JP2008136112A - 信号処理装置、信号処理方法、プログラム - Google Patents

信号処理装置、信号処理方法、プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】4つのスピーカから出力される音声の音像の歪みを少なくする。
【解決手段】4つのスピーカから出力される音声の周波数−振幅特性について、補正処理を実行する範囲として低周波数帯域内にch間差重視帯域を設け、1つの補正処理後のチャンネルの周波数−振幅特性に他のチャンネルの周波数−振幅特性を一致させるようにする。そして、補正処理に際しては、重み付けを設定するようにして、ch間差重視帯域内での周波数−振幅特性の差が優先的に小さくなるようにする。
【選択図】図10

Description

本発明は、入力されたオーディオ信号に対して、周波数−振幅特性の補正を行う信号処理装置、及びその方法と、信号処理装置において実行させるプログラムに関する。
近年AV(Audio Visual)アンプなどでは、自動音場補正機能が搭載されているものがある。自動音場補正機能には、再生スピーカとユーザとの位置までの音響的な周波数−振幅特性を自動補正する機能が含まれていることがある。このような補正に際して、通常はイコライザ(EQ)が使用されることがあり、各EQ素子のパラメータを調整して補正が行われる。具体的には、目標とする周波数−振幅特性(以下「目標特性」という)に近似するように、各EQ素子のパラメータを調整することで行われる。
なお、下記特許文献には、音響装置における周波数−振幅特性の補正方法が記載されている。
特開平8−047079号公報
ところで、音声の再生システムには、音源として複数のチャンネルが備えられていることがあり(例:Lch、Rchによるステレオシステムや、5.1chサラウンドシステムなど)、チャンネル毎に周波数−振幅特性を補正することが考えられる。ただし、各チャンネル毎に補正を行った場合、チャンネル間の周波数−振幅特性にばらつきが生じ、各スピーカから同時に発生する音響が揃わないという可能性もある。
例えば、RchとLchの左右2つのスピーカから同時に音声信号が発せられた場合、ユーザに対しては2つのスピーカの中間位置に明確な音像が知覚されるのが理想的な姿である。ところが、左右のスピーカから同時に出力される音声について、その周波数−振幅特性が揃わずにばらつきが発生した場合、両スピーカの中間に位置しているユーザには、知覚される音像がぼやけて大きくなったりするなど、違和感のある音場感として知覚されてしまう。そのため、左右一対のスピーカから同時に出力される音声信号のレベルのばらつきを少なくすることが求められることになる。
そこで、本発明は、上記した課題を考慮して、信号処理装置として次のように構成する。
つまり、それぞれが複数チャンネルのオーディオ信号に対応して設けられ、上記複数チャンネルのオーディオ信号のうち対応するチャンネルのオーディオ信号を入力し、設定されたパラメータに基づき少なくともゲイン調整を行う複数のイコライザと、上記複数チャンネルごとの上記イコライザにより処理されたそれぞれのオーディオ信号を音声出力する複数の出力手段と、上記出力手段から出力されたオーディオ信号の周波数−振幅特性を測定する測定手段と、上記測定手段による測定結果に基づき、各チャンネルのオーディオ信号の周波数−振幅特性を補正するための演算処理を行う演算手段とを備えるようにされ、上記演算手段は、上記複数チャンネルのうち所定の第1のチャンネルについては、上記測定手段により測定された上記第1のチャンネルについての周波数−振幅特性が所定の目標特性と一致するように上記第1のチャンネルの上記イコライザに設定されるべきパラメータを算出し、上記第1のチャンネル以外の他のチャンネルについては、上記算出したパラメータを上記第1のチャンネルのイコライザに設定したときに得られる周波数−振幅特性を目標特性として算出した上で、この算出した目標特性と、上記測定手段により測定された対象とするチャンネルの周波数−振幅特性とが一致するように上記対象とするチャンネルのイコライザに設定されるべきパラメータを算出する。
上記構成によれば、複数のチャンネルの中のある1つのチャンネルを基準として周波数−振幅特性を補正し、その補正後の周波数−振幅特性を目標特性として他のチャンネルの周波数−振幅特性を補正することとしているため、チャンネル間の周波数−振幅特性のばらつきを抑えることが可能となる。
このようにして、本発明によれば、各チャンネルからのスピーカから出力される音声の周波数−振幅特性の差を小さくすることができる。これにより、音像の歪みを抑えることが可能となるため、ユーザに対して快適な音場感を提供することができる。
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
図1は、本発明の実施の形態としての信号処理装置を備えて構成されるAV(Audio Visual)アンプ1の内部構成について示している。
先ず、実施の形態のAVアンプ1は、周波数−振幅特性の補正など、各種音場補正を装置側で自動的に行う自動音場補正機能を有するように構成される。
このような自動音場補正機能を実現するための、AVアンプ1を含むAVシステムの概要を次の図2に示す。この図2では、AVシステムが5.1chサラウンドシステムで構成される場合を例示している。図示するようにAVアンプ1に対しては、前方正面スピーカSP-FC、前方右スピーカSP-FR、前方左スピーカSP-FL、後方右スピーカSP-RR、後方左スピーカSP-RLの5chスピーカと、サブウーファSP-SBの計6つのスピーカが接続される。
また、音響特性の測定のために必要なマイクロフォンMが聴取位置P-lにセッティングされ、これがAVアンプ1と接続されている。
説明を図1に戻す。
図1においては、図2に示した計6つのスピーカSP(SP-FC、SP-FR、SP-FL、SP-RR、SP-RL、SP-SB)を、説明の便宜上1つのスピーカSPとして示している。このスピーカSPは、図示するようにAVアンプ1における音声出力端子Toutに対して接続される。
また、図2に示したマイクロフォンMはマイク入力端子Tmに対し接続される。
また、AVアンプ1には、上記マイク入力端子Tmに加え、図示する音声入力端子Tinが設けられ、外部からの音声信号入力が可能とされる。
スイッチSWは、入力音声の切り替えのために備えられる。このスイッチSWは、図示する端子t3に対して端子t1または端子t2を択一的に選択するように構成されている。端子t1には上記音声入力端子Tinが接続され、端子t2にはマイクアンプ2を介して上述したマイク入力端子Tmが接続されている。また、端子t3にはA/Dコンバータ3が接続されている。
つまり、端子t1が選択されることで音声入力端子Tinを介した外部からの音声入力が可能とされ、また端子t2が選択されることでマイク入力端子Tmを介したマイクロフォンMからの音声入力が可能とされる。
図示は省略しているが、このスイッチSWの切り替え制御は、音響特性の測定(この場合は特に周波数−振幅特性の測定)の際にマイクロフォンMからの音声入力が行われるようにして、後述するCPU9が行うようにされる。
A/Dコンバータ3においてデジタル信号に変換された音声信号は、DSP(Digital Signal Processor)4に入力される。
DSP4は、入力音声信号について各種の音声信号処理を行う。例えば、音声信号処理としては、残響効果など各種音響効果を与えるための処理を行うようにされる。
また、この場合のDSP4では、例えば周波数−振幅特性や各スピーカSP−マイクロフォンM間の遅延時間など、自動音場補正のために必要な各種音響特性についての測定を行うようにされる。このような音響特性についての測定は、スピーカSPから例えばTSP(Time Streched Pulse)信号などのテスト信号を出力し、それに応じマイクロフォンMで得られる検出信号を解析処理した結果に基づき行うようにされる。
なお、マイクロフォンMからの検出信号に基づき上記各種音響特性(特に周波数−振幅特性)を測定するための技術については既に周知であり、従ってここでの詳細な説明は省略する。
さらに、特にこの場合のDSP4は、いわゆるイコライザ機能として、複数の周波数バンドごとに入力信号のゲイン調整を行うことが可能に構成される。
ここで、この場合のDSP4によるイコライザ機能は、MPF(Mid Presence Filter)と呼ばれるデジタルフィルタにより実現される。この場合はDSP4のソフトウエア処理により、各イコライザ素子(以下、EQ素子とも言う)としての機能が実現されるようになっている。
図3は、このようなMPFによるイコライザ素子の構成要素を機能ブロック化して示している。
この図3に示されるように、MPFの構成要素としては遅延素子21、22、29、30、乗算器23、24、25、27、28、加算器26を挙げることができる。
