以下、本発明の一実施形態を図1〜図17に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのレーザプリンタ500の概略構成が示されている。
図1に示されるレーザプリンタ500は、光走査装置900、像担持体としての感光体ドラム901、帯電チャージャ902、現像ローラ903、トナーカートリッジ904、クリーニングブレード905、給紙トレイ906、給紙コロ907、レジストローラ対908、転写チャージャ911、定着ローラ909、排紙ローラ912、及び排紙トレイ910などを備えている。
上記帯電チャージャ902、現像ローラ903、転写チャージャ911及びクリーニングブレード905は、それぞれ感光体ドラム901の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム901の回転方向(図1における矢印方向)に関して、帯電チャージャ902→現像ローラ903→転写チャージャ911→クリーニングブレード905の順に配置されている。
前記感光体ドラム901の表面には、感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム901の表面が被走査面である。
前記帯電チャージャ902は、感光体ドラム901の表面を均一に帯電させる。
前記光走査装置900は、帯電チャージャ902で帯電された感光体ドラム901の表面に、上位装置(例えばパソコン)からの画像情報に基づいて変調された光を照射する。これにより、感光体ドラム901の表面では、光が照射された部分だけ電荷が消失し、画像情報に対応した潜像が感光体ドラム901の表面に形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラム901の回転に伴って前記現像ローラ903の方向に移動する。なお、感光体ドラム901の長手方向(回転軸に沿った方向)は「主走査方向」と呼ばれ、感光体ドラム901の回転方向は「副走査方向」と呼ばれている。この光走査装置900の構成については後述する。
前記トナーカートリッジ904にはトナーが格納されており、該トナーは前記現像ローラ903に供給される。このトナーカートリッジ904内のトナー量は、電源投入時や印刷終了時などにチェックされ、残量が少ないときには不図示の表示部に交換を促すメッセージが表示される。
前記現像ローラ903は、回転に伴ってその表面にトナーカートリッジ904から供給されたトナーが帯電されて薄く均一に付着される。また、この現像ローラ903には、感光体ドラム901における帯電している部分(光が照射されなかった部分)と帯電していない部分(光が照射された部分)とで互いに逆方向の電界が生じるような電圧が印加されている。そして、この電圧によって、現像ローラ903の表面に付着しているトナーは、感光体ドラム901の表面の光が照射された部分にだけ付着する。すなわち、現像ローラ903は、感光体ドラム901の表面に形成された潜像にトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着された潜像は、感光体ドラム901の回転に伴って前記転写チャージャ911の方向に移動する。
前記給紙トレイ906には転写対象物としての記録紙913が格納されている。この給紙トレイ906の近傍には前記給紙コロ907が配置されており、該給紙コロ907は、記録紙913を給紙トレイ906から1枚づつ取り出し、前記レジストローラ対908に搬送する。該レジストローラ対908は、前記転写ローラ911の近傍に配置され、給紙コロ907によって取り出された記録紙913を一旦保持するとともに、該記録紙913を感光体ドラム901の回転に合わせて感光体ドラム901と転写チャージャ911との間隙部に向けて送り出す。
前記転写チャージャ911には、感光体ドラム901の表面上のトナーを電気的に記録紙913に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム901の表面の潜像が記録紙913に転写される。ここで転写された記録紙913は、前記定着ローラ909に送られる。
この定着ローラ909では、熱と圧力とが記録紙913に加えられ、これによってトナーが記録紙913上に定着される。ここで定着された記録紙913は、前記排紙ローラ912を介して前記排紙トレイ910に送られ、排紙トレイ910上に順次スタックされる。
前記クリーニングブレード905は、感光体ドラム901の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。なお、除去された残留トナーは、再度利用されるようになっている。残留トナーが除去された感光体ドラム901の表面は、再度帯電チャージャ902の位置に戻る。
