JP2008122343A - 金属キャスクの中性子遮へい材の施工方法およびその施工方法により製作された金属キャスク - Google Patents
金属キャスクの中性子遮へい材の施工方法およびその施工方法により製作された金属キャスク Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】液状のレジンRを金属キャスクCのセクタ4に充填する充填工程と、セクタ4に充填されたレジンRを充填高さ方向の下部側から上部側へ硬化させる硬化工程と、を含み、硬化工程は、加熱手段によってセクタ4が下部側から上部側へ順次加熱されることでレジンRが充填高さ方向の下部側から上部側へ硬化され、併せて、レジンRの液面高さを経時的に測定することで、加熱手段によって加熱されている領域のレジンRの、硬化収縮の収束を検知し、これをもって加熱手段によって加熱される領域をセクタ4の下部側から上部側へ移す。
【選択図】図2
Description
このようなエポキシ樹脂系レジンは、エポキシ主剤と硬化剤とが反応し、液状から固体へと硬化する。温度が高いほど反応速度は大きく、速やかに硬化する。また、硬化反応には発熱を伴う。そして、レジンの硬化は、常温において行われていた(例えば、特許文献1,2参照)。
ヒータを用いることによって、レジンの温度を簡単に変化させることができ、また、ヒータを断続的あるいは連続的に移動させることで、レジンの充填高さ方向の下側から上側へ順にレジンを加熱することができる。
(第1実施形態)
図1(a)(b)に示すように、金属キャスクCは、使用済燃料集合体(不図示)を収納する内筒1と、この内筒1の外周に伝熱フィン2(図1(a)参照)を介して設けられた外筒3と、これらの内筒1、伝熱フィン2および外筒3で少なくとも囲まれて金属キャスクCの軸線方向(後記するレジンRの充填方向)に延設される状態に形成されたセクタ4と、このセクタ4に充填されて硬化される中性子遮へい材としてのレジンRとを備えて構成される。
ここで、内筒1および外筒3は、放射線(主としてガンマ線等)を遮へいすることが可能な炭素鋼ないしステンレス鋼製である。
内筒1の上部開口には、図1(b)に示すように、一次蓋1Aおよび二次蓋1Bが取り付けられる。なお、外筒3の上部および下部には、金属キャスクCの吊上げ吊下し等に使用される図示しないトラニオンが周方向に所定の間隔を置いて複数個設けられている。
セクタ4に充填されるレジンRは、中性子線を遮へいすることが可能であり、例えば、耐熱性と水素数密度のバランスがよいという特徴を活かして、エポキシ系樹脂が利用される。この場合には、液状のエポキシ主剤と硬化剤、これに難燃性を付与する水酸化アルミニウム、および中性子吸収体である炭化ホウ素を均一になるように混合してなる。ここで、セクタ4の厚さ(大きさ)は、収納される使用済燃料集合体の特性等を考慮して適宜決定される。なお、本実施形態の金属キャスクCでは、図1(b)に示すように、一次蓋1Aおよび内筒1の底部1Cにも、同様のレジンRが充填されて硬化されている。
このような条件とすることによって、硬化中のレジンRの反応がヒータHにより加熱される領域内でほぼ均一になり、主として硬化収縮が局所に集中して生じる遮へい欠損を、好適に防止することができる。
はじめに、セクタ4に異物等が入っていないかを目視等によって確認する。このとき、内部に結露水があれば、必要に応じてブロアー等によって乾燥する。
このことを、図4を参照して説明すると、加熱開始後に液面RFの高さh1がしだいに低くなる方向へ変化し始め(時刻T1’)、その後、変化の傾きは大きくなる(時刻T1’’)。そして、加熱領域HD1におけるレジンRの硬化収縮が収束に向かい始めると、液面RFの高さh1の変化が十分小さくなり、その後、ほとんど変化しない状態となる(時刻T2)。この時点で、加熱領域HD1におけるレジンRの硬化収縮が終了したことを確認することができる。
なお、レジンRの充填よりも先にヒータHを第1の位置に装着しておいてもよい。
(1)レジンRを下側から上側へ順に加熱して硬化させるようにしたので、加熱によってレジンRの硬化に要する時間を短縮することができる。
