JP2008118024A - 発光素子及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】光取出し効率の向上を図ることができる構造を有する発光素子を提供する。
【解決手段】発光素子1は、第1のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成り、第1導電型を有する第1化合物半導体層11、(b)第2のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成る活性層12、及び、(c)第3のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成り、第1導電型とは異なる第2導電型を有する第2化合物半導体層13から構成された積層構造体を備え、積層構造体の形状は切頭六角錐であり、切頭六角錐の頂面に相当する第2化合物半導体層13の頂面は{100}面であり、切頭六角錐の6つの側面の内、対向する第1側面及び第4側面は{111}面であり、残りの第2側面、第3側面、第5側面及び第6側面は{221}面である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、発光素子及びその製造方法に関する。
基板上に複数の化合物半導体層を積層して成る発光素子が知られている。例えば、赤色発光ダイオードは、基板上にエピタキシャル成長によって形成されたインジウム・リン(InP)系等のIII−V族化合物半導体層の積層構造体から成る発光層を備えている。そして、発光素子の製造において、基板上に複数の化合物半導体層を積層した後、ウェットエッチング法に基づき、各化合物半導体層をエッチングして、各発光素子の発光領域をメサ構造としたり、発光素子間の素子分離を行う方法が、屡々、用いられている。エッチングに用いられるエッチング液(エッチャント)は、エッチングしようとする化合物半導体層の構成元素に応じて適宜選択される。
リン(P)を構成元素とするIII−V族化合物半導体層のウェットエッチングにおいて、塩酸(HCl)と酢酸の混合液をエッチング液として使用することが、例えば、特開2003−31843や特開2002−198616から周知である。リン(P)を構成元素とするIII−V族化合物半導体層のウェットエッチングにおいて、エッチング液として塩酸のみを用いると、エッチング速度が早すぎ、エッチング後の化合物半導体層の形状の制御性が良くない。然るに、バッファとして酢酸を塩酸に添加することで、エッチング速度を低下させることができる結果、エッチング後の化合物半導体層の形状の制御性の向上を図ることができるとされている。
リン(P)を構成元素とした、閃亜鉛鉱型結晶構造を有するInP系のIII−V族化合物半導体層の積層構造体から成る発光層を備えた発光素子としての発光ダイオード(LED)にあっては、化合物半導体の屈折率が高いため、発光ダイオード内部の光の多くが、発光ダイオードと外部との界面で、発光ダイオード内部に向かって反射される。そのため、発光層で発生した光が、発光ダイオード内部を多数回、循環する結果、発光ダイオードにおいて発生した光を光取出し面から効率良く外部に取り出すことが困難である。即ち、光取出し効率が低いといった問題がある。このような問題は、発光ダイオードにおいて、平行に対向する側面(垂直面)が存在する場合、特に顕著に発生する。
特開2003−31843 特開2002−198616
ところで、上述のエッチング液を用いたウェットエッチングを発明者らが試みたところ、エッチング後の化合物半導体層の形状の制御性の一層の向上を図ることを目的として、塩酸と酢酸の混合液から成るエッチング液を低温(例えば、5゜C)にしてエッチングを行うと、エッチング液に凝固が生じてしまった。
また、上記の特許公開公報には、発光ダイオードにおける光取出し効率の向上を図るための技術については、何ら、言及されていない。
従って、本発明の第1の目的は、光取出し効率の向上を図ることができる構造を有する発光素子及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、第1の目的に加え、エッチング後の化合物半導体層の形状の制御性の一層の向上を図ることを可能とする発光素子の製造方法を提供することにある。
上記の第1の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る発光素子の製造方法は、
(a)第1のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成り、第1導電型を有する第1化合物半導体層、
(b)第2のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成る活性層、及び、
(c)第3のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成り、第1導電型とは異なる第2導電型を有する第2化合物半導体層、
から構成された積層構造体を備え、
積層構造体の形状は切頭六角錐であり、
切頭六角錐の頂面に相当する第2化合物半導体層の頂面は{100}面であり、
切頭六角錐の6つの側面の内、対向する第1側面及び第4側面は{111}面であり、残りの第2側面、第3側面、第5側面及び第6側面は{221}面である発光素子の製造方法であって、
(A)基体上に、第1化合物半導体層、活性層、第2化合物半導体層を、順次、形成した後、第2化合物半導体層上にパターニングされたエッチング用マスク層を形成し、次いで、
(B)エッチング用マスク層を用いて、第2化合物半導体層、活性層、第1化合物半導体層をエッチングする、
工程を具備し、
エッチング用マスク層の平面形状は、第1の方向に沿って延びる短辺、及び、第1の方向と直交する第2の方向に延びる長辺を有する長方形であり、
第1の方向は、積層構造体の軸線を通り、第1側面及び第4側面に対して垂直な仮想平面と平行であることを特徴とする。
本発明の第1の態様に係る発光素子の製造方法にあっては、エッチング用マスク層の短辺の長さ(LM_S)は、エッチング完了後の第1の方向に沿った第2化合物半導体層の頂面の長さと略等しく、エッチング用マスク層の長辺の長さ(LM_L)は、エッチング完了後の第2の方向に沿った第2化合物半導体層の頂面の長さよりも長い構成とすることが、上記の構成を有する発光素子を確実に製造するといった観点から望ましい。尚、エッチング用マスク層の短辺の長さ(LM_S)は、エッチング完了後の第1の方向に沿った第2化合物半導体層の頂面の長さと略等しいが、ここで、「略等しい」とは、エッチング状態のバラツキ等によって、エッチング用マスク層の短辺の長さ(LM_S)が、エッチング完了後の第1の方向に沿った第2化合物半導体層の頂面の長さと、厳密には等しくならない場合があることを意味する。以下においても同様である。
