第1の発明は、直流電源と、前記直流電源の直流電力を供給する正と負の直流電源母線と、前記直流電源の直流電力を交流電力に変換する複数のインバータ回路と、前記複数のインバータ回路によりそれぞれ駆動される複数のモータと、前記複数のインバータ回路のそれぞれの負電圧側端子に接続され前記モータ電流を検出する複数の電流検出手段と、前記電流検出手段の出力信号により前記複数のインバータ回路を制御して前記複数のモータを同時に駆動する制御手段とを備え、前記インバータ回路を前記正と負の直流電源母線間に並列関係に配置し、前記制御手段は前記正と負の直流電源母線の外側に配置するようにしたモータ駆動装置としたものであり、電流検出手段と制御手段の配線インピーダンスを減らして電流検出精度を向上させ、さらに、インバータ回路と制御手段の配線を短くすることによりインバータ回路ゲート信号へのスイッチングノイズの重畳を減らして誤動作を防ぐことができるので、複数のモータを同時にベクトル制御、あるいはセンサレスベクトル制御する制御基板を小型化できる。
第2の発明は、第1の発明におけるモータ駆動装置は、複数のインバータ回路を同時に制御する制御手段は少なくとも1ヶあるいは2ヶのプロセッサよりなり、電流検出手段は複数のインバータ回路の下アームエミッタ端子にそれぞれ接続されたシャント抵抗を備え、前記複数のインバータ回路のキャリヤ信号を同期させ、前記複数のインバータ回路のそれぞれのキャリヤ信号に同期して電流検出するようにしたものであり、電流検出時における複数のインバータ回路同時運転におけるスイッチングノイズによるノイズ相互干渉を無くすことができる。
第3の発明は、第1の発明におけるモータ駆動装置は、複数のインバータ回路を同時に制御する制御手段は少なくとも1ヶあるいは2ヶのプロセッサよりなり、前記複数のインバータ回路と前記プロセッサ間に負の直流電源母線を配置し、前記プロセッサは前記複数のインバータ回路への制御信号配線距離が最も短くなるように配置するようにしたものであり、複数のインバータ回路とプロセッサ間の配線距離を短くすると同時にインバータ回路とプロセッサのグランド電位を共通化でき、複数のインバータ回路同時運転におけるプロセッサからのインバータゲート信号のスイッチングノイズ重畳による誤動作、あるいはプロセッサに内蔵された電流検出時のA/D変換手段の誤動作を無くすことができる。
第4の発明は、第1の発明におけるモータ駆動装置は、インバータ回路は、複数のスイッチングトランジスタ、ダイオード、及び制御ICより構成されたパワーモジュールよりなり、前記パワーモジュールと電流検出手段よりなるインバータ回路ブロックを並列関係に配置し、前記複数のインバータ回路を同時に制御する制御手段を構成するプロセッサと前記複数のインバータ回路間に負の直流電源母線を配置し、前記パワーモジュールを構成する制御ICの負側電源端子と前記制御手段を構成するプロセッサのグランド端子を前記負の直流電源母線に共通接続するようにしたものであり、複数のパワーモジュールとプロセッサ間の配線距離を短くすると同時にパワーモジュールとプロセッサのグランド電位を共通化でき、複数のパワーモジュール同時運転における制御ICの誤動作、あるいはプロセッサに内蔵された電流検出時のA/D変換手段の誤動作を無くし、モジュール化により実装密度を高め制御基板を小型化することができる。
第5の発明は、直流電源と、前記直流電源の直流電力を供給する正と負の直流電源母線と、前記直流電源の直流電力を交流電力に変換する複数のインバータ回路と、前記複数のインバータ回路により駆動される複数のモータと、前記複数のインバータ回路のそれぞれの負電圧側端子に接続され前記モータ電流を検出する複数の電流検出手段と、前記電流検出手段の出力信号により前記複数のインバータ回路を制御して前記複数のモータを駆動する制御手段よりなり、第1のインバータ回路はヒートポンプの圧縮機モータを駆動し、第2のインバータ回路は回転ドラム駆動モータを駆動し、第3のインバータ回路は送風ファンモータを駆動し、前記インバータ回路を前記正と負の直流電源母線間に並列関係に配置し、前記制御手段は前記正と負の直流電源母線間の外側に配置するようにした洗濯乾燥機のモータ駆動装置としたものであり、電流検出手段と制御手段の配線インピーダンスを減らして電流検出精度を向上させ、さらに、インバータ回路と制御手段の配線を短くすることによりインバータ回路ゲート信号へのスイッチングノイズの重畳を減らして誤動作を防ぐことができるので、ヒートポンプ乾燥運転行程の如き同時に、回転ドラムモータをベクトル制御し、圧縮機モータをセンサレスベクトル制御し、送風ファンモータをセンサレス正弦波駆動することができるので、乾燥運転行程の静音化が可能となり、さらに、制御基板を小型化でき低価格のヒートポンプ式洗濯乾燥機を実現できる。
第6の発明は、第5の発明における洗濯乾燥機のモータ駆動装置は、ヒートポンプの圧縮機モータを駆動する第1のインバータ回路と、回転ドラム駆動モータを駆動する第2のインバータ回路と、送風ファンモータを駆動する第3のインバータ回路と、前記複数のインバータ回路のそれぞれの負電圧側端子に接続されモータ電流を検出する複数の電流検出手段を備え、直流電源に最も近接して圧縮機モータを駆動する第1のインバータ回路を配置するようにしたものであり、乾燥行程の如き複数のインバータ回路同時運転におけるインバータ回路電流の大きい順に直流電源に近接して配置することにより大電流配線パターン距離を短くでき、共通インピーダンスによるインバータ回路相互干渉を減らし、基板面積を小型化できる。
