JP2008133149A - リチウム−鉄−マンガン複合酸化物の製造方法 - Google Patents

リチウム−鉄−マンガン複合酸化物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】リチウムコバルト系正極材料に代わり得る正極材料として期待されるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物について、より一層優れた充放電性能を有する複合酸化物を形成可能な新規な製造方法を提供する。
【解決手段】下記(1)〜(3)の工程を含む、組成式:Li1+x(FeyMn1-y)1-xO2(式中0 < x < 1/3, 0.05≦y≦0.75)で表され、層状岩塩型構造の結晶相を含むリチウム−鉄−マンガン
複合酸化物の製造方法:(1)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムから
なる群から選ばれた少なくとも一種のアルカリ成分と水溶性アンモニウム塩を含むpH調整剤を用いて、水又は水−アルコール混合物からなる溶媒にマンガン化合物と鉄化合物を溶解してなる原料溶液をアルカリ性として沈殿物を形成する工程、(2)得られた沈殿物を
酸化剤および水溶性リチウム化合物と共にアルカリ性条件下で水熱処理する工程、(3)水
熱処理後の生成物をリチウム化合物の存在下で焼成する工程。
【選択図】図6

Description

本発明は、次世代低コストリチウムイオン二次電池の正極材料として有用なリチウム−鉄−マンガン複合酸化物の新規な製造方法に関する。
現在、我が国において、携帯電話、ノートパソコンなどのポータブル機器に搭載されている二次電池のほとんどは、リチウムイオン二次電池である。また、リチウムイオン二次電池は、今後、電気自動車、電力負荷平準化システムなどの大型電池としても実用化されるものと予想されており、その重要性はますます高まっている。
現在、リチウムイオン二次電池においては、正極材料としては主にリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)材料が使用され、負極材料としては黒鉛などの炭素材料が使用されている。
この様なリチウムイオン二次電池では、正極材料において可逆的に脱離(充電に相当)、挿入(放電に相当)するリチウムイオン量が電池の容量を決定づけ、脱離・挿入時の電圧が電池の作動電圧を決定づけるために、正極材料であるLiCoO2は、電池性能に関連する重要な電池構成材料である。このため、今後のリチウムイオン二次電池の用途拡大・大型化に伴い、リチウムコバルト酸化物は、一層の需要増加が予想されている。
しかしながら、リチウムコバルト酸化物は、希少金属であるコバルトを多量に含むために、リチウムイオン二次電池の素材コスト高の要因の一つとなっている。さらに、現在コバルト資源の約20%が電池産業に用いられていることを考慮すれば、LiCoO2からなる正極材料のみでは今後の需要拡大に対応することは困難と考えられる。
現在、より安価で資源的に制約の少ない正極材料として、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)等が報告されており、一部代替材料として実用
化されている。しかしながらリチウムニッケル酸化物には充電時に電池の安全性を低下させるという問題があり、リチウムマンガン酸化物には高温(約60℃)充放電時に3価のマン
ガンが電解液中に溶出し、それが電池性能を著しく劣化させるという問題があり、これらの材料への代替はあまり進んでいない。
一方、リチウムマンガン酸化物の中で溶出の原因となる3価のマンガンを含まない4価のマンガンイオンのみからなるLi2MnO3という物質が存在し、この材料は充放電不可能と考
えられてきたが、最近の研究では4.8Vまで充電することにより充放電可能なことが見いだされてきている(下記非特許文献1参照)。しかしながら充放電特性に関してさらなる改善が必要である。
また、マンガンおよびニッケルに比べて、資源的により一層豊富であり、毒性が低く、安価な鉄を含むリチウムフェライト(LiFeO2)について、電極材料としての可能性が検討されている。しかしながら、通常の製造法、すなわち鉄源とリチウム源とを混合し高温焼成することによって得られるリチウムフェライトは、ほとんど充放電しないので、リチウムイオン二次電池正極材料として用いることはできない。
一方、イオン交換法により得られるLiFeO2が充放電可能であることが報告されているが(下記特許文献1および2参照)、これらの材料の平均放電電圧は2.5V以下でありLiCoO2の値(約3.7V)に比べて著しく低いため、LiCoO2の代替とすることは困難である。
本発明者らは、すでに、鉄に次いで安価かつ資源的に豊富な上記リチウムマンガン酸化物(Li2MnO3)とリチウムフェライトとからなる層状岩塩型構造の固溶体(Li1+x(FeyMn1-y)1-xO2、(0<x<1/3, 0<y<1)、以下「鉄含有Li2MnO3」という)が、室温での充放電試験においてはリチウムコバルト酸化物並の4V近い平均放電電圧を有することを見出している(下
記特許文献3および4参照)。
更に、本発明者らは、特定の条件を満足するリチウム−鉄−マンガン複合酸化物が、高温サイクル試験時にLiMn2O4より高容量(150mAh/g)かつ安定した充放電サイクル特性を示
すことを見出している(下記特許文献5参照)。
