JP2008130427A - 電池用電極の製造方法、及び電池用電極の製造装置 - Google Patents

電池用電極の製造方法、及び電池用電極の製造装置 Download PDF

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Kiichi Hirose
貴一 廣瀬
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勇 小西池
Masayuki Iwama
正之 岩間
Koichi Matsumoto
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Abstract

【課題】 活物質層を非晶質状態で形成することによって、初回放電容量及び充放電サイクル特性が改善された、リチウムイオン二次電池などに好適な電池用電極を製造する方法、及びその製造に用いられる製造装置を提供すること。
【解決手段】 活物質層中に、活物質としてケイ素などのエネルギー容量の大きな物質が含まれている電池用電極を作製する。この際、活物質層を気相成膜法によって形成し、活物質材料源(例えば、蒸着源2)が存在している領域と集電体12とを結ぶ空間領域Bにおいて、活物質材料源2から集電体12へ向かう活物質材料の流れを横切るように棒状可動体13または網状可動体を動かし、この運動によって活物質材料の流れを乱し、不均一性が大きく、非晶質度の大きい活物質層を形成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池などに好適な電池用電極を製造する方法、及びその製造に用いられる製造装置に関するものであり、詳しくは、初回放電容量及び充放電サイクル特性の改善に関するものである。
近年、モバイル機器は高性能化および多機能化されてきており、これらに伴い、モバイル機器に電源として用いられる二次電池にも、小型化、軽量化および薄型化が要求され、高容量化が求められている。
この要求に応え得る二次電池としてリチウムイオン二次電池がある。リチウムイオン二次電池の電池特性は、用いられる電極活物質などによって大きく変化する。現在実用化されている代表的なリチウムイオン二次電池では、正極活物質としてコバルト酸リチウムが用いられ、負極活物質として黒鉛が用いられているが、このように構成されたリチウムイオン二次電池の電池容量は理論容量に近づいており、今後の改良で大幅に高容量化することは難しい。
そこで、充電の際にリチウムと合金化するケイ素やスズなどを負極活物質として用いて、リチウムイオン二次電池の大幅な高容量化を実現することが検討されている。ただし、ケイ素やスズなどを負極活物質として用いた場合、充電および放電に伴う膨張および収縮の度合いが大きいため、充放電に伴う膨張収縮によって活物質が微粉化したり、負極集電体から脱落したりして、充放電サイクル特性が低下するという問題がある。
従来、リチウムイオン二次電池などの負極としては、粒子状の活物質とバインダーとを含むスラリーを負極集電体に塗布した塗布型負極が用いられてきた。これに対し、近年、気相法、液相法、あるいは焼結法などにより、ケイ素などの負極活物質層を負極集電体に積層して形成した負極が提案されている(例えば、特開平8−50922号公報、特許第2948205号公報、および特開平11−135115号公報)。このようにすれば、負極活物質層と負極集電体とが一体化され、塗布型負極に比べて、充放電に伴う膨張収縮によって活物質が細分化されることを抑制でき、初回放電容量および充放電サイクル特性が向上するとされている。また、負極における電子伝導性が向上する効果も得られる。
しかしながら、上記のように活物質層と負極集電体とを一体化し、製造方法を工夫した負極においても、充放電を繰り返すと、負極活物質層の激しい膨張収縮によって界面に応力が加わり、負極活物質層が負極集電体から脱落するなどして、充放電サイクル特性が低下する。
そこで、後述の特許文献1には、リチウムを吸蔵・放出する活物質からなる薄膜が集電体上に設けられたリチウム電池用電極であって、前記薄膜がその厚み方向に形成された切れ目によって柱状に分離されており、かつ該柱状部分の底部が前記集電体と密着しており、この薄膜が非晶質シリコン薄膜または微結晶シリコン薄膜であるリチウム電池用電極が提案されている。
ここで、微結晶シリコン薄膜とは、ラマン分光分析において、結晶領域に対応する520cm-1近傍の散乱ピークと、非晶質領域に対応する480cm-1近傍の散乱ピークの両方が検出されるシリコン薄膜のことであり、また、非晶質シリコン薄膜とは、ラマン分光分析において、520cm-1近傍の散乱ピークが検出されず、480cm-1近傍の散乱ピークのみが検出されるシリコン薄膜のことであると説明されている。
そして、非晶質シリコン薄膜または微結晶シリコン薄膜を活物質とした電極、および微結晶シリコン薄膜を電極活物質とした電極は、多結晶シリコン薄膜を活物質とした電極に比べ高い初回放電容量を実現でき、5サイクル目においても良好な充放電効率を実現できる例が示されている。
特開2002−83594号公報(第27及び28頁、表6)
上述したように、特許文献1には、シリコンからなる活物質層を非晶質化することで、良好な初回放電容量及び充放電サイクル特性を実現できることは述べられているが、優れた初回放電容量及び充放電サイクル特性を実現できる非晶質シリコン層を、どのようにして形成するかという製造方法については、何も説明されていない。
一般的には、融解状態または成膜直後の非結晶状態から急冷することによって非晶質状態を得ることができると考えられる。しかし、真空蒸着法などによる成膜では、蒸着材料によって運ばれてくる熱、および蒸着源から輻射によって運ばれてくる熱の流入があり、常に所望の冷却速度を実現できるとは限らず、むしろ、実現できない場合の方が一般的である。従って、非晶質層からなる活物質層を有する電池用電極を製造する際に、温度制御手段などによって活物質層の非晶質化度を向上させる以外に、これと併用して活物質層に何らかの構造的乱れを形成することのできる手段があることが望ましい。
本発明はかかる実情に鑑みてなされたもので、その目的は、活物質層を非晶質状態で形成することによって、初回放電容量及び充放電サイクル特性が改善された、リチウムイオン二次電池などに好適な電池用電極を製造する方法、及びその製造に用いられる製造装置を提供することにある。
即ち、本発明は、集電体の表面に活物質層が設けられている電池用電極の製造方法において、
活物質材料を前記集電体上に堆積させて前記活物質層を形成する際に、可動体の運動 によって前記活物質材料の流れを乱す
ことを特徴とする、電池用電極の製造方法に係るものである。
また、集電体の表面に活物質層が設けられている電池用電極を製造する電池用電極の製造装置において、
活物質材料を前記集電体上に堆積させて前記活物質層を形成する際に、可動体の運動 によって前記活物質材料の流れを乱す手段を備えている
ことを特徴とする、電池用電極の製造装置に係るものである。
本発明の電池用電極の製造方法は、集電体の表面に活物質層が設けられている電池用電極の製造方法であって、
活物質材料を前記集電体上に堆積させて前記活物質層を形成する際に、可動体によっ て前記活物質材料の流れを乱す
ことを特徴とする。
前記活物質材料の流れは、前記可動体との衝突などによって流れる方向が変化し、前記集電体上に堆積する位置が変化したり、前記集電体上に堆積できなくなったりする。このため、前記集電体上の活物質層形成領域のうち、前記可動体によって前記活物質材料の流入速度が減少する領域では、前記可動体の影響を受けない領域に比べて成膜速度が遅くなる。また、前記可動体によって前記活物質材料の流入速度が増加する領域では、前記可動体の影響を受けない領域に比べて成膜速度が速くなる。しかも、これらの成膜速度が増減する領域は、前記可動体の運動につれて移動する。この結果、前記活物質層の成膜速度および成長方向は、前記集電体の面方向における位置の違いによって変化するばかりでなく、時間的にも変化するため、前記活物質層の厚さ方向の位置の違いによっても変化する。この結果、本発明の電池用電極の製造方法によれば、不均一性が大きく、構造的乱れの大きい前記活物質層を形成することができ、初回放電容量及び充放電サイクル特性が改善された電池用電極を製造することができる。