次に、前記光走査装置900の構成について図2を用いて説明する。
この光走査装置900は、光源104、カップリングレンズ105、アパーチャ106、線像形成光学素子としてのアナモフィックレンズ107、反射ミラー108、ポリゴンミラー103、該ポリゴンミラー103を回転させる不図示のポリゴンモータ、2つの走査レンズ(101a、101b)、及び中間部材111(図2では不図示、図5参照)などを備えている。
前記光源104は、一例として図3に示されるように、同一基板上の形成された40個の発光部110を有している。各発光部110は、いずれも発振波長が780nmの垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)である。すなわち、光源104は垂直共振器型面発光レーザアレイである。なお、垂直共振器型面発光レーザは、発振波長の温度変動が小さく、原理的に波長の不連続な変化(いわゆる波長飛び)が発生しないという特徴を有している。
上記40個の発光部110は、図3に示されるように、主走査方向に対応する方向(以下では、便宜上「Dir_main方向」ともいう)から副走査方向に対応する方向(以下では、便宜上「Dir_sub方向」ともいう)に向かって傾斜角αをなす方向(以下では、便宜上「T方向」という)と、Dir_sub方向とに沿って2次元的に配列されている。すなわち、光源104は、T方向に10個の発光部が等間隔に配置された発光部列を、4列有している。そして、各発光部列は、Dir_sub方向に等間隔に配置されている。ここでは、便宜上、紙面の上から下に向かって、第1発光部列、第2発光部列、第3発光部列、第4発光部列ということとする。また、各発光部を特定するために、便宜上、図4に示されるように、紙面左上から右下に向かって、第1発光部列を構成する10個の発光部に1番(1st)〜10番(10th)、第2発光部列を構成する10個の発光部に11番(11th)〜20番(20th)、第3発光部列を構成する10個の発光部に21番(21st)〜30番(30th)、第4発光部列を構成する10個の発光部に31番(31st)〜40番(40th)の番号をつけている。
図2に戻り、前記カップリングレンズ105は、一例として焦点距離が46.6mmのガラス製レンズであり、光源104から出射された光束を略平行光とする。
前記アパーチャ106は、一例として、主走査方向の前幅が5.64mm、副走査方向の前幅が2.2mmの矩形形状あるいは楕円形状の開口部を有し、カップリングレンズ105を介した光束のビーム径を規定する。
前記アナモフィックレンズ107は、一例として焦点距離が104.7mmのガラス製レンズであり、アパーチャ106の開口部を通過した光束を、前記反射ミラー108を介して前記ポリゴンミラー103の偏向反射面近傍に副走査方向に関して結像する。
このアナモフィックレンズ107は、一例として図5に示されるように、その一端が前記中間部材111と、接着部111fを介して接着される。そして、中間部材111は、ハウジング120の突起部120aと、接着部121fを介して接着される。すなわち、アナモフィックレンズ107は、中間部材111を介してハウジング120に固定される。
本実施形態では、前記接着部111fは、光軸方向(図5におけるx軸方向)に垂直な平面を有し、前記接着部121fは、主走査方向(図5におけるy軸方向)に垂直な平面を有している。
また、接着部111fに接するアナモフィックレンズ107の面は、平面度の精度が良い光学面が延長された面であるため、アナモフィックレンズ107が各部材に対して傾いて固定されるのを抑制することができる。
これにより、アナモフィックレンズ107は、(1)副走査方向(図5におけるz軸方向)に平行な方向に関する位置の調整、(2)光軸方向(図5におけるx軸方向)に平行な方向に関する位置の調整、(3)主走査方向(図5におけるy軸方向)に平行な回転軸回りの姿勢の調整、(4)光軸方向に平行な回転軸回りの姿勢の調整、がそれぞれ可能となる。なお、主走査方向に平行な回転軸回りの回転は「β回転」とも呼ばれている。また、光軸方向に平行な回転軸回りの回転は「γ回転」とも呼ばれている。
中間部材111の素材は、紫外線領域の光に対して透明な物性を有する樹脂である。
このように、中間部材111を用いることで、上記(1)〜(4)の調整を行うことができ、製造誤差による光学系の性能劣化を補償することができる。
上記(1)〜(4)の調整は、光走査装置の光学特性をモニターしながら、図6に示されるような治具122を用いて行われる。ここで光学特性とは、ビームウエスト位置、ビームスポット径、副走査方向におけるビームピッチ(以下便宜上、「副走査ビームピッチ」と略述する)である。
