JP2008106317A - β型チタン合金 - Google Patents

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Abstract

【課題】比較的安価なβ安定化元素であるFeを多く添加した場合に生じる成分偏析の影響を抑制して、安定した時効材質特性を有するTi−Al−Fe−V−Mo系とTi−Al−Fe−V−Mo−Zr系のβ型チタン合金を提供する。
【解決手段】本発明のβ型チタン合金は、質量%で、Alが2〜5%、Feが2.5〜4.5%,Vが6〜10%、Moが6.5〜10%の範囲であり、残部が実質的にTiからなる。好ましくは、Alが2〜4%、Feが2.8〜4.2%、Vが8.6〜10%、Moが8.6〜10%の範囲とする。さらには、酸素当量Qを0.15〜0.30にすること、或いは加工硬化ままの状態にすること、またはその両方を施すことによって、時効熱処理前の引張強度をさらに高めたものである。これによって、ヤング率が高いα相の析出量が少なくとも所要の強度を得ることができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、β型チタン合金に関する。
β型チタン合金は、V,Moなどのβ型安定化元素を添加して、室温で安定なβ相を残留させたチタン合金である。β型チタン合金は、冷間加工性に優れており、かつ時効熱処理によってα相が微細析出し、引張強度で約1400MPaの高強度が得られるとともに、比較的ヤング率が低いことから、ばね、ゴルフクラブヘッド、ファスナーなど様々な用途に適用されている。
従来からのβ型チタン合金は、Ti−15質量%V−3質量%Cr−3質量%Sn−3質量%Al(以降、質量%の記載は省略する)、Ti−13V−11Cr−3Al、Ti−3Al−8V−6Cr−4Mo−4Zrが代表的なものである。
これに対して、比較的安価なβ型安定化元素であるFeを添加したβ型チタン合金が提案されている。
特許文献1に記載の発明は、Ti−Al−Fe−Mo系のβ型チタン合金で、Moeq(Mo当量)を16より大きくしたもので、その代表的な組成は、Alが1〜2質量%、Feが4〜5質量%、Moが4〜7質量%、Oが0.25質量%以下である。
特許文献2、特許文献3、特許文献4に記載の発明は、Ti−Al−Fe−Cr系のβ型チタン合金で、VやMoが添加されておらず、質量%で、Feが各々、1〜4%、8.8%以下(但し、Fe+0.6Crが6〜10)、5%以下、Crが各々、6〜13%、2〜12%(但し、Fe+0.6Crが6〜10)、10〜20%の範囲である。
特許文献5、特許文献6、特許文献7に記載の発明は、各々、Ti−Al−Fe−Cr−V−Mo−Zr系、Ti−Al−Fe−Cr−V−Sn系、Ti−Al−Fe−Cr−V−Mo系のβ型チタン合金である。いずれも、FeとCrがともに添加されており、かつV、Moの両者あるいはどちらか一方が含有されている。さらに、特許文献5、特許文献6では、各々、2〜6質量%のZr,2〜5質量%のSnが添加されている。
特許第2859102号公報 特開平03−61341号公報 特開2002−235133号公報 特開2005−60821号公報 特開2005−154850号公報 特開2004−270009号公報 特開2006−111934号公報
上述したように、特許文献1〜7は、比較的安価なβ型安定化元素であるFeやCrを添加したβ型チタン合金である。
しかしながら、安価なβ安定化元素であるFeは、溶解工程の凝固時に偏析しやすいことから、特許文献1(Ti−Al−Fe−Mo系)ではFeを4〜5質量%も含んでおり、4質量%を超えて多量に添加すると成分偏析によって、材質特性や時効硬化特性にばらつきが発生する可能性が高まってしまう。また、特許文献1は、Vを含有していない。
