JP2008101554A - ウォータジャケット中子、シリンダブロック及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シリンダブロックの鋳造時に用いられ、シリンダブロックにおけるシリンダボアの周囲に設けられるウォータジャケットを形成するためのウォータジャケット中子1であって、シリンダブロックが有するシリンダヘッド締結用のボルト穴(ヘッドボルト穴)を形成するための鋳抜きピン7が挿入可能な中空部(孔部13)を有する被挿入部11と、ウォータジャケット中子本体(中子本体2)に対して内在する部分を有するとともに被挿入部11をヘッドボルト穴に対応する配置姿勢で支持する支持板部12と、を備える位置決め部材10を、中子本体2に対して一体造型した。
【選択図】図1
Description
すなわち、シリンダブロックの鋳造に際し、鋳型において複数の型等により形成されるキャビティ内に、鋳物砂等が固められて成形される崩壊性のウォータジャケット中子が配置される。そして、鋳造後のシリンダブロックにおいて、ウォータジャケット中子が破壊されて排出除去されることで生じる空間によりウォータジャケットが形成される。
そこで、このようなシリンダブロックにおける合わせ面からの水漏れ対策が必要となる。つまり、シリンダブロックを構成する複数の部品を組み付ける際、ウォータジャケットからの冷却水の漏洩を防止するため、部品同士の合わせ面にシール構造を設ける必要がある。しかし、このようにシール構造を設けることは、シリンダブロックの製造に際し、部品点数の増加や製造工程の増加をともなう。
この点、特許文献2に開示されているシリンダブロックの鋳造装置においては、キャビティを形成する型に設けられる複数の鋳抜きピンにより、ウォータジャケット中子が支持されて位置決めされる。しかしこの場合、前記のとおり鋳物砂等により成形されるウォータジャケット中子が、鋳抜きピンによって直接支持されることから、その位置決めについて砂粒単位でのズレが生じる場合があり、位置決め精度の向上を図ることが難しい。
しかし、こうしたウォータジャケット中子の位置決めに用いられる巾木は、鋳物砂等により成形されるウォータジャケット中子において一体成形される部分であるため、前記と同様にズレが生じる場合があり、位置決め精度に限界がある。
すなわち、本発明によれば、既存の設備を利用してシリンダブロックの鋳造時におけるウォータジャケット中子の位置決め精度の向上を図ることができ、シリンダブロックにおけるウォータジャケットの寸法精度の向上が図れるとともに、ウォータジャケット中子のハンドリング性の向上を図ることができる。
本発明に係るウォータジャケット中子は、シリンダブロックの鋳造時に用いられ、シリンダブロックにおけるシリンダボアの周囲に設けられるウォータジャケットを形成するためのものである。
すなわち、鋳物砂等が固められて成形される崩壊性のウォータジャケット中子が、シリンダブロックの鋳造に際し、シリンダブロック鋳造用の鋳型(金型)において複数の型等により形成されるキャビティ内において所定の配置姿勢で位置決めされる。ウォータジャケット中子が配置された状態のキャビティに対し、溶融状態のアルミニウム合金(アルミ溶湯)等の溶融金属(溶湯)が流し込まれて冷却されることにより、シリンダブロックが鋳造される。そして、鋳造後のシリンダブロックにおいて、ウォータジャケット中子が破壊されて排出除去されることで生じる空間によりウォータジャケットが形成される。
本実施形態に係る中子本体2は、自動車等に搭載される直列四気筒のエンジンを構成するシリンダブロックにおいて、一列に並んだ状態に設けられる四個のシリンダボアの周囲に設けられるウォータジャケットを形成するためのものである。シリンダボアは、シリンダブロックにおいてピストンを摺動可能に内装する孔部であり、シリンダブロックにおいてシリンダヘッドが組み付けられるシリンダヘッド取付面に開口する。
かかる形状を有する中子本体2は、各筒状部2aにより形成される円柱形上の孔部2bと、隣り合う筒状部2aの接続部分(隣り合う孔部2bの間の部分)であってシリンダブロックのシリンダボア間(隣り合うシリンダボアの間の部分)に対応する部分となるボア間部2cとを有する。
つまりこの場合、中子本体2は、熱硬化性を有する樹脂等のコーティング剤で被覆されたシェル砂が、圧縮空気とともに中子本体2造型用の型内のキャビティに吹き込まれることで充填された後、焼成硬化されることにより造型される。
また、巾木3は、中子本体2において、鋳造後のシリンダブロックから中子本体2を破壊して排出除去するための砂抜き用の孔部を形成する部分となる。つまり、鋳造後のシリンダブロックにおいて巾木3により形成される孔部は、ウォータジャケットとなる部分と連通するとともにシリンダブロックの外部に開口する部分となり、この孔部を介して破壊された中子本体2が排出される。なお、巾木3により形成された孔部は、中子本体2が排出された後、栓部材の圧入等により封止され、ウォータジャケットからの冷却水の漏洩等が防止される。
