JP2008133923A - 組合せオイルリング - Google Patents
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Abstract
【課題】上下レールが一体構造の組合せオイルリングにおいて、合口隙間を通じたオイル消費を低減する。
【解決手段】組合せオイルリング1はシリンダ9の内周面10と摺動する上下一対のレール6,7がウェブ8で連結された断面略I字形の鋼製オイルリング2と、このオイルリング2を半径方向外方に押圧付勢するコイルエキスパンダ3とからなる。組合せオイルリング1は、オイルリング2の合口隙間を塞ぐ矩形断面の線材からなる遮断部材14を、上下レール6,7とウェブ8で形成される外周溝12内に上レール6と接触可能に有する。遮断部材14は端部を曲げてオイルリング2のウェブ8に形成されている窓孔13に引っ掛ける構造としてもよい。
【選択図】図1
【解決手段】組合せオイルリング1はシリンダ9の内周面10と摺動する上下一対のレール6,7がウェブ8で連結された断面略I字形の鋼製オイルリング2と、このオイルリング2を半径方向外方に押圧付勢するコイルエキスパンダ3とからなる。組合せオイルリング1は、オイルリング2の合口隙間を塞ぐ矩形断面の線材からなる遮断部材14を、上下レール6,7とウェブ8で形成される外周溝12内に上レール6と接触可能に有する。遮断部材14は端部を曲げてオイルリング2のウェブ8に形成されている窓孔13に引っ掛ける構造としてもよい。
【選択図】図1
Description
本発明は、内燃機関に使用する組合せオイルリングに関し、特に合口隙間を通じたオイル消費を低減する組合せオイルリングに関する。
内燃機関のピストンにはガスシール機能を主に行うコンプレッションリングと、シリンダボア壁の油膜厚のコントロールを主に行うオイルコントロールリングとが装着されている。このオイルコントロールリングには上下レールが独立しているスペーサエキスパンダ付き鋼製組合せオイルリングと、上下レールが一体構造のコイルエキスパンダ付き鋼製組合せオイルリングが主に使用されている。どちらの組合せオイルリングもエキスパンダによりレール部をシリンダボア内壁に押し付け、その面圧によりボア内壁に付着しているオイルを掻き落とすことでシリンダ壁の油膜厚のコントロールを行っている。上下レールが一体構造の組合せオイルリングの場合、上下レールの合口位置は円周方向で同位置又は近傍となる。
上下レールが一体構造であるコイルエキスパンダ付き組合せオイルリングの合口部に遮断部材を設ける技術として、特許文献1では、リング本体の合口両端に所定の溝加工を施し、そこに合口遮断部材を挿入する構造が提案されている。
特開平8−42692号公報
上下レールの合口位置が円周方向で同一位置、又は近傍にある場合、下レールの合口隙間を通過したオイルミストや下レールの合口部で掻き残したシリンダ壁のオイルが、上レールの合口隙間を通過して燃焼室に入りやすい。特にエンジンブレーキが働く減速時は燃焼室が負圧になる為、上下レールの合口が揃っている場合はオイル上がりの現象が顕著になる。
リング本体に溝加工を施し合口遮断部材を挿入する特許文献1の技術は、合口遮断部材と上下レールは接触せずシールされていない。その結果、オイルが吸い上げられるような状況の下では、オイルが合口遮断部材と上レールの間の隙間を通り、上レールの合口隙間から燃焼室に入りやすいため、オイル消費の低減効果が低い。また、溝加工を必要とするためコストアップとなる。
本発明の目的は、上下レールが一体構造の組合せオイルリングにおいて、合口隙間を通じたオイル消費を低減することにある。
上記課題を解決するために本発明は次の解決手段を採る。すなわち、
本発明は、シリンダの内周面と摺動する上下一対のレールがオイルを逃がす窓孔を有するウェブで連結されている断面略I字形のオイルリングと、このオイルリングを半径方向外方に押圧付勢するコイルエキスパンダとからなる組合せオイルリングにおいて、オイルリングの合口隙間を塞ぐ遮断部材が前記上下レールとウェブで形成される外周溝内に上レールと接触可能に配置されていることを特徴とする。
