JP2008120946A - 発光組成物の製造方法、光源装置の製造方法、及び表示装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】蛍光体の原料を混合して混合物を得る混合物作成工程と、この混合物を焼成して焼成物を得る焼成物作成工程とを有する発光性組成物の製造方法において、少なくとも一方の工程に対して、酸素以外の元素からなるメラミンあるいはジシアンジアミド等の窒素含有有機化合物を添加する窒化物蛍光体発光性組成物の製造方法。該窒化物蛍光体発光性組成物を光源装置・表示装置の発光体に用いることにより装置全体の製造にかかるコストの低減が図れる。
【選択図】なし
Description
バックライトには、一般に、直下(ダイレクト)方式と、エッジライト(サイドライト)方式との2種類がある。
既に知られているバックライトのLED光源としては、青色を発光するLEDの周囲に黄色光に変換する蛍光体(黄色蛍光体)を分散配置し、青色と黄色の合成で白色を得る、いわゆる白色LEDが挙げられる。また、黄色蛍光体を、導光板や反射シート及び光学フィルム等に分散させ、離れた位置にあるこれらの黄色蛍光体に対して青色LEDの青色光が照射される構成によって白色光を得る手法も提案されている(例えば特許文献1参照)。
これに対して、ディスプレイ用途における要求に応じて、青色光を緑色光に変換する蛍光体(緑色蛍光体)と、青色光または緑色光を赤色光に変換する蛍光体(赤色蛍光体)とをそれぞれ選び分けることにより、所望の特性により近づけようとする手法も提案されている(例えば特許文献2参照)。
しかしながら、高品質の蛍光体を製造することに関しては、歩留まりやコストの面から、改善に対する要求が強まっている。
しかし、蛍光体は、原料の濃度比と発光特性の間に密接な関係があるため、その発光中心元素の濃度を予め決めて原料を混合する必要がある。調製した後で濃度を変更することは、蛍光体としての特性の低下を伴うことが多いため、好ましくないとされている。
したがって、酸素の混入などによって発光中心元素の価数が変化するなど、蛍光体を構成する原料が本来の濃度を維持できずに製造された蛍光体は、製品に用いることができないまま廃棄せざるを得ない。
本発明に係る発光組成物の製造方法の第1の実施の形態について説明する。
蛍光体の原料としては、少なくとも、Euと、A元素と、D元素と、E元素と、窒素とを用いることにより、最終的に得る蛍光体を、少なくとも一部がCaAlSiN3と同一の結晶構造を有する蛍光体として製造することが好ましい。ここで、Aは、M元素以外の2価の金属元素からなる群から選ばれる1種または2種以上の元素、Dは、4価の金属元素からなる群から選ばれる1種または2種以上の元素、Eは、3価の金属元素からなる群から選ばれる1種または2種以上の元素である。
本実施形態では、A元素がCa、D元素がSi、E元素Alである場合を例として説明を行う。
ここで、酸素以外の元素からなる有機化合物としては、様々な有機化合物を用いうるが、特に、炭素,窒素,水素のみからなる有機化合物、中でもメラミン(2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン)、或いはメラミンに類似した構造を有するジシアンジアミドなどが好ましい。これは、最終的に得る発光組成物の特性が特に良好であったためである。特性が特に良好であった主たる要因のひとつとしては、添加された有機化合物に由来するガスカーボンの還元性によって、系内の酸素(炭酸塩などから発生する酸素も含む)の蛍光体への取り込みが抑制されるとともに、添加された有機化合物に由来する窒素が蛍光体の窒素源となることによって、蛍光体の所定の構造の形成が促されることが考えられる。
なお、後述する第2実施形態におけるように、炭素粉末を秤量して混合物に加えることもできるが、有機化合物に由来する炭素で充分と判断される場合には、炭素粉末を加えることを省略することもできる(本実施形態では省略する)。最終的に得る発光組成物に含まれる炭素量は、有機化合物の添加量と、後述する焼成工程における焼成条件(温度,圧力,ガスの種類など)によって増減する。
得られた中間体を、混合した粉末をボロンナイトライド(BN)製の円筒形坩堝に挿入する。坩堝に挿入した混合粉末を、窒素ガス(N2)と水素ガス(H2)の還元性混合ガス雰囲気中、1気圧、1700℃の条件で、2時間焼成して焼成物作製工程を行い、発光組成物を作製した。
