JP2008143351A - 自動二輪車用タイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】諸性能に優れた自動二輪車用タイヤ対の提供。
【解決手段】フロントタイヤ2は、トレッド4及びベルト14を備えている。トレッド4は、1つのセンター領域22及び一対のショルダー領域24からなる。直進時には、センター領域22が主として接地する。旋回時には、ショルダー領域24が主として接地する。センター領域22及びショルダー領域24は、それぞれ架橋されたゴム組成物からなる。センター領域22のゴム組成物の硬度Hcは小さく、ショルダー領域24のゴム組成物の硬度Hsは大きい。ベルト14は、ジョイントレス構造を有する。ベルト14のコードは、アラミド繊維又はスチールからなる。リアタイヤのトレッドも、1つのセンター領域及び一対のショルダー領域からなる。リアタイヤでは、センター領域のゴム組成物の硬度Hcは大きく、ショルダー領域のゴム組成物の硬度Hsは小さい。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動二輪車に装着されるタイヤ対に関する。詳細には、本発明は、タイヤのトレッドの改良に関する。
自動二輪車の旋回時には、この自動二輪車に遠心力が働く。旋回には、この遠心力につり合うコーナリングフォースが必要である。旋回時にライダーは、自動二輪車を内側へ傾斜させる。この傾斜によって生じるキャンバースラストにより、旋回が達成される。旋回の容易の目的で、自動二輪車用のタイヤは曲率半径の小さなトレッドを備えている。直進時には、トレッドのセンター領域が接地する。一方旋回時には、ショルダー領域が接地する。センター領域及びショルダー領域のそれぞれの役割が考慮されたタイヤが、特開2005−271760公報に開示されている。
特開2005−271760公報
近年の自動二輪車は、高出力なエンジンを備えており、しかもブレーキ性能に優れている。自動二輪車の性能向上に伴い、タイヤにも優れた旋回性能及び直進時の安定性能が求められている。
高硬度なトレッドが用いられれば、大きなキャンバースラストが生じうる。このトレッドにより、優れた旋回性能が得られる。しかし、高硬度なトレッドは外乱吸収性能を阻害する。
旋回性能は、タイヤのグリップ性能にも影響される。低硬度なトレッドは、グリップ性能に寄与する。しかし、低硬度なトレッドは、耐摩耗性に劣る。さらに、低硬度なトレッドは、直進時の安定性能を阻害する。
本発明の目的は、諸性能に優れた自動二輪車用タイヤ対の提供にある。
本発明に係る自動二輪車用タイヤ対は、フロントタイヤ及びリアタイヤからなる。フロントタイヤ及びリアタイヤのそれぞれは、レッドと、有機繊維からなるコードを含むプライを備えかつラジアル構造を有するカーカスと、トレッドとカーカスとの間に位置するベルトとを備える。このトレッドは、センター領域と、このセンター領域よりも軸方向において外側に位置する一対のショルダー領域とを含む。このセンター領域及びショルダー領域は、架橋されたゴム組成物からなる。フロントタイヤでは、ショルダー領域の硬度Hsはセンター領域の硬度Hcよりも大きい。リアタイヤでは、センター領域の硬度Hcはショルダー領域の硬度Hsよりも大きい。
好ましくは、フロントタイヤにおいて、硬度Hsと硬度Hcとの差(Hs−Hc)は3以下である。好ましくは、リアタイヤにおいて、硬度Hcと硬度Hsとの差(Hc−Hs)は3以下である。
フロントタイヤのカーカスは、第一プライ及び第二プライを備えうる。この第一プライ及び第二プライのそれぞれにおいて、赤道面に対するコードの角度の絶対値は、65°以上80°以下である。この第一プライのコードの赤道面に対する傾きは、第二プライのコードの赤道面に対する傾きと逆である。リアタイヤのカーカスは、1枚のプライを備えうる。このプライのコードの、赤道面に対する角度の絶対値は、85°以上90°以下である。
フロントタイヤのベルトは、螺旋状に巻かれかつ実質的に周方向に延在するコードを含みうる。好ましくは、このコードの材質は、スチールである。リアタイヤのベルトは、螺旋状に巻かれかつ実質的に周方向に延在するコードを含みうる。好ましくは、このコードの材質は、アラミド繊維又はスチールである。