特許文献2,特許文献3,特許文献4では、Feの他に比較的安価なβ安定化元素であるCrが多量に使用されており、V,Moともに添加されていない。CrはFeと同様な傾向に成分偏析することから、β安定化元素がFeとCrのみで、かつこれらが多量に添加されているこれらのβ型チタン合金でも、成分偏析によって材質特性や時効硬化特性にばらつきが発生し、強度の高い領域と低い領域が生じて、それら領域間での強度の差が大きい場合、その材料をコイル状スプリングなどのばねに適用した場合、強度の低い領域が、疲労破壊の起点となって寿命が低くなる可能性が高まる。特許文献5、特許文献6、特許文献7は、Ti−Al−Fe−Cr−V−Mo系をベースとしており、VとMoが単独あるいは両者とも添加されている。特許文献5、特許文献6、特許文献7ともに、偏析しやすいFeとCrがともに添加されており、その合計した量に対して、Moが6質量%以下と低く、成分偏析の低減効果が十分ではない。なお、特許文献6にはMoが添加されていない。
加えて、β型チタン合金は時効熱処理によって高強度化できるが、8〜24時間の時効熱処理では、引張強度が必ずしも1400MPa以上にならないものもあり、1400MPa以上の強度でも延性が低いといった課題がある。
また、特許文献6には中性元素(α安定化でもβ安定化でもない元素)であるSnが2〜5質量%も含有されている。このSnは周期律表からわかるように原子量が118.69と、同じ中性元素であるZrが91.22であるのに対して大きく、チタン合金の密度をより高めてしまう。軽量化(高比強度化)を目的としてチタン合金が適用されている用途(ばね、ゴルフクラブヘッド、ファスナーなど)では、Snの添加を避ける方が有利である。
さらに、β型チタン合金は強度を高めるために時効熱処理によってα相を析出させると、ヤング率が高まってしまい、β型チタン合金の特徴である低いヤング率を十分に活かすことができなくなる。これは、β相に比べて、α相の方が20〜30%程度、ヤング率が大きいことが原因である。比較的低いヤング率を維持しながら、高い強度を得るためには、ベースとなる時効熱処理前の強度を高めて時効熱処理によるα相の析出量を少なく抑えることが必要である。
以上のことから、本発明は、添加元素とその組成を制御することによって、比較的安価なβ安定化元素であるFeを多く添加した場合に生じる成分偏析の影響を抑制して、安定した時効材質特性を有するTi−Al−Fe−V−Mo系とTi−Al−Fe−V−Mo−Zr系のβ型チタン合金を提供することを目的とするものである。本発明のβ型チタン合金を、自動車や二輪車のコイル状スプリングなどのばね、ゴルフクラブヘッド、ボルトやナットなどのファスナー類等の素材として適用することによって、安定した材質特性を有する製品を提供することを目的とするものである。
さらには、高強度でありながら低いヤング率を得やすくするために、本発明のβ型チタン合金において、時効熱処理前の強度を高めたTi−Al−Fe−V−Mo系とTi−Al−Fe−V−Mo−Zr系のβ型チタン合金を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)質量%で、Alを2〜5%、Feを2.5〜4.5%、Vを6〜10%、Moを6.5〜10%となる範囲で含有し、残部がTiおよび不可避的不純物からなるβ型チタン合金。
(2)前記(1)に記載のβ型チタン合金に、さらに、質量%でZrを2〜6%となる範囲で含有することを特徴とするβ型チタン合金。
(3)〔1〕式の酸素等量Qが0.15〜0.30であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のβ型チタン合金。
酸素等量Q=[O]+2.77[N] ・・・〔1〕式
ここで、[O]はO含有量(質量%)、[N]はN含有量(質量%)である。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のβ型チタン合金を加工硬化させたままの加工品。
ここで、(4)の「加工硬化させたままの加工品」とは、圧延や伸線、鍛造、プレス成形などの加工が加わったままの状態の板、棒線、その他成形加工品のことであり、焼鈍ままの状態に比べて高強度となっている。