例えば、上記(1)の調整を行う場合には、副走査ビームピッチとして、40thの発光部による走査線と1stの発光部による走査線との間の間隔(「40th−1st」と記述する)を計測する。すなわち、40thの発光部と1stの発光部を点灯し、感光体ドラム表面上の両端の像高で副走査方向のビーム位置とその間隔を計測し、+側と−側の間隔が略同じ値となるようにアナモフィックレンズ107を副走査方向に移動する。これにより副走査ビームピッチが最適化でき、そのとき他の光束による副走査ビームピッチも同時に最適化できる。
また、上記(2)の調整によってビームウエスト位置を最適化することができ、上記(4)の調整によってビームスポット径を最適化することができる。
なお、調整の順番は、(2)→(4)→(1)の順が望ましいが、それ以外の順で行っても、また同時に調整しても良い。また、必要に応じて、上記(3)の調整を行っても良い。
調整が完了すると、例えば紫外線硬化樹脂を接着剤として塗布した中間部材111を、アナモフィックレンズ107と突起部120aの両方に突き当てて仮固定する。アナモフィックレンズ107は、副走査方向(ここでは、z軸方向)に平行な面(ここでは、+x側の面)を有しており、この面が中間部材111に突き当てられている(図5参照)。そして、紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。ここでは、中間部材111に紫外線領域の光に対して透明な材料を用いているため、紫外線照射の自由度が高く、アナモフィックレンズ107及び中間部材111の固定を迅速且つ均一に行うことができる。なお、図5に示されるように、中間部材111における上記突き当てられる面111fは、カップリング光学系の光軸方向(ここでは、x軸方向)に略垂直な面である。すなわち、アナモフィックレンズ107と中間部材111は、副走査方向に関して互いに平行な面をそれぞれ有し、アナモフィックレンズ107は、前記互いに平行な面を介して中間部材111に保持されている。これにより、前述した「主走査方向に平行な回転軸回りの姿勢の調整」を容易に行うことができる。
ところで、素子の形状精度や組付け精度などから考えて「主走査方向に平行な回転軸回りの姿勢の調整」が不要な場合には、例えば、主走査方向(ここでは、y軸方向)に垂直な面を中間部材111における突き当てられる面としても良い。この場合には、構成の単純化及び調整用治具の簡略化が可能となる。
上記調整は、アナモフィックレンズ107の組付け工程時、あるいは組付け後の調整工程で行われる。なお、この調整は、位置決め基準が無いことを特徴としている。
また本実施形態では、ハウジング120と中間部材111は互いに異なる材料で構成されている。そこで、互いの線膨張係数が異なるため、温度変化によりアナモフィックレンズ107の位置が変化することが考えられる。そこで、図5に示されるように、中間部材111とハウジング120が接する面は、主走査方向に垂直な平面であることが望ましい。このことを図7(A)及び図7(B)を用いて説明する。図7(A)及び図7(B)は、図5を光軸方向から見た図である。図7(A)は初期温度での状態、図7(B)は温度が変化した時の状態である。中間部材111の線膨張係数がハウジング120に対して小さい場合、温度上昇に伴って中間部材111の突起部120aに固定されている部分は膨張が制限されるが、アナモフィックレンズ107を固定している側は膨張しやすい。そのため、中間部材111は図7(B)に示されるように台形状に変形する。しかしながら、本実施形態では、アナモフィックレンズ107が副走査方向に関して中間部材111の略中央に位置しているため、温度が変化してもアナモフィックレンズ107の移動方向は図7(B)における矢印の方向のみである。そして、アナモフィックレンズ107が主走査方向にパワーを持たないことから、このとき光学性能の劣化は発生しない。
一方、図8(A)に示されるように、仮に中間部材111とハウジング120が接する面が主走査方向に平行な場合には、温度変化がおこると、ハウジング120に固定されている中間部材111の下部は膨張が制限され、上部はより膨張する。そのため、アナモフィックレンズ107は主走査方向に平行な方向への移動のみならず、図8(B)における矢印で示した回転方向にも回動してしまう。これにより、主走査方向及び副走査方向の両方向にパワーの変化がおき、ビームスポット径が増大し、ビームスポット位置ずれが発生するなど光学特性が劣化する。従って、アナモフィックレンズ107が固定された中間部材111は本実施形態のように、主走査方向に垂直な面によって、ハウジング120に固定されることが望ましい。
光源104とポリゴンミラー103との間の光路上に配置される光学系は、カップリング光学系とも呼ばれている。本実施形態では、カップリング光学系は、カップリングレンズ105とアパーチャ106とアナモフィックレンズ107とから構成されている。