第7の発明は、第5の発明における洗濯乾燥機のモータ駆動装置は、ヒートポンプの圧縮機モータを駆動する第1のインバータ回路と、回転ドラム駆動モータを駆動する第2のインバータ回路と、送風ファンモータを駆動する第3のインバータ回路と、前記複数のインバータ回路のそれぞれの負電圧側端子に接続されモータ電流を検出する複数の電流検出手段を備え、直流電源に最も近接して、洗濯兼脱水モータを駆動する第2のインバータ回路を配置するようにしたものであり温風脱水行程の如き複数のインバータ回路同時運転におけるインバータ回路ピーク電流の大きい順に直流電源に近接して配置することにより大電流配線パターン距離を短くでき、共通インピーダンスによるインバータ回路相互干渉を減らし、基板面積を小型化できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるモータ駆動装置のブロック図を示すもので、複数のインバータ回路とその制御手段の構成を示している。
図1において、交流電源1より全波整流回路20と電解コンデンサ21より構成される整流回路に交流電力を加えて直流電力に変換する直流電源2を構成し、直流電源2の正と負の直流電源母線2A、2Bより直流電力を供給し、第1のインバータ回路3A、第2のインバータ回路3B、および第3のインバータ回路3Cにより直流電力を3相交流電力に変換して、第1のモータ4A、第2のモータ4Bおよび第3のモータ4Cを駆動する。それぞれのインバータ回路の下アームスイッチングトランジスタのエミッタ端子Nu、Nv、Nwに接続されモータ電流を検出する第1の電流検出手段5A、第2の電流検出手段5B、および第3の電流検出手段5Cと、制御手段6により、第1のモータ4A、第2のモータ4Bおよび第3のモータ4Cのそれぞれのモータ電流を検出してベクトル制御、センサレスベクトル制御、あるいはセンサレス正弦波駆動する。
制御手段6は、マイクロコンピュータ等よりなる第1のプロセッサ60Aと第2のプロセッサ60B、クロック手段61、信号回路電源あるいはプロセッサ直流電源電圧を供給するスイッチング電源62より構成され、電流検出手段5A、5B、5Cにより検出したモータ電流信号によりインバータ回路3A、3B、3Cを駆動して複数のモータを同時にベクトル制御あるいはセンサレス正弦波駆動する。
第1のプロセッサ60Aは、インバータ回路3AをPWM制御するPWM制御手段(図示せず)および高速A/D変換手段(図示せず)を内蔵するマイクロコンピュータ、あるいは、ディジタルシグナルプロセッサ(略してDSPと称す)等の高速プロセッサにより構成され、ゲート信号GAによりインバータ回路3Aを制御して第1のモータ4Aを制御し、第2のプロセッサ60Bは、インバータ回路3B、3Cを同期してPWM制御するPWM制御手段(図示せず)および高速A/D変換手段(図示せず)を複数ヶ内蔵するマイクロコンピュータ、あるいは、ディジタルシグナルプロセッサ(略してDSPと称す)等の高速プロセッサにより構成され、ゲート信号GB、GCによりインバータ回路3B、3Cを同時に駆動し、第2のモータ4Bと第3のモータ4Cをそれぞれ異なる回転速度で同時に制御する。ここで、電流検知手段5A、5B、5Cからプロセッサ60A、60Bに内蔵されるA/D変換手段への電流信号は図示していない。なお、図1に示す実施例は2プロセッサ3インバータ駆動方式を示しているが、少なくとも1つのプロセッサに複数のPWM制御回路と複数のA/D変換手段を内蔵し、プロセッサ内部で複数のキャリヤ信号の同期をとることにより1プロセッサ3インバータ駆動方式を実現することにより同様の制御が可能である。
後ほど詳細説明するように、電流検出時のスイッチングノイズ相互干渉を除けるために、インバータ回路3A、3B、3Cのキャリヤ周波数は整数倍とし、かつ、キャリヤ信号の同期をとる必要があり、クロック手段61を共通にしてクロック信号ckを第1のプロセッサ60Aと第2のプロセッサ60Bに同時に与え、かつ、第1のプロセッサ60Aと第2のプロセッサ60Bは同期信号sycによりキャリヤ信号の同期をとっている。
電流検出手段5A、5B、5Cは3シャント式電流検知方式で、3ヶ又は2ヶのシャント抵抗と電流信号増幅手段より構成し、電流検出手段5A、5B、5Cの基本構成は同じであり、モータ電流に応じてシャント抵抗値が異なるので、以下代表例について説明する。
フルブリッジ3相インバータ回路下アームトランジスタのそれぞれのエミッタ端子(Nu、Nv、Nw)にシャント抵抗の一方の端子を接続し、シャント抵抗の他方の端子は直流電源母線の負側電源線Lnに接続するもので、それぞれ3ヶのシャント抵抗より構成されるため3シャント方式と呼ばれる。3シャント式電流検知方式は、下アームトランジスタが全て導通状態のタイミングにおいて電流検出するので、インバータ回路スイッチングトランジスタのスイッチングノイズの影響を受けず、1シャント方式と比較し抵抗1ヶの損失が減少するので、抵抗損失を等しくすると抵抗値を大きくでき検知精度が向上する特長がある。さらに、A/D変換制御プログラムが簡単で、キャリヤ周波数が高い場合でも電流検出できる。特に、複数のインバータ回路を同時に駆動する本実施の形態の場合、電流検出時にスイッチングノイズ相互干渉が発生する課題があり、同時動作する全てのインバータ回路の電流検知手段を3シャント方式にし、かつ、全てのインバータ回路のキャリヤ周期を同じ、あるいは整数倍にして同期をとり、全てのトランジスタがオンあるいはオフの状態で電流検出することによりスイッチングノイズ相互干渉をなくすことができる。
