JP2007285192A - 内燃機関のピストン - Google Patents
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Abstract
【課題】ピストンヘッドの裏面側にオイルを十分に滞留させてオイルによるピストンヘッドの冷却効率を高めた内燃機関のピストンを提供する。
【解決手段】ピストンヘッド2の裏面2b側に向けてオイルを噴射するオイルジェット装置を備えた内燃機関に適用されるピストンにおいて、ピストンヘッド2の裏面2b側に、開口部6cの幅W1よりも内部6dの幅W2が拡大する溝部6を設ける。
【選択図】図3
【解決手段】ピストンヘッド2の裏面2b側に向けてオイルを噴射するオイルジェット装置を備えた内燃機関に適用されるピストンにおいて、ピストンヘッド2の裏面2b側に、開口部6cの幅W1よりも内部6dの幅W2が拡大する溝部6を設ける。
【選択図】図3
Description
本発明は、オイルジェット装置を備えた内燃機関に適用されるピストンに関する。
往復動型内燃機関のピストンを冷却する目的で、内燃機関のシリンダブロックの下部に設けられたノズルからピストンヘッドの裏面側にオイルを噴射するオイルジェット装置が組み込まれた内燃機関が公知である。この種のオイルジェット装置に適用されるピストンとしては、ピストンヘッドの裏面側に複数のフィン状の突起を設けたピストンが提案されている(特許文献1〜3参照)。ピストンヘッドの裏面側に複数の冷却孔を設けるとともに、コネクティングロッドのピストン側の端部に複数のオイルノズルをピストンと一体的に移動できるように配置し、各ノズルの先端を冷却孔内に挿入したピストンも知られている(特許文献4参照)。
実開平6−4348号公報
特開平9−79116号公報
特開2004−270489号公報
特開平8−338304号公報
上述した従来のピストンにおいて、フィン状の突起はピストンヘッドの裏面側の表面積を増加させる手段として設けられているに過ぎず、突起間に生じる凹部は、開口部から底部まで一定の幅に形成され、あるいは開口部から底部に向かって幅が徐々に減少するように形成されている。このため、突起間の凹部にはオイルの保持作用が殆どない。従って、ピストンヘッドの裏面側にオイルを吹き付けても、そのオイルはピストンヘッドの裏面から容易に落下し、ピストンヘッドからオイルへの熱伝達効率が低く、ピストンを効率良く冷却できないおそれがある。特に、シリンダブロックの下部のノズルからオイルを噴射するタイプのオイルジェット装置では、燃焼熱の影響が最も厳しくなる圧縮上死点付近にてノズルからピストンヘッドの裏面までの距離が増加してオイルが届き難くなるため、上述した懸念が高まる。オイルジェット装置のノズルをピストンと一体的に移動可能とした場合でも、ノズルから噴射されたオイルが直ぐに冷却孔から流出するため、ピストンヘッドからオイルへの熱伝達効率が悪く、同様の問題が生じる。
そこで、本発明は、ピストンヘッドの裏面側にオイルを十分に滞留させてオイルによるピストンヘッドの冷却効率を高めることが可能な内燃機関のピストンを提供することを目的とする。
本発明は、ピストンヘッドの裏面側に向けてオイルを噴射するオイルジェット装置を備えた内燃機関に適用されるピストンにおいて、前記裏面側に、開口部の幅よりも内部の幅が拡大する凹部が設けられることにより、上述した課題を解決する(請求項1)。
本発明のピストンによれば、凹部の開口部の幅よりも内部の幅が拡大しているので、凹部内の拡大部分から見て凹部の開口部側の壁面が下方に回り込むように突出し、その突出部分により凹部内に入り込んだオイルの落下が抑制される。このため、ピストンヘッドの裏面側にオイルを十分に滞留させ、ピストンヘッドからオイルへの熱伝達効率を向上させ、それにより、ピストンヘッドのオイルによる冷却効率を高めることができる。
本発明の一形態においては、前記凹部として、前記裏面に沿って延びる溝部が設けられ、該溝部の長手方向と直交する断面において前記開口部の幅よりも内部の幅が拡大してもよい(請求項2)。また、本発明の他の形態においては、前記凹部として、球形状の一部が切り欠かれて前記開口部が設けられた形状の窪みが設けられ、前記窪みの開口部の幅よりも前記窪みの内部の最大幅が大きく設定されてもよい(請求項3)。これらの形態によれば、溝部又は窪みの内部にオイルを保持してピストンヘッドからオイルへの熱伝達効率を高めることができる。さらに、窪みを設ける場合においては、前記ピストンヘッドの鋳造時に鋳型内で発生する気泡を前記裏面側に取り込んでピストン材料を凝固させることにより窪みを形成してもよい(請求項4)。鋳造時に発生する気泡を利用すれば、上述した形状の窪みを簡単に形成することができ、鋳造後の工程の削減を図り、ピストンの製造コストを低減することができる。
