JP2006097115A - β型チタン合金の強化方法およびそれによって得られたβ型チタン合金製品 - Google Patents

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Abstract

【課題】冷間加工性に優れたβ型チタン合金を強化し、耐磨耗性と強靭性を併せ持った製品を得ることができるβ型チタン合金の強化方法を提供する。
【解決手段】β型チタン合金を浸炭および/または窒化雰囲気下で700℃以上の処理温度領域に所定時間保持して上記β型チタン合金の表層部に硬化層を形成する表面硬化処理を行ったのち、600℃以下の時効温度領域に所定時間保持して母材の時効処理を行うことにより、表層部には浸炭および/または窒化による表面硬化層が形成され、母材部分が均一な時効組織により強化され、優れた耐磨耗性等と強靭さを兼ね備えた金属製品が得られる。
【選択図】なし

Description

本発明は、冷間加工性の高いβ型チタン合金を強化し、耐磨耗性と強靭性を併せ持った製品を得るβ型チタン合金の強化方法およびそれによって得られたβ型チタン合金製品に関するものである。
従来から、β型チタン合金は、軽量で耐食性にも優れ、α型チタン合金やα+β型チタン合金に比べて冷間加工性が優れていることが知られている。このようなβ型チタン合金を強化する方法として、冷間加工後に400〜500℃程度の高温に所定時間保持する時効処理が有効であることが知られている(例えば下記の特許文献1)。一方、チタン合金の耐磨耗性等を向上させるための表面硬化処理として浸炭処理も実施されている(下記の特許文献2)。
特開平8−187106 特開2003−129215
しかしながら、上記特許文献1記載の方法は、冷間加工された部分が特に時効硬化するため、加工率が高い領域ほど強度が高くなる。したがって、表面硬度を高くして耐摩耗性を向上させようとすると、耐磨耗性を向上させる部分だけの加工率を高くするよう、特殊な冷間加工を施さなくてはならず、冷間加工工程に加わる制限が大きくなる。また、部材内の加工率のばらつきによって時効後の強度にばらつきが生じるため、部分的に強化する場合には適するものの、部材全体を均一に強化したい場合には、適用が困難になるという問題がある。加工率のばらつきをなくすには、溶体化処理等で内部歪を開放すればよいが、それだけ余分な工程が増えることとなる。
また、上記特許文献2の方法は、冷間加工で発生する内部歪を開放した状態で時効処理を行わないと、部材の加工率のばらつきによって強度ばらつきが生じ、均一に強化したい場合には、予め溶体化処理を行わねばならず、それだけ余分な工程が必要となる。また、予め時効処理を行ったチタン合金を浸炭処理によって表面硬化するのであるが、このときの浸炭処理温度により時効された母材が過時効となって軟化してしまうため、低温の温度領域で浸炭処理を行わなければならない。このため、比較的低温でも浸炭されるα+β型チタン合金には適用できるものの、低温では浸炭され難いβ型チタン合金には現実問題として適用できないのが実情である。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、冷間加工性に優れたβ型チタン合金を強化し、耐磨耗性と強靭性を併せ持った製品を得ることができるβ型チタン合金の強化方法およびそれによって得られたβ型チタン合金製品の提供をその目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のβ型チタン合金の強化方法は、β型チタン合金を浸炭および/または窒化雰囲気下で700℃以上の処理温度領域に所定時間保持して上記β型チタン合金の表層部に硬化層を形成する表面硬化処理を行ったのち、600℃以下の時効温度領域に所定時間保持して母材の時効処理を行うことを要旨とする。
また、本発明のβ型チタン合金製品は、β型チタン合金を母材とし、表面に浸炭および/または窒化による表面硬化層が形成され、上記表面硬化層より深い母材部分が、β相にα相が析出した時効組織を呈していることを要旨とする。