インバータ回路3A、3B、3Cは図2で詳述するように制御ICとパワースイッチング素子が内蔵されたパワーモジュールで構成され、その制御電源端子VBには通常15V程度の直流電圧を印加する必要があり、制御電源端子VBと負側電源端子N間にノイズ対策用のインバータ回路デカップリングコンデンサ300を近接して接続する。また、プロセッサの電源端子VccとグランドGND端子間にノイズ対策用のプロセッサデカップリングコンデンサ600a、600bを近接して接続することによりスイッチングノイズによる誤動作を防ぐことができる。インバータ回路3A、3B、3Cは直流電源2の正と負の直流電源母線2A、2B間に配置され、制御手段6は正と負の直流電源母線2A、2B間の外側に配置され、複数のインバータ回路3A、3B、3Cとプロセッサ60A、60Bの間に負側直流電源母線2Bが配置され、プロセッサ60A、60Bのグランド端子GNDとインバータ回路の制御ICの負側電源端子Nは負側直流電源母線2Bに接続してグランド共通となる。上記配置により複数のインバータ回路とプロセッサ間の負側直流電源母線2Bが実質的な制御回路のグランドとなり、インバータ回路制御ICのデカップリングコンデンサ300a、300b、300cの負電圧側端子、プロセッサデカップリングコンデンサ600a、600bの負電圧端子は負側直流電源母線2Bに近接して配置し易くなり、ノイズ誤動作対策に効果のある配置が実現できる。
なお、図1において2プロセッサ3インバータ駆動方式の実施例を示したが、1つのプロセッサにより3インバータ回路を同時に駆動する方式も同様であり、部品点数を低減できるので低価格のモータ駆動装置を実現できる特長がある。
図2は、本発明の第1の実施の形態におけるインバータ回路の詳細回路図であり、6個のトランジスタとダイオード、および制御用ICよりなるパワーモジュールよりインバータ回路を構成している。ここで、3相アームの1つのU相アーム30Aについて説明すると、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(以下、IGBTと略す)よりなる上アームトランジスタ31a1と逆並列ダイオード32a1の並列接続体と、IGBTよりなる下アームトランジスタ31a2と逆並列ダイオード32a2の並列接続体を直列関係に接続し、上アームトランジスタ31a1のコレクタ端子はインバータ回路の正側直流電源母線端子Pに接続し、上アームトランジスタ31a1のエミッタ端子はモータ4への出力端子Uに接続し、下アームトランジスタ31a2のエミッタ端子Nuは電流検出手段5を構成するU相シャント抵抗50aを介して負側直流電源母線Lnに接続する。また、制御IC(ゲート駆動回路)のグランド端子Nは負側直流電源母線Lnに接続される。
上アームトランジスタ31a1は上アーム駆動信号Upに応じて上アームゲート駆動回路33a1により駆動され、下アームトランジスタ31a2は下アーム駆動信号Unに応じて下アームゲート駆動回路33a2によりオンオフスイッチング制御される。上アームゲート駆動回路33a1は、微分信号によりセットリセットされるRSフリップフロップ回路を内蔵し、上アーム駆動信号Upの立ち上がりで上アームトランジスタ31a1をオン動作させ、上アーム駆動信号Upの立ち下がりで上アームトランジスタ31a1をオフ動作させる。下アームゲート駆動回路33a2にはRSフリップフロップ回路は不必要であり、内蔵していない。
IGBTのゲート印加電圧は10〜15V必要であり、下アームトランジスタ31a2をオンさせると、15Vの直流電源制御端子VBよりブートストラップ抵抗34a、ブートストラップダイオード35aを介してブートストラップコンデンサ36aが充電されるので、ブートストラップコンデンサ36aの蓄積エネルギーにより上アームトランジスタ31a1をオンオフスイッチングできる。また、下アームの逆並列ダイオード32a2が導通した場合にも同様にブートストラップコンデンサ36aが充電される。
インバータ回路3の遮断信号端子Ofに過電流検知信号を加えることによりインバータ回路3のU相、V相、W相各下アームトランジスタが瞬時にターンオフする。
V相アーム30B、W相アーム30Cも同様の接続であり、各アームの下アームトランジスタのエミッタ端子Nv、Nwは電流検出手段5を構成するV相シャント抵抗50b、W相シャント抵抗50cに接続し、V相シャント抵抗50b、W相シャント抵抗50cの他方の端子は直流電源負電位端子Nに接続している。IGBT、あるいはパワーMOSFETにより下アームトランジスタを構成すると、ゲート電圧を制御することによりスイッチング制御できるので、IGBTの場合はエミッタ端子、パワーMOSFETの場合にはソース端子に接続するシャント抵抗の電圧が1V以下となるように抵抗値を選定すればスイッチング動作にはほとんど影響することなく電圧制御によりオンオフスイッチング制御でき、UVW各相シャント抵抗50a、50b、50cの電圧veu、vev、vewを検出することによりインバータ回路出力電流、すなわちモータ電流を検出できる。