好ましくは、フロントタイヤ及びリアタイヤのそれぞれにおいて、トレッドの半分の幅Wtに対するセンター領域の半分の幅Wcの比(Wc/Wt)は、0.25以上0.75以下である。好ましくは、フロントタイヤ及びリアタイヤのそれぞれにおいて、この幅Wtに対するショルダー領域の幅Wsの比(Ws/Wt)は、0.25以上0.75以下である。
好ましくは、フロントタイヤにおける硬度Hc及び硬度Hs並びにリアタイヤにおける硬度Hc及び硬度Hsは、55以上である。
本発明に係る自動二輪車用タイヤ対では、フロントタイヤ及びリアタイヤのそれぞれのトレッドが、適正な硬度分布を有する。このタイヤ対は、諸性能に優れる。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1は、本発明の一実施形態に係るフロントタイヤ2が示された断面図である。この図1において上下方向が半径方向であり、左右方向が軸方向である。このタイヤ2は、一点鎖線CLを中心としたほぼ左右対称の形状を呈する。この一点鎖線は、赤道面を表す。このタイヤ2は、トレッド4、ウイング6、サイドウォール8、ビード10、カーカス12、ベルト14、インナーライナー16及びチェーファー18を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプの空気入りタイヤである。このタイヤ2は、自動二輪車のフロントホイールに装着される。
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面20を形成する。トレッド4は、1つのセンター領域22及び一対のショルダー領域24からなる。センター領域22は、赤道面CLを跨いでいる。ショルダー領域24は、軸方向においてセンター領域22の外側に位置している。
サイドウォール8は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール8は、架橋されたゴム組成物からなる。サイドウォール8は、撓みによって路面からの衝撃を吸収する。さらにサイドウォール8は、カーカス12の外傷を防止する。
ビード10は、サイドウォール8から半径方向略内向きに延びている。ビード10は、コア26と、このコア26から半径方向外向きに延びるエイペックス28とを備えている。コア26はリング状であり、複数本の非伸縮性ワイヤー(典型的にはスチール製ワイヤー)を含む。エイペックス28は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス28は、架橋されたゴム組成物からなる。エイペックス28は、高硬度である。
カーカス12は、第一プライ30及び第二プライ32からなる。第一プライ30及び第二プライ32は、トレッド4及びサイドウォール8の内面に沿って延在している。第一プライ30は、コア26の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、第一プライ30には主部34と折り返し部36とが形成されている。折り返し部36は、主部34の外面に積層されている。第二プライ32の端38は、サイドウォール8の内面に接している。この端38は、ビード10にまで至っていない。
図示されていないが、第一プライ30及び第二プライ32は、それぞれコードとトッピングゴムとからなる。コードが赤道面CLに対してなす角度の絶対値は、65°以上80°以下である。換言すれば、このタイヤ2はラジアル構造を有する。第一プライ30のコードの赤道面CLに対する傾きは、第二プライ32のコードの赤道面CLに対する傾きと逆である。角度の絶対値が65°以上80°以下に設定されることにより、大きなキャンバースラストが得られる。この観点から、角度の絶対値は65°以上75°以下がより好ましい。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
カーカス12が、他のプライを備えてもよい。但し、軽量の観点及び縦剛性抑制の観点から、カーカス12におけるプライの数は2が好ましい。
ベルト14は、カーカス12とトレッド4との間に位置している。ベルト14は、ベルトプライ40からなる。図示されていないが、このベルトプライ40は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは実質的に周方向に延びており、螺旋状に巻かれている。ベルト14は、いわゆるジョイントレス構造を有する。このベルト14は、キックバック及びシミーを抑制する。このベルト14を備えたタイヤ2は、外乱吸収性能に優れる。ベルトが、2枚のカットプライからなってもよい。