位置決め部材10は、シリンダブロックが有するシリンダヘッド締結用のボルト穴(以下、「ヘッドボルト穴」という。)を形成するための鋳抜きピン7が挿入可能な中空部としての孔部13を有する被挿入部11と、中子本体2に対して内在する部分を有するとともに被挿入部11をシリンダブロックにおけるヘッドボルト穴に対応する配置姿勢で支持する支持板部12とを備える。
なお、本実施形態においては、被挿入部11が有する中空部は、被挿入部11を貫通する孔部13として形成されているが、これに限られず、被挿入部11が有底の筒状部となるような穴部であってもよい。
本実施形態では、支持板部12は、中子本体2のボア間部2cの上部において、中子本体2の平面視(図4参照)での短手方向に貫通するように、板面が上下方向と略平行となる姿勢で設けられる。言い換えると、板状の支持板部12は、中子本体2において隣り合う孔部2b間の上部を仕切る状態で設けられる。したがって、支持板部12のうちボア間部2cに内在する部分が、支持板部12において中子本体2に対して内在する部分となる。
つまり、本実施形態の中子本体2においては三箇所となるボア間部2cそれぞれに対して位置決め部材10が設けられることにより、中子本体2におけるボア間部2cを筒状部2aの直列方向に対して垂直方向に挟むように配設される一対の被挿入部11が、支持板部12によってヘッドボルト穴に対応する配置で支持される。言い換えると、各位置決め部材10においては、中子本体2のボア間部2cの両外側に位置する一対の被挿入部11が、ボア間部2cを貫通する支持板部12によって連結された状態で支持される。
すなわち、被挿入部11は、その孔部13がシリンダブロックにおいてシリンダヘッドが組み付けられるシリンダヘッド取付面に開口するように上下方向に穿設されるヘッドボルト穴に対応する状態となる姿勢で、支持板部12により支持される。つまり、孔部13がヘッドボルト穴に対応する方向となるように、筒状に構成される被挿入部11が、その筒軸方向が上下方向となるように設けられる。
すなわち、シリンダブロックのヘッドボルト穴は、シリンダブロック鋳造用の鋳型に設けられる複数の鋳抜きピン7による鋳抜きによって形成されるところ、ヘッドボルト穴に対応する配置姿勢となる被挿入部11は、鋳型に設けられる各鋳抜きピン7が挿入可能な状態となる。
つまり、被挿入部11と支持板部12とは、例えば、型等が用いられて一体成形されることや、別部材として構成される被挿入部11と支持板部12とが溶接や嵌込み等によって固着されること等により一体的に構成される。
すなわち、前述したようにシェル造型法等が用いられて行われる中子本体2の造型に際し、位置決め部材10が、中子本体2造型用の型内のキャビティにおける所定の位置、つまり位置決め部材10の被挿入部11及び支持板部12が前述したような中子本体2に対する位置関係となるような位置にセットされる。そして、中子本体2の造型とともに位置決め部材10が、中子本体2に対して一体的に造型される。
すなわち、本実施形態に係るシリンダブロックの製造方法は、鋳造時にウォータジャケット中子1を用いてシリンダボアの周囲に設けられるウォータジャケットを形成するものであり、被挿入部11と支持板部12とを備える位置決め部材10を、中子本体2に対して一体造型し、被挿入部11の孔部13に、鋳抜きピン7を挿入することで、ウォータジャケット中子1の、シリンダブロック鋳造用の鋳型における位置決めを行う。
つまり、巾木3を用いた中子本体2の位置決めに加え、前述したようにシリンダブロックのヘッドボルト穴に対応する配置姿勢となっている被挿入部11の孔部13に、ヘッドボルト穴形成用の鋳抜きピン7を挿入することで、鋳型のキャビティにおけるウォータジャケット中子1の位置決めを行う。ここで、鋳抜きピン7は、その先端部が先細りのテーパ形状となっており、孔部13に対する挿入が円滑に行われる構成となっている。
この際、例えば、位置決め部材10がシリンダブロックを構成する材料と同じ材料により構成される場合等においては、鋳型のキャビティ内に供給された溶湯の熱により、位置決め部材10の溶湯と接触する表面部分が溶融し、位置決め部材10がシリンダブロックの材料と溶け合い融着して一体化することとなる。
そして、鋳造後のシリンダブロックにおいて、ウォータジャケット中子1の中子本体2の部分を破壊して排出除去することで生じる空間によりウォータジャケットを形成する。