図3は、本発明による電流検出手段5の電流信号増幅手段を単電源増幅回路より構成した詳細回路図であり、UVW各相シャント抵抗50a、50b、50cにより検出した交流の電流信号を非反転増幅器により変換増幅し、プロセッサに内蔵するA/D変換器が検出できるDC電圧レベルVccにレベル変換するものである。
UVW各相電流信号増幅手段51a、51b、51cは同一の回路なので、U相電流信号増幅手段51aについて説明する。U相シャント抵抗50aに発生する電圧veuのピーク値はインバータ回路3のU相出力電流に対応しており、U相シャント抵抗電圧veuは電流信号増幅手段の接地電位に対して正と負に変化する。マイクロコンピュータ等に内蔵のA/D変換器は所定の直流電圧Vccで動作するので、直流電圧Vccのセンター値(1/2・Vcc)を電流零としセンター値に対して変化するように増幅レベルシフトさせる必要がある。言い換えれば、A/D変換器の入力ダイナミックレンジ内で、モータ電流信号が変化するように設定する。
U相シャント抵抗50aと並列関係にコンデンサ500aを接続し、U相シャント抵抗50aより第1の入力抵抗501aと第2の入力抵抗502aを直列関係に接続し、U相電流信号増幅手段51aの直流電源端子55に第2の入力抵抗502aをプルアップ接続する。第1の入力抵抗501a(抵抗値R2)と第2の入力抵抗502a(抵抗値R1)の接続点を演算増幅器503aの非反転入力端子に接続し、演算増幅器503aの出力端子と反転入力端子間に帰還抵抗504a(抵抗値R4)を接続し、反転入力端子と接地電位間に抵抗505a(抵抗値R3)を接続し非反転増幅器を構成する。U相シャント抵抗50aの抵抗値をRoとすると、シャント抵抗50aの電圧veuは抵抗値Roと電流Iuの積(veu=Ro×Iu)となり、第1の入力抵抗501aと第2の入力抵抗502aの分圧比kをk=R2/(R1+R2)、帰還増幅率KをK=R4/R3とすると、電流信号増幅手段51aの出力電圧vauは式1で表される。
ここで、分圧比kと帰還増幅率Kの積、すなわち、k×K=0.5となるようにすれば、A/D変換器の直流電源電圧Vccの1/2を中心にして電流Iuに対応した電圧信号に変換される。
例えば、分圧比k=0.1、帰還増幅率K=5、シャント抵抗値Ro=0.2Ω、直流電源端子に加える電圧Vcc=5Vとすると、電流信号増幅手段51aの出力電圧はvau=0.9×Iu+2.5で表される。すなわち、A/D変換器のDC電圧が5Vの場合、センター値2.5Vが0Aに相当し、ダイナミックレンジは±2.5Vに対してほぼ±2.5Aまでの電流を検出することができる。
抵抗506aとダイオード507a、508aはA/D変換回路の過電圧保護のために接続している。
図3に説明した非反転増幅器を使用した電流信号増幅手段51aは、前述したように、プルアップ接続する直流電源電圧とA/D変換器の直流電源電圧(Vcc)と等しくし、第1の入力抵抗とプルアップ接続する第2の入力抵抗の分圧比kと帰還増幅率Kの積(k×K)をほぼ0.5となるようにすれば、A/D変換回路の直流電源電圧(Vcc)のセンター値にレベル変換できる。
以上述べたように、本発明による電流検出手段は少ない部品点数と単電源の演算増幅器により電流検出が容易、かつ安価に行うことができる。また、演算増幅器によりシャント抵抗の電流信号を増幅するので低抵抗のシャント抵抗でも電流検出可能となり、シャント抵抗の損失を減らすことができ、シャント抵抗を小型化にしてシャント抵抗と電流信号増幅手段を一体化した電流検出モジュールを小型化することができる。また、シャント抵抗と演算増幅器の配線を短くすることができるので、配線による電流検出誤差をほとんど無くすことができる。さらに、電流信号増幅手段がバッファとなって高速スイッチングノイズはA/D変換器に直接入力されないのでA/D変換器が誤動作したりラッチアップする恐れがない。また、図3に示した非反転増幅器によると、単電源で動作するので制御回路直流電源を簡素化することができる。
図4は図1に示したモータ駆動装置の制御手段のキャリヤ信号、PWM制御信号と電流検出A/D変換のタイミングチャートを示す。Caはインバータ回路3Aのキャリヤ信号、Cbはインバータ回路3Bのキャリヤ信号、Ccはインバータ回路3Cのキャリヤ信号を示し、キャリヤ信号Cb、Ccのキャリヤ周波数は全く同じで同期しており、キャリヤ信号Ca、Cbのキャリヤ周波数は1対4の整数比に同期設定している。
Gpa1、Gna1はインバータ回路3AのU相上アームと下アームのPWM制御信号で、A/Daは電流検出手段5Aの電流信号を検出するA/D変換手段のトリガー信号を示しており、キャリヤ信号Caのピークとなる時間t3でA/D変換動作する。Gpb1、Gnb1はインバータ回路3BのU相上アームと下アームのPWM制御信号で、A/Dbは電流検出手段5Bの電流信号を検出するA/D変換手段のトリガー信号を示し、キャリヤ信号Cbのピークとなる時間t1、t3、t5でA/D変換を行う。Gpc1、Gnc1はインバータ回路3CのU相上アームと下アームのPWM制御信号で、A/Dcは電流検出手段10cの電流信号を検出するA/D変換手段のトリガー信号を示し、キャリヤ信号Ccのピークとなる時間t2、t4でA/D変換動作する。インバータ回路3Bと3Cはキャリヤ信号交互にA/D変換され、インバータ回路3AのA/D変換タイミングは、インバータ回路3B、3Cのキャリヤ信号のピーク(t3)のタイミングでA/D変換するので、スイッチングノイズによる相互干渉を除くことができる。