本発明のβ型チタン合金の強化方法は、まず、β型チタン合金を浸炭および/または窒化雰囲気下で700℃以上の処理温度領域に所定時間保持して上記β型チタン合金の表層部に硬化層を形成する表面硬化処理を行う。これにより、β型チタン合金母材の表層部に、浸炭層,窒化層,浸炭窒化層等の表面硬化層が形成される。このとき、表面部が浸炭されるのと同時に、冷間加工等の事前の成形加工時に発生した内部歪が開放されて結晶が整い、母材が均質化する。その後、600℃以下の時効温度領域に所定時間保持して時効処理を行うことにより、母材部分はβ相中に微細なα相が分散析出した時効組織を呈し強化される。このとき、内部歪が開放されて整ったβ相に対して時効処理を行うため、α相がより微細かつ均一に析出し、均一に強化される。このように、表層部には浸炭および/または窒化による表面硬化層が形成され、母材部分が均一な時効組織により強化され、優れた耐磨耗性等と強靭さを兼ね備えた金属製品が得られるのである。
このように、表面硬化処理によって母材の内部歪を開放してから時効処理を行うため、従来のように溶体化処理工程を行うことなく、加工率のばらつきの影響をほとんど受けずに均一な時効組織が得られて母材を均一に強化できる。また、700℃以上の高温で表面硬化処理を行うため、低温で表面硬化されにくいβ型チタン合金でも有効な表面硬化層を形成でき、その後の時効処理を600℃以下の低温領域で行うことから、有効な表面硬化層を形成しながら過時効による軟化も防止される。したがって、従来のように特殊な冷間加工を施すことなく、表面硬化による部分強化や耐磨耗性と、均一な母材強化による強靭性を併せ持った金属製品を得ることができるのである。
しかも、β相が安定な700℃以上の高温で浸炭および/または窒化による表面硬化処理を行うことから、β相が安定な状態で表層部にチタン炭化物・チタン窒化物・チタン炭窒化物が析出した表面硬化層が形成される。このため、表面硬化層ではβ合金のチタンが炭化物・窒化物・炭窒化物として析出するため、バナジウム等のβ相安定化元素が濃縮されてよりβ相が安定化する。この状態で時効処理を行うことから、表面硬化層では、表面硬化層よりも深い母材部分よりも時効によるα相の析出が抑制され、時効処理後も上記表面硬化層は上記母材部分よりもα相の存在比率が少ない状態となる。このため、上記表面硬化層は、β相を主体とした靭性の高い相中にチタン炭化物・チタン窒化物・チタン炭窒化物等の硬質粒子が析出した状態となり、摩擦等の外力を受けても硬質粒子が脱落し難い耐磨耗性に優れた表面層を形成する。一方、母材部分は、β相中にα相が析出した時効組織となり、優れた機械的強度を獲得できる。このように、機械的強度の高い母材と耐磨耗性に優れた表面層を併せ持った金属製品を得ることができるのである。
本発明のβ型チタン合金の強化方法において、上記時効処理を、上記表面硬化処理と連続して上記表面硬化処理における浸炭および/または窒化雰囲気下で行う場合には、表面硬化処理と時効処理を連続して行うので処理効率が高いだけでなく、上記表面硬化処理における浸炭および/または窒化雰囲気下で時効処理温度までの冷却とその後の時効処理を行なうため、冷却中も時効処理中も表面硬化層の形成が進行し、表面硬化層の厚さが増す。しかも、この間にもβ相中へのチタン炭化物・チタン窒化物・チタン炭窒化物等の析出が進んで残部のβ相が安定化し、時効処理によるα相の析出が抑えられる。若干のα相の析出はあっても、殆どが靭性の高いβ相で、その中に硬いチタン炭化物・チタン窒化物・チタン炭窒化物等が析出保持されている組織が実現し、極めて優れた耐摩耗性を発揮する表面硬化層が形成される。
また、本発明のβ型チタン合金製品は、β型チタン合金を母材とし、表面に浸炭および/または窒化による表面硬化層が形成され、上記表面硬化層より深い母材部分が、β相にα相が析出した時効組織を呈している。このため、冷間加工性によいβ型チタン合金により、表層部には浸炭および/または窒化による表面硬化層が形成されて部分強化や耐磨耗性が得られ、母材部分が均一な時効組織により強化され、優れた耐磨耗性等と強靭さを兼ね備えた金属製品となる。
