JP2008144901A - 動力伝達装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】組立時のナット部材の脱落防止に加えて動力伝達中の振動やがたつきにより合成樹脂製の駆動側回転部材にクラックが生じたり、回転伝達部材が破損したり止めねじが緩んだりするのを防止し、動力伝達装置の耐久性を向上させる。
【解決手段】プーリ4を合成樹脂で製作する。プーリ4の円板部4Aの表面で挿通孔24の周りに環状の突状体からなる座部34と収容凹部35を形成する。ナット部材19の外周面に収容凹部35内に膨出する脱落防止部36をかしめ加工によって突設する。回転部材8の固定部8Bを座部34に設置し、止めねじ10によってナット部材19に固定する。
【選択図】 図5

Description

本発明は、カーエアコン用コンプレッサ等に用いられる動力伝達装置に関するものである。
カーエアコン用コンプレッサ等に用いられているこの種の動力伝達装置は、エンジンの回転をコンプレッサの回転軸に伝達するように構成されている。また、この種の動力伝達装置は、特にコンプレッサに過負荷が加わったときに駆動側回転部材と従動側回転部材との連結を解除するように構成されている(例えば、特許文献1〜6参照)。
図7は、ダンパー機構を備えた従来の動力伝達装置の一例を示す断面図で、これを概略説明すると、2はカーエアコン用コンプレッサ(従動側機器)、3はコンプレサ2のハウジング、4はハウジング3の円筒部3Aにベアリング5を介して回転自在に装着された合成樹脂製のプーリ(駆動側回転部材)、6はコンプレッサ2の回転軸、7は回転軸6に装着されたハブ(従動側回転部材)、8はプーリ4とハブ7とを連結する回転伝達部材、9はプーリ4に組み込まれたダンパー機構であり、これらによってコンプレッサ2の動力伝達装置1を構成している。
前記回転伝達部材8は、円板状に形成された本体8Aと、この本体8Aの外周に周方向に等間隔おいて突設された複数固の固定部8Bとを備え、これらの固定部8Bが止めねじ10によってナット部材19に固定されている。また、回転伝達部材8は、前記固定部8Bより本体8Aの外周に沿って延設された弾性変形可能な複数個の連結片部8Cを一体に備え、これらの連結片部8Cの先端部である接続部8Dがハブ7のフランジ部7Aと挾持板11の挾持部によって離脱可能に挾持されることにより、プーリ4とハブ7とを接離可能に連結している。
前記ダンパー機構9は、動力伝達時の衝撃やトルク変動を緩衝するための機構であって、前記ナット部材19を介してプーリ4の凹陥部17内に周方向に等間隔おいて配設された円筒状の複数個のダンパーゴム16を備えている。ナット部材19は、頭部19Aを一体に有する筒体に形成されて内面に止めねじ10が螺合する雌ねじが形成され、外周に前記ダンパーゴム16が嵌着されており、先端部が前記プーリ4の円板部4Aに形成した挿通孔24に挿入されている。前記回転伝達部材8の固定部8Bは、前記プーリ4の円板部4Aの表面に密接され、止めねじ10によってナット部材19に固定されている。止めねじ10をナット部材19のねじ孔にねじ込んで締め付けると、固定部8Bは止めねじ10の頭部とナット部材19の先端面によって挟持されて円板部4Aの表面に押し付けられる。一方、ダンパーゴム16は円板部4Aの内面に押し付けられる。
このような動力伝達装置1において、自動車エンジン(駆動側機器)からの動力は、プーリ4−ダンパーゴム16−ナット部材19−回転伝達部材8−ハブ7を経て回転軸6に伝達される。
ダンパー機構9を構成するダンパーゴム16は、動力伝達中においてプーリ4からハブ7に伝達されるトルク変動や衝撃を効果的に緩衝する。したがって、動力伝達中におけるトルク変動や衝撃によって回転伝達部材8の接続部8Dに加わる張力が軽減され、接続部8Dがハブ7と挾持板11との間から抜け出るようなことはない。
コンプレッサ2側に過負荷が発生すると、回転軸6の回転が抑制されてプーリ4とハブ7との間に所定の大きさ以上の回転力が生じ、この回転力により回転伝達部材8によるプーリ4とハブ7との結合状態が解除される。すなわち、回転軸6の回転が抑制されると、プーリ4とハブ7との間に生じる回転力により回転伝達部材8の接続部8Dがハブ7と挾持板11との間から離脱してプーリ4とハブ7の結合を解除する。そして、連結片部8Cがコンプレッサ2側に弾性復帰して接続部8Dを挾持板11とプーリ4との隙間に移動待避させる。したがって、接続部8Dが離脱した後は回転伝達部材8とハブ7または挾持板11とが干渉するおそれがなく、プーリ4の回転伝達を確実に断つことができる。