また、本発明の電池用電極の製造装置は、集電体の表面に活物質層が設けられている電池用電極を製造する電池用電極の製造装置であって、
活物質材料を前記集電体上に堆積させて前記活物質層を形成する際に、可動体の運動 によって前記活物質材料の流れを乱す手段を備えている
ことを特徴とする。従って、本発明の電池用電極の製造方法を確実に実行できる電池用電極の製造装置である。
本発明の電池用電極の製造方法において、前記活物質層を気相成膜法によって形成し、活物質材料源が存在している領域と前記集電体とを結ぶ空間領域において前記可動体を動かし、この運動によって前記活物質材料源から前記集電体へ向かう前記活物質材料の流れを乱し、不均一性の大きい前記活物質層を形成するのがよい。
この際、前記可動体として棒状、線状、又は網状の可動体を用い、この可動体を、前記空間領域における前記活物質材料の流れを横切るように動かすのがよい。このようにすれば、最も効率よく前記活物質材料の流れを乱し、不均一性の大きい前記活物質層を形成することができる。
前記気相成膜法として真空蒸着法を用いるのがよい。真空蒸着法は成膜速度が速いので、生産性よく前記電池用電極を形成することができる。
また、前記集電体として長尺形状の集電体を用い、前記長尺形状の集電体を長尺方向に走行させながら前記活物質層を形成するのがよい。本発明は、前記集電体を固定して成膜する場合に適用してもよいが、前記集電体を走行させながら連続的に成膜する方が、生産性よく前記電池用電極を製造することができる。また、例えば、真空蒸着法で成膜すると、活物質材料粒子によって運ばれてくる熱、および蒸着源2から輻射によって運ばれてくる熱の流入があり、これら成膜時の熱で集電体22が劣化したり、活物質層の非晶質度が低下したりするおそれがある。走行成膜では、成膜時の熱の流入は前記集電体が前記活物質層形成領域を通過している間に限られ、この領域を通過後、冷却手段によって前記集電体を急冷することにより、成膜時に流入してくる熱の影響を最小限に抑えることができる。その結果、前記集電体の激しい熱負荷に起因する前記集電体の著しい変形や溶断、および充放電サイクル性能の劣化を抑えることができる。
また、前記活物質層の厚さが所定の膜厚に達するまで、断続的に繰り返して成膜を行うのがよい。例えば、真空蒸着法で成膜すると、活物質材料粒子によって運ばれてくる熱、および蒸着源2から輻射によって運ばれてくる熱の流入があり、これら成膜時の熱で集電体12が劣化したり、活物質層の非晶質度が低下したりするおそれがある。複数回に分けて断続的に繰り返して成膜すれば、成膜を中断している間に放熱することができ、成膜時に流入してくる熱の影響を小さく抑えることができる。その結果、前記集電体の激しい熱負荷に起因する前記集電体の著しい変形や溶断、および充放電サイクル性能の劣化を抑えることができる。
また、前記集電体の両面に前記活物質層を形成するのがよい。両面に前記活物質層を形成した場合、片面にのみ形成する場合に比べて充放電容量を大きくすることができる。また、片面にのみ前記活物質層を形成した場合、前記活物質層の形成や、充放電による前記活物質層の膨張圧縮で、前記電池用電極が変形するおそれが大きくなる。これに対し、両面に前記活物質層を形成した場合、両面側で同じように前記活物質層の形成や前記活物質層の膨張圧縮が起こるため、これによる応力が釣り合って、前記電池用電極の変形が起こりにくくなる。
また、前記集電体として銅を含有する材料を用いるのがよく、また、ケイ素を含有する活物質材料を用いて、ケイ素を含有する前記活物質層を形成するのがよい。
また、前記活物質層を形成する際の雰囲気中に存在する酸素含有成分によって、成膜中、又は成膜中断中、又は成膜終了後に前記活物質層を酸化することによって、前記活物質層の少なくとも表面に活物質の酸化物を含有する層を形成するのがよい。
また、リチウムイオン二次電池などの二次電池の電池用電極を製造するのに用いられるのがよい。
本発明の電池用電極の製造装置は、
前記活物質層を気相成膜法によって形成する手段と、
活物質材料源が存在している領域と前記集電体とを結ぶ空間領域において前記可動体 を動かし、この運動によって前記活物質材料源から前記集電体へ向かう前記活物質材料 の流れを乱す手段と
を有するのがよい。
上記の装置は、前記可動体として棒状、線状、又は網状の可動体を備え、この可動体を、前記空間領域における前記活物質材料の流れを横切るように動かす手段を有するのがよい。
また、上記の装置は、前記気相成膜法として真空蒸着法を用いる真空蒸着装置であるのがよい。
また、長尺形状の集電体を長尺方向に走行させる手段を有し、前記長尺形状の集電体を長尺方向に走行させながら前記活物質層を形成できるように構成されているのがよい。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
実施の形態1
実施の形態1では、主として、本発明の請求項1〜3に記載した電池用電極の製造方法、および請求項10〜12に記載した電池用電極の製造装置に関わる例について説明する。
図1(a)は、実施の形態1に基づく電極製造装置10の構成を示す概略図である。この電極製造装置10は真空蒸着装置であり、真空チャンバー1、蒸着源2、遮蔽板3、シャッタ4、真空排気装置5、および集電体保持具11を備えている。
真空チャンバー1は、遮蔽板3によって蒸着源設置室1aと集電体設置室1bとに仕切られている。蒸着源設置室1aには、蒸着源2が設置され、集電体設置室1bには、蒸着源2の上方に集電体保持具11に保持された集電体12が設置されている。蒸着源2は、電子銃6、るつぼ7、ハースライナ8、および活物質材料9によって構成され、電子銃6は、電子ビームを活物質材料9に照射して加熱し、活物質材料9を蒸発させる機能を有する。また、るつぼ7内には、カーボンを母材とするハースライナ8を介して活物質材料9が設置されている。
遮蔽板3は、蒸着源2から飛来する活物質材料粒子が集電体12以外に付着したり、蒸着源2から放射される輻射熱が集電体12以外に伝わったりするのを防ぐためのものである。遮蔽板3の中央部には開口部が設けられ、これと折り返し部3aとによって蒸着領域Aが設定されている。蒸着領域Aにおける活物質材料粒子の流れは、シャッタ4によって遮断することができる。真空排気装置5は、チャンバー1内の圧力を所定の圧力以下に排気できるように構成されている。
集電体保持具11の、蒸着源2に対向する表面(集電体保持面)は平坦に成形され、集電体12と密着した状態で集電体12を保持できるように構成されている。また、集電体保持具11は、内部に冷却水を通じることによって、集電体12を水冷できるように構成されている。
電極製造装置10は、上記の従来の電極形成装置と同様の部材に加えて、本発明の電池用電極の製造装置の特徴として、前記可動体である棒状可動体13およびその支持体14を蒸着源設置室1aに備えている。棒状可動体13は、例えば、外径10mm程度のアルミニウム棒で、軽量化のために中空であるのが望ましい。前記可動体の形状は、活物質材料粒子の流れに影響を与え得るものであればよく、とくに限定されるものではない。例えば、棒状可動体13以外に、後に実施の形態2で説明する平織りの網状体15や、複数本の細い棒を一定間隔で横に並べたものであってよい。支持体14は、(図示省略した)駆動手段に連結されており、円弧を描くように棒状可動体13を首振り運動させるための回転軸を兼ねている。
図1(b)は、棒状可動体13の運動領域を示す平面図である(ただし、図1(b)は、図1(a)に比べて少し拡大して示されている。)。図1(a)および(b)に示すように、棒状可動体13は、蒸着源2と集電体12とを結ぶ空間領域、すなわち、集電体12に堆積する活物質材料粒子が蒸着源2から飛来してくる領域Bにおいて、活物質材料粒子の流れを横切るように運動するように構成されている。
活物質材料粒子の流れは、棒状可動体13に衝突すると飛行方向が変化し、集電体12上に堆積する位置が変化したり、集電体12上に堆積できなくなったりする。このため、集電体12上の活物質層形成位置のうち、棒状可動体13の影に入る領域では、影に入らない領域に比べて成膜速度が遅くなる。しかも、棒状可動体13の影に入る領域は、棒状可動体13の運動につれて移動する。この結果、活物質層の成膜速度および成長方向は、集電体12の面方向における位置によって変化するばかりでなく、活物質層の厚さ方向の位置によっても変化し、不均一性が大きく、構造的乱れの大きい活物質層が形成される。
