JP2008133505A - 高清浄度鋼の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 RH装置における精錬処理において、スラグの塩基度、スラグに含まれるFeOやMnO、溶鋼を還流する強弱及びその還流時間、溶鋼還流量を最適化して精錬を行う。
【選択図】図2
Description
このような清浄度の高い鋼(高清浄度鋼)は、一般的に、転炉にて溶鋼の脱炭処理を行った後、二次精錬装置にて溶鋼における化学成分の微調整や溶鋼に含まれる非金属介在物の低減を行い、連続鋳造装置にて鋳造することで製造される。
高清浄度鋼の製造では、鋼の品質を向上させるため、二次精錬の際に非金属介在物の低減を可及的に行うことが求められており、非金属介在物を低減する技術としては特許文献1又は2に示されているものがある。
特許文献2には、SiO2:10%以下、MgO:6〜15%未満、Al2O3:25〜45%、CaO:35〜60%を含有するスラグを用いて真空脱ガス精錬を行う清浄鋼の精錬方法が開示されている。
したがって、特許文献1の技術を用いても、非金属介在物の低減を十分に行うことが困難である。
そこで、本発明は、非金属介在物の低減を十分に行うことができる高清浄度鋼の製造方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明は、転炉又は電気炉から出鋼した溶鋼を取鍋精錬装置で精錬を行った後、前記取鍋精錬装置で精錬を行った溶鋼を還流式真空脱ガス装置で精錬することで高清浄度鋼を製造する高清浄度鋼の製造方法において、前記還流式真空脱ガス装置で行う精錬処理でのスラグの塩基度を6.5以上13.5以下とし、且つ、スラグ中の組成が式(1)を満たすようにすると共に、前記還流式真空脱ガス装置の全処理時間に対して、1/3〜1/2となる範囲の前半処理では、式(2)で求められる溶鋼還流量を180ton/min以上、210ton/min以下として溶鋼を高還流し、前記前半処理後に行う後半処理では、溶鋼還流量を110ton/min以上、140ton/min以下として溶鋼を弱還流する点にある。
過去の操業実績や実験等によりFeOやMnOについて様々な検証を行った結果、発明者は、FeOとMnOとの総和が式(1)を満たすようにすれば、溶鋼中の非金属介在物が増加するのを抑えることができることを見出した。
さて、還流式真空脱ガス装置における精錬では、溶鋼の還流を強くする(高還流)と溶鋼内にある非金属介在物の分離浮上を促進できるというメリットがあるが、一方で高還流状態にすると還流式真空脱ガス装置内に付着した地金の多くを溶鋼に溶け込ませてしまい、非金金属介在物の生成起源となってしまうデメリットがある。
そこで、発明者は、還流式真空脱ガス装置の精錬処理において高還流と弱還流とを使い分けることとし、攪拌によって地金が溶鋼に溶け込む度合いよりも非金属介在物が分離浮上する度合いが高くなるように、高還流及び弱還流の時期や強さ等について様々な検証を行った。
以下、本発明の高清浄度鋼の製造方法は、図1に示すように、転炉1から高清浄度鋼向けの溶鋼を取鍋2に出鋼し、この取鍋2を二次精錬装置3に搬送して当該二次精錬装置3で精錬することで、高清浄度鋼の製造をするものである。二次精錬装置3で処理された高清浄度鋼向けの溶鋼は連続鋳造装置で鋳造されることとなる。なお、高清浄度鋼向けの溶鋼は電気炉から出鋼したものであってもよい。
二次精錬装置3は、取鍋精錬装置(LF装置)5と、還流式真空脱ガス装置6(以下、RH装置ということがある)とを有するもので、高清浄度鋼向けの溶鋼は取鍋精錬装置5で精錬され、その後、RH装置6で精錬されるようになっている。
吹き込み装置7は、取鍋2の底部に設けられてその底部からガスを吹き込むポーラス吹込口15と、取鍋2の上部からガスを吹き込むランス16とを備えている。ランス16の先端には溶鋼内にガスを吹き込むノズルが設けられている。なお、吹き込み装置7は、ポーラス吹込口15のみを有するものであっても、ランス16のみを有するものであってもよい。
RH装置6は、溶鋼の脱ガスを行うものであって、溶鋼が装入された取鍋2と、真空状態となって溶鋼内の脱ガスを行う脱ガス槽10とを有している。取鍋2は、取鍋精錬装置5で用いられた取鍋2と同一のものであって、脱ガス槽10の直下に配置されるようになっている。