特許第3421619号公報 特開2003−35321号公報 特開2004−245274号公報 特開2004−245273号公報 特開2003−148510号公報 特開2003−28191号公報
上記した従来の動力伝達装置1においては、合成樹脂製のプーリ4の中心に圧入嵌合された軸受5の内輪5aをハウジング3の円筒部3Aに圧入嵌合してスナップリング25で抜け止めするとともに、挾持板11とともに回転伝達部材8の接続部8Dを挟持したハブ7を回転軸6に装着した後、回転伝達部材8の連結片部8Cをコンプレッサ2側に弾性変形させて固定部8Bをプーリ4の円板部4Aの表面に密接し、止めねじ10によって固定部8Bをナット部材19に固定することにより、コンプレッサ2ヘの取付けが完了する。
このような動力伝達装置1の組立作業では、合成樹脂製のプーリ4の凹陥部17にナット部材19を個々に挿入し、このナット部材19に回転伝達部材8の接続部8Cを止めねじ10で固定する組立て手順となるため、止めねじ10をナット部材19のねじ孔にねじ込むとき、プーリ4を傾けたりするとナット部材19が動いて止めねじ10をねじ込むことができず、最悪の場合はナット部材19が凹陥部17から脱落するため組立作業に注意を要するという問題があった。このため、ナット部材19が凹陥部17から脱落しないように何らかの対策を講じることが要望されている。
他方、ダンパー機構9(ダンパーゴム16)を用いない動力伝達装置では、組立作業を簡単にするために、合成樹脂製のプーリ4を製造するに当たり、インサート成形によりプーリ4とナット部材19を一体に形成することが考えられる。
しかしながら、ナット部材19は動力伝達の系路となるため、またナット部材19には回転伝達部材8の連結片部8Cの弾性復帰力が固定部8Bを介して作用するため、プーリ4のナット部材19との結合部分にクラックが発生し易いという問題があった。特に、ナット部材19のプーリ4との結合強度を増すためにナット部材19にローレット加工を施したり、ナット部材19の断面形状を角形に形成したりすると、応力集中により樹脂クラックが一層発生し易くなる。
また、樹脂のインサート成形において、インサート物が多いと金型を開いている時間が長くなり、金型の温度低下が生じるため、製品の物性、形状が不安定になり易い。
一方、ナット部材19をプーリ14とは別個に製作してプーリ4の凹陥部17内に挿入した場合は、首下部分である筒状のナット本体19Bをプーリ4の挿通孔24に挿入する場合は、ナット部材19が挿入されるプーリ4の円板部4Aの板厚よりナット部材19の首下寸法を短くすると、止めねじ10をナット部材19に螺合することにより、円板部4Aの表裏面で挿通孔24の周辺部が回転伝達部材8の固定部8Bとナット部材19とで挟圧される。このような構成であると、挿通孔24の周辺部は、回転伝達部材8の固定部8Bにより押圧され続けるため時間とともに永久変形する。したがって、特にダンパー機構9を備えない動力伝達装置では、樹脂の永久変形により回転伝達部材8の固定部8Bががたつくと、固定部8Bが破損し易くなる。また逆に、プーリ4の円板部4Aの板厚よりナット部材19の首下寸法を長くした場合は、動力伝達中の応力変化によりナット部材19ががたつくため、回転伝達部材8の固定部8Bが同じく破損し易くなるという問題があった。
本発明は上記した従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、組立時のナット部材の脱落を確実に防止することができ、組立作業性を向上させるようにした動力伝達装置を提供することにある。
また、本発明は、ナット部材の脱落防止に加えて動力伝達中の振動やがたつきにより合成樹脂製の駆動側回転部材にクラックが生じたり、回転伝達部材の固定部が破損したり、固定手段が緩んだりするのを防止し、装置の耐久性を向上させるようにした動力伝達装置を提供することにある。
