JP2008089912A - トナー - Google Patents

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正也 柴谷
Toshiaki Yamagami
利昭 山上
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Abstract

【課題】十分な量の着色剤を含有し、かつ、低温領域での記録媒体への定着のし易さ(低温定着性)、耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)に優れたトナーを提供すること。
【解決手段】本発明のトナーは、多数個のトナー粒子を含むトナーであって、トナー粒子は、コア領域と、コア領域の外周を被覆しコア領域とは異なる組成のシェル領域とを有するものであり、コア領域およびシェル領域は、それぞれ、着色剤と樹脂とを含む材料で構成されたものであり、コア領域中における着色剤の濃度をC[wt%]が、シェル領域中における着色剤の濃度をC[wt%]としたとき、C>Cの関係を満足することを特徴とする。コア領域中における着色剤の濃度Cは、6.0〜22.0wt%であるのが好ましく、シェル領域中における着色剤の濃度Cは、0.5〜6.5wt%であるのが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、トナーに関するものである。
電子写真法としては、多数の方法が知られているが、一般には、光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成する工程(露光工程)と、該潜像をトナーを用いて現像する現像工程と、紙等の転写材(記録媒体)にトナー画像を転写する転写工程と、定着ローラを用いた加熱等により、前記トナー画像を定着する定着工程とを有している。
上記のような電子写真法に用いられるトナーは、通常、主成分である樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう。)と、着色剤とを含む材料で構成されている。
電子写真法に用いられるトナーにおいては、十分な濃度の画像を得るため、特に、トナーの使用量を抑制しつつ十分な濃度の画像を得るために、十分な着色剤を含有することが求められている。
また、一般に、省エネルギーや、トナーの定着画像を高速形成する(高速印刷)上では、トナーを構成する樹脂としてガラス転移温度の低いものを用いるのが有利である。しかしながら、トナーを構成する樹脂がガラス転移温度の低いものである場合、トナー粒子の耐久性、保存性(保存安定性)が低下し、高温領域でのオフセットが発生し易くなる等の問題点があった。
このような問題を解決するために、複数種の樹脂を組み合わせて用いる試みがある。このような場合、通常、ガラス転移温度の低い樹脂と、ガラス転移温度の高い樹脂とが組み合わせて用いられる(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、従来のトナーにおいては、トナーの構成材料として複数種の樹脂を用いた場合、トナーを構成する複数の樹脂の特性を十分に発揮させることが困難であった。すなわち、トナーを構成する複数種の樹脂の特性が平均化されてしまい、低温定着性とともに、耐久性、保存性を優れたものとするのが困難であった。
特開2003−122051号公報(段落番号0105、0111、0130等)
本発明の目的は、十分な量の着色剤を含有し、かつ、低温領域での記録媒体への定着のし易さ(低温定着性)、耐久性、保存性に優れたトナーを提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のトナーは、多数個のトナー粒子を含むトナーであって、
前記トナー粒子は、コア領域と、前記コア領域の外周を被覆し、前記コア領域とは異なる組成のシェル領域とを有するものであり、
前記コア領域および前記シェル領域は、それぞれ、着色剤と樹脂とを含む材料で構成されたものであり、
前記コア領域中における前記着色剤の濃度をC[wt%]が、前記シェル領域中における前記着色剤の濃度をC[wt%]としたとき、C>Cの関係を満足することを特徴とするトナー。
これにより、十分な量の着色剤を含有し、かつ、低温領域での記録媒体への定着のし易さ(低温定着性)、耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)に優れたトナーを提供することができる。
本発明のトナーでは、前記コア領域中における前記着色剤の濃度Cが、6.0〜22.0wt%であることが好ましい。
これにより、トナーの発色性(着色濃度)を十分に高いものとしつつ、トナーの低温定着性を特に優れたものとすることができる。
本発明のトナーでは、前記シェル領域中における前記着色剤の濃度Cが、0.5〜6.5wt%であることが好ましい。
これにより、トナー粒子の強度、形状の安定性(低温環境下での強度、形状の安定性を含む)を特に優れたものとすることができ、トナーの耐久性、保存性を特に優れたものとすることができる。また、トナーの発色性(着色濃度)を特に優れたものとすることができる。
本発明のトナーでは、前記コア領域中における前記着色剤の濃度C[wt%]と、前記シェル領域中における前記着色剤の濃度C[wt%]とが、1.3≦C/C≦20.0の関係を満足することが好ましい。
これにより、トナーの低温定着性を十分に優れたものとしつつ、トナー粒子の強度、形状の安定性(低温環境下での強度、形状の安定性を含む)を特に優れたものとすることができ、耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)、発色性(着色濃度)を特に優れたものとすることができる。
本発明のトナーでは、前記シェル領域の平均厚さは、80〜1000nmであることが好ましい。