電極製造装置10を用いて、電池用電極を作製するには、まず、集電体12を集電体保持具11の集電体保持面に固定する。次に、真空チャンバー1内を真空排気装置5によって排気する。真空チャンバー1内の圧力が所定の圧力以下になったら、シャッタ4を閉じた状態で、電子銃6から活物質材料9に電子ビームを照射し、活物質材料9を加熱する。排気および活物質材料9の加熱に要する時間を短縮するために、真空チャンバー1内の真空度の上昇に合わせて、電子ビームによる活物質材料9の加熱を徐々に進めてもよい。
活物質材料9が所定の溶融状態に達したら、シャッタ4を開き、棒状可動体13を首振り運動させながら、蒸着源2から飛来する活物質材料粒子を集電体12の活物質層形成位置に堆積させ、活物質層を形成する。この際、棒状可動体13を首振り運動させ、蒸着源2から飛来する活物質材料粒子の流を乱し、集電体22の活物質層形成領域における成膜速度をばらつかせ、不均一性が大きく、構造的乱れの大きい活物質層を形成する。
また、集電体保持具11の内部に冷却水を通じることによって、集電体保持具11を介して集電体12を水冷するのがよい。真空蒸着法による成膜では、活物質材料粒子によって運ばれてくる熱、および蒸着源2から輻射によって運ばれてくる熱の流入があり、これら成膜時の熱で集電体12が劣化したり、活物質層の非晶質度が低下したりするおそれがある。水冷することにより、成膜時に流入してくる熱の影響を小さく抑えることができる。
また、活物質層の厚さが所定の膜厚に達するまで、活物質層の形成を、シャッタ4の開閉によって複数回に分けて断続的に繰り返して行うようにするのがよい。複数回に分けて断続的に繰り返して成膜すれば、成膜を中断している間に放熱することができ、成膜時に流入してくる熱の影響を小さく抑えることができる。
実施の形態2
実施の形態2では、主として、本発明の請求項4に記載した電池用電極の製造方法、および請求項14に記載した電池用電極の製造装置に関わる例について説明する。
図2(a)は、実施の形態2に基づく電極製造装置20の構成を示す概略図である。この電極製造装置20は、電極製造装置10と同様、真空蒸着装置であり、真空チャンバー1、蒸着源2、遮蔽板3、シャッタ4、真空排気装置5、および集電体保持具11を備えている。
電極製造装置20が電極製造装置10と異なっている点は、長尺形状(帯状)の集電体22を長尺方向に走行させながら活物質層を連続成膜する手段として、円形キャンロール21、2つの巻き取りローラー23および26、そして2つのガイドローラー24および25を備えていることである。また、前記可動体として棒状可動体13の代わりに網状可動体15を備えている。その他は電極製造装置10と同様であるので、以下、相違点に重点をおいて説明する。
円形キャンロール21は、蒸着領域Aにおいて集電体22を支持する支持体として、集電体保持具11の代わりに用いられる成膜ロールである。円形キャンロール21、ガイドローラー24および25、並びに巻き取りローラー23および26の一部または全部は、内部に冷却水を通すことにより、集電体22を水冷できるように構成されているのがよい。
電極製造装置20は、電極製造装置10と同様、本発明の電池用電極の製造装置の特徴として、前記可動体を蒸着源設置室1aに備えている。前記可動体は、図1に示した棒状可動体13であってもよいが、ここではより効果の高い可動体として網状可動体15の例を示す。
図2(b)は、網状可動体15の形状を示す平面図である(ただし、図2(b)は、図2(a)に比べて少し拡大して示されている。)。網状可動体15は、例えば、縦横比が1:5の長方形の形状をもつステンレス製平織り金網である。この金網を構成する線材の外径は、例えば1mmで、線材間の空孔領域の孔径は例えば5メッシュであり、網面における空孔率(網面の全面積に対する空孔領域の面積の割合)は例えば65%である。
網状可動体15は剛性が不足する場合があるので、広い面で支持するために、支持板16を介して支持体17に結合するのがよい。支持体17は、支持体14と同様、(図示省略した)駆動手段に連結されており、円弧を描くように網状可動体15を首振り運動させるための回転軸を兼ねている。
図2(a)および(b)に示すように、網状可動体15は、蒸着源2と集電体22とを結ぶ空間領域、すなわち、集電体22に堆積する活物質材料粒子が蒸着源2から飛来してくる領域Bにおいて、活物質材料粒子の流れを横切るように運動するように構成されている。
活物質材料粒子の流れは、網状可動体15に衝突すると飛行する方向が変化し、集電体22上に堆積する位置が変化したり、集電体22上に堆積できなくなったりする。このため、集電体22上の活物質層形成位置のうち、網状可動体15が作る影に入る領域では、影に入らない領域に比べて成膜速度が遅くなる。しかも、網状可動体15の影に入り成膜速度の遅い領域は、網状可動体15の運動につれて移動する。この結果、活物質層の成膜速度および成長方向は、集電体22の面方向における位置によって変化するばかりでなく、活物質層の厚さ方向の位置によっても変化する。この際、網状可動体15は、棒状可動体13に比べてより細かいパターンの影を形成することができ、より不均一性が大きく、構造的乱れの大きい活物質層を形成することができる。
電極製造装置20を用いて電池用電極を形成するには、まず、電解銅箔などからなる帯状の集電体22を円形キャンロール21、ガイドローラー24および25、そして巻き取りローラー23および26の外周面に渡して配置する。この際、集電体22は、一方の端部を残して、他はすべて、例えば巻き取りローラー23に巻き取っておく。
次に、真空チャンバー1内を真空排気装置5によって排気する。真空チャンバー1内の圧力が所定の圧力以下になったら、シャッタ4を閉じた状態で、電子銃6から活物質材料9に電子ビームを照射し、活物質材料9を加熱する。排気および活物質材料9の加熱に要する時間を短縮するために、真空チャンバー1内の真空度の上昇に合わせて、電子ビームによる活物質材料9の加熱を徐々に進めてもよい。
活物質材料9が所定の溶融状態に達したら、シャッタ4を開き、巻き取りローラー23から集電体22を引き出し、集電体22を走行させながら、蒸着領域Aに位置する集電体22の活物質層形成領域に活物質層を形成する。この際、網状可動体15を首振り運動させ、蒸着源2から飛来してくる活物質材料粒子の流を乱し、集電体22の活物質層形成領域における成膜速度を不均一化し、不均一性の大きい活物質層を形成する。
集電体22の上には、蒸着領域Aにおいて活物質層が形成される一方、蒸着領域A以外の領域では蒸着材料の堆積はなく、蒸着源2からの輻射熱も遮断される。そして、集電体22を円形キャンロール21やガイドローラー25を介して水冷するようにすれば、蒸着領域Aにおいて上昇した集電体22の温度をすみやかに低下させることができ、成膜時の熱による集電体22の劣化を最小限に抑えつつ、活物質層を急冷して、より効果的に活物質層を非晶質化することができる。
このようにして、巻き取りローラー23に巻き取られていた集電体22をすべて引き出し、蒸着領域Aを通過させた後、巻き取りローラー26に巻き取ると、帯状の集電体22の一方の面の全領域に活物質層が形成される。
上記のように、前記集電体として長尺形状の集電体22を用い、集電体22を長尺方向に走行させながら連続的に活物質層を形成するのがよい。このようにすれば、生産性よく活物質層を形成し、電池用電極を製造することができる。また、走行成膜では、成膜時の熱の流入は集電体22が蒸着領域A前記活物質層形成領域を通過している間に限られ、この領域を通過後、冷却手段によって集電体22を急冷することにより、成膜時に流入してくる熱の影響を最小限に抑えることができる。その結果、集電体22の熱負荷に起因する劣化や、活物質層の非晶質度の低下を抑えることができる。
また、帯状の集電体22の一方の面に活物質層を形成した後、集電体22を裏返し、再び集電体22を長尺方向に走行させながら活物質層を成膜すると、集電体22の両面に活物質層を形成することができる。両面に活物質層を形成した場合、片面にのみ形成する場合に比べて充放電容量を大きくすることができる。また、片面にのみ活物質層を形成した場合、活物質層の形成や、充放電による活物質層の膨張圧縮で、電池用電極が変形するおそれが大きくなる。これに対し、両面に活物質層を形成した場合、両面側で同じように活物質層の形成や活物質層の膨張圧縮が起こるため、これによる応力が釣り合って、電池用電極の変形が起こりにくくなる。