以上の通り、リチウムコバルト系正極材料に代わり得るリチウムマンガン系複合酸化物正極材料やリチウムフェライト系正極材料について種々の報告がなされているが、更に、正極材料の化学組成や製造条件についての最適化が望まれている。
C. Gan, H. Zhan, X. Hu, and Y. Zhou, Electrochemistry Communication, 7, 1318-1322, (2005) 特開平10-120421号公報 特開平8-295518号公報 特開2002-68748号公報 特開2002-121026号公報 特開2005-154256号公報
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、リチウムコバルト系正極材料に代わり得る正極材料として期待されるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物について、より一層優れた充放電性能を有する複合酸化物を形成可能な新規な製造方法を提供することである。
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、沈殿形成工程、水熱処理工程及び焼成工程を含むリチウム−鉄−マンガン複合酸化物の製造方法において、アルカリ成分と水溶性アンモニウム塩を含むpH調整剤を用いて沈殿形成を行う場合には、アルカリ成分のみを用いて沈殿を形成する場合と比較して、最終的に得られるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物の充放電性能が大きく向上し、リチウムイオン電池の正極材料として優れた性能を発揮し得るものとなることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記のリチウム−鉄−マンガン複合酸化物の製造方法、及び該製造方法によって得られたリチウム−鉄−マンガン複合酸化物の用途を提供するものである。
1. 下記(1)〜(3)の工程を含む、組成式:Li1+x(FeyMn1-y)1-xO2(式中、0 < x <
1/3, 0.05≦y≦0.75)で表され、層状岩塩型構造の結晶相を含むリチウム−鉄−マンガ
ン複合酸化物の製造方法:
(1)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群から選ばれた少なくとも一種のアルカリ成分と水溶性アンモニウム塩を含むpH調整剤を用いて、水又は水−アルコール混合物からなる溶媒にマンガン化合物と鉄化合物を溶解してなる原料溶液をアルカリ性として沈殿物を形成する工程、
(2)得られた沈殿物を酸化剤および水溶性リチウム化合物と共にアルカリ性条件下で水熱処理する工程、
(3)水熱処理後の生成物をリチウム化合物の存在下で焼成する工程。
2. pH調整剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群
から選ばれた少なくとも一種のアルカリ成分100重量部に対して水溶性アンモニウム塩1〜30重量部を含むものである、上記項1に記載のリチウム−鉄−マンガン複合酸化物の製造方法。
3. 上記項1又は2の方法で得られるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池正極材料
4. 上記項1又は2の方法で得られるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池正極材料を構成要素とするリチウムイオン二次電池。
本発明の目的物であるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物は、粉体特性により充放電特性が大きく異なるという特徴を有している。本発明のリチウム−鉄−マンガン複合酸化物の製造方法では、水又は水−アルコール混合物からなる溶媒にマンガン化合物と鉄化合物を溶解してなる原料溶液をアルカリ性として沈殿物を形成し、得られた沈殿物を酸化剤および水溶性リチウム化合物と共にアルカリ性条件下で水熱処理し、次いで、水熱処理後の生成物をリチウム化合物の存在下で焼成する工程を含む方法によってリチウム−鉄−マンガン複合酸化物を製造する。これらの工程を含む製造方法によれば、粉体の一次粒子径や比表面積の制御が容易であり、目的とするリチウム−鉄−マンガン複合酸化物を高収率で得ることができる。
更に、本発明の製造方法は、上記した製造工程において、原料溶液をアルカリ性として沈殿物を形成する際に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群から選ばれた少なくとも一種のアルカリ成分と水溶性アンモニウム塩を含むpH調整剤を用いることを重要な特徴とするものである。この様な水溶性アンモニウム塩を含むpH調整剤を用いることによって、アルカリ成分のみを用いて沈殿物を形成する場合と比較して、高温の使用環境において優れた充放電性能を有し、且つ低温での大電流密度下での放電時にも優れた放電性能を発揮するリチウム−鉄−マンガン複合酸化物を得ることができる。
アンモニウム塩を含むpH調整剤を用いることによって上記した優れた性能を有する複合酸化物が得られる理由については必ずしも明確ではないが、沈殿形成時にアンモニウム塩が存在することによって沈殿の形成状態が変化し、これが最終的に得られるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物の結晶相の存在状態や粉体特性に影響を及ぼすことによるものと考えられる。
以下、本発明のリチウム−鉄−マンガン複合酸化物の製造方法の各工程について具体的に説明する。