これにより、トナーの低温定着性を阻害することなく、トナーの発色性(着色濃度)、トナー粒子の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)等を特に優れたものとすることができる。
本発明のトナーでは、前記シェル領域の平均厚さをL[nm]、前記シェル領域に含まれる前記着色剤の平均粒径をd[nm]としたとき、0.03≦d/L≦0.25の関係を満足することが好ましい。
これにより、トナーの発色性(着色濃度)、トナー粒子の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)等を特に優れたものとすることができる。
本発明のトナーでは、前記コア領域に含まれる前記着色剤と、前記シェル領域に含まれる前記着色剤とは、組成の異なるものであることが好ましい。
これにより、低温定着性、耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を優れたものとしつつ、所望の色調(単一の着色剤では表現することが困難な色調)のトナーを提供することができる。
本発明のトナーでは、前記コア領域に含まれる前記着色剤と、前記シェル領域に含まれる前記着色剤とは、平均粒径の異なるものであることが好ましい。
これにより、トナーの低温定着性、耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を特に優れたものとすることができる。
本発明のトナーでは、前記トナー粒子の平均粒径が、3.0〜10.0μmであることが好ましい。
これにより、トナーの低温定着性を十分に優れたものとしつつ、耐久性、保存性、発色性(着色濃度)を特に優れたものとすることができる。また、高解像度の画像形成に好適に適用することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明のトナーを構成するトナー粒子の好適な実施形態を示す模式的な断面図である。
<トナー>
まず、本発明のトナーについて説明する。
トナーは、多数個のトナー粒子1で構成されている。
《トナー粒子の構造》
図1は、本発明のトナーを構成するトナー粒子の好適な実施形態を示す模式的な断面図である。
トナー粒子1は、コア領域(芯部、核)11と、コア領域11の外周を被覆するシェル領域(外殻)12とを有するものである。コア領域11およびシェル領域12は、いずれも、樹脂と着色剤とを含む材料で構成されたものである。そして、コア領域11中における着色剤の濃度は、シェル領域12中における着色剤の濃度よりも高い。すなわち、コア領域11中における着色剤の濃度をC[wt%]、シェル領域12中における着色剤の濃度をC[wt%]としたとき、C>Cの関係を満足する。このような関係を満足することにより、低温領域での記録媒体への定着のし易さ(低温定着性)を優れたものとしつつ、トナー粒子1の強度、形状の安定性(低温環境下での強度、形状の安定性を含む)を優れたものとすることができ、トナーの耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を優れたものとすることができる。また、コア領域とともにシェル領域にも着色剤を含有させることにより、トナー粒子中における着色剤の含有率を高めることができる。その結果、所定の濃度(着色濃度)の画像を形成するのに要するトナー量を少なくすることができ、画像形成に要するコストの低減、省資源の観点からも有利である。
これに対し、上記のような関係を満足しない場合には、上記のような優れた効果は得られない。
例えば、シェル領域中における着色剤の含有率がコア領域中における着色剤の含有率以上である場合(シェル領域が着色剤を含むものであり、かつ、コア領域が着色剤を含まないものである場合を含む)には、シェル領域が脆くなり、低温環境下でのトナーの強度が極端に低くなる。その結果、トナーは耐久性に劣ったものとなる。また、シェル領域中における着色剤の含有率がコア領域中における着色剤の含有率以上である場合(シェル領域が着色剤を含むものであり、かつ、コア領域が着色剤を含まないものである場合を含む)には、トナー粒子中における着色剤の含有率を十分に高めることが困難である。トナー粒子中における着色剤の含有率が不十分であると、所定の濃度の画像を形成するのに要するトナー量が多くなる。その結果、画像形成に要するコストが増大するとともに、省資源の観点からも好ましくない。また、トナー粒子中における着色剤含有率が特に低い場合には、所望の濃度の画像を形成することができなくなる可能性がある。また、シェル領域の厚さを大きくすることによりトナー粒子全体としての着色剤の含有率を保持することも考えられるが、このような場合、トナー粒子全体におけるコア領域の割合(体積率)が相対的に低下し、記録媒体に対する定着性(特に、低温定着性)、定着強度を保持することができない。
一方、コア領域が着色剤を含むものであり、かつ、シェル領域が着色剤を含まないものである場合には、シェル領域の硬度、強度が低下し、トナー粒子としての形状の安定性が低下するとともに、トナー粒子間での凝集が発生し易くなる。その結果、トナー全体としての耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)が不十分なものとなる。また、トナー粒子中における着色剤含有率を高めることが困難となり、所定の濃度の画像を形成するのに要するトナー量が多くなる。その結果、画像形成に要するコストが増大するとともに、省資源の観点からも好ましくない。また、コア領域中における着色剤の含有率を高めることによりトナー粒子全体としての着色剤の含有率を保持することも考えられるが、このような場合、コア領域を構成する樹脂として比較的ガラス転移温度の低い樹脂を用いたとしても、トナーの低温定着性が阻害される。すなわち、トナーの低温定着性を優れたものとすることができない。
以下、コア領域11およびシェル領域12について詳述する。
[コア領域]
コア領域11は、樹脂と着色剤とを含む材料で構成されたものである。これにより、トナー全体としての定着良好域を特に広いものとすることができる。