(2)レジンR中に気泡が生じていたり、レジンRが硬化する際の温度差で、セクタ4内に仮に充填隙間Bが形成されたりしても、レジンRが充填方向の下部側から上部側へ順次加熱されるので、加熱領域(図3(a)では、加熱領域HD1)の上側には未硬化で流動性を有するレジンR’が存在し、硬化する過程でこれらの気泡や充填隙間Bに流動性を有するレジンR’が流れ込む。したがって、気泡や充填隙間Bが埋められる状態となり、遮へい欠損が発生するのを好適に防止することができる。
また、以下の理由により、レジンR中に気泡が生じていなことを確認できる。硬化前のレジンRの液面RFの高さh1と硬化後のレジンRの液面RFの高さh1との差は、基本的には硬化収縮率から予測できるはずである。しかし、実際には、レジンRの配合誤差やレジンR自体の温度によりレジンRの比重のばらつきが生じるので、その影響も受ける。すなわち、そのばらつき分があるため、レジンRの内部に気泡が発生していても、それがばらつきにより生じているのか、気泡によって生じているのかを検知することができない。
これに対して、本実施形態では、下側から上側へレジンRが順に硬化されることによって気泡の発生リスクを極小化しているので、レジンRの高さの変化が予測ばらつきの範囲内に入っていれば、レジンRの内部に気泡が生じている可能性が極めて低いと考えられ、遮へい欠損が発生することが好適に防止された金属キャスクCのレジンRの施工方法が得られる。
(3)レジンRの液面高さh1を経時的に測定して、加熱されている領域のレジンRの硬化収縮の終了を検知し、この検知によってヒータHをレジンRの充填方向上側へ移動させて、順に加熱するようにしたので、加熱されている領域が硬化されないまま次の領域が加熱されるということがなくなり、これによって、セクタ4内に気泡や充填隙間B等の遮へい欠損が発生するのを好適に防止することができる。
(4)液面高さh1を経時的に測定してその変化する速度から、加熱されている領域のレジンRの温度が適正に維持されていることを確認することができる。液面高さh1が変化する速度は、加熱されている領域の反応速度に依存し、反応速度はレジンRの温度に依存する。すなわち、液面高さh1が変化する速度から加熱されている領域のレジンRの温度が推定される。したがって、液面高さh1の変化が所期の範囲内であれば、レジンRの温度は適正範囲に入っており、過度な温度上昇による硬化反応のムラがないことが確認できる。
(5)ヒータHは、断続的にレジンRの充填方向の下側から上側へ移動されて取り付けられ、ヒータHによる加熱領域HD1,HD2等の高さは、液面高さh1の1/6(1/5〜1/10の範囲)に設定されるので、一回に加熱されるレジンRの体積を小さくすることができ、これによって、硬化中のレジンRの温度が均一になり易い。なお、硬化収縮が局所に集中したとしても、収縮量自体が小さいので、遮へい欠損としての影響がない。
(6)ヒータHの移動にともなって、図3(b)(c)に符号HD1’,HD2’で示される部分の領域が、ヒータHの移動前および移動後のいずれにおいてもオーバーラップして加熱される領域となるので、これによって、移動の前後にわたってレジンRの加熱による硬化が確実に行われる。したがって、遮へい欠損が発生することがより一層好適に防止される。
(7)ヒータHの出力は、硬化中のレジンRの温度が常に70℃を超えないように設定されるか、加熱されている領域のレジンRの最高温度と最低温度との差が30℃以下になるように設定されるので、加熱されている領域内での反応が均一になり、硬化収縮が局所に集中して遮へい欠損が生じる不具合を好適に防止することができる。
次に、本発明の第2実施形態である金属キャスクの中性子遮へい材の施工方法を説明する。本実施形態では、セクタ4の下側から上側へヒータHを連続的に移動させて、レジンRを下側から上側へ硬化させるようにした点が異なっている。
図6に示すように、金属キャスクCの上部には、ヒータHを吊上げて移動させるための吊上げ装置10が取り付けられる。吊上げ装置10は、制御部11と、この制御部11によって駆動が制御されるモータ12と、このモータ12の回転によって作動される巻上げ機構13と、この巻上げ機構13に巻き付けられた吊下部材Y1,Y2とを有して構成される。
なお、本実施形態においても、前記のように、硬化中のレジンRの最高温度が常に70℃を超えないように、また、硬化中のレジンRの最高温度と最低温度の差が30℃以下になるような条件で、ヒータHの加熱温度の制御が行われる。