また、活物質層の厚さが所定の膜厚に達するまで、活物質層の形成を、複数回の走行成膜に分けて行うようにするのがよい。このようにすれば、1回の走行で形成する活物質層の厚さを薄くすることができ、成膜時に流入してくる熱の影響を小さく抑え、集電体22の熱負荷に起因する劣化や、活物質層の非晶質度の低下を抑えることができる。
実施の形態3
図3は、本発明の実施の形態3に基づくリチウムイオン二次電池30の構成を示す断面図である。二次電池30は、いわゆるコイン型といわれているものであり、外装カップ34に収容された負極31と、外装缶35に収容された正極32とが、セパレータ33を介して積層されている。外装カップ34および外装缶35の周縁部は絶縁性のガスケット36を介してかしめることにより密閉されている。外装カップ34および外装缶35は、それぞれ、例えば、ステンレスあるいはアルミニウム(Al)などの金属によって構成されている。
以下、リチウムイオン二次電池30について詳述する。
負極31は、負極集電体31aと、負極集電体31aに設けられた負極活物質層31bとによって構成されている。
負極集電体31aは、リチウム(Li)と金属間化合物を形成しない金属材料によって形成されているのがよい。負極集電体31aがリチウムと金属間化合物を形成する材料であると、充放電に伴うリチウムとの反応によって負極集電体31aが膨張収縮する。この結果、負極集電体31aの構造破壊が起こって集電性が低下する。また、負極活物質層31bを保持する能力が低下して、負極活物質層31bが負極集電体31aから脱落しやすくなる。
リチウムと金属間化合物を形成しない金属元素としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、あるいはクロム(Cr)などが挙げられる。なお、本明細書において、金属材料とは、金属元素の単体だけではなく、2種以上の金属元素、あるいは1種以上の金属元素と1種以上の類金属元素(半金属元素)とからなる合金も含むものとする。
また、負極集電体31aは、負極活物質層31bと合金化する金属元素を含む金属材料によって構成されているのがよい。このようであれば、合金化によって負極活物質層31bと負極集電体31aとの密着性が向上し、充放電に伴う膨張収縮によって負極活物質が細分化されることが抑制され、負極集電体31aから負極活物質層31bが脱落するのが抑えられるからである。また、負極における電子伝導性を向上させる効果も得られる。
負極集電体31aは、単層であってもよいが、複数層によって構成されていてもよい。複数層からなる場合、負極活物質層31bと接する層がケイ素と合金化する金属材料からなり、他の層がリチウムと金属間化合物を形成しない金属材料からなるのがよい。
負極集電体31aの、負極活物質層31bが設けられる面は、粗化されていることが好ましく、例えば、負極集電体31aの表面粗度Ra値が0.1μm以上であるのがよい。このようであれば、負極活物質層31bと負極集電体31aとの密着性が向上するからである。一方、Ra値は3.5μm以下、より好ましくは3.0μm以下であるのがよい。表面粗度が大きすぎると、負極活物質層31bの膨張に伴って負極集電体31aに亀裂が生じやすくなるおそれがあるからである。なお、表面粗度Ra値は、JIS B0601に規定される算術平均粗さRaのことである。負極集電体31aのうち、負極活物質層31bが設けられている領域の表面粗度Raが上記の範囲内であればよい。
負極活物質層31b中に、負極活物質としてケイ素が含まれているのがよい。ケイ素はリチウムイオンを合金化して取り込む能力、および合金化したリチウムをリチウムイオンとして再放出する能力に優れ、リチウムイオン二次電池を構成した場合、大きなエネルギー密度を実現することができる。ケイ素は、単体で含まれていても、合金で含まれていても、化合物で含まれていてもよく、それらの2種以上が混在した状態で含まれていてもよい。
負極活物質層31bは、厚さが5〜6μm程度の薄膜型である。この際、ケイ素の単体の一部又は全部が、負極31を構成する負極集電体31aと合金化しているのがよい。既述したように、負極活物質層31bと負極集電体31aとの密着性を向上させることができるからである。具体的には、界面において負極集電体31aの構成元素が負極活物質層31bに、または負極活物質層31bの構成元素が負極集電体31aに、またはそれらが互いに拡散していることが好ましい。充放電により負極活物質層31bが膨張収縮しても、負極集電体31aからの脱落が抑制されるからである。なお、本願では、上述した元素の拡散も合金化の一形態に含めるものとする。
リチウムと金属間化合物を形成せず、負極活物質層31b中のケイ素と合金化する金属元素として、銅、ニッケル、および鉄が挙げられる。中でも、銅を材料とすれば、十分な強度と導電性とを有する負極集電体31aが得られるので、特に好ましい。
また、負極活物質層31bを構成する元素として、酸素が含まれているのがよい。酸素は負極活物質層31bの膨張および収縮を抑制し、放電容量の低下および膨れを抑制することができるからである。負極活物質層31bに含まれる酸素の少なくとも一部は、ケイ素と結合していることが好ましく、結合の状態は一酸化ケイ素でも二酸化ケイ素でも、あるいはそれら以外の準安定状態でもよい。
負極活物質層31bにおける酸素の含有量は、3原子数%以上、45原子数%以下の範囲内であることが好ましい。酸素含有量が3原子数%よりも少ないと十分な酸素含有効果を得ることができない。また、酸素含有量が45原子数%よりも多いと電池のエネルギー容量が低下してしまう他、負極活物質層31bの抵抗値が増大し、局所的なリチウムの挿入により膨れたり、サイクル特性が低下してしまうと考えられるからである。なお、充放電により電解液などが分解して負極活物質層31bの表面に形成される被膜は、負極活物質層31bには含めない。よって、負極活物質層31bにおける酸素含有量とは、この被膜を含めないで算出した数値である。
また、負極活物質層31bは、酸素の含有量が少ない第1層と、酸素の含有量が第1層よりも多い第2層とが交互に積層されていることが好ましく、第2層は少なくとも第1層の間に1層以上存在することが好ましい。この場合、充放電に伴う膨張および収縮を、より効果的に抑制することができるからである。例えば、第1層におけるケイ素の含有量は90原子数%以上であることが好ましく、酸素は含まれていても含まれていなくてもよいが、酸素含有量は少ない方が好ましく、全く酸素が含まれないか、または、酸素含有量が微量であるのがより好ましい。この場合、より高い放電容量を得ることができるからである。一方、第2層におけるケイ素の含有量は90原子数%以下、酸素の含有量は10原子数%以上であることが好ましい。この場合、膨張および収縮による構造破壊をより効果的に抑制することができるからである。第1層と第2層とは、負極集電体31aの側から、第1層、第2層の順で積層されていてもよいが、第2層、第1層の順で積層されていてもよく、表面は第1層でも第2層でもよい。また、酸素の含有量は、第1層と第2層との間において段階的あるいは連続的に変化していることが好ましい。酸素の含有量が急激に変化すると、リチウムイオンの拡散性が低下し、抵抗が上昇する場合があるからである。
なお、負極活物質層31bは、ケイ素および酸素以外の他の1種以上の構成元素を含んでいてもよい。他の元素としては、例えば、コバルト(Co)、鉄(Fe)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、あるいはクロム(Cr)が挙げられる。
正極32は、例えば、正極集電体32aと、正極集電体32aに設けられた正極活物質層32bとによって構成されている。
正極集電体32aは、例えば、アルミニウム、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によって構成されているのがよい。
正極活物質層32bは、例えば、正極活物質として、充電時にリチウムイオンを放出することができ、かつ放電時にリチウムイオンを再吸蔵することができる材料を1種以上含んでおり、必要に応じて、炭素材料などの導電材およびポリフッ化ビニリデンなどの結着材(バインダー)を含んでいるのがよい。