なお、焼成条件(温度,圧力,ガスの種類など)は適宜選定し得るが、ガスとしては、窒素ガスや水素ガスのほか、アンモニアなどを用いることができる。
本発明に係る発光組成物の製造方法の第2の実施の形態について説明する。
本実施形態においても、前述のA元素がCa、D元素がSi、E元素Alである場合を例として説明を行う。
得られた中間体を、混合した粉末をボロンナイトライド(BN)製の円筒形坩堝に挿入する。坩堝に挿入した混合粉末を、窒素ガス(N2)と水素ガス(H2)の還元性混合ガス雰囲気中、1気圧、1700℃の条件で、2時間焼成して焼成物を得ることにより、焼成物作製工程を行う。
ここで、酸素以外の元素からなる有機化合物としては、様々な有機化合物を用いうるが、特に、炭素,窒素,水素のみからなる有機化合物、中でもメラミン(或いはメラミンに類似した構造を有するジシアンジアミドなど)が好ましい。これは、最終的に得る発光組成物の特性が特に良好であったためである。特性が特に良好であった主たる要因のひとつとしては、添加された有機化合物に由来するガスカーボンの還元性によって、系内の酸素(炭酸塩などから発生する酸素も含む)の蛍光体への取り込みが抑制されるとともに、添加された有機化合物に由来する窒素が蛍光体の窒素源となることによって、蛍光体の所定の構造の形成が促されることが考えられる。
本実施形態に係る製造方法によって得られる発光組成物を用いれば、発光組成物の製造にかかるコストを低減できることから、装置全体の製造にかかるコストの低減も図ることが可能となる。
この表示装置1は、光源装置2及び光学装置3を有する。
この光源装置2の、樹脂による導光部7内には、青色光源として、例えば青色LEDによる複数の発光体6が設けられている。発光体6の形状は、例えばLEDであればサイドエミッタータイプや砲弾タイプなど、様々な種類のものから適宜選択して用いることができる。
ここで、蛍光体が分散される媒体とは、青色発光LEDの周囲に直接形成される樹脂(白色LEDの一部)でも良いし、導光板,反射シート,光学フィルム等のように青色発光LEDから離れた位置にあるものでも、蛍光体が分散配置される媒体であれば良い。
第1蛍光部8aを構成する第1蛍光体としては、赤色蛍光体として例えばCaS:Euを挙げることができる。この場合には、450nm近傍にピークを有する励起スペクトルに対応する波長帯(励起波長帯)の光照射に基づいて、発光中心波長654nm,主たる発光波長帯600nm〜750nmのスペクトルを有する蛍光を得ることができる。なお、赤色域の発光を得るために、第1蛍光体の発光波長帯は、610nm〜670nmの少なくとも一部を含むことが好ましい。
また、第2蛍光部8bを構成する第2蛍光体は、緑色蛍光体として例えば(Sr1-x-yCaxBay)Ga2S4:Euを挙げることができる(0≦x≦1,0≦y≦1,x+y≦1)。一例としてSrGa2S4:Euを用いた場合には、450nm近傍にピークを有する励起スペクトルに対応する波長帯の光照射に基づいて、発光中心波長532nm,主たる発光波長帯490nm〜600nmのスペクトルを有する蛍光を得ることができる。なお、緑色域の発光を得るために、第2蛍光体の発光波長帯は、510nm〜550nmの少なくとも一部を含むことが好ましい。
この光源装置2においては、第1の発光組成物と第2の発光組成物とのうち、少なくとも一方が、前述した本実施形態に係る発光組成物である。
なお、光源装置2は、図2に示すように、導光部7の側面に発光体6が配置された方式としてもよい。すなわち、発光体6からの光が導光部7の後部斜面(リフレクタ4c;反射シート)で光が反射され、第1のプリズムシート21及び第2のプリズムシート22を経て拡散シート9に至る、所謂エッジライト(サイドライト)方式としても良い。
この光学装置3においては、光源装置2に近い側から、偏向板10と、TFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)用のガラス基板11及びその表面のドット状電極12と、液晶層13及びその表裏に被着された配向膜14と、電極15と、電極15上の複数のブラックマトリクス16と、このブラックマトリクス16間に設けられる画素に対応した第1(赤色)カラーフィルター17a,第2(緑色)カラーフィルター17b,第3(青色)カラーフィルター17cと、ブラックマトリクス16及びカラーフィルター17a〜17cとは離れて設けられるガラス基板18と、偏向板19とが、この順に配置されている。