次に、本発明の第3実施形態である金属キャスクの中性子遮へい材の施工方法を説明する。本実施形態では、金属キャスクCの仕様により、硬化反応速度の速いレジンRがセクタ4に充填される場合を想定したものであり、温度変化手段としての冷却装置30を用いて、硬化反応速度を調節し、レジンRの充填方向の下側から上側へレジンRを順に硬化させるようにした点が異なっている。
図7に示すように、冷却装置30は、冷却器30A〜30Dと、これらの冷却器30A〜30Dに冷却配管31,32を介してそれぞれ接続され、冷却器30A〜30Dからの冷却水が供給される冷却ジャケットJ1〜J4とを備えて構成される。
ここで、レジンRの充填は、前記第1実施形態と基本的に同様である。ただし、本実施形態で想定しているような比較的反応速度の速いレジンRの場合では、レジンRの温度の管理に十分な配慮が必要である。つまり、レジンRが所定温度よりも高いと、硬化反応時にムラを生じやすく、また、逆にレジンRが所定温度よりも低い場合には、レジンRの粘度が高くなるため充填が行い難く、気泡を巻き込む確率も高くなるからである。
また、外筒3側と内筒1側との両方にヒータHを取り付けて、両側からレジンRを加熱するように構成してもよい。このように構成することで、レジンRの加熱を効率よく行うことができ、気泡や充填隙間B等の遮へい欠損の発生を防止しつつ、充填したレジンRの硬化に要する時間をさらに短縮することができる。
この場合にも、セクタ4に充填されたレジンRは、充填方向の下側から上側に向けて徐々に加熱されるようになり、下側から硬化収縮するようになる。このように、レジンRが下側から徐々に硬化収縮されるので、充填隙間B(図5参照)がより形成されにくくなり、また、仮にこれが形成されたとしても、未硬化で流動性を有するレジンR’が流れ込んで、気泡や充填隙間Bが好適に埋められることとなる。したがって、遮へい欠損が発生するのを好適に防止することができる。
2 伝熱フィン
3 外筒
4 セクタ
5 キャビティ
5a バスケット
6 蓋部
7 電源
10 吊上げ装置
21 磁石
30 冷却装置(温度変化手段)
30A〜30C 冷却器
35 断熱材
B 充填隙間
C 金属キャスク
H ヒータ(温度変化手段)
H1 ヒータ(温度変化手段)
H2 ヒータ(温度変化手段)
HD1〜HD3 加熱領域
h ヒータの高さ
h1 充填高さ
J1〜J4 冷却ジャケット
R レジン(中性子遮へい材)
R’ レジン(中性子遮へい材)
RF 液面
RH 硬化領域
Claims (13)
- 使用済原子燃料を納めるバスケットを収容するためのキャビティが設けられた内筒と、この内筒の外周に伝熱フィンを介して設けられた外筒と、前記内筒、前記伝熱フィンおよび前記外筒で囲まれて形成されたセクタと、を備え、前記セクタに中性子遮へい材としてのエポキシ樹脂系レジンが充填されて硬化される金属キャスクの中性子遮へい材の施工方法であって、
液状の前記レジンを前記セクタに充填する充填工程と、
前記レジンの充填高さ方向の下側から上側へ前記レジンの温度を変化させる温度変化手段によって前記レジンを下側から上側へ順に硬化させる硬化工程と、を含み、
前記硬化工程は、前記レジンの液面の位置を経時的に測定することで前記レジンの硬化収縮の終了を検知する検知工程を含むことを特徴とする金属キャスクの中性子遮へい材の施工方法。 - 前記温度変化手段が前記外筒および前記内筒の少なくとも一方に装着されるヒータであり、前記硬化工程は、前記ヒータによる加熱領域を、前記レジンの充填高さ方向の下側から上側へ順次移動させるものであることを特徴とする請求項1に記載の金属キャスクの中性子遮へい材の施工方法。
- 前記加熱領域は、前記レジンの充填高さ方向に断続的に移動されるようになっており、前記検知工程によって前記レジンの硬化収縮の終了を検知した後に、上側へ所定量移動されることを特徴とする請求項2に記載の金属キャスクの中性子遮へい材の施工方法。
- 前記加熱領域は、前記レジンの充填高さ方向に連続的に移動されるようになっており、その移動速度が、前記金属キャスクの所定の熱容量と前記レジンの硬化反応速度との関係で決まる速度とされていることを特徴とする請求項2に記載の金属キャスクの中性子遮へい材の施工方法。
