JP2013185011A - 蛍光体の製造方法、およびその製造方法により得られる蛍光体 - Google Patents

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文孝 吉村
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Abstract

【課題】内部量子効率の高い酸窒化物系蛍光体の提供。
【解決手段】蛍光体原料を窒素含有雰囲気下で焼成する第一の焼成工程と、該第一の焼成工程で得られる焼成物を窒素含有雰囲気下で焼成する第二の焼成工程とを有する蛍光体の製造方法であって、該蛍光体原料の仕込み組成を下記式[1]で表される組成とし、該第一の焼成工程の最高到達温度が1300℃以上1700℃以下であり、該第二の焼成工程の最高到達温度が1600℃以上2000℃以下であり、かつ、該第二の焼成工程の最高到達温度を、該第一の焼成工程の最高到達温度よりも高くする、蛍光体の製造方法。下記式[1]:(A 1−xl,Z x1a1 b1 c1d1e1[1]
【選択図】なし

Description

本発明は、酸窒化物系蛍光体の製造方法、およびその製造方法により得られる蛍光体、並びにそれを用いた発光装置等に関する。
蛍光体は、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、冷極線管(CRT)、発光装置(LED)などに用いられている。これらのいずれの用途においても、蛍光体を発光させるためには、蛍光体を励起するためのエネルギーを蛍光体に供給する必要がある。蛍光体は真空紫外線、紫外線、電子線、青色光などの高いエネルギーを有する励起源により励起されて、可視光を発する。
近年、高い演色性と色再現性を備えた白色光を放出する発光装置が求められており、その実現を目指し従来のケイ酸塩蛍光体、リン酸塩蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、硫化物蛍光体などの蛍光体に加えて、窒化物や酸窒化物蛍光体についても探索されている。
例えば、注目を浴びている酸窒化物の一つとして、SrAlSiON13:Eu、SrAl1.25Si3.750.256.75:Eu、SrAlSi:Euに代表される組成を有する蛍光体が報告されている(特許文献1〜4)。
特開2010−106127号公報 国際公開第2007/037059号パンフレット 特表2010−518194号公報 特開2011−195688号公報
ここで、特許文献1から3には、蛍光体の組成や結晶構造が開示されているが、内部量子効率については開示されておらず、また、その製造方法については一般的な記載があるのみで、製造条件と内部量子効率の関係について詳細な検討がなされていない。また、粒子の粒径や形状と元素置換の効果については何ら検討がなされておらず、高い発光強度を得ることができていない。特許文献1〜3に記載の蛍光体を実用化するためには更なる発光強度の向上が求められている。
また、上述した特許文献4には、歩留まりを向上させるため、同じ温度で繰り返し焼成することにより不純物の生成を抑制し、蛍光体の輝度を向上させる製造方法が開示されているが、内部量子効率については何ら記載ない。得られる蛍光体そのものの発光効率を上げるための製造条件については検討がなされていないため、更なる検討が求められる。
このように、特許文献1〜4に記載の蛍光体、SrAlSiON13:Eu、SrAl1.25Si3.750.256.75:Eu、SrAlSi:Euに代表される組成を有する蛍光体の内部量子効率の向上が望まれていた。
本発明の課題は、上述の組成を有する蛍光体に代表される酸窒化物系蛍光体の内部量子効率を向上させることにある。
本発明者等は上記課題を達成すべく諸種の検討を行った結果、特定の温度範囲において2回以上の焼成を行なうこと、より詳しくは、比較的低い温度で焼成する第一の焼成工程を行ない、その後で、比較的高い温度で焼成する第二の焼成工程を設けることにより、得られる酸窒化物系蛍光体の内部量子効率が向上することを見出した。さらに、本発明者等は、上述した蛍光体の製造方法において、蛍光体の仕込み組成を下記式[1]で表される組成とするとさらに内部量子効率が向上することを見出した。
本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
即ち、本発明の要旨は、次の〔1〕〜〔9〕に存する。
〔1〕蛍光体原料を窒素含有雰囲気下で焼成する第一の焼成工程と、該第一の焼成工程で得られる焼成物を窒素含有雰囲気下で焼成する第二の焼成工程とを有する蛍光体の製造方法であって、
該蛍光体原料の仕込み組成を下記式[1]で表される組成とし、該第一の焼成工程の最高到達温度が1300℃以上1700℃以下であり、該第二の焼成工程の最高到達温度が1600℃以上2000℃以下であり、かつ、該第二の焼成工程の最高到達温度を、該第一の焼成工程の最高到達温度よりも高くする
ことを特徴とする、蛍光体の製造方法。下記式[1]:
(A 1−xl,Z x1a1 b1 c1d1e1 [1]
(式[1]中、AはSrを必須とするアルカリ土類金属元素を示し、ZはEuまたはCeを必須とする1種類以上の付活剤元素を示し、DはSiを必須とする4価の金属元素を示し、EはAlを必須とする3価の金属元素を示し、xlは0.0001≦x1≦0.20を満たす数を示し、a1、b1、c1、d1及びe1は、それぞれ、0.95≦a1≦1.05
2.5≦b1≦4.0
1.0≦c1≦2.5
4.5≦(b1+c1)/a1≦5.5
5.5≦d1≦7.0
0<e1≦1.5
を満たす数を示す。)
〔2〕前記第一の焼成工程において得られる焼成物が、MSi(但し、Mはアルカリ土類金属元素を表わす。)で表わされる結晶相を含有することを特徴とする、〔1〕に記載の蛍光体の製造方法。
〔3〕前記第一の焼成工程の後、焼成物を解砕する工程を有する
ことを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載の蛍光体の製造方法。
〔4〕〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の蛍光体の製造方法により得られた
ことを特徴とする、蛍光体。
〔5〕下記式[2]で表される組成を有する結晶相を含有し、かつ、455nmの励起光で励起した場合の内部量子効率が77%以上であることを特徴とする、〔4〕に記載の蛍光体。
下記式[2]:
(A 1−x2,Eu x2a2 b2 c2d2e2 [2]
(式[2]中、AはSrを必須とするアルカリ土類金属元素を示し、DはSiを必須とする4価の金属元素を示し、EはAlを必須とする3価の金属元素を示し、xlは0.0001≦xl≦0.20を満たす数を示し、a2、b2、c2、d2及びe2は、それぞれ、
0.95≦a2≦1.05
2.5≦b2≦4.0
1.0≦c2≦2.5
4.5≦(b2+c2)/a2≦5.5
5.5≦d2≦7.5
0<e2≦1.5
を満たす数を示す。)
〔6〕前記式[2]において、AはSrおよびCaを必須とすることを特徴とする、〔5〕に記載の蛍光体。
〔7〕前記式[2]において、b2およびc2がそれぞれ、3.7≦b2≦4.0、1.0≦c2≦1.3を満たすことを特徴とする、〔5〕または〔6〕に記載の蛍光体。
〔8〕前記式[2]において、b2およびc2がそれぞれ、3.0≦b2≦3.4、1.6≦c2≦2.0を満たすことを特徴とする、〔5〕または〔6〕に記載の蛍光体。
〔9〕発光ピークが、波長580nm以上630nm以下の範囲に存在する
ことを特徴とする〔4〕〜〔8〕のいずれかに記載の蛍光体。
本発明によれば、複雑な工程を経ることなく、内部量子効率の高い酸窒化物系蛍光体を提供することができる。
さらに、本発明により得られる蛍光体は内部量子効率が高いため、LED等と組み合わせれば、発光効率の高い発光装置を提供することができる。
本発明の発光装置の一実施形態を模式的に示す斜視図である。 本発明の発光装置の別の実施形態を模式的に示す断面図である。図2中、(a)は砲弾型発光装置を示し、(b)は表面実装型発光装置を示す。 本発明の照明装置の一態様を模式的に示す断面図である。 実施例7で得られた蛍光体のSEM像写真である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書中の蛍光体の組成式において、各組成式の区切りは読点(、)で区切って表わす。また、カンマ(,)で区切って複数の元素を列記する場合には、列記された元素のうち一種又は二種以上を任意の組み合わせ及び組成で含有していてもよいことを示している。例えば、「(Ca,Sr,Ba)Al:Eu」という組成式は、「CaAl:Eu」と、「SrAl:Eu」と、「BaAl:Eu」と、「Ca1−xSrAl:Eu」と、「Sr1−xBaAl:Eu」と、「Ca1−xBaAl:Eu」と、「Ca1−x−ySrBaAl:Eu」(但し、式中、0<x<1、0<y<1、0<x+y<1である。)とを全て包括的に示しているものとする。
[1.蛍光体の製造方法]
本発明の蛍光体の製造方法では、各蛍光体原料を、仕込み組成が下記式[1]となるように、原料となる化合物、金属、合金等を秤量して蛍光体原料混合物を調整し、得られた蛍光体原料混合物を焼成することにより製造することができる。
より具体的には、下記式[1]で表わされる仕込み組成となるように、A元素の原料(以下適宜「A源」という)、D元素の原料(以下適宜「D源」という)、E元素の原料(以下適宜「E源」という)、N元素の原料(以下適宜「N源」という)、O元素の原料(以下適宜「O源」という)、Eu元素の原料(以下適宜「Eu源」という)から必要な組み合わせを混合し(混合工程)、得られた混合物を焼成し(焼成工程)、得られた焼成物を、必要に応じて、解砕・粉砕や洗浄する(後処理工程)ことにより製造することができる。
ここで、本発明の製造方法は、蛍光体原料を窒素含有雰囲気下で焼成する第一の焼成工程と、該第一の焼成工程で得られる焼成物を窒素含有雰囲気下で焼成する第二の焼成工程とを有し、該第一の焼成工程の最高到達温度が1300℃以上1700℃以下であり、該第二の焼成工程の最高到達温度が1600℃以上2000℃以下であり、かつ、該第二の焼成工程の最高到達温度を、該第一の焼成工程の最高到達温度よりも高くすることを特徴とするものである。
(蛍光体原料)
使用される蛍光体原料としては、公知のものを用いることができ、例えば、A源としてSr、SrO、SrCO等のSr源、Ca、CaO、CaCO等のCa源、D源としてSiC、Si、SiO等のSi源、E源としてAlN、Al、Al等のAl源と、Eu源としてEuの金属、酸化物、炭酸塩、塩化物、フッ化物、窒化物又は酸窒化物から選ばれるEu化合物を用いることができる。
