JP2000087850A - クラッチレス圧縮機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 圧縮機側の負荷トルクの変動を緩和できると
ともに、圧縮機側の負荷トルクが過大になった場合、プ
ーリから駆動力伝達体に至る動力伝達経路を適正に遮断
できる安価なクラッチレス圧縮機を提供する。 【解決手段】 ハウジング１に収容された回転軸２に、
ハウジング１に回転可能に装着されたプーリ１０を介し
てエンジンの駆動力が伝達されるクラッチレス圧縮機に
おいて、ハウジング１から外部へ突出する回転軸２の端
部にハブ２０及びカバー部材２１を設け、プーリ１０又
はカバー部材２１に凹部１１を形成し、プーリ１０とカ
バー部材２１との間に、トルク変動を低減させる緩衝ゴ
ム４０と、この緩衝ゴム４０に保持され、所定値以上の
負荷トルクが作用したとき、緩衝ゴム４０の付勢力に抗
して凹部１１から離脱する転動ボール３０とを介在させ
た。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明はクラッチレス圧縮
機に関する。

【０００２】

【従来の技術】クラッチ付圧縮機においては、エンジン
の駆動力は電磁クラッチを介して圧縮機の回転軸に伝達
される。

【０００３】このクラッチ付圧縮機においては、圧縮機
の内部に焼付等の異常が発生したとき、圧縮機内の温度
や圧力に基づいて電磁クラッチを切り、エンジンへの過
大な負荷によるエンジンストールを防止している。

【０００４】一方、電磁クラッチを使用しないクラッチ
レス圧縮機においては、圧縮機の内部に焼付等の異常が
発生したとき、エンジンへの過大な負荷によるエンジン
ストールを防止するため、プーリから圧縮機の回転軸へ
の動力伝達を断つ機構を備えている。

【０００５】特開平８−２１０２５０号公報にはプーリ
に固着された連結基板に緩衝ゴムを介して弾性結合され
た保持リングと回転軸に止着された駆動力受承体との間
に転動ボールを挟み（転動ボールはプーリ上の保持凹部
と駆動力受承体上の収容凹部に嵌まり込んでいる）、駆
動力受承体をばねによってプーリ側へ付勢し、負荷トル
クの変動を緩衝ゴムによって緩和するとともに、圧縮機
側の負荷トルクが過大になった場合には転動ボールを保
持凹部から離脱させ、トルクの伝達を遮断する機構を備
えるクラッチレス圧縮機が開示されている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかし、このクラッチ
レス圧縮機には以下の問題がある。

【０００７】負荷トルクの変動を緩和するための機構
（緩衝ゴム）とトルクを伝達するための機構（ばね）と
が別々に設けられているので、部品点数が増加し、製造
コストがかさんでしまう。

【０００８】トルクを伝達するための機構が破損した場
合、ばねの破片や転動ボールが飛散し危険である。

【０００９】この発明はこのような事情に鑑みてなされ
たもので、その課題は圧縮機側の負荷トルクの変動を緩
和できるとともに、圧縮機側の負荷トルクが過大になっ
た場合、プーリから駆動力伝達体に至る動力伝達経路を
適正に遮断できる安価なクラッチレス圧縮機を提供する
ことである。

【００１０】

【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するた
め請求項１記載の発明は、ハウジングに収容された駆動
軸に、前記ハウジングに回転可能に装着されたプーリを
介して外部駆動源の駆動力が伝達されるクラッチレス圧
縮機において、前記ハウジングから外部へ突出する前記
駆動軸の端部に駆動力伝達体を設け、前記プーリ又は前
記駆動力伝達体に凹部を形成し、前記プーリと前記駆動
力伝達体との間に、トルク変動を低減させる弾性部材
と、この弾性部材に保持され、所定値以上の負荷トルク
が作用したとき、前記弾性部材の付勢力に抗して前記凹
部から離脱する転動子とを介在させたことを特徴とす
る。

【００１１】プーリと駆動力伝達体との間に介在させた
弾性部材によって圧縮機側の負荷トルクの変動を緩和で
きるとともに、圧縮機内部の異常によって圧縮機側の負
荷トルクが所定値以上になったとき、弾性部材の付勢力
に抗して転動子が凹部から離脱し、プーリから駆動力伝
達体に至る動力伝達経路が適正に遮断される。

【００１２】請求項２記載の発明は、請求項１に記載の
クラッチレス圧縮機において、前記凹部が形成された前
記プーリ又は前記駆動力伝達体に設けられ、前記凹部か
ら離脱した前記転動子を収容可能な転動子収容凹部と、
前記凹部とが、前記プーリの回転中心を中心とする同一
円周上に位置していることを特徴とする。