本発明は、シリンダの内周面と摺動する上下一対のレールがオイルを逃がす窓孔を有するウェブで連結されている断面略I字形のオイルリングと、このオイルリングを半径方向外方に押圧付勢するコイルエキスパンダとからなる組合せオイルリングにおいて、オイルリングの合口隙間を塞ぐ遮断部材が前記上下レールとウェブで形成される外周溝内に上レールと接触可能に配置されていることを特徴とする。
遮断部材の外周はオイルリング外周の曲率と略同じ曲率を有することがシール性の面で好ましい。
遮断部材のリング軸方向における幅は、遮断部材が上下レールとウェブで形成される外周溝内で上下に動くことができ、また遮断部材がオイルリングのウェブに形成されている窓孔を塞ぐことがないよう設定されることが好ましい。遮断部材のリング半径方向における厚さは、遮断部材がオイルリングの外周よりも突出しないように設定される。したがって、例えば、遮断部材のリング軸方向における幅は上下レール間距離の1/2以下、遮断部材のリング半径方向における厚さは上下レールとウェブで形成される外周溝の深さよりも小さくされる。
遮断部材の周長は、合口隙間を塞ぐ周長であればよいが、オイルリングのウェブに形成されている窓孔の周方向長さよりも長くされることが望ましく、オイルリングの周長の1/2以上、オイルリングの周長以下とするのが合口隙間を安定的に塞ぐ点で好ましい。なお、遮断部材の周長はオイルリングの周長以上として重なり部を持たせてもよい。この場合、オイルリングに抱きつかせる必要はない。
遮断部材の端部をオイルリングのウェブに形成されている窓孔に引っ掛ける構造とすることで、遮断部材に回り止め効果を持たせることができる。この場合、遮断部材の周長は短くしてもよい。遮断部材は両端部を曲げて窓孔に引っ掛けてもよく、一端部を曲げて窓孔に引っ掛けるようにしてもよい。
遮断部材の断面が四角形、円、楕円、又は樽形であることがシール性や製造の容易さから好ましい。
本発明は上記の構成により、燃焼室が負圧となるエンジンブレーキ時のピストン下降時、遮断部材は慣性力と負圧により持ち上がり、オイルリングの上レールに接触する。その結果、オイル通路となる面積が小さくなるため、燃焼室に吸い上げられるオイルの量を低減できる。
以下、本発明の一実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
組合せオイルリング1は鋼製のオイルリング2とコイルエキスパンダ3とからなり、ピストン4のリング溝5に装着されている。
オイルリング2は、合口2aを有している断面略I字形のリングであり、円周方向に延びる上下一対のレール6,7と、円周方向に延び前記一対のレール6,7を連結する薄肉の真っ直ぐなウェブ8とからなっている。上下のレール6,7の外周面はそれぞれシリンダ9の内周面10と接触する摺動面11を構成する。上下のレール6,7の外周側突出部とウェブ8とで外周溝12が形成される。下レール7でシリンダ9の内周面10から掻き取られたオイルはそのままオイルパンに落とされ、上レール6で掻き取られたオイルは外周溝12から、ウェブ8に円周方向に間隔をおいて形成されている複数個の窓孔13を通ってオイルリング2の内周側に移動し、ピストン4に形成されている図示外のオイル通路を通ってオイルパンに落とされる。
外周溝12には遮断部材14が装着されている。遮断部材14は断面が矩形の線材で、オイルリング2の合口2aの隙間部分を塞ぐようにして配置されている。遮断部材14の周長はオイルリング2の周長の約3/4、リング軸方向における幅aは上下レール6,7間距離Aの約1/3、リング半径方向における厚さbは外周溝12の深さBの約9/10である。
上下のレール6,7の内周側突出部とウェブ8とで内周溝15が形成され、この溝15内にコイルエキスパンダ3が装着されている。コイルエキスパンダ3は線材をコイル状に巻いたものをリング状としたものであり、オイルリング2を半径方向外方に押圧付勢し、オイルリング2の外周摺動面11をシリンダ内周面10に押接させる。
したがって、上記構成の組合せオイルリング1によれば、燃焼室が負圧となるエンジンブレーキ時のピストン4下降時、遮断部材14は慣性力と負圧により持ち上がり、オイルリング2の上レール6に接触する。その結果、オイル通路となる面積が小さくなるため、シリンダ9壁油膜から蒸発したオイルミストやシリンダ9壁のオイルが合口2aの隙間を通って燃焼室に吸い上げられる量を低減できる。