ベルト14のコードの材質は、スチール又は有機繊維である。有機繊維の具体例としては、アラミド繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維及びポリエチレンナフタレート繊維が挙げられる。拘束力が大きく、従って高い剛性が得られるとの観点から、コードの好ましい材質は、スチール又はアラミド繊維である。特に、スチールが好ましい。
インナーライナー16は、カーカス12の内周面に接合されている。インナーライナー16は、架橋ゴムからなる。インナーライナー16には、空気遮蔽性に優れたゴムが用いられている。インナーライナー16は、タイヤ2の内圧を保持する役割を果たす。
センター領域22及びショルダー領域24は、それぞれ架橋されたゴム組成物からなる。センター領域22のゴム組成物の硬度Hcは小さく、ショルダー領域24のゴム組成物の硬度Hsは大きい。このタイヤ2では、直進時にはセンター領域22が主として接地する。硬度Hcが小さなセンター領域22とジョイントレス構造のベルト14との相乗効果により、このタイヤ2では、直進時の優れた外乱吸収性能が発揮される。このタイヤ2では、旋回時にはショルダー領域24が主として接地する。ショルダー領域24の硬度Hsは大きいので、ジョイントレス構造のベルト14が用いられているにもかかわらず、大きなキャンバースラストが発生する。このタイヤ2では、外乱吸収性能及び旋回性能が両立される。
硬度Hsと硬度Hcとの差(Hs−Hc)は、3以下が好ましい。直進走行から旋回走行への移行時には、接地箇所は、センター領域22からショルダー領域24へと移行する。差(Hs−Hc)が3以下なので、センター領域22からショルダー領域24への移行において、タイヤ2の挙動は急激には変化しない。旋回走行から直進走行への移行時には、接地箇所は、ショルダー領域24からセンター領域22へと移行する。差(Hs−Hc)が3以下なので、ショルダー領域24からセンター領域22への移行において、タイヤ2の挙動は急激には変化しない。このタイヤ2は、過渡性能に優れる。外乱吸収性能及び旋回性能の両立の観点から、硬度Hsと硬度Hcとの差(Hs−Hc)は1以上が好ましく、2以上がより好ましい。
耐摩耗性の観点から、硬度Hcは55以上が好ましい。外乱吸収性能の観点から、硬度Hcは65以下が好ましく、63以下がより好ましい。耐摩耗性の観点から、硬度Hsは55以上が好ましい。キャンバースラストの観点から、硬度Hsは60以上がより好ましく、64以上が特に好ましい。グリップ性能の観点から、硬度Hsは70以下が好ましい。
硬度Hc、Hsは、JIS−A硬度である。硬度Hc、Hsは、常温にて、タイプAのデュロメータがタイヤ2に押しつけられることで測定される。
図1において両矢印Wtで示されているのは、トレッド4の半分の幅である。幅Wtは、赤道面CLからトレッド4の端までの距離である。両矢印Wcで示されているのは、センター領域22の半分の幅である。幅Wcは、赤道面CLからセンター領域22の端までの距離である。両矢印Wsで示されているのは、ショルダー領域24の幅である。幅Wsは、ショルダー領域24の一端から他端までの距離である。幅Wt、Wc及びWsは、タイヤ2が切断されて得られるサンプルにおいて測定される。
直進時の外乱吸収性能の観点から、比(Wc/Wt)は0.25以上が好ましく、0.4以上がより好ましい。旋回性能の観点から、比(Wc/Wt)は0.75以下が好ましく、0.6以下がより好ましい。
旋回性能の観点から、比(Ws/Wt)は0.25以上が好ましく、0.4以上がより好ましい。直進時の外乱吸収性能の観点から、比(Ws/Wt)は0.75以下が好ましく、0.6以下がより好ましい。