前記ポリゴンミラー103は、一例として内接円の半径(以下、便宜上「内接円半径」と略述する)が7mmの4面鏡であり、副走査方向に平行な軸の周りに等速回転する。
なお、ポリゴンミラーの内接円半径は7mm以上であり、かつ10mm以下であることが望ましい。これは、副走査ビームピッチにばらつきが発生する大きな要因が、ポリゴンミラーの回転軸や偏向反射面の傾きだからである。製造上発生するこの傾きがある光走査装置では、反射点位置の各像高による差が小さくなるほど、つまり内接円半径が小さいほどこの影響を小さくすることができるため、副走査ビームピッチは安定する。理想的には偏向反射面内に回転軸がある場合(内接円半径=0)に、ばらつきが最小となる。しかし、内接円半径を小さくしすぎると多角形であるポリゴンミラーにおける光反射の有効領域が狭くなるため、主走査方向に関して光束の幅が狭くなり、画角が狭くなる。光束の幅が狭くなるとビームスポット径を小径化できなくなるため、高画質化の妨げとなる。また、画角が狭いと光路長を長く取らなければならないため、光走査装置の大型化や、光路の折り返しのための反射部材が更に必要になるなど光走査装置が高価になる。しかも、この場合には部品が多くなるため誤差要因が増加し、画質劣化にもつながる。光反射の有効領域を狭くしないで内接円半径を小さくする方法としては、偏向反射面の数(面数)を少なくすることが考えられるが、面数を減らすと走査周波数が低下するので、ポリゴンミラーの回転数を高くしなければならず、消費電力の増加や、より高価なポリゴンミラーを用いなければならなくなる。以上のような制約を受けるため、ポリゴンミラーの内接円半径は最低でも7mm必要となる。同じ光路長としたときに、内接円半径が7mm以上の場合のビームスポット径と、内接円半径が6mmの場合のビームスポット径が図9に示されている。これによると、内接円半径が6mmの場合には、ポリゴンミラーに光束が蹴られずに光書込をすると主走査方向において光束が細くなるため、ビームスポット径は小径化できず72μm以上となってしまう。一方、内接円半径が7mm以上であれば、光束幅を確保でき、ビームスポット径は55μm程度と良好に小径化できるため高解像度化に対応できる。
前記走査レンズ101aは、一例として中心(光軸上)肉厚が13.5mmの樹脂製レンズである。
前記走査レンズ101bは、一例として中心(光軸上)肉厚が3.5mmの樹脂製レンズである。
走査レンズ101a及び走査レンズ101bの各面(入射面、射出面)は次の(1)式及び次の(2)式で表現される非球面である。ここで、Xは光軸方向(図2における紙面左右方向)の座標、Yは主走査方向(図2における紙面上下方向)の座標を示す。また、入射面の中央をY=0とする。RmはY=0における主走査方向の曲率半径、a00,a01,a02,・・・は主走査形状の非球面係数である。また、Cs(Y)はYに関する副走査方向の曲率、Rs0は副走査方向の光軸上の曲率半径、b00,b01,b02,・・・は副走査方向の非球面係数である。なお、光軸は、Y=0で副走査方向における中央の点を通る軸をいう。
各走査レンズの各面(入射面、射出面)におけるRm、Rs0及び各非球面係数の値の一例が表1に示されている。
表1の値を前記(1)式に代入して得られた走査レンズ101aの形状が図10に示されている。また、表1の値を前記(1)式に代入して得られた走査レンズ101bの形状が図11に示されている。
表1の値を前記(2)式に代入して得られた走査レンズ101aの入射面及び射出面におけるCs(Y)が図12に示されている。また、表1の値を前記(2)式に代入して得られた走査レンズ101bの入射面及び射出面におけるCs(Y)が図13に示されている。
また、表1の値を用いて計算すると、走査レンズ101aの副走査方向の焦点距離(f2とする)は−6004.3mm、走査レンズ101bの副走査方向の焦点距離(f1とする)は72.3mmである。すなわち、|1/f2|<|1/f1|の関係にある。換言すれば、走査レンズ101aよりも走査レンズ101bのほうが副走査方向のパワーが大きい。
ポリゴンミラー103と感光体ドラム901との間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。本実施形態では、走査光学系は、走査レンズ101aと走査レンズ101bとから構成されている。
この走査光学系の副走査方向の横倍率は、一例として0.97倍である。また、光走査装置900の光学系全体の副走査方向の横倍率は、一例として2.2倍である。
本実施形態では、感光体ドラム901の表面に形成される光スポットの目標とするスポット径は、主走査方向で52μm、副走査方向で55μmである。