【００１３】凹部から離脱した転動子は、凹部が形成さ
れたプーリ又は駆動力伝達体に設けられた転動子収容凹
部に収容される。

【００１４】請求項３記載の発明は、請求項１又は２に
記載のクラッチレス圧縮機において、前記転動子と前記
弾性部材との間に、弾性部材より剛性の高い部材で形成
された中間部材が介在していることを特徴とする。

【００１５】転動子と弾性部材との間に、弾性部材より
剛性の高い部材で形成された中間部材が介在しているの
で、弾性部材の全体でトルクをハブ側へ伝えることがで
きる。

【００１６】

【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図
面に基づいて説明する。

【００１７】図１はこの発明の一実施形態に係るクラッ
チレス圧縮機の要部断面図、図２は図１のＡ矢視図、図
３は図１のクラッチレス圧縮機の要部の分解斜視図であ
る。

【００１８】このクラッチレス圧縮機は、ラジアル軸受
５を介してハウジング１のボス部１ａに回転可能に支持
され、かつ回転軸（駆動軸）２を回転中心として図示し
ないエンジン（外部駆動源）からの回転力によって回転
するプーリ１０と、ハウジング１から突出する回転軸２
の端部にボルト６及びワッシャ６ａによって固定された
ハブ（駆動力伝達体）２０とを備える。

【００１９】ラジアル軸受５の外輪５ａに固着されたプ
ーリ１０には複数の凹部１１が形成されている。凹部１
１は回転軸２を中心とする同一円周上に、１２０°毎に
配置されている。なお、ラジアル軸受５の内輪５ｂはハ
ウジング１のボス部１ａに固着されている。

【００２０】また、プーリ１０には凹部１１が配置され
た同一円周上に１２０°毎に転動ボール（転動子）３０
を収容する穴（転動子収容凹部）１２が形成されてい
る。この穴１２の深さは転動ボール３０の直径より大き
い寸法である。

【００２１】なお、凹部１１は所定値以上の負荷トルク
が作用したとき転動ボール３０が確実に離脱できる深さ
に形成されている。

【００２２】プーリ本体１３の外周面にはベルト（図示
せず）が巻き掛けられ、プーリ本体１３はベルトを介し
てエンジン（図示せず）のクランクシャフトに連結され
ている。

【００２３】ハブ２０には円盤状のカバー部材２１がリ
ベット２２によって取り付けられている。ハブ２０とカ
バー部材２１とで駆動力伝達体が構成される。

【００２４】カバー部材２１には凹部１１と対向可能な
凹部２４が回転軸２を中心とする同一円周上に、１２０
°毎に形成されている。

【００２５】凹部２４には円柱状の緩衝ゴム（弾性体）
４０が接着剤で固着されている。

【００２６】緩衝ゴム４０には転動ボール３０の直径よ
り若干小さい穴が形成され、この穴には転動ボール３０
の一部が弾性力によって保持されている。

【００２７】また、緩衝ゴム４０の弾性力によって転動
ボール３０がプーリ１０方向へ付勢されている。

【００２８】圧縮機側の負荷トルクが所定値以内である
場合、プーリ１０の回転力は凹部１１、転動ボール３
０、緩衝ゴム４０、凹部２４、カバー部材２１及びハブ
２０を介して回転軸２に伝達され、回転軸２が回転す
る。

【００２９】このとき、圧縮機側の負荷トルクによって
転動ボール３０を保持する緩衝ゴム４０が凹部２４内で
弾性変形するので、圧縮機側の負荷トルクの変動は緩衝
ゴム４０の弾性力で緩和されてプーリ１０に伝達され
る。

【００３０】また、圧縮機側の負荷トルクが所定値以上
に過大になった場合、この負荷トルクが緩衝ゴム４０を
介して転動ボール３０に加わる。転動ボール３０は緩衝
ゴム４０の保持力に抗して緩衝ゴム４０から外れ、凹部
１１から離脱する。

【００３１】凹部１１から離脱した転動ボール３０は穴
１２に落ち込み、プーリ１０から回転軸２へのトルク伝
達経路が断たれるので、プーリ１０が空転する。

【００３２】この実施形態のクラッチレス圧縮機によれ
ば、以下の効果を発揮する。

【００３３】負荷トルクの変動の緩和とトルクの伝達と
を転動ボール３０を保持した緩衝ゴムだけで行うことが
できるので、部品点数を削減でき、製造コストの低減を
図ることができる。