上記目的を達成するために第1の発明は、駆動側機器の動力によって回転する合成樹脂製の駆動側回転部材と、従動側機器の回転軸に取付けられ前記駆動側回転部材の回転が伝達される従動側回転部材と、複数個の固定部と弾性変形可能な連結片部と接続部とを有して前記駆動側回転部材と前記従動側回転部材との間に介装されることによりこれら両部材を連結し、前記従動側機器に過負荷が加わったときに連結を解除する回転伝達部材と、前記駆動側回転部材の凹陥部内に組み込まれた複数個のナット部材と、前記回転伝達部材の前記各固定部を前記各ナット部材に固定する複数個の固定手段とを備え、前記駆動側回転部材の円板部に前記凹陥部に連通し前記固定手段が挿通される挿通孔を形成するとともに、前記円板部の表面で前記挿通孔の周囲に収容凹部を形成し、前記ナット部材を前記凹陥部内にはめ込まれ前記円板部の内面に密接する頭部と、この頭部に一体に突設されて前記円板部の挿通孔に挿入され前記固定手段がねじ込まれるナット本体とで構成し、このナット本体の外周に前記収容凹部内に膨出し前記ナット部材の前記凹陥部からの脱落を防止する脱落防止部をかしめ加工によって形成したものである。
また、第2の発明は、駆動側機器の動力によって回転する合成樹脂製の駆動側回転部材と、従動側機器の回転軸に取付けられ前記駆動側回転部材の回転が伝達される従動側回転部材と、複数個の固定部と弾性変形可能な連結片部と接続部とを有して前記駆動側回転部材と前記従動側回転部材との間に介装されることによりこれら両部材を連結し、前記従動側機器に過負荷が加わったときに連結を解除する回転伝達部材と、前記駆動側回転部材の凹陥部内に組み込まれた複数個のナット部材と、前記回転伝達部材の前記各固定部を前記各ナット部材に固定する複数個の固定手段とを備え、前記駆動側回転部材の円板部に前記凹陥部に連通し前記固定手段が挿通される挿通孔を形成するとともに、前記円板部の表面で前記挿通孔の周囲に凸状の座部と収容凹部とを形成し、前記ナット部材を前記凹陥部内にはめ込まれ前記円板部の内面に密接する頭部と、この頭部に一体に突設されて前記円板部の挿通孔に挿入され前記固定手段がねじ込まれるナット本体とで構成し、このナット本体の外周に前記収容凹部内に膨出し前記ナット部材の前記凹陥部からの脱落を防止する脱落防止部をかしめ加工によって形成し、前記座部の先端面に前記回転伝達部材の前記固定部を設置し、この固定部を前記固定手段によって前記ナット部材に固定したものである。
第3の発明は、前記ナット部材の脱落防止部を前記収容凹部の内面と非接触状態を保つように形成したものである。
第1の発明においては、ナット部材を駆動側回転部材の凹陥部に挿入した後、ナット部材に脱落防止部を設けて仮固定するようにしたので、固定手段をねじ込む以前にナット部材が脱落するおそれがなく、組立作業性を向上させることができる。固定手段としては止めねじまたはボルトが用いられる。
第2の発明においては、駆動側回転部材の円板部表面に突設した座部に回転伝達部材の固定部を固定手段によって押し付けて固定するようにしたので、座部が圧縮変形して固定手段による押圧力を吸収する。したがって、動力伝達中の振動等による影響が少なく、駆動側回転部材にクラックが生じたり、回転伝達部材の固定部が破断したり、あるいはまた固定手段が緩んだりするのを防止することができる。
第3の発明においては、脱落防止部が収容凹部の内面に接触しないので、回転伝達部材の固定部をナット部材に固定しても、これによる外力が脱落防止部を介して駆動側回転部材に加わることがなく、脱落防止部による駆動側回転部材の破損、クラックの発生等を防止することができる。
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る動力伝達装置の一実施の形態を示す正面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は同動力伝達装置の背面図、図4はプーリの正面図、図5は図2の要部の拡大断面図、図6(a)はプーリの円板部表面の挿通孔周辺部を示す平面図、図6(b)はナット部材の脱落防止部を示す断面図である。なお、図7に示した従来装置と同一構成部品、部分については同一符号をもって示し、その説明を適宜省略する。また、本発明はダンパー機構を構成するダンパーゴムを有さず、ナット部材19のみを駆動側回転部材であるプーリ4内に組込み、このナット部材19に回転伝達部材8の固定部8Bを固定手段としての止めねじ10によって固定するようにしている。