沈殿形成工程
本発明では、まず、マンガン化合物及び鉄化合物を含む原料溶液を調製する。
マンガン化合物としては、例えば、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、水酸化物などの水溶性マンガン化合物を用いることができる。これらの水溶性マンガン化合物は、無水物および水和物のいずれであってもよく、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
原料とする鉄化合物としては、特に限定はなく、通常、水溶性の化合物であればよい。この様な水溶性鉄化合物の具体例としては、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩などの水溶性塩、水酸化物などを挙げることができる。これらの水溶性鉄化合物は、無水物および水和物のいずれであってもよい。また、酸化物などの非水溶性化合物であっても、例えば、塩酸などの酸を用いて溶解させて水溶液として用いることが可能である。鉄化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
マンガン化合物と鉄化合物の混合割合は、目的とするリチウム−鉄−マンガン複合酸化物における各元素比と同様の元素比となるようにすればよい。即ち、鉄イオン量(y値:Fe/(Fe+Mn))については、鉄イオンとマンガンイオンの合計量の5〜75モル%(0.05≦Fe/(Fe+Mn)≦0.75)程度であり、好ましくは10〜60モル%(0.1≦Fe/(Fe+Mn) ≦0.6)程度である。Feイオンの固溶量が過剰となる場合には、Feイオンの希釈が不十分となるばかりでなく、充放電に関与しないLi層内のFeイオンが多くなるので、電池特性上好ましくない。一方、Feイオンの固溶量が少なすぎる場合には、充放電容量が小さくなるため、やはり好ましくない。
原料溶液中の各化合物の濃度については、特に限定的ではなく、均一な混合溶液を形成でき、且つ円滑に共沈物を形成できるように適宜決めればよい。通常、マンガン化合物及び鉄化合物の合計濃度を、0.01〜5mol/l程度、好ましくは0.1〜2mol/l程度とすればよい
該原料溶液の溶媒としては、水を単独で用いる他、メタノール、エタノールなどの水溶性アルコールを含む水−アルコール混合溶媒を用いても良い。水−アルコール混合溶媒を用いることにより、0℃を下回る温度での沈殿生成が可能となる。アルコールの使用量は、目的とする沈殿生成温度などに応じて適宜決めればよいが、通常、水100重量部に対して、50重量部程度以下の使用量とすることが適当である。
本発明の製造方法では、該原料溶液から沈殿物(共沈物)を生成させるために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群から選ばれた少なくとも一種のアルカリ成分と水溶性アンモニウム塩を含むpH調整剤を用いて、該原料溶液をアルカリ性とする。良好な沈殿物を形成する条件は、原料溶液に含まれる各化合物の種類、濃度などによって異なるので一概に規定出来ないが、通常、pH8程度以上とすることが好ましく、pH11程度以上とすることがより好ましい。
本発明で用いるpH調整剤では、水溶性アンモニウム塩としては、例えば、塩化アンモニウム、フッ化アンモニウム、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等を用いることができる。これらの水溶性アンモニウム塩は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
水溶性アンモニウム塩の使用量は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群から選ばれた少なくとも一種のアルカリ成分100重量部に対して1〜30重量部程度とすることが好ましく、2〜20重量部程度とすることがより好ましい。アンモニウム塩の使用量が少な過ぎる場合には、アンモニウム塩の添加による効果が十分に発揮されない。一方、アンモニウム塩の使用量が多すぎると所定のpH値とするために多量のpH調整剤の添加が必要となり、高アルカリ性で生成しやすい、スピネルフェライトの混在が懸念され、沈殿内の遷移金属の均一性が損なわれ易くなる。また必要以上のアルカリを必要とすることは経済的にも不利である。
上記したpH調整剤は、アルカリ成分とアンモニウム塩の混合物としてそのまま用いてもよく、或いは、アルカリ成分とアンモニウム塩を含む水溶液として用いてもよい。水溶液として用いる場合には、例えば、アルカリ成分の濃度が0.1〜20mol/l程度、好ましくは0.3〜10mol/l程度の水溶液として用いることができる。また、上記した原料溶液と同様に、水溶性アルコールを含む水−アルコール混合溶媒に溶解しても良い。
原料溶液をアルカリ性にする方法については特に限定はなく、通常は、アルカリ成分と水溶液アンモニウム塩の混合物、又はアルカリ成分と水溶液アンモニウム塩を含む水溶液
を、該原料溶液に添加すればよい。また、アルカリ成分と水溶性アンモニウム塩を含む水溶液に該原料溶液を添加する方法によっても沈殿物を形成することができる。
沈殿生成の際には、原料溶液の温度を-50℃から+15℃程度、好ましくは-40℃から+10℃程度にすることにより、反応時の中和熱発生に伴うスピネルフェライトなどの生成が抑制され均質な共沈物が形成されやすくなる。
該原料溶液をアルカリ性とした後、更に、0〜150℃程度(好ましくは10〜100℃程度)