なお、遮断部材14の断面形状は限定されない。遮断部材14の断面形状の他の例を図4と図5に示す。図4は正方形断面、図5は円形断面を示す。
また、遮断部材14の周長は、合口2aの隙間を塞ぐ周長であればよいが、オイルリング2のウェブ8に形成されている窓孔13の周方向長さよりも長くされることが望ましい。遮断部材14の周長の他の例を図6、図7及び図8に示す。図6はオイルリング2の周長の約1/2、図7はオイルリング2の周長の約1/5、図8はオイルリング2の周長以上として重なり部を持たせたものである。
また、遮断部材14の端部を曲げてオイルリング2のウェブ8に形成されている窓孔13に引っ掛ける構造とすることで、遮断部材14に回り止め効果を持たせることができる。図9及び図10にその例を示す。図9は、遮断部材14の両端部を曲げて窓孔13に引っ掛けた場合を示している。図10は、遮断部材14の一端部を曲げて窓孔13に引っ掛けた場合を示している。このような構造とすることで遮断部材14は回り止めされるため、遮断部材14の周長は短くできる。
次に、オイル消費試験を行った結果を説明する。約φ80mmの直列4気筒のガソリンエンジンで、エンジンブレーキを想定したモード運転を行い、オイル消費量を比較した。従来の組合せオイルリングに対し、遮断部材を追加した本発明の組合せオイルリングでは、オイル1L当りの走行距離が約30%改善された。本試験に使用した遮断部材の周長はオイルリングの周長の約3/4、リング軸方向における幅は上下レール間距離の約30%、リング半径方向における厚さはオイルリングの外周溝の深さの約90%で、端部に曲げ加工を施し、その端部をオイルリングの窓孔に引っ掛けた構造である。
1 組合せオイルリング
2 オイルリング
2a 合口
3 コイルエキスパンダ
4 ピストン
5 リング溝
6 上レール
7 下レール
8 ウェブ
9 シリンダ
10 シリンダ内周面
11 外周摺動面
12 外周溝
13 窓孔
14 遮断部材
15 内周溝
a リング軸方向における幅
A 上下レール間距離
b リング半径方向における厚さ
B 外周溝の深さ
2 オイルリング
2a 合口
3 コイルエキスパンダ
4 ピストン
5 リング溝
6 上レール
7 下レール
8 ウェブ
9 シリンダ
10 シリンダ内周面
11 外周摺動面
12 外周溝
13 窓孔
14 遮断部材
15 内周溝
a リング軸方向における幅
A 上下レール間距離
b リング半径方向における厚さ
B 外周溝の深さ
Claims (6)
- シリンダの内周面と摺動する上下一対のレールがオイルを逃がす窓孔を有するウェブで連結されている断面略I字形のオイルリングと、このオイルリングを半径方向外方に押圧付勢するコイルエキスパンダとからなる組合せオイルリングにおいて、オイルリングの合口隙間を塞ぐ遮断部材が前記上下レールとウェブで形成される外周溝内に上レールと接触可能に配置されていることを特徴とする組合せオイルリング。
- 遮断部材の外周がオイルリング外周の曲率と略同じ曲率を有することを特徴とする請求項1記載の組合せオイルリング。
- 遮断部材のリング軸方向における幅は上下レール間距離の1/2以下で、遮断部材のリング半径方向における厚さは上下レールとウェブで形成される外周溝の深さよりも小さいことを特徴とする請求項1又は2記載の組合せオイルリング。
- 遮断部材の周長はオイルリングの周長の1/2以上、オイルリングの周長以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の組合せオイルリング。
- 遮断部材の端部がオイルリングのウェブに形成されている窓孔に引っ掛けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の組合せオイルリング。
- 遮断部材の断面が四角形、円、楕円、又は樽形であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の組合せオイルリング。
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