(樹脂)
コア領域11を構成する樹脂は、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂であるのが好ましい。ポリエステル系樹脂は、低温領域での定着性のし易さ(低温定着性)の向上に有利であり、また、透明性が高くかつ高グロスの画像を形成する上でも有利である。
また、コア領域11は、ポリエステル系樹脂の中でも、以下に述べるようなポリエステルAで構成されたものであるのが好ましい。
〔ポリエステルA〕
ポリエステルAは、単独の樹脂成分で構成されるものであってもよいし、2種以上の樹脂成分で構成されるものであってもよい。
ポリエステルAのガラス転移温度Tg(A)は、特に限定されないが、30〜55℃であるのが好ましく、35〜50℃であるのがより好ましい。ポリエステルAのガラス転移温度Tg(A)が前記範囲内の値であると、トナー粒子1の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を十分に優れたものとしつつ、低温領域での定着性のし易さ(低温定着性)を特に優れたものとすることができる。
また、ポリエステルAの軟化温度T1/2(A)は、特に限定されないが、60〜150℃であるのが好ましく、80〜120℃であるのがより好ましい。これにより、低温定着性を特に優れたものとしつつ、高温領域でのオフセットの発生をより効果的に防止することができる。なお、本明細書で、軟化温度T1/2とは、定荷重押出し形細管式レオメータであるフローテスター(島津製作所製、CFT−500)を用いて、以下のようにして求められる値のことを指す。すなわち、図2(a)に示すようにノズル径Dが1.0mmでノズル長さ(深さ)Lが1.0mmのノズル6を有するシリンダ7に、試料8(重量1.5g)を充填し、ノズル6と反対の側から単位面積(cm)当たり10kgの荷重をかけ、その状態で毎分6℃の昇温速度で加熱したときの、荷重面9のストロークS(荷重面9の沈み値)を測定することにより、昇温した温度とストロークSとの関係を図2(b)に示すようにして求め、ノズル6からの試料8の流出が始まって急激にストロークSが大きくなり、カーブが立ち上がったときの温度をTfb[℃]とし、また、ノズル6からの試料8の流出がほぼ終了してカーブがねたときの温度をTend[℃]としたとき、TfbでのストロークSfbとTendでのストロークSendとの中間値となるS1/2での温度を、本明細書では軟化温度T1/2として採用している。
また、ポリエステルAの重量平均分子量Mw(A)は、特に限定されないが、1000〜18万であるのが好ましく、2000〜15万であるのがより好ましい。これにより、高温領域でのオフセットの発生をより効果的に防止するとともに、揮発性有機化合物量を特に少ないものとすることができる。
ポリエステルAの酸価AV(A)は、特に限定されないが、1.0〜30.0KOHmg/gであるのが好ましく、3.0〜20.0KOHmg/gであるのがより好ましい。ポリエステルAの酸価AV(A)が前記範囲内の値であると、トナーの保存性を十分に優れたものとしつつ、トナーの記録媒体への定着強度を特に優れたものとすることができる。
ポリエステルAは、後述するシェル領域12を構成する樹脂(特に、ポリエステルB)とは、異なる組成を有するものであるのが好ましい。これにより、例えば、トナーの低温定着性を特に優れたものとしつつ、トナーの保存性(耐熱保存性、長期保存性等)、耐久性等を特に優れたものとすることができる。
ポリエステル系樹脂は、一般に、多塩基酸成分と多価アルコール成分とが脱水縮合した構成を有している。
ポリエステルAを構成する多塩基酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式カルボン酸類等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの多塩基酸の中でも、芳香族カルボン酸を使用するのが好ましい。
ポリエステルAを構成する多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等の脂環式ジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール類等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの多価アルコールの中でも、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、芳香族ジオール類がより好ましい。
なお、ポリエステルAは、多塩基酸成分、多価アルコール成分以外の構成成分(構成原料)を含むものであってもよい。例えば、ポリエステルAは、構成成分(構成モノマー)として、モノカルボン酸および/またはモノアルコールを含むものであってもよい。これにより、例えば、ポリエステルAの酸価を好適に調整されたものとすることができる。モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、無水酢酸、安息香酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸等が挙げられる。また、モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、フェノール等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ポリエステルAは、構成成分として、1分子中に3個以上のカルボキシル基を有する多塩基酸成分、および/または、1分子中に3個以上の水酸基を有する多価アルコール成分を含むものであってもよい。