図1〜図6に示した動力伝達装置20において、駆動側回転部材であるプーリ4は、合成樹脂の成形品からなり、円板部4Aと、この円板部4Aの背面側に一体に突設された外側円筒部4Bおよび内側円筒部4Cとを一体に有し、外側円筒部4Bの外周面には複数のV字状溝30が形成されており、このV字状溝30に自動車エンジンの動力を伝達する図示を省略したベルトが張設されている。一方、内側円筒部4Cは、コンプレッサ2のハウジング3に設けた突出部3Aにベアリング5を介して回転自在に軸支されている。
また、前記プーリ4の円板部4A、外側円筒部4Bおよび内側円筒部4Cとの間に形成された環状の凹陥部17は、隔壁31によって40°間隔で仕切られることにより、周方向に画成された扇形形状をなす9個の収納部17Aで構成されている。そして、これらの収納部17Aのうち、周方向に120°間隔となる3個の収納部17Aにはナット部材19がそれぞれ収納されている。
前記ナット部材19は、金属製で前記収納部17Aに嵌挿される頭部19Aと、この頭部19Aの下面中央部に一体に突設された首下部である筒状のナット本体19Bとで構成されている。頭部19Aは、回転を防止するために、収納部17Aの形状に近い平面視扇形に形成されている。ナット本体19Bの内周面には、前記止めねじ10が螺合する雌ねじ32が形成されている。また、ナット本体19Bの先端部は、前記プーリ4の円板部4Aに前記収納部17Aに連通するように形成された挿通孔24に挿入されている。
前記円板部4Aの前面で前記挿通孔24の周囲には、座部34と収容凹部35が形成されている。前記座部34は、回転伝達部材8の固定部8Bを円板部4Aの表面4aから離間させて固定するための部分で、挿通孔24の周囲に等間隔おいて突設された断面形状が矩形を呈する3個の円弧状の突状体34a〜34cで構成されている。前記収容凹部35は、ナット部材19の取付時にナット部材19が収納部17Aから脱落するのを防止する後述する脱落防止部36を収容するために設けられるもので、前記座部34を構成する3個の突状体34a〜34cの隣り合う突状体間に位置するように、挿通孔24の周りに120°の間隔をおいて3個形成されている。
前記ナット部材19は、取付時にプーリ4の背面側から収納部17A内に嵌挿されることにより、頭部19Aの下面が前記円板部4Aの内面4bに密接し、ナット本体19Bが前記挿通孔24および座部34に嵌挿されている。このナット部材19は、収納部17A収納された後、ナット本体19Bの外周面で前記各収容凹部35に対応する3箇所をそれぞれかしめ加工されることにより、各収容凹部35内に膨出する3個の突起状の脱落防止部36が突設され、これによってナット部材19を収納部17A内に仮固定し、ナット部材19が収納部17Aから脱落するのを防止するようにしている。脱落防止部36の形成に際しては、収容凹部35の内面に傷を付けるとプーリ4にクラックが生じる原因となるため、収容凹部35の内面に接触しないように形成することが望ましい。
また、ナット本体19Bは、座部34にばね座金(または緩み止めブッシュ)として機能させるために前記円板部4Aの板厚寸法に座部34の高さ寸法を加算した寸法よりも、若干短い、言い換えれば座部34の潰し代分だけ短い長さに設定されている。すなわち、ナット本体19Bをこのような長さに設定しておくと、回転伝達部材8の固定部8Bは座部34の先端面に接触してナット本体19Bの先端面に直接接触しないため、止めねじ10を締め付けると固定部8Bが座部34を押圧して圧縮変形させ、ナット本体19Bの先端面に接触する。座部34は、圧縮変形するとその弾撥力で固定部8Bを止めねじ10の頭部に押し付けるため、ばね座金として機能する。また、座部34の圧縮変形によってナット部材19、固定部8Bおよび止めねじ10が完全に結合されるので、振動等によって座部34が擦れたり、固定部8Bががたついて破断したりすることもない。
図1および図2において、コンプレッサ2の回転軸6は、一端部がハウジング3の突出部3Aより外部に突出し、その突出端部にハブ7がボルト37によって固定されている。
前記ハブ7は、円板状のフランジ部7Aと、このフランジ部7Aの裏面中央に一体に突設され前記回転軸6の軸端部にスプライン嵌合されたボス部7Bとで構成されている。フランジ部7Aは、中央に形成されたボルト用取付孔39と、このボルト取付用孔39の周りに形成された3個の挿通孔40とを有し、これらの挿通孔40にそれぞれ挿通されるリベット41により挾持板11が裏面側に取付けられている。また、フランジ部7Aの外周には、挾持板11とともに回転伝達部材8の接続部8Dを挟持する3個の挾持部7Cが周方向に等間隔おいて径方向に一体に突設されている。