で、1〜7日間程度(好ましくは2〜4日間程度)にわたり、反応溶液に空気を吹き込みながら、沈殿物の酸化・熟成処理を行うことが好ましい。
得られた沈殿を蒸留水等で洗浄して、過剰のアルカリ成分、残留原料等を除去し、濾別することによって、沈殿を精製することができる。
水熱処理工程
上記した方法で得られた沈殿物を、酸化剤および水溶性リチウム化合物とともにアルカリ性条件下で水熱処理に供する。水熱処理は、沈殿物、酸化剤及び水溶性リチウム化合物を含む水溶液をアルカリ性条件下で加熱することによって行うことができる。加熱は、通常、密閉容器中で行えばよい。
水熱反応に用いる水溶液では、マンガン及び鉄を含む沈殿物の含有量は、水1リットル
あたり1〜100g程度とすることが好ましく、10〜80g程度とすることがより好ましい。
水溶性リチウム化合物としては、例えば、塩化リチウム、硝酸リチウム等の水溶性リチウム塩、水酸化リチウム等を用いることができる。これらの水溶性リチウム化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができ、無水物および水和物の何れを用いても良い。
水溶性リチウム化合物の使用量は、MnとFeの合計モル数に対するリチウム元素モル比として、Li/(Mn+Fe)=1〜10程度とすることが好ましく、3〜7程度とすることがより好ましい。
水溶性リチウム化合物の濃度は、0.1〜10mol/l程度とすることが好ましく、1〜8mol/l
程度とすることがより好ましい。
酸化剤としては、水熱反応時に分解して酸素発生するものであれば、特に限定無く使用でき、具体例として、塩素酸カリウム、塩素酸リチウム、塩素酸ナトリウム、過酸化水素水等を挙げることができる。
酸化剤の濃度は、0.1〜10mol/l程度とすることが好ましく、0.5〜5mol/l程度とするこ
とがより好ましい。
水熱反応を行う際の水溶液のpHについては、通常、pH8程度以上とすることが好ましく、pH11程度以上とすることがより好ましい。
沈殿物、酸化剤及び水溶液リチウム化合物を含む水溶液がアルカリ性条件下にある場合には、そのまま加熱すればよいが、pH値が低い場合には、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、アンモニアなどを添加してpH値を上げればよい。
水熱反応は、通常の水熱反応装置(例えば、市販のオートクレーブ)を用いて行うことができる。
水熱反応条件は、特に限定されるものではないが、通常100〜300℃程度で0.1〜150時間程度とすればよく、好ましくは150〜250℃程度で1〜100時間程度とすればよい。
水熱反応終了後、通常、残存するリチウム化合物などの残存物を除去するために、反応生成物を洗浄する。洗浄には、例えば、水、水-アルコール、アセトンなどを用いること
ができる。次いで、生成物を濾過し、例えば、80℃以上の温度(通常は100℃程度)で乾燥
することにより、リチウム−鉄−マンガン複合酸化物を得ることができる。
焼成工程
上記した方法によって得られたリチウム−鉄−マンガン複合酸化物をリチウム化合物とともに焼成することによって、Li含有量および粉体特性を制御して目的とする岩塩型を基本構造とするリチウム−鉄−マンガン複合酸化物を得ることができる。
リチウム化合物としては、リチウム元素を含む化合物であれば特に限定なく使用でき、具体例として、塩化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム等のリチウム塩、水酸化リチウム、これらの水和物等を挙げることができる。リチウム化合物の使用量は、水熱法で得られたリチウム−鉄−マンガン複合酸化物1モルに対して0.01〜2モル程度とすればよい。
通常、反応性を向上させるために、水熱法で得られたリチウム−鉄−マンガン複合酸化物にリチウム化合物を加えて粉砕混合した後、焼成することが好ましい。粉砕の程度については、粗大粒子が含まれず、混合物が均一な色調となっていればよい。
リチウム化合物は、粉末形態、水溶液形態等として用いることができるが、反応の均一性を確保するために、水溶液の形態で使用することが好ましい。この場合、水溶液の濃度については、通常、0.1〜10mol/l程度とすればよい。
焼成雰囲気については、特に限定はなく、大気中、酸化性雰囲気中、不活性雰囲気中、還元雰囲気中等任意の雰囲気を選択できる。焼成温度は、200〜1000℃程度とすることが
好ましく、300〜800℃程度とすることがより好ましい。焼成時間は、焼成温度まで達する時間を含めて0.1〜100時間程度とすることが好ましく、0.5〜60時間程度とすることがよ
り好ましい。
焼成終了後、通常、過剰のリチウム化合物を除去するために、焼成物を水洗処理、溶媒洗浄処理等に供する。その後、濾過を行い、例えば、80℃以上の温度、好ましくは100℃
程度の温度で加熱乾燥してもよい。
更に、必要に応じて、この加熱乾燥物を粉砕し、リチウム化合物を加えて、焼成し、洗浄し、乾燥するという一連の操作を繰り返し行うことにより、リチウム−鉄−マンガン複合酸化物の優れた特性(リチウムイオン二次電池用正極材料としての作動電圧領域におけ
る安定的な充放電特性、高容量など)をより一層改善することができる。
リチウム−鉄−マンガン複合酸化物
上記した方法で得られるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物は、組成式:Li1+x(FeyMn1-y)1-xO2(式中、0<x<1/3, 0.05≦y≦0.75)で表されるものである。