上記の第1の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法は、
(a)第1のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成り、第1導電型を有する第1化合物半導体層、
(b)第2のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成る活性層、及び、
(c)第3のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成り、第1導電型とは異なる第2導電型を有する第2化合物半導体層、
から構成された積層構造体を備えた発光素子の製造方法であって、
(A)基体上に、第1化合物半導体層、活性層、第2化合物半導体層を、順次、形成した後、第2化合物半導体層上にパターニングされたエッチング用マスク層を形成し、次いで、
(B)エッチング用マスク層を用いて、第2化合物半導体層、活性層、第1化合物半導体層をエッチングする、
工程を具備し、
エッチング用マスク層の平面形状は、第1の方向に沿って延びる短辺、及び、第1の方向と直交する第2の方向に延びる長辺を有する長方形であり、
エッチング用マスク層の短辺の長さ(LM_S)は、エッチング完了後の第1の方向に沿った第2化合物半導体層の頂面の長さと略等しく、
エッチング用マスク層の長辺の長さ(LM_L)は、エッチング完了後の第2の方向に沿った第2化合物半導体層の頂面の長さよりも長いことを特徴とする。
上記の好ましい構成を含む本発明の第1の態様に係る発光素子の製造方法、あるいは、本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法(以下、これらを総称して、単に、本発明の発光素子の製造方法と呼ぶ場合がある)において、LM_S/LM_L≦1、望ましくは、LM_S/LM_L≦0.7を満足することが好ましい。尚、LM_Sの具体的な値として、限定するものではないが、7μm≦LM_Sを例示することができる。
上記の第2の目的を達成するために、本発明の製造方法において、前記工程(B)におけるエッチングは、−30゜C乃至5゜C、好ましくは−15゜C乃至−5゜Cの塩酸をエッチング液として用いたウェットエッチング法に基づくことが望ましい。このような低温の塩酸をエッチング液として用いたウェットエッチングにより、エッチング後の化合物半導体層の形状の制御性の一層の向上を図ることができる。塩酸の規定数として、最大12N(37重量%の濃塩酸)を例示することができる。尚、水で希釈しすぎると、エッチングレートが遅くなり過ぎる場合がある。また、塩酸から成るエッチング液には、例えば、微量のリン酸や、溶液の凝固点が5゜C以下のものが含まれていてもよい。但し、H22はGaAs層をエッチングしてしまうので、エッチング液に添加してはならない。
以上の好ましい構成、形態を含む本発明の発光素子の製造方法における前記工程(B)にあっては、第2化合物半導体層、活性層、第1化合物半導体層をエッチングして、基体を露出させることが好ましい。これによって、所謂メサ構造を有する発光素子を得ることができる。
そして、この場合、前記工程(B)の後、限定するものではないが、
(C)エッチング用マスク層上に第2電極を形成し、若しくは、エッチング用マスク層を除去し、露出した第2化合物半導体層上に第2電極を形成し、
(D)第2電極を介して発光素子を仮固定用基板に仮固定した後、
(E)発光素子を基体から剥離し、次いで、
(F)露出した第1化合物半導体層の底面に第1電極を形成する、
工程を含むことが好ましい。尚、露出した第1化合物半導体層の底面は{100}面である。
上記の第1の目的を達成するための本発明の発光素子は、
(a)第1のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成り、第1導電型を有する第1化合物半導体層、
(b)第2のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成る活性層、及び、
(c)第3のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成り、第1導電型とは異なる第2導電型を有する第2化合物半導体層、
から構成された積層構造体を備えた発光素子であって、
積層構造体の形状は切頭六角錐であり、
切頭六角錐の頂面に相当する第2化合物半導体層の頂面は{100}面であり、
切頭六角錐の6つの側面の内、対向する第1側面及び第4側面は{111}面であり、残りの第2側面、第3側面、第5側面及び第6側面は{221}面であることを特徴とする。
ここで、 積層構造体の軸線を通り、第1側面及び第4側面に対して垂直な仮想平面の面方位は、<110>であることが好ましい。
上記の好ましい構成を含む本発明の発光素子にあっては、限定するものではないが、第2化合物半導体層の頂面の上には第2電極が形成されており、第1化合物半導体層の底面には第1電極が形成されている構成とすることが望ましい。尚、第1電極が形成された第1化合物半導体層の面は{100}面である。第2電極は、第2化合物半導体層の上に直接形成されている場合もあるし、第2化合物半導体層上に形成されたエッチング用マスク層の上に形成されている場合もある。
更には、以上の好ましい構成、形態を含む本発明の発光素子の製造方法あるいは本発明の発光素子において、発光素子は発光ダイオード、より具体的には、発光波長が0.5μm乃至1.5μmの赤色発光ダイオードから成ることが望ましい。
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の発光素子の製造方法あるいは本発明の発光素子(以下、これらを総称して、単に、本発明と呼ぶ場合がある)において、第1化合物半導体層、活性層、第2化合物半導体層は、閃亜鉛鉱型結晶構造を有し、その結晶系は立方晶系である。第1のIII−V族化合物半導体、第2のIII−V族化合物半導体、第3のIII−V族化合物半導体を構成する材料として、GaInP、AlGaInP等の閃亜鉛鉱型結晶構造を有するIII−V族化合物半導体であれば、如何なるIII−V族化合物半導体とすることもでき、III元素としてAl、Ga、Inを挙げることができるし、リン以外のV族元素を含む場合、係るV族元素としてAs、Sbを挙げることができる。第1のIII−V族化合物半導体を構成する材料、第2のIII−V族化合物半導体を構成する材料、第3のIII−V族化合物半導体を構成する材料のそれぞれは、所望とする発光素子が得られるような材料から適宜選択すればよい。また、エッチング用マスク層を構成する材料として、リン以外のV族元素を含む閃亜鉛鉱型結晶構造を有するIII−V族化合物半導体であれば、如何なるIII−V族化合物半導体(第2導電型を有する場合を含む)とすることもでき、具体的には、GaAs、AlGaAs、AlGaInAsを例示することができる。これらの化合物半導体から成る各層の形成方法(成膜方法)として、有機金属化学的気相成長法(MOCVD法)や分子線エピタキシー法(MBE法)、ハロゲンが輸送あるいは反応に寄与するハイドライド気相成長法を挙げることができる。エッチング用マスク層のパターニング方法として、エッチング用マスク層を構成する材料にも依るが、リソグラフィ技術とエッチング技術との組合せを挙げることができる。第1導電型がn型である場合には、第2導電型はp型であり、第1導電型がp型である場合には、第2導電型はn型である。