図示するように音声信号は、乗算器23を介して加算器26に入力されると共に、遅延素子21と乗算器24を介しても加算器26に入力される。また遅延素子21を介した音声信号は遅延素子22→乗算器25を介しても加算器26に入力される。
また、加算器26の加算出力は、図示するように外部に出力されると共に、分岐して遅延素子29→乗算器27を介して加算器26に入力される。
なお、確認のために述べておくと、この図3に示すMPFは1つのイコライザ素子を担うもので、例えば6バンドイコライザの場合、このようなMPFが6段分縦列接続されて構成されることになる。その場合、遅延素子29、遅延素子30が、次のMPFにおける遅延素子21、遅延素子22と共用される。すなわち、これら遅延素子29、遅延素子30の出力が上記次のMPFにおける乗算器24、乗算器25を介して上記次のMPFの加算器26に入力される。また、この次のMPFの加算器26には、加算器26の出力も入力されることになる。
このようなMPFにおいて、乗算器23、24、25、27、28に対しては、それぞれ乗算係数を可変設定できるようにされるが、このように各乗算器に与える係数の値によって、中心周波数とそこに設定されるべきゲイン値と、さらにQ値についての設定を行うことができる。すなわち、これによって中心周波数、ゲイン値、Q値の可変設定が可能な、いわゆるPEQ(Parametric Equalizer:パラメトリックイコライザ)としての機能が実現される。
DSP4では、このようなMPFとしてのデジタルフィルタ処理をプログラムに基づく数値計算を行って実現するようにされる。
なお、このようなMPFとしてのフィルタ構成は、いわゆる双2次フィルタ(Biquad filter)としても知られている。
ここで本実施の形態においては、先に説明した6つのスピーカSP(SP-FC、SP-FR、SP-FL、SP-RR、SP-RL、SP-SB)のうち、4つのスピーカSP(SP-FR、SP-FL、SP-RR、SP-RL)から出力される音声の周波数−振幅特性の補正を実行する。そこで、上記説明した6つのイコライザを、4つのスピーカSPに対応した各チャンネル毎に備えることとしている。
図1において、DSP4により音声信号処理の施された音声信号は、D/Aコンバータ5においてアナログ信号に変換された後、アンプ6にて増幅され音声出力端Toutに供給されるようになっている。
また、図1において、CPU(Central Processing Unit)9は、ROM(Read Only Memory)10、RAM(Random Access Memory)11を備え、当該AVアンプ1の全体制御を行う。
CPU9は、図示するバス7を介した通信を行って各部の制御を行うようにされる。図示するようにしてバス7を介しては、上記ROM10、RAM11、及び表示制御部12、DSP4が接続される。
CPU9が備える上記ROM10には、CPU9の動作プログラムや各種の係数などが格納されている。特に本実施の形態の場合、ROM10にはCPU9が後述する実施の形態としての処理動作を実行するためのプログラム(図示せず)も格納される。
また、上記RAM11はCPU9のワーク領域として利用される。
また、CPU9に対しては操作部8が接続される。
この操作部8には、当該AVアンプ1の筐体外部に表出するようにして設けられた各種の操作子が備えられ、それらの操作に応じたコマンド信号をCPU9に供給する。CPU9は操作部8からのコマンド信号に応じた各種の制御動作を実行するようにされる。これによってAVアンプ1ではユーザの操作入力に応じた動作が実行されるようになっている。
また、操作部8としては、リモートコマンダから発せられた例えば赤外線信号等に依るコマンド信号を受信するコマンド受信部を備えるようにすることもできる。すなわち、このコマンド受信部として、上記リモートコマンダから操作に応じて発信されるコマンド信号を受信してこれをCPU9に供給するように構成するものである。
この場合、上記操作部8に設けられる操作子としては、上述したDSP4による各イコライザ素子ごとにパラメータ調整を行うための操作子を挙げることができる。
ユーザはこの操作子により各EQ素子ごとに設定されるべきパラメータ(中心周波数、ゲイン値、Q値)を指示入力することができる。CPU9は入力された値に応じた係数をDSP4に与えることで、それら指示入力値に応じたゲイン(ゲイン窓形状)がそれぞれ対応するイコライザ素子に設定されるようになっている。
また、CPU9は、表示制御部12に対する指示を行って、表示部13の表示内容についての制御も行うようにされる。表示部13は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスとされ、表示制御部12はCPU9からの指示内容に基づきこの表示部13を駆動制御する。これによって表示部13上ではCPU9からの指示に応じた画面表示が行われる。
ここで、上記図1に示した実施の形態のAVアンプ1としても、周波数−振幅特性についての自動補正機能が与えられている。
先ず前提として、このように周波数−振幅特性について補正を行うにあたっては、4つのスピーカSP(SP-FR、SP-FL、SP-RR、SP-RL)に対応した4つのチャンネルのうちのある1つのチャンネルについての周波数−振幅特性について補正処理を行う。そして残りの他のチャンネルについては、補正処理を行ったチャンネルの周波数−振幅特性を目標特性として設定し、補正処理を実行するようにされる。
まず、最初のチャンネルの目標特性としては全周波数バンドにわたってフラットとなる特性が設定されているものとする。例えば、次の図4(a)に示されるような周波数−振幅特性が得られた場合には、最初の補正処理としては、理想的にはこれをフラットな特性とすべく、図4(b)に示されるようにして図4(a)の各バンドの振幅値を相殺するようなゲイン特性を設定するものである。
そして、残りの他のチャンネルの周波数−振幅特性については、最初の補正処理の結果得られた新たな周波数−振幅特性を目標特性として、チャンネル間の周波数−振幅特性の振幅値を相殺するようなゲイン特性を設定する。
ところで、このような周波数−振幅特性の補正を行う場合において、AVアンプ1としては、例えばコスト削減などの理由から十分な数のイコライザ素子が設けられない場合がある。そして、例えばこのようにしてイコライザ素子の数が比較的少なくされる場合などには、各イコライザ素子として、本例のようにしてPEQを用いるようにされることがある。つまり、このように用いられる素子数が少なく、1素子が担当する範囲が広範となる場合であっても、PEQによれば中心周波数、Q(先鋭度)を変更可能であるので、よりフレキシブルに特性の補正を行うことができるからである。
但し、このようなPEQについては、目標特性を得るにあって考慮すべきパラメータがGEQ(Graphic Equalizer:グラフィックイコライザ)の場合よりも多いため、思うような特性を得ることは比較的困難となる。特に、PEQではQ値についての設定が可能であるため、各素子のゲイン窓形状が中心周波数の周囲に大きく広がりを持つことがあるが、これによっては素子間で設定されたゲインの影響が相互に及ぶこともあり、それを考慮したパラメータ設定を行うことはその分困難となる。
ここで、上述もしたように、周波数−振幅特性についての自動音場補正処理としては、テスト信号出力を行った結果に基づき行うという性質上、例えば通常の音声再生動作に先立って行われることになる。従って、自動音場補正処理に要する時間が長引けばその分ユーザを待たせる時間も長くなり、使用性の劣るシステムとなってしまう。
このようなことを踏まえると、本例のようにPEQを用いて音場補正処理を行う場合であっても、その処理時間としてはできる限り短縮化され、これによりユーザの待ち時間が長引くようなことがない有用なシステムを実現することが肝要となる。
このためにも、PEQを用いた音場補正処理としては、できる限り簡易なものとされて、処理時間の短縮化が図られることが要請される。
以下で説明する実施の形態としての補正動作は、このような点をふまえた動作となっている。
図5、図6は、本実施の形態としての最初の1つ目のチャンネルについての音場補正処理の手法について説明するための図である。なお、本実施の形態では、このような1つ目のチャンネルとしてはスピーカSP-FLのチャンネルを設定し、以降の説明ではこれをAchと呼ぶ。また、これらの図においては、縦軸をゲイン(dB)、横軸を周波数(Hz)とした場合の周波数−振幅特性Tksについて示している。
ここで、先ずは本例の補正処理を行うにあたっての前提条件について説明しておく。
先ず、本例の場合、各チャンネルごとに備えられるPEQの素子数としては6つであるものとする。この場合、これら6つのイコライザ素子(EQ素子)については、EQ素子−A、EQ素子−B、EQ素子−C、EQ素子−D、EQ素子−E、EQ素子−Fと呼ぶ。