該リチウム−鉄−マンガン複合酸化物は、岩塩型構造を基本とした結晶構造であり、図1のような公知物質であるLiCoO2に類似した層状岩塩型構造を含むものである。図1の左
側には、LiCoO2について、結晶の各層に含まれる元素を示し、図1の右側には、本発明の複合酸化物について、結晶の各層に含まれる元素を示している。図1から判るように、LiCoO2は、立方最密充填した酸化物イオンの8面体格子間位置にa軸方向に沿って2次元的にCoイオンとLiイオンとがそれぞれ配列し、c軸方向に交互に積層した結晶構造を有するものである。本発明方法で得られるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物における層状岩塩型構造の結晶相は、Liイオン、Feイオン、Mnイオンが、LiCoO2のCo層に存在していることと、Li層内にFeイオンが部分的に置換していることが特徴である。
本発明の製造方法で得られるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物は、上記した層状岩塩型構造の結晶相の他に、図2に示される立方晶岩塩型構造の結晶相も含むものである。こ
の結晶構造は図1において陽イオンの区別がつかないほど完全に乱れた構造に対応するも
のである。この場合、層状岩塩型構造の結晶相と立方晶岩塩型構造の結晶相の割合は、通常、層状岩塩型構造結晶相:立方晶岩塩型構造結晶相(重量比)=10:90〜90:10程度の範囲となる。
本発明方法によって得られる複合酸化物は、充放電特性に重大な影響を及ぼさない範囲(最大10モル%程度)の水酸化リチウム、炭酸リチウム、マンガン化合物、異種金属化合物 (それらの水和物も含む)などの不純物相を含んでいても良い。
本発明の製造方法は、上記した特定の製造工程を採用するものであり、特に、アルカリ成分と水溶性アンモニウム塩を含むpH調整剤を用いることによって、最終的に得られるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物は、リチウムイオン二次電池における正極材料として用いた場合に、従来の製造方法で得られたリチウム−鉄−マンガン複合酸化物と比較すると、60℃程度の高温の使用環境において優れたサイクル特性を示すものとなる。
本発明方法によって得られるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物を用いるリチウムイオン二次電池は、公知の手法により製造することができる。すなわち、正極材料として、本発明方法で得られたリチウム−鉄−マンガン複合酸化物を使用する他は、負極材料として、公知の金属リチウム、炭素系材料(活性炭、黒鉛)などを使用し、電解液として、公知のエチレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの溶媒に過塩素酸リチウム、LiPF6
どのリチウム塩を溶解させた溶液を使用し、さらにその他の公知の電池構成要素を使用して、常法に従って、リチウムイオン二次電池を組立てればよい。
本発明のリチウム−鉄−マンガン複合酸化物の製造方法によれば、従来の製造方法によって得られるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物と比較して、高温の使用環境において優れた充放電性能を有するリチウム−鉄−マンガン複合酸化物が得られる。
従って、本発明によれば、後述する実施例から明らかなように、安価な原料及び元素を使用して、平均放電電圧が3V以上を保持でき、且つリチウムコバルト酸化物系正極材料と同等またはそれ以上の放電容量(180mAh/g以上)を有し、高温(60℃)でのサイクル特性に優れた、正極材料として有用なリチウムマンガン系複合酸化物を得ることができる。
本発明によって得られるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物がこのような大容量を有するのは、従来の正極材料とは異なり、放電曲線が放電終止電圧(2.0V)に向かって緩やかに低下していく形状であることによるものであり、放電終止電圧を2.0V程度まで下げることによって、容易に大容量化を実現することができ、小型民生用のみならず車載用などの大型リチウムイオン二次電池用正極材料としてきわめて有用である。
特に、本発明の複合酸化物は、微粉末から構成されているために優れた充放電特性を発揮することができる。
本発明の製造方法で得られるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物は、上記した優れた性能を有するものであり、高容量かつ低コストのリチウムイオン二次電池用正極材料として、極めて有用である。
以下、実施例および比較例を示し、本発明の特徴とするところを一層明確にするが、本発明はこれら実施例に限定されない。
実施例1
硝酸鉄(III)9水和物50.50g及び過マンガン酸カリウム24.74g (全量0.25mol、Fe:Mnモル比=1:1)を500mlの蒸留水に加え、完全に溶解させた。別のビーカーに塩化アンモニウム1gを蒸留水500mlに溶解後、水酸化リチウム1水和物50gを溶解させた溶液を作製し、アンモ
ニウム塩を含む水酸化リチウム水溶液からなるpH調整剤を作製した。このアンモニウム塩含有水酸化リチウム水溶液(pH調整剤)をチタン製ビーカーに入れ、エタノール150mlを加えて攪拌後、恒温漕内に静置し、恒温漕内を-10℃に保った。次いで、この水酸化リチウム水溶液に上記金属塩水溶液を2〜3時間かけて徐々に滴下して、Fe-Mn沈殿物を形成