以上に説明したように、本発明のピストンによれば、ピストンヘッドの裏面側に形成された凹部内にオイルを十分に滞留させることにより、ピストンヘッドからオイルへの熱伝達効率を向上させてピストンヘッドの冷却効率を高めることができる。
(第1の形態)
図1は本発明の第1の形態に係る内燃機関用のピストンの軸線方向断面図を示す。周知のように、ピストン1は、往復動型内燃機関のシリンダ内に摺動自在に挿入される。そのピストン1は、略円柱形状を有するピストンヘッド2と、ピストンヘッド2の外周側から下方に延びるスカート3とを備えている。ピストンヘッド2の外周面には、ピストンリングを装着するための3本の環状のピストンリング溝4が間隔を空けて形成されている。ピストンヘッド2の裏面2bには一対のピンボス5が形成され、それらのピンボス5にはピストンピンを挿入するためのピストンピン孔5aが形成されている。なお、ピストンヘッド2の頂面2aは燃焼室に臨み、ピストンヘッド2の裏面2bはクランク室に臨む。内燃機関のシリンダブロックの下部には、ピストン1を冷却するためのオイルジェット装置20が設けられる。オイルジェット装置20はピストンヘッド2の裏面2b側に向けてオイルを噴射する公知の装置である。
図1は本発明の第1の形態に係る内燃機関用のピストンの軸線方向断面図を示す。周知のように、ピストン1は、往復動型内燃機関のシリンダ内に摺動自在に挿入される。そのピストン1は、略円柱形状を有するピストンヘッド2と、ピストンヘッド2の外周側から下方に延びるスカート3とを備えている。ピストンヘッド2の外周面には、ピストンリングを装着するための3本の環状のピストンリング溝4が間隔を空けて形成されている。ピストンヘッド2の裏面2bには一対のピンボス5が形成され、それらのピンボス5にはピストンピンを挿入するためのピストンピン孔5aが形成されている。なお、ピストンヘッド2の頂面2aは燃焼室に臨み、ピストンヘッド2の裏面2bはクランク室に臨む。内燃機関のシリンダブロックの下部には、ピストン1を冷却するためのオイルジェット装置20が設けられる。オイルジェット装置20はピストンヘッド2の裏面2b側に向けてオイルを噴射する公知の装置である。
図2は、ピストンヘッド2を裏面2b側から見た様子を示す。ピストンヘッド2には、裏面2bに開口する複数の溝部6が形成されている。各溝部6が本発明の凹部に相当する。各溝部6は、ピストンピン孔5aの軸線CLと直交する方向に直線状に延び、かつ軸線CLの方向に互いに等間隔に配置されている。図1に示すように、各溝部6の裏面2bからの深さは、溝部6の一端6aから他端6bまで一定である。図2の軸線CLに沿った溝部6の断面形状を図3に示す。溝部6は、その開口部6cの幅W1よりも内部6dの幅W2が拡大した略T字状の断面形状を有している。溝部6の内部6dの一対の壁面6eはピストン1の軸線方向に平行な平面状に形成され、溝部6の開口部6c側には壁面6eから断面矩形状に突出する一対の突出部6fが設けられている。溝部6の断面形状はその長手方向の全長に亘って一定である。
上述した溝部6の形成方法としては種々の方法が存在する。例えば、ピストンヘッド2の成形後、溝部6の断面形状と等しい断面形状の刃部を有するT溝カッター等の切削工具を利用して溝部6を加工してもよい。この場合、溝部6の両端には切削工具を出し入れするための穴部を設ける必要がある。あるいは、ピストン1の鋳造時に溝部6を一体的に鋳造してもよい。この場合、ピストン1を成型するための鋳型には溝部6を形成するための中子を設ける必要がある。その中子は、例えば砂型のように鋳造後に形を崩して溝部6から排除できるもの、あるいは、組立中子のように鋳造後に分解して溝部6から取り出せるものを使用する必要がある。組立中子は、例えば溝部6の開口部6cと同一幅で溝部6の底まで達する部材と、内部6dの拡大部分、つまり、幅W1よりも拡大している部分を埋める部材とを組み合わせて構成することができる。
さらに、図4に示すように、ピストンヘッド2の本体8に幅W2の本体溝部9を形成し、本体溝部9の間に設けられた壁部10の下面10aに、本体8とは別部品の板状部材11をそれらの間に幅W1が空くように接合して溝部6を形成してもよい。板状部材11の接合は溶接、溶着、接着、ボルト締め等の各種の接合手段を用いてよい。
以上の形態のピストン1によれば、各溝部6において、開口部6cの幅W1よりも内部6dの幅W2が拡大しているので、溝部6内の拡大部分から見て開口部6cの突出部6fが下方に回り込むように突出し、その突出部6fより溝部6の内部6dに入り込んだオイルの落下が抑制される。このため、ピストンヘッド2の裏面2b側にオイルを滞留させ、オイルによる冷却効果を高めることができる。