本発明のβ型チタン合金製品において、上記表面硬化層は、上記母材部分よりもα相の存在比率が少ない場合には、上記表面硬化層は、β相を主体とした靭性の高い相中にチタン炭化物・チタン窒化物・チタン炭窒化物等の硬質粒子が析出した状態となり、摩擦等の外力を受けても硬質粒子が脱落し難い耐磨耗性に優れた表面層を形成する。一方、母材部分は、β相中にα相が析出した時効組織となり、優れた機械的強度を獲得できる。このように、機械的強度の高い母材と耐磨耗性に優れた表面層を併せ持った金属製品を得ることができるのである。
本発明のβ型チタン合金製品において、母材部分が過時効組織を含まない場合には、母材部分が過時効組織によって軟化しないため、十分な強靭さを確保できる。
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明のβ型チタン合金の強化方法は、β型チタン合金を浸炭および/または窒化雰囲気下で700℃以上の処理温度領域に所定時間保持して上記β型チタン合金の表層部に硬化層を形成する表面硬化処理を行ったのち、700℃未満の時効温度領域に所定時間保持して母材の時効処理を行う。
より詳しく説明すると、上記β型チタン合金は、常温で母材が体心立方晶のβ相を呈するものであれば、特に限定するものではなく、各種のものを適用することができる。例えば、Ti−13V−11Cr−3Al合金、Ti−8Mo−8V−2Fe−3Al合金、Ti−3Al−8V−6Cr−4Mo−4Zr合金、Ti−11.5Mo−6Zr−4.5Sn合金、Ti−11V−11Zr−2Al−2Sn合金、Ti−15Mo−5Zr合金、Ti−15Mo−5Zr−3Al合金、Ti−15V−3Cr−3Al−3Sn合金、Ti−20V−4Al−1Sn合金、Ti−22V−4Al合金等をあげることができる。
上記β型チタン合金は、予め冷間加工・熱間加工等の塑性加工や切削加工等により、所定の製品形状(ネットシェイプを含む)に成形される。なお、本発明が対象とするβ型チタン合金は、溶製材だけでなく、HIP焼結等の粉末冶金法によって得られた材料も含む趣旨である。
上記所定の製品形状に成形されたβ型チタン合金は、炉内に装入する前に、有機溶剤や超音波を利用した洗浄処理が実施される。そして、洗浄処理後のβ型チタン合金を、炉内に装入し、表面硬化処理を行う。ここで、上記表面硬化処理に用いる処理炉は、いわゆる雰囲気炉であるガス浸炭炉、プラズマ浸炭炉、真空炉等、雰囲気制御および温度制御ができる加熱炉であれば各種のものを用いることができる。
ついで、炉内に装入したβ型チタン合金を、表面硬化処理に先立って、表面の酸化被膜を除去するクリーニング処理を実施する。このクリーニング処理は、例えば、雰囲気炉や真空炉の場合、350℃〜700℃程度の温度領域で、炉内にフッ化窒素(NF)等のフッ素系ガスを含む窒素ガスを導入し、表面の酸化被膜をフッ化膜に置換することにより行うことができる。また、プラズマ浸炭炉の場合、上記温度領域でグロー放電によりプラズマ化した水素ガスを混合した不活性ガスからなるクリーニングガスを導入して表面の酸化被膜を跳ね飛ばすことにより行うこともできる。
つぎに、炉内を700℃以上の処理温度に加熱したのち、浸炭ガスや窒化ガス等の所定の雰囲気ガスを導入することにより、所定の製品形状に成形されたβ型チタン合金に対して、浸炭および/または窒化雰囲気下で700℃以上の処理温度領域に所定時間保持して上記β型チタン合金の表層部に硬化層を形成する表面硬化処理を行う。
上記表面硬化処理の際の雰囲気ガスは、プロパンガス等の炭化水素ガスに代表される浸炭性ガス、アンモニアまたはそれと窒素ガスとの混合ガスに代表される窒化性ガス、上記浸炭性ガスと窒化性ガスを混合した炭窒化性ガス等をあげることができる。
上記雰囲気ガスとして浸炭性ガスを用いれば、β型チタン合金母材の表面に炭素原子が固溶したりチタン炭化物を生成したりして浸炭層としての表面硬化層が形成される。上記雰囲気ガスとして窒化性ガスを用いれば、β型チタン合金母材の表面に窒素原子が固溶したりチタン窒化物を生成したりして窒化層としての表面硬化層が形成される。上記雰囲気ガスとして炭窒化性ガスを用いれば、β型チタン合金母材の表面に炭素原子および窒素原子が固溶したりチタン炭化物やチタン窒化物を生成したりして浸炭窒化層としての表面硬化層が形成される。