また、この場合、ゲインを調整可能な範囲は、10オクターブの範囲とされる。そして、この10オクターブの範囲内においては、所定の周波数ポイントを設定している(図中の各○印)。これら各周波数ポイントの間隔は、それぞれ1/3オクターブ幅で均等に区切られている。すなわちこの場合、EQ素子によりゲイン調整可能な範囲中には、周波数ポイントが合計31個設けられていることになる。ただし、図示の都合上図中の低周波数側での周波数解像度を低くしていることから、周波数ポイントは30個しか描かれていない。
そしてこの場合、各周波数ポイントは、各EQ素子が中心周波数を設定可能なポイントともされる。すなわち、各EQ素子においては、これら1/3オクターブ区切りの周波数ポイントのうち何れかの周波数ポイントの周波数を、中心周波数として択一的に選択設定することができるようにされている。
なお、説明の便宜上、この場合において設定される周波数ポイントは、DSP4における周波数−振幅特性についてのサンプリングポイントとも一致するように設定されているとする。すなわち、この場合のDSP4においては、周波数−振幅特性Tskのデータとして、図中の各周波数ポイントごとのゲイン値(振幅値)を保持しているものとする。
なお、図5、図6においては、各特性Tskをアナログ波形により示しており、DSP4において実際に保持されるデータそのものを示したものではない。
また、この場合、各EQ素子では、設定可能なゲイン値の上限が±9dBとされているとする。
以上の前提を踏まえた上で、本実施の形態としての補正処理について説明する。
先ず、周波数−振幅特性の補正処理を行うにあたっては、先の図1において説明したように、DSP4による周波数−振幅特性の測定動作が行われる。本実施の形態では、4つのスピーカSP(SP-FR、SP-FL、SP-RR、SP-RL)から出力される音声の周波数−振幅特性を補正対象としているため、これらのスピーカSPのチャンネル全てについての周波数−振幅特性の測定動作を行う。
また、概念的には、このように測定された特性と目標特性とを比較した結果に基づき補正処理を行うとして理解すればよいが、実際においては、測定データそのものは、測定環境により細かな凸凹が出てしまう場合があり、そのままではデータとして扱いづらい場合がある。そこで、周波数−振幅特性の補正にあたっては、測定データに平滑化処理をかけたものを補正対象とするということが行われる。
実施の形態においても、補正を行うにあたって対象とする特性(以下、単に対象特性とも言う)としては、測定データについて平滑処理を施したものとしている。
図5に示す周波数−振幅特性Tks-1は、このように測定特性に対し平滑処理が施された特性を示してる。
なお、上記説明は、実施の形態としての補正処理が、対象特性として平滑処理後の特性を用いなければならないということを述べたものではなく、場合によっては対象特性として測定データそのものを用いることもできる。すなわち、対象特性としては、周波数−振幅特性の測定結果に基づくものとされていればよいものである。
このように周波数−振幅特性の対象特性を得た上で、この場合の補正処理では、先ずは図5(a)に示される調整対象周波数範囲Xの設定として、補正のためのゲイン調整を行う周波数範囲を絞り込むようにされる。
ここで、一般的なスピーカの特性として、極端に低域や高域の周波数帯域の音を出力できないといったことが知られている。そのような場合において、それらの周波数帯域についてゲイン調整を行ったとしても、最終的にスピーカSPでその音を出力することができない以上、補正処理を行う意味はない。また、上述もしたように音場補正処理としてはできる限り短時間で処理を終了することが要請されることを考慮すれば、それらの周波数帯域について無駄な補正処理を行って処理完了までの所要時間が延びてしまうことは好ましくない。
このようなことを考慮し、本実施の形態ではゲイン調整を行う対象周波数範囲を、上記調整対象周波数範囲Xに絞った上で補正処理を行うようにしている。
例えば本実施の形態では、上記のようなスピーカ特性との関係から、予め調整を行うべき範囲を設定しておくようにされているものとする。例えば図示するように、この場合は最も低域側の5つ分の周波数ポイントの範囲と、最も高域側の5つ分の周波数ポイントの範囲とを除く周波数範囲が、調整対象周波数範囲Xとして予め設定されているものとする。
なお、調整対象周波数範囲Xとしては、このように予め設定された範囲とする以外にも、例えば実際に測定された周波数−振幅特性に基づき設定することもできる。
そして、このように調整対象周波数範囲Xを絞り込むと、先ずは図5(a)中のエリア1〜エリア6と示されるように、この場合は0dBのラインとされる目標特性に対し、対象特性Tks-1のゲイン(振幅)が不足する部分と超過する部分とで分けたエリアごとに、目標特性とのゲイン差分量を算出するようにされる。
なお、以下では、目標特性からゲインが不足する部分については凹部、超過する部分については凸部とも呼ぶ。
この場合、これら凹部と凸部とで分けたエリアごとのゲイン差分量としては、図示するようにして対象特性Tks-1と目標特性との差部分の面積により求めるものとしている。具体的には、各エリア(1〜6)内において、そこに含まれるそれぞれの周波数ポイントにおける目標特性と対象特性Tks-1とのゲイン差(振幅差)を求める。
この場合、各周波数ポイント間の間隔は一定幅とされているので、それら周波数ポイントごとに求めたゲイン差の値に対し、各周波数ポイント間の幅の値としての固定値をそれぞれ乗算し、それらを足し合わせたものを図中色つき部分で示した各エリアごとの面積として算出するようにされる。
なお、ここでは単に各周波数ポイントにおける対象特性Tks-1と目標特性とのゲイン差に対して固定値による周波数幅の値を乗算してバーグラフ状の面積部を求め、それらを足し合わせることで各エリアの面積を求めるものとしたが、例えばより精度良く各エリアの面積を求めるとする場合には、隣接する周波数ポイントでのゲイン差の値を考慮した補間処理を行って、実際の目標特性と対象特性との差部分の形状とより近い形状により面積を求めることもできる。
或いは、特に本例のように各周波数ポイントの間隔が一定とされる場合には、各エリアのゲイン差分量としては、敢えて面積を求めずとも、単にエリアごとに各周波数ポイントでのゲイン差を足し合わせて求めるようにすることもできる。
このようにして凹部/凸部で分けたエリアごとに、目標特性との差分の面積を算出すると、その内で面積が最大となるエリアを特定する。図5(a)の例では、エリア1が面積が最大となるエリアとされる場合を例示している。
確認のために述べておくと、このようにして目標特性からの差分面積(ゲイン差分量)が最も大きいエリアは、最も補正が必要なエリアであることになる。
そして、差分面積が最大となるエリアを特定すると、そのエリアにおいて目標特性からのゲイン差が最大となる周波数ポイントを選択するようにされる。
すなわちこの場合、面積最大となるエリア1において、目標特性からのゲイン差が最大となる周波数ポイントとしては、図中「差分値最大」と示したゲイン差を有する周波数ポイントが選択される。
このようにして差分面積が最大となるエリアにおいて目標特性からのゲイン差が最大となる周波数ポイントを選択すると、この場合は6つ設けられるEQ素子(EQ素子A〜EQ素子F)のうちから選択した1つのEQ素子について、その中心周波数の値を、この選択したゲイン差最大の周波数ポイントの周波数に基づき決定する。
この場合、先に述べたようにして各EQ素子では、予め設定された各周波数ポイントのうちから中心周波数を選択設定するようにされている。つまりは、この場合、ゲイン差最大となる周波数ポイントと各EQ素子が中心周波数を設定可能な周波数ポイントとが必ず一致するようにされているので、特定されたゲイン差最大の周波数ポイントの周波数を、そのまま選択したEQ素子の中心周波数として決定するようにされる。
ここでは、先ずはEQ素子Aの中心周波数が、上記選択されたゲイン差最大の周波数ポイントの周波数に決定されたものとする。
さらに、選択したEQ素子の中心周波数のゲイン値については、選択した周波数ポイントにおける対象特性Tks-1と目標特性とのゲイン差に基づく値に決定するようにされる。
具体的には、目標特性からのゲイン差を打ち消すべく、原則的には、選択したゲイン差最大の周波数ポイントにおけるゲイン差の値の反転値を、選択したEQ素子の中心周波数のゲイン値として決定するようにされる。
例えばこの場合において、上記した「差分値最大」と示した対象特性Tks-1のゲイン値が−15dBであったとし、目標特性とのゲイン差が−15dB−0dB=−15であったとすると、原則的には、選択したEQ素子−Aのゲイン値として、そのゲイン差の値「−15」の反転値である「+15」を決定するようにされるものである。
但し、この場合のゲイン値の設定可能範囲は、先にも述べたように±9dBである。このように決定すべきゲイン値が実際にEQ素子に設定可能なゲイン値の範囲を超えた場合は、設定可能な範囲内で最大のゲイン値を決定する。つまり具体的に、次の図5(b)においてゲインG-disと示すように、この場合の最大差分値に基づくゲイン値としては、例えば+9dBを決定するようにされる。