本発明によって、比較的安価なβ安定化元素であるFeを多く添加した場合に生じる成分偏析の影響を抑制したTi−Al−Fe−V−Mo系とTi−Al−Fe−V−Mo−Zr系のβ型チタン合金を提供できる。これによって、ばね、ゴルフクラブヘッド、ファスナー等に代表される種々用途において、比較的に安価な添加元素であるFeを活用したβ型チタン合金においても安定した製品材質特性を得ることができる。さらには、高強度でありながら低いヤング率を得やすくするために、本発明のβ型チタン合金において、時効熱処理前の強度を高めたβ型チタン合金を提供できる。
本発明者らは、β安定化元素として、比較的安価なFeを多く含有させても、かつV,Moの両者を各々所定量〜10質量%含有させることによって、成分偏析の影響を抑制し安定した時効材質特性を達成できることを見出し、本発明に至った。さらには、〔1〕式の酸素当量Q(=[O]+2.77[N])を0.15〜0.30にすること、或いは加工硬化ままの状態にすること、またはその両方を施すことによって、時効熱処理前の引張強度をさらに高めることができることを見出した。このように、時効熱処理前の引張強度を高めることによって、比較的低いヤング率を維持しながら時効熱処理によって高い引張強度を達成できる。
以下に本発明の各要素の設定根拠について説明する。
Alはα安定化元素であり、時効熱処理時のα相の析出を促進させることから、析出強化に寄与する。Alが2質量%未満ではα相の析出強化への寄与が過小であり、一方で5質量%を超えると優れた冷間加工性が得られなくなる。そのため、本発明ではAlを2〜5質量%の範囲とする。冷間加工性を重視した場合、2〜4質量%のAlが好ましい。
β安定化元素として、Feの他に、VとMoの両方を所定量添加することよって、成分偏析の影響を緩和できる。Vは凝固時の偏析が小さくほぼ均一に分布し、MoはFeと逆な傾向に濃度分配する。つまり、Mo濃度が高い部位ではFeの濃度が低く、Mo濃度が低い部位ではその逆となる。このように、均一に分布するVをベースとしてβ相の安定度を担保し、且つMoによってFeの偏析の影響を緩和することができる。これによって、成分偏析の影響は抑制されて比較的安価なFeを多く添加することが可能になる。
ここで、成分偏析の程度は、α相を析出させる時効熱処理後の断面をエッチングした組織を観察することによって、判定できる。β安定化元素の偏析によって、α相の析出速度やその量が異なるため、偏析部位によって金属組織に差異が現れる。図1は、β型チタン合金において、β相安定化元素の一方的な偏析によって微細なα相析出量分布の偏在が著しく生じた例であり、図2は、β型チタン合金において、β相安定化元素の配合の工夫によって微細なα相析出量分布の偏在を抑えた例を示す。図1、2共に、熱間圧延したβ型チタン合金製の棒をβ単相域で溶体化焼鈍した後、500℃で24時間の時効熱処理を施した場合の例である。図1、図2とも、棒のL断面(棒の長手方向に平行な断面)を研磨した後に、チタン用のエッチング液(フッ化水素酸と硝酸を含有)に浸漬して、組織を観察しやすくしている。図1は、成分偏析の影響が大きく現れ、α相の析出量が少ない部分(暗灰色の領域に挟まれた明灰色のバンド)と多い部分(暗灰色の領域)が目視でも明瞭に識別できる。この暗灰色の領域はα相が多く微細に析出していることから硬く、一方で明灰色の領域はこれに比べて柔らかく、図1の例では暗灰色の領域のビッカース硬さが約440であるのに対して明灰色のバンド内は約105ポイントも低い値である。これは、上述したようにβ安定化元素の偏析に起因した現象であり、当然ながら材質へも多大に影響する。一方、図2((a),(b),(c))は、図1のような明灰色の粗大な領域は見えず、ほぼ均一にα相が析出している例である。なお、図2の(a),(b),(c)の各断面内で、ビッカース硬さをランダムに6点測定すると、その値の幅は10〜20程度で図1の例に比べて非常に小さい。本発明では、この判定方法を用いており、以降、「偏析判定法」と呼ぶ。なお、上記のビッカース硬さは荷重9.8Nで測定した。