図4のタイミングチャートにおいて、インバータ回路3CのA/D変換タイミングt2、t4とインバータ回路3Aのスイッチングタイミングが重なる場合があるが、インバータ回路3Cのシャント抵抗を大きくすると共通インピーダンスによる電流検出誤差をほとんど除くことができる。言い換えれば、インバータ回路3A、3Bに比較してインバータ回路3Cの出力電流を小さくし、シャント抵抗を大きくすることによりA/D変換タイミングをずらすことができる。インバータ回路3A、3B、3C全ての出力電流が大きい場合には、インバータ回路3A、3BのA/D変換タイミングはt1、t3、t5のいずれかに設定するとスイッチングノイズ相互干渉による電流検出誤差を完全に除くことができる。
図5は、電流検出手段に過電流検知手段を追加した電流検出モジュールのブロック図を示すもので、図3に示した電流検出手段5に過電流検知手段56を追加してシャント抵抗50a、50b、50cに流れる電流を検出することにより、インバータ回路3A、3B、3Cあるいはモータ4A、4B、4Cのそれぞれの過電流の検知を行い、過電流検知信号Foを出力するものである。過電流検知信号Foはプロセッサ60aの外部割り込み入力端子IRQとインバータ回路の出力禁止端子Ofに与えられインバータ回路出力を瞬時に遮断させる。他の構成は図3と同様であり、詳細な説明は省略する。
電流検出手段5aは、シャント抵抗50a、50b、50cと電流信号増幅手段51a、51b、51cおよびその他の端子に追加して、過電流検知手段56と、過電流出力信号端子57および過電流設定端子58を設けてモジュールとしたもので、プロセッサ60aにより過電流設定値に対応した信号Vrefを過電流設定端子58に印加し、過電流設定値以上の電流がシャント抵抗に流れると、過電流検知手段56が過電流を検知して過電流出力信号端子57より過電流信号Foが制御手段60aの異常信号割り込み端子IRQに加えられ、制御手段60aは異常割り込み信号によりインバータ回路3Aの制御信号GA(Up、Un、Vp、Vn、Wp、Wn)をオフする。
また、過電流信号Foは、図2で説明したと同様のインバータ回路3Aの遮断信号端子Ofにも加えられ、瞬時にインバータ回路3Aの出力を停止させるので、インバータ回路3Aの遮断機能と制御手段6の異常割り込み信号による遮断機能よりなる2重の保護機能により過電流から保護される。モータ4の過負荷による過電流、あるいは、脱調による過電流に対しては、制御手段6の異常割り込み信号からの遮断応答速度で問題ないが、インバータ回路3Aの上下アーム短絡の場合には数マイクロ秒以内の遮断応答速度が必要であり、過電流信号Foにより直接インバータ回路3Aを遮断させる。
図6は、過電流検知手段56の詳細な回路図である。過電流検知手段56は、シャント抵抗50a、50b、50cそれぞれの端子電圧を電圧比較器により検出し、3ヶの電圧比較器の出力端子をオア接続し、いずれかの過電流信号が過電流出力信号端子57に出力される。
U相シャント抵抗50aの電流を検知するU相過電流検知手段56aは、電圧比較器560aの反転入力端子に、シャント抵抗50aに接続された抵抗561aとコンデンサ562aよりなる積分回路を介して電圧信号veuを電圧比較器560aの反転入力端子に加え、電圧比較器560aの非反転入力端子に加えられた設定電圧信号Vrefと比較し、電圧信号veuが設定電圧信号Vrefよりも高くなると出力端子電圧はLoに低下する。電圧比較器560aの反転入力端子と回路電源電圧端子Vccに抵抗563aを接続し、正のバイアス電圧を加えることにより、モータに異常電流が流れて電圧比較器560aの反転入力端子に−0.3V以上の負の異常電圧が印加されないようにしている。
電圧比較器560aの出力段は、通常オープンコレクタトランジスタより構成されており、出力抵抗564aはプルアップ接続されて容易に論理OR回路を構成できる。V相過電流検知手段56b、W相過電流検知手段56c(図示せず)も同様の接続であり、出力端子を直接接続してオア回路が構成できる。また、それぞれの非反転入力端子には設定電圧信号Vrefが加えられるので、UVW相各シャント抵抗50a、50b、50cのいずれか電圧が設定電圧信号Vref以上となると過電流出力信号端子57にアクティブLoの過電流信号Foが出力される。
以上述べたように、本発明による電流検出手段は、複数のシャント抵抗、複数の電流信号増幅のための演算増幅器、複数の過電流検知のための電圧比較器、および抵抗、コンデンサ等の回路部品を一体化した電流検出モジュールを構成することにより、シャント抵抗と演算増幅器間の配線、および、シャント抵抗と電圧比較器間の配線が短くなりパターン配線インピーダンスを減らすだけではなく、配線パターンに誘起するノイズも減らすことができるので、ノイズによる誤動作を減らし、正確な電流検出、および過電流検知が可能となる。