なお、前記式[1]におけるO源(酸素)やN源(窒素)は、A源(SrおよびCa源)、D源(Si源)、E源(Al源)、Eu源から供給されてもよいし、焼成雰囲気から供給されてもよい。また、各原料には、不可避的不純物が含まれていてもよい。
(仕込み組成)
本発明の蛍光体の製造方法では、上述の蛍光体原料を、下記式[1]で表わされる組成となるように各原料を仕込む。即ち、本発明においては、仕込み組成(下記式[1])においても出来上がり組成(下記式[2])においても酸素を含有することが好ましい。
下記式[1]:
(A 1−x1,Z x1a1 b1 c1d1e1 [1]
(式[1]中、AはSrを必須とするアルカリ土類金属元素を示し、ZはEuまたはCeを必須とする1種類以上の付活剤元素を示し、DはSiを必須とする4価の金属元素を示し、EはAlを必須とする3価の金属元素を示し、x1は0.0001≦x1≦0.20を満たす数を示し、a1、b1、c1、d1及びe1は、それぞれ、0.95≦a1≦1.05、2.5≦b1≦4.0、1.0≦c1≦2.5、4.5≦(b1+c1)/a1≦5.5、5.5≦d1≦7.5、0<e1≦1.5を満たす数を示す。)
上記のとおり、前記式[1]において、「A」は、Srを必須とするアルカリ土類金属元素を示し、後述の式[2]における「A」と同義である。
前記式[1]において、「Z」はユウロピウムまたはセリウムを必須とする付活剤元素を示し、後述の式[2]における「Z」と同義である。
前記式[1]において、「D」は、Siを必須とする4価の金属元素を示し、後述の式[2]における「D」と同義である。
前記式[1]において、「E」は、Alを必須とする3価の金属元素を示し、後述の式[2]における「E」と同義である。
前記式[1]において、「N」は、窒素を示し、後述の式[2]における「N」と同義である。
前記式[1]において、「O」は、酸素を示し、後述の式[2]における「O」と同義である。
また、本発明の製造方法に用いる蛍光体原料は、上述したA、Z、D、E、NおよびOの各構成元素の他に、本発明の効果に影響を与えない範囲内で不可避的に混入してしまう元素、例えば不純物元素などを含んでいてもよい。
前記式[1]において、「x」は付活剤元素(Z)のモル比を示し、後述の式[2]における「x」と同義である。
前記式[1]において、「a1」はA元素(Srを必須とするアルカリ土類金属元素)と付活剤元素(Z)のモル比の和を示し、後述の式[2]における「a」と同義である。
前記式[1]において、a1は、0.95≦a1≦1.05を満たす数であり、好ましくは2.6以上、より好ましくは2.7以上、さらに好ましくは2.8以上であり、特に好ましくは2.85以上であり、また、好ましくは3.9以下、より好ましくは3.8以下、さらに好ましくは3.7以下、特に好ましくは3.65以下である。
前記式[1]において、「b1」はD元素(Siを必須とする4価の金属元素)のモル比を示し、後述の式[2]における「b2」と同義である。
前記式[1]において、b1は、2.5≦b1≦4.0を満たす数であり、好ましくは2.8以上、より好ましくは3.0以上、さらに好ましくは3.2以上であり、特に好ましくは3.4以上であり、また、好ましくは3.9以下、より好ましくは3.8以下、さらに好ましくは3.7以下、特に好ましくは3.65以下である。
前記式[1]において、「c1」はE元素(Alを必須とする3価の金属元素)のモル比を示し、後述の式[2]における「c2」と同義である。
前記式[1]において、c1は、1.0≦c1≦2.5を満たす数であり、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.3以上であり、特に好ましくは1.35以上であり、また、好ましくは2.2以下、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.8以下、特に好ましくは1.6以下である。
また、(b1+c1)/a1は、A元素と付活剤元素のモル比の和に対するD元素とE元素のモル比の和の割合であり、通常、4.5≦(b1+c1)/a1≦5.5を満たす数となる。さらに、(b1+c1)/a1は、好ましくは4.6以上、より好ましくは4.7以上、さらに特に好ましくは4.8以上であり、また、好ましくは5.4以下、より好ましくは5.3以下、さらに好ましくは5.2以下である。
前記式[1]において、「d1」はN元素(窒素)のモル比を示し、後述の式[2]における「d2」と同義である。d1は、5.5≦d1≦7.0を満たす数であり、好ましくは5.8以上、より好ましくは6.0以上、さらに好ましくは6.2以上、特に好ましくは6.4以上であり、また、好ましくは6.9以下、より好ましくは6.8以下、さらに好ましくは6.7以下、特に好ましくは6.75以下である。
前記式[1]において、「e1」はO元素(酸素)のモル比を示し、後述の式[2]における「e」と同義である。好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.6以上、また、好ましくは1.9以下、より好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.7以下である。
以上の仕込み組成であると、内部量子効率が高い蛍光体が得られるが、LED等と組み合わせて演色性の高い発光装置を製造したい場合は、赤色発光の蛍光体が求められるため、b1及びc1は、それぞれ、3.7≦b1≦4.0、1.0≦c1≦1.3を満たすことが好ましい。
また、輝度の高い蛍光体が求められる場合は、b1及びc1は、それぞれ、3.0≦b1≦3.4、1.6≦c1≦2.0を満たすことが好ましい。
(混合工程)
目的組成が得られるように蛍光体原料を秤量し、ボールミル等を用いて充分混合し、蛍光体原料混合物を得る工程(混合工程)を設けることが好ましい。
上記混合手法としては、特に限定はされないが、具体的には、下記(A)及び(B)の手法が挙げられる。
(A)例えばハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル等の乾式粉砕機、又は、乳鉢と乳棒等を用いる粉砕と、例えばリボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機、又は、乳鉢と乳棒を用いる混合とを組み合わせ、前述の蛍光体原料を粉砕混合する乾式混合法。
(B)前述の蛍光体原料に水等の溶媒又は分散媒を加え、例えば粉砕機、乳鉢と乳棒、又は蒸発皿と撹拌棒等を用いて混合し、溶液又はスラリーの状態としたうえで、噴霧乾燥、加熱乾燥、又は自然乾燥等により乾燥させる湿式混合法。
蛍光体原料の混合は、上記湿式混合法又は乾式混合法のいずれでもよいが、水分による蛍光体原料の汚染を避けるために、乾式混合法や非水溶性溶媒を使った湿式混合法がより好ましい。
(第一の焼成工程)
続いて、蛍光体原料、好ましくは、混合工程で得られた蛍光体原料混合物を焼成する(焼成工程)。上述の蛍光体原料混合物を、必要に応じて乾燥後、坩堝等の容器内に充填し、焼成炉、加圧炉等を用いて焼成を行なう。第一の焼成工程における好ましい諸条件を以下に述べる。
焼成工程で用いる焼成容器(坩堝など)の材質としては、窒化ホウ素製、カーボン製等が挙げられる。
本発明の製造方法では、第一の焼成工程における焼成温度の最高到達温度を1300℃以上、1700℃以下の温度範囲とする。好ましくは1400℃以上、より好ましくは1450℃以上であり、また、好ましくは1580℃以下、より好ましくは1550℃以下である。焼成温度が高すぎると焼成物の粒子が大きく成長しすぎることにより、第二の焼成工程で得られた蛍光体の粒径をコントロールできなくなる傾向があり、低すぎると固相反応の進行が遅くなる傾向にある。
焼成時間は、焼成時の温度や圧力等によっても異なるが、通常10分間以上、好ましくは30分間以上、また、通常24時間以下、好ましくは12時間以下である。焼成工程における最高到達温度での保持時間は、特に制限されないが、通常1時間以上、好ましくは2時間以上、また、通常24時間以下、好ましくは12時間以下である。
焼成工程における昇温速度は、通常2℃/分以上、好ましくは5℃/分以上、より好ましくは10℃/分以上であり、また、通常30℃/分以下、好ましくは25℃/分以下である。昇温速度がこの範囲を下回ると、焼成時間が長くなる可能性がある。また、昇温速度がこの範囲を上回ると、焼成装置、容器等が破損する場合がある。
焼成工程における焼成雰囲気は、窒素含有雰囲気とすることが好ましい。具体的には、窒素雰囲気、水素含有窒素雰囲気等が挙げられ、中でも窒素雰囲気が好ましい。なお、焼成雰囲気の酸素含有量は、通常10ppm以下、好ましくは5ppm以下にするとよい。
焼成工程における圧力は、焼成温度等によっても異なるが、炉内の圧力を大気圧(0.1013MPa)もしくは、加圧状態にして製造することができる。焼成工程における圧力は、通常0.1013MPa以上、好ましくは0.2MPa以上、より好ましくは0.4MPa以上であり、また、通常100MPa以下、好ましくは50MPa以下、より好ましくは20MPa以下、特に好ましくは10MPa以下である。圧力が高すぎると、副生物が多くなる傾向にあり、圧力が低すぎると得られた蛍光体が分解したり、着色したりする可能性があるので、圧力の調整が重要である。
なお、第一の焼成工程は、必要に応じて、複数回繰り返し行なってもよい。その際は、一回目の焼成と、二回目の焼成とで、焼成条件を同一にしてもよいし、異なるものにしてもよい。
(第一の焼成工程で得られる焼成物)
第一の焼成工程で得られる焼成物は、結晶相を含んでいることが好ましく、前記結晶相としてMSi相(但し、Mはアルカリ土類金属元素を表わす。)を含有することがより好ましく、MSi相が主相として存在することがさらに好ましい。
ここで、主相とは、焼成物中の結晶相のうち全体の50質量%以上を占める結晶相を指す。焼成物中の結晶相全体に対するMSi相の割合は、通常50質量%以上、好ましくは55質量%以上であり、通常80%以下、好ましくは75%以下である。
また、MSi相とは、MSiと同様の結晶構造を有する相である。具体的には、MSiのほか、結晶構造におけるSiサイト一部のSiをAlが、Nサイトの一部をOが置換したM(Si,Al)(N,O)が挙げられる。結晶相の空間群としては、「International Tables for Crystallography(Third, revised edition)、Volume A Space−Group Symmetry」に基づく31番〔Pmn21〕、または9番〔Cc〕のいずれかに属するものであることが好ましく、31番〔Pmn21〕に属するものが最も好ましい。なお、空間群は、電子回折、又は収束電子回折により一義的に求めることができる。