偏析判定法で評価した結果、質量%で、Alが2〜5%のとき、Feが1〜4.5%,Vが6〜10%,Moが6.5〜10%の範囲で、成分偏析の影響を非常に小さくすることができる。一方で、時効熱処理後の引張特性において、良好な強度−延性バランスとするために、Feを2.5質量%以上添加する必要がある。Fe濃度が2.5質量%未満と低い場合には、成分偏析の影響は低減される傾向にあるものの、時効熱処理後の強度−延性バランスにおいて、24時間以下の時効熱処理では引張強度が1400MPa以上にならず、伸びも10%に及ばない。Feを2.5質量%以上添加することによって、時効材質を向上させることができ、1400MPa以上の引張強度と10%以上の伸びが得られる。
したがって、本発明の請求項1では、質量%で、Alが2〜5%、Feが2.5〜4.5%,Vが6〜10%、Moが6.5〜10%の範囲とした。なお、Fe,Mo,Vが上記下限未満の場合には、安定したβ相が得られない場合がある。一方、比較的高価なV,Moは上限を超えて過度に添加する必要はなく、Feはその上限を超えると成分偏析の影響が顕在化する場合がある。
本発明において、好ましくは、質量%で、Alが2〜4%、Feが2.8〜4.2%、Vが8.6〜10%、Moが8.6〜10%の範囲とする。この好ましい範囲において、VとMoの下限を高めにしており、成分偏析の影響を抑制する効果が、より高まる方向になる。
Zrは、Snと同様に中性元素であり高強度化に寄与し、Snに比べて密度を増加させる傾向が小さい。Zrが2〜6質量%の範囲で時効熱処理後の引張強度が向上し、かつ全伸びの低下が非常に小さいことから、本発明の請求項2は、請求項1のβ型チタン合金に、さらにZrを2〜6質量%含んだものとする。なお、好ましくは、質量%で、Alが2〜3.5%、Feが2.5〜4.5%、Vが7〜9%、Moが7〜9%、Zrが2〜5%の範囲とする。Zr添加による密度増加を考慮して、V,Mo,Zrの上限を低く、また、Zr添加による強度増加に呼応して延性が低下する傾向になることから、Al量の上限を低くしている。
上記組成のβ型チタン合金は、O,Nによって時効熱処理前の強度を高めることができる。一方で、O,Nの量が高すぎると優れた冷間加工性を維持できなくなる場合がある。O,Nの強度への寄与は、〔1〕式の酸素等量Q(=[O]+2.77×[N])で評価することができる。このQは、酸素濃度1質量%当たりのβ型チタン合金の固溶強化能すなわち引張強度増加への寄与を1としたとき、窒素の固溶強化能への寄与は酸素の2.77倍であることから、窒素濃度に2.77を乗じて酸素濃度に換算して取り扱ったものである。本発明の請求項3では、強度の向上と優れた冷間加工を両立できることから、請求項1と請求項2のいずれかのβ型チタン合金において、酸素等量Qを0.15〜0.30の範囲とする。
また、化学組成以外に加工硬化によっても、時効熱処理前の強度を高めることができることから、本発明の請求項4では、請求項1乃至3のいずれかのβ型チタン合金において、圧延(冷間圧延など)や伸線(冷間伸線など)およびプレスや鍛造などの加工によって加工硬化させたままの状態であることを特徴とする。その形状は、板や棒線、およびこれらを成形した種々成形品である。
なお、本発明のチタン合金は通常の純チタンまたはチタン合金と同様に、H,C,Ni,Cr,Mn,Si,S等を不可避的に含有するが、その含有量は一般的には各々0.05質量%未満である。但し、本発明の効果を損なわない限り、その含有量は0.05質量%未満の限りではない。Hはβ安定化元素であり、時効熱処理時のα相の析出を遅延させる傾向にあることから、H濃度は0.02質量%以下が好ましい。
上記で説明した本発明のβ型チタン合金は、その組成から、Feの金属単体の他に、比較的廉価な原料として、フェロモリブデン、フェロバナジウム、低級スポンジチタン、純チタンや種々チタン合金のスクラップ等を使用することができる。
本発明の請求項1について、以下の実施例を用いて更に詳細に説明する。
真空溶解したインゴットを、1100〜1150℃で加熱し熱間鍛造して中間材を作製した後、900℃で加熱して直径約15mmの棒に熱間鍛造した。その後、850℃で溶体化焼鈍し、空冷した。
