JP2008117815A - ガラスセラミック回路基板およびその製造方法 - Google Patents

ガラスセラミック回路基板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 拘束焼成によって高寸法精度を実現すると共に、表面導体層の接着強度を向上させたガラスセラミック回路基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 表裏面の両面ともガラスセラミック絶縁層に接合して拘束され、表面導体層2が表面に設けられる片面拘束層1a,1gの気孔率が、積層方向に垂直な面の両面ともガラスセラミック絶縁層に接合して拘束される両面拘束層1b,1c,1dの気孔率よりも高くなるように形成する。片面拘束層の気孔率としては、5.0体積%以上28.4体積%以下が望ましく、両面拘束層の気孔率としては、0.5体積%以上5.0体積%以下であることが望ましい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ガラスセラミック回路基板およびその製造方法に関し、特に、焼成における収縮挙動が異なる絶縁層同士を一体焼成することにより、互いの平面方向の焼成収縮を抑制した寸法精度に優れたガラスセラミック回路基板およびその製造方法に関する。
ガラスセラミックスを絶縁層とするガラスセラミック回路基板が用いられているが、ガラスセラミック回路基板に対して求められる機能によっては、複数種類のセラミックスを組み合わせることが必要になっている。
たとえば、低誘電率であるが強度の低いガラスセラミック絶縁層を、強度の高い絶縁層で補強したガラスセラミック回路基板が提案され、また、低誘電率のガラスセラミック回路基板の中に容量値の高いキャパシタを内蔵するために、高誘電率のガラスセラミック絶縁層を内層させたガラスセラミック回路基板などが提案されている。
さらに、ガラスセラミック回路基板の低コスト化や、部品実装時の高精度化のために、焼成時の収縮挙動の不整合による基板の反りおよび変形を小さくすることが強く求められるが、従来のガラスセラミック回路基板では、これらの要求を達成することは困難である。
そこで、焼成収縮開始温度が異なるガラスセラミックスをそれぞれ含む二種のグリーンシートを積層し、積層体を焼成して二種のガラスセラミック絶縁層を異なるタイミングで焼結させることによって、平面方向(X−Y方向)の焼成収縮による寸法変化を数%以下、特に1%以下に抑制されたガラスセラミック回路基板が開示されている(たとえば、特許文献1参照。)。なお、X−Y方向とは、基板の主面に平行な方向であり、Z方向とは基板の主面に垂直な方向(厚み方向)、換言すれば積層方向のことである。
さらに、拘束焼成を行う際に、導体層の体積収縮率と収縮開始温度とを制御することで、導体層とガラスセラミック絶縁層との界面付近の剥離やクラックが抑制されたガラスセラミック回路基板が開示されている(たとえば、特許文献2参照。)。
特開2001−15875号公報 特開2002−290037号公報
しかしながら、特許文献1,2記載のガラスセラミック回路基板は、導体層の剥離やクラックの発生は抑制されているが、基板表面に設けられた導体である表面導体層の接着強度が低いという問題がある。
本発明の目的は、拘束焼成によって高寸法精度を実現すると共に、表面導体層の接着強度を向上させたガラスセラミック回路基板およびその製造方法を提供することである。
本発明は、ガラスセラミック絶縁層を複数積層してなる絶縁基板の少なくとも表面に導体層が形成されているガラスセラミック回路基板であって、
前記ガラスセラミック絶縁層は、積層方向に垂直な面の片面のみが他のガラスセラミック絶縁層に接合され、前記導体層が形成されたガラスセラミック絶縁層である片面拘束層と、積層方向に垂直な面の両面が他のガラスセラミック絶縁層に接合されたガラスセラミック絶縁層である両面拘束層とを含み、
前記片面拘束層の気孔率が、前記片面拘束層の気孔率が7.2体積%〜28.4体積%であるとともに、前記両面拘束層の気孔率が7.2体積%より低いことを特徴とするガラスセラミック回路基板である。
また本発明は、前記片面拘束層が、前記絶縁基板の主面全体にわたって設けられていることを特徴とする。
また本発明は、前記片面拘束層の主成分と、前記片面拘束層に接合するガラスセラミック絶縁層の主成分とが同じであることを特徴とする。