させた。反応液が完全にアルカリ性(pH11以上)になっていることを確認し、攪拌下に共沈物を含む反応液に室温で1日間空気を吹き込んで沈殿を熟成させた。
得られた沈殿を蒸留水で洗浄して濾別し、この沈殿生成物を水酸化リチウム1水和物50g、塩素酸カリウム50g、水酸化カリウム309g及び蒸留水600mlとともにポリテトラフルオロエチレンビーカー中に入れ、よく攪拌した。この水溶液のpHは11以上であった。その後、水熱反応炉(オートクレーブ)内に設置し、220℃で5時間水熱処理した。
水熱処理終了後、反応炉を室温付近まで冷却し、水熱処理反応液を含むビーカーをオートクレーブ外に取り出し、生成している沈殿物を蒸留水で洗浄して、過剰に存在する水酸化リチウムなどの塩類を除去し、濾過することにより、粉末状生成物(リチウム―鉄―マンガン系複合酸化物)を得た。
濾過して得た粉末を、水酸化リチウム1水和物5.25gを蒸留水100mlに溶解させた水酸化
リチウム水溶液と混合し、攪拌後、100℃において一晩乾燥し、粉砕して粉末を作製した
次いで、得られた粉末を大気中で1時間かけて750℃まで昇温し、その温度で1分間焼
成後、炉中で室温まで冷却し、過剰のリチウム塩を除去するために、焼成物を蒸留水で水洗し、濾過し、乾燥して、目的物であるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物を粉末状生成物として得た。
この最終生成物のX線回折パターンを図3に示す。リートベルト解析結果(プログラムはRIETAN-2000を使用)より、すべてのピークは層状岩塩型のリチウム−鉄−マンガン複合酸
化物の単位胞
Figure 2008133149
を有する結晶相(第一相:a=2.8832(6)Å, c=14.307(2)Å)と、立方晶岩塩型のα-LiFeO2の単位胞
Figure 2008133149
(第二相:a=4.1064(5)Å、第一相と第二相の存在割合53:47)で指数付けできた。得られた層状岩塩型結晶相の格子定数値は、既に報告されているリチウム−鉄−マンガン複合酸化物の値(格子定数a=2.882Å, c=14.287Å)に近い値であった(M.Tabuchi, A.Nakashima,
H.Shigemura, K.Ado, H.Kobayashi, H.Sakaebe, H.Kageyama, T.Nakamura, M.Kohzaki, A.Hirano and R.Kanno, Journal of The Electrochemical Society, 149, A509-A524, 2002。)
下記表1に記載の通り、化学分析により、Feが仕込量に近いそれぞれ50モル%(m値)含まれていること、Li/(Fe+Mn)値より計算されるx値が0.16であることから、実施例1におい
て、リチウム−鉄−マンガン複合酸化物(Li1.16(Fe0.50Mn0.50)0.84O2)が得られたことが確認できた。また後述する比較例1の分析データとほぼ同等の化学組成を有することがわかった。
実施例2
実施例1と同様に硝酸鉄(III)9水和物50.50g及び過マンガン酸カリウム24.74g (全量0.25mol、Fe:Mnモル比=1:1)を500mlの蒸留水に加え、完全に溶解させた。別のビーカーに塩化アンモニウム10gを蒸留水500mlに溶解後、水酸化リチウム1水和物50gを溶解させた溶液を作製し、アンモニウム塩を含む水酸化リチウム水溶液からなるpH調整剤を作製した。このアンモニウム塩含有水酸化リチウム水溶液(pH調整剤)をチタン製ビーカーに入れ、エタノール150mlを加えて攪拌後、恒温漕内に静置し、恒温漕内を-10℃に保った。次いで、この水酸化リチウム水溶液に上記金属塩水溶液を2〜3時間かけて徐々に滴下して、Fe-Mn沈殿物を形成させた。反応液が完全にアルカリ性(pH11以上)になっていることを確認
し、攪拌下に共沈物を含む反応液に室温で1日間空気を吹き込んで沈殿を熟成させた。
得られた沈殿を蒸留水で洗浄して濾別し、この沈殿生成物を水酸化リチウム1水和物50g、塩素酸カリウム50g、水酸化カリウム309g及び蒸留水600mlとともにポリテトラフルオロエチレンビーカー中に入れ、よく攪拌した。この水溶液のpHは11以上であった。その後、水熱反応炉(オートクレーブ)内に設置し、220℃で5時間水熱処理した。
水熱処理終了後、反応炉を室温付近まで冷却し、水熱処理反応液を含むビーカーをオートクレーブ外に取り出し、生成している沈殿物を蒸留水で洗浄して、過剰に存在する水酸化リチウムなどの塩類を除去し、濾過することにより、粉末状生成物(リチウム―鉄―マンガン系複合酸化物)を得た。
濾過して得た粉末を、水酸化リチウム1水和物5.25gを蒸留水100mlに溶解させた水酸化
リチウム水溶液と混合し、攪拌後、100℃において一晩乾燥し、粉砕して粉末を作製した
次いで、得られた粉末を大気中で1時間かけて750℃まで昇温し、その温度で1分間焼
成後、炉中で室温まで冷却し、過剰のリチウム塩を除去するために、焼成物を蒸留水で水洗し、濾過し、乾燥して、目的物であるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物を粉末状生成物として得た。
この最終生成物のX線回折パターンを図3に示す。リートベルト解析結果(プログラムはRIETAN-2000を使用)より、すべてのピークは層状岩塩型のリチウム−鉄−マンガン複合酸