なお、以上の形態では、溝部6の壁面6eに矩形状の突出部6fを設けることによって開口部6cの幅W1よりも内部6dの幅W2を拡大させたが、幅W1、W2の差別化はこのような形態に限らず、適宜の構成によって実現することができる。例えば、図5に示すように溝部6の壁面6eを底面6gから開口部6bに向かうに従って漸次突出するテーパ状に形成することにより、開口部6cの幅W1よりも内部6dの幅W2を拡大させてもよい。突出部6fをいずれか一方の壁面6eのみに設けてもよい。いずれか一方の壁面6eのみをテーパ状に形成してもよい。
(第2の形態)
次に、図6及び図7を参照して本発明の第2の形態に係るピストンを説明する。なお、第1の形態と共通する部分には同一の参照符号を付して説明を省略する。本形態では、図2に示した複数の溝部6に代えて複数の窪み12がピストンヘッド2の裏面2b側に設けられている。各窪み12が本発明の凹部に相当する。窪み12は互いに連通することなく独立し、ピストンピン孔5aの軸線CLの方向及びその軸線CLと直交する方向にマトリックス状に配置されている。但し、全ての窪み12が相互に独立している必要はなく、一部の窪み12が互いに連通してもよい。多数の窪み12が裏面2b上で縦横に設けられていればよく、図示の如く窪み12が規則的に配列されている必要はない。各窪み12は、球形状の一部が切り欠かれることにより裏面2bに開口する開口部12aが設けられた形状を有している。開口部12aの幅W1は、窪み12の内部12bの幅方向に関する最大の幅W2よりも小さい。すなわち、窪み12は、開口部12aの幅W1よりも内部12bの幅W2が拡大した形状を有している。
次に、図6及び図7を参照して本発明の第2の形態に係るピストンを説明する。なお、第1の形態と共通する部分には同一の参照符号を付して説明を省略する。本形態では、図2に示した複数の溝部6に代えて複数の窪み12がピストンヘッド2の裏面2b側に設けられている。各窪み12が本発明の凹部に相当する。窪み12は互いに連通することなく独立し、ピストンピン孔5aの軸線CLの方向及びその軸線CLと直交する方向にマトリックス状に配置されている。但し、全ての窪み12が相互に独立している必要はなく、一部の窪み12が互いに連通してもよい。多数の窪み12が裏面2b上で縦横に設けられていればよく、図示の如く窪み12が規則的に配列されている必要はない。各窪み12は、球形状の一部が切り欠かれることにより裏面2bに開口する開口部12aが設けられた形状を有している。開口部12aの幅W1は、窪み12の内部12bの幅方向に関する最大の幅W2よりも小さい。すなわち、窪み12は、開口部12aの幅W1よりも内部12bの幅W2が拡大した形状を有している。
以上のような窪み12は、例えばピストン1の鋳造時に発生する気泡を利用して、ピストン1の鋳造と同時に形成することができる。以下に、その形成方法の一形態を説明する。図8はピストン1を形成するための鋳型13を示す。鋳型13は下型14及び上型15を組み合わせた構成を有している。下型14及び上型15の見切り位置、つまり合わせ面14a、15aの位置はピストンヘッド2の裏面2bに沿って設定されている。そして、下型14にはピストンヘッド2を形成するための凹所14bが、上型15にはスカート3及びピンボス5をそれぞれ形成するための凹所15bが形成されている。下型14と上型15とを組み合わせることにより、鋳型13の内部にはピストン1と相補的な形状の空洞部16が形成される。但し、空洞部16はピストン1を上下方向に関して反転させた形状である。そのため、ピストン1は鋳型13の内部にてピストンヘッド2の裏面2bを上向きにして鋳造される。
上型15には、一端が上面15cに開口し、他端が空洞部16に開口する湯口17が形成されている。湯口17は空洞部16に湯、つまり溶融状態のピストン材料を注入するためのものである。図8の例では、湯口17の下端がピンボス5の頂点に対応した位置に開口しているが、その位置は適宜に設定してよい。さらに、上型15の裏面2bに対応する壁面15dには、裏面2bの内周及び外周を一周するリング状のリブ15e、15fが設けられてもよい。さらに、上型15には鋳造時に発生するガスを鋳型13の外部に抜くためのガス抜き孔(不図示)が適宜に形成される。