なお、図6に示すシリンダブロック20の断面図は、図5に示す図4におけるA−B−C−D組合せ断面図に対応するシリンダブロックの断面を示しており、図6における鎖線Eは、図5における鎖線B、Cに対応する。
被挿入部11により構成されるヘッドボルト穴23は、被挿入部11が有する孔部13の内周面にネジが切られること等により構成される。
なお、孔部13は、中子本体2に対して一体造型される前の位置決め部材10等のように、シリンダブロックの鋳造前の段階において予めネジ孔として形成されておいてもよい。この場合、孔部13のネジ孔としての機能確保のため、中子本体2に対する一体造型時及びシリンダブロックの鋳造時において、シール部材等が用いられて孔部13の開口部が封止されること等により、孔部13内に対する鋳物砂や溶湯の浸入が防止される。
すなわち、本実施形態に係るシリンダブロック20は、シリンダボア21の周囲に、ウォータジャケットを形成するための中子(中子本体2)により形成されるウォータジャケット22を備えるとともに、ヘッドボルト穴23を備える。そして、ヘッドボルト穴23が、中子本体2に対して一体造型される板状部材である支持板部12によりヘッドボルト穴23に対応する配置姿勢で支持され、孔部13を有する筒状部材である被挿入部11により構成される。
これにより、既存の設備を利用してシリンダブロックの鋳造時におけるウォータジャケット中子1の位置決め精度の向上を図ることができる。つまり、鋳抜きピン7の孔部13に対する挿入により、金属同士となる鋳抜きピン7と位置決め部材10(の孔部13)との係合によって位置決めが行われるので、鋳物砂等により形成される崩壊性の中子本体2を直接支持することで位置決めを行う場合と比べて高い精度で位置決めを行うことができる。
つまり、シリンダブロック20におけるウォータジャケット22の寸法精度の向上が図れると、シリンダボア21周縁部における公差を小さくすることができるので均肉化を図ることができる。これにより、偏肉による剛性の低下が防止できることから剛性を高めることができる。また、シリンダボア21周縁部における公差を小さくすることができることから、シリンダブロック20の軽量化や小型化を図ることができる。
つまり、ウォータジャケット中子1において、位置決め部材10の部分を、ロボット等による把持部分や引掛け部分として利用することにより、破壊等を生じることなくウォータジャケット中子1の良好なハンドリング性を得ることができる。これにより、ウォータジャケット中子1の搬送等についての自動化を容易に図ることができる。
つまり、ウォータジャケット中子1において被挿入部11が設けられる個数(シリンダブロックが有するヘッドボルト穴のうち位置決め部材10の被挿入部11によって構成される個数)や、一つの位置決め部材10が有する被挿入部11の個数、あるいは位置決め部材10の支持板部12の形状等は、本実施形態に限定されるものではない。
ただし、前述したように、ウォータジャケット中子1の位置決め精度の向上やハンドリング性の向上を図る観点からは、本実施形態のように、一対の被挿入部11を有する三つの位置決め部材10が、中子本体2に対してそのボア間部2cの部分に支持板部12が位置する状態で一体造型される構成が好ましい。
つまり、シリンダブロック鋳造用の鋳型のキャビティにおけるウォータジャケット中子1の位置決めに際しては、巾木3が用いられることなく、位置決め部材10のみが用いられることによってウォータジャケット中子1の位置決めが行われる構成であってもよい。
シリンダブロックを構成する材料よりも熱伝導率の高い材料としては、例えば、シリンダブロックがアルミニウム合金を材料として構成される場合に対して、熱伝導率の高い金属である純銅や銅合金、あるいは純アルミニウム等の高熱伝導材が考えられる。
これにより、シリンダブロック20のボア間の温度を下げることができるので、結果として、シリンダブロック20におけるシリンダボア21の熱変形(ボア変形)の縮小や冷却性の改善を図ることができ、エンジン性能の向上に寄与することができる。
この点、前述したような位置決め部材10によるボア間に対する冷却効果を得るためには、例えば、位置決め部材10における支持板部12が、中子本体2において孔部2b間を上下方向略全体にわたって仕切る状態となる構成、つまり支持板部12の上下方向の長さが中子本体2の上下方向の長さと略同一となる構成等のように、ウォータジャケット22内の冷却水に接する支持板部12の表面積が大きい方が好ましいと考えられる。
このようにして設けられる通水孔14は、支持板部12のうち、ウォータジャケット中子1が用いられて鋳造されるシリンダブロック20において形成されるウォータジャケット22内にある部分に位置することとなる。