また本発明は、前記片面拘束層の厚みが3μm〜20μmであることを特徴とする。
また本発明は、第1の結晶性ガラス粉末を含む第1のグリーンシートと、前記第1の結晶性ガラス粉末とは焼成収縮開始温度が異なる第2の結晶性ガラス粉末を含む第2のグリーンシートとを作製する成形工程と、
前記第1のグリーンシートおよび第2のグリーンシートの所定の表面に導体層を形成する印刷工程と、
印刷工程で得られた前記第1のグリーンシートおよび第2のグリーンシートをそれぞれ所定の枚数積層して積層体を形成する積層工程と、
前記積層体を、平面方向の焼成収縮を抑制しながら焼成する焼成工程とを有するガラスセラミック回路基板の製造方法であって、
前記積層体の最外層のグリーンシート表面に、累積重量が全体の90%となる粒径である90%粒径が最外層のグリーンシート厚みの50%〜70%に相当する大きさのガラス粉末を含むガラスペーストを塗布する塗布工程をさらに有し、
前記塗布工程は、前記成形工程と前記印刷工程との間に設けられていることを特徴とするガラスセラミック回路基板の製造方法である。
また本発明は、前記ガラスペーストに含まれるガラス粉末が、前記積層体の最外層のグリーンシートに含まれるガラス粉末と同じものを用いることを特徴とする。
また本発明は、第1の結晶性ガラス粉末を含む第1のグリーンシートと、前記第1の結晶性ガラス粉末とは焼成収縮開始温度が異なる第2の結晶性ガラス粉末を含む第2のグリーンシートとを作製する成形工程と、
前記第1のグリーンシートおよび第2のグリーンシートの所定の表面に導体層を形成する印刷工程と、
印刷工程で得られた前記第1のグリーンシートおよび第2のグリーンシートをそれぞれ所定の枚数積層して積層体を形成する積層工程と、
前記積層体を、平面方向の焼成収縮を抑制しながら焼成する焼成工程とを有するガラスセラミック回路基板の製造方法であって、
前記積層体の最外層のグリーンシートに含まれるガラス粉末は、累積重量が全体の90%となる粒径である90%粒径が最外層のグリーンシート厚みの50%〜70%に相当する大きさであることを特徴とするガラスセラミック回路基板の製造方法である。
また本発明は、前記最外層のグリーンシートは、ガラス粉末の充填率が30体積%〜45体積%であることを特徴とする。
本発明によれば、ガラスセラミック絶縁層を複数積層してなる絶縁基板の少なくとも表面に導体層が形成されているガラスセラミック回路基板であって、前記ガラスセラミック絶縁層には、積層方向に垂直な面の片面のみが他のガラスセラミック絶縁層に接合され、前記導体層が形成されたガラスセラミック絶縁層である片面拘束層と、積層方向に垂直な面の両面が他のガラスセラミック絶縁層に接合されたガラスセラミック絶縁層である両面拘束層とが含まれている。前記片面拘束層の気孔率が7.2体積%〜28.4体積%であるとともに、前記両面拘束層の気孔率が7.2体積%より低くなっている。
表面導体層が設けられる片面拘束層の気孔率を7.2体積%〜28.4体積%と高くすると、導体層が焼結する際に導体層の成分が片面拘束層の気孔に浸入し、ガラスセラミック絶縁層の成分と反応して強固なアンカーを形成することができるので、拘束焼成によって高寸法精度を実現すると共に、表面導体層の接着強度を向上させることができる。また、両面拘束層の気孔率を7.2体積%より低くすることで、高温高湿度負荷試験における信頼性を高めることができる。
また本発明によれば、前記片面拘束層が、前記絶縁基板の主面全体にわたって設けられているので、表面導体層を全面にわたって設けることができる。
また本発明によれば、前記片面拘束層の主成分と、前記片面拘束層に接合するガラスセラミック絶縁層の主成分とが同じであるので、絶縁層間の密着性を向上させることができる。
また本発明によれば、前記片面拘束層の厚みが3μm〜20μmである。片面拘束層の気孔率は、厚みが厚くなるほど低くなる傾向がある。これは、絶縁層の厚みが厚いと、ガラスセラミック絶縁層の平面方向の拘束力が弱くなり、他の絶縁層と接合していない側の絶縁層の焼成収縮が大きくなり、焼結しやすくなるためである。よって、セラミック絶縁膜の厚みを3μ以上20μm以下とすることで十分な気孔率を容易に実現できる。
また本発明によれば、まず成形工程において、第1の結晶性ガラス粉末を含む第1のグリーンシートと、前記第1の結晶性ガラス粉末とは焼成収縮開始温度が異なる第2の結晶性ガラス粉末を含む第2のグリーンシートとを作製し、印刷工程で、前記第1のグリーンシートおよび第2のグリーンシートの所定の表面に導体層を形成する。