図2は、図1のタイヤ2の製造工程が説明されるための断面図である。このタイヤ2の製造では、フォーマー(図示されず)にインナーライナー16、第一プライ30及び第二プライ32が順次巻かれる。この第二プライ32の上に、ベルトコード42とトッピングゴム44とからなるリボン46が螺旋状に巻かれ、ジョイントレス構造を有するベルトプライ40が形成される。このリボン46は、実質的に周方向に延在する。このベルトプライ40の上に、未架橋ゴムからなる第一ストリップ48が螺旋状に巻かれる。第一ストリップ48は、実質的に周方向に延在する。第一ストリップ48は、順次積層される。第一ストリップ48が巻き終わると、この第一ストリップ48に連続して、未架橋ゴムからなる第二ストリップ50が巻かれる。第二ストリップ50は、実質的に周方向に延在する。第二ストリップ50は、順次積層される。第二ストリップ50が巻き終わると、さらにこの第二ストリップ50に連続して第一ストリップ48が巻かれる。こうして、グリーンタイヤが得られる。このグリーンタイヤがモールドに投入され、加圧及び加熱される。加熱によりゴムに架橋反応が起こり、タイヤ2が得られる。第一ストリップ48からは、ショルダー領域24が得られる。第二ストリップ50からは、センター領域22が得られる。このタイヤ2では、2種類のストリップ48、50が用いられるので、センター領域22及びショルダー領域24を備えたトレッド4が容易に成形される。このタイヤ2は、低コストで製造されうる。
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
図3は、本発明の一実施形態に係るリアタイヤ52が示された断面図である。この図3において上下方向が半径方向であり、左右方向が軸方向である。このタイヤ52は、一点鎖線CLを中心としたほぼ左右対称の形状を呈する。この一点鎖線は、赤道面を表す。このタイヤ52は、トレッド54、ウイング56、サイドウォール58、ビード60、カーカス62、ベルト64、インナーライナー66及びチェーファー68を備えている。このタイヤ52は、チューブレスタイプの空気入りタイヤである。このタイヤ52は、自動二輪車のリアホイールに装着される。
トレッド54は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド54は、路面と接地するトレッド面70を形成する。トレッド54は、1つのセンター領域72及び一対のショルダー領域74からなる。センター領域72は、赤道面CLを跨いでいる。ショルダー領域74は、軸方向においてセンター領域72の外側に位置している。
カーカス62は、1枚のプライ76からなる。このプライ76は、トレッド54及びサイドウォール58の内面に沿って延在している。プライ76は、コア78の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、プライ76には主部80と折り返し部82とが形成されている。折り返し部82は、主部80の外面に積層されている。
図示されていないが、プライ76はコードとトッピングゴムとからなる。コードが赤道面CLに対してなす角度の絶対値は、85°から90°である。換言すれば、このタイヤ52はラジアル構造を有する。角度の絶対値が85°から90°に設定されることにより、直進時の優れた安定性能が得られる。この観点から、角度の絶対値は88°以上90°以下がより好ましい。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
カーカス62が、他のプライを備えてもよい。但し、軽量の観点及び縦剛性抑制の観点から、カーカス62におけるプライの数は2以下が好ましく、1がより好ましい。
ベルト64は、カーカス62とトレッド54との間に位置している。ベルト64は、ベルトプライ84からなる。図示されていないが、このベルトプライ84は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは実質的に周方向に延びており、螺旋状に巻かれている。このベルト64は、いわゆるジョイントレス構造を有する。このベルト64を備えたタイヤ52は、直進時の安定性能に優れる。ベルトが、2枚のカットプライからなってもよい。
ベルト64のコードの材質は、スチール又は有機繊維である。好ましい有機繊維としては、アラミド繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維及びポリエチレンナフタレート繊維が例示される。拘束力が大きく、従って高い剛性が得られるとの観点から、コードの好ましい材質は、スチール又はアラミド繊維である。