本発明において、基体として、GaAs基板、AlInP基板、ZnS基板、これらの基板の表面(主面)に下地層やバッファ層が形成されたものを挙げることができる。
第1電極を構成する材料として、Au/Pt/Ti/Au/AuGe/Pd、Al、Ag、銀・カーボン合金(AGC)、これらを含む合金材料を例示することができる。また、第2電極を構成する材料として、Ti/Pt/Au、ITO(Indium Tin Oxide)、AuZn、Al、Ag、銀・カーボン合金(AGC)、これらを含む合金材料を例示することができる。尚、「/」の前に記載された材料から構成された層が、より一層、基体の近くに位置する(即ち、下側に位置する)。以下においても同様である。第1電極あるいは第2電極の形成方法として、真空蒸着法やスパッタリング法といったPVD法、各種のCVD法、メッキ法を挙げることができる。第2電極を光反射材料から構成する場合であって、発光ダイオードから発光素子を構成する場合、発光ダイオードはフリップチップ構造を有する。一方、第2電極を透明電極材料から構成する場合であって、発光ダイオードから発光素子を構成する場合、発光ダイオードはフェイスアップ構造を有する。
仮固定用基板として、ガラス板、金属板、合金板、セラミックス板、プラスチック板を挙げることができる。発光素子を仮固定用基板へ仮固定する方法として、接着剤を用いる方法、金属接合法、半導体接合法、金属・半導体接合法を例示することができる。発光素子を基体から剥離する方法として、レーザ・アブレーション法や加熱法、エッチング法を挙げることができる。
本発明の発光素子を応用した電子機器、あるいは、本発明の発光素子の製造方法に基づき得られる電子機器として、限定するものではないが、例えば、発光ダイオード表示装置、発光ダイオードを用いたバックライト、発光ダイオード照明装置を例示することができる。電子機器は、基本的にはどのようなものであってもよく、携帯型のものと据え置き型のものとの双方を含む。
本発明の第1の態様に係る発光素子の製造方法あるいは本発明の発光素子にあっては、得られた発光素子は、切頭六角錐の形状を有する積層構造体から成る発光層を備えており、平行に対向する側面(垂直面)が本質的に存在しない。また、本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法にあっては、エッチング用マスク層の平面形状が規定されているので、最終的に、平行に対向する側面(垂直面)が存在しない発光素子を得ることができる。従って、発光層で発生した光が発光素子内部を循環する割合が少なくなり、高い光取出し効率を達成することができる。また、切頭六角錐の各側面の傾斜角度のバラツキ、切頭六角錐の形状のバラツキ発生を抑制することができ、発光素子の特性の均一化、安定化を図ることができる。更には、エッチング液として低温の塩酸を用いることで、エッチング後の化合物半導体層の形状の制御性の一層の向上を図ることができる。
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。尚、立方晶系における例えば以下に例示する結晶面の表記、
を、便宜上、本明細書においては、{hkl}面、{h−kl}面と表記し、以下に例示する方向の表記、
を、便宜上、本明細書においては、<hkl>方向、<h−kl>方向と表記する。また、立方晶系の結晶面を説明するための結晶構造の模式図を図15に示す。尚、図15においては、(001)面を頂面とし、8つの傾斜した面を示す。
実施例1は、本発明の第1の態様に係る発光素子の製造方法、本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法、及び、本発明の発光素子に関する。実施例1においては、発光素子は、発光ダイオード(LED)、より具体的には、マイクロ・赤色発光ダイオード(発光波長:635nm)から成る。尚、以下の説明においては、発光素子という用語の代わりに、発光ダイオードという用語を用いる場合がある。
エッチング用マスク層の模式的な平面図を図1の(A)に示し、製造工程途中(エッチング完了時)における発光素子(発光ダイオード)を上方から眺めた模式図を図1の(B)に示す。また、図1の(A)の矢印A−Aに沿ったと同様の発光素子(発光ダイオード)の模式的な一部断面図を図5の(A)及び図6に示し、図1の(A)の矢印B−Bに沿ったと同様の発光素子(発光ダイオード)の模式的な一部断面図を図5の(B)に示す。尚、図5の(A)及び(B)に示す発光ダイオードの構造は、製造工程途中(エッチング完了時)における構造を示しており、図6に示す発光ダイオードの構造は、最終的に得られる構造を示している。また、図1の(B)及び後述する図14の(B)においては、エッチング用マスク層の図示を省略しており、図1の(A)及び後述する図14の(A)における点線は、第2化合物半導体層の頂面の位置を模式的に示している。
実施例1の発光素子(発光ダイオード)1は、
(a)第1のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンであり、具体的には、AlGaInP)から成り、第1導電型(実施例1にあっては、具体的には、n型)を有する第1化合物半導体層11、
(b)第2のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成る活性層12、及び、
(c)第3のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンであり、具体的には、AlGaInP)から成り、第1導電型とは異なる第2導電型(実施例1にあっては、具体的には、p型)を有する第2化合物半導体層13、
から構成された積層構造体を備えている。
更に、第2化合物半導体層13の上には、p型のGaAsから成るエッチング用マスク層14が形成されている。活性層12は、井戸層を構成するAlGaInP層と障壁層を構成するGaInP層とが多数、交互に積層された、多重量子井戸(MQW)から成る。積層構造体は、基体10上に形成されている。ここで、基体10は、GaAs基板から成る基板10A、及び、基板10Aの主面に形成されたn型のGaAsから成る下地層10Bから構成されている。また、基板10Aと下地層10Bとの間には、図示しないAlGaInP層がエッチングストップ層として形成されている。場合によっては、第2化合物半導体層13の上に、GaInPから成るバッファ層を形成してもよい。バッファ層は、4元素構成の第2化合物半導体層13から2元素構成のエッチング用マスク層14への移行のために設けられ、3元素構成の化合物半導体層である。