積層工程では、印刷工程で得られた前記第1のグリーンシートおよび第2のグリーンシートをそれぞれ所定の枚数積層して積層体を形成し、焼成工程で、前記積層体を、平面方向の焼成収縮を抑制しながら焼成する。
本発明では、前記成形工程と前記印刷工程との間に、前記積層体の最外層のグリーンシート表面に、累積重量が全体の90%となる粒径である90%粒径が最外層のグリーンシート厚みの50%〜70%に相当する大きさのガラス粉末を含むガラスペーストを塗布する塗布工程をさらに有する。
このガラスペーストが片面拘束層となるが、片面拘束層の気孔率は、グリーンシートに用いられるガラス粉末のD90とグリーンシート膜厚とに影響される。ガラス軟化時に、ガラス粉末部分がボイドになり易く、その後の焼成収縮でボイド状態が変化するが、そのボイド状態は、グリーンシート膜厚により決まる。ガラス粉末のD90がグリーンシート膜厚の50%より小さい場合、焼結が進み易くなり、気孔率を高くすることが困難になる。また、ガラス粉末のD90がグリーンシート膜厚の70%より大きい場合、気孔率が高くなり過ぎて、収縮率が大きくなってしまう。
このようにしてガラスセラミック回路基板を作製することで、容易に気孔率を高くすることができ、拘束焼成によって高寸法精度を実現すると共に、表面導体層の接着強度を向上させることができる。
また本発明によれば、前記ガラスペーストに含まれるガラス粉末が、前記積層体の最外層のグリーンシートに含まれるガラス粉末と同じものを用いる。
これにより、最外層のグリーンシートとガラスペーストとの密着性を向上させることができる。
また本発明によれば、まず成形工程において、第1の結晶性ガラス粉末を含む第1のグリーンシートと、前記第1の結晶性ガラス粉末とは焼成収縮開始温度が異なる第2の結晶性ガラス粉末を含む第2のグリーンシートとを作製し、印刷工程で、前記第1のグリーンシートおよび第2のグリーンシートの所定の表面に導体層を形成する。
積層工程では、印刷工程で得られた前記第1のグリーンシートおよび第2のグリーンシートをそれぞれ所定の枚数積層して積層体を形成し、焼成工程で、前記積層体を、平面方向の焼成収縮を抑制しながら焼成する。
ここで、前記積層体の最外層のグリーンシートに含まれるガラス粉末として、累積重量が全体の90%となる粒径である90%粒径が最外層のグリーンシート厚みの50%〜70%に相当する大きさのものを使用する。
前記積層体の最外層のグリーンシートが片面拘束層となるが、片面拘束層の気孔率は、グリーンシートに用いられるガラス粉末のD90とグリーンシート膜厚とに影響される。ガラス軟化時に、ガラス粉末部分がボイドになり易く、その後の焼成収縮でボイド状態が変化するが、そのボイド状態は、グリーンシート膜厚により決まる。ガラス粉末のD90がグリーンシート膜厚の50%より小さい場合、焼結が進み易くなり、気孔率を高くすることが困難になる。また、ガラス粉末のD90がグリーンシート膜厚の70%より大きい場合、気孔率が高くなり過ぎて、収縮率が大きくなってしまう。
このようにしてガラスセラミック回路基板を作製することで、容易に気孔率を高くすることができ、拘束焼成によって高寸法精度を実現すると共に、表面導体層の接着強度を向上させることができる。
また本発明によれば、前記最外層のグリーンシートは、ガラス粉末の充填率が30体積%〜45体積%である。
片面拘束層の気孔率は、グリーンシートに用いられる粉末の充填率に影響されており、充填率を低くすることで気孔率を高くすることができる。グリーンシートの粉末充填率が30体積%より低いと、焼結が進み易くなり、片面拘束層の気孔率を高くすることが困難である。また、グリーンシートの粉末充填率が45体積%より高いと片面拘束層の気孔率が高くなり過ぎて、収縮率が大きくなってしまう。よって、ガラス粉末の充填率を30体積%〜45体積%とすることで十分な気孔率を容易に実現できる。
図1は、本発明の第1の実施形態であるガラスセラミック回路基板10の構成を示す断面図である。ガラスセラミック回路基板10は、絶縁基板1、絶縁基板1の表面に形成された表面導体層2、絶縁基板1の内部に形成された内部導体層3、および各導体層間を電気的に接続するビアホール導体4から構成されている。