以上述べたように、本発明は、直流電力を複数のインバータ回路により交流電力に変換して複数のモータを同時に正弦波駆動するもので、直流電源の直流電力を供給する正と負の直流電源母線間に複数のモータを同時にそれぞれ駆動する複数のインバータ回路を並列関係に配置し、複数のインバータ回路のそれぞれの負電圧側端子側にモータ電流を検出するシャント抵抗を設け、モータ電流を検出して複数のインバータ回路を同時に制御する制御手段を正と負の直流電源母線の外側に配置し、制御手段と複数のインバータ回路の境界近傍にパターン幅の広い負の直流母線を配置するようにしたものである。これにより、複数のインバータ回路と複数のインバータ回路を同時に駆動するプロセッサ間の配線距離を短くすると同時にグランド電位の共通化と共通インピーダンスの低減、さらに、インバータ回路のスイッチングによる誘導ノイズ(di/dtノイズ)の信号線への重畳を低減できるので、過電流検知手段、あるいは、プロセッサに内蔵されたA/D変換手段の誤動作を防ぎ、電流検知信号に重畳されるスイッチングノイズを低減でき、複数のインバータ回路同時駆動時の相互干渉を防ぐことができる。また、プロセッサとインバータ回路間の配線距離を短くできるので、プロセッサからのゲート駆動信号に重畳されるスイッチングノイズを低減できインバータ回路の誤動作、あるいは、ノイズによる破壊を防止できる。
また、モータ過電流、あるいはインバータ回路過電流を検出してインバータ回路を瞬時遮断する過電流検知手段のノイズによる誤動作を減らし、正確な過電流保護動作が可能となる。
(実施の形態2)
図7は、本発明の第2の実施の形態における洗濯乾燥機のモータ駆動装置のブロック図を示すもので、ヒートポンプ式洗濯乾燥機への実施例を示している。
図7において、交流電源1より全波整流回路20と電解コンデンサ21より構成される整流回路に交流電力を加えて直流電力に変換する直流電源2を構成し、直流電源2の正と負の直流電源母線2A、2Bより直流電力を供給し、第1のインバータ回路3A、第2のインバータ回路3B、および第3のインバータ回路3Cにより直流電力を3相交流電力に変換して、ヒートポンプ用圧縮機モータ(第1のモータ)4A、回転ドラム駆動モータ(第2のモータ)4B、および送風ファンモータ(第3のモータ)4Cを同時に駆動する。それぞれのインバータ回路の下アームスイッチングトランジスタのエミッタ端子に接続されモータ電流を検出する第1の電流検出手段5A、第2の電流検出手段5B、および第3の電流検出手段5Cと、制御手段6Aにより、ヒートポンプ用圧縮機モータ(第1のモータ)4A、回転ドラム駆動モータ(第2のモータ)4B、および送風ファンモータ(第3のモータ)4Cのそれぞれのモータ電流を検出してセンサレスベクトル制御、ベクトル制御、あるいはセンサレス正弦波駆動する。
第1のインバータ回路3Aは圧縮機モータ4Aを駆動して圧縮機モータ4Aと一体の冷媒圧縮機(図示せず)より凝縮器7から蒸発器8に冷媒を送り熱交換し、第2のインバータ回路3Bは、回転ドラム駆動モータ4Bを駆動して回転ドラム9を回転駆動し、第3のインバータ回路3Cは送風ファンモータ4Cに直結された送風ファン10を回転駆動し、凝縮器7から回転ドラム9内に温風を送風し回転ドラム9内の衣類を乾燥させる。回転ドラム9からの高温高湿排気空気は蒸発器8により除湿熱交換されて送風ファン10の吸気側に戻される。
制御手段6Aは、回転ドラム駆動モータ4Bのロータ位置検出手段40bからの位置信号と電流検出手段5Bにより検出したモータ電流信号によりインバータ回路3Bを駆動して回転ドラム駆動モータ4Bをベクトル制御し、ヒートポンプ用圧縮機モータ(第1のモータ)4Aおよび送風ファンモータ4Cのそれぞれのモータ電流を電流検出手段5A、5Cにより検出してインバータ回路3A、3Cをそれぞれ制御しセンサレス正弦波駆動することにより低騒音、高効率化運転を行う。
制御手段6Aは、インバータ回路3A、3B、3CをPWM制御するPWM制御手段(図示せず)および高速A/D変換手段(図示せず)を複数個内蔵する少なくとも1ヶ、あるいは2ヶの高速プロセッサにより構成され、インバータ回路3A、3B、3Cを同時に制御して正弦波駆動するもので、圧縮機モータ4A、回転ドラム駆動モータ4B、送風ファンモータ4Cはそれぞれ異なる回転速度で制御する。
第1のインバータ回路3Aは、圧縮機モータ4Aをセンサレスベクトル制御するもので、第1の電流検出手段5Aにより圧縮機モータ4Aのモータ電流を検出してセンサレス正弦波駆動し、制御手段6Aに記憶されるモータパラメータとモータへの印加電圧より演算で求めた電流と、検知電流を比較してロータ位置を推定演算し、制御プログラム内の仮想d−q軸を修正しロータ位相制御する。圧縮機モータ4Aは圧縮機構の構造的な要因により機械的なロータ位置によりトルクが変動するため、できるだけ正確な位置推定演算が必要であり、特にq軸よりも電流位相を進める、いわゆる進角制御(弱め界磁制御)においては位置推定演算の精度が問題となるので電流検出精度の確保とモータパラメータの精度確保、および位置推定アルゴリズムが課題となる。