なお確認のために述べておくと、このようにして設定可能な範囲内で最大のゲイン値を決定する場合としても、対象特性Tks-1と目標特性とのゲイン差に基づく値に決定していることには変わりはない。このように選択したEQ素子のゲイン値を目標特性とのゲイン差に基づく値に決定すれば、目標特性とのゲイン差を打ち消すようにしてゲイン値を決定することができる。
このようにして、先ずは複数のEQ素子のうちから選択した1つ目のEQ素子について、その中心周波数とゲイン値とが決定される。
その上で、この場合はPEQとしてのEQ素子について、さらにQ値を決定するようにされる。
そのために、先ずは図5(b)に示されるようにして、Q値の各候補値を試すようにされる。つまり、決定された中心周波数とゲイン値とを設定し、さらに予め定められたQの各候補値をそれぞれ設定したときに得られる周波数−振幅特性を算出し、その結果目標特性と最も近づく特性が得られるQ値を決定しようとするものである。
具体的に、目標特性と最も近づく特性が得られるQ値としては、次の図6(a)に示されるように、算出特性と目標特性との差分の総面積が最小となるQ値を割り出すようにされる。
すなわち、この場合においては、選択したEQ素子−Aについて、中心周波数を上述の選択した周波数ポイントの周波数とし、ゲイン値を+9dBとした上で、予め定められたQ値についての各候補値を設定したときの周波数−振幅特性をそれぞれ算出する。なおこのとき、選択したEQ素子以外の他のEQ素子については、ゲイン値は0dBに設定したもとして特性算出を行う。
そして、これら算出された算出特性について、それぞれ目標特性との差分の総面積を算出し、算出した総面積値が最小となったQの候補値を割り出すようにされる。
確認のために述べておくと、この場合も目標特性との差分の面積は、各周波数ポイントにおいて、算出特性と目標特性とのゲイン差を求めた結果に基づき算出するものとすればよい。なお、この場合も面積とはせず、単に各周波数ポイントでのゲイン差の和を総面積の値として扱うこともできる。
このようにして目標特性との差分の総面積を最小とし、目標特性と最も近いとされる特性を得ることのできるQの候補値を割り出すと、その候補値を選択したEQ素子のQの値として決定する。
図6(a)では、このようにして差分総面積を最小とするQ値が設定された場合での、選択したEQ素子(EQ素子−A)により得られるゲイン窓形状と、このQ値を設定したときの周波数−振幅特性Tks-2(図中破線による特性:算出特性とも呼ぶ)とを示している。また、図6(a)ではこの算出特性Tks-2との比較として、対象特性Tks-1を実線により示している。
これまでの動作により、対象特性Tks-1と目標特性との差分の面積(ゲイン差分量)が最も大きかったエリアに応じて、補正のために1つ目のEQ素子に対して設定されるべきパラメータ(中心周波数、ゲイン値、Q値の各値)の決定が行われたことになる。
続いて、このようにして1つ目のEQ素子についての補正のための各値が決定されると、そのEQ素子に対し決定された各値を設定したときに得られる周波数−振幅特性(つまりこの場合は上述の算出特性Tks-2)について、同様に目標特性とのゲイン差分量が最大となるエリアの特定、さらにそのエリア内でゲイン差最大となる周波数ポイントに基づき、次のEQ素子に設定されるべき中心周波数を決定する処理を行うようにされる。
このとき、本例では、既に各値を決定済みのEQ素子(この時点ではEQ素子−A)については、それ以上の値の変更は行わないことを前提としている。つまり、既に各値を決定したEQ素子については、それら決定済みの各値を設定したものとして、新たな特性の算出を行うようにされる。
なお、この場合もゲイン差分量の算出は、設定された調整対象周波数範囲X内を対象としてのみ行う。
この場合、図6(b)では、目標特性と算出特性Tks-2(図中実線で示す)との差分面積最大エリアがエリア6である場合を例示しており、これに応じ次に選択されたEQ素子(EQ素子B)に設定されるべき中心周波数としては、このエリア6内で目標特性とのゲイン差が最大となる周波数ポイントの周波数に決定されることになる。
そして、このように次のEQ素子についての中心周波数を決定すると、ゲイン値、Q値の各値についても、先の場合と同様の手順により決定するようにされる。
すなわち、ゲイン値については、上記選択したゲイン差最大となる周波数ポイントでの算出特性と目標特性とのゲイン差に基づく値に決定する。具体的には、目標特性とのゲイン差(算出特性のゲイン値−目標特性のゲイン値)の反転値に決定する。
そして、Q値については、決定した中心周波数とそのゲイン値を設定し、各Q候補値をそれぞれ設定したときに得られる周波数−振幅特性をそれぞれ算出した結果に基づき、目標特性と最も近づく特性が得られたときの候補値に決定する。
確認のために述べておくと、この場合のQ値決定のための周波数−振幅特性の算出時には、既に各値を決定済みのEQ素子(この場合はEQ素子−A)については、決定済みの各値を設定したものとして全体の特性を算出するようにされる。
そして以降も、残りのEQ素子について、同様に最大エリアの特定、最大エリア内でのゲイン差最大となる周波数ポイント及びそのゲイン差に基づき、選択したEQ素子についての各値の決定処理を順次行っていく。
つまり、1つ目のEQ素子(この場合はEQ素子−A)について素子選択及び各値の決定を行った以降、2つ目以降のEQ素子については、
・既に各値を決定済みのEQ素子に対し、決定された中心周波数、ゲイン値、Q値をそれぞれ設定したときに得られる周波数−振幅特性(算出特性)について、目標特性との差分面積を算出して差分面積が最大となるエリアを特定した上で、そのエリアで目標特性からのゲイン差が最大となる周波数ポイントを選択し、
・このように選択したゲイン差最大の周波数ポイントの周波数に基づき、選択したEQ素子の中心周波数を決定し、
・また決定した中心周波数に設定されるべきゲイン値については、上記選択した周波数ポイントでの算出特性と目標特性とのゲイン差に基づく値に決定し、
・さらに、選択したEQ素子のQ値については、そのEQ素子に上記のようにして決定された中心周波数及びゲイン値を設定し、さらに予め定められた各候補値をそれぞれ設定したときに得られる周波数−振幅特性をそれぞれ算出した結果(この場合も既に各値を決定済みのEQ素子についてはその決定済みの各値をそれぞれ設定したものとして全体の特性を算出する)に基づき、目標特性と最も近づく特性が得られたときの候補値に決定する、
という処理を、繰り返し行うようにされる。
そして、このような繰り返しの処理により、全てのEQ素子について各値を決定すると、それら決定値をそれぞれ対応するEQ素子のパラメータとして設定するようにされる。つまり、DSP4に決定したEQ素子ごとの各値を指示するための係数を与え、これに応じDSP4は、与えられた各係数を、それぞれのEQ素子の乗算器(図3参照)の係数として設定するようにされる。
上記のようにして本実施の形態で採用する補正処理の手法では、目標特性との差分の大きな部分から順に、1EQ素子ずつ、順次Qの各候補値を試しながら目標特性に近づくようにゲインを調整していくようにされている。これによれば、Qの設定値により素子間で互いにゲインの影響が及ぶ場合にも、適正に目標特性に近づくように補正を行うことができる。
つまり、これによって周波数−振幅特性の補正のためのエフェクタとしてPEQが用いられる場合にも、適正に目標特性と一致するように各素子のパラメータを調整することができる。
また、上記のように目標特性との差分の大きな部分から順に補正を行っていくことで、この場合の補正は、次第にマクロな部分からミクロな部分を対象として行われていくことになる。具体的には、先ずは1つ目のEQ素子により優先的にQ値の決定(設定)を行って、最も補正の必要な部分について優先的に調整を行った後に、次に補正が必要とされる部分について順次、同様に優先的にQ値の決定を行って補正を行うようにされるものとなる。
このような手法が採られることで、用いられるEQ素子数が少ない場合にも、各素子による補正効率を重視して効率的に目標特性と一致するように補正を行うことができる。
また、上記本実施の形態で採用する補正処理の手法は、少なくともゲイン差分量が最大となるエリアの特定のための差分面積の算出、選択したEQ素子に設定されるべきゲイン値の算出、各Q候補値を設定した場合でのそれぞれの周波数−振幅特性の算出、算出された各周波数−振幅特性と目標特性との差分総面積の算出、といった比較的簡易な演算の繰り返しにより実現することができ、従って処理時間としては比較的短時間で済むものとできる。つまり、これによれば、周波数−振幅特性の補正を行うためのエフェクタとしてPEQを用いる場合にも、目標特性を得るための補正処理の時間は比較的短いものとでき、ユーザを待たせる時間としても短くすることができて、より有用なシステムを実現できる。