上記表面硬化処理の際の処理温度は、700℃以上1000℃以下の温度範囲が好適に用いられ、800℃以上1000℃以下の温度範囲がより好適である。700℃未満では、体心立方のβ型チタン合金に対して十分に炭素原子や窒素原子が侵入固溶せずに十分な表面硬化層が得られないうえ、事前の冷間加工等によって母材内に発生した内部歪の開放が不十分で、後の時効処理に悪影響を及ぼすからである。また、1000℃を超えると、エネルギー効率に無駄が生じるとともに、結晶粒度が急速に粗大化して疲労強度などの強度が低下するという不都合が生じるからである。
上記表面硬化処理の処理時間としては、処理温度や目標とする表面硬度等との兼ね合いで適宜の処理時間を設定することができるが、おおむね、1時間〜24時間程度に設定され、より好ましくは3時間〜12時間程度に設定される。
このような表面硬化処理により、β型チタン合金母材の表層部に、浸炭層,窒化層,浸炭窒化層等の表面硬化層が形成される。このとき、表面部が浸炭されるのと同時に、冷間加工等の事前の成形加工時に発生した内部歪が開放されて結晶が整い、母材が均質化する。
つぎに、上記表面硬化処理に引き続いて、600℃以下の時効温度領域に所定時間保持して時効処理を行う。
上記時効処理は、600℃以下の時効温度領域で行われる。好ましいのは、350℃以上600℃以下の温度範囲であり、より好ましいのは400℃以上550℃以下である。600℃を超えると、過時効となりかえって母材が軟化することがあるからであり、350℃未満では母材を十分に時効強化できないからである。
上記時効処理の時間は、処理温度や目標とする強度等との兼ね合いで適宜の処理時間を設定することができるが、おおむね、2時間〜24時間程度に設定される。
このように、700℃以上での表面硬化処理の後に600℃以下での時効処理を行うことにより、母材部分はβ相中に微細なα相が分散析出した時効組織を呈し強化される。このとき、内部歪が開放されて整ったβ相に対して時効処理を行うため、α相がより微細かつ均一に析出し、均一に強化される。そして、表層部には浸炭および/または窒化による表面硬化層が形成され、母材部分が均一な時効組織により強化され、優れた耐磨耗性等と強靭さを兼ね備えた金属製品が得られるのである。
上記時効処理は、上記表面硬化処理と同じ炉内で、表面硬化処理と連続して上記表面硬化処理における浸炭および/または窒化雰囲気下で行うのが好ましい。このようにすることにより、表面硬化処理と時効処理を同じ炉内で連続して行うので処理効率が高いだけでなく、上記表面硬化処理における浸炭および/または窒化雰囲気下で時効処理を行うため、時効処理温度までの冷却時や時効処理中にも表面硬化層の形成が進行し、表面硬化層の硬度がさらに増す。
以上のように、本発明によれば、表面硬化処理によって母材の内部歪を開放してから時効処理を行うため、従来のように溶体化処理工程を行うことなく、加工率のばらつきの影響をほとんど受けずに均一な時効組織が得られて母材を均一に強化できる。また、700℃以上の高温で表面硬化処理を行うため、低温で表面硬化されにくいβ型チタン合金でも有効な表面硬化層を形成でき、その後の時効処理を700℃未満の低温領域で行うことから、有効な表面硬化層を形成しながら過時効による軟化も防止され、母材部分が過時効組織を含まないため、十分な強靭さを確保できる。したがって、従来のように特殊な冷間加工を施すことなく、表面硬化による部分強化や耐磨耗性と、均一な母材強化による強靭性を併せ持った金属製品を得ることができるのである。
しかも、β相が安定な700℃以上の高温で浸炭および/または窒化による表面硬化処理を行うことから、β相が安定な状態で表層部にチタン炭化物・チタン窒化物・チタン炭窒化物が析出した表面硬化層が形成される。このため、表面硬化層ではβ合金のチタンが炭化物・窒化物・炭窒化物として析出するため、バナジウム等のβ相安定化元素が濃縮されてよりβ相が安定化する。この状態で時効処理を行うことから、表面硬化層では、表面硬化層よりも深い母材部分よりも時効によるα相の析出が抑制され、時効処理後も上記表面硬化層は上記母材部分よりもα相の存在比率が少ない状態となる。このため、上記表面硬化層は、β相を主体とした靭性の高い相中にチタン炭化物・チタン窒化物・チタン炭窒化物等の硬質粒子が析出した状態となり、摩擦等の外力を受けても硬質粒子が脱落し難い耐磨耗性に優れた表面層を形成する。一方、母材部分は、β相中にα相が析出した時効組織となり、優れた機械的強度を獲得できる。