Si相を有するかどうかを簡便に判断する方法として粉末X線回折が挙げられる。粉末X線回折により得られた回折パターンの中にSrSi、CaSi、BaSiに類似のパターンが含まれていれば、MSi相を有すると判断することができる。具体的には、得られた回折パターンのピークのうち5本以上が、前記SrSi、CaSi、BaSiの代表的なピークと、2θの値が±0.5°の範囲で一致する場合にMSi相を有すると判断することができる。
また、MSi相は、ピーク波長455nmの光で励起すると、通常、赤色に発光するものである。
第一の焼成工程で得られる焼成物は微粒子の形態を有していることが好ましい。具体的には、質量メジアン径D50が、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、また、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下の範囲の微粒子である。質量メジアン径D50が上記範囲内であることにより、第二の焼成工程において蛍光体粒子の成長速度を適切な速度に制御することができ、結晶性が高く、特に内部量子効率の高い蛍光体を製造することができる。
質量メジアン径D50は、例えば、レーザー回折・散乱法により粒度分布を測定して得られる、質量基準粒度分布曲線から求められる値である。メジアン径D50は、この質量基準粒度分布曲線において、積算値が50%のときの粒径値を意味する。
(焼成物を解砕する工程)
第一の焼成工程の後、後述する第二の焼成工程の前に、焼成物を解砕する工程を設けると、第二の焼成工程の焼成時間を短縮できるため好ましい。焼成物を塊砕する方法は特に制限されないが、前述の混合工程と同様の方法で行なうことができる。
(第二の焼成工程)
続いて、第一の焼成工程で得られた焼成物(もしくは、それを解砕したもの)をさらに焼成する(第二の焼成工程)。また、第二の焼成工程における最高到達温度は、第一の焼成工程における最高到達温度より高くする。このように、第一の焼成工程の焼成温度を比較的低い温度で行ない、その後で、比較的高い温度で焼成する第二の焼成工程を設けることで、そのメカニズムの詳細は明らかではないが、蛍光体の粒子成長が促進され、内部量子効率が向上するものと推測される。
上述の焼成物を、第一の焼成工程と同様に、必要に応じて乾燥後、坩堝等の容器内に充填し、焼成炉、加圧炉等を用いて焼成を行なう。第二の焼成工程における好ましい諸条件を以下に述べる。
本発明の製造方法では、第二の焼成工程における焼成時の最高到達温度は、1600℃以上、2000℃以下の温度範囲である。好ましくは1650℃以上、より好ましくは1700℃以上であり、また、好ましくは1950℃以下、より好ましくは1900℃以下である。
焼成温度が高すぎると第二の焼成工程で得られる焼成物が分解してしまい、所望の組成の蛍光体が得られにくい傾向があり、低すぎると固相反応の進行が遅くなり、蛍光体粒子が十分に成長しない傾向にある。
なお、第二の焼成工程における焼成時の最高到達温度は、第一の焼成工程における焼成時の最高到達温度よりも、50℃以上高くすることが好ましく、100℃以上高くすることがより好ましい。
第二の焼成工程における焼成温度以外の他の諸条件は、第一の焼成工程と同様に行なうことができる。
なお、本発明の製造方法においては、最高到達温度が互いに異なる焼成工程を2工程以上有していれば特に制限はなく、上述の第一の焼成工程、第二の焼成工程に加えて、必要に応じて第三の焼成工程、第四の焼成工程等を設けてもよい。
(後処理工程)
第二の焼成工程で得られる焼成物は、粒状又は塊状となる。これを解砕、粉砕及び/又は分級操作を組み合わせて所定のサイズの粉末にする。ここでは、D50が約30μm以下になるように処理するとよい。
具体的な処理の例としては、合成物を目開き45μm程度の篩を用いて分級処理し、篩を通過した粉末を次工程に回す方法、或いは合成物をボールミルや振動ミル、ジェットミル等の一般的な粉砕機を使用して所定の粒度に粉砕する方法が挙げられる。後者の方法において、過度の粉砕は、光を散乱しやすい微粒子を生成するだけでなく、粒子表面に結晶欠陥を生成し、発光効率の低下を引き起こす可能性がある。
また、必要に応じて、蛍光体(焼成物)を洗浄する工程を設けてもよい。洗浄工程後は、蛍光体を付着水分がなくなるまで乾燥させて、使用に供する。さらに、必要に応じて、凝集をほぐすために分散・分級処理を行ってもよい。
[2.蛍光体]
<蛍光体の組成>
本発明の製造方法で得られる蛍光体(以下、「本発明の蛍光体」と称する場合がある。)は、
下記式[2]:
(A 1−x2,Z x2a2 b2 c2d2e2 [2]
(式[2]中、AはSrを必須とするアルカリ土類金属元素を示し、ZはEuまたはCeを必須とする1種類以上の付活剤元素を示し、DはSiを必須とする4価の金属元素を示し、EはAlを必須とする3価の金属元素を示し、xlは0.0001≦x2≦0.20を満たす数を示し、a2、b2、c2、d2及びe2は、それぞれ、
0.95≦a2≦1.05
2.5≦b2≦4.0
1.0≦c2≦2.5
4.5≦(b2+c2)/a2≦5.5
5.5≦d2≦7.0
0<e2≦1.5
を満たす数を示す。)で表される組成を有する結晶相を含むものである。
上記のとおり、前記式[2]において、「A」は、Srを必須とするアルカリ土類金属元素を示す。A元素全体に対するSrの占める割合は、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましい。また、A元素は、Sr以外に、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属元素を含んでいても良いが、中でも、Srと共にCaを含んでいると結晶構造が安定化し好ましい。
前記式[2]において、A元素全体に対する好ましいCaの割合は、通常0.001モル%以上80モル%以下を満たす数であり、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは1モル%以上、さらに好ましくは5モル%以上、特に好ましくは7モル%以上、最も好ましくは9モル%以上であり、また、好ましくは65モル%以下、さらに好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは35モル%以下、特に好ましくは20モル%以下である。
Caの割合が上記範囲であると、格子体積がより適切な大きさになり、骨格構造がひずみのない安定的な状態をとることができる。
前記式[2]において、「Z」はユーロピウムまたはセリウムを必須とする付活剤元素を示す。付活剤であるユウロピウム(Eu)またはセリウム(Ce)以外に、他の付活剤としてチタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)及びイッテルビウム(Yb)よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の金属元素で置換されていてもよい。これら他の付活剤のうち、Pr、Sm、Tb及びYbよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素が好ましい。
付活剤元素全体に対するユウロピウム(Eu)またはセリウム(Ce)の割合は、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上が好ましい。また、付活剤元素全体に対するユウロピウム(Eu)の割合は、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がより好ましい。
前記式[2]において、「D」は、Siを必須とする4価の金属元素を示す。D元素は、得られる蛍光体の特性に影響を与えない範囲内で、ゲルマニウム(Ge)等を含有していてもよい。D元素全体に対するSiの占める割合は、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上が特に好ましい。D元素全体に対するSiの占める割合が少なすぎると不純物が生成され、目的の組成の蛍光体を得るのが困難となる傾向がある。
前記式[2]において、「E」は、Alを必須とする3価の金属元素を示す。E元素は、得られる蛍光体の特性に影響を与えない範囲内で、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)等を含有していてもよい。E元素全体に対するAlの占める割合は、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上が特に好ましい。E元素全体に対するAlの占める割合が少なすぎると不純物が生成され、目的の組成の蛍光体を得るのが困難となる傾向がある。
前記式[2]において、「N」は、窒素を示す。N元素は、窒素を主成分としていればよく、得られる蛍光体の特性に影響を与えない範囲内で、フッ素(F)、塩素(Cl)等を含有していてもよい。
前記式[2]において、「O」は、酸素を示す。O元素は、酸素を主成分としていればよく、得られる蛍光体の特性に影響を与えない範囲内で、F、Cl等を含有していてもよい。
また、本発明の蛍光体は、上述したA、Z、D、E、NおよびOの各構成元素の他に、本発明の効果に影響を与えない範囲内で不可避的に混入してしまう元素、例えば不純物元素などを含んでいてもよい。
前記式[2]において、「x」は付活剤元素(EuまたはCe)のモル比を示す。xは、0.0001≦x≦0.20を満たす数であり、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、さらに好ましくは0.01以上であり、また、好ましくは0.19以下、より好ましくは0.17以下、さらに好ましくは0.15以下、特に好ましくは0.12以下である。
xの値が大きすぎると濃度消光が起こって輝度が低下する傾向にあり、小さすぎると吸収効率が低下する傾向にあり、それに伴い、輝度が低下する傾向にある。
前記式[2]において、「a2」はA元素(Srを必須とするアルカリ土類金属元素)と付活剤元素(Z)のモル比の和を示し、a2は、0.95≦a2≦1.05を満たす数であり、好ましくは2.6以上、より好ましくは2.7以上、さらに好ましくは2.8以上であり、特に好ましくは2.85以上であり、また、好ましくは3.9以下、より好ましくは3.8以下、さらに好ましくは3.7以下、特に好ましくは3.65以下である。
前記式[2]において、「b2」はD元素(Siを必須とする4価の金属元素)のモル比を示し、b2は、2.5≦b2≦4.0を満たす数であり、好ましくは2.8以上、より好ましくは3.0以上、さらに好ましくは3.2以上であり、特に好ましくは3.4以上であり、また、好ましくは3.9以下、より好ましくは3.8以下、さらに好ましくは3.7以下、特に好ましくは3.65以下である。