ここまでの説明で、ある1つのチャンネル(Ach:この場合はスピーカSP-FLのチャンネル)について、対象特性Tks-1を所定の目標特性(例えばフラットな特性)に一致させるための処理を説明した。そこで次に、このAchの補正処理により算出した補正後特性を目標特性として、残りの3つのチャンネルの補正処理を実行する。以下図7から図8を参照して、このような残りのチャンネルについての補正処理動作を説明する。
図7では、上記スピーカSP-FLから出力される音声の周波数−振幅特性(Achの周波数−振幅特性)の補正後の特性と、上記残りの3つのチャンネルのうちの1つのチャンネルの周波数−振幅特性を示す。
先ず、先にも述べたように、左右のスピーカSPから出力される音声の周波数−振幅特性の差が大きい場合には、音像の歪みが発生する。
またここまででは、左右の特性の差に起因する音像の歪みのみを問題としてきが、本実施の形態のように5.1chの場合、前後一対のスピーカSPから出力される音声の周波数−振幅特性の差が大きくなることによっては、ユーザに与えられるべき臨場感が損なわれてしまうことになる。
そこで、これらの問題点を解消するために、Achの補正後特性を目標特性として、残りの3つのチャンネルの周波数−振幅特性を近づけるような補正処理を行う。
以下では、Ach以外のチャンネル(総称してBchと呼ぶ)のうち、ある1つのチャンネルについての補正処理について例示するが、残りのチャンネルについても同様の処理を行えばよい。
先ず、上記のようにしてAchの補正後特性を目標特性としてBchの周波数−振幅特性の補正を行うにあたっては、Bchのうちのある1つの対象とするチャンネルについて測定された周波数−振幅特性について、先に説明した調整対象周波数範囲Xに加え、さらに調整対象周波数範囲Xのうちの低周波数帯域を「ch間差重視帯域」として設定する。これまでも述べてきたように、左右のスピーカSPから出力される音声の周波数−振幅特性の差が大きな場合には、音像の歪みが発生してしまう。とりわけ、低周波数帯域での周波数−振幅特性の差が大きな場合に、音像の歪みが著しい。そこで、AchとBchの両スピーカSPから出力される音声の周波数−振幅特性の差を重点的に評価するためのch間差重視帯域を低周波数側に設定する。
上記の内容をふまえ、図7(a)でAch及びBchの差分面積を小さくするための処理について説明する。
まず、この場合の調整では、AchとBchの両周波数−振幅特性の差を小さくすることを目標とする。そのために、最初の手順として、エリア1〜エリア4と示されるように、目標特性であるAchに対して対象特性であるBchのゲイン(振幅)が不足する部分と、超過する部分とで分けたエリアごとに、目標特性とのゲイン差分量を算出する。
すなわち、先の対象特性Tks-1の補正処理においては、目標特性がゲイン0のフラットな特性であったため、ゲイン0の直線に対してゲインが超過する部分を凸部、ゲインが不足する部分を凹部としていたが、今回の補正演算処理においては、目標特性がAchの特性であり直線とはなっていない。そこで、AchとBchの両周波数−振幅特性の交点ごとにそれぞれ領域を分割する。
AchとBchの両特性で囲まれた面積の算出方法は、先の図5と同様である。すなわち、例えば一定間隔ごとに設定されている周波数ポイントにおける対象特性(Bchの特性)と目標特性(Achの特性)とのゲイン差に対して固定値による周波数幅の値を乗算してバーグラフ状の面積部求め、それらを足し合わせることで各エリアの面積を求めることとする。
そして、各エリアごとの面積を算出し、各エリアの面積を小さくする、すなわちAchとBchの周波数−振幅特性の差を小さくすることを目標とする。なお、図7(a)では、エリア4が最大面積であることを示している。
ここで、先に説明したAchの補正処理については、周波数−振幅特性の補正を行う場合に十分な素子数を割り当てることが難しいこともあるため、単に差分面積が最大であるエリアから順番に補正演算処理を実行していくというのが順当なやり方であった。すなわち、周波数−振幅特性の差を小さくして両者を一致させるためには、面積が最大のエリアを「最も補正が必要なエリア」であるとして、面積の大きい順番に補正を実行することとしていた。ところが、先にも述べたように、音像の歪みに大きく影響しているのは、低周波数帯域での周波数−振幅特性の差であるということが判明している。このような低周波数帯域での周波数−振幅特性の差を補正するためには、たとえch間差重視帯域にあるエリアの面積がch間差重視帯域以外のエリアの面積よりも小さかったとしても、ch間差重視帯域の方から優先して補正演算処理が実行される必要性があると考えることができる。従って、Bchの周波数−振幅特性の補正を行う場合、ch間差重視帯域内のエリアに関しては、算出面積を増加させるための「重み付けを設定する」という処理を実行する。そこで、次に重み付けについての説明を行う。
図7(b)において、重み付けの具体的な適用について説明する。
この場合の例では、エリア1とエリア2がch間差重視帯域内に位置していることがわかる。図からもわかる通り、調整対象周波数範囲X内で一番エリア面積が大きいのは、エリア4である。従って、図7(a)で説明したように、最初に補正演算処理を実行する領域はエリア4であることになる。一方、図7(b)に示す処理において重み付けを設定した場合には、エリア4以外のch間差重視帯域内にあるエリアから優先的に補正することもできる。
図において、ch間差重視帯域内に位置しているエリア1の面積と、ch間差重視帯域以外のエリア4との面積を比較した場合、重み付けを設定していない場合には、エリア4の方が面積は大きくなっている。例えば、エリア4の面積が10、重み付けを設定する前のエリア1の面積が8であったとする。
ここで、エリア1に重み付けを設定した結果、エリア1の面積の方がエリア4よりも大きくなれば、エリア1の方が優先的に補正されることになる。例えば、重み付けを設定する際の係数が、一例として図に示しているように1.5であった場合、エリア1に重み付けを設定した結果のエリア面積(以下「評価面積」という)は12となる。そのため、エリア1(評価面積=12)の方がエリア4(面積=10)よりも大きくなり、その結果エリア1から優先的に補正されることとなる。従って、このようにch間差重視帯域に位置するエリアから優先的に補正演算処理が実行され、そのエリアでの両チャンネルの周波数−振幅特性の差を小さくすることが可能となる。
なおここでは、4つのチャンネルのうちのAchとBchの周波数−振幅特性の補正処理についてのみ説明しているが、Bchとして残りの2つのチャンネルの周波数−振幅特性の補正処理についても、同様の処理が実行されることになる。
次の図8(a)では、調整対象周波数範囲X内、特にch間差重視帯域における重み付けの評価方法について説明する。
本実施の形態において、先ず注意すべき点は、1回目の補正演算処理では先に説明したような重み付けを設定することなしに補正を実行するという点である。すなわち、Achの補正後特性を目標特性として対象特性であるBchの補正演算処理を実行する場合、最初はch間差重視帯域を優先することなしに、調整対象周波数範囲X全域で一番大きなエリア面積から補正を実行する。そして、重み付け無しの補正演算処理を実行した結果、音像の歪みが改善されたかどうかを判断し、音像の歪みが改善されていれば、重み付けを設定することなしに、1回の補正演算処理で終了する。このようにして重み付けなしで補正することができれば、他の周波数帯域を犠牲にすることなく、補正することが可能となる。
次に、1回目の補正演算処理により音像の歪みが改善されなかった場合には、2回目の補正演算処理から重み付けを設定することとしている。また、重み付けを設定したことに伴い、評価面積も増加することになる。
そして、2回目の補正演算処理によっても音像の歪みが改善されなかった場合には、さらに3回目の補正演算処理でより大きな係数の重み付けを設定することとしている。これに伴い、評価面積も2回目よりさらに増加することになる。すなわち、1回目、2回目の補正演算処理でも音像の歪みが改善されなかったのであるから、3回目ではさらに係数を大きくして、評価面積を増加させ、ch間差重視帯域にあるエリアが他の周波数帯域にあるエリアよりも優先的に補正されやすくする。
図8(b)では、重み付けの係数について説明する。
図では、ch間差重視帯域について、周波数の低い側を補正優先度高領域、周波数の高い側を補正優先度低領域の2つの領域に分割している。
本実施の形態では、このような帯域分けを行った上で、ch間差重視帯域内でも重み付けの係数を変化させることとする。すなわち、ch間差重視帯域の中でより低周波側である方が音像の歪みに影響があるため、低周波数帯域である補正優先度高領域ほど重み付けの係数を大きくする。また、ch間差重視帯域内の補正優先度低領域についても、補正優先度高領域ほどではないものの、重み付けを設定することとする。すなわち、補正優先度低領域内に位置しているエリアについては、補正優先度高領域よりも小さい重み付けの係数を設定する。