以上のRH装置6では、浸漬管11を取鍋2内の溶鋼に浸漬し、吹き込み口から不活性ガスを吹き込むと共に、排気口13から脱ガス槽10のガスを排気して脱ガス槽10内を略真空状態して溶鋼を脱ガス槽10と取鍋2との間で循環させることで、溶鋼内に存在する水素等のガス成分を除去することができる。なお、RH装置6では成分の微調整のため合金を入れることがある。
図1に示すように、高清浄度鋼の製造方法では、RH装置で行う精錬処理(以降、RH装置で精錬処理を行うことをRH精錬ということがある)でのスラグの塩基度を6.5以上13.5以下している。詳しくは、RH精錬の初期でのスラグの塩基度を6.5〜13.5の範囲としている。言い換えれば、LF装置で溶鋼の精錬処理(以降、LF装置で精錬処理を行うことをLF精錬ということがある)が終了したときのスラグの塩基度が6.5〜13.5の範囲に入るようにしている。
具体的には、
(i)RH装置の全処理時間に対して、1/3〜1/2となる範囲の前半処理では、式(2)で求められる溶鋼還流量が180ton/min以上、210ton/min以下となるように、還流ガス流量、即ち、Arガスの吹き込み量を調整している。
一般的に、RH精錬では、その全体の精錬時間(全体処理時間)は、30分〜60分間である。RH精錬の前半の10分(30分の1/3)〜30分(60分の1/2)間に溶鋼還流量が180ton/min〜210ton/minとなる範囲で還流した場合、RH精錬の後半の20分(30分の2/3)〜30分(60分の1/2)間は、110ton/min〜140ton/minとなる範囲で還流することになる。
アルミナ系介在物個数はEPMA(電子プローブ・マイクロアナライザー)で計測した。使用したEPMAは日本電子社製「JXA−8000」シリーズで、測定条件は加速電圧20kv、X線種はK線、ビーム径は2μmとし、EDS検出器を使用した。
EPMAで観測された介在物の短径が5μm以上の介在物で、CaO−Al2O3−SiO2−MgOの4元系換算でAl2O3を50%以上且つCaOを5%以下含有するものをアルミナ系介在物とし、その個数を計測した。計測では、信頼性を確保するために3000mm2以上観測した。
表1に示すように、比較例1、2では、RH精錬において前半処理の溶鋼還流量が180ton/min〜210ton/minとなる範囲であり溶鋼を高還流しているが、高還流する時間(以降、高還流時間ということがある)が全体処理時間に対して1/3未満(高還流割合33%未満)と短い。その結果、前半処理において、高還流時間が短いので溶鋼内のアルミナ系介在物の分離浮上を十分に行うことができず、処理後のアルミナ系介在物の個数は4.0個/cm2よりも多くなった(評価「×」)。
比較例7、8では、前半処理の還流時間がは、全体処理時間に対して1/3以上で十分であるものの、溶鋼還流量が210ton/min以上であって溶鋼を還流が強すぎる。
比較例9、10では、後半処理の還流時間は、全体処理時間に対して1/2以上で十分であるものの、溶鋼還流量が110ton/min以下であって溶鋼の還流が弱すぎる。
比較例11、12では、後半処理の還流時間は、全体処理時間に対して1/2以上で十分であるものの、溶鋼還流量が140ton/min以上であって、後半処理にしては溶鋼の還流が強すぎる。前半処理において多くのアルミナ系介在物が分離浮上するため、後半処理を行う時点では、溶鋼内のアルミナ系介在物が絶対的に少なくなっている。このような状態で、溶鋼を強く還流させると、還流によってアルミナ系介在物の分離浮上する速度よりも地金が溶け出す速度が勝ってしまうことになる。その結果、処理後のアルミナ系介在物の個数は4.0個/cm2よりも多くなった(評価「×」)。
比較例15、16では、RH精錬においてスラグの塩基度(C/S)が6.5以下と低く、熱力学平衡論的に溶鋼中のOが大きくなり脱酸が進行しなくなり、アルミナ系介在物が増大する。その結果、処理後のアルミナ系介在物の個数は4.0個/cm2よりも多くなった(評価「×」)。