この溶体化焼鈍材を、冷間加工性を評価するため、脱スケール(ショットブラスト後に硝フッ酸浸漬)した後、潤滑処理を施してダイスによる冷間伸線を断面減少率で50%まで実施した。冷間伸線の各パス間で表面の割れや破断がないかを肉眼で観察した。断面減少率が50%に達するまでに破断や割れが発生したものを「×」、発生しなかったものを「○」と評価した。また、上述した偏析判定法にて成分偏析の影響を評価した。その方法は、溶体化焼鈍材にさらに500℃24時間の時効熱処理を施した後、L断面を研磨しチタン用エッチング液でエッチングし、その金属組織を目視観察し、図1、図2の例にならって、その様相が図1のような場合には「×」、図2のような場合には「○」と判定した。また、500℃24時間の時効熱処理を施した材料は、その時効材質を評価するため、平行部が直径6.25mmで長さ32mmの引張試験片に加工して室温で引張試験を実施した。
表1に、その成分、冷間伸線の可否、偏析判定法の評価結果、時効熱処理後の引張特性などを示す。なお、酸素等量Qは約0.175で、H濃度はいずれも0.02質量%以下であった。
成分が、本発明の請求項1(Al,Fe,V,Mo)の範囲にある表1のNo.1〜19は、断面減少率50%の冷間伸線でも割れなどの欠陥はなく、偏析判定法の結果も均一なマクロ組織を呈しており「○」の判定である。
これに対して、Al濃度が下限から外れているNo.21は、500℃で24時間の時効熱処理を施しても、マクロ組織が明灰色で断面硬さの増加も小さく、引張強度も低く、従来のβ型チタン合金に比べてα相の析出が遅い。Al量が上限から外れているNo.22は、冷間伸線の途中で割れが発生し、優れた冷間加工性を有するとは言えない。なお、No.22は、冷間伸線時に割れが発生したため、時効熱処理後の評価を実施していない。
Fe濃度が下限から外れているNo.20は、時効熱処理後の引張特性において、強度が1400MPa未満であり伸びも7%と小さい。一方、Fe濃度が上限を超えているNo.25、VやMoの量が下限から外れているNo.23、No.24は、成分偏析の影響が顕著であり、偏析判定法の評価結果が「×」である。なお、偏析判定法の結果が「×」であった試料は、材質のばらつきが大きいことから、時効熱処理後の引張試験を実施していない。
表1の試料において、No.5,6,9,11,13,16,18は、請求項1の好ましい範囲である、質量%で、Alが2〜4%、Feが2.8〜4.2%、Vが8.6〜10%、Moが8.6〜10%の範囲内にあり、時効熱処理が24時間に満たない10時間の時点で既に偏析判定法の評価が「○」の状態であり、成分偏析の影響がより小さかった。
本発明の請求項2について、以下の実施例を用いて更に詳細に説明する。
表2に、Zrを加えた請求項2の実施例を示す。なお、製造方法、評価方法などは上述した[実施例1]と同一である。表2のいずれの試料も、酸素等量Qは0.175程度で、H濃度は0.02質量%以下であった。
表2より、Zrが請求項2の範囲内にあるNo.2−1〜2−14は、いずれも断面減少率50%の冷間伸線でも割れなどの欠陥はなく、偏析判定法の結果も均一なマクロ組織を呈しており「○」の判定であり、時効熱処理後の引張特性も良好である。Zrが2〜6質量%の範囲において優れた冷間加工性を有し偏析が抑制されている。Zrを添加していない表1の発明例と比較して、表2の発明例は時効熱処理の引張強度が高く、全伸びの低下がほとんどない。
一方、Zrが0.9質量%と低いNo.2−15は、Zrを添加していない表1のNo.1と時効熱処理後の引張強度から、ほとんど増加していない。Zrが6質量%を超えて7.3質量%と多いNo.2−16は、時効熱処理後の全伸びが10%未満と低い。
VやMoの量が下限から外れているNo.2−17,2−18は、成分偏析の影響が顕著であり、偏析判定法の評価結果が「×」である。なお、偏析判定法の結果が「×」であった試料は、材質のばらつきが大きいことから、時効熱処理後の引張試験を実施していない。
本発明の請求項3について、以下の実施例を用いて更に詳細に説明する。