また、一例として、ポリゴンミラー103と走査レンズ101aの入射面との距離(光路長)は46.3mm、ポリゴンミラー103と走査レンズ101bの入射面との距離は149.5mm、ポリゴンミラー103と感光体ドラム901の表面との距離は295.5mmである。そして、走査レンズ101aの射出面と走査レンズ101bの入射面との距離は89.7mm、走査レンズ101bの射出面と感光体ドラム901の表面との距離は142.5mmである。
さらに、感光体ドラム901における有効走査領域の長さ(主走査方向の書込み幅)は323mmである。
本実施形態における像面湾曲の計測値の一例が図14(A)に示され、等速特性の計測値の一例が図14(B)に示されている。これらによると、副走査方向に関して、非常に良く像面がそろっており、従来よりも走査レンズの肉厚を低減しているにもかかわらず、ビームスポット径のばらつきが非常に小さいことが分かる。
また、本実施形態における副走査方向の横倍率の偏差(Δβとする)の一例が図15に示されている。これによると、副走査方向の横倍率における最大値と最小値の差は0.5%程度に抑えられ、略一定とみなすことができる。なお、図15では、像高0での副走査方向の横倍率を基準(Δβ=0)にしている。
アナモフィックレンズ107の調整前の副走査ビームピッチの誤差の一例が、図16に示されている。ここで、例えば、2nd−1st+は、1番目の走査線(図4における1番目の発光部(1st)による走査線)と2番目の走査線(図4における2番目の発光部(2nd)による走査線)の間の副走査ビームピッチの+方向の誤差を意味し、2nd−1st+は、1番目の走査線と2番目の走査線の間の副走査ビームピッチの−方向の誤差を意味している。図16によると、副走査ビームピッチのばらつきは、約13μmである。なお、2400dpiの高密度書込においては走査線間隔は11μmとなるので、13μmのばらつきは画像品質上問題となる。
そして、アナモフィックレンズ107の調整後の副走査ビームピッチの誤差の一例が、図17に示されている。これによると、副走査ビームピッチのばらつきは、約8.5μmであり、2400dpiの高密度書込においても良好な画像品質を得ることが可能である。
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係るレーザプリンタ500では、帯電チャージャ902と現像ローラ903とトナーカートリッジ904と転写チャージャ911とによって転写装置が構成されている。
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置900によると、カップリングレンズ105を介した複数の光束をポリゴンミラー103の近傍で副走査方向に結像するアナモフィックレンズ107は、中間部材111によって保持されるとともに、その副走査方向に平行な方向の位置が調整されている。そこで、副走査方向におけるビームピッチを最適化することができる。従って、その結果として、副走査方向におけるビームピッチのばらつきを抑制することが可能となる。
また、上記実施形態によると、アナモフィックレンズ107は、カップリング光学系の光軸方向に略平行な軸の周りに回動可能な状態で保持されているため、アナモフィックレンズ107の姿勢を調整することにより、更にビームスポット径を最適化することができる。
また、本実施形態に係る光走査装置900によると、走査レンズ101aよりも走査レンズ101bのほうがパワーが大きい。これにより、副走査方向の横倍率の最大値と最小値の差を容易に小さくすることができ、その結果、温度変化による倍率変化及び温度変化による副走査ビームピッチの変化をいずれも低減することが可能となる。
また、本実施形態に係る光走査装置900によると、ポリゴンミラー103の内接円半径が10mm以下である。これにより、副走査ビームピッチのばらつきに対する、ポリゴンミラー103の回転軸や偏向反射面の傾きの影響を小さくすることができる。その結果、副走査ビームピッチが安定する。
また、本実施形態に係るレーザプリンタ500によると、副走査ビームピッチのばらつきを抑制することができる光走査装置900を備えているため、結果として高品質の画像を高速で形成することが可能となる。
なお、上記実施形態では、アナモフィックレンズ107が1つの中間部材111を介してハウジング120に固定される場合について説明したが、これに限らず、一例として図18に示されるように、2つの中間部材(111a、111b)を介してハウジング120に固定されても良い。この場合には、アナモフィックレンズ107の両端が各中間部材にそれぞれ接着され、該2つの中間部材を介してハウジング120の2つの突起部(120a、120b)に固定されることとなる。この場合には、アナモフィックレンズ107の姿勢変化などの変動をさらに低減できる。特に、副走査方向に平行な回転軸回りの回転、いわゆるα回転を低減することができる。