実施例19〜22では、RH精錬でのスラグの塩基度は6.5〜13.5の範囲であり、スラグ中の組成が式(1)を満たした状態である。しかも、前半処理の還流時間は、全体処理時間に対して1/3〜1/2となる範囲であって、溶鋼還流量も180ton/min〜210ton/minの範囲で溶鋼を強還流している。
その結果、実施例19〜22では、溶鋼に含まれるアルミナ系介在物を4.0個/cm2以下にすることができた(評価「○」)。
図2〜4は、表1における実施例及び比較例において、溶鋼還流量とアルミナ系介在物個数との関係をまとめたものである。詳しくは、図2は、後半処理においては、溶鋼還流量を110ton/min〜140ton/minの範囲とし、且つ、還流時間を2/3〜1/2とした上で、前半処理において溶鋼還流量を変化させたものである。図3は、前半処理においては、溶鋼還流量を180ton/min〜210ton/minの範囲とし、且つ、還流時間を1/3〜1/2とした上で、後半処理において溶鋼還流量を変化させたものである。
図2に示すように、前半処理の溶鋼還流量を180ton/min〜210ton/minの範囲とすることで、アルミナ系介在物の個数を4.0個/cm2以下にすることができる。前半処理の溶鋼還流量が180ton/min未満であったり、前半処理の溶鋼還流量が210ton/minを超えると、アルミナ系介在物の個数は4.0個/cm2よりも多くなる。
図4に示すように、後半処理の還流時間が全体処理時間に対して1/2〜2/3の範囲とすることで、アルミナ系介在物の個数を4.0個/cm2以下にすることができる。後半処理の還流時間が1/2未満であったり、後半処理の還流時間が2/3を超えると、アルミナ系介在物の個数は4.0個/cm2よりも多くなる。
図5に示すように、アルミナ系介在物個数が少なくなる程、ベアリングが破壊に至るまでの転動回数が増加していて転動寿命は長い。一方で、アルミナ系介在物個数が多くなる程、転動寿命となるベアリングの転動回数が減少していて転動寿命は短いことが分かる。転動寿命とアルミナ系介在物個数との傾向を示す傾向線aは右肩下がりとなっている。ここで、傾向線aに着目すると、アルミナ系介在物個数が4.0個/cm2よりも多くなる範囲では、アルミナ系介在物個数が多くなるにつれて転動寿命の変化はあまりなく、転動寿命は50×106回以下である。
また、アルミナ系介在物個数が2.0個/cm2以下になると、転動寿命は100×106回以上であって、これは、ベアリングの疲労寿命としては非常に優れたものになる。したがって、アルミナ系介在物個数は2.0個/cm2よりも少なくするのが好ましい。
図6に示すように、RH精錬において、スラグの塩基度を6.5〜13.5の範囲で精錬処理した場合、アルミナ系介在物の個数は4.0個/cm2以下となるため、転動寿命が50×106回以上である寿命の長い強固なベアリングを製造することができる。さらに、スラグの塩基度を8〜11の範囲で精錬処理した場合、アルミナ系介在物の個数は2.0個/cm2以下となるため、転動寿命が100×106回以上であるより寿命の長い強固なベアリングを製造することができる。
2 取鍋
3 二次精錬装置
5 取鍋精錬装置
6 RH装置
Claims (2)
- 転炉又は電気炉から出鋼した溶鋼を取鍋精錬装置で精錬を行った後、前記取鍋精錬装置で精錬を行った溶鋼を還流式真空脱ガス装置で精錬することで高清浄度鋼を製造する高清浄度鋼の製造方法において、
前記還流式真空脱ガス装置で行う精錬処理でのスラグの塩基度を6.5以上13.5以下とし、且つ、スラグ中の組成が式(1)を満たすようにすると共に、
前記還流式真空脱ガス装置の全処理時間に対して、1/3〜1/2となる範囲の前半処理では、式(2)で求められる溶鋼還流量が180ton/min以上、210ton/min以下である高還流状態とし、
前記前半処理後に行う後半処理では、式(2)で求められる溶鋼還流量が110ton/min以上、140ton/min以下である弱還流状態とすることを特徴とする高清浄度鋼の製造方法。
- 前記スラグの塩基度を8以上11以下とすることを特徴とする請求項1に記載の高清浄度鋼の製造方法。
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