このタイヤ52のサイドウォール58、ビード60及びインナーライナー66の構成は、図1に示されたタイヤ2のそれらと同等である。
センター領域72及びショルダー領域74は、架橋されたゴム組成物からなる。センター領域72のゴム組成物の硬度Hcは大きく、ショルダー領域74のゴム組成物の硬度Hsは小さい。このタイヤ52では、直進時にはセンター領域72が主として接地する。硬度Hcが大きなセンター領域72とジョイントレス構造のベルト64との相乗効果により、このタイヤ52では、直進時に優れた安定性能が発揮される。このタイヤ52では、旋回時にはショルダー領域74が主として接地する。ショルダー領域74の硬度Hsは小さいので、旋回時に優れたグリップ性能が発揮される。このグリップ性能は、旋回性能に寄与する。このタイヤ52では、直進時の安定性能と、旋回性能とが両立される。
硬度Hcと硬度Hsとの差(Hc−Hs)は、3以下が好ましい。直進走行から旋回走行への移行時には、接地箇所は、センター領域72からショルダー領域74へと移行する。差(Hc−Hs)が3以下なので、センター領域72からショルダー領域74への移行において、タイヤ52の挙動は急激には変化しない。旋回走行から直進走行への移行時には、接地箇所は、ショルダー領域74からセンター領域72へと移行する。差(Hc−Hs)が3以下なので、ショルダー領域74からセンター領域72への移行において、タイヤ52の挙動は急激には変化しない。このタイヤ52は、過渡性能に優れる。直進時の安定性能及び旋回時のグリップ性能の両立の観点から、差(Hc−Hs)は1以上が好ましく、2以上がより好ましい。
耐摩耗性の観点から、硬度Hcは55以上が好ましい。安定性能の観点から、硬度Hcは60以上がより好ましく、64以上が特に好ましい。グリップ性能の観点から、硬度Hcは70以下が好ましい。耐摩耗性の観点から、硬度Hsは55以上が好ましい。グリップ性能の観点から、硬度Hsは65以下が好ましく、63以下がより好ましい。
直進時の安定性能の観点から、トレッド54の半分の幅Wtに対するセンター領域72の半分幅Wcの比(Wc/Wt)は0.25以上が好ましく、0.4以上がより好ましい。旋回時のグリップ性能の観点から、比(Wc/Wt)は0.75以下が好ましく、0.6以下がより好ましい。
旋回時のグリップ性能の観点から、幅Wtに対するショルダー領域74の幅Wsの比(Ws/Wt)は0.25以上が好ましく、0.4以上がより好ましい。直進時の安定性能の観点から、比(Ws/Wt)は0.75以下が好ましく、0.6以下がより好ましい。
このトレッド54も、図2に示されたトレッド4と同様、第一ストリップ48と第二ストリップ50とが螺旋状に巻かれることで成形される。このタイヤ52の製造は、容易である。
本発明に係るタイヤ対は、図1に示されたフロントタイヤ2と、図3に示されたリアタイヤ52とからなる。このタイヤ対が装着された自動二輪車では、直進時には、フロントタイヤ2によって外乱吸収性能が発揮され、リアタイヤ52によって安定性能が発揮される。旋回時には、フロントタイヤ2によって大きなキャンバースラストが発生し、リアタイヤ52によって優れたグリップ性能が発揮される。このタイヤ対は、諸性能に優れる。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1に示された構造を備えたフロントタイヤと、図3に示された構造を備えたリアタイヤとからなるタイヤ対を得た。
フロントタイヤのカーカスは、第一プライ及び第二プライからなる。カーカスのコードは、ナイロン繊維からなる。このナイロン繊維の繊度は、2/940dtexである。このコードの赤道面CLに対する角度の絶対値は、72°である。ベルトは、1枚のベルトプライからなる。このベルトプライは、ジョイントレス構造(JLB)を有する。ベルトプライは、スチールからなるコードを含む。このコードの構成は、「3×3/0.19」である。このコードの赤道面CLに対する角度は、実質的にゼロである。トレッドは、センター領域とショルダー領域とからなる。センター領域の硬度Hcは62であり、ショルダー領域の硬度Hsは65である。比(Wc/Wt)は0.50であり、比(Ws/Wt)は0.50である。このフロントタイヤのサイズは、「120/70ZR17」である。