リチウムイオンを放出および再吸蔵することが可能な材料としては、例えば、一般式LixMO2で表される、リチウムと遷移金属元素Mからなるリチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。これは、リチウム遷移金属複合酸化物は、リチウムイオン二次電池を構成した場合、高い起電力を発生可能であると共に、高密度であるため、二次電池の更なる高容量化を実現することができるからである。なお、Mは1種類以上の遷移金属元素であり、例えば、コバルトおよびニッケルのうちの少なくとも一方であるのが好ましい。xは電池の充電状態(放電状態)によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10の範囲内の値である。このようなリチウム遷移金属複合酸化物の具体例としては、LiCoO2あるいはLiNiO2などが挙げられる。
なお、正極活物質として、粒子状のリチウム遷移金属複合酸化物を用いる場合には、その粉末をそのまま用いてもよいが、粒子状のリチウム遷移金属複合酸化物の少なくとも一部に、このリチウム遷移金属複合酸化物とは組成が異なる酸化物、ハロゲン化物、リン酸塩、硫酸塩からなる群のうちの少なくとも1種を含む表面層を設けるようにしてもよい。安定性を向上させることができ、放電容量の低下をより抑制することができるからである。この場合、表面層の構成元素と、リチウム遷移金属複合酸化物の構成元素とは、互いに拡散していてもよい。
また、正極活物質層32bは、長周期型周期表における2族元素、3族元素または4族元素の単体および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含有することが好ましい。安定性を向上させることができ、放電容量の低下をより抑制することができるからである。2族元素としてはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)あるいはストロンチウム(Sr)などが挙げられ、中でもマグネシウムが好ましい。3族元素としてはスカンジウム(Sc)あるいはイットリウム(Y)などが挙げられ、中でもイットリウムが好ましい。4族元素としてはチタンあるいはジルコニウム(Zr)が挙げられ、中でもジルコニウムが好ましい。これらの元素は、正極活物質中に固溶していてもよく、また、正極活物質の粒界に単体あるいは化合物として存在していてもよい。
セパレータ33は、負極31と正極32とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータ33の材料としては、例えば、微小な空孔が多数形成された微多孔性のポリエチレンやポリプロピレンなどの薄膜がよい。
セパレータ33には、液状の電解質である電解液が含浸されている。電解液は、例えば、溶媒と、この溶媒に溶解した電解質塩とで構成され、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。
電解液の溶媒としては、例えば、1,3−ジオキソラン−2−オン(炭酸エチレン;EC)や4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(炭酸プロピレン;PC)などの環状炭酸エステル、および、ジメチルカーボネート(炭酸ジメチル;DMC)やジエチルカーボネート(炭酸ジエチル;DEC)やエチルメチルカーボネート(炭酸エチルメチル;EMC)などの鎖状炭酸エステルなど、非水溶媒が挙げられる。溶媒はいずれか1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いるのがよい。例えば、炭酸エチレンや炭酸プロピレンなどの高誘電率溶媒と、炭酸ジメチルや炭酸ジエチルや炭酸エチルメチルなどの低粘度溶媒とを混合して用いることにより、電解質塩に対する高い溶解性と、高いイオン伝導度とを実現することができる。
また、溶媒はスルトンを含有していてもよい。電解液の安定性が向上し、分解反応などによる電池の膨れを抑制することができるからである。スルトンとしては、環内に不飽和結合を有するものが好ましく、特に、化1に示した1,3−プロペンスルトンが好ましい。より高い効果を得ることができるからである。
Figure 2008130427
また、溶媒には、1,3−ジオキソール−2−オン(炭酸ビニレン;VC)あるいは4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン(ビニルエチレンカーボネート;VEC)などの不飽和結合を有する環式炭酸エステルを混合して用いることが好ましい。放電容量の低下をより抑制することができるからである。特に、VCとVECとを共に用いるようにすれば、より高い効果を得ることができるので好ましい。
更に、溶媒には、ハロゲン原子を有する炭酸エステル誘導体を混合して用いるようにしてもよい。放電容量の低下を抑制することができるからである。この場合、不飽和結合を有する環式炭酸エステルと共に混合して用いるようにすればより好ましい。より高い効果を得ることができるからである。ハロゲン原子を有する炭酸エステル誘導体は、環式化合物でも鎖式化合物でもよいが、環式化合物の方がより高い効果を得ることができるので好ましい。このような環式化合物としては、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(フルオロエチレンカーボネート;FEC)、4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ブロモ−1,3−ジオキソラン−2−オン、あるいは4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(ジフルオロエチレンカーボネート;DFEC)などが挙げられ、中でもフッ素原子を有するDFECやFEC、特にDFECが好ましい。より高い効果を得ることができるからである。
電解液の電解質塩としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)やテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)などのリチウム塩が挙げられる。電解質塩は、いずれか1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、電解液はそのまま用いてもよいが、高分子化合物に保持させていわゆるゲル状の電解質としてもよい。その場合、電解質はセパレータ3に含浸されていてもよく、また、セパレータ3と負極1または正極2との間に層状に存在していてもよい。高分子材料としては、例えば、フッ化ビニリデンを含む重合体が好ましい。酸化還元安定性が高いからである。また、高分子化合物としては、重合性化合物が重合されることにより形成されたものも好ましい。重合性化合物としては、例えば、アクリル酸エステルなどの単官能アクリレート、メタクリル酸エステルなどの単官能メタクリレート、ジアクリル酸エステル、あるいはトリアクリル酸エステルなどの多官能アクリレート、ジメタクリル酸エステルあるいはトリメタクリル酸エステルなどの多官能メタクリレート、アクリロニトリル、またはメタクリロニトリルなどがあり、中でも、アクリレート基あるいはメタクリレート基を有するエステルが好ましい。重合が進行しやすく、重合性化合物の反応率が高いからである。
リチウムイオン二次電池30は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、図1に示した電極製造装置10などを用いて、前述したように集電体12に活物質層を形成した後、所定の形状に裁断して負極31を作製する。
負極活物質層31bに酸素を含有させる場合、酸素の含有量は、例えば、負極活物質層31bを形成する際の雰囲気中に酸素を含有させたり、焼成時あるいは熱処理時の雰囲気中に酸素を含有させたり、または用いる負極活物質粒子の酸素含有量により調節する。
また、前述したように、酸素の含有量が少ない第1層と、酸素の含有量が第1層よりも多い第2層とを交互に積層して負極活物質層31bを形成する場合には、雰囲気中における酸素濃度を変化させることにより調節するようにしてもよく、また、第1層を形成したのち、その表面を酸化させることにより第2層を形成するようにしてもよい。