また、ポリエステルAは、構成成分として、多価エポキシ化合物を含むものであってもよい。これにより、ポリエステルAを好適な架橋構造を有するものとすることができる。多価エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラキス1,1,2,2(p−ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体(共重合体を含む)、エポキシ化レゾルシノール−アセトン縮合物、部分エポキシ化ポリブタジエン、半乾性もしくは乾性脂肪酸エステルエポキシ化合物等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルが好ましい。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、大日本インキ化学工業社製のエピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、エピクロン3050等が挙げられ、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、大日本インキ化学工業社製のエピクロン830、エピクロン520等が挙げられ、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、大日本インキ化学工業社製のエピクロンN−660、エピクロンN−665、エピクロンN−667、エピクロンN−670、エピクロンN−673、エピクロンN−680、エピクロンN−690、エピクロンN−695等が挙げられ、フェノールノボラック型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、大日本インキ化学工業社製のエピクロンN−740、エピクロンN−770、エピクロンN−775、エピクロンN−865等が挙げられる。また、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、あるいはアクリル共重合体、スチレンとの共重合体等が挙げられる。
また、ポリエステルAは、構成成分として、モノエポキシ化合物を含むものであってもよい。これにより、定着性、高温での耐オフセット性を特に優れたものとすることができる。モノエポキシ化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエステル、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、α−オレフィンオキサイド、モノエポキシ脂肪酸アルキルエステル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、アルキルグリシジルエステルが好ましい。アルキルグリシジルエステルの具体例としては、例えば、ネオデカン酸グリシジルエステル(シェルジャパン社製、カージュラE)等が挙げられる。
ポリエステルAは、上記の多価アルコール成分、多塩基酸成分等の成分を用いて縮合反応させることにより、製造することができる。例えば、上記の成分を、温度計、攪拌器、流下式コンデンサーを備えた反応容器に配合し、窒素等の不活性ガスの存在下で150〜250℃で加熱し、さらにその後、減圧雰囲気下で反応を進行させ、所定の物性値に達した時点で反応を停止させ、冷却することにより、目的とする反応物(ポリエステルA)を得ることができる。このように、減圧雰囲気下で反応を行うことにより、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去するとともに、未反応原料が生成物としてのポリエステルA中に残存するのを効果的に防止することができる。これにより、ポリエステルAとしての揮発性有機化合物(VOC)量を抑制することができる。
ポリエステルAの合成は、例えば、触媒を用いて行ってもよい。触媒(エステル化触媒)としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド等の有機金属;テトラブチルチタネート等の金属アルコキシド等が挙げられる。また、使用するカルボン酸成分が低級アルキルエステルである場合には、エステル交換触媒を使用することができる。エステル交換触媒としては、例えば、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸マグネシウム等の金属酢酸塩;酸化亜鉛、酸化アンチモン等の金属酸化物;テトラブチルチタネート等の金属アルコキシド等が挙げられる。触媒の添加量については、原材料の総量に対して0.01〜1wt%の範囲とするのが好ましい。
コア領域11は、ポリエステルAとして、直鎖型ポリエステル系樹脂を含むものであるのが好ましい。これにより、高温領域でのオフセットを確実に防止し、トナー粒子1の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を十分に優れたものとしつつ、低温領域での定着性のし易さ(低温定着性)を特に優れたものとすることができる。
特に、コア領域11は、ポリエステルAとして、直鎖型ポリエステル系樹脂および架橋型ポリエステル系樹脂を含むものであるのが好ましい。これにより、高温領域でのオフセットをより確実に防止し、トナー粒子1の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を優れたものとしつつ、低温領域での定着性のし易さ(低温定着性)を特に優れたものとすることができる。
(着色剤)
コア領域11を構成する着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、例えば、カーボンブラック、スピリットブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)、マグネタイト、チタンブラック、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、カルコオイルブルー、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ファイナルイエローグリーンG、ローダミン6G、キナクリドン、ローズベンガル(C.I.No.45432)、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー5:1、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー162、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、金属錯塩染料、シリカ、酸化アルミニウム、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料等が挙げられる。また、コア領域11を構成する着色剤は、実質的に単一の物質(純物質)からなるものであってもよいし、複数種の物質の混合物であってもよい。