化物の単位胞
Figure 2008133149
を有する結晶相(第一相:a=2.8793(11)Å, c=14.295(4)Å)と、立方晶岩塩型のα-LiFeO2の単位胞
Figure 2008133149
(第二相:a=4.1066(3)Å、第一相と第二相の存在割合33:67)で指数付けできた。得られた層状岩塩型結晶相の格子定数値は、既に報告されているリチウム−鉄−マンガン複合酸化物の値(格子定数a=2.882Å, c=14.287Å)に近い値であった(M.Tabuchi, A.Nakashima,
H.Shigemura, K.Ado, H.Kobayashi, H.Sakaebe, H.Kageyama, T.Nakamura, M.Kohzaki, A.Hirano and R.Kanno, Journal of The Electrochemical Society, 149, A509-A524, 2002。)
下記表1に記載の通り、化学分析により、Feが仕込量に近いそれぞれ50モル%(m値)含まれていること、Li/(Fe+Mn)値より計算されるx値が0.19であることから、実施例2において、リチウム−鉄−マンガン複合酸化物(Li1.19(Fe0.50Mn0.50)0.81O2)が得られたことが確認できた。また後述する比較例1の分析データとほぼ同等の化学組成を有することがわかった。
比較例1
実施例1および2と同様に硝酸鉄(III)9水和物50.50g及び過マンガン酸カリウム24.74g (全量0.25mol、Fe:Mnモル比=1:1)を500mlの蒸留水に加え、完全に溶解させた。別のビー
カーに塩化アンモニウムを含有しない蒸留水500mlに対して、水酸化リチウム1水和物50g
を溶解させた溶液を作製し、アンモニウム塩を含まない水酸化リチウム水溶液を作製した。この水酸化リチウム水溶液をチタン製ビーカーに入れ、エタノール150mlを加えて攪拌
後、恒温漕内に静置し、恒温漕内を-10℃に保った。次いで、この水酸化リチウム水溶液
に上記金属塩水溶液を2〜3時間かけて徐々に滴下して、Fe-Mn沈殿物を形成させた。反応
液が完全にアルカリ性(pH11以上)になっていることを確認し、攪拌下に共沈物を含む反応液に室温で1日間空気を吹き込んで沈殿を熟成させた。
得られた沈殿を蒸留水で洗浄して濾別し、この沈殿生成物を水酸化リチウム1水和物50g、塩素酸カリウム50g、水酸化カリウム309g及び蒸留水600mlとともにポリテトラフルオロエチレンビーカー中に入れ、よく攪拌した。この水溶液のpHは11以上であった。その後、水熱反応炉(オートクレーブ)内に設置し、220℃で5時間水熱処理した。
水熱処理終了後、反応炉を室温付近まで冷却し、水熱処理反応液を含むビーカーをオートクレーブ外に取り出し、生成している沈殿物を蒸留水で洗浄して、過剰に存在する水酸化リチウムなどの塩類を除去し、濾過することにより、粉末状生成物(リチウム―鉄―マンガン系複合酸化物)を得た。
濾過して得た粉末を、水酸化リチウム1水和物5.25gを蒸留水100mlに溶解させた水酸化
リチウム水溶液と混合し、攪拌後、100℃において一晩乾燥し、粉砕して粉末を作製した
次いで、得られた粉末を大気中で1時間かけて750℃まで昇温し、その温度で1分間焼
成後、炉中で室温まで冷却し、過剰のリチウム塩を除去するために、焼成物を蒸留水で水洗し、濾過し、乾燥して、目的物であるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物を粉末状生成物として得た。
この最終生成物のX線回折パターンを図3に示す。リートベルト解析結果(プログラムはRIETAN-2000を使用)より、すべてのピークは層状岩塩型のリチウム−鉄−マンガン複合酸
化物の単位胞
Figure 2008133149
を有する結晶相(第一相:a=2.8884(4)Å, c=14.3133(16)Å)と、立方晶岩塩型のα-LiFeO2の単位胞
Figure 2008133149
(第二相:a=4.1036(8)Å、第一相と第二相の存在割合68:32)で指数付けできた。得られた層状岩塩型結晶相の格子定数値は、既に報告されているリチウム−鉄−マンガン複合酸化物の値(格子定数a=2.882Å, c=14.287Å)に近い値であった(M.Tabuchi, A.Nakashima,
H.Shigemura, K.Ado, H.Kobayashi, H.Sakaebe, H.Kageyama, T.Nakamura, M.Kohzaki, A.Hirano and R.Kanno, Journal of The Electrochemical Society, 149, A509-A524, 2002。)
下記表1に記載の通り、化学分析により、Feが仕込量に近いそれぞれ50モル%(m値)含まれていること、Li/(Fe+Mn)値より計算されるx値が0.18であることから、比較例1において、リチウム−鉄−マンガン複合酸化物(Li1.18(Fe0.50Mn0.50)0.82O2)が得られたことが確認できた。また前述した実施例1および2の分析データとほぼ同等の化学組成を有するこ
とがわかった。
Figure 2008133149
図4は、実施例1、実施例2及び比較例1において最終生成物として得られた各リチウ
ム−鉄−マンガン複合酸化物の電子顕微鏡写真を電子的に画像処理した図面である。図4
から、実施例1、実施例2及び比較例1において、一次粒子径が100nm以下のリチウム−鉄−マンガン複合酸化物が形成されていることが確認できる。