なお、負極活物質層31bを形成したのちに、真空雰囲気下または非酸化性雰囲気下で熱処理を行い、負極集電体31aと負極活物質層31bとの界面をより合金化させるようにしてもよい。
次に、正極集電体32aに正極活物質層32bを形成する。例えば、正極活物質と、必要に応じて導電材および結着剤(バインダー)とを混合して合剤を調製し、これをNMPなどの分散媒に分散させてスラリー状にして、この合剤スラリーを正極集電体32aに塗布した後、圧縮成型することにより正極32を形成する。
次に、負極31とセパレータ33と正極32とを積層して配置し、外装カップ34と外装缶35との中に入れ、電解液を注入し、それらをかしめることによってリチウムイオン二次電池30を組み立てる。この際、負極31と正極32とは、負極活物質層31bと正極活物質層32bとが対向するように配置する。
組み立て後、リチウムイオン二次電池30を充電すると、正極32からリチウムイオンが放出され、電解液を介して負極31側へ移動し、負極31において還元され、生じたリチウムは負極活物質と合金を形成し、負極31に取り込まれる。放電を行うと、負極31に取り込まれていたリチウムがリチウムイオンとして再放出され、電解液を介して正極32側へ移動し、正極32に再び吸蔵される。
図4は、本発明の実施の形態3に基づくリチウムイオン二次電池の別の構成を示す斜視図(a)および断面図(b)である。図4に示すように、二次電池40は角型の電池であり、電極巻回体46が電池缶47の内部に収容され、電解液が電池缶47に注入されている。電池缶47の開口部は、電池蓋48により封口されている。電極巻回体46は、帯状の負極41と帯状の正極42とをセパレータ(および電解質層)43を間に挟んで対向させ、長尺方向に巻回したものである。負極41から引き出された負極リード44は電池缶47に接続され、電池缶47が負極端子を兼ねている。正極42から引き出された正極リード45は正極端子49に接続されている。
電池缶47および電池蓋48の材料としては、鉄やアルミニウムなどを用いることができる。但し、アルミニウムからなる電池缶47および電池蓋48を用いる場合には、リチウムとアルミニウムとの反応を防止するために、正極リード45を電池缶47と溶接し、負極リード44を端子ピン49と接続する構造とする方が好ましい。
その他の詳細は、リチウムイオン二次電池30と同様である。リチウムイオン二次電池40は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、前述したと同様にして、負極41および正極42を作製する。次に、負極41と正極42とをセパレータ43を間に挟んで対向させ、長尺方向に巻き回すことにより、電極巻回体46を形成する。この際、負極41と正極42とは、負極活物質層と正極活物質層とが対向するように配置する。次に、この電極巻回体46を角型形状の電池缶47に挿入し、電池缶47の開口部に電池蓋48を溶接する。次に、電池蓋48に形成されている電解液注入口から電解液を注入した後、注入口を封止する。以上のようにして、角型形状のリチウムイオン二次電池40を組み立てる。
また、電解液を高分子化合物に保持させる場合には、ラミネートフィルムなどの外装材からなる容器に電解液とともに重合性化合物を注入し、容器内において重合性化合物を重合させることにより、電解質をゲル化する。また、電極の大きな膨張収縮に対応するために、容器として金属缶を用いてもよい。また、負極41と正極42とを巻回する前に、負極41または正極42に塗布法などによってゲル状電解質を被着させ、その後、セパレータ43を間に挟んで負極41と正極42とを巻回するようにしてもよい。
組み立て後、前述したように、リチウムイオン二次電池40を充電すると、正極42からリチウムイオンが放出され、電解液を介して負極41側へ移動し、負極41において還元され、生じたリチウムは負極活物質と合金を形成し、負極41に取り込まれる。放電を行うと、負極41に取り込まれていたリチウムがリチウムイオンとして再放出され、電解液を介して正極42側へ移動し、正極42に再び吸蔵される。
リチウムイオン二次電池30および40では、負極活物質層中に負極活物質としてケイ素の単体及びその化合物などが含まれているため、二次電池の高容量化が可能になる。しかも、本実施の形態の負極は、その製造方法に基づく前述した構造的特徴を有し、初回放電容量、及び容量維持率などの充放電サイクル特性が優れている。
以下、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。なお、以下の実施例の説明では、実施の形態において用いた符号および記号をそのまま対応させて用いる。
実施例1
実施例1では、図1(a)に示した電極製造装置10を用い、集電体12として電解銅箔を用い、活物質材料9としてケイ素の単体(シリコン)を用いて、真空蒸着法によって薄膜型の活物質層を集電体12上に形成し、電池用電極を作製した。この際、活物質層形成中に活物質材料粒子飛来領域Bにおいて、活物質材料粒子の流れを横切り、活物質材料粒子の流れを乱すように、棒状可動体13を首振り運動させた。実施例1−1〜1−3では、1秒間に首振り運動を行う回数を、それぞれ、2回、1回、0.5回に変化させた。このようにして得られた電池用電極を負極31として用いて、図3に示したコイン型のリチウムイオン二次電池30を作製し、容量維持率などの充放電サイクル特性を測定した。
<負極31の形成>
まず、電極製造装置10の真空チャンバー1内に、棒状可動体13として外径10mmの中空アルミニウム棒を、支持体14とともに配置した。そして、集電体12として、厚さ16μmの電解銅箔を、集電体保持具11の集電体保持面に密着させて保持した。また、蒸着源2のるつぼ7内に純度99%の結晶シリコンを配置した。
次に、実施の形態1に述べたようにして、偏向式電子ビーム蒸着源2を用いて、電解銅箔12上にシリコンを気相から堆積させ、活物質層として厚さ6μmのシリコン層を形成した。この際、活物質層形成中に、活物質材料粒子飛来領域Bにおいて、活物質材料粒子の流れを横切り、活物質材料粒子の流れを乱すように、棒状可動体13を首振り運動させた。
次に、真空チャンバー1内に大気を導入し、シリコン層が形成された電解銅箔12を取り出し、アルゴン雰囲気中で3時間、250℃で熱処理を行い、その後、所定の形状に裁断して、試験電極として負極31を形成した。
<リチウムイオン二次電池30の作製>
次に、正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)と、導電材であるカーボンブラックと、結着材であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを混合して合剤を調製し、この合剤を分散媒であるNMPに分散させてスラリー状とし、この合剤スラリーをアルミニウム箔からなる正極集電体32aに塗布し、分散媒を蒸発させ乾燥させた後、圧縮成型することにより、正極活物質層32bを形成した。その後、所定の形状に裁断して正極32を形成した。
次に、負極31とセパレータ33と正極32とを積層して配置し、外装カップ34と外装缶35との中に入れ、電解液を注入し、それらをかしめることによってリチウムイオン二次電池30を組み立てた。
セパレータ33として、微多孔性ポリエチレンを主成分とするフィルムを中心材とし、その両面を微多孔性ポリプロピレンを主成分とするフィルムで挟み込んだ構造の、厚さ23μmの多層セパレータを用いた。
電解液としては、炭酸エチレン(EC)と炭酸ビニレン(VC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:VC:DEC=35:5:60の質量比で混合した混合溶媒に、電解質塩としてヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を1mol/dm3の濃度で溶解させた溶液を用いた。
比較例1
比較例1では、実施例1に対する比較例として、可動体を用いず、他は実施例1と同様にして電池用電極を作製し、リチウムイオン二次電池30と同じ構造の電池を作製した。
実施例2