- 前記ヒータは、前記レジンの充填高さよりも低い高さを備えて形成されており、前記加熱領域の移動が当該ヒータ自体を充填高さ方向上側へ移動させることによって行われることを特徴とする請求項2から請求孔4のいずれか1項に記載の金属キャスクの中性子遮へい材の施工方法。
- 前記ヒータの出力は、硬化中の前記レジンの温度上昇分を含めて前記レジンの温度が70℃を下回る温度に抑えられて加熱される仕様であることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の金属キャスクの中性子遮へい材の施工方法。
- 前記ヒータの出力は、前記ヒータにより加熱されている領域の前記レジンの最高温度と最低温度との差が30℃以下に設定される仕様であることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の金属キャスクの中性子遮へい材の施工方法。
- 前記ヒータにより一度に加熱される加熱領域の高さは、前記セクタにおける前記レジンの充填高さの1/5ないし1/10の高さに設定されることを特徴とする請求項2から請求7のいずれか1項に記載の金属キャスクの中性子遮へい材の施工方法。
- 使用済原子燃料を納めるバスケットを収容するためのキャビティが設けられた内筒と、この内筒の外周に伝熱フィンを介して設けられた外筒と、前記内筒、前記伝熱フィンおよび前記外筒で囲まれて形成されたセクタと、を備え、前記セクタに中性子遮へい材としてのエポキシ樹脂系レジンが充填されて硬化される金属キャスクの中性子遮へい材の施工方法であって、
液状の前記レジンを前記セクタに充填する充填工程と、
前記レジンの充填高さ方向の下側から上側へ前記レジンの温度を変化させる温度変化手段によって前記レジンを下側から上側へ順に硬化させる硬化工程と、を含み、
前記温度変化手段が、前記外筒および前記内筒の少なくとも一方に装着される冷却部を備えて、前記レジンを前記金属キャスクの周囲の温度よりも低い温度に冷却することが可能な冷却装置であり、
前記硬化工程は、前記冷却部によって前記レジンを冷却して前記レジンの硬化反応を遅らせつつ、前記レジンの充填高さ方向の下側から上側へ前記冷却部による冷却を順に解除することで前記レジンが充填高さ方向の下側から上側へ順に硬化されるものであり、
前記レジンの液面の位置を経時的に測定することで、前記冷却部による冷却が解除された領域での前記レジンの硬化収縮の終了を検知する検知工程を含むことを特徴とする金属キャスクの中性子遮へい材の施工方法。 - 使用済原子燃料を納めるバスケットを収容するためのキャビティが設けられた内筒と、この内筒の外周に伝熱フィンを介して設けられた外筒と、前記内筒、前記伝熱フィンおよび前記外筒で囲まれて形成されたセクタと、を備え、前記セクタに中性子遮へい材としてのエポキシ樹脂系レジンが充填されて硬化される金属キャスクの中性子遮へい材の施工方法であって、
液状の前記レジンを前記セクタに充填する充填工程と、
前記レジンの充填高さ方向の下側から上側へ前記レジンの温度を変化させる温度変化手段によって前記レジンを下側から上側へ順に硬化させる硬化工程と、を含み、
前記温度変化手段が、前記金属キャスクの底部に設置した底部ヒータであり、
前記硬化工程は、前記底部ヒータによって前記レジンを充填高さ方向の下側から上側へ加熱して硬化させるものであることを特徴とした金属キャスクの中性子遮へい材の施工方法。 - 前記底部ヒータによって前記レジンを加熱する際に、前記外筒の外周面および前記内筒の内周面のうち、少なくともいずれかの一部に断熱材が設置されることを特徴とする請求項10に記載の金属キャスクの中性子遮へい材の施工方法。
- 前記底部ヒータは、硬化中の前記レジンの温度上昇分を含めて前記レジンの温度が常に70℃を下回る温度に抑えられて加熱される仕様であることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の金属キャスクの中性子遮へい材の施工方法。
- 請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の金属キャスクの中性子遮へい材の施工方法によって前記セクタに充填された前記レジンが硬化されて製作されたことを特徴とする金属キャスク。
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