絶縁基板1は、複数のガラスセラミック絶縁層(以下では「絶縁層」と略称する。)1a〜1gが積層されてなり、最外層となる絶縁層1a,1gと、内層の絶縁層1b〜1fとは、焼成収縮開始温度が異なるセラミック材料でそれぞれ形成されている。たとえば、上記絶縁層1a,1gを形成するセラミック材料の収縮開始温度は、内層の絶縁層1b〜1fを形成するセラミック材料の収縮開始温度よりも低くしている。なお、絶縁基板1の積層数は、たとえば2〜50層が好ましい。また、絶縁層1a〜1gの厚みは、たとえば、3〜300μmが好ましい。
図2は、本発明の第2の実施形態であるガラスセラミック回路基板20の構成を示す断面図である。ガラスセラミック回路基板20は、絶縁基板11、絶縁基板11の表面に形成された表面導体層12、絶縁基板1の内部に形成された内部導体層13、および各導体層間を電気的に接続するビアホール導体14から構成され、一方面側にキャビティ15が形成されている。
絶縁基板11は、複数の絶縁層11a〜11oが積層されてなり、表面導体層12および内部導体層13が設けられる絶縁層11i〜11oと、他の絶縁層11a〜11hとは、焼成収縮開始温度が異なるセラミック材料でそれぞれ形成されている。たとえば、上記絶縁層11a〜11hを形成するセラミック材料の収縮開始温度は、他の絶縁層11i〜11oを形成するセラミック材料の収縮開始温度よりも低くしている。なお、絶縁基板1の積層数は、たとえば2〜50層が好ましい。また、絶縁層1a〜1gの厚みは、たとえば、3〜300μmが好ましい。
焼成収縮開始温度が異なる2種類のセラミックスの焼成収縮挙動について、図3の焼成収縮曲線を用いて説明する。図3によれば、焼成収縮開始温度が異なる2種類のセラミックスをA、Bとすると、それぞれの焼成収縮開始温度SA、SBがSA<SBであれば、それぞれの焼成収縮終了温度EA、EBは、EA<EBとなる。
第1の実施形態であるガラスセラミック回路基板10を考えると、絶縁層1a、1gがセラミックスAに相当し、絶縁層1b〜1fがセラミックスBに相当する。
また、第2の実施形態であるガラスセラミック回路基板20を考えると、絶縁層11a〜11hがセラミックスAに相当し、絶縁層11i〜11oがセラミックスBに相当する。
少なくとも2種類のガラスセラミック絶縁層が焼結して平面方向(X−Y方向)の焼成収縮を抑制した従来のガラスセラミック回路基板は、ガラスセラミック絶縁層の気孔率が低くなるように設計されており、積層方向に垂直な面の片面のみがガラスセラミック絶縁層に接合して拘束されるガラスセラミック絶縁層(以下では「片面拘束層」と略称する。)の気孔率も低くなるように材料設計、プロセス設計されている。
よって、従来のガラスセラミック回路基板は、高い信頼性を有し、かつ導体層とガラスセラミック絶縁層との界面の剥離やクラックを防止することは可能であるが、片面拘束層の露出する側の表面に設けられた表面導体層の接着強度は、充分に満足できるものではない。
ガラスセラミック絶縁層のX−Y方向の焼成収縮が抑制されると、当然、同時焼成される導体層の焼成収縮もX−Y方向の焼成収縮が抑制される。このため、X−Y方向の焼成収縮が抑制された導体層の焼結では、主にZ方向(積層方向)のみに収縮が起こるため、X−Y−Zの3方向に焼成収縮する場合に比べて、焼結不良の導体層となる傾向がある。特に、表面導体層は、Z方向の焼成収縮の抑制力が不均一になるために、焼結不良になり易い。そのため、表面導体層とガラスセラミック絶縁層との界面で接着強度を高めるアンカー形成が不充分となる傾向がある。
この接着強度には、片面拘束層の気孔率が大きく影響しており、片面拘束層の気孔率を高くすることで表面導体層と片面拘束層とのアンカー形成が促進されることが判った。これは、表面導体層がZ方向に収縮焼結する際に、その成分が、片面拘束層のボイド部に選択的に浸入し、片面拘束層の成分と反応して強固なアンカーを形成するからである。
本発明において、平面方向の焼成収縮を抑制するとともに、表面導体層の接着強度が高く、高い信頼性を有するガラスセラミック回路基板を得るために、片面拘束層の気孔率が、積層方向に垂直な面の両面ともガラスセラミック絶縁層に接合して接合して拘束されるガラスセラミック絶縁層(以下では、「両面拘束層」と略称する。)の気孔率よりも高くなるように形成している。
片面拘束層の気孔率としては、7.2体積%以上28.4体積%以下が望ましく、両面拘束層の気孔率としては、7.2体積%より低いことが望ましい。