リアタイヤのカーカスは、1枚のプライからなる。カーカスのコードは、ナイロン繊維からなる。このナイロン繊維の繊度は、2/1400dtexである。このコードの赤道面CLに対する角度の絶対値は、90°である。ベルトは、1枚のベルトプライからなる。このベルトプライは、ジョイントレス構造を有する。ベルトプライは、アラミド繊維からなるコードを含む。このコードの繊度は、2/1670dtexである。このコードの赤道面CLに対する角度は、実質的にゼロである。トレッドは、センター領域とショルダー領域とからなる。センター領域の硬度Hcは64であり、ショルダー領域の硬度Hsは61である。比(Wc/Wt)は0.60であり、比(Ws/Wt)は0.40である。このリアタイヤのサイズは、「190/50ZR17」である。
[実施例2及び3]
リアタイヤの比(Wc/Wt)及び比(Ws/Wt)を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2及び3のタイヤ対を得た。
[実施例4及び5]
フロントタイヤの比(Wc/Wt)及び比(Ws/Wt)を下記の表1及び2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例4及び5のタイヤ対を得た。
[実施例6から8]
リアタイヤの硬度Hsを下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例6のタイヤ対を得た。フロントタイヤの硬度Hcを下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例7のタイヤ対を得た。フロントタイヤの硬度Hc及び硬度Hs並びにリアタイヤの硬度Hc及び硬度Hsを下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例8のタイヤ対を得た。
[実施例9から11]
リアタイヤのベルトコードの材質を、構成が「3×3/0.19」であるスチールとした他は実施例1と同様にして、実施例9のタイヤ対を得た。フロントタイヤのベルトコードの材質を、繊度が2/1670dtexであるアラミド繊維とした他は実施例1と同様にして、実施例10のタイヤ対を得た。フロントタイヤのベルトコードの材質を、繊度が2/1670dtexであるアラミド繊維とし、リアタイヤのベルトコードの材質を、構成が「3×3/0.19」であるスチールとした他は実施例1と同様にして、実施例11のタイヤ対を得た。
[実施例12及び13]
リアタイヤのベルトをカットプライから構成した他は実施例1と同様にして、実施例12のタイヤ対を得た。このベルトには、繊度が2/1670dtexであるアラミド繊維からなるコードを用いた。このコードの赤道面CLに対する角度の絶対値は、19°である。フロントタイヤのベルトをカットプライから構成した他は実施例1と同様にして、実施例13のタイヤ対を得た。このベルトには、繊度が2/1670dtexであるアラミド繊維からなるコードを用いた。このコードの赤道面CLに対する角度の絶対値は、19°である。
[実施例14]
フロントタイヤに1枚のプライからなるカーカスを用いた他は実施例1と同様にして、実施例14のタイヤ対を得た。カーカスのコードは、ナイロン繊維からなる。このナイロン繊維の繊度は、2/1400dtexである。このコードの赤道面CLに対する角度の絶対値は、90°である。
[比較例1]
フロントタイヤのトレッドを単一構造とし、リアタイヤのトレッドを単一構造とした他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤ対を得た。
[比較例2]
フロントタイヤのベルトをカットプライから構成した他は比較例1と同様にして、比較例2のタイヤ対を得た。このベルトには、繊度が2/1670dtexであるアラミド繊維からなるコードを用いた。このコードの赤道面CLに対する角度の絶対値は、19°である。
[官能評価]
フロントタイヤを、「MT3.50×17」のリムに組み込み、このフロントタイヤに内圧が250kPaとなるように空気を充填した。リアタイヤを、「MT6.00×17」のリムに組み込み、このリアタイヤに内圧が290kPaとなるように空気を充填した。このタイヤ対を、排気量が1000ccである自動二輪車に装着した。この自動二輪車を、その路面がアスファルトであるレーシングサーキットで走行させた。ライダーに、旋回時のグリップ性能、直進時の安定性能、旋回性能及び過渡性能を評価させた。この結果が、指数として下記の表1から4に示されている。数値が大きいほど、優れている。