前記プーリ4とハブ7との間に介装されこれら両部材を接離可能に連結する前記回転伝達部材8は、ばね用鋼板によって形成されるもので、略円板状の本体8Aと、この本体8Aの外周にスリット43を挟んで円弧状に形成された弾性変形可能な3個の連結片部8Cと、前記本体8Aと各連結片部8Cの基端部(回転伝達部材8の回転方向側端部)を連結する固定部8Bと、各連結片部8Cの先端部に設けられた接続部8とで構成されている。
前記固定部8Bは、本体8Aと平行な平面をなしており、中央には前記止めねじ10が挿通される取付孔44が形成されている。
前記連結片部8Cは、図2に示すように表面側(ハブ7側)に所要角度折り曲げられることにより傾斜している。
前記接続部8Dは、固定部8Bより回転伝達部材8の回転方向(矢印方向)とは反対方向に位置し、反回転方向側の固定部8Bと近接している。また、接続部8Dは、本体8Aと平行になるように連結片部8Cとは反対方向(プーリ4側)に所要角度折り曲げられている。接続部8Dの裏面中央には、半球状の係合部45が一体に突設されており、この係合部45を挾持板11の挾持部11Cに形成した小孔46に係入することにより、接続部8Dと挟持部11Cとの結合強度を高めるようにしている。そして、回転伝達部材8は、予め接続部8Dがハブ7の挾持部7Cと挾持板11の挾持部11Cとによって挾持された状態でハブ7に取付けられ、しかる後プーリ4に取付けられる。
このような動力伝達装置20の組立作業は、先ず回転伝達部材8をハブ7に取付ける。このハブ7への取付作業は、回転伝達部材8の各接続部8Dをハブ7と挾持板11の挾持部によって挾持し、挾持板11をリベット41によりハブ7に固定することにより終了する。
次に、ハブ7のボス部7Bを回転軸6の先端部にスプライン嵌合によって結合し、ボルト37によって固定する。
次いで、回転伝達部材8の各連結片部8Cをコンプレッサ2方向に弾性変形させて固定部8Bを座部34の先端面に押し付ける。そして、この状態で止めねじ10を固定部8Bの取付孔44に挿通してナット部材19のねじ孔32にねじ込むことにより固定部8Bを前記座部34とナット部材19の先端面に固定し、もって動力伝達装置20の組立作業を完了する。
このような構造からなる動力伝達装置20によれば、回転伝達部材8の固定部8Bを止めねじ10によってナット部材19に固定したとき、座部34が固定部8Bによって押圧されることにより圧縮変形し、その弾発力で止めねじ10の緩みを防止することができる。つまり、座部34は、上記した通りばね座金(または緩み止めブッシュ)として機能する。
また、止めねじ10の締結によって座部34を圧縮変形させると、ナット部材19、固定部8Bおよび止めねじ10を一体的に結合させることができるので、振動等による座部34の摩耗、固定部8Bの破断等を防止することができる。
また、回転伝達部材8の固定部8Bとナット部材19とが連結された状態において、プーリ4の円板部4Aと回転伝達部材8の本体8Aとの間には座部34による僅かな隙間Sが形成されるので、固定部8Bが円板部4Aの表面に直接圧接されることがなく、動力伝達中において円板部4Aの表面が固定部8Bによって擦られて摩耗したり、永久変形したり、クラックが生じたりすることもなく、プーリ4の耐久性を向上させることができる。
また、止めねじ10をナット部材19のねじ孔32にねじ込んで固定部8Bをナット部材19に固定するとき、ナット部材19は脱落防止部36により収納部17A内に仮固定されているので、プーリ4を不用意に傾けてもナット部材19が収納部17Aから脱落するおそれがなく、止めねじ10のねじ孔32へのねじ込み作業が容易で、回転伝達部材8のプーリ4への取付作業を迅速に行うことができる。
また、座部34はプーリ4に一体に設けられているため、別部材からなるばね座金や緩み止めブッシュを用いる必要がなく、部品点数の増加を抑制することができる。
さらに、プーリ4とナット部材19を別個に製作しているので、これらをインサート成形により一体に形成した場合のように樹脂内部に残留応力が残らない上、外部から力を加えていないので、樹脂にストレスを与えることがない。