以上の鋳型13を用いてピストン1を鋳造する場合、空洞部16に導かれる湯から発生するガスにより上型15の凹所15bに気泡18が溜る。それらの気泡18が湯の凝固過程で裏面2b上に取り込まれることにより図7に示すような窪み12が形成される。特に、裏面2bの内周位置及び外周位置にリブ15e、15fを設けた場合には気泡を裏面2bに積極的に残留させて多数の窪み12を形成することができる。このようにピストン1の鋳込み中に発生する気泡を利用して窪み12を形成すれば、ピストン1の鋳造後において、窪み12を形成するために必要な工程を削減することができる。なお、裏面2bに気泡を残すため、上型15のガス抜き孔は凹所15bの裏面2bに対応する面を避けて設けることが望ましい。
本発明は上述した各形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、凹部はその開口部の幅よりも内部の幅が拡大している限りにおいて種々の断面形状に形成してよい。凹部の個数及び配置についても適宜に変更してよい。
1 ピストン
2 ピストンヘッド
2b ピストンヘッドの裏面
6 溝部(凹部)
6a 溝部の開口部
6b 溝部の内部
12 窪み(凹部)
12a 窪みの開口部
12b 窪みの内部
W1 開口部の幅
W2 内部の幅
2 ピストンヘッド
2b ピストンヘッドの裏面
6 溝部(凹部)
6a 溝部の開口部
6b 溝部の内部
12 窪み(凹部)
12a 窪みの開口部
12b 窪みの内部
W1 開口部の幅
W2 内部の幅
Claims (4)
- ピストンヘッドの裏面側に向けてオイルを噴射するオイルジェット装置を備えた内燃機関に適用されるピストンにおいて、前記裏面側に、開口部の幅よりも内部の幅が拡大する凹部が設けられていることを特徴とする内燃機関のピストン。
- 前記凹部として、前記裏面に沿って延びる溝部が設けられ、該溝部の長手方向と直交する断面において前記開口部の幅よりも内部の幅が拡大していることを特徴とする請求項1に記載のピストン。
- 前記凹部として、球形状の一部が切り欠かれて前記開口部が設けられた形状の窪みが設けられ、前記窪みの開口部の幅よりも前記窪みの内部の最大幅が大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載のピストン。
- 前記窪みが、前記ピストンヘッドの鋳造時に鋳型内で発生する気泡を前記裏面側に取り込んでピストン材料を凝固させることにより形成されていることを特徴とする請求項3に記載のピストン。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006112972A JP2007285192A (ja) | 2006-04-17 | 2006-04-17 | 内燃機関のピストン |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2006112972A JP2007285192A (ja) | 2006-04-17 | 2006-04-17 | 内燃機関のピストン |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013506086A (ja) * | 2009-09-28 | 2013-02-21 | マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング | 粗い表面を有するピストン |
JP2015169091A (ja) * | 2014-03-05 | 2015-09-28 | 三菱自動車工業株式会社 | エンジンのピストン冷却構造 |
WO2016088454A1 (ja) * | 2014-12-02 | 2016-06-09 | 日立オートモティブシステムズ株式会社 | 内燃機関用ピストンと該ピストンの製造方法及び製造装置 |
-
2006
- 2006-04-17 JP JP2006112972A patent/JP2007285192A/ja active Pending
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JP2015169091A (ja) * | 2014-03-05 | 2015-09-28 | 三菱自動車工業株式会社 | エンジンのピストン冷却構造 |
WO2016088454A1 (ja) * | 2014-12-02 | 2016-06-09 | 日立オートモティブシステムズ株式会社 | 内燃機関用ピストンと該ピストンの製造方法及び製造装置 |
JPWO2016088454A1 (ja) * | 2014-12-02 | 2017-07-20 | 日立オートモティブシステムズ株式会社 | 内燃機関用ピストンと該ピストンの製造方法及び製造装置 |
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