表3に、O,Nの濃度を種々変えた例を示す。なお、製造方法、評価方法などは上述した[実施例1]と同一である。表3のいずれの試料も、H濃度は0.02質量%以下であった。なお、表1、表2の発明例も、酸素等量Qの値は請求項3の範囲内にある。
酸素等量Q以外の成分が同等な試料同士を比較すると、酸素等量Qが大きいほど溶体化焼鈍材の引張強度が高い値を示している。Qが約0.114〜0.121と0.15よりも小さい表3のNo.3−1,3−6,3−9,3−14,3−18に比べて、Qが0.15以上の試料は明らかに溶体化焼鈍材の引張強度が高い。一方、Qが0.3を超えている表3のNo.3−5,3−13,3−17,3−22は、冷間伸線の断面減少率(伸線率)が50%までは割れなどの欠陥なく冷間伸線が可能であるが、限界の冷間伸線率(割れなどの欠陥なく冷間伸線ができる断面減少率)が69%,65%と小さい。
Qが0.15〜0.3の範囲では、溶体化焼鈍材の引張強度が比較的高く、冷間伸線率が80%を超えても割れなどの欠陥は発生せず限界の冷間伸線率が80%を越えおり、非常に良好な冷間加工性を有している。加えて、偏析判定法の結果も均一なマクロ組織を呈しており「○」の判定で、時効熱処理後の引張特性も全伸びが10%以上あり良好である。また、表3より、時効熱処理後の引張強度も酸素等量Qに呼応して高くなっており、α相の析出量を少なくしても、高い強度が得られることがわかる。その点で、時効熱処理後の強度が同等な場合には、析出α相の量を少なくできることから、低いヤング率が得やすくなる。
なお、Qが約0.114〜0.121と0.15よりも小さい表3のNo.3−1,3−6,3−9,3−14,3−18は、Qが0.15〜0.3の本発明例に比べて、溶体化焼鈍材の引張強度は938〜969MPaと若干低いものの、時効熱処理後の引張特性は強度が1400MPa以上で伸びも良好であり、本発明の請求項1、請求項2の発明例に該当する。
表3に示したように、伸線率50%の冷間伸線ままの引張強度は、時効熱処理前の溶体化焼鈍材に対して30〜40%程度高いことがわかる。このように、冷間加工ままで加工硬化している材料の方が、時効熱処理前の強度が高く、より高強度でより低ヤング率な材質が得やすくなる。これは、本発明の請求項4の発明例に相当する。なお、表1、表2の発明例においても、伸線率50%後の冷間伸線ままの材料は、時効熱処理前の溶体化焼鈍材よりも引張強度が30〜40%高く、加工硬化している。
表1〜3の試料において、本発明の好ましい範囲である、質量%で、「Alが2〜4%、Feが2.8〜4.2%、Vが8.6〜10%、Moが8.6〜10%」のものは、時効熱処理が24時間に満たない10時間の時点で既に偏析判定法の評価が「○」の状態であり、成分偏析の影響がより小さかった。
以上の実施例では、棒形状の材料について詳細に説明してきたが、熱間鍛造の中間材から約10mm厚さの板形状に熱間圧延した材料でも、上述した棒と同様の本発明の効果が得られている。
時効熱処理した棒のL断面のマクロ組織を示す図である。 時効熱処理した棒のL断面のマクロ組織を示す図である。

Claims (4)

  1. 質量%で、Alを2〜5%、Feを2.5〜4.5%、Vを6〜10%、Moを6.5〜10%となる範囲で含有し、残部がTiおよび不可避的不純物からなるβ型チタン合金。
  2. さらに、質量%でZrを2〜6%となる範囲で含有することを特徴とする請求項1記載のβ型チタン合金。
  3. 〔1〕式の酸素等量Qが0.15〜0.30であることを特徴とする請求項1または2に記載のβ型チタン合金。
    酸素等量Q=[O]+2.77[N] ・・・〔1〕式
    ここで、[O]はO含有量(質量%)、[N]はN含有量(質量%)である。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のβ型チタン合金を加工硬化させたままの加工品。
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