上述したように、コア領域11中における着色剤の濃度C[wt%]は、シェル領域12中における着色剤の濃度C[wt%]との間で、C>Cの関係を満足するものであるが、特に、以下のような条件を満足するものであるのが好ましい。
すなわち、コア領域11中における着色剤の濃度Cは、6.0〜22.0wt%であるのが好ましく、7.0〜16.0wt%であるのがより好ましい。コア領域11中における着色剤の濃度Cが前記範囲内の値であると、トナーの発色性(着色濃度)を十分に高いものとしつつ、トナーの低温定着性を特に優れたものとすることができる。
また、コア領域11中に含まれる着色剤(第1の着色剤)の平均粒径は、10〜100nmであるのが好ましく、20〜80nmであるのがより好ましい。これにより、トナーの発色性を十分に優れたものとしつつ、トナーの低温定着性を特に優れたものとすることができる。なお、本明細書で、平均粒径とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒径のことを指す。
(その他の成分)
また、コア領域11には、上記以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、ポリエステルA以外の樹脂、ワックス、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。
樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられる。
ワックスとしては、例えば、オゾケライト、セルシン、パラフィンワックス、マイクロワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、フィッシャー・トロプシュワックス等の炭化水素系ワックス、カルナバワックス、ライスワックス、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、キャンデリラワックス、綿ロウ、木ロウ、ミツロウ、ラノリン、モンタンワックス、脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等のエステル系ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス等のオレフィン系ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド等のアミド系ワックス、ラウロン、ステアロン等のケトン系ワックス、エーテル系ワックス等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、ベンジル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、含金属ビスアゾ染料、カッリクスアレン型のフェノール系縮合物、環状ポリサッカライド、トリメチルエタン系化合物、カテコールの金属塩、ニグロシン化合物、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、オニウム化合物、トニフェニルメタン系化合物、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフニン酸等が挙げられる。
磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたもの等が挙げられる。
また、コア領域11の構成材料(成分)としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いてもよい。
また、トナー粒子1中においてコア領域11の占める割合は、40〜99.5vol%であるのが好ましく、60〜93vol%であるのがより好ましい。コア領域11の占める割合が前記範囲内の値であると、トナー粒子1の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)等を十分に優れたものとしつつ、コア領域11の構成材料の特性をより効果的に発揮させることができる。
また、コア領域11の平均粒径Dは、2.0〜9.8μmであるのが好ましく、3.0〜5.5μmであるのがより好ましい。コア領域11の平均粒径Dが前記範囲内の値であると、コア領域11中に、十分な量の着色剤を含有させることができ、トナーの発色性(着色濃度)を特に優れたものとすることができる。また、コア領域11の平均粒径Dが前記範囲内の値であると、高解像度の画像形成に好適に適用することができるとともに、低温定着性の向上に有利であり、また、コア領域11の構成材料の特性およびシェル領域12の構成材料の特性を、より確実に発揮させることができる。
コア領域11は、いかなる方法で形成されたものであってもよいが、複数個の微粒子が結合することにより形成されたものであるのが好ましい。これにより、トナー粒子1の円形度を適度に高いものとすることができ、トナーの転写効率、クリーニング性を特に優れたものとすることができる。また、トナーの低温定着性を特に優れたものとすることができる。
[シェル領域]