前記式[2]において、「c2」はE元素(Alを必須とする3価の金属元素)のモル比を示し、c2は、1.0≦c2≦2.5を満たす数であり、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.3以上であり、特に好ましくは1.35以上であり、また、好ましくは2.2以下、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.8以下、特に好ましくは1.6以下である。
また、LED等と組み合わせて演色性の高い発光装置を製造する場合、赤色発光の蛍光体が求められるため、前記式[2]において、b2およびc2がそれぞれ、3.7≦b2≦4.0、1.0≦c2≦1.3を満たすようにすることが好ましい。b2およびc2がそれぞれ上記範囲を満たすと、蛍光体を構成する結晶構造の共有結合性が高められ、発光ピークが赤色にシフトするからである。
一方、輝度の高い蛍光体を得たい場合は、黄色発光の蛍光体が求められるため、前記式[2]において、b2およびc2がそれぞれ、3.0≦b2≦3.4、1.6≦c2≦2.0を満たすようにすることが好ましい。b2およびc2がそれぞれ上記範囲を満たすと、蛍光体を構成する結晶構造の共有結合性が弱められ、発光ピークが黄色にシフトするからである。
また、(b2+c2)/a2は、A元素と付活剤元素のモル比の和に対するD元素とE元素のモル比の和の割合であり、通常、4.5≦(b2+c2)/a2≦5.5を満たす数となる。さらに、(b2+c2)/a2は、好ましくは4.6以上、より好ましくは4.7以上、さらに特に好ましくは4.8以上であり、また、好ましくは5.4以下、より好ましくは5.3以下、さらに好ましくは5.2以下である。
前記式[2]において、「d2」はN元素(窒素)のモル比を示し、d2は、5.5≦d2≦7.0を満たす数であり、好ましくは5.8以上、より好ましくは6.0以上、さらに好ましくは6.2以上、特に好ましくは6.4以上であり、また、好ましくは6.9以下、より好ましくは6.8以下、さらに好ましくは6.7以下、特に好ましくは6.75以下である。
前記式[2]において、「e2」はO元素(酸素)のモル比を示し、e2は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.6以上、また、好ましくは1.9以下、より好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.7以下である。
以上の仕込み組成であると、内部量子効率が高い蛍光体が得られるが、LED等と組み合わせて演色性の高い発光装置を製造したい場合は、赤色発光の蛍光体が求められるため、b2及びc2は、それぞれ、3.7≦b2≦4.0、1.0≦c2≦1.3を満たすことが好ましい。
また、輝度の高い蛍光体が求められる場合は、b2及びc2は、それぞれ、3.0≦b2≦3.4、1.6≦c2≦2.0を満たすことが好ましい。
<結晶構造>
(結晶系)
本発明の蛍光体が含有する結晶相の晶系は、斜方晶系もしくは単斜晶系であり、斜方晶系であることが好ましい。
本発明の蛍光体は、SrAlSiと同様の結晶構造を有することが好ましく、結晶相の空間群としては、「International Tables for Crystallography(Third, revised edition)、Volume A Space−Group Symmetry」に基づく62番〔Pnma〕、33番〔Pna21〕、19番〔P2111〕、7番〔Pc〕、または4番〔P21〕のいずれかに属するものであることが好ましく、33番〔Pna21〕に属するものが最も好ましい。
なお、空間群は、電子回折、又は収束電子回折により一義的に求めることができる。
(結晶相の格子体積)
本発明の蛍光体は、格子定数から算出した単位格子体積(V)が1220×10pm以上、1246×10pm以下である結晶相を含有する。単位格子体積が上記範囲であると、付活剤を導入することにより生じる骨格構造のひずみを抑制でき、安定したエネルギー伝達が可能であることから、発光強度が向上する。
本発明の蛍光体が含有する結晶相の、格子定数から算出される単位格子体積(10pm)は、上記のとおり、通常1220以上1246以下であるが、好ましくは1224以上、より好ましくは1228以上、さらに好ましくは1232以上、さらに好ましくは1236以上、特に好ましくは1240以上であり、また、好ましくは1245以下、より好ましくは1244以下である。
単位格子体積が大きすぎると発光強度が低下し、逆に単位格子体積が小さすぎると骨格構造が不安定化して別の構造の不純物が副生するようになり、発光強度の低下や色純度の低下を招く傾向がある。
本発明の蛍光体が含有する結晶相の単位格子体積を実現する手段は、面状の骨格構造中に開いた孔が構成する空隙(Srサイト)に、SrとCaを一定の割合で導入することが好ましいが、SrとCaの他に、Mg、LiなどSrよりイオン半径の小さい別の原子を導入してもよい。またSrサイトに欠損を残すことにより単位格子体積を調節することも好適に行われる。さらに、骨格構造を小さくする効果が大きいLiなどの小さい原子または欠損と、骨格構造を大きくする効果があるBaなどの大きい原子を両方導入することにより、適当な骨格構造を構成することも可能である。さらには、Srサイトが二種類以上ある場合、そのサイトの配位数、配位距離などに応じて導入する原子または欠損の種類や割合を適宜選択することも好適に行われる。
(粉末X線回折パターン)
本発明の蛍光体は下記の粉末X線回折(XRD)パターンを示す結晶相を含むことが好ましい。
本発明の蛍光体の結晶相は、CuKαのX線源を用いたX線回折測定において回折角(2θ)31.0°〜31.9゜の範囲(R0)に少なくとも1本の回折ピークが観測される結晶相であって、当該回折ピークのうち高さが最も高い回折ピークを基準回折ピーク(P0)とし、P0のブラッグ角(θ0)より導かれる5つの回折ピークを低角度側から順にそれぞれP1、P2、P3、P4及びP5とし、これらの回折ピークの回折角の角度範囲を、R1、R2、R3、R4及びR5としたときに、R1、R2、R3、R4及びR5が、それぞれ、
R1=R1s〜R1e、
R2=R2s〜R2e、
R3=R3s〜R3e、
R4=R4s〜R4e、
R5=R5s〜R5eの角度範囲を示すものであり、
R1、R2、R3、R4及びR5のすべての範囲に回折ピークが少なくとも1本存在し、且つ、P0、P1、P2、P3、P4及びP5のうち、回折ピーク高さが最も高い回折ピークの高さに対して、P0の強度が回折ピーク高さ比で通常20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、特に好ましくは50%以上の強度を有するものであり、P1、P2、P3、P4、及びP5のうち、回折ピーク高さが最も高い回折ピークの高さに対して、それ以外のP1、P2、P3、P4、及びP5のうち少なくとも1以上のピーク強度が回折ピーク高さ比で、通常5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、特に好ましくは20%以上の結晶相であって、P1、P2、P3、P4又はP5の少なくとも1以上のピーク強度が回折ピーク高さ比で5%以上の結晶相である。
ここで、角度範囲R0、R1、R2、R3、R4及びR5のそれぞれの角度範囲内に回折ピークが2本以上存在する場合は、これらのうち最もピーク強度の高いピークを、それぞれ、P0、P1、P2、P3、P4及びP5とする。
また、R1s、R2s、R3s、R4s及びR5sは、それぞれ、R1、R2、R3、R4及びR5の開始角度、R1e、R2e、R3e、R4e及びR5eは、それぞれR1、R2、R3、R4及びR5の終了角度を示すものであって、以下の角度を示す。
R1s:2×arcsin{sin(θ0)/(1.268×1.015)}
R1e:2×arcsin{sin(θ0)/(1.268×0.985)}
R2s:2×arcsin{sin(θ0)/(1.037×1.015)}
R2e:2×arcsin{sin(θ0)/(1.037×0.985)}
R3s:2×arcsin{sin(θ0)/(1.023×1.015)}
R3e:2×arcsin{sin(θ0)/(1.023×0.985)}
R4s:2×arcsin{sin(θ0)/(0.882×1.015)}
R4e:2×arcsin{sin(θ0)/(0.882×0.985)}
R5s:2×arcsin{sin(θ0)/(0.788×1.015)}
R5e:2×arcsin{sin(θ0)/(0.788×0.985)}
<蛍光体の特性>
(発光ピーク波長)
本発明の蛍光体は、通常580nm以上、好ましくは590nm以上であり、また、通常630nm以下、好ましくは620nm以下の波長範囲に発光ピークを有する。即ち、黄色〜赤色系の発光色を有するものである。
(CIE色度座標)
本発明の蛍光体のCIE色度座標のx値は、通常0.400以上、好ましくは0.450以上、より好ましくは0.500以上、特に好ましくは5.20以上であり、通常0.660以下、好ましくは0.630以下、より好ましくは0.610以下、より好ましくは0.590以下、特に好ましくは0.560以下である。また、本発明の蛍光体のCIE色度座標のy値は、通常0.300以上、好ましくは0.350以上、より好ましくは0.400以上、さらに好ましくは0.425以上であり、通常0.550以下、好ましくは0.525以下、より好ましくは0.500以下、特に好ましくは0.460以下である。
CIE色度座標が上記の範囲にあることで、演色性のよい発光色を得ることができる。
(励起波長)
本発明の蛍光体は、通常300nm以上、好ましくは330nm以上、より好ましくは360nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下、より好ましくは460nm以下の波長範囲に励起ピークを有する。即ち、紫外から青色領域の光で励起される。
(温度消光特性(発光強度維持率))
本発明の蛍光体は、温度特性にも優れるものである。具体的には、波長405nmにピークを有する光を照射した場合における25℃での発光スペクトル図中の発光ピーク強度値に対する100℃での発光スペクトル図中の発光ピーク強度値の割合が、通常50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。また、通常の蛍光体は温度上昇と共に発光強度が低下するので、該割合が100%を越えることは考えられにくいが、何らかの理由により100%を超えることがあってもよい。ただし150%を超えるようであれば、温度変化により色ずれを起こす傾向となる。
(量子効率)