片面拘束層の気孔率を7.2体積%以上28.4体積%以下とすることで、表層導体層の接着強度をより高くすることができる。気孔率が7.2体積%より低いとアンカー形成が不十分となり接着強度が低くなってしまう。気孔率が28.4体積%より高いとボイドが多くなり過ぎてX−Y方向の焼成収縮の抑制が弱くなり、収縮率が大きくなってしまう。
また、両面拘束層の気孔率を7.2体積%より低くすることで、高温高湿度負荷試験における信頼性を高めることができる。気孔率が7.2体積%以上であると、信頼性を確保することが困難になる。ここでの信頼性は、高温高湿度負荷試験(HHBT)における信頼性であり、ガラスセラミック絶縁層中のボイドが多いと、ガラスセラミック絶縁層が薄くなるにつれて絶縁抵抗が劣化し易くなる。
ここで、ガラスセラミック絶縁層との接合とは、厚さ20μm以下の導体層を介して接合している場合も含む。
また、X−Y方向の焼成収縮が抑制されているかどうかは、X−Y方向の収縮率が5%以下であること、または、X−Y方向の収縮率がZ方向の収縮率よりも20%以上小さいことを判断基準とする。さらに、収縮率とは、特にことわらない限り、線収縮率のことを示し、焼成前の長さをX、焼成後の長さをXとしたときに、(X−X)/Xで計算される。
ガラスセラミック絶縁層のうちの少なくとも1つの層中に、片面拘束される部分と、両面拘束される部分とを含んでいてもよい。
これによって、キャビティ構造が可能になる。たとえば、ガラスセラミック回路基板20において、絶縁層11cのキャビティ底部にあたる部分は、片面拘束される部分であり、絶縁層11cの残余の部分は両面拘束される部分である。キャビティ底部の気孔率を5.0体積%以上28.4体積%以下とすることで、キャビティ底部に表面導体層を設けた場合でも接着強度を向上させることができる。また、キャビティ底部の上下両面が焼成収縮開始温度の異なる層に接合している部分のガラスセラミック層に、絶縁基板内蔵のコンデンサー電極を設けた場合でも高い信頼性を確保することが可能になる。
複数のガラスセラミック絶縁層のうち、片面拘束層の厚みは3μ以上20μm以下であることが望ましい。これにより、容易に片面拘束層の気孔率を高くすることが可能となる。
片面拘束層の気孔率は、厚みが厚くなるほど低くなる傾向がある。これは、絶縁層の厚みが厚いと、ガラスセラミック絶縁層の平面方向の拘束力が弱くなり、他の絶縁層と接合していない側の絶縁層の焼成収縮が大きくなり、焼結しやすくなるためである。よって、セラミック絶縁膜の厚みは3μ以上20μm以下がよい。
本発明のガラスセラミック回路基板の製造方法について説明する。
第1の結晶性ガラス粉末と第1の有機バインダとを含む第1のグリーンシートと、第1の結晶性ガラス粉末とは焼成収縮開始温度が異なる第2の結晶性ガラス粉末と第2の有機バインダとを含む第2のグリーンシートを形成する。
第1および第2のグリーンシートに各導体層となる金属ペーストを印刷、埋め込みしたのち、グリーンシートを積層して焼成することにより、第1の結晶性ガラス粉末と第2の結晶性ガラス粉末がそれぞれ焼結してガラスセラミック絶縁層となり平面方向(X−Y方向)の焼成収縮が抑制されたガラスセラミック回路基板が得られる。焼成後に片面拘束層となるグリーンシートに用いられるガラス粉末は、累積重量が全体の90%となる粒径である90%粒径(以下では、「D90」と略称する。)がグリーンシート膜厚の50〜70%であることが望ましい。これにより、容易に片面拘束層の気孔率を高くすることができる。
これは、片面拘束層の気孔率が、グリーンシートに用いられるガラス粉末のD90とグリーンシート膜厚とに影響されるからである。ガラス軟化時に、ガラス粉末部分がボイドになり易く、その後の焼成収縮でボイド状態が変化するが、そのボイド状態は、グリーンシート膜厚により決まる。
ガラス粉末のD90がグリーンシート膜厚の50%より小さい場合、焼結が進み易くなり、気孔率を高くすることが困難になる。また、ガラス粉末のD90がグリーンシート膜厚の70%より大きい場合、気孔率が高くなり過ぎて、収縮率が大きくなってしまう。
また、焼成後に片面拘束層となるグリーンシートに用いられる粉末の充填率は、30〜45体積%であることが望ましい。これにより、容易に片面拘束層の気孔率を高くすることができる。
これは、片面拘束層の気孔率が、グリーンシートに用いられる粉末の充填率に影響されており、充填率を低くすることで気孔率を高くすることができるからである。
グリーンシートの粉末充填率が30体積%より低いと、焼結が進み易くなり、片面拘束層の気孔率を高くすることが困難である。また、グリーンシートの粉末充填率が45体積%より高いと片面拘束層の気孔率が高くなり過ぎて、収縮率が大きくなってしまう。