シェル領域12は、コア領域11とは異なる組成を有し、コア領域11の外周を被覆するように設けられたものである。このように、コア領域11を被覆するシェル領域を有することにより、例えば、トナー粒子1の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を十分に優れたものとしつつ、優れた定着性を保持できる温度領域(オフセットの発生を十分に防止できる温度領域)である定着良好域を十分に広いものとすることができ、高温領域でのオフセットを確実に防止し、低温領域での定着性のし易さ(低温定着性)を優れたものとすることができる。
また、シェル領域12は、樹脂と着色剤とを含む材料で構成されたものである。このように、シェル領域12に着色剤を含むことにより、トナーの耐久性、保存性、トナーの発色性(着色濃度)を特に優れたものとすることができる。
(樹脂)
シェル領域12を構成する樹脂は、特に限定されないが、コア領域11を構成する樹脂とは異なる組成を有するものであるのが好ましい。これにより、例えば、トナーの低温定着性を特に優れたものとしつつ、トナーの保存性(耐熱保存性、長期保存性等)、耐久性等を特に優れたものとすることができる。
また、シェル領域12を構成する樹脂は、ポリエステル系樹脂で構成されたものであるのが好ましい。これにより、トナー粒子1の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を特に優れたものとすることができる。特に、コア領域11とともにシェル領域12が、ポリエステル系樹脂を含む材料で構成されたものであることにより、トナー粒子1の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を十分に優れたものとしつつ、低温領域での定着性のし易さ(低温定着性)を特に優れたものとすることができる。また、シェル領域12は、ポリエステル系樹脂の中でも、以下に述べるようなポリエステルBで構成されたものであるのが好ましい。
〔ポリエステルB〕
ポリエステルBは、単独の樹脂成分で構成されるものであってもよいし、2種以上の樹脂成分で構成されるものであってもよい。
ポリエステルBのガラス転移温度Tg(B)は、特に限定されないが、前述したポリエステルAのガラス転移温度Tg(A)よりも低いものであるのが好ましい。これにより、高温領域でのオフセットを確実に防止し、トナー粒子1の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を十分に優れたものとしつつ、低温領域での定着性のし易さ(低温定着性)を特に優れたものとすることができる。
ポリエステルBのガラス転移温度Tg(B)は、具体的には、60〜100℃であるのが好ましく、65〜90℃であるのがより好ましい。ポリエステルBのガラス転移温度Tg(B)が前記範囲内の値であると、優れた定着性を保持できる温度領域(オフセットの発生を十分に防止できる温度領域)である定着良好域を十分に広いものとしつつ、トナー粒子1の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)等を特に優れたものとすることができる。
また、ポリエステルBの軟化温度T1/2(B)は、特に限定されないが、ポリエステルAの軟化温度T1/2(A)よりも低いものであるのが好ましく、具体的には、60〜220℃であるのが好ましく、80〜200℃であるのがより好ましい。ポリエステルBの軟化温度T1/2(B)が前記範囲内の値であると、高温領域でのオフセットの発生をより効果的に防止するとともに、揮発性有機化合物量を特に少ないものとすることができる。
また、ポリエステルBの重量平均分子量Mw(B)は、特に限定されないが、ポリエステルAの重量平均分子量Mw(A)よりも大きいものであるのが好ましい。これにより、トナー粒子1の耐久性、保存性を優れたものとすることができる。
ポリエステルBの重量平均分子量Mw(B)は、具体的には、10万〜40万であるのが好ましく、15万〜25万であるのがより好ましい。ポリエステルBの重量平均分子量Mw(B)が前記範囲内の値であると、高温領域でのオフセットの発生をより効果的に防止するとともに、揮発性有機化合物量を特に少ないものとすることができる。
ポリエステルBの酸価AV(B)は、特に限定されないが、ポリエステルAの酸価AV(A)よりも大きいものであるのが好ましい。これにより、コア領域11の構成材料とシェル領域12の構成材料とが相溶するのをより確実に防止することができ、トナー粒子1を、コア領域11とシェル領域12とが確実に分離した構造(コアシェル構造)を有するものとすることができる。
ポリエステルBの酸価AV(B)は、具体的には、6.0〜20.0KOHmg/gであるのが好ましく、8.0〜18.0KOHmg/gであるのがより好ましい。ポリエステルBの酸価AV(B)が前記範囲内の値であると、コア領域11の構成材料とシェル領域12の構成材料とが相溶するのをより確実に防止することができ、トナー粒子1を、コア領域11とシェル領域12とが確実に分離した構造(コアシェル構造)を有するものとすることができる。また、後に詳述するようなトナーの製造時においては、コア領域11に対応する合一粒子を、シェル領域12の構成材料で構成された被膜により、確実に被覆することができ、コアシェル構造を有するトナー粒子1を効率よく製造することができる。
トナー粒子1中におけるポリエステルBの含有率は、特に限定されないが、1〜30wt%であるのが好ましく、2〜18wt%であるのがより好ましい。ポリエステルBの含有率が前記範囲内の値であると、トナー粒子1中において、前述したポリエステルAで構成されたコア領域11と、ポリエステルBで構成されたシェル領域12とをより確実に分離させることができ、ポリエステルAおよびポリエステルBの特性をより効果的に発揮させることができる。より具体的には、トナーの低温定着性を十分に優れたものとしつつ、高温領域でのオフセットをより確実に防止し、トナー粒子1の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)等を特に優れたものとすることができる。