本発明の蛍光体における455nmの励起光で励起した場合の内部量子効率は77%以上であることが好ましく、さらに好ましくは80%以上であり、最も好ましくは83%以上である。内部量子効率が高い蛍光体は、LEDや他の蛍光体等の光源と組み合わせた場合に、効率のよい発光装置を製造することができる。
本発明の蛍光体の外部量子効率(η)は、通常40%以上、好ましくは50以上、更に好ましくは60%以上である。外部量子効率は高いほど好ましく、外部量子効率が低くなると発光効率が低下する傾向がある。
内部量子効率、外部量子効率、及び吸収効率などは、例えば、後述する実施例に記載の方法や、特開2008−285658号公報の段落[0064]〜[0076]、[0265]〜[0276]に記載の方法で測定することができる。
(粒径)
本発明の蛍光体は、通常、微粒子の形態を有している。具体的には、質量メジアン径D50が、通常2μm以上、好ましくは5μm以上、また、通常30μm以下、好ましくは20μm以下の範囲の微粒子である。質量メジアン径D50が大きすぎると、例えば後述する封止材料として用いる樹脂中への分散性が悪くなる傾向があり、小さすぎると低輝度となる傾向がある。
質量メジアン径D50は、例えば、レーザー回折・散乱法により粒度分布を測定して得られる、質量基準粒度分布曲線から求められる値である。メジアン径D50は、この質量基準粒度分布曲線において、積算値が50%のときの粒径値を意味する。
[3.蛍光体の用途]
本発明の蛍光体は、蛍光体を使用する任意の用途に用いることができる。また、本発明の蛍光体を単独で使用することも可能であるが、2種以上併用したり、本発明の蛍光体とその他の蛍光体とを併用したりした、任意の組み合わせの蛍光体混合物として用いることも可能である。
本発明の蛍光体は、公知の液体媒体(例えば、シリコーン系化合物等)と混合して、蛍光体含有組成物として用いることもできる。
また、本発明により得られる蛍光体は、特に、紫外光で励起可能であるという特性を生かして、紫外光を発する光源と組み合わせることで、各種の発光装置に好適に用いることができる。
発光装置の発光色としては紫色や、白色に制限されず、蛍光体の組み合わせや含有量を適宜選択することにより、電球色(暖かみのある白色)やパステルカラー等、任意の色に発光する発光装置を製造することができる。こうして得られた発光装置を、画像表示装置の発光部(特に液晶用バックライトなど)や照明装置として使用することができる。
[4.蛍光体含有組成物]
本発明の蛍光体は、液体媒体と混合して用いることもできる。特に、本発明の蛍光体を発光装置等の用途に使用する場合には、これを液体媒体中に分散させた形態で用いることが好ましい。本発明の蛍光体を液体媒体中に分散させたものを、適宜「本発明の蛍光体含有組成物」と呼ぶものとする。
(蛍光体)
上記蛍光体含有組成物に含有させる本発明の蛍光体の種類に制限は無く、任意に選択することができる。また、蛍光体含有組成物に含有させる本発明の蛍光体は、1種のみであってもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。更に、蛍光体含有組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限り、本発明の蛍光体以外の蛍光体を含有させてもよい。
(液体媒体)
蛍光体含有組成物に用いられる液体媒体の種類は特に限定されず、通常、半導体発光素子を覆ってモールディングすることのできる硬化性材料を用いることができる。硬化性材料とは、流体状の材料であって、何らかの硬化処理を施すことにより硬化する材料のことをいう。ここで、流体状とは、例えば液状又はゲル状のことをいう。硬化性材料は、固体発光素子から発せられた光を蛍光体へ導く役割を担保するものであれば、具体的な種類に制限は無い。また、硬化性材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。したがって、硬化性材料としては、無機系材料及び有機系材料並びに両者の混合物のいずれを用いることも可能である。
無機系材料としては、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液、またはこれらの組み合わせを固化した無機系材料(例えばシロキサン結合を有する無機系材料)等を挙げることができる。
一方、有機系材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体例を挙げると、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。
これら硬化性材料の中では、半導体発光素子からの発光に対して劣化が少なく、耐アルカリ性、耐酸性、耐熱性にも優れる珪素含有化合物を使用することが好ましい。珪素含有化合物とは分子中に珪素原子を有する化合物をいい、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系化合物)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。中でも、透明性、接着性、ハンドリングの容易さ、機械的、熱的応力の緩和特性に優れる等の点から、シリコーン系材料が好ましい。
シリコーン系材料とは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば、縮合型、付加型、改良ゾルゲル型、光硬化型等のシリコーン系材料を用いることができる。
縮合型シリコーン系材料としては、例えば、特開2007−112973〜112975号公報、特開2007−19459号公報、特開2008−34833号公報等に記載の半導体発光デバイス用部材を用いることができる。縮合型シリコーン系材料は半導体発光デバイスに用いられるパッケージや電極、発光素子などの部材との接着性に優れるため、密着向上成分の添加を最低限とすることができ、架橋はシロキサン結合主体のため耐熱性・耐光性に優れる利点がある。
付加型シリコーン系材料としては、例えば、特開2004−186168号公報、特開2004−221308号公報、特開2005−327777号公報等に記載のポッティング用シリコーン材料、特開2003−183881号公報、特開2006−206919号公報等に記載のポッティング用有機変性シリコーン材料、特開2006−324596号公報に記載の射出成型用シリコーン材料、特開2007−231173号公報に記載のトランスファー成型用シリコーン材料等を好適に用いることができる。付加型シリコーン材料は、硬化速度や硬化物の硬度などの選択の自由度が高い、硬化時に脱離する成分が無く硬化収縮しにくい、深部硬化性に優れるなどの利点がある。
また、縮合型の一つである改良ゾルゲル型シリコーン系材料としては、例えば、特開2006−077234号公報、特開2006−291018号公報、特開2007−119569号公報等に記載のシリコーン材料を好適に用いることができる。改良ゾルゲル型のシリコーン材料は高架橋度で耐熱性・耐光性高く耐久性に優れ、ガス透過性低く耐湿性の低い蛍光体の保護機能にも優れる利点がある。
光硬化型シリコーン系材料としては、例えば、特開2007−131812号公報、特開2007−214543号公報等に記載のシリコーン材料を好適に用いることができる。紫外硬化方シリコーン材料は、短時間に硬化するため生産性に優れる、硬化に高い温度をかける必要が無く発光素子の劣化が起こりにくいなどの利点がある。
これらのシリコーン系材料は単独で使用してもよいし、混合することにより硬化阻害が起きなければ複数のシリコーン系材料を混合して用いてもよい。
(液体媒体及び蛍光体の含有率)
液体媒体の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の蛍光体含有組成物全体に対して、通常25質量%以上、好ましくは40質量%以上であり、また、通常99質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。液体媒体の量が多い場合には特段の問題は起こらないが、半導体発光装置とした場合に所望の色度座標、演色指数、発光効率等を得るには、通常、上記のような配合比率で液体媒体を用いることが望ましい。一方、液体媒体が少な過ぎると流動性が低下し取り扱い難くなる可能性がある。
液体媒体は、本発明の蛍光体含有組成物において、主にバインダーとしての役割を有する。液体媒体は、一種を単独で用いてもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。例えば、耐熱性や耐光性等を向上させることを目的として珪素含有化合物を使用する場合は、当該珪素含有化合物の耐久性を損なわない程度に、エポキシ樹脂など他の熱硬化性樹脂を含有してもよい。この場合、他の熱硬化性樹脂の含有量は、バインダーである液体媒体全量に対して、通常25質量%以下、好ましくは10質量%以下とすることが望ましい。
蛍光体含有組成物中の蛍光体の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の蛍光体含有組成物全体に対して、通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、通常75質量%以下、好ましくは60質量%以下である。また、蛍光体含有組成物中の蛍光体に占める本発明の蛍光体の割合についても任意であるが、通常30質量%以上、好ましくは50質量%以上であり、通常100質量%以下である。蛍光体含有組成物中の蛍光体含有量が多過ぎると蛍光体含有組成物の流動性が劣り、取り扱いにくくなることがあり、蛍光体含有量が少な過ぎると発光装置の発光の効率が低下する傾向にある。
(その他の成分)
蛍光体含有組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限り、蛍光体及び液体媒体以外に、その他の成分、例えば、屈折率調整のための金属酸化物や、拡散剤、フィラー、粘度調整剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有させても良い。その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[5.発光装置]
本発明の発光装置は、第1の発光体(励起光源)と、当該第1の発光体からの光を可視光に変換して、可視光を発し得る第2の発光体とを有する発光装置であって、該第2の発光体として前述の[1.蛍光体]の項で記載した本発明の蛍光体を1種以上含む第1の蛍光体を含有するものである。
本発明の発光装置に用いられる本発明の蛍光体の好ましい具体例としては、前述の[1.蛍光体]の欄に記載した本発明の蛍光体や、後述の[実施例]の欄の各実施例に用いた蛍光体が挙げられる。また、本発明の蛍光体は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の発光装置は、第1の発光体(励起光源)を有し、且つ、第2の発光体として少なくとも本発明の蛍光体を使用している他は、その構成は制限されず、公知の装置構成を任意にとることが可能である。装置構成の具体例については後述する。