ここで、偏向板10及び19は、特定の方向に振動する光を形成するものである。また、TFTガラス基板11とドット電極12及び電極15は、特定の方向に振動している光のみを透過する液晶層13をスイッチングするために設けられるものであり、配向膜14が併せて設けられることにより、液晶層13内の液晶分子の傾きが一定の方向に揃えられる。また、ブラックマトリクス16が設けられていることにより、各色に対応するカラーフィルター17a〜17cから出力される光のコントラストの向上が図られている。これらのブラックマトリクス16及びカラーフィルター17a及び17cは、ガラス基板18に取着される。
本発明の実施例について、説明する。
本実施例では、前述した製造方法によって発光組成物を製造し、得られた発光組成物について具体的に検討を行った結果について、説明する。
また、図示しないが、結晶中のEuが3mol%であるCaAlSiN3:Euを、焼成後に有機化合物を添加する手順を経ることなく直接(つまり焼成前の混合物の時点でEu濃度を3mol%として)製造した場合には、本実施形態に係る発光組成物のスペクトル(図中m´)と同様の発光特性を示すことも確認できた。
発光強度の測定は、分光光度計(SPEX社製FLUOROLOG−3)を用いて行った。この分光光度計を用い、各蛍光体に対して発光中心波長460nmの青色光を照射し、この青色光の励起によって蛍光体から生じる発光スペクトルを、500nm〜780nmの範囲について測定した。
図6の結果より、Euの濃度とともに長波長化が図られることが確認できた(図中y´)。この範囲では、平均値(図中直線y)に比べても、特に大幅な長波長化が進んでいる。
なお、図示しないが、蛍光体結晶中のEuの濃度が5.0mol%の試料の輝度は、1.0〜4.0mol%の試料より20%以上低いことが確認できた。したがって、前述の第1実施形態及び第2実施形態で説明した製造方法によれば、Euの濃度が2.5mol%以上4.0mol%以下の場合、特に高輝度の発光組成物を、歩留まりの向上やコストの低減を図りながら製造することができる。
具体的には、前述の第1実施形態に係る発光組成物の製造方法によれば、特に、酸素を有する原料(例えば炭酸塩)を利用した蛍光体の製造が可能となる。また、前述の第2実施形態に係る発光組成物の製造方法によれば、特に、いったん合成を完了した蛍光体の組成を発光特性の劣化なしに再調整することが可能となる。
例えば、従来は、Ca等のアルカリ土類金属イオンは、母体を構成するイオンであることから、原料となるアルカリ土類金属イオンの窒化物(Ca3N2など)を多量に必要とする一方で、アルカリ土類金属窒化物が高価であるという問題があった。これは、Si3N4やAiNなどのように生産方法が確立されている(工業的にも多量に量産されている)原料と比較して、アルカリ土類金属窒化物の生産量が限られていることなどが原因であった。これらの原因のために、アルカリ土類金属の窒化物は、蛍光体を製造する際に比較的少量で済むEuNに匹敵するほど、高価であった。
更に、このアルカリ土類金属イオンの窒化物は不安定であり、大気中で容易に加水分解する(アンモニアを生成しながら水酸化物に変化する)ため、混合以前の(原料の)段階で酸素濃度が上昇してしまう。その結果、従来の蛍光体の製造では、混合及び焼結した後の蛍光体中におけるEu2+の濃度低下が進行し、発光特性の劣化に至ってしまうことが多かった。
しかしながら、本実施形態に係る製造方法によれば、前述したような高価な原料を用いることを避けることができるとともに、発光特性の劣化を抑制することもできることから、コストの低減を図ることが可能となる。そして、必要に応じて更に、特性劣化を抑制しながら蛍光体の組成を再調整できることから、この場合には更なるコスト低減と、歩留まりの向上をも図ることが可能となる。
また、蛍光体の製造においては、有機化合物は不純物として特性劣化や結晶形成阻害などの要因となることが多い(例えばポリビニルアルコールなどは分解過程で酸を生じるため蛍光体を溶かしてしまう)ため、製造過程で添加することは問題がある(不適切である)が、本実施形態で挙げた有機化合物を選択的に用いて製造を行えば、それらの問題を回避して、優れた発光組成物を得られることが確認できた。