積層構造体の形状は切頭六角錐である。即ち、頂面と底面とを有し、頂面と底面とが平行で、頂面が底面よりも小さい、六角柱である。そして、切頭六角錐の頂面に相当する第2化合物半導体層13の頂面は{100}面、より具体的には、(001)面である。切頭六角錐の底面に相当する第1化合物半導体層11の底面は(00−1)面である。一方、切頭六角錐の6つの側面の内、対向する第1側面及び第4側面は{111}面であり、残りの第2側面、第3側面、第5側面及び第6側面は{221}面である。ここで、各側面は、第1化合物半導体層11の露出した傾斜面、活性層12の露出した傾斜面、及び、第2化合物半導体層13の露出した傾斜面から構成されている。より具体的には、第1側面、第2側面、第3側面、第4側面、第5側面及び第6側面の面(ミラー指数)は以下のとおりである。
第1側面:(111)
第2側面:(1−22)
第3側面:(2−12)
第4側面:(−1−11)
第5側面:(−122)
第6側面:(1−22)
積層構造体の軸線Ax(厚さ方向の軸線であり、図1の(B)参照)を通り、第1側面及び第4側面に対して垂直な仮想平面の面方位は、<110>、より具体的には、[−110]あるいは[1−10]である。
更には、図6に示すように、第2化合物半導体層13の頂面の上(具体的には、エッチング用マスク層14の上)には第2電極(p側電極)15が形成されており、第1化合物半導体層11の底面には第1電極(n側電極)16が形成されている。
以下、実施例1の発光素子(発光ダイオード)の製造方法を説明する。尚、実施例1にあっては、更には、電子機器として発光ダイオード表示装置を製造する。
[工程−100]
先ず、GaAs基板から成る基板10Aの主面に、周知のMOCVD法に基づき、AlGaInPから成るエッチングストップ層(図示せず)、及び、n型のGaAsから成る下地層10Bを、順次、形成(成膜)する。次いで、基体10上に、より具体的には、下地層10B上に、周知のMOCVD法に基づき、第1化合物半導体層11、活性層12、及び、第2化合物半導体層13を、順次、形成(成膜)する。
[工程−110]
その後、周知のMOCVD法に基づき、エッチング用マスク層14を、第2化合物半導体層13上に、形成(成膜)する。尚、第1化合物半導体層11、活性層12、第2化合物半導体層13の合計厚さを2.5μmとし、第2化合物半導体層13の厚さを1.0μmとした。次いで、リソグラフィ技術に基づきレジスト材料から成るマスクをエッチング用マスク層14上に形成し、ウェットエッチング法に基づきエッチング用マスク層14をウェットエッチングすることで、第2化合物半導体層13上にパターニングされたエッチング用マスク層14を形成することができる。エッチング用マスク層14のウェットエッチング条件を、以下に例示する。
エッチング液 リン酸:過酸化水素水:水=6:2:100
エッチング時間 90秒
ここで、本発明の第1の態様に係る発光素子の製造方法に沿って説明すれば、図1の(A)に示すように、エッチング用マスク層14の平面形状は、第1の方向に沿って延びる短辺、及び、第1の方向と直交する第2の方向に延びる長辺を有する長方形である。そして、第1の方向は、積層構造体の軸線Axを通り、第1側面及び第4側面に対して垂直な仮想平面と平行である。具体的には、長辺は[−110]あるいは[1−10]方向に延び、短辺は[110]あるいは[−1−10]方向に延びている。
エッチング用マスク層14の短辺の長さ(LM_S)は、エッチング完了後の第1の方向に沿った第2化合物半導体層13の頂面の長さ(L2_S)と略等しく、エッチング用マスク層14の長辺の長さ(LM_L)は、エッチング完了後の第2の方向に沿った第2化合物半導体層13の頂面の長さ(L2_L)よりも長い。
あるいは又、本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法に沿って説明すれば、エッチング用マスク層14の平面形状は、第1の方向に沿って延びる短辺、及び、第1の方向と直交する第2の方向に延びる長辺を有する長方形である。そして、エッチング用マスク層14の短辺の長さ(LM_S)は、エッチング完了後の第1の方向に沿った第2化合物半導体層13の頂面の長さ(L2_S)と略等しく、エッチング用マスク層14の長辺の長さ(LM_L)は、エッチング完了後の第2の方向に沿った第2化合物半導体層13の頂面の長さ(L2_L)よりも長い。具体的な数値を表1に例示する。尚、比較例1については、後述する。
[表1]
実施例1 比較例1
M_S(μm) 7.5 7.5
M_L(μm) 14 7.7
2_S(μm) 7.5 7.5
2_L(μm) 7.7 7.7
M_S/LM_L 0.53 0.97
[工程−120]
そして、エッチング用マスク層14を用いて、第2化合物半導体層13、活性層12、第1化合物半導体層11をエッチングして、基体である下地層10Bを露出させ、これによって、所謂メサ構造を有する発光ダイオード1を得る。具体的には、−15゜C、12N(37重量%の濃塩酸)の塩酸をエッチング液として用いたウェットエッチング法に基づき、第2化合物半導体層13、活性層12、第1化合物半導体層11をエッチングする。こうして、図1の(B)、図5の(A)及び(B)に示す積層構造体を得ることができる。低温の塩酸をエッチング液として用いたウェットエッチングを行うことで、エッチング速度が遅くなり、長い時間をかけてエッチングを行うことができる結果、エッチングによる各化合物半導体層の除去量を良好に、しかも、容易に制御することができる。尚、エッチング中にエッチング液中で基体を揺動させるなどの操作の必要はない。また、GaAsから成る下地層10Bは、塩酸から成るエッチング液とは反応しないので、エッチングストップ層として機能し、[00−1]方向へのエッチングは、下地層10Bが露出した時点で停止する。