本発明の発光装置のうち、特に白色発光装置として、具体的には、第1の発光体として後述するような励起光源を用い、本発明の蛍光体の他、後述するような青色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「青色蛍光体」という)、緑色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「緑色蛍光体」という)、赤色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「赤色蛍光体」という)、黄色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「黄色蛍光体」という)等の公知の蛍光体を任意に組み合わせて使用し、公知の装置構成をとることにより得られる。
ここで、該白色発光装置の白色とは、JIS Z 8701により規定された、(黄みの)白、(緑みの)白、(青みの)白、(紫みの)白及び白の全てを含む意であり、このうち好ましくは白である。
<発光装置の構成>
(第1の発光体)
本発明の発光装置における第1の発光体は、後述する第2の発光体を励起する光を発光するものである。
第1の発光体の発光ピーク波長は、後述する第2の発光体の吸収波長と重複するものであれば、特に制限されず、幅広い発光波長領域の発光体を使用することができる。通常は、紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体が使用される。
第1の発光体の発光ピーク波長の具体的数値としては、通常300nm以上、好ましくは330nm以上、より好ましくは360nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下、より好ましくは460nm以下の発光ピーク波長を有する発光体を使用することが望ましい。
第1の発光体としては、一般的には半導体発光素子が用いられ、具体的には発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)等が使用できる。その他、第1の発光体として使用できる発光体としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス発光素子、無機エレクトロルミネッセンス発光素子等が挙げられる。但し、第1の発光体として使用できるものは本明細書に例示されるものに限られない。
中でも、第1の発光体としては、GaN系化合物半導体を使用したGaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、前記蛍光体と組み合わせることによって、低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常GaN系LEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDとしては、AlGaN発光層、GaN発光層又はInGaN発光層を有しているものが好ましい。中でも、発光強度が非常に高いことから、GaN系LEDとしては、InGaN発光層を有するものが特に好ましく、InGaN層とGaN層との多重量子井戸構造のものがさらに好ましい。
なお、上記においてX+Yの値は、通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節するうえで好ましいものである。
GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlGaN層、GaN層、又はInGaN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高くて好ましく、更にヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率が更に高いため、より好ましい。
なお、第1の発光体は、1個のみを用いてもよく、2個以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(第2の発光体)
本発明の発光装置における第2の発光体は、上述した第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する発光体であり、第1の蛍光体として本発明の蛍光体を1種以上含有するとともに、その用途等に応じて適宜、後述する第2の蛍光体(青色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体、橙色蛍光体、赤色蛍光体等)を含有する。また、例えば、第2の発光体は、第1及び第2の蛍光体を封止材料中に分散させて構成される。
上記第2の発光体中に用いられる、本発明の蛍光体以外の蛍光体(即ち、第2の蛍光体)の組成には特に制限はないが、母体結晶となる、Y、YVO、ZnSiO、Yl512、SrSiO等に代表される金属酸化物、SrSi等に代表される金属窒化物、Ca(POCl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物、YS、LaS等に代表される酸硫化物等にCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを付活元素又は共付活元素として組み合わせたものが挙げられる。
好ましい結晶母体の具体例を表1に示す。
但し、上記の母体結晶及び付活元素又は共付活元素は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は近紫外から可視領域の光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
具体的には、蛍光体として以下に挙げるものを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる蛍光体はこれらに限られるものではない。なお、以下の例示では、前述の通り、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。
(第1の蛍光体)
本発明の発光装置における第2の発光体は、少なくとも上述の本発明の蛍光体を含む第1の蛍光体を含有する。本発明の蛍光体は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよく、所望の発光色となるよう、本発明の蛍光体の組成を適宜調整すればよい。
(第2の蛍光体)
本発明の発光装置における第2の発光体は、その用途に応じて、上述の第1の蛍光体以外にも蛍光体(即ち、第2の蛍光体)を含有していてもよい。通常、これらの第2の蛍光体は、第2の発光体の発光の色調を調節するために使用されるため、第2の蛍光体としては第1の蛍光体とは異なる色の蛍光を発する蛍光体を使用することが多い。例えば、第1の蛍光体として緑色蛍光体を使用する場合、第2の蛍光体としては、青色蛍光体、赤色蛍光体、黄色蛍光体等の緑色蛍光体以外の蛍光体を用いるとよい。但し、第1の蛍光体と同色の蛍光体を第2の蛍光体として用いることも可能である。
本発明の発光装置に使用される第2の蛍光体の質量メジアン径D50は、通常2μm以上、中でも5μm以上、また、通常30μm以下、中でも20μm以下の範囲であることが好ましい。質量メジアン径D50が小さ過ぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう傾向がある。一方、質量メジアン径が大き過ぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。
(青色蛍光体)
本発明の蛍光体に加えて青色蛍光体を使用する場合、当該青色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、青色蛍光体の発光ピーク波長は、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、より好ましくは440nm以上、また、通常490nm以下、好ましくは480nm以下、より好ましくは470nm以下、更に好ましくは460nm以下の波長範囲にあることが好適である。使用する青色蛍光体の発光ピーク波長がこの範囲にあると、本発明の蛍光体の励起帯と重なり、当該青色蛍光体からの青色光により、本発明の蛍光体を効率良く励起することができるからである。このような青色蛍光体として使用できる蛍光体を表2に示す。
以上の中でも、青色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu、(Ba,Ca,Mg,Sr)SiO:Eu、(Ba,Ca,Sr)MgSiO8:Euが好ましく、(Ba,Sr)MgAl1017:Eu、(Ca,Sr,Ba)10(PO(Cl,F):Eu、BaMgSi:Euがより好ましく、Sr10(POCl:Eu、BaMgAl1017:Euが特に好ましい。
(緑色蛍光体)
本発明の蛍光体に加えて緑色蛍光体を使用する場合、当該緑色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、緑色蛍光体の発光ピーク波長は、通常500nmより大きく、中でも510nm以上、更には515nm以上、また、通常550nm以下、中でも542nm以下、更には535nm以下の範囲であることが好ましい。この発光ピーク波長が短過ぎると青味を帯びる傾向がある一方で、長過ぎると黄味を帯びる傾向があり、何れも緑色光としての特性が低下する場合がある。このような緑色蛍光体として利用できる蛍光体を表3に示す。
以上の中でも、緑色蛍光体としては、Y(Al,Ga)12:Tb、CaSc:Ce、Ca(Sc,Mg)Si12:Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Si,Al)(O,N):Eu(β−sialon)、(Ba,Sr)Si12:N:Eu、SrGa:Eu、BaMgAl1017:Eu,Mnが好ましい。
得られる発光装置を照明装置に用いる場合には、Y(Al,Ga)12:Tb、CaSc:CeCa(Sc,Mg)Si12:Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Si,Al)(O,N):Eu(β−sialon)、(Ba,Sr)Si12:Euが好ましい。