また上記表1より、実施例1及び実施例2で得られた生成物は、比較例1で得られた生成物と比較して、比表面積が小さい値であることが判る。
実施例1及び実施例2では、沈殿形成時に塩化アンモニウムを添加したこと以外は、比較例1とほぼ同一の製造条件を選択していることから、沈殿形成時に塩化アンモニウムが含まれていることによって、より粒成長したリチウム−鉄−マンガン複合酸化物が得られたことが明らかである。
充放電試験1
上記実施例1、実施例2および比較例1で得た各複合酸化物各20mgをアセチレンブラッ
ク5mgおよびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末0.5mgとともに乾式混合後、アルミニウムメッシュ上に圧着したものを正極材料として用い、Li金属を負極材料として用いて、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒に支持塩であるLiPF6を溶解
させた1M溶液を電解液としてコイン型リチウム電池を作成した。このリチウム電池の充放電特性を60℃において(電位範囲2.0-4.5V、電流密度42.5mA/g)充電開始にて検討した。
図5は、実施例1と比較例1の各正極材料を用いたリチウム電池について、初期充放電
特性を示すグラフである。図5において、右上がりの曲線は充電曲線に対応し、右下がり
の曲線は放電曲線に対応する。図5および表2から、塩化アンモニウムを添加して調製した実施例1および実施例2のリチウム−鉄−マンガン複合酸化物正極材料を用いた電池は、
塩化アンモニウムを添加することなく調製した比較例1のリチウム−鉄−マンガン複合酸
化物正極材料を用いた電池と比較して、初期充放電容量、充放電効率においてわずかに劣るが、平均電圧は向上していることがわかる。
Figure 2008133149
図6は、各電池の放電容量の充放電サイクル数依存性を示すグラフである。表2には各電池の10サイクル後および30サイクル後の放電容量を示している。この結果から、実施例1のリチウム−鉄−マンガン複合酸化物正極材料を用いたリチウム電池は、比較例1の電
池に比べて10サイクル後の放電容量はわずかに劣るものの、15サイクル後以降の放電容量は比較例1に比べて大きくなっていることが判る。また実施例2の電池も、20サイクル後以降の放電容量は比較例1に比べて大きくなっていること、10サイクル以降ほとんど容量低
下していないことがわかる。
以上の結果から、塩化アンモニウムの存在下に沈殿形成を行って得られた本発明のリチウム−鉄−マンガン複合酸化物は、60℃という高温の充放電試験において優れた充放電サイクル特性を示すものであり、リチウムイオン二次電池用リチウムマンガン系正極材料として、優れた性能を有することが確認できた。
本発明の製造方法によって得られるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物を構成する結晶相の内で、層状岩塩型構造の結晶相を模式的に示す図面である。 本発明のリチウムマンガン系複合酸化物を構成する結晶相の内で、立方晶岩塩型構造の結晶相を模式的に示す図面である。 実施例1、実施例2及び比較例1で得られた試料のX線回折パターンを示す図面である。 実施例1、実施例2及び比較例1で得られた各リチウム−鉄−マンガン複合酸化物の電子顕微鏡写真を電子的に画像処理した図面である。 実施例1、実施例2及び比較例1で得られたリチウム−鉄−マンガン複合酸化物正極の60℃における初期充放電特性を示すグラフである。 実施例1、実施例2及び比較例1で得られたリチウム−鉄−マンガン複合酸化物正極の60℃における放電容量の充放電サイクル数依存性を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 下記(1)〜(3)の工程を含む、組成式:Li1+x(FeyMn1-y)1-xO2(式中、0 < x < 1/3, 0.05≦y≦0.75)で表され、層状岩塩型構造の結晶相を含むリチウム−鉄−マンガン複
    合酸化物の製造方法:
    (1)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群から選ばれた少なくとも一種のアルカリ成分と水溶性アンモニウム塩を含むpH調整剤を用いて、水又は水−アルコール混合物からなる溶媒にマンガン化合物と鉄化合物を溶解してなる原料溶液をアルカリ性として沈殿物を形成する工程、
    (2)得られた沈殿物を酸化剤および水溶性リチウム化合物と共にアルカリ性条件下で水熱処理する工程、
    (3)水熱処理後の生成物をリチウム化合物の存在下で焼成する工程。
  2. pH調整剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群から選ばれた少なくとも一種のアルカリ成分100重量部に対して水溶性アンモニウム塩1〜30重量部を含むものである、請求項1に記載のリチウム−鉄−マンガン複合酸化物の製造方法。
  3. 請求項1又は2の方法で得られるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池正極材料
  4. 請求項1又は2の方法で得られるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池正極材料を構成要素とするリチウムイオン二次電池。
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