エッチング時間によって、どのように積層構造体が得られるかを、模式的に図2の(A)及び(B)、図3の(A)及び(B)、図4の(A)及び(B)、図5の(A)及び(B)、図7の(A)及び(B)、並びに、図8の(A)〜(D)に示す。尚、図7の(A)の左側の顕微鏡写真は、エッチング完了時における実施例1のエッチング用マスク層14を上から眺めた顕微鏡写真であり、図7の(A)の右側の顕微鏡写真は、エッチング完了時における実施例1の発光ダイオードの顕微鏡写真である。また、図7の(B)の左側の顕微鏡写真は、エッチング完了時における比較例1のエッチング用マスク層114を上から眺めた顕微鏡写真であり、図7の(B)の右側の顕微鏡写真は、エッチング完了時における比較例1の発光ダイオードの顕微鏡写真である。更には、図8の(A)〜(D)の顕微鏡写真は、製造中間工程(エッチング中及びエッチング完了時)におけるエッチング用マスク層14を上から眺めた顕微鏡写真である。尚、X−Xは第1の方向を示し、Y−Yは第2の方向を示す。ここで、図2の(A)、(B)及び図8の(D)に示した状態はエッチング開始から60秒が経過したときの状態であり、図3の(A)、(B)及び図8の(C)に示した状態はエッチング開始から120秒が経過したときの状態であり、図4の(A)、(B)及び図8の(B)に示した状態はエッチング開始から150秒が経過したときの状態であり、図5の(A)及び(B)及び図8の(A)に示した状態はエッチング開始から240秒が経過したときの状態(エッチング完了時)である。また、図2の(A)、図3の(A)及び図4の(A)は、図1の(A)の矢印A−Aに沿ったと同様の発光素子(発光ダイオード)の模式的な一部断面図であり、図2の(B)、図3の(B)及び図4の(B)は、図1の(B)の矢印B−Bに沿ったと同様の発光素子(発光ダイオード)の模式的な一部断面図である。
積層構造体の軸線Axを通り、第1側面及び第4側面に対して垂直な仮想平面によって積層構造体を切断したと想定したときの第1側面の傾斜角度を測定したところ、以下のとおりとなった。この結果から、エッチング開始から240秒が経過した時点でエッチングを完了すればよいことが判る。
エッチング開始からの経過時間 傾斜角度
150秒 36度
210秒 40度
240秒 44度
270秒 44度
600秒 45度
第2化合物半導体層13、活性層12、第1化合物半導体層11のウェットエッチングにおいては、面方位によってエッチング速度が相違し、その結果、面方位に即した形状にエッチングされる。具体的には、{111}面のエッチング速度は、{110}面のエッチング速度の約1/100程度である。従って、[−110]あるいは[1−10]方向に延びているエッチング用マスク層14の長辺の近傍に位置する第2化合物半導体層13、活性層12、第1化合物半導体層11の部分は、{111}面のエッチング速度に基づきエッチング状態が規定される。即ち、エッチング用マスク層14の長辺の近傍に位置する第2化合物半導体層13、活性層12、第1化合物半導体層11の部分は、{111}面(より具体的には、(111)面及び(−1−11)面)が生じるようにエッチングされていく。そして、エッチング完了時には、(111)面から成る第1側面、及び、(−1−11)面から成る第4側面が形成される。
一方、[110]あるいは[−1−10]方向に延びているエッチング用マスク層14の短辺の近傍に位置する第2化合物半導体層13、活性層12、第1化合物半導体層11の部分は、111面が110面と平行になっているためエッチング速度が減速されず、即ち、エッチング用マスク層14が無い箇所にあっては、{111}面のエッチングより{110}面のエッチングが支配的となり、{111}面でエッチングが停止されず、エッチング用マスク層14の短辺の下方の部分までエッチングされるので、エッチング用マスク層14の短辺の近傍に位置する第2化合物半導体層13、活性層12、第1化合物半導体層11の部分は、垂直面(具体的には、(−110)面及び(1−10)面)に近づく。
また、エッチング用マスク層14の四隅の近傍に位置する第2化合物半導体層13、活性層12、第1化合物半導体層11の部分は、<221>方向に向かうサイドエッチングが進行する。
実施例1にあっては、エッチング開始から150秒が経過した時点で、基体である下地層10Bが露出し、(−110)面及び(1−10)面は無くなっていた。この時点においては、まだ、第1側面及び第4側面にエッチング残りが存在しているため、第1側面及び第4側面の斜面角度は一定に定まっていない。それ故、所望の傾斜角度に安定させるために、更に90秒間のエッチングを行う。ここで、エッチング開始から150秒経過後から、エッチング完了の240秒経過後までの間は、第2化合物半導体層13、活性層12、第1化合物半導体層11の[00−1]方向のエッチングは完了しているので、専ら、<221>方向に向かうサイドエッチングが進行する。こうして、ウェットエッチングが完了し、図5の(A)、(B)、図7の(A)に示す発光ダイオードを得ることができた。
[工程−130]
その後、エッチング用マスク層14上に第2電極15を形成する。具体的には、リソグラフィ技術に基づき、全面にレジスト層を形成し、第2電極15を設けるべき第2化合物半導体層13の上の(より具体的には、エッチング用マスク層14の上の)レジスト層の部分に開口を形成する。そして、真空蒸着法やスパッタリング法といったPVD法に基づき、全面に、例えば、チタン、白金、及び、金がこの順に積層されたTi/Pt/Auの3層構造から成る第2電極15を形成した後、レジスト層及びその上のTi/Pt/Au層を除去する。こうして、エッチング用マスク層14上に第2電極15を形成することができる。
[工程−140]
次いで、第2電極15を介して発光ダイオード1を仮固定用基板20に仮固定する。具体的には、表面に未硬化の接着剤から成る接着層21が形成されたガラス基板から成る仮固定用基板20を準備する。そして、発光ダイオード1と接着層21とを貼り合わせ、接着層21を硬化させることで、発光ダイオード1を仮固定用基板20に仮固定することができる(図9の(A)及び(B)参照)。
[工程−150]
その後、発光ダイオード1を基体10から剥離する(図10の(A)参照)。具体的には、GaAsから成る基板10Aを裏面からラッピング処理によって薄くし、次いで、アンモニア水と過酸化水素水の混合液を用いて基板10AをAlGaInPから成るエッチングストップ層までエッチングすることで基板10Aを除去し、次いで、エッチングストップ層を−5゜Cの塩酸をエッチング液として用いたウェットエッチングに基づき除去する。こうして、第1化合物半導体層11を露出させることができる。
尚、仮固定用基板20を構成する材料として、ガラス基板の他、金属板、合金板、セラミックス板、プラスチック板を挙げることができる。発光素子の仮固定用基板20への仮固定方法として、接着剤を用いる方法の他、金属接合法、半導体接合法、金属・半導体接合法を挙げることができる。また、基体10を発光素子から除去する方法として、エッチング法の他、レーザ・アブレーション法、加熱法を挙げることができる。
[工程−160]
次に、露出した第1化合物半導体層11の底面に第1電極16を形成する。具体的には、リソグラフィ技術に基づき、全面にレジスト層を形成し、第1電極16を設けるべき第1化合物半導体層11の底面上のレジスト層の部分に開口を形成する。そして、真空蒸着法やスパッタリング法といったPVD法に基づき、全面に、例えば、Au/Pt/Ti/Au/AuGe/Pdがこの順に積層された多層構造膜から成る第1電極16を形成した後、レジスト層及びその上の多層構造膜を除去する。