加えて、ナット部材19をプーリ4とインサート成形しないので、プーリ4の成形時の型開き時間を短縮することができ、また型温度が下がらないので安定した製品を成形することができる。
なお、上記した実施の形態においては、ナット部材19の脱落防止と、プーリ4のクラック、止めねじ10の緩み止め、固定部8Bの破断防止を可能にした実施の形態を示したため、プーリ4の円板部4A表面で挿通孔4の周りに円弧状の突状体からなる座部34を一体に突設した例を示したが、ナット部材19の脱落防止のみを目的とした動力伝達装置に適用する場合は、座部34を省略することができる。
本発明に係る動力伝達装置の一実施の形態を示す正面図である。 図1のA−A線断面図である。 同動力伝達装置の背面図である。 プーリの正面図である。 図2の要部の拡大断面図である。 (a)はプーリの円板部表面の挿通孔周辺部を示す平面図、(b)はナット部材の脱落防止部を示す断面図である。 従来の動力伝達装置の断面図である。
符号の説明
1…動力伝達装置、2…コンプレッサ、3…ハウジング、4…プーリ(駆動側回転部材)、6…回転軸、7…ハブ(従動側回転部材)、8…回転伝達部材、8A…本体、8B…固定部、8C…連結片部、8D…接続部、10…止めねじ(固定手段)、11…挾持板、17…凹陥部、19…ナット部材、19A…頭部、19B…ナット本体、20…動力伝達装置、24…挿通孔、34…座部、35…収容凹部、36…脱落防止部。

Claims (3)

  1. 駆動側機器の動力によって回転する合成樹脂製の駆動側回転部材と、
    従動側機器の回転軸に取付けられ前記駆動側回転部材の回転が伝達される従動側回転部材と、
    複数個の固定部と弾性変形可能な連結片部と接続部とを有して前記駆動側回転部材と前記従動側回転部材との間に介装されることによりこれら両部材を連結し、前記従動側機器に過負荷が加わったときに連結を解除する回転伝達部材と、
    前記駆動側回転部材の凹陥部内に組み込まれた複数個のナット部材と、
    前記回転伝達部材の前記各固定部を前記各ナット部材に固定する複数個の固定手段とを備え、
    前記駆動側回転部材の円板部に前記凹陥部に連通し前記固定手段が挿通される挿通孔を形成するとともに、前記円板部の表面で前記挿通孔の周囲に収容凹部を形成し、
    前記ナット部材を前記凹陥部内にはめ込まれ前記円板部の内面に密接する頭部と、この頭部に一体に突設されて前記円板部の挿通孔に挿入され前記固定手段がねじ込まれるナット本体とで構成し、このナット本体の外周に前記収容凹部内に膨出し前記ナット部材の前記凹陥部からの脱落を防止する脱落防止部をかしめ加工によって形成したことを特徴とする動力伝達装置。
  2. 駆動側機器の動力によって回転する合成樹脂製の駆動側回転部材と、
    従動側機器の回転軸に取付けられ前記駆動側回転部材の回転が伝達される従動側回転部材と、
    複数個の固定部と弾性変形可能な連結片部と接続部とを有して前記駆動側回転部材と前記従動側回転部材との間に介装されることによりこれら両部材を連結し、前記従動側機器に過負荷が加わったときに連結を解除する回転伝達部材と、
    前記駆動側回転部材の凹陥部内に組み込まれた複数個のナット部材と、
    前記回転伝達部材の前記各固定部を前記各ナット部材に固定する複数個の固定手段とを備え、
    前記駆動側回転部材の円板部に前記凹陥部に連通し前記固定手段が挿通される挿通孔を形成するとともに、前記円板部の表面で前記挿通孔の周囲に凸状の座部と収容凹部とを形成し、
    前記ナット部材を前記凹陥部内にはめ込まれ前記円板部の内面に密接する頭部と、この頭部に一体に突設されて前記円板部の挿通孔に挿入され前記固定手段がねじ込まれるナット本体とで構成し、このナット本体の外周に前記収容凹部内に膨出し前記ナット部材の前記凹陥部からの脱落を防止する脱落防止部をかしめ加工によって形成し、
    前記座部の先端面に前記回転伝達部材の前記固定部を設置し、この固定部を前記固定手段によって前記ナット部材に固定したことを特徴とする動力伝達装置。
  3. 請求項1または2記載の動力伝達装置において、
    前記ナット部材の脱落防止部は、前記収容凹部の内面と非接触状態を保つように形成されていることを特徴とする動力伝達装置。
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