また、ポリエステルBを構成する多塩基酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式カルボン酸類等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの多塩基酸の中でも、芳香族カルボン酸を使用するのが好ましい。
また、ポリエステルBを構成する多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等の脂環式ジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール類等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの多価アルコールの中でも、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、芳香族ジオール類がより好ましい。
また、ポリエステルBは、構成成分として、1分子中に3個以上のカルボキシル基を有する多塩基酸成分、および/または、1分子中に3個以上の水酸基を有する多価アルコール成分を含むものであってもよい。
なお、ポリエステルBは、多塩基酸成分、多価アルコール成分以外の構成成分(構成原料)を含むものであってもよい。例えば、ポリエステルBは、構成成分(構成モノマー)として、モノカルボン酸および/またはモノアルコールを含むものであってもよい。これにより、例えば、ポリエステルBの酸価を好適に調整されたものとすることができる。モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、無水酢酸、安息香酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸等が挙げられる。また、モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、フェノール等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ポリエステルBは、構成成分として、多価エポキシ化合物を含むものであってもよい。これにより、ポリエステルBを好適な架橋構造を有するものとすることができる。多価エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラキス1,1,2,2(p−ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体(共重合体を含む)、エポキシ化レゾルシノール−アセトン縮合物、部分エポキシ化ポリブタジエン、半乾性もしくは乾性脂肪酸エステルエポキシ化合物等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルが好ましい。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、大日本インキ化学工業社製のエピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、エピクロン3050等が挙げられ、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、大日本インキ化学工業社製のエピクロン830、エピクロン520等が挙げられ、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、大日本インキ化学工業社製のエピクロンN−660、エピクロンN−665、エピクロンN−667、エピクロンN−670、エピクロンN−673、エピクロンN−680、エピクロンN−690、エピクロンN−695等が挙げられ、フェノールノボラック型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、大日本インキ化学工業社製のエピクロンN−740、エピクロンN−770、エピクロンN−775、エピクロンN−865等が挙げられる。また、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、あるいはアクリル共重合体、スチレンとの共重合体等が挙げられる。
また、ポリエステルBは、構成成分として、モノエポキシ化合物を含むものであってもよい。これにより、定着性、高温での耐オフセット性を特に優れたものとすることができる。モノエポキシ化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエステル、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、α−オレフィンオキサイド、モノエポキシ脂肪酸アルキルエステル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、アルキルグリシジルエステルが好ましい。アルキルグリシジルエステルの具体例としては、例えば、ネオデカン酸グリシジルエステル(シェルジャパン社製、カージュラE)等が挙げられる。
ポリエステルBは、上記の多価アルコール成分、多塩基酸成分等の成分を用いて縮合反応させることにより、製造することができる。例えば、上記の成分を、温度計、攪拌器、流下式コンデンサーを備えた反応容器に配合し、窒素等の不活性ガスの存在下で150〜250℃で加熱し、さらにその後、減圧雰囲気下で反応を進行させ、所定の物性値に達した時点で反応を停止させ、冷却することにより、目的とする反応物(ポリエステルB)を得ることができる。このように、減圧雰囲気下で反応を行うことにより、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去するとともに、未反応原料が生成物としてのポリエステルB中に残存するのを効果的に防止することができる。これにより、ポリエステルBとしての揮発性有機化合物(VOC)量を抑制することができる。
ポリエステルBの合成は、例えば、触媒を用いて