[工程−170]
シリコーンゴムから成る微粘着層31が形成された中継基板30、及び、ガラス基板から成り、予め所定の位置に金属薄膜等から成るアライメントマーク(図示せず)が形成され、表面には未硬化の感光性樹脂から成る接着剤層41が形成された実装用基板40を準備する。
接着剤層41は、光(特に紫外線等)、放射線(X線等)、電子線等といったエネルギー線の照射によって接着機能を発揮する材料、熱や圧力等を加えることによって接着機能を発揮する材料等、何らかの方法に基づき接着機能を発揮する材料である限り、基本的にはどのような材料から構成されていてもよい。ここで、容易に形成することができ、しかも、接着機能を発揮する材料として、樹脂系の接着剤層、特に、感光性接着剤、熱硬化性接着剤、又は、熱可塑性接着剤を挙げることができる。例えば、感光性接着剤を用いる場合、接着剤層に光や紫外線を照射することによって、あるいは又、加熱することによって、接着剤層に接着機能を発揮させることができる。また、熱硬化性接着剤を用いる場合、光の照射等により接着剤層を加熱することによって、接着剤層に接着機能を発揮させることができる。更には、熱可塑性接着剤を用いる場合、光の照射等により接着剤層の一部分を選択的に加熱することによって係る一部分を溶融し、流動性を持たせることができる。接着剤層として、その他、例えば、感圧性接着剤層(例えば、アクリル系樹脂等から成る)等を挙げることもできる。
そして、発光ダイオード1がアレイ状(2次元マトリクス状)に残された仮固定用基板20上の発光ダイオード1に、微粘着層31を押し当てる(図10の(B)及び図11の(A)参照)。中継基板30を構成する材料として、ガラス板、金属板、合金板、セラミックス板、半導体基板、プラスチック板を挙げることができる。また、中継基板30は、図示しない位置決め装置に保持されている。位置決め装置の作動によって、中継基板30と仮固定用基板20との位置関係を調整することができる。次いで、実装すべき発光ダイオード1に対して、仮固定用基板20の裏面側から、例えば、エキシマレーザを照射する(図11の(B)参照)。これによって、レーザ・アブレーションが生じ、エキシマレーザが照射された発光ダイオード1は、仮固定用基板20から剥離する。その後、中継基板30と発光ダイオード1との接触を解くと、仮固定用基板20から剥離した発光ダイオード1は、微粘着層31に付着した状態となる(図12の(A)参照)。
次いで、発光ダイオード1を接着剤層41の上に配置(移動あるいは転写)する(図12の(B)及び図13参照)。具体的には、実装用基板40上に形成されたアライメントマークを基準に、発光ダイオード1を中継基板30から実装用基板40の接着剤層41の上に配置する。発光ダイオード1は微粘着層31に弱く付着しているだけなので、発光ダイオード1を接着剤層41と接触させた(押し付けた)状態で中継基板30を実装用基板40から離れる方向に移動させると、発光ダイオード1は接着剤層41の上に残される。更には、発光ダイオード1をローラー等で接着剤層41に深く埋入することで、発光ダイオードを実装用基板40に実装することができる。
このような中継基板30を用いた方式を、便宜上、ステップ転写法と呼ぶ。そして、このようなステップ転写法を所望の回数、繰り返すことで、所望の個数の発光ダイオード1が、微粘着層31に2次元マトリクス状に付着し、実装用基板40上に転写される。具体的には、実施例1にあっては、1回のステップ転写において、160×120個の発光ダイオード1を、微粘着層31に2次元マトリクス状に付着させ、実装用基板40上に転写する。従って、(1920×1080)/(160×120)=108回のステップ転写法を繰り返すことで、1920×1080個の発光ダイオード1を、実装用基板40上に転写することができる。そして、以上のような工程を、都合、3回、繰り返すことで、所定の数の赤色発光ダイオード、緑色発光ダイオード、青色発光ダイオードを、所定の間隔、ピッチで実装用基板40に実装することができる。
その後、発光ダイオード1が配置された感光性樹脂から成る接着剤層41に紫外線を照射することで、接着剤層41を構成する感光性樹脂を硬化させる。こうして、発光ダイオード1が接着剤層41に固定された状態となる。次いで、第1電極16を介して発光ダイオード1を第2の仮固定用基板に仮固定する。具体的には、表面に未硬化の接着剤から成る接着層が形成されたガラス基板から成る第2の仮固定用基板を準備する。そして、発光ダイオード1と接着層とを貼り合わせ、接着層を硬化させることで、発光ダイオード1を第2の仮固定用基板に仮固定することができる。次いで、接着剤層41及び実装用基板40を適切な方法で発光ダイオード1から除去する。この状態にあっては、発光ダイオード1の第2電極15が露出した状態である。
[工程−180]
次いで、全面に第2の絶縁層51を形成し、発光素子の第2電極15の上方の第2の絶縁層51に開口部52を形成し、第2の配線53を、第2電極15上から開口部52、第2の絶縁層51の上にかけて形成する。次に、第2の配線53を含む第2の絶縁層51とガラス基板から成る支持基板55とを、接着層54を介して貼り合わせることで、発光素子1を支持基板55に固定することができる。次いで、例えば、第2の仮固定用基板の裏面側から、例えば、エキシマレーザを照射する。これによって、レーザ・アブレーションが生じ、エキシマレーザが照射された発光ダイオード1は、第2の仮固定用基板から剥離する。この状態にあっては、発光ダイオード1の第1電極16が露出した状態である。次に、全面に第1の絶縁層56を形成し、発光素子1の第1電極16の上方の第1の絶縁層56に開口部57を形成し、第1の配線58を、第1電極16上から開口部57、第1の絶縁層56の上にかけて形成する。この状態を、図6の模式的な一部断面図に示す。そして、第1の配線、第2の配線を駆動回路と適切な方法に基づき接続することによって、発光ダイオード表示装置を完成させることができる。発光ダイオード1は、フリップチップ構造を有し、活性層12において生成した光は、図6の下側方向に出射される。
比較例1として、以下のエッチング用マスク層114を用いて発光ダイオードを製造した。即ち、比較例1におけるエッチング用マスク層114の平面形状は、第1の方向に沿って延びる短辺、及び、第1の方向と直交する第2の方向に延びる長辺を有する長方形である。そして、エッチング用マスク層114の短辺の長さ(LM_S)は、エッチング完了後の第1の方向に沿った第2化合物半導体層13の頂面の長さ(L2_S)と略等しい。しかしながら、実施例1と異なり、エッチング用マスク層114の長辺の長さ(LM_L)は、エッチング完了後の第2の方向に沿った第2化合物半導体層13の頂面の長さ(L2_L)と同じである。具体的な数値を表1に例示する。