グリーンシートに用いられるセラミック粉末としては、Al、SiO、MgTiO、CaZrO、CaTiO、MgSiO、BaTi、ZrTiO、SrTiO、BaTiO、TiOから選ばれる1種以上が挙げられる。
ガラス粉末の具体的な組成例としては、必須成分として、SiOが20〜70質量%、Alが0.5〜30質量%、MgOが3〜60質量%であり、任意成分として、CaO0〜35質量%、BaO0〜35質量%、SrO0〜35質量%、B0〜20質量%、ZnO0〜30質量%、TiO0〜10質量%、NaO0〜3質量%、LiO0〜5質量%を含む組成が挙げられる。
このような組成のガラス粉末とセラミック粉末との組み合わせによれば、1000℃以下での低温焼結が可能となるとともに、導体層として、Cu、Ag、Alなどの低抵抗導体を用いて同時焼成することが可能となり、また、低誘電率化も可能であり、高速伝送化に好適である。しかも、上記の範囲で種々組成を制御することによって、焼成収縮挙動を容易に制御、変更することができる。
本発明のガラスセラミック回路基板の製造方法についてより具体的に説明すると、まず、焼成収縮挙動が上記のような関係にある2種類のセラミック材料からなるグリーンシートを作製する。グリーンシートは、所定のセラミック粉末組成物と有機バインダと有機溶剤および必要に応じて可塑剤とを混合し、スラリー化する。このスラリーを用いてドクターブレード法などによりテープ成形を行い、所定寸法に切断しグリーンシートを作製する。
次に、このグリーンシートにパンチングなどによって貫通孔を形成し、その貫通孔内にビアホール導体となる導体ペーストを充填し、表面導体層や内部導体層となる導体ペーストをスクリーン印刷法などによって被着形成する。
このようにして得られた各グリーンシートを、所定の積層順序に応じて積層し、積層成形体を形成する。
キャビティ形成は、キャビティとなる溝を、金型等を用いて積層体を一括で打ち抜くか、もしくは、積層体を形成する前のグリーンシートを打ち抜いた後に積層するか、いずれかの手法で形成する。
その後、積層成形体を焼成するが、焼成にあたっては、図3に示したように、昇温して、片面拘束層に用いられるセラミックスAの収縮開始温度SAに到達後、徐々に昇温するか、または収縮開始温度SAか、または収縮開始温度SA以上で両面拘束層に用いられるセラミックスBの収縮開始温度SBよりも低い温度で、一時的に炉内温度を保持してセラミックスAが最終焼成体積収縮量の90%以上焼成収縮が進行するまで保持する。このとき、セラミックスAは、その温度で焼成収縮しないセラミックスBによってX−Y方向への収縮が抑制されZ方向に焼成収縮する。
セラミックスAが最終焼成体積収縮量の収縮した後、セラミックスBの収縮開始温度SBに昇温して焼成する。この焼成によって、セラミックスBは、焼結がほぼ完了したセラミックスAによってX−Y方向への焼成収縮が抑制されZ方向に焼成収縮する。その結果、セラミックスAおよびセラミックスBともにX−Y方向への焼成収縮が抑制されZ方向に焼成収縮した、寸法精度の高い基板を作製することができる。
なお、焼成収縮挙動が異なる2種のセラミックスは、例えば、焼結収縮挙動の相違のみならず、目的に応じて、比誘電率が異なる、強度が異なる、誘電損失が異なるなどの他の特性が異なっていてもよい。
また、焼成収縮挙動が異なる2種類のセラミックスA,Bを用いた絶縁層をそれぞれ記号A,Bで表した場合、図1に示したガラスセラミック回路基板10の層構成は、上から順にABBBBBAで表される。また図2に示したガラスセラミック回路基板20の層構成は、上から順にABABABABABABABAで表される。ガラスセラミック回路基板の層構成は、これに限らず、たとえば、ABABABA、AAABAAA、AABBBAA、AABABAA、AABBAAA、ABAAAAAなどでもよく、AとBとを入れ換えた構成であってもよい。
また、片面拘束層は、上記のようにグリーンシートとして形成するだけでなく、積層体の最外層のグリーンシート表面に、D90が最外層のグリーンシート厚みの50%〜70%に相当する大きさのガラス粉末を含むガラスペーストを塗布することでも形成できる。このとき、ガラスペーストに含まれるガラス粉末は、積層体の最外層のグリーンシートに含まれるガラス粉末と同じものを用いることが好ましい。