補正優先度高領域では、1回目の補正演算処理にあたっては重み付けを設定しないため、重み付けの係数は「1.0」である。そして、補正演算処理回数の増加とともに、重み付けの係数についても、所定レベルずつ増加させることとする。
補正優先度低領域でも、1回目の補正演算処理にあたっては重み付けを設定しないため、重み付けの係数は「1.0」である。そして、補正演算処理回数の増加とともに、重み付けの係数が大きくなることは補正優先度高領域と同様であるが、補正優先度低領域ではさらに、優先度が下がるにつれて、すなわち周波数が高くなるにつれて重み付けの係数も小さくなるように、重み付けを表す直線が傾くようにしている。
上記以外の領域では、重み付けを設定しない。そのため、補正優先度高、低領域以外、すなわちch間差重視帯域以外では、重み付けの係数は常に「1.0」のままである。
以上により、本実施の形態では、補正優先度高領域→補正優先度低領域の順に、周波数が高くなるにつれて、重み付けの数値が小さくなるようにしている。
このように、本実施の形態としての補正演算処理は、複数あるうちのある1つのチャンネルについて、フラットな特性を目標特性として補正処理を行い、その他残りのチャンネルについては、最初に補正処理を行って得られた補正後の特性を目標特性として補正処理を行う。このような動作によれば、ある1つのチャンネルの周波数−振幅特性に他のチャンネルの周波数−振幅特性を近づけることとなるため、チャンネル毎の周波数−振幅特性の差を小さくすることができる。すなわち、左右一対のスピーカSPからそれぞれ出力される音声の周波数−振幅特性の差が小さくなることから、出力される音像の歪みも小さくすることができる。さらに、前後一対のスピーカSPからそれぞれ出力される音声の周波数−振幅特性の差も小さくなることから、その結果リスナーに対してより臨場感を与えることが可能となる。
さらに、本実施の形態では、調整対象周波数範囲Xの中の低周波数側にch間差重視帯域を設け、その範囲に位置する特性の差によって形成される差分面積に対して重み付けを設定する。このように重み付けを設定することにより、たとえ、PEQを用いて少ない素子により補正処理を行う場合であっても、低周波数帯域の差分面積を小さくするための補正処理を効率的に行うことができる。
続いては、図9のフローチャートを参照して、上記説明による本実施の形態としての1つ目のチャンネル(Ach)に対する音場補正処理を実現するために行われるべき処理動作について説明する。
なお、この図9に示される処理動作は図1に示したCPU9がROM10に格納されるプログラムに基づいて実行するものである。
また、この図を始めとし、後述する図11、12の処理動作が実行されるにあたっては、既にCPU9の指示に基づき、DSP4による4つのチャンネルについての周波数−振幅特性の測定が行われ、その結果に基づき得られた4つのチャンネルについての周波数−振幅特性の情報がCPU9に既に供給され、保持された状態にあるものとする。
図9において、先ずステップS101では、調整対象周波数範囲Xの設定を行う。すなわち、先の図5にて説明したように、この場合は予め定められた調整対象周波数範囲Xの設定を行う。
続くステップS102では、EQ素子の選択を行う。つまり、この場合は、EQ素子A〜EQ素子Fまでの6つの素子のうち、先ずは1つ目のEQ素子(例えばEQ素子A)を選択するようにされる。
そして、ステップS103では、設定範囲において、対象特性と目標特性との差分の面積を、凹部/凸部で分けたエリアごとに算出する処理を行う。すなわち、予め定められた調整対象周波数範囲X内において、DSP4による測定結果に基づく対象特性について、この場合は0dBのラインとされる目標特性に対しゲイン(振幅)が不足する部分と超過する部分とで分けたエリアごとに、目標特性との差分の面積を算出するようにされる。
ステップS104では、ステップS103の算出結果に基づき、面積最大となるエリアを特定するようにされる。
また、ステップS105では、特定されたエリア内で目標特性からのゲイン差分値が最大となる周波数ポイント(fsp-Gmax)を選択する。
その上でステップS106では、選択したEQ素子の中心周波数を周波数ポイント(fsp-Gmax)の周波数に決定する。
さらに、ステップS107では、ゲイン値を周波数ポイント(fsp-Gmax)における目標特性からの差分値に基づき決定する。つまり、周波数ポイント(fsp-Gmax)における対象特性のゲイン値と目標特性のゲイン値との差分値の反転値を、選択したEQ素子の上記中心周波数のゲイン値として決定する。
続くステップS108では、Q値として、所定の第1候補値を選択する。すなわち、予め定められたQの各候補値のうち、第1候補値としての所定の候補値を先ずは選択するようにされる。
そして、次のステップS109では、周波数−振幅特性の算出を行う。つまり、ステップS102にて選択したEQ素子に対し、ステップS106、ステップS107にてそれぞれ決定した中心周波数、ゲイン値を設定し、またQ値として先のステップS108(又は後述のステップS113)にて選択した候補値を設定した場合に得られる周波数−振幅特性を算出する。
続くステップS110では、算出した特性と目標特性との差分の総面積を算出するようにされる。
さらに、次のステップS111では、算出した総面積と選択したQ値とを対応づけて、例えばRAM11等に保持するようにされる。
ステップS112では、全Q値を試したか否かについて判別処理を行う。つまり、予め設定された全Q候補値について、それらを設定した場合の周波数−振幅特性の算出と上記総面積の算出を行ったか否かについて判別処理を行う。
ステップS112において、全Q値を未だ試してはいないとして否定結果が得られた場合は、ステップS113に進み、次Q候補値を選択した後、先のステップS109における周波数−振幅特性の算出処理に戻るようにされる。つまり、これらステップS112→ステップS113を経由する処理によって、全Q候補値を試すためのルーチンが形成される。
一方、ステップS112において、全Q値を試したとして肯定結果が得られた場合は、ステップS114に進み、総面積を最小とした候補値を選択したEQ素子のQ値に決定するようにされる。
続くステップS115では、全素子のQ値が決定されたか否かについて判別処理を行う。
未だ全EQ素子についてのQ値が決定されていないとして否定結果が得られた場合は、ステップS116に進み、先ずは次EQ素子を選択するようにされる。すなわち、既に中心周波数、ゲイン値、Q値の各値を決定済みのEQ素子以外から1つのEQ素子を選択するようにされる。
そして、ステップS117では、決定した各値(中心周波数、ゲイン、Q)を設定したときの周波数−振幅特性(算出特性)と目標特性との差分の面積を、凹部/凸部で分けたエリアごとに算出するようにされる。
この場合、先のステップS109の処理により、既に各決定値を反映した場合の周波数−振幅特性が算出されていることになるので、その情報を保持しておくものとすれば、その算出特性について、先のステップS103と同様にして凹部/凸部で分けたエリアごとに目標特性との差分面積を算出するようにされればよい。
なお、ステップS110の算出処理が、同様に凹部/凸部のエリアごとに差分面積を算出し、それらエリアごとの面積値を加算して総面積値を求めるようにされている場合には、ステップS117としては、改めて凹部/凸部ごとの面積を求める必要はなく、このように既に算出済みのエリアごとの面積情報に基づき、各エリアの面積値を取得することができる。
上記ステップS117の処理を実行すると、図示するようにして先のステップS104に戻り、面積最大となるエリアを特定する処理を実行するようにされる。つまり、これによって、全EQ素子について各値が決定されるまでは、繰り返しEQ素子の選択、選択したEQ素子の中心周波数及びゲイン値の決定、各Q候補値を試した上でのQ値の決定のための各処理が行われるものとなる。
そして、先のステップS115において、全素子のQ値が決定されたとして肯定結果が得られた場合は、ステップS118に進み、各EQ素子の決定値を設定するための処理を実行するようにされる。すなわち、先に説明したようにして、DSP4に決定したEQ素子ごとの各値を指示するための係数を与えるようにされる。DSP4では、与えられた各係数を、それぞれのEQ素子の乗算器(図3参照)の係数として設定するようにされる。
さらに、次のステップS119では、補正後特性を算出するための処理を実行するようにされる。すなわち、ステップS119においては、最終的に決定された各EQ素子の決定値をもとに、各EQ素子のパラメータを設定したときの周波数−振幅特性を「補正後特性」として算出する。
また、ステップS120では、上記補正後特性を新たな目標特性として設定する。すなわち、本実施の形態では、以降の処理において、対象特性Tks-1以外の他のチャンネルの対象特性に関しては、Achの補正後特性に一致するようにする。そのため、目標特性を0dBのラインではなく、新たに算出されたAchの補正後特性に設定することとしている。