比較例1におけるエッチング用マスク層114の模式的な平面図を図14の(A)に示し、製造工程途中(エッチング完了時)における発光素子(発光ダイオード)を上方から眺めた模式図を、図14の(B)に示す。また、図7の(B)に、製造工程途中(エッチング完了時)における比較例1のエッチング用マスク層114及び発光ダイオードの顕微鏡写真を示す。
比較例1においては、エッチング完了時の発光ダイオードの形状は、切頭八角錐であり、実施例1と同じ第1側面〜第6側面以外に、(1−10)面である第7側面、及び、(−10)面である第8側面が残されていた。尚、この第7側面及び第8側面は、略垂直面である。
比較例1にあっては、第1側面及び第4側面の斜面角度が安定する前に、<221>方向に向かうサイドエッチングが進行してしまい、第1側面及び第4側面の斜面角度が安定せず、形状にバラツキの少ない発光ダイオードを得ることが困難であった。即ち、製造ロット間の形状均一性が良くなかった。
一方、実施例1の発光ダイオードにあっては、エッチング用マスク層14の形状等を規定することで、第1側面及び第4側面の斜面角度が安定した発光ダイオード、形状にバラツキの少ない発光ダイオードを得ることができ、製造ロット間の形状均一性の向上を図ることができた。即ち、<221>方向に進行するサイドエッチングの速度からサイドエッチングによって損失する化合物半導体層の体積を概算し、それに応じて、エッチングマージン(エッチング裕度)分の長さを長辺方向に上乗せした形状を有するエッチング用マスク層とすることで、<221>方向に進行するサイドエッチングの定量的な制御が可能となり、発光素子(発光ダイオード)における第1側面及び第4側面の安定な斜面角度を得ることができ、発光素子の形状の均一化を図ることができた。
そして、<221>方向に向かうサイドエッチングが進行し、{221}面がエッチング用マスク層14の短辺の二等分線上で交合するので、比較例1のような垂直面が形成されず、捩れをもった緩斜面である{221}面が形成される。そして、この緩斜面によって、<110>方向の光取出し効率は、光線追跡法で計算した結果によれば、比較例1の20.4%に比較して、22.6%となり、約1.1倍の増加を図ることができる。
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。実施例において挙げた数値、材料、構成、構造、形状、各種基板、原料、プロセス等はあくまでも例示に過ぎず、必要に応じて、これらと異なる数値、材料、構成、構造、形状、基板、原料、プロセス等を用いることができる。
例えば、[工程−120]のウェットエッチングが完了した後、エッチング用マスク層14を除去してもよい。実施例においては、発光ダイオードをフリップチップ構造としたが、代替的に、フェイスアップ構造とすることもできる。更には、図6に示した発光ダイオードの構造(例えば、支持基板55と発光ダイオードの配置関係、第1の配線や第2の配線の構成等)は、発光ダイオードに要求される仕様に応じて、適宜変更することができる。
図1の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1におけるエッチング用マスク層の模式的な平面図、及び、実施例1の製造工程途中における発光素子を上方から眺めた模式図である。 図2の(A)及び(B)は、それぞれ、図1の(A)の矢印A−A及び矢印B−Bに沿った、製造中間工程(エッチング中)における発光素子の模式的な一部断面図である。 図3の(A)及び(B)は、それぞれ、図2の(A)及び(B)に引き続き、図1の(A)の矢印A−A及び矢印B−Bに沿った、製造中間工程(エッチング中)における発光素子の模式的な一部断面図である。 図4の(A)及び(B)は、それぞれ、図3の(A)及び(B)に引き続き、図1の(A)の矢印A−A及び矢印B−Bに沿った、製造中間工程(エッチング中)における発光素子の模式的な一部断面図である。 図5の(A)及び(B)は、それぞれ、図4の(A)及び(B)に引き続き、図1の(A)の矢印A−A及び矢印B−Bに沿った、製造中間工程(エッチング完了時)における発光素子の模式的な一部断面図である。 図6は、図1の(A)の矢印A−Aに沿った、最終的に得られる発光素子の模式的な一部断面図である。 図7の(A)及び(B)は、実施例1及び比較例1にて得られた製造工程途中(エッチング完了時)における発光素子の図面代用写真である。 図8の(A)〜(D)は、製造中間工程(エッチング中及びエッチング完了時)における発光素子を上から眺めた図面代用写真である。 図9の(A)及び(B)は、実施例1の発光ダイオードの製造方法を説明するための、発光ダイオード等の模式的な一部断面図である。 図10の(A)及び(B)は、図9の(B)に引き続き、実施例1の発光ダイオードの製造方法を説明するための、発光ダイオード等の模式的な一部断面図である。 図11の(A)及び(B)は、図10の(B)に引き続き、実施例1の発光ダイオードの製造方法を説明するための、発光ダイオード等の模式的な一部断面図である。 図12の(A)及び(B)は、図11の(B)に引き続き、実施例1の発光ダイオードの製造方法を説明するための、発光ダイオード等の模式的な一部断面図である。 図13は、図12の(B)に引き続き、実施例1の発光ダイオードの製造方法を説明するための、発光ダイオード等の模式的な一部断面図である。 図14の(A)及び(B)は、それぞれ、比較例1におけるエッチング用マスク層の模式的な平面図、及び、比較例1の製造工程途中における発光素子を上方から眺めた模式図である。 図15は、立方晶系の結晶面を説明するための、(001)面を頂面とする結晶構造の模式図である。
符号の説明
1・・・発光素子(発光ダイオード)、10・・・基体、10A・・・基板、10B・・・下地層、11・・・第1化合物半導体層、12・・・活性層、13・・・第2化合物半導体層、14・・・エッチング用マスク層、15・・・第2電極、16・・・第1電極、20・・・仮固定用基板、21・・・接着層、30・・・中継基板、31・・・微粘着層、40・・・実装用基板、41・・・接着剤層、51,56・・・絶縁層、52,57・・・開口部、53,58・・・配線、54・・・接着層、55・・・支持基板

Claims (17)

  1. (a)第1のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成り、第1導電型を有する第1化合物半導体層、
    (b)第2のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成る活性層、及び、
    (c)第3のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成り、第1導電型とは異なる第2導電型を有する第2化合物半導体層、
    から構成された積層構造体を備え、
    積層構造体の形状は切頭六角錐であり、