表1に示すような、焼成収縮開始温度が異なるセラミックス1〜6を形成する各セラミック組成物を準備した。また、表2に示すような、特性を有する各種グリーンシート組成物を準備した。なお、表2に示した試料No.1〜5および20,21は、比較例であり、試料No.6〜19は、実施例である。
Figure 2008117815
Figure 2008117815
有機バインダとしてエチルセルロースと、有機溶剤として2−2−4−トリメチル−3−3−ペンタジオールモノイソブチレートを添加してなるスラリーを調製し、これをドクターブレード法により薄層化し、基板用のグリーンシートを作製した。
そして、グリーンシートの所定の位置にパンチング等により貫通孔を形成し、この貫通孔にAg粉末を含む導電性ペーストを充填し、またこの導電性ペーストをスクリーン印刷して所定の内層導体層を印刷形成し、乾燥させた。
一方、最上層、最下層となるグリーンシートに、表面導体層のパターンで上記の導電性ペーストをスクリーン印刷し、乾燥させた。ここで、キャビティの形成される層はパンチングで焼成後キャビティとなる孔を形成する。
導電性ペーストが充填され、所定形状の導体層が形成されたグリーンシートを積層するとともに、最上層および最下層に、表面導体層となる導体膜を形成したグリーンシートを積層し、積層成形体を作製した。
この後、大気中400℃で脱有機バインダ処理し、さらに表2に示す焼成温度で焼成し、図4に示す層構成の平板基板30と、図5に示す層構成のキャビティ基板40を作製した。各層の焼成前の厚みは表2に示したグリーンシート厚みであり、焼成後の厚さは焼成前の厚みの約60%となった。基板の大きさは、縦10mm、横10mm、であった。
各絶縁層21a〜21g,31a〜31gは、それぞれ焼成収縮開始温度が異なる2つの層からなり、上層が収縮開始温度の低い層、下層が収縮開始温度の高い層となっている。
焼成体の気孔率(%)は、焼成体の断面を倍率×1000でSEM観察して、磁器断面におけるボイドの断面積を求め、ボイド断面積/(ボイドと磁器の断面積の和)×100を算出した。気孔率は、片面拘束層(絶縁層21a,21g,31a,31d,31g)と、両面拘束層(21b,21c,21d,21e,21f,31b,31c,31e,31f)について算出した。
表面導体層の接着強度は、2mm角の電極パッドを表面導体層としてリードプル強度を測定した。まず、表面導体層に直径0.6mmのリード線を、導体に垂直に共晶半田で接続した。基板を固定し、リードを持って、基板主面に垂直に引き上げて、接続が破壊される強度を測定した。
信頼性は、JIS C0097に準拠したHHBT試験を行った。図4または図5に示した構造のサンプルの内部に形成された、両面がセラミック絶縁層に接続している絶縁層を評価した。評価は、1mm×1mmの電極に挟まれた部分で、グリーンシートの厚さが50μm、25μm、15μm、10μm、5μm、3μm、2μmのサンプルの電極間の絶縁層の厚さは、それぞれ、25μm、12μm、5μm、3μm、1.7μm、1.1μmであった。なお、電極間の絶縁層の厚さが焼成前の60%より薄くなるのは、電極が形成されているためである。例えば、グリーンシート厚さが50μmのサンプルでは、電極のない部分の焼成後の絶縁層の厚さが30μmであり、この絶縁層中で電極が形成されている部分の絶縁層の厚さは25μmとなる。HHBT(温度85℃、湿度85%、印加電圧5.5V)を行い、1000Hr後の絶縁抵抗値が10(Ω)より低い値を不良とした。不良率は、評価数n=50に対する不良数を算出した。図4の平板構造のサンプルは、対向する内部導体層3に挟まれたガラスセラミック絶縁層5を、図5のキャビティ構造のサンプルでは、キャビティ底部の層を形成する絶縁層で、対向する内部導体層13に挟まれたガラスセラミック絶縁層5を評価した。
なお、グリーンシート積層体と焼成後のサンプルに対して、所定の2点間の長さを測定することにより、X−Y方向のガラスセラミック回路基板の収縮率を算出した。なお、各試料について10個の試料を作製し、それぞれの収縮率の平均値を算出した。
各評価結果について表3に示す。
Figure 2008117815
実施例である試料No.6〜19については、収縮率が小さく、かつ表面導体層の接着強度が高い回路基板が得られた。
比較例である試料No.1〜3については、収縮率は小さかったが、片面拘束層の気孔率が小さかったため、十分な接着強度が得られず、また信頼性も低かった。また、No.4,5は、接着強度は向上したが、十分な収縮率が得られなかった。