実施例2では、可動体として、棒状可動体13の代わりに網状可動体15を用いた。網状可動体15としては、縦30mm、横150mm(縦と横の長さの比が1:5)の長方形のステンレス製平織り金網を用いた。この金網を構成する線材の外径は1mmで、線材間の空孔領域の孔径は5メッシュであり、網面における空孔率(網面の全面積に対する空孔領域の面積の割合)は65%である。それ以外は実施例1と同様にして電池用電極を作製し、リチウムイオン二次電池30を作製した。
<リチウムイオン二次電池の評価>
作製した実施例1および2の二次電池30、並びに比較例1の二次電池について、サイクル試験を行い、容量維持率を測定した。このサイクル試験の1サイクルは、まず、1mA/cm2の定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで充電を行い、引き続き4.2Vの定電圧で電流密度が0.1mA/cm2になるまで充電を行う。次に、1mA/cm2の定電流で電池電圧が2.5Vになるまで放電を行うものである。この充放電サイクルを室温にて100サイクル行い、次式
100サイクル目の容量維持率(%)
=(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100(%)
で定義される、100サイクル目の容量維持率を調べた。結果を表1および2に示す。
Figure 2008130427
Figure 2008130427
表中、運動条件は、可動体13または15が、1秒間に首振り運動を行う回数である。表1および表2から、蒸着源2の活物質材料9と、集電体12との間に蒸着流を乱す可動体を導入したことによって、充放電サイクル特性が向上したことがわる。この理由として、活物質層の構造的な乱れが増加し、活物質層の密度が低下したために、充放電に伴う活物質層の大きな体積変化を緩和することができ、この結果、充放電サイクル特性が向上したものと考えられる。
実施例3
実施例3では、図2(a)に示した電極製造装置20を用い、集電体22として帯状の電解銅箔を用い、活物質材料9としてケイ素の単体(シリコン)を用いて、真空蒸着法によって薄膜型の活物質層を集電体22上に形成し、電池用電極を作製した。この際、活物質層形成中に、活物質材料粒子飛来領域Bにおいて活物質材料粒子の流れを横切り、活物質材料粒子の流れを乱すように、網状可動体15を首振り運動させた。実施例3−1〜3−3では、1秒間に首振り運動を行う回数を、それぞれ、2回、1回、0.5回に変化させた。このようにして得られた電池用電極を負極41として用いて、図4に示した角型のリチウムイオン二次電池40を作製し、容量維持率などの充放電サイクル特性を測定した。
<負極41の形成>
まず、図2に示した電極製造装置20の真空チャンバー1内に、網状可動体15として、実施例2で用いたステンレス製平織り金網を、支持板16および支持体17とともに配置した。そして、集電体22として、厚さ18μm、表面粗度A面Ra値0.3μm、B面Ra値0.4μmの帯状電解銅箔を、円形キャンロール21、ガイドローラー24および25、並びに巻き取りローラー23および26の外周面に渡して配置した。また、蒸着源2のるつぼ7内に、実施例1と同じ純度99%の結晶シリコンを配置した。
次に、実施の形態2に述べたようにして、集電体22を走行させながら、集電体22のA面上に気相からシリコンを堆積させ、活物質層として厚さ6μmのシリコン層を形成した。その後、集電体22を裏返して再セッティングし、B面上にも厚さ6μmのシリコン層を同様にして形成した。この活物質層形成中に、活物質材料粒子飛来領域Bにおいて、活物質材料粒子の流れを横切り、活物質材料粒子の流れを乱すように、網状可動体15を実施例1および2と同じ条件で首振り運動させた。このときの振れ角は90度であった。
次に、真空チャンバー1内に大気を導入し、シリコン層が形成された電解銅箔22を取り出し、アルゴン雰囲気中で3時間、250℃で熱処理を行い、その後、所定の形状に裁断し、負極リード44を取り付け、試験電極として負極41を形成した。
<リチウムイオン二次電池40の作製>
次に、正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)と、導電材であるカーボンブラックと、結着材であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを混合して合剤を調製し、この合剤を分散媒であるNMPに分散させてスラリー状とし、この合剤スラリーをアルミニウム箔からなる正極集電体に塗布し、分散媒を蒸発させ乾燥させた後、圧縮成型することにより、正極活物質層を形成した。その後、所定の形状に裁断し、正極リード45を取り付け、正極42を形成した。
次に、負極41と正極42とをセパレータ43を間に挟んで対向させ、巻き回し、電極回巻体46を作製した。セパレータ43として、微多孔性ポリエチレンを主成分とするフィルムを中心材とし、その両面を微多孔性ポリプロピレンを主成分とするフィルムで挟み込んだ構造の、厚さ23μmの多層セパレータを用いた。
次に、この電極巻回体46を角型形状の電池缶47に挿入し、電池缶47の開口部に電池蓋48を溶接する。次に、電池蓋48に形成されている電解液注入口から電解液を注入した後、注入口を封止して、リチウムイオン二次電池40を組み立てた。
電解液は、ECとVCとDECとを、EC:VC:DEC=35:5:60の質量比で混合した混合溶媒に、電解質塩としてLiPF6を1mol/dm3の濃度で溶解させた溶液を用いた。
比較例2
比較例2では、実施例3に対する比較例として、可動体を用いず、他は実施例3と同様にして電池用電極を作製し、リチウムイオン二次電池40と同じ構造の電池を作製した。
実施例4
実施例4では、実施例5と同様に、集電体22である帯状電解銅箔の両面に、それぞれ、活物質層として6μmのシリコン層を形成した。ただし、実施例5と異なり、活物質層を2回に分けて断続的に形成した。すなわち、まず、A面側に厚さ3μmのシリコン層を形成し、次に、集電体22である帯状電解銅箔を裏返して再セッティングし、B面側にも厚さ3μmのシリコン膜を形成した。その後、同様にして、再びA面側に厚さ3μmのシリコン層を形成し、続いて、裏返した集電体22のB面側にも厚さ3μmのシリコン層を形成した。それ以外は実施例3と同様にして電池用電極を作製し、リチウムイオン二次電池40を作製した。
なお、この電極断面をAES(Auger electron spectroscopy;オージェ電子分光法)分析によって解析したところ、活物質層であるシリコン層の表面が、真空チャンバー1内の残留酸素もしくは大気開放時の大気中酸素によって、バルク中のシリコン層よりも酸化されており、酸素含有量の異なるシリコン層が積層された構造となっていることを確認した。この電極の活物質層おける酸素含有量を酸素濃度計で分析した結果、活物質全体に対して7原子数%の酸素が存在することを確認した。
比較例3
比較例3では、実施例4に対する比較例として、可動体を用いず、他は実施例4と同様にして電池用電極を作製し、リチウムイオン二次電池40と同じ構造の電池を作製した。
実施例5
実施例5では、真空チャンバー1内に、4%の酸素を含んだアルゴンガスを流入させ、この状態で活物質層を形成した。これ以外は実施例4と同様にして、電池用電極を作製し、リチウムイオン二次電池40を作製した。
なお、この電極断面をAES分析にて解析したところ、シリコン上部層の表面および一旦成膜を止めたシリコン下部層の表面にあたる領域が、真空チャンバー1内へ流入させた酸素もしくは大気開放時の大気中酸素によって、バルク中のシリコン層よりも酸化されており、酸素含有量の異なるシリコン層が積層された構造となっていることを確認した。活物質層おける酸素含有量を酸素濃度計で分析した結果、活物質全体に対して11原子数%の酸素が存在することを確認した。
比較例4
比較例4では、実施例5に対する比較例として、可動体を用いず、他は実施例5と同様にして電池用電極を作製し、リチウムイオン二次電池40と同じ構造の電池を作製した。
<リチウムイオン二次電池の評価>
作製した実施例3〜5および比較例2〜4の二次電池について、サイクル試験を行い、容量維持率を測定した。このサイクル試験の1サイクルは、まず、3mA/cm2の定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで充電を行い、引き続き4.2Vの定電圧で電流密度が0.3mA/cm2になるまで充電を行う。次に、3mA/cm2の定電流で電池電圧が2.5Vになるまで放電を行うものである。この充放電サイクルを室温にて100サイクル行い、次式