また、得られる発光装置を画像表示装置に用いる場合には、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Si,Al)(O,N):Eu(β−sialon)、(Ba,Sr)Si12:Eu、SrGa:Eu、BaMgAl1017:Eu,Mnが好ましい。
(黄色蛍光体)
本発明の蛍光体に加えて黄色蛍光体を使用する場合、当該黄色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、黄色蛍光体の発光ピーク波長は、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。このような黄色蛍光体として利用できる蛍光体を表4に示す。
以上の中でも、黄色蛍光体としては、YAl12:Ce、(Y,Gd)l512:Ce、(Sr,Ca,Ba,Mg)SiO:Eu、(Ca,Sr)Si:Euが好ましい。
(橙色ないし赤色蛍光体)
本発明の蛍光体に加えて橙色ないし赤色蛍光体を使用する場合、当該橙色ないし赤色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、橙色ないし赤色蛍光体の発光ピーク波長は、通常570nm以上、好ましくは580nm以上、より好ましくは585nm以上、また、通常780nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは680nm以下の波長範囲にあることが好適である。このような橙色ないし赤色蛍光体として使用できる蛍光体を表5に示す。
以上の中でも、赤色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、(La,Y)S:Eu、Eu(ジベンゾイルメタン)3・1,10−フェナントロリン錯体等のβ−ジケトン系Eu錯体、カルボン酸系Eu錯体、KSiF:Mnが好ましく、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Sr,Ca)AlSi(N,O):Eu、(La,Y)S:Eu、KSiF:Mnがより好ましい。
また、橙色蛍光体としては、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Ceが好ましい。
[6.発光装置の実施形態]
<発光装置の実施形態>
以下、本発明の発光装置について、具体的な実施の形態を挙げて、より詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
本発明の発光装置の一例における、励起光源となる第1の発光体と、蛍光体を有する蛍光体含有部として構成された第2の発光体との位置関係を示す模式的斜視図を図1に示す。図1中の符号1は蛍光体含有部(第2の発光体)、符号2は励起光源(第1の発光体)としての面発光型GaN系LD、符号3は基板を表す。相互に接触した状態をつくるために、励起光源(LD)2と蛍光体含有部1(第2の発光体)とそれぞれ別個に作製し、それらの面同士を接着剤やその他の手段によって接触させてもよいし、励起光源(LD)2の発光面上に蛍光体含有部1(第2の発光体)を製膜(成型)させてもよい。これらの結果、励起光源(LD)2と蛍光体含有部1(第2の発光体)とを接触した状態とすることができる。
このような装置構成をとった場合には、励起光源(第1の発光体)からの光が蛍光体含有部(第2の発光体)の膜面で反射されて外にしみ出るという光量損失を避けることができるので、装置全体の発光効率を良くすることができる。
図2(a)は、一般的に砲弾型と言われる形態の発光装置の代表例であり、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。該発光装置4において、符号5はマウントリード、符号6はインナーリード、符号7は励起光源(第1の発光体)、符号8は蛍光体含有部、符号9は導電性ワイヤ、符号10はモールド部材をそれぞれ指す。
また、図2(b)は、表面実装型と言われる形態の発光装置の代表例であり、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。図中、符号22は励起光源(第1の発光体)、符号23は蛍光体含有部(第2の発光体)、符号24はフレーム、符号25は導電性ワイヤ、符号26及び符号27は電極をそれぞれ指す。
<発光装置の用途>
本発明の発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能であるが、演色性が高い、及び色再現範囲が広いことから、中でも照明装置や画像表示装置の光源として、とりわけ好適に用いられる。
(照明装置)
本発明の発光装置を照明装置に適用する場合には、前述のような発光装置を公知の照明装置に適宜組み込んで用いればよい。例えば、図3に示されるような、前述の発光装置4を組み込んだ面発光照明装置11を挙げることができる。
図3は、本発明の照明装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。この図3に示すように、該面発光照明装置は、内面を白色の平滑面等の光不透過性とした方形の保持ケース12の底面に、多数の発光装置13(前述の発光装置4に相当)を、その外側に発光装置13の駆動のための電源及び回路等(図示せず。)を設けて配置し、保持ケース12の蓋部に相当する箇所に、乳白色としたアクリル板等の拡散板14を発光の均一化のために固定してなる。
そして、面発光照明装置11を駆動して、発光装置13の励起光源(第1の発光体)に電圧を印加することにより光を発光させ、その発光の一部を、蛍光体含有部(第2の発光体)としての蛍光体含有樹脂部における前記蛍光体が吸収し、可視光を発光し、一方、蛍光体に吸収されなかった青色光等との混色により演色性の高い発光が得られ、この光が拡散板14を透過して、図面上方に出射され、保持ケース12の拡散板14面内において均一な明るさの照明光が得られることとなる。
(画像表示装置)
本発明の発光装置を画像表示装置の光源として用いる場合には、その画像表示装置の具体的構成に制限は無いが、カラーフィルターとともに用いることが好ましい。例えば、画像表示装置として、カラー液晶表示素子を利用したカラー画像表示装置とする場合は、上記発光装置をバックライトとし、液晶を利用した光シャッターと赤、緑、青の画素を有するカラーフィルターとを組み合わせることにより画像表示装置を形成することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、下記の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は、前記上限または下限の値と下記実施例の値または実施例同士の値との組合せで規定される範囲であってもよい。
[蛍光体の特性測定・評価方法]
各実施例及び比較例において、蛍光体粒子の各種の特性測定・評価は、特に断りの無い限り、以下の手法で行った。
<発光スペクトル>
励起光源として150Wキセノンランプを備え、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)を用いて測定した。
具体的には、励起光源からの光を焦点距離が10cmである回折格子分光器に通し、波長455nmの励起光のみを光ファイバーを通じて蛍光体に照射した。励起光の照射により蛍光体から発生した光を焦点距離が25cmである回折格子分光器により分光し、300nm以上800nm以下の波長範囲においてスペクトル測定装置により各波長の発光強度を測定し、パーソナルコンピュータによる感度補正等の信号処理を経て発光スペクトルを得た。なお、測定時には、受光側分光器のスリット幅を1nmに設定して測定を行った。
また、発光ピーク波長(以下、「ピーク波長」と称することがある。)は、得られた発光スペクトルから読み取った。
<色度座標>
x、y表色系(CIE 1931表色系)の色度座標は、上述の方法で得られた発光スペクトルの360nm〜800nmの波長領域のデータから、JIS Z8724に準じた方法で、JIS Z8701で規定されるXYZ表色系における色度座標xとyとして算出した。
<粉末X線回折>
粉末X線回折装置X’Pert(PANalytical社製)にて精密測定した。測定条件は以下の通りである。また、測定データについては、データ処理用ソフトX’Pert High Score(PANalytical社製)を用い、ベンディングフィルターを5として自動バックグラウンド処理を実施した。
CuKα管球使用
X線出力=45KV,40mA
発散スリット=1/4°,X線ミラー
検出器=半導体アレイ検出器X’Celerator使用
Niフィルター使用
走査範囲 2θ=10°〜65°
読み込み幅=0.05°
計数時間=33秒
<量子効率>
内部量子効率ηを求めるに際し、まず、測定対象となる蛍光体サンプル(例えば蛍光体の粉末等)を、測定精度が保たれるように、十分に表面を平滑にしてセルに詰め、積分球等の集光装置に取り付けた。
該集光装置に、蛍光体サンプルを励起するための発光源として、Xeランプを取り付けた。また、発光源の発光ピーク波長が455nmの単色光となるように、フィルターやモノクロメーター(回折格子分光器)等を用いて調整を行なった。
この発光ピーク波長が調整された発光源からの光を、測定対象の蛍光体サンプルに照射し、発光(蛍光)及び反射光を含むスペクトルを分光測定装置(大塚電子株式会社製 MCPD7000)で測定した。
<吸収効率α
吸収効率αは、蛍光体サンプルによって吸収された励起光のフォトン数Nabsを、励起光の全フォトン数Nで割った値として算出した。
具体的な算出手順は以下の通りである。
まず、後者の励起光の全フォトン数Nを、次のようにして求めた。
すなわち、励起光に対してほぼ100%の反射率Rを持つ物質、例えばLabsphere製「Spectralon」(455nmの励起光に対して98%の反射率Rを持つ)等の白色反射板を測定対象として、蛍光体サンプルと同様の配置で上述の集光装置に取り付け、該分光測定装置を用いて反射スペクトルを測定した(この反射スペクトルを以下「Iref(λ)」とする)。
この反射スペクトルIref(λ)から、下記(式I)で表わされる数値を求めた。なお、下記(式I)の積分区間は、440nm〜470nmとした。下記(式I)で表わされる数値は、励起光の全フォトン数Nに比例する。
また、吸収効率αの測定対象となる蛍光体サンプルを集光装置に取り付けたときの反射スペクトルI(λ)から、下記(式II)で表わされる数値を求めた。なお、上記(式II)の積分区間は、440nm〜470nmとした。下記(式II)で求められる数値は、蛍光体サンプルによって吸収された励起光のフォトン数Nabsに比例する。
以上より、吸収効率αを次の式により算出した。
(数3)
吸収効率α = Nabs/N =(式II)/(式I)

<内部量子効率η
内部量子効率ηは、蛍光現象に由来するフォトンの数NPLを、蛍光体サンプルが吸収したフォトンの数Nabsで割った値として算出した。