    切頭六角錐の頂面に相当する第2化合物半導体層の頂面は{100}面であり、
    切頭六角錐の6つの側面の内、対向する第1側面及び第4側面は{111}面であり、残りの第2側面、第3側面、第5側面及び第6側面は{221}面である発光素子の製造方法であって、
    (A)基体上に、第1化合物半導体層、活性層、第2化合物半導体層を、順次、形成した後、第2化合物半導体層上にパターニングされたエッチング用マスク層を形成し、次いで、
    (B)エッチング用マスク層を用いて、第2化合物半導体層、活性層、第1化合物半導体層をエッチングする、
    工程を具備し、
    エッチング用マスク層の平面形状は、第1の方向に沿って延びる短辺、及び、第1の方向と直交する第2の方向に延びる長辺を有する長方形であり、
    第1の方向は、積層構造体の軸線を通り、第1側面及び第4側面に対して垂直な仮想平面と平行であることを特徴とする発光素子の製造方法。
  2. エッチング用マスク層の短辺の長さ(LM_S)は、エッチング完了後の第1の方向に沿った第2化合物半導体層の頂面の長さと略等しく、
    エッチング用マスク層の長辺の長さ(LM_L)は、エッチング完了後の第2の方向に沿った第2化合物半導体層の頂面の長さよりも長いことを特徴とする請求項1に記載の発光素子の製造方法。
  3. M_S/LM_L≦1を満足することを特徴とする請求項2に記載の発光素子の製造方法。
  4. 前記工程(B)におけるエッチングは、−30゜C乃至5゜Cの塩酸をエッチング液として用いたウェットエッチング法に基づくことを特徴とする請求項1に記載の発光素子の製造方法。
  5. 前記工程(B)において、第2化合物半導体層、活性層、第1化合物半導体層をエッチングして、基体を露出させることを特徴とする請求項1に記載の発光素子の製造方法。
  6. 前記工程(B)の後、
    (C)エッチング用マスク層上に第2電極を形成し、若しくは、エッチング用マスク層を除去し、露出した第2化合物半導体層上に第2電極を形成し、
    (D)第2電極を介して発光素子を仮固定用基板に仮固定した後、
    (E)発光素子を基体から剥離し、次いで、
    (F)露出した第1化合物半導体層の底面に第1電極を形成する、
    工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の発光素子の製造方法。
  7. 発光素子は発光ダイオードから成ることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
  8. (a)第1のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成り、第1導電型を有する第1化合物半導体層、
    (b)第2のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成る活性層、及び、
    (c)第3のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成り、第1導電型とは異なる第2導電型を有する第2化合物半導体層、
    から構成された積層構造体を備えた発光素子の製造方法であって、
    (A)基体上に、第1化合物半導体層、活性層、第2化合物半導体層を、順次、形成した後、第2化合物半導体層上にパターニングされたエッチング用マスク層を形成し、次いで、
    (B)エッチング用マスク層を用いて、第2化合物半導体層、活性層、第1化合物半導体層をエッチングする、
    工程を具備し、
    エッチング用マスク層の平面形状は、第1の方向に沿って延びる短辺、及び、第1の方向と直交する第2の方向に延びる長辺を有する長方形であり、
    エッチング用マスク層の短辺の長さ(LM_S)は、エッチング完了後の第1の方向に沿った第2化合物半導体層の頂面の長さと略等しく、
    エッチング用マスク層の長辺の長さ(LM_L)は、エッチング完了後の第2の方向に沿った第2化合物半導体層の頂面の長さよりも長いことを特徴とする発光素子の製造方法。
  9. M_S/LM_L≦1を満足することを特徴とする請求項8に記載の発光素子の製造方法。
  10. 前記工程(B)におけるエッチングは、−30゜C乃至5゜Cの塩酸をエッチング液として用いたウェットエッチング法に基づくことを特徴とする請求項8に記載の発光素子の製造方法。
  11. 前記工程(B)において、第2化合物半導体層、活性層、第1化合物半導体層をエッチングして、基体を露出させることを特徴とする請求項8に記載の発光素子の製造方法。
  12. 前記工程(B)の後、
    (C)エッチング用マスク層上に第2電極を形成し、若しくは、エッチング用マスク層を除去し、露出した第2化合物半導体層上に第2電極を形成し、
    (D)第2電極を介して発光素子を仮固定用基板に仮固定した後、
    (E)発光素子を基体から剥離し、次いで、
    (F)露出した第1化合物半導体層の底面に第1電極を形成する、
    工程を含むことを特徴とする請求項11に記載の発光素子の製造方法。
  13. 発光素子は発光ダイオードから成ることを特徴とする請求項8乃至請求項12のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
  14. (a)第1のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成り、第1導電型を有する第1化合物半導体層、
    (b)第2のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成る活性層、及び、
    (c)第3のIII−V族化合物半導体(但し、V族元素はリンである)から成り、第1導電型とは異なる第2導電型を有する第2化合物半導体層、
    から構成された積層構造体を備えた発光素子であって、
    積層構造体の形状は切頭六角錐であり、
    切頭六角錐の頂面に相当する第2化合物半導体層の頂面は{100}面であり、
    切頭六角錐の6つの側面の内、対向する第1側面及び第4側面は{111}面であり、残りの第2側面、第3側面、第5側面及び第6側面は{221}面であることを特徴とする発光素子。
  15. 積層構造体の軸線を通り、第1側面及び第4側面に対して垂直な仮想平面の面方位は、<110>であることを特徴とする請求項14に記載の発光素子。
  16. 第2化合物半導体層の頂面の上には第2電極が形成されており、第1化合物半導体層の底面には第1電極が形成されていることを特徴とする請求項14に記載の発光素子。
  17. 発光ダイオードから成ることを特徴とする請求項14乃至請求項16のいずれか1項に記載の発光素子。
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