また、上記実施形態において、大きな温度変化が予想される場合には、前記走査光学系における少なくとも1つの面に、温度変化の影響を補正するための回折格子を形成しても良い。
また、上記実施形態では、カップリングレンズ105及びアナモフィックレンズ107が、いずれもガラス製である場合について説明したが、コスト低減のために、少なくとも一方を樹脂製レンズとしても良い。但し、このとき大きな温度変化が予想される場合には、樹脂製レンズに代えて、回折光学素子を用いても良い。
また、上記実施形態では、走査光学系が2つの走査レンズからなる場合について説明したが、これに限らず、走査光学系が3つ以上の走査レンズからなっても良い。この場合には、感光体ドラム901に最も近い位置に配置され、副走査方向にパワーを有する特定の走査レンズの副走査方向の焦点距離(f1´とする)と、前記特定の走査レンズを除く複数の走査レンズの副走査方向の合成焦点距離(f2´とする)は、|1/f2´|<|1/f1´|の関係を満足することが好ましい。これにより、副走査方向の横倍率の最大値と最小値の差を容易に小さくすることができ、その結果、温度変化による倍率変化及び温度変化による副走査ビームピッチの変化をいずれも低減することが可能となる。
なお、上記実施形態では、画像形成装置としてレーザプリンタ500の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、光走査装置900を備えた画像形成装置であれば、結果として高品質の画像を高速で形成することが可能となる。
また、カラー画像を形成する画像形成装置であっても、カラー画像に対応した光走査装置を用いることにより、高コスト化を招くことなく、高品質の画像を高速で安定して形成することが可能となる。
また、一例として図19に示されるように、画像形成装置として、カラー画像に対応し、複数の感光体ドラムを備えるタンデムカラー機であっても良い。この図19に示されるタンデムカラー機は、ブラック(K)用の感光体ドラムK1、帯電器K2、現像器K4、クリーニング手段K5、及び転写用帯電手段K6と、シアン(C)用の感光体ドラムC1、帯電器C2、現像器C4、クリーニング手段C5、及び転写用帯電手段C6と、マゼンタ(M)用の感光体ドラムM1、帯電器M2、現像器M4、クリーニング手段M5、及び転写用帯電手段M6と、イエロー(Y)用の感光体ドラムY1、帯電器Y2、現像器Y4、クリーニング手段Y5、及び転写用帯電手段Y6と、光走査装置900と、転写ベルト80と、定着手段30などを備えている。
この場合には、光走査装置900では、光源104における複数の発光部はブラック用、シアン用、マゼンタ用、イエロー用に分割されている。そして、ブラック用の各発光部からの光束は感光体ドラムK1に照射され、シアン用の各発光部からの光束は感光体ドラムC1に照射され、マゼンタ用の各発光部からの光束は感光体ドラムM1に照射され、イエロー用の各発光部からの光束は感光体ドラムY1に照射されるようになっている。
各感光体ドラムは、図19中の矢印の方向に回転し、回転順にそれぞれ帯電器、現像器、転写用帯電手段、クリーニング手段が配置されている。各帯電器は、対応する感光体ドラムの表面を均一に帯電する。この帯電器によって帯電された感光体ドラム表面に光走査装置900により光束が照射され、感光体ドラムに静電潜像が形成されるようになっている。そして、対応する現像器により感光体ドラム表面にトナー像が形成される。さらに、対応する転写用帯電手段により、記録紙に各色のトナー像が転写され、最終的に定着手段30により記録紙に画像が定着される。
なお、このタンデムカラー機において、光走査装置900に代えて、図20に示されるように、ブラック用の光走査装置900Kとシアン用の光走査装置900Cとマゼンタ用の光走査装置900Mとイエロー用の光走査装置900Yを用いても良い。
101a…走査レンズ(第2の走査光学素子)、101b…走査レンズ(第1の走査光学素子)、103…ポリゴンミラー(偏向手段)、104…光源、105…カップリングレンズ(カップリング光学素子)、107…アナモフィックレンズ(線像形成光学素子)、110…発光部、111…中間部材、111a…中間部材、111b…中間部材、120…ハウジング、500…レーザプリンタ(画像形成装置)、900…光走査装置、900K…光走査装置、900C…光走査装置、900M…光走査装置、900Y…光走査装置、901…感光体ドラム(像担持体)、902…帯電チャージャ(転写装置の一部)、903…現像ローラ(転写装置の一部)、904…トナーカートリッジ(転写装置の一部)、911…転写チャージャ(転写装置の一部)、913…記録紙(転写対象物)。