第2のインバータ回路3Bは、回転ドラム駆動モータ4Bをベクトル制御するものであり、位置検出手段40bによりロータ永久磁石の位置を検出し、第2の電流検出手段5Bにより回転ドラム駆動モータ4Bのモータ電流を検出して、ロータ永久磁石のd軸方向と直角のq軸方向のベクトルに座標変換(d−q変換)して、回転ドラム駆動モータ4Bをベクトル制御する。また、回転ドラム駆動モータ4Bが表面磁石モータの場合、電流検知しないオープンループベクトル制御により正弦波駆動し、電流値を演算により求めて制御することも可能である。回転ドラム駆動モータ4Bをベクトル制御する、あるいは、モータ電流をベクトル演算することによりトルク電流Iqとd軸電流Idが瞬時に求まるので、瞬時トルクを検知でき、回転ドラム7の負荷状態、あるいは、アンバランス状態を判定することが可能となる。さらに、高速脱水運転時には電流検出により進角制御の進め角を正確に制御することができる。
第3のインバータ回路3Cは、送風ファンモータ4Cを無効電流一定制御により位置センサレス正弦波駆動するものであり、送風ファンモータ4Cに正弦波電流を流してモータ印加電圧に対する無効電流を積分制御して安定化制御する。永久磁石同期モータの回転速度は駆動周波数fを一定にすると、電源電圧変動や負荷変動とは無関係に送風ファンモータ4Cの回転速度は一定となるので、無効電流一定制御にすると駆動周波数一定制御が可能となり回転数変動をほとんど零にすることができる。送風ファンモータ4Cを無効電流一定制御の如きオープンループ駆動周波数一定制御にした場合、直流電源電圧変動に関わらず送風ファン10を駆動する送風ファンモータ4Cの回転速度を一定とすることができるので、送風ファン10のファン騒音は変化せず、回転速度変動による耳障りなファン騒音変動を無くすことができる。
電流検出手段5A、5B、5Cは図1で述べたように3シャント式電流検知方式で、3ヶ又は2ヶのシャント抵抗と電流信号増幅手段より構成し、電流検出手段5A、5B、5Cの基本構成は全く同じであり、全てのインバータ回路のキャリヤ周波数を整数倍にしてキャリヤ信号の同期をとることにより、電流検出時のスイッチングノイズ相互干渉を防ぐことができる。電流検出タイミングについては既に説明したので省略する。
圧縮機モータ4A出力は600〜750W、回転数は1000〜6500r/m、最大出力電流は3〜5Armsであり、回転ドラム駆動モータ4B出力は50〜500W、回転数は30〜1600r/m、最大出力電流は5〜8Armsであり、送風ファンモータ4C出力は30〜150W、回転数は4000〜6000r/m、最大出力電流は0.5〜1.5Armsなので、インバータ回路出力は、インバータ回路3A、3B、3Cの順となる。回転ドラム駆動モータ4Bは、洗浄あるいは乾燥運転の低速回転ではモータ出力は50W程度と非常に少なく、脱水高速運転で250〜500Wの最大出力となるが、運転時間は他の行程に比べて短い。しかし、ヒートポンプを駆動する圧縮機モータ4Aの出力は大きく、かつ、運転時間が数時間と非常に長いので温度上昇の問題が発生する。特に、シャント抵抗、配線パターン、パワー半導体の発熱とその放熱が課題となる。さらに、インバータ回路スイッチングノイズが大きいので、放射ノイズを減らすためにはインバータ回路電流が流れるループ面積をできるだけ減らし発生電磁界を減らす必要がある。
図8は、洗濯乾燥機のモータ駆動装置の制御基板上のパワーモジュール、電流検出モジュールおよびプロセッサの実装配置図を示すもので、正と負の直流電源母線2A、2Bの配線パターン、インバータ回路3A、3B、3Cを構成するパワーモジュール3a、3b、3cと、それぞれの電流検出モジュール5a、5b、5c、および制御手段6Aのプロセッサ60a、60bの部品面から見た配置図である。
図の正面左側に直流電源(図示せず)を配置し、正と負の直流電源母線2A、2B間にインバータ回路出力の大きい順、すなわち、圧縮機モータ4Aを駆動する第1のインバータ回路3Aのパワーモジュール3a、回転ドラム駆動モータ4Bを駆動する第2のインバータ回路3Bのパワーモジュール3b、送風ファンモータ4Cを駆動する第3のインバータ回路3Cのパワーモジュール3cの順に配置し、パワーモジュール3aを駆動して圧縮機モータ4Aを制御するプロセッサ60aと、パワーモジュール3b、3Cを駆動して回転ドラム駆動モータ4Bと送風ファンモータ4Cを制御するプロセッサ60bを、正と負の直流電源母線2A、2B間の外に配置し、パワーモジュール3a、3b、3cとプロセッサ60a、60b間に負の直流電源母線2Bが配置され、パワーモジュールの制御ICの負電源端子とプロセッサのグランド端子はグランド共通となるように配線される。
パワーモジュール3a、3b、3cはそれぞれ図2に示した部品(コンデンサを除く)から構成され、形状はDIP(Dual In Line)タイプで、パッケージの両端にそれぞれ端子が配置されている。パッケージ片側に高圧直流電源端子P、U相出力端子U、V相出力端子V、W相出力端子W、下アームトランジスタエミッタ端子Nu、Nv、Nwが設けられ、対するパッケージ片側に各ゲート制御端子Up、Un、Vp、Vn、Wp、Wnと遮断信号端子Of(図示せず)、及び、制御IC電源端子VB(図示せず)が設けられている。パワーモジュール3a、3b、3cに近接してそれぞれの電流検出モジュール5a、5b、5cを配置し、パワーモジュール3aを駆動するプロセッサ60aとパワーモジュール3b、3cを駆動するプロセッサ60bは、負の直流電源母線2Bをはさんでそれぞれが駆動するパワーモジュールに対して配線が最も短くなる位置に配置する。
図8に示すようにパワーモジュール3a、3b、3cを一直線上に並べて配置することにより冷却用放熱フィンへの取り付けが容易となるので、1つの放熱フィンに複数のパワーモジュールを取り付けて実装することが容易となる。
