン微粒子(石原産業社製:CR97) 2部
テトラヒドロフラン 40部
シクロヘキサン 140部
(参考例1)
実施例4の電荷輸送物質を下記構造式(g)で表されるブタジエン化合物に変えた以外は実施例4と同様に操作して感光体作製した。
(参考例2)
実施例7の電荷輸送物質を前記構造式(g)で表されるブタジエン化合物に変えた以外は実施例7と同様に操作して感光体作製した。
実施例4〜7及び参考例1〜2の各電荷輸送層用塗工液を用いてポリエステルフィルム上に、同様に操作して電荷輸送層膜のみを形成した。ポリエステルフィルム上から電荷輸送層膜を剥離し、得られた電荷輸送層膜の透過スペクトルを分光光度計にて測定し、各波長の透過率を前記式(B)より求めた。結果を表1に示す。
得られた電子写真感光体の400〜450nmの短波長LD、LED発振波長域での分光感度をEPA−8100(川口電機製作所社製)にて測定した。光源としてはキセノンランプを用い、モノクロメーター(ニコン社製)にて分光を行なった。先ずコロナ放電により感光体を−800(V)以上に帯電させた後、帯電を停止し、それぞれの単色光による露光を行ない表面電位が−800(V)から−100(V)までに要する時間を求め、それぞれ波長の照射光強度(μW/cm2)から露光量(μJ/cm2)を算出した。このときの光減衰電位差700(V)を上記露光量で割り、得られた値を分光感度値(V・cm2/μJ)とした。ただし光減衰時には暗減衰による電位低下が含まれるため、光感度測定の前に各感光体の暗減衰量を測定し、この値を用いて各分光感度値の補正を行なった。結果も併せて表1に示す。
表1から短波長LDもしくはLEDの発振波長領域にある400〜450nmの単色光を透過しない電荷輸送層を設けた参考例1及び2の電子写真感光体は、この領域において感度を示さないことがわかる。一方、実施例4〜7の電荷輸送層はいずれもこの領域において良好な光透過特性を示し、電子写真感光体は高い感度を有していることがわかる。
(比較例2)
実施例4の電荷輸送層用塗工液で用いられた樹脂No.3のポリウレタン樹脂(重量平均分子量:12900)をポリカーボネート樹脂[(株)帝人製パンライトC−1400]に変えた以外は実施例4と同様に操作して感光体作製した。
(比較例3)
実施例6の第二電荷輸送層用塗工液で用いられた樹脂No.4のポリエステル樹脂を下記構造式(h)で表されるシロキサン共重合ポリカーボネート樹脂(重量平均分子量:157800)に変えた以外は実施例6と同様に操作して感光体作製した。
上記実施例4〜7及び比較例2〜3で作成した電子写真感光体をテーバー摩耗試験機(東洋精機社製)にて摩耗輪CS−5を使用し、荷重1kgで回転速度60rpmの条件にて1000回転摩耗させ、摩耗試験前と試験後の感光体サンプルの重量差を摩耗量(mg)とした。結果を表2に示す。また感光体表面のテーバー摩耗試験前後での純水に対する接触角の変化を測定した。純水に対する接触角の測定は、接触角計CA−W型(協和界面科学社製)を用い、液滴法にて測定した。結果を表2に示す。また前記接触角計にて純水の体積を17μlにして、滑落角を測定した。また感光体表面の静摩擦係数も自動摩擦係数測定機器を用いて測定した。その結果も併せて表2に示す。
表2から本発明の電子写真感光体(実施例4〜7)は比較例2及び3に比べ摩耗量が小さいことがわかる。特に実施例6及び7のように感光層にフィラーを含有することにより耐摩耗性が飛躍的に向上する。また本発明の電子写真感光体は初期だけでなく、摩耗後も純水に対する接触角が90゜以上と撥水性が維持されている。一方比較例3の電子写真感光体は摩耗後に撥水性に劣る。
このように本発明の電子写真感光体は機械的耐久性において非常に優れており、かつ長時間にわたり撥水性が維持される。また実施例の感光体は比較例に比べると滑落角も小さく、また静摩擦係数も低いことから低表面エネルギー状態になっていることが分かる。
(実施例8〜9および参考例3)
アルミニウム・シリンダー上に実施例4で用いた下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、および電荷輸送層塗工液を、順次塗布・乾燥し、実施例4と同様にして実施例8の積層感光体ドラムを作製した。また、感光層塗工液を実施例6もしくは参考例1のものに代えた以外は実施例8と同様に操作して実施例9および参考例3の感光体ドラムを作製した。