上記のI(λ)から、下記式(III)で表わされる数値を求めた。なお、(式III)の積分区間の下限は、471nm〜780nmとした。下記(式III)で求められる数値は、蛍光現象に由来するフォトンの数NPLに比例する。
以上より、内部量子効率ηを次の式により算出した。
(数5)
η = (式III)/(式II)
<走査型電子顕微鏡(SEM)写真>
蛍光体の粒子の形状等を観測するため、実施例7において、SEM(日立社製、S−4500)を用いて500倍でSEM写真を撮影した。
[実施例1〜11]
<原料>
蛍光体原料として、Sr(セラック社製)、Ca(セラック社製)、Si(宇部興産社製)、Al(住友化学社製)、AlN(トクヤマ社製)、Eu(信越化学社製)を用いて、次のとおり蛍光体を調製した。
<秤量および混合>
上記原料を、表6に示す実施例1〜11の各仕込み組成となるように電子天秤で秤量し、アルミナ乳鉢に入れ、均一になるまで粉砕及び混合した。これらの操作は、Nガスで満たしたグローブボックス中で行った。
<焼成工程>
(第一の焼成工程)
得られた原料混合粉末から約1gを秤量し、窒化ホウ素坩堝(BN坩堝)にそのまま充填した。このBN坩堝を、抵抗加熱式真空加圧雰囲気熱処理炉(富士電波工業社製)内に置いた。次いで、5×10−3Pa以下まで減圧した後、室温から800℃まで昇温速度20℃/分で真空加熱した。800℃に達したところで、その温度で維持して炉内圧力が0.92MPaになるまで高純度窒素ガス(99.9995%)を30分間導入した。高純度窒素ガスの導入後、0.92MPaを保持しながら、さらに、昇温速度20℃/分で1200℃まで昇温した。1200℃で5分間保持する間に熱電対から放射温度計に換えて、さらに昇温速度20℃/分で1500℃まで加熱した。1500℃に達したところで6時間維持した。焼成後1200℃まで降温速度20℃/分で冷却し、次いで放冷した。その後、坩堝から取り出した焼成物をアルミナ乳鉢で解砕した。
焼成物の一部を粉末X線回折により分析を行ったところ、強度の高いピークが示すパターンはJCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction Standards)カードの85−0101番に示されているSrSiと同様のパターンを示した。このことから、焼成物はSrSi相(258相)を主相とする結晶相が含まれていることがわかった。
(第二の焼成工程)
続いて、解砕した焼成物を窒化ホウ素坩堝(BN坩堝)にそのまま充填し、熱電対から放射温度計に換えるまでは第一の焼成工程と同様に焼成を行なった。その後、昇温速度20℃/分で1600℃まで加熱し、1600℃に達したところで2時間維持した。さらに昇温速度20℃/分で1850℃まで加熱し、1850℃に達したところで6時間維持した。焼成後1200℃まで降温速度20℃/分で冷却し、次いで放冷した。その後、坩堝から取り出した生成物をアルミナ乳鉢で解砕して、実施例1〜11の蛍光体を得た。
[比較例1〜11]
焼成工程を以下のように変更した以外は、即ち、実施例1〜11において第一の焼成工程を省略したこと以外は、実施例1〜11と同様にして比較例1〜11の蛍光体を得た。
<焼成工程>
原料混合粉末から約1gを秤量し、窒化ホウ素坩堝(BN坩堝)にそのまま充填した。このBN坩堝を、抵抗加熱式真空加圧雰囲気熱処理炉(富士電波工業社製)内に置いた。次いで、5×10−3Pa以下まで減圧した後、室温から800℃まで昇温速度20℃/分で真空加熱した。800℃に達したところで、その温度で維持して炉内圧力が0.92MPaになるまで高純度窒素ガス(99.9995%)を30分間導入した。高純度窒素ガスの導入後、0.92MPaを保持しながら、さらに、昇温速度20℃/分で1200℃まで昇温した。1200℃で5分間保持する間に熱電対から放射温度計に換えて、その後、昇温速度20℃/分で1600℃まで加熱し、1600℃に達したところで2時間維持した。さらに昇温速度20℃/分で1850℃まで加熱し、1850℃に達したところで6時間維持した。焼成後1200℃まで降温速度20℃/分で冷却し、次いで放冷した。その後、坩堝から取り出した生成物をアルミナ乳鉢で解砕して、比較例1〜11の蛍光体を得た。
得られた実施例1〜11、および比較例1〜11の蛍光体について、上記した方法により各種特性評価を行った。その結果を表7に示す。
表7に示すように、実施例1〜11、比較例1〜11で最終的に得られた蛍光体は、粉末X線回折測定でほぼ全てのピークが特許文献3に示されているSrAlSi:Eu(3%)と同様のパターンを示し、SrAlSiと同様の結晶構造を持つ、SrAlSi相(1147相)を主相とすることがわかった。
表7に示すように、実施例1〜11、比較例1〜11で得られた蛍光体は、黄色〜赤色の発光を示すことがわかった。また、実施例1〜11の蛍光体はいずれも455nmで励起したときの内部量子効率が77.0%以上であることがわかった。この原因は、第一の焼成工程において比較的低温で焼成を行うことにより、粒径が小さく組成の偏りが少ない粒子を多く含む焼成物が得られ、それを第二の焼成工程で比較的高温で焼成することにより、粒成長が適度な成長速度で進行し、欠陥が少なく結晶性が高く、かつ適切な粒径の蛍光体が得られるためであると考えられる。また、第一の焼成工程において蛍光体の粒子の組成の偏りが少ないのは、MSi相、特にM(Si,Al)(N,O)が含まれているためであると考えられる。
図4は、実施例7で得られた蛍光体粒子のSEM像である。粒子には結晶構造に起因する面(平面)が見られ、高い結晶性を持つことがわかる。
表7において実施例8と実施例11を比較すると、同じような組成を持っていても、アルカリ土類元素としてSrのみを含む実施例11に比べ、SrとCaの両方を含む実施例8の方が高い内部量子効率をもつことがわかる。これはCaが入ることにより構造が安定化するためであると考えられる。
また、実施例1、5、6、10の蛍光体は赤色発光を示し、かつ内部量子効率が77.0%以上であることから、LED等と組み合わせて演色性の高い発光装置を製造することができる。
また、実施例4の蛍光体はピーク波長586nm以下の黄色の発光を示し、かつ内部量子効率が77.0%以上であることから、輝度が高い蛍光体であり、LED等と組み合わせて輝度の高い発光装置を製造することができる。
本発明の蛍光体は、光を用いる任意の分野において用いることができ、例えば屋内及び屋外用の照明などのほか、携帯電話、家庭用電化製品、屋外設置用ディスプレイ等の各種電子機器の画像表示装置などに好適に用いることができる。
1 蛍光体含有部(第2の発光体)
2 励起光源(第1の発光体)(LD)
3 基板
4 発光装置
5 マウントリード
6 インナーリード
7 励起光源(第1の発光体)
8 蛍光体含有部
9 導電性ワイヤ
10 モールド部材
11 面発光照明装置
12 保持ケース
13 発光装置
14 拡散板
22 励起光源(第1の発光体)
23 蛍光体含有部(第2の発光体)
24 フレーム
25 導電性ワイヤ
26 電極
27 電極

Claims (9)

  1. 蛍光体原料を窒素含有雰囲気下で焼成する第一の焼成工程と、該第一の焼成工程で得られる焼成物を窒素含有雰囲気下で焼成する第二の焼成工程とを有する蛍光体の製造方法であって、
    該蛍光体原料の仕込み組成を下記式[1]で表される組成とし、
    該第一の焼成工程の最高到達温度が1300℃以上1700℃以下であり、
    該第二の焼成工程の最高到達温度が1600℃以上2000℃以下であり、
    かつ、該第二の焼成工程の最高到達温度を、該第一の焼成工程の最高到達温度よりも高くする
    ことを特徴とする、蛍光体の製造方法。
    下記式[1]:
    (A 1−xl,Z x1a1 b1 c1d1e1 [1]
    (式[1]中、AはSrを必須とするアルカリ土類金属元素を示し、ZはEuまたはCeを必須とする1種類以上の付活剤元素を示し、DはSiを必須とする4価の金属元素を示し、EはAlを必須とする3価の金属元素を示し、xlは0.0001≦x1≦0.20を満たす数を示し、a1、b1、c1、d1及びe1は、それぞれ、0.95≦a1≦1.05
    2.5≦b1≦4.0
    1.0≦c1≦2.5
    4.5≦(b1+c1)/a1≦5.5
    5.5≦d1≦7.0
    0<e1≦1.5
    を満たす数を示す。)
  2. 前記第一の焼成工程において得られる焼成物が、
    Si(但し、Mはアルカリ土類金属元素を表わす。)で表わされる結晶相を含有する
    ことを特徴とする、請求項1に記載の蛍光体の製造方法。
  3. 前記第一の焼成工程の後、焼成物を解砕する工程を有する
    ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の蛍光体の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光体の製造方法により得られた
    ことを特徴とする、蛍光体。
  5. 下記式[2]で表される組成を有する結晶相を含有し、
    かつ、455nmの励起光で励起した場合の内部量子効率が77%以上である
    ことを特徴とする、請求項4に記載の蛍光体。
    下記式[2]:
    (A 1−x2,Eu x2a2 b2 c2d2e2 [2]
    (式[2]中、AはSrを必須とするアルカリ土類金属元素を示し、DはSiを必須とする4価の金属元素を示し、EはAlを必須とする3価の金属元素を示し、xlは0.0001≦xl≦0.20を満たす数を示し、a2、b2、c2、d2及びe2は、それぞれ、
    0.95≦a2≦1.05
    2.5≦b2≦4.0
    1.0≦c2≦2.5
    4.5≦(b2+c2)/a2≦5.5
    5.5≦d2≦7.5
    0<e2≦1.5
    を満たす数を示す。)
  6. 前記式[2]において、AはSrおよびCaを必須とする
    ことを特徴とする、請求項5に記載の蛍光体。
  7. 前記式[2]において、b2およびc2がそれぞれ、3.7≦b2≦4.0、1.0≦c2≦1.3を満たす
    ことを特徴とする、請求項5または請求項6に記載の蛍光体。
  8. 前記式[2]において、b2およびc2がそれぞれ、3.0≦b2≦3.4、1.6≦c2≦2.0を満たす
    ことを特徴とする、請求項5または請求項6に記載の蛍光体。
  9. 発光ピークが、波長580nm以上630nm以下の範囲に存在する
    ことを特徴とする請求項4〜請求項8のいずれか一項に記載の蛍光体。
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