【００３４】プーリ１０からハブ２０に至る動力伝達経
路が断たれたとき、凹部１１を離脱した転動ボール３０
は穴１２に収容されるので、転動ボール３０が飛散する
ことがない。

【００３５】図４はこの発明の実施形態に係るクラッチ
レス圧縮機の変形例を示す部分拡大断面図である。

【００３６】ハブ２０（図１参照）に取付けられたカバ
ー部材１２１には凹部１１（図１参照）と対向可能な凹
部１２４が形成されている。

【００３７】凹部１２４に固着された緩衝ゴム１４０と
転動ボール３０との間には中間部材１６０が介在してい
る。

【００３８】中間部材１６０は緩衝ゴム１４０より剛性
の高い部材（例えば鉄材）で形成されている。

【００３９】中間部材１６０は緩衝ゴム１４０の一端面
を覆う平板部１６１と、平板部１６１の中央に形成さ
れ、緩衝ゴム１４０を保持する凹部１６２とで構成され
ている。

【００４０】緩衝ゴム１４０とカバー部材１２１との間
には空間部１４１が形成されている。

【００４１】この変形例によれば、上記実施形態よりも
緩衝ゴム１４０の全体を利用してトルクをハブ２０側へ
伝えることができる。

【００４２】なお、上記実施形態では転動ボール３０を
収容する穴１２をプーリ１０に設けたが、穴１２はカバ
ー部材２１に設けてもよいことは勿論である。

【００４３】また、穴１２の代わりにプーリ１０を貫通
する孔を形成するとともに、プーリ１０内にカバーを設
け、このカバーによって転動ボール３０が飛び散らない
ようにしてもよい。

【００４４】

【発明の効果】以上に説明したように請求項１記載の発
明のクラッチレス圧縮機によれば、弾性部材によって圧
縮機側の負荷トルクの変動を緩和してエンジン側へ伝達
できる。また、圧縮機内部の異常によって圧縮機側の負
荷トルクが所定値以上になったとき、転動子が凹部から
離脱してプーリが空転するので、プーリから駆動力伝達
体に至る動力伝達経路を適正に遮断できる。更に、弾性
部材によってトルクの伝達とトルクダンピングとを行わ
れるので、部品点数を削減でき、製造コストの低減を図
ることができる。

【００４５】請求項２の発明のクラッチレス圧縮機によ
れば、凹部から離脱した転動子は凹部が形成されたプー
リ又は駆動力伝達体に設けられた転動子収容凹部に収容
され、転動子が飛散することがない。

【００４６】請求項３の発明のクラッチレス圧縮機によ
れば、弾性部材の全体でトルクをハブ側へ伝えることが
できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１はこの発明の一実施形態に係るクラッチレ
ス圧縮機の要部断面図である。

【図２】図２は図１のＡ矢視図である。

【図３】図３は図１のクラッチレス圧縮機の要部の分解
斜視図である。

【図４】図４はこの発明の実施形態に係るクラッチレス
圧縮機の変形例を示す部分拡大断面図である。

【符号の説明】

１ ハウジング ２ 回転軸 １０ プーリ １１ 凹部 １２ 穴 ２０ ハブ ２１，１２１ カバー部材 ３０ 転動ボール ４０，１４０ 緩衝ゴム １６０ 中間部材

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ハウジングに収容された駆動軸に、前記
   ハウジングに回転可能に装着されたプーリを介して外部
   駆動源の駆動力が伝達されるクラッチレス圧縮機におい
   て、 前記ハウジングから外部へ突出する前記駆動軸の端部に
   駆動力伝達体を設け、 前記プーリ又は前記駆動力伝達体に凹部を形成し、 前記プーリと前記駆動力伝達体との間に、トルク変動を
   低減させる弾性部材と、この弾性部材に保持され、所定
   値以上の負荷トルクが作用したとき、前記弾性部材の付
   勢力に抗して前記凹部から離脱する転動子とを介在させ
   たことを特徴とするクラッチレス圧縮機。
2. 【請求項２】 前記凹部が形成された前記プーリ又は前
   記駆動力伝達体に設けられ、前記凹部から離脱した前記
   転動子を収容可能な転動子収容凹部と、前記凹部とが、
   前記プーリの回転中心を中心とする同一円周上に位置し
   ていることを特徴とする請求項１に記載のクラッチレス
   圧縮機。
3. 【請求項３】 前記転動子と前記弾性部材との間に、弾
   性部材より剛性の高い部材で形成された中間部材が介在
   していることを特徴とする請求項１又は２に記載のクラ
   ッチレス圧縮機。