上記、電子写真感光体ドラムを図6に示した電子写真装置に装着し(ただし、画像露光光源を405nmに発光を持つLDとした(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み))、また、現像直前の感光体の表面電位が測定できるように表面電位計のプローブを挿入した。連続して一万枚の印刷を行い、その時の画像露光部と画像非露光部の表面電位を初期と一万枚後に測定した。結果を表3に示す。
(実施例10)
電鋳ニッケル・ベルト上に下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、および電荷輸送層用塗工液を、順次塗布・乾燥し、膜厚が下引き層約6μm、電荷発生層約0.3μm、第一電荷輸送層24μm、第二電荷輸送層4μmの積層感光体を作製した。
〔下引き層用塗工液〕
二酸化チタン(TA−300) 5部
共重合ポリアミド樹脂(東レ製:CM−8000) 4部
メタノール 50部
イソプロパノール 20部
〔電荷発生層用塗工液〕
Y型オキソチタニウムフタロシアニン顔料粉末 4部
ポリビニルブチラール 2部
シクロヘキサノン 50部
テトラヒドロフラン 100部
〔第一電荷輸送層用塗工液〕
前記構造式(e)で表される電荷輸送物質 7部
ポリカーボネート樹脂
[(株)帝人製:パンライトC−1400] 10部
テトラヒドロフラン 150部
〔第二電荷輸送層用塗工液〕
前記構造式(e)で表される電荷輸送物質 0.45部
下記構造式(i)で表されるポリカーボネート樹脂 0.75部
(重量平均分子量:198700)
酸化チタン微粒子(石原産業社製:CR97) 0.3部
ジクロロメタン 45部
このようにして作製した電子写真感光体ベルトを図7に示す電子写真プロセス(ただし、クリーニング前露光は無し)に装着し、画像露光光源を450nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)として、現像直前の感光体の表面電位が測定できるように表面電位計のプローブを挿入した。連続して八千枚の印刷を行い、その時の画像露光部と画像非露光部の表面電位を初期と八千枚後に測定した。結果を表4に示す。
(実施例11)
アルミニウムシリンダー表面を陽極酸化処理した後封孔処理を行った。この上に、下記電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を、順次塗布・乾燥して各々膜厚0.2μmの電荷発生層、20μmの第一電荷輸送層、5μmの第二電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製した。
〔電荷発生層用塗工液〕
τ型無金属フタロシアニン顔料粉末 3部
前記構造式(b)で表されるビスアゾ化合物 3部
ポリビニルブチラール樹脂(BM−S) 1部
シクロヘキサノン 250部
メチルエチルケトン 50部
〔第一電荷輸送層用塗工液〕
前記構造式(e)で表される電荷輸送物質 7部
ポリカーボネート樹脂
[(株)帝人製:パンライトC−1400] 10部
テトラヒドロフラン 150部
〔第二電荷輸送層用塗工液〕
前記構造式(e)で表される電荷輸送物質 7部
下記構造式(j)で表されるポリカーボネート樹脂 10部
(重量平均分子量:183700)
アルミナ微粒子(日本アロエジル社製アルミナ−C) 4部
ジクロロメタン 80部
このようにして作製した電子写真感光体を図8に示す電子写真用プロセスカートリッジに装着した後、画像形成装置に搭載した。ただし、画像露光光源を発振波長435nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み) として、現像直前の感光体の表面電位が測定できるように表面電位計のプローブを挿入した。連続して五千枚の印刷を行い、その時の画像露光部と画像非露光部の表面電位を初期と五千枚後に測定した。結果を表5に示す。
また実施例8〜11の電子写真感光体、帯電手段として帯電ローラ、像露光手段として光源に発振波長405nmの半導体レーザを搭載しビーム径をアパーチャーで調節できる光学系、現像手段として2成分の現像ユニット及びパターンジェネレーターを取り付けた作像実験機により30μmのビーム径で得られる孤立ドットを感光体上に形成させ、それを接着テープに転写させ、CCDカメラにより読み取り、画像解析した。感光体の初期帯電電位は600Vで行い、トナーは平均粒径6μm磁性トナーを使用した。孤立ドットの形状、再現性を目視により評価したところ、実施例8〜11いずれの感光体においてもドットがコントラスト良く形成再現された。