また、前述の第1実施形態及び第2実施形態では、発光体が青色発光ダイオードである場合を例として説明を行ったが、発光体として、より短波長側に発光波長帯を有するもの(例えば近紫外発光ダイオードなど)を用い、かつ赤色,緑色,青色の3種類の蛍光体を有する装置構成とすることもできる。すなわち、光源装置及び表示装置を構成する各部材や材料は必要に応じて選定されうる点をはじめ、本発明は、種々の変形及び変更をなされうる。
Claims (14)
- 窒化物蛍光体を有する発光組成物の製造方法であって、
少なくとも、前記蛍光体の原料を混合して混合物を得る、混合物作製工程と、
前記混合物を焼成して焼成物を得る、焼成物作製工程と、
を有し、
前記混合物と、前記焼成物との、少なくとも一方に対して、酸素以外の元素からなる有機化合物を添加する
ことを特徴とする発光組成物の製造方法。 - 前記原料が、炭酸塩と、酸化物及び金属との、少なくとも一方を含み、
前記混合物に対して、酸素以外の元素からなる有機化合物を添加し、その後、前記焼成物作製工程を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の発光組成物の製造方法。 - 前記焼成物に対して、酸素以外の元素からなる有機化合物と、前記蛍光体の発光中心となる元素を含む原料とを添加する
ことを特徴とする請求項1に記載の発光組成物の製造方法。 - 前記窒化物蛍光体の発光中心が、Eu2+である
ことを特徴とする請求項1に記載の発光組成物の製造方法。 - 前記蛍光体の原料として、少なくとも、Euと、A元素と、D元素と、E元素とを用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の発光組成物の製造方法。
(ただし、Aは、M元素以外の2価の金属元素からなる群から選ばれる1種または2種以上の元素、Dは、4価の金属元素からなる群から選ばれる1種または2種以上の元素、Eは、3価の金属元素からなる群から選ばれる1種または2種以上の元素。) - 前記A元素が、Caであり、前記D元素が、Siであり、前記E元素が、Alである
ことを特徴とする請求項5に記載の発光組成物の製造方法。 - 前記蛍光体が、少なくとも一部、CaAlSiN3と同一の結晶構造を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の発光組成物の製造方法。 - 前記有機化合物が、炭素と、窒素と、水素のみからなる有機化合物である
ことを特徴とする請求項1に記載の発光組成物の製造方法。 - 前記有機化合物が、メラミン、ジシアンジアミドのいずれかである
ことを特徴とする請求項1に記載の発光組成物の製造方法。 - 前記蛍光体中における、Eu及びEu2+の総量が、2.0mol%以上5.0mol%以下の割合である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の発光組成物の製造方法。 - 前記有機化合物の添加量が、前記原料に対して、5mol%以上200mol%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の発光組成物の製造方法。 - 焼成工程に先立って、前記混合物の組成及び量に基づく炭素粉末を、前記混合物に添加する工程を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の発光組成物の製造方法。 - 窒化物蛍光体を有する発光組成物を含む光源装置の製造方法であって、
前記発光組成物の製造を、少なくとも、前記蛍光体の原料を混合して混合物を得る、混合物作製工程と、前記混合物を焼成して焼成物を得る、焼成物作製工程と、によって行い、
前記混合物と、前記焼成物との、少なくとも一方に対して、酸素以外の元素からなる有機化合物を添加する
ことを特徴とする光源装置の製造方法。 - 窒化物蛍光体を有する発光組成物を含む光源装置を備える表示装置の製造方法であって、
前記発光組成物の製造を、少なくとも、前記蛍光体の原料を混合して混合物を得る、混合物作製工程と、前記混合物を焼成して焼成物を得る、焼成物作製工程と、によって行い、
前記混合物と、前記焼成物との、少なくとも一方に対して、酸素以外の元素からなる有機化合物を添加する
ことを特徴とする表示装置の製造方法。
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