そして、ステップS120で1つ目のチャンネル(Ach)についての補正後特性を目標特性として設定したら、図10へと処理を進め、Bchの周波数−振幅特性を上記目標特性に一致させるための処理を行う。
先ず、ステップS201では、調整対象周波数範囲Xを、優先度に応じて分割/設定する。すなわち、先の図7、8にて説明したように、調整対象周波数範囲Xの低周波数側の一部をch間差重視帯域としたうえで、さらにch間差重視帯域を補正優先度高領域と補正優先度低領域の2つの領域に分割する。なお、ここでいう「優先度」とは、上記もしたが、音像の歪みを改善するために補正演算処理が必要とされる度合いのことである。
続くステップS202では、音場補正処理を実行する。
ここで、図11のフローチャートにより、図10のステップS202としての音場補正処理のための処理動作について説明する。
図11において、先ずステップS301では、先の図9におけるステップS102と同様に、EQ素子の選択を行う。なお、音場補正処理を行う際、初期設定では回数N=1が設定されている。
次のステップS302では、回数Nに応じた重み付けを設定する。すなわち、先の図7で説明したように、ch間差重視帯域にある、AchとBch両周波数−振幅特性によって形成されたエリアについて、回数に応じた重み付けを設定する。
またステップS303では、設定範囲内で、対象特性と目標特性の面積を特性の交点で分けたエリア毎に算出する。すなわち、先にAchについて補正を行う場合にはフラットな特性を目標特性としたが、Bchについて補正を行う場合にはAchの補正後特性を目標特性としているため、必ずしもフラットとはなっていない。したがって、先のAchについて補正を行う場合のように凹部/凸部で分けられたエリアによってではなく、Achの補正後特性と目標特性であるBchの両特性の交点で分けたエリアを基準に面積の算出を行う。
そして、次のステップS304では、ch間差重視帯域内にあるエリアについて、ステップS303で算出したエリアの面積に対して重み付けを設定した面積を算出して、これを新たに評価面積とする。
なお、次のステップS305からステップS317までの処理は先に説明した図9のステップS104からステップS116までの処理と同内容である。よって、それらの処理の詳しい説明は省略する。
ただし、ステップS318の処理については先のステップS117と異なり、この場合の目標特性はフラットな特性ではなくAchの補正後特性であるため、ステップS303と同様に、目標特性との差分の面積をそれぞれの特性の交点で分けたエリア毎に算出する。
説明を図10に戻す。
ステップS202の音場補正処理として、上記説明した処理を行ったら、次のステップS203に進む。
ステップS203では、補正後特性を算出する。すなわち、上記ステップS202での音場補正処理によって得られた各EQ素子のパラメータをBchの各イコライザに設定したときに得られる周波数−振幅特性を計算し、それをBchの補正後特性として算出する。
そして、ステップS204では、補正後特性と目標特性のch間差重視帯域での差分値Dを算出する。すなわち、上記ステップS203で算出したBchの補正後特性と、目標特性であるAchの両特性について、ch間差重視帯域の範囲の中での差分値Dを算出する。
次のステップS205では、上記算出した差分値Dが閾値thよりも小さいかどうかについての判別処理を行う。すなわち、ch間差重視帯域内での目標特性であるAchと補正後特性であるBchの両周波数−振幅特性の差分面積を小さくすることを目的としているため、差分値Dと予めCPUに設定された閾値thの比較を行い、差分値Dが閾値thよりも小さいか否かについて判別処理を行う。
そして、ステップS205において、上記目標特性であるAchの周波数−振幅特性とこの場合の補正後特性であるBchの周波数−振幅特性による差分値Dが閾値thよりも小さくないと判別された場合には、処理をステップS206へと進め、音場補正処理の実行回数が3回以上であるかどうかについての判別処理を行う。すなわち、本実施の形態において、ch間差重視帯域での差分値Dが所定値よりも小さくないと判別した場合には、さらなる補正演算処理を実行することとしているが、一定回数以上補正演算処理を重ねても、あまり音像の歪みの補正への改善が見られない場合がある。そこで、本実施の形態においては、一つの目安として、補正演算処理の実行回数の上限を例えば3回として、以降は補正演算処理を行わないこととしている。
ステップS206において、音場補正処理の実行回数が3回以上ではないとされた場合には、ステップS207に進み、音場補正処理の実行回数Nを1つインクリメントする。その後、ステップS206からステップS202へと戻り、差分値Dが閾値th以上であり、なおかつ音場補正処理の回数Nが3未満である限り、ステップS202からステップS206のループ処理を繰り返すこととなる。
一方、ステップS204において、目標特性であるAchの周波数−振幅特性と補正後特性であるBchの周波数−振幅特性の差がch間差重視帯域内で所定の閾値thよりも小さくなっていると判別した場合、あるいは上記ステップS205において音場補正処理の実行回数が3回以上であると判別した場合には、ステップS208に進み、各EQ素子の決定値を設定するための処理を実行するようにされる。すなわち、先に説明したようにして、DSP4に決定したEQ素子ごとの各値を設定させるための係数を与える。DSP4では、与えられた各係数を、それぞれのEQ素子の乗算器(図3参照)の係数として設定することになる。
図12に、本実施の形態における実際の補正例を示す。図には4つのチャンネルのうち2つのチャンネルについての周波数−振幅特性しか示していないが、最初に補正したチャンネルをAch、そして残りの3つのチャンネルそれぞれを、Bchとして代表させればよい。
図12(a)には、補正前のAch及びBchの周波数−振幅特性を示す。両チャンネルの周波数−振幅特性の差は、調整対象周波数範囲Xのみならず、それ以外の範囲でも大きなものとなっている。
一方、図12(b)には、補正後のAch及びBchの周波数−振幅特性を示す。両チャンネルの周波数−振幅特性の差は、補正前と比べて調整対象周波数範囲X全体において小さくなっており、特に補正優先度高領域の範囲内では、両チャンネルの特性の差は極めて小さなものとなっている。
このように、低周波数帯域に位置するch間差重視帯域、なかでも補正優先度高領域内での両チャンネルの差を小さくできることで、左右の両スピーカSPから出力される音声について、音像の歪みも良好に改善することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでに説明した実施の形態に限定されず、多様な変形例が考えられる。
例えば、本実施の形態では、4つのスピーカSP(SP-FR、SP-FL、SP-RR、SP-RL)のうちのある1つのスピーカSP-FLをAchとして、まずこのAchの周波数−振幅特性をフラットな特性に近づけるための補正を行い、その後に残りの3つのスピーカSP(SP-FR、SP-RR、SP-RL)から出力される音声の周波数−振幅特性を、Achの補正後特性に近づけるようにして補正処理を実行するものとした。
それ以外にも、Ach(スピーカSP-FL)の周波数−振幅特性をフラットな特性に近づけるための補正を行ったうえで、スピーカSP-FR及びスピーカSP-RLから出力される音声の周波数−振幅特性についてはAchの補正後特性に近づけ、残りのスピーカSP-RRから出力される音声の周波数−振幅特性のみをスピーカSP-RLのチャンネルの補正後特性に近づけることとしてもよい。
このようにすることによっても、左右、前後のスピーカSPから出力される音声の周波数−振幅特性をそれぞれ近づけるようにすることができ、音像の歪みの改善と、より臨場感を得ることができるという本実施の形態の効果は同様に得られることになる。
また、これまでの説明では、前後のch間の周波数−振幅特性の差に起因する臨場感の問題も考慮するものとして、前後ch間の特性の差を小さくするような補正処理とすることを前提としたが、例えばこのような臨場感についての問題は考慮しないとした場合等には、前側と後側とでそれぞれ独立して補正処理を行うようにすることもできる。
つまり、先ずは前側のスピーカSPについて、例えばスピーカSP-FRを所定の特性(例えばフラットな特性)に近づけるように補正処理し、スピーカSP-FLをスピーカSP-FRの補正後特性を目標特性として補正処理を行う。また、後側のスピーカSPについても、例えば同様にスピーカSP-RRを所定の特性に近づけるように補正処理を行った上で、スピーカSP-RLはスピーカSP-RRの補正後特性を目標特性として補正処理を行うようにする。
このように前側と後側とでそれぞれ独立して、一方のchは所定の特性を目標特性として補正処理を行い、他方のchはその補正後特性を目標特性として補正処理を行うようにした場合にも、実施の形態の場合と同様に左右のスピーカSPの周波数−振幅特性の差に起因する音像の歪みを改善することができる。