通水孔14の形状としては、例えば、長孔形状や矩形状の孔部として構成されてもよい。また、通水孔14の大きさ(通水面積)としては、例えば、シリンダブロック20において比較的高温となるシリンダボア21の上部に対応する部分に位置する通水孔14が、他の部分に位置する通水孔14よりも比較的大きく構成されてもよい。
また、通水孔14の形状や大きさ等は、好ましくはエンジンの実働時等における気筒間の温度の均等化が図れるように、前述した支持板部12の形状や大きさ等を含めて設定される。
すなわち、例えば、ディーゼルエンジン等においては、その筒内圧がガソリンエンジンと比較して高いため、クローズドデッキ型の構造のシリンダブロックが好ましい場合がある。一方で、エンジンにおける筒内圧が高くなると、シリンダブロックにおけるボア間等の冷却の重要性が増す。
このように、本発明に係るウォータジャケット中子1は、クローズドデッキ型のシリンダブロックに用いることで、より高い効果を得ることができる。
2 中子本体(ウォータジャケット中子本体)
7 鋳抜きピン
10 位置決め部材
11 被挿入部(筒状部材)
12 支持板部(板状部材)
13 孔部(中空部)
14 通水孔
20 シリンダブロック
21 シリンダボア
22 ウォータジャケット
23 ヘッドボルト穴
Claims (9)
- シリンダブロックの鋳造時に用いられ、シリンダブロックにおけるシリンダボアの周囲に設けられるウォータジャケットを形成するためのウォータジャケット中子であって、
シリンダブロックが有するシリンダヘッド締結用のボルト穴を形成するための鋳抜きピンが挿入可能な中空部を有する被挿入部と、ウォータジャケット中子本体に対して内在する部分を有するとともに前記被挿入部をシリンダブロックにおける前記ボルト穴に対応する配置姿勢で支持する支持板部と、を備える位置決め部材を、
前記ウォータジャケット中子本体に対して一体造型したことを特徴とするウォータジャケット中子。 - 前記位置決め部材の少なくとも前記支持板部を、シリンダブロックを構成する材料よりも熱伝導率の高い材料により構成し、
前記位置決め部材を、その前記支持板部の前記内在する部分が前記ウォータジャケット中子本体における前記シリンダボア間に対応する部分に位置するように設けたことを特徴とする請求項1に記載のウォータジャケット中子。 - 前記支持板部の前記内在する部分に、通水孔を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のウォータジャケット中子。
- 請求項1〜3のいずれかの項に記載のウォータジャケット中子が用いられて製造されるシリンダブロックであって、前記被挿入部により構成されるシリンダヘッド締結用のボルト穴を備えることを特徴とするシリンダブロック。
- 請求項1〜3のいずれかの項に記載のウォータジャケット中子を用いるシリンダブロックの製造方法であって、前記被挿入部によりシリンダヘッド締結用のボルト穴を構成することを特徴とするシリンダブロックの製造方法。
- シリンダボアの周囲に、ウォータジャケットを形成するための中子により形成されるウォータジャケットを備えるとともに、シリンダヘッド締結用のボルト穴を備えるシリンダブロックであって、
前記ボルト穴を、
前記中子に対して一体造型される板状部材により前記ボルト穴に対応する配置姿勢で支持され、前記ボルト穴を形成するための鋳抜きピンが挿入可能な中空部を有する筒状部材により構成したことを特徴とするシリンダブロック。 - 前記板状部材は、シリンダブロックを構成する材料よりも熱伝導率の高い材料により構成されるとともに、前記中子における前記シリンダボア間に対応する部分に位置することを特徴とする請求項6に記載のシリンダブロック。
- 前記板状部材における、前記ウォータジャケットに対応する部分には、通水孔が設けられていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のシリンダブロック。
- 鋳造時にウォータジャケット中子を用いてシリンダボアの周囲に設けられるウォータジャケットを形成するシリンダブロックの製造方法であって、
シリンダブロックが有するシリンダヘッド締結用のボルト穴を形成するための鋳抜きピンが挿入可能な中空部を有する被挿入部と、ウォータジャケット中子本体に対して内在する部分を有するとともに前記被挿入部をシリンダブロックにおける前記ボルト穴に対応する配置姿勢で支持する支持板部と、を備える位置決め部材を、前記ウォータジャケット中子本体に対して一体造型し、
前記中空部に、前記鋳抜きピンを挿入することで、前記ウォータジャケット中子の、シリンダブロック鋳造用の鋳型のキャビティにおける位置決めを行うことを特徴とするシリンダブロックの製造方法。
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