Figure 2008143351
Figure 2008143351
Figure 2008143351
Figure 2008143351
表1から4に示されるように、実施例のタイヤ対は諸性能に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
本発明に係るタイヤは、種々の自動二輪車に装着されうる。
図1は、本発明の一実施形態に係るフロントタイヤが示された断面図である。 図2は、図1のタイヤの製造工程が説明されるための断面図である。 図3は、本発明の一実施形態に係るリアタイヤが示された断面図である。
符号の説明
2・・・フロントタイヤ
4、54・・・トレッド
8、58・・・サイドウォール
10、60・・・ビード
12、62・・・カーカス
14、64・・・ベルト
16、66・・・インナーライナー
20、70・・・トレッド面
22、72・・・センター領域
24、74・・・ショルダー領域
46・・・リボン
48・・・第一ストリップ
50・・・第二ストリップ
52・・・リアタイヤ

Claims (6)

  1. (1)トレッドと、有機繊維からなるコードを含むプライを備えかつラジアル構造を有す るカーカスと、トレッドとカーカスとの間に位置するベルトとを備えており、
    このトレッドが、センター領域と、このセンター領域よりも軸方向において外側に位 置する一対のショルダー領域とを含んでおり、
    このセンター領域及びショルダー領域が、架橋されたゴム組成物からなり、
    ショルダー領域の硬度Hsがセンター領域の硬度Hcよりも大きなフロントタイヤ
    並びに
    (2)トレッドと、有機繊維からなるコードを含むプライを備えかつラジアル構造を有す るカーカスと、トレッドとカーカスとの間に位置するベルトとを備えており、
    このトレッドが、センター領域と、このセンター領域よりも軸方向において外側に位 置する一対のショルダー領域とを含んでおり、
    このセンター領域及びショルダー領域が、架橋されたゴム組成物からなり、
    センター領域の硬度Hcがショルダー領域の硬度Hsよりも大きなリアタイヤ
    からなる自動二輪車用タイヤ対。
  2. 上記フロントタイヤにおいて、硬度Hsと硬度Hcとの差(Hs−Hc)が3以下であり、
    上記リアタイヤにおいて、硬度Hcと硬度Hsとの差(Hc−Hs)が3以下である請求項1に記載のタイヤ対。
  3. 上記フロントタイヤのカーカスが、第一プライ及び第二プライからなり、
    この第一プライ及び第二プライのそれぞれにおいて、赤道面に対するコードの角度の絶対値が65°以上80°以下であり、
    この第一プライのコードの赤道面に対する傾きが、第二プライのコードの赤道面に対する傾きと逆であり、
    上記リアタイヤのカーカスが、少なくとも1枚のプライを備えており、
    このプライのコードの、赤道面に対する角度の絶対値が85°以上90°以下である請求項1又は2に記載のタイヤ対。
  4. 上記フロントタイヤのベルトが、螺旋状に巻かれかつ実質的に周方向に延在するコードを含み、このコードの材質がスチールであり、
    上記リアタイヤのベルトが、螺旋状に巻かれかつ実質的に周方向に延在するコードを含み、このコードの材質がアラミド繊維又はスチールである請求項1から3のいずれかに記載のタイヤ対。
  5. 上記フロントタイヤ及びリアタイヤのそれぞれにおいて、トレッドの半分の幅Wtに対するセンター領域の半分の幅Wcの比(Wc/Wt)が0.25以上0.75以下であり、この幅Wtに対するショルダー領域の幅Wsの比(Ws/Wt)が0.25以上0.75以下である請求項1から4のいずれかに記載のタイヤ。
  6. 上記フロントタイヤにおける硬度Hc及び硬度Hs並びにリアタイヤにおける硬度Hc及び硬度Hsが55以上である請求項1から5のいずれかに記載のタイヤ。
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