さらに、本実施の形態では、図2に示した計6つのスピーカSPのうち、4つのスピーカSP(SP-FR、SP-FL、SP-RR、SP-RL)を補正対象とすることとしているが、備えられるスピーカの数が異なる場合には、それに応じて補正対象とするスピーカSPの数も変更することができる。
また、重み付けの係数については、補正演算処理の回数が増す毎に段階的に一定レベルで大きくすることした。他の重み付けの例としては、3回目の補正演算処理を行う場合には、2回目の補正演算処理を行った場合よりもさらに大きな係数を重み付け係数に設定することも考えられる。また、2回目、3回目の補正演算処理を行う際には、本実施の形態で設定した重み付け係数(本実施の形態では「1.5」)とは異なる数値を設定して一定レベルで大きくしてもよい。
また、イコライザ素子として、PEQではなくGEQを用いることとしてもよい。ここで、PEQを用いて少ない素子数により補正を行う場合には、全ての領域での補正を均等に行うことはできず、周波数ポイントをいくつか選択したうえで中心周波数を設定することにより、いずれかの領域を優先して対応する必要がある。一方、GEQを用いて補正を行う場合には、中心周波数が固定されているため、PEQを用いる場合のように、ある周波数ポイントを選択して、特定の領域を優先して補正を行うという概念は適用できない。このため、GEQを用いて補正を行う場合には、Achの補正後特性を目標特性として、それに対象特性を近づけるようにゲイン調整するという概念のみが適用されればよい。
また、周波数ポイントが合計31箇所設けられることとしたが、周波数ポイントとして設定される数はそれよりも増減させることも可能である。
また、本実施の形態においては、補正演算処理の上限を3回としたが、回数についての制限は設けなくてもよい。また、1回目の補正処理から重み付けをすることとしてもよい。
また、本実施の形態では、Achの補正後特性を目標特性として補正を行う場合のEQ素子のQ値の決定処理において、各Q候補値を設定したときの周波数−振幅特性を評価する範囲を調整対象周波数範囲X全体としたが、これに代えてch間差重視帯域とすることもできる。
本発明の実施の形態としての信号処理装置を備えて構成されるAVアンプの内部構成を示すブロック図である。 実施の形態のAVアンプに対してスピーカとマイクロフォンを組み合わせたAVシステムの構成を示す図である。 実施の形態の信号処理装置が備えるイコライザ素子の構成例を示したブロック図である。 測定された周波数−振幅特性と目標特性との関係を例示した図である。 実施の形態としてのある1つのチャンネルについての補正処理動作について説明するための図である。 同じく、実施の形態としてのある1つのチャンネルについての補正処理動作について説明するための図である。 実施の形態としての他のチャンネルについての補正処理動作について説明するための図である。 実施の形態の重み付けを説明するための図である。 実施の形態としての、ある1つのチャンネルについての補正処理動作について示したフローチャートである。 実施の形態としての、音場補正処理を含む他のチャンネルについての補正を実現させるための処理動作を説明するフローチャートである。 実施の形態としての、音場補正処理動作を実現させるための処理動作を説明するフローチャートである。 実施の形態の、ある1つのチャンネルと他のチャンネルそれぞれについての補正前と補正後の周波数−振幅特性の図である。
符号の説明
1 AVアンプ、2 マイクアンプ、3 A/Dコンバータ、4 DSP、5 D/Aコンバータ、6 アンプ、7 バス、8 操作部、9 CPU、10 ROM、11 RAM、12 表示制御部、13 表示部、SW スイッチ、M マイクロフォン、SP スピーカ、21,22,29,30 遅延素子、23,24,25,27,28,31,32 乗算器、26 加算器

Claims (6)

  1. それぞれが複数チャンネルのオーディオ信号に対応して設けられ、上記複数チャンネルのオーディオ信号のうち対応するチャンネルのオーディオ信号を入力し、設定されたパラメータに基づき少なくともゲイン調整を行う複数のイコライザと、
    上記複数チャンネルごとの上記イコライザにより処理されたそれぞれのオーディオ信号を音声出力する複数の出力手段と、
    上記出力手段から出力されたオーディオ信号の周波数−振幅特性を測定する測定手段と、
    上記測定手段による測定結果に基づき、各チャンネルのオーディオ信号の周波数−振幅特性を補正するための演算処理を行う演算手段とを備え、
    上記演算手段は、
    上記複数チャンネルのうち所定の第1のチャンネルについては、上記測定手段により測定された上記第1のチャンネルについての周波数−振幅特性が所定の目標特性と一致するように上記第1のチャンネルの上記イコライザに設定されるべきパラメータを算出し、
    上記第1のチャンネル以外の他のチャンネルについては、上記算出したパラメータを上記第1のチャンネルのイコライザに設定したときに得られる周波数−振幅特性を目標特性として算出した上で、この算出した目標特性と、上記測定手段により測定された対象とするチャンネルの周波数−振幅特性とが一致するように上記対象とするチャンネルのイコライザに設定されるべきパラメータを算出する、
    ことを特徴とする信号処理装置。
  2. 上記イコライザはパラメトリックイコライザであって、上記設定されたパラメータに基づき中心周波数と、ゲイン値と、先鋭度とを変化させることができることを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  3. 上記演算手段は、上記第1のチャンネル以外の他のチャンネルについては、上記測定手段により測定された周波数−振幅特性の所定の周波数帯域を重視帯域としたうえで、上記重視帯域を優先して周波数−振幅特性を補正するための演算処理を実行することを特徴とする請求項2に記載の信号処理装置。
  4. 上記演算手段は、上記重視帯域内で、上記第1のチャンネルとそれ以外の他のチャンネルとの周波数−振幅特性の差が所定値以下であるかどうかについての評価を行い、上記周波数−振幅特性の差が所定値以下でない場合には、上記重視帯域での優先度を変化させて再度補正演算処理を行うことを特徴とする請求項3に記載の信号処理装置。
  5. それぞれが複数チャンネルのオーディオ信号に対応して設けられ、上記複数チャンネルのオーディオ信号のうち対応するチャンネルのオーディオ信号を入力し設定されたパラメータに基づき少なくともゲイン調整を行う複数のイコライザと、上記複数チャンネルごとの上記イコライザにより処理されたそれぞれのオーディオ信号を音声出力する複数の出力手段と、上記出力手段から出力されたオーディオ信号の周波数−振幅特性を測定する測定手段とを備えた信号処理装置における信号処理方法として、
    上記複数チャンネルのうち所定の第1のチャンネルについては、上記測定手段により測定された上記第1のチャンネルについての周波数−振幅特性が所定の目標特性と一致するように上記第1のチャンネルのイコライザに設定されるべきパラメータを算出し、
    上記第1のチャンネル以外の他のチャンネルについては、上記算出したパラメータを上記第1のチャンネルのイコライザに設定したときに得られる周波数−振幅特性を目標特性として算出した上で、この算出した目標特性と、上記測定手段により測定された対象とするチャンネルの周波数−振幅特性とが一致するように対象とするチャンネルのイコライザに設定されるべきパラメータを算出する手順を備えたことを特徴とする信号処理方法。
  6. それぞれが複数チャンネルのオーディオ信号に対応して設けられ、上記複数チャンネルのオーディオ信号のうち対応するチャンネルのオーディオ信号を入力し設定されたパラメータに基づき少なくともゲイン調整を行う複数のイコライザと、上記複数チャンネルごとの上記イコライザにより処理されたそれぞれのオーディオ信号を音声出力する複数の出力手段と、上記出力手段から出力されたオーディオ信号の周波数−振幅特性を測定する測定手段とを備えた信号処理装置において実行されるべきプログラムであって、
    上記複数チャンネルのうち所定の第1のチャンネルについては、上記測定手段により測定された上記第1のチャンネルについての周波数−振幅特性が所定の目標特性と一致するように上記第1のチャンネルのイコライザに設定されるべきパラメータを算出し、
    上記第1のチャンネル以外の他のチャンネルについては、上記算出したパラメータを上記第1のチャンネルのイコライザに設定したときに得られる周波数−振幅特性を目標特性として算出した上で、この算出した目標特性と、上記測定手段により測定された対象とするチャンネルの周波数−振幅特性とが一致するように対象とするチャンネルのイコライザに設定されるべきパラメータを算出する手順を上記信号処理装置に実行させる、
    ことを特徴とするプログラム。
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