100サイクル目の容量維持率(%)
=(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100(%)
で定義される、100サイクル目の容量維持率(%)を調べた。結果を表3〜5に示す。
Figure 2008130427
Figure 2008130427
Figure 2008130427
実施例3〜5および比較例2〜4の結果から、実際の商品に近い電池構造の試験電池においても、蒸着源2の活物質材料9と、集電体22との間に蒸着流を乱す可動体を導入し、本発明の特徴である可動体の効果を確認することができた。また、実施例3の活物質層である通常の単層シリコン膜でもその表面は酸化されているが、実施例4のように2層を積層し、活物質層内に実質的に帯状の酸素含有量の高いシリコン層を挿入することにより、さらに充放電サイクル特性を向上させることができた。また、実施例5のように成膜中に酸素含有ガスを真空チャンバー1内に導入し、シリコン層の酸化を促進させることによって、さらに充放電サイクル特性を向上させることができた。以上のように、蒸着流を乱す可動体を導入し、さらに活物質層内に酸素を含有させることによって、充放電時の体積変化が大きいケイ素を主体とした活物質層を有する二次電池であっても、高い充放電サイクル性能を実現させることが可能となった。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々に変形可能である。
例えば、上記の実施の形態および実施例では、真空蒸着法によって活物質層を形成する例を説明したが、活物質層の形成方法は特に限定されるものではなく、集電体の表面に活物質層を形成できる方法であれば何でもよい。例えば、気相法、焼成法あるいは液相法を挙げることができる。気相法としては、真空蒸着法の他に、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、CVD法(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長法)、あるいは溶射法などのいずれを用いてもよい。液相法としては、例えば鍍金が挙げられる。また、それらの2つ以上の方法、更には他の方法を組み合わせて負極活物質層を成膜するようにしてもよい。
本発明に係る電池用電極の製造方法、および電池用電極の製造装置は、ケイ素の単体などを負極活物質として用いて、大きなエネルギー容量と良好な充放電サイクル特性を有する二次電池を実現し、モバイル型電子機器の小型化、軽量化、および薄型化に寄与し、その利便性を向上させる。
本発明の実施の形態1に基づく電極製造装置の構成を示す概略図(a)、および棒状可動体の運動領域を示す平面図(b)である。 本発明の実施の形態2に基づく電極製造装置の構成を示す概略図(a)、および網状可動体の形状を示す平面図(b)である。 本発明の実施の形態3に基づくリチウムイオン二次電池の構成(コイン型)を示す断面図である。 同、リチウムイオン二次電池の別の構成(角型)を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
符号の説明
1…真空チャンバー、1a…蒸着源設置室、1b…集電体設置室、2…蒸着源、
3…遮蔽板、3a…折り返し部、4…シャッタ、5…真空排気装置、6…電子銃、
7…るつぼ、8…ハースライナ、9…活物質材料、10…電極形成装置、
11…集電体保持具、12…集電体、13…棒状可動体、14…支持体、
15…網状可動体、16…支持板、17…支持体、21…円形キャンロール、
22…集電体、23、26…巻き取りローラー、24、25…ガイドローラー、
30…リチウムイオン二次電池、31…負極、31a…負極集電体、
31b…負極活物質層、32…正極、32a…正極集電体、32b…正極活物質層、
33…セパレータ、34…コイン型外装カップ、35…外装缶、36…ガスケット、
40…リチウムイオン二次電池、41…負極、42…正極、43…セパレータ、
44…負極リード、45…正極リード、46…電極巻回体、47…電池缶、
48…電池蓋、49…正極端子、A…蒸着領域、B…活物質材料粒子飛来領域

Claims (16)

  1. 集電体の表面に活物質層が設けられている電池用電極の製造方法において、
    活物質材料を前記集電体上に堆積させて前記活物質層を形成する際に、可動体によっ て前記活物質材料の流れを乱す
    ことを特徴とする、電池用電極の製造方法。
  2. 前記活物質層を気相成膜法によって形成し、活物質材料源が存在している領域と前記集電体とを結ぶ空間領域において前記可動体を動かし、この運動によって前記活物質材料源から前記集電体へ向かう前記活物質材料の流れを乱す、請求項1に記載した電池用電極の製造方法。
  3. 前記可動体として棒状、線状、又は網状の可動体を用い、この可動体を、前記空間領域における前記活物質材料の流れを横切るように動かす、請求項2に記載した電池用電極の製造方法。
  4. 前記気相成膜法として真空蒸着法を用いる、請求項2に記載した電池用電極の製造方法。
  5. 前記集電体として長尺形状の集電体を用い、前記長尺形状の集電体を長尺方向に走行させながら前記活物質層を形成する、請求項1に記載した電池用電極の製造方法。
  6. 前記活物質層の厚さが所定の膜厚に達するまで、断続的に繰り返して成膜を行う、請求項1に記載した電池用電極の製造方法。
  7. 前記集電体の両面に前記活物質層を形成する、請求項1に記載した電池用電極の製造方法。
  8. 前記集電体として銅を含有する材料を用いる、請求項1に記載した電池用電極の製造方法。
  9. ケイ素を含有する活物質材料を用いて、ケイ素を含有する前記活物質層を形成する、請求項1に記載した電池用電極の製造方法。
  10. 前記活物質層を形成する際の雰囲気中に存在する酸素含有成分によって、成膜中、又は成膜中断中、又は成膜終了後に前記活物質層を酸化することによって、前記活物質層の少なくとも表面に活物質の酸化物を含有する層を形成する、請求項1に記載した電池用電極の製造方法。
  11. 二次電池用電極を製造する、請求項1に記載した電池用電極の製造方法。
  12. 集電体の表面に活物質層が設けられている電池用電極の製造装置において、
    活物質材料を前記集電体上に堆積させて前記活物質層を形成する際に、可動体の運動 によって前記活物質材料の流れを乱す手段を備えている
    ことを特徴とする、電池用電極の製造装置。
  13. 前記活物質層を気相成膜法によって形成する手段と、
    活物質材料源が存在している領域と前記集電体とを結ぶ空間領域において前記可動体 を動かし、この運動によって前記活物質材料源から前記集電体へ向かう前記活物質材料 の流れを乱す手段と
    を有する、請求項12に記載した電池用電極の製造装置。
  14. 前記可動体として棒状、線状、又は網状の可動体を備え、この可動体を、前記空間領域における前記活物質材料の流れを横切るように動かす手段を有する、請求項13に記載した電池用電極の製造装置。
  15. 前記気相成膜法として真空蒸着法を用いる、請求項13に記載した電池用電極の製造装置。
  16. 長尺形状の集電体を長尺方向に走行させる手段を有し、前記長尺形状の集電体を長尺方向に走行させながら前記活物質層を形成できるように構成されている、請求項12に記載した電池用電極の製造装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011258913A (ja) * 2010-06-04 2011-12-22 Samsung Electro-Mechanics Co Ltd ロールツーロール工程を用いた電極製造装置及び電極製造方法
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JP2017152393A (ja) * 2013-03-29 2017-08-31 三洋電機株式会社 非水電解質二次電池用負極活物質及び非水電解質二次電池

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