本発明の第1の実施形態であるガラスセラミック回路基板10の構成を示す断面図である。 本発明の第2の実施形態であるガラスセラミック回路基板20の構成を示す断面図である。 焼成収縮開始温度が異なる2種類のセラミックスの焼成収縮挙動を示す焼成収縮曲線である。 実施例で作製した平板基板30の構成を示す断面図である。 実施例で作製したキャビティ基板40の構成を示す断面図である。
符号の説明
10,20,30,40 ガラスセラミック回路基板
1,11,21,31 絶縁基板
2,12 表面導体層
3,13 内部導体層
4,14 ビアホール導体
15 キャビティ

Claims (8)

  1. ガラスセラミック絶縁層を複数積層してなる絶縁基板の少なくとも表面に導体層が形成されているガラスセラミック回路基板であって、
    前記ガラスセラミック絶縁層は、積層方向に垂直な面の片面のみが他のガラスセラミック絶縁層に接合され、前記導体層が形成されたガラスセラミック絶縁層である片面拘束層と、積層方向に垂直な面の両面が他のガラスセラミック絶縁層に接合されたガラスセラミック絶縁層である両面拘束層とを含み、
    前記片面拘束層の気孔率が、前記片面拘束層の気孔率が7.2体積%〜28.4体積%であるとともに、前記両面拘束層の気孔率が7.2体積%より低いことを特徴とするガラスセラミック回路基板。
  2. 前記片面拘束層は、前記絶縁基板の主面全体にわたって設けられていることを特徴とする請求項1記載のガラスセラミック回路基板。
  3. 前記片面拘束層の主成分と、前記片面拘束層に接合するガラスセラミック絶縁層の主成分とが同じであることを特徴とする請求項1または2記載のガラスセラミック回路基板。
  4. 前記片面拘束層の厚みが3μm〜20μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のガラスセラミック回路基板。
  5. 第1の結晶性ガラス粉末を含む第1のグリーンシートと、前記第1の結晶性ガラス粉末とは焼成収縮開始温度が異なる第2の結晶性ガラス粉末を含む第2のグリーンシートとを作製する成形工程と、
    前記第1のグリーンシートおよび第2のグリーンシートの所定の表面に導体層を形成する印刷工程と、
    印刷工程で得られた前記第1のグリーンシートおよび第2のグリーンシートをそれぞれ所定の枚数積層して積層体を形成する積層工程と、
    前記積層体を、平面方向の焼成収縮を抑制しながら焼成する焼成工程とを有するガラスセラミック回路基板の製造方法であって、
    前記積層体の最外層のグリーンシート表面に、累積重量が全体の90%となる粒径である90%粒径が最外層のグリーンシート厚みの50%〜70%に相当する大きさのガラス粉末を含むガラスペーストを塗布する塗布工程をさらに有し、
    前記塗布工程は、前記成形工程と前記印刷工程との間に設けられていることを特徴とするガラスセラミック回路基板の製造方法。
  6. 前記ガラスペーストに含まれるガラス粉末は、前記積層体の最外層のグリーンシートに含まれるガラス粉末と同じものを用いることを特徴とする請求項5記載のガラスセラミック回路基板の製造方法。
  7. 第1の結晶性ガラス粉末を含む第1のグリーンシートと、前記第1の結晶性ガラス粉末とは焼成収縮開始温度が異なる第2の結晶性ガラス粉末を含む第2のグリーンシートとを作製する成形工程と、
    前記第1のグリーンシートおよび第2のグリーンシートの所定の表面に導体層を形成する印刷工程と、
    印刷工程で得られた前記第1のグリーンシートおよび第2のグリーンシートをそれぞれ所定の枚数積層して積層体を形成する積層工程と、
    前記積層体を、平面方向の焼成収縮を抑制しながら焼成する焼成工程とを有するガラスセラミック回路基板の製造方法であって、
    前記積層体の最外層のグリーンシートに含まれるガラス粉末は、累積重量が全体の90%となる粒径である90%粒径が最外層のグリーンシート厚みの50%〜70%に相当する大きさであることを特徴とするガラスセラミック回路基板の製造方法。
  8. 前記最外層のグリーンシートは、ガラス粉末の充填率が30体積%〜45体積%であることを特徴とする請求項7記載のガラスセラミック回路基板の製造方法。
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