パワーモジュール3a、3b、3cの端子リードを長くしてパワーモジュール3a、3b、3cとプリント基板の間、すなわち、パワーモジュールのちょうど真下に電流検出モジュール5a、5b、5cを配置してもよい。正と負の直流電源母線2A、2Bの配線パターンは、パワーモジュール3a、3b、3cの高圧直流電源端子Pおよびエミッタ端子Nu、Nv、Nwと最も近くなるように配線されるので、電流検出モジュール5a、5b、5cは、パワーモジュール下部か、パワーモジュールの側面に配置すると、それぞれの電流検出モジュールとプロセッサ60a、60b間の配線が最も短くなる。
下アームトランジスタエミッタ端子からシャント抵抗を介して負の直流電源母線2Bに配線をする場合、配線が長くなるとインダクタンスが増加し浮遊インダクタンスによるスイッチング時の逆起電力によってIGBTあるいはMOSFETがラッチアップし破壊する。また、シャント抵抗と増幅回路の配線が長くなると、スイッチングノイズが信号線に乗りやすくなり、さらに共通インピーダンスによって同時動作するインバータ回路電流により検知精度が低下する。
しかし、正と負の直流電源母線2A、2Bの配線パターン間に複数のパワーモジュール3a、3b、3cを配置することにより、複数のパワーモジュール全て、下アームトランジスタエミッタ端子からシャント抵抗を介して負の直流電源母線2Bへの配線が容易となり、複数のパワーモジュールを同時に駆動するプロセッサとの配線距離を最も短くでき、浮遊インダクタンスなどの配線インピーダンスを減らすことができ、共通インピーダンスもほとんどなく、電流検出手段とプロセッサのA/D変換手段への配線も短くなり電流検知精度を高めることができる。
さらに、プロセッサからパワーモジュールへの配線は負の直流電源母線2Bを直角に交差するので、負の直流電源母線2Bにより発生する高周波電磁界の影響を受けにくいため、パワーモジュールへのゲート信号配線と電流検出手段からの電流信号配線へ重畳する誘導ノイズ(di/dtノイズ)がほとんど発生しない特長がある。
図8とは異なり、1つのプロセッサによりヒートポンプの圧縮機モータと送風ファンモータを制御し、他のプロセッサにより回転ドラム駆動モータを制御する場合には、直流電源に最も近接して圧縮機モータ駆動インバータ回路を配置し、送風ファンモータ駆動インバータ回路、回転ドラム駆動インバータ回路の順にしてもよい。空調機の圧縮機モータと送風ファンモータを同時駆動するプロセッサは一般的に使用され価格も安いため、2プロセッサ方式で空調機用プロセッサを流用して価格優先する場合には上述した配置でもよい。
以上述べたように、本発明はヒートポンプ式洗濯乾燥機の正と負の直流電源母線間に、圧縮機モータ駆動インバータ回路と、回転ドラムモータ駆動インバータ回路と、送風ファンモータ駆動インバータ回路、及び、それぞれのインバータ回路に接続した電流検出手段よりなる複数のインバータ回路ブロックを並列関係に配置し、複数のインバータ回路と複数のインバータ回路を同時に駆動するプロセッサの間に負の直流電源母線パターンを配置し、インバータ回路とプロセッサのグランド配線を短くして共通インピーダンスを減らし、インバータ回路とプロセッサ間のゲート信号、及び電流検知信号の配線距離を短くしたものである。そのため、プロセッサへのコモンモードノイズと、インバータ回路とプロセッサ間のノルマルモードノイズを減らすことが可能となり、インバータ回路の誤動作を防ぎ、電流検知信号に重畳するノイズを減らして電流検知精度を高めることができ、1枚の制御基板に複数のインバータ回路を実装でき、安価で高信頼性の制御基板を実現できる。
また、直流電源に近接して圧縮機モータ駆動インバータ回路、回転ドラムモータ駆動インバータ回路、送風ファンモータ駆動インバータ回路の順に配置することにより大電流が流れる直流電源母線の配線距離を短くすることができるので、インバータ回路電流による直流電源母線の配線の電圧電圧降下と配線パターンの発熱を低減でき、さらに、直流電源から距離が離れた送風ファンモータインバータ回路の自由度が大きくなり配線が容易にできるので基板が小型化でき、安価で高信頼性のヒートポンプ式洗濯乾燥機を実現できる。
さらに、パワーモジュールを一直線上に並べることもできるので、冷却用放熱フィンの取り付けが容易となり1つの放熱フィンに複数のパワーモジュールを取り付けることができるため、基板を小型化できる特長がある。
なお、図8にはマイクロコンピュータ等のプロセッサを2ヶ使用した実施例を示したが、1ヶのプロセッサで3インバータ駆動する場合においても、考え方は同じであり、配線が均等に短くなる位置に配置するとよい。また、直流電源から近い順にパワーモジュール3a、3b、3cと配置したが、パワーモジュール3a、3bを逆にしても直流電源母線パターンの発熱を除いてほぼ同様の効果が得られることは明瞭である。特に、温風脱水行程の如きヒートポンプの圧縮機モータと回転ドラム駆動モータを同時駆動する高速脱水運転においては回転ドラム駆動モータに大電流が流れるため共通インピーダンスによる電圧降下を減らすことができる。
また、電流検出手段を3シャント方式で構成した実施例を示したが、電流信号に重畳されるスイッチングノイズが許容度以下ならば、1シャント方式においても発明の効果は同じである。