そして、上記のようにして得られた本発明のβ型チタン合金製品は、β型チタン合金を母材とし、表面に浸炭および/または窒化による表面硬化層が形成され、上記表面硬化層より深い母材部分が、β相にα相が析出した時効組織を呈している。このため、冷間加工性によいβ型チタン合金により、表層部には浸炭および/または窒化による表面硬化層が形成されて部分強化や耐磨耗性が得られ、母材部分が均一な時効組織により強化され、優れた耐磨耗性等と強靭さを兼ね備えた金属製品となる。また、本発明のβ型チタン合金製品は、母材部分が過時効組織を含まないため、母材部分が過時効組織によって軟化せず、十分な強靭さを確保できる。
しかも、表面に非常に硬度の高いが、薄い化合物層即ち、チタン炭化物、チタン窒化物・チタン炭窒化物層が存在し、その内部に続く浸炭/窒化層等の表面硬化層は若干のα相の析出はあっても、殆どが靭性の高いβ相で、その中に硬いチタン炭化物・チタン窒化物・チタン炭窒化物等が析出保持されている組織が実現する。この表面硬化層の硬度は著しく高くはないが、耐摩耗性はきわめて優れている。更に浸炭/窒化の及ばない母材である芯部は、適当な時効処理により硬化し、靭性を保ちつつも適度の強度を保持する時効β合金である。このように、機械的強度の高い母材と耐磨耗性に優れた表面層を併せ持った金属製品を得ることができるのである。
つぎのような条件で本発明を実施した。
焼鈍・炭窒化条件:N−CH(4:1)混合ガス雰囲気中、900℃×3h、加熱後時効温度まで炉冷。同炉内、同ガス雰囲気中で550℃×10h時効処理を実施。
得られた硬化β合金の構造は表面に表面硬度Hv1100の炭窒化物層5μmに続き、硬度Hv500〜350(HRc50〜35.5)の炭窒化層20μmがあり、芯部は硬度Hv350(HRc35.5)の時効β相になっている。芯部の引っ張り強さは1100N/mmで、構造材料として十分な強度と靭性を有している。
つぎに、得られた製品の耐磨耗性を評価した。
試験条件 Pin on Disk(炭素鋼) 無潤滑 荷重10kgf/cm
摩擦距離 4000m
ピン・オン・ディスク磨耗試験機において、本発明の実施例のものと比較例のものをピン材料として用い、磨耗試験を行った。
実施例としてTi−20V−4Al−1Snに上記条件で本発明の硬化処理を行ったものを準備した。比較例1としてTi−20V−4Al−1Snに時効処理のみを行ったものを準備し、比較例2としてステライト材のものを準備した。それらの磨耗試験の結果は下記に示すとおり、本発明の実施例は、優れた耐磨耗性を発揮した。
Pin材料 硬度(HV) 磨耗量(mg)
実施例(本発明) 1100−350 4
比較例1(β合金時効) 420 153
比較例2(ステライト) 450 5
本発明は、例えば、スパイク用金具、ネジやボルト・ナット等のファスナー部材、摺動材、耐磨耗性部材、腕時計用の外装部材、めがねフレーム、医療用・歯科用部材等、各種の用途に適用することができる。

Claims (4)

  1. β型チタン合金を浸炭および/または窒化雰囲気下で700℃以上の処理温度領域に所定時間保持して上記β型チタン合金の表層部に硬化層を形成する表面硬化処理を行ったのち、600℃以下の時効温度領域に所定時間保持して母材の時効処理を行うことを特徴とするβ型チタン合金の強化方法。
  2. 上記時効処理を、上記表面硬化処理と連続して上記表面硬化処理における浸炭および/または窒化雰囲気下で行う請求項1記載のβ型チタン合金の強化方法。
  3. β型チタン合金を母材とし、表面に浸炭および/または窒化による表面硬化層が形成され、上記表面硬化層より深い母材部分が、β相にα相が析出した時効組織を呈していることを特徴とするβ型チタン合金製品。
  4. 上記表面硬化層は、上記母材部分よりもα相の存在比率が少ない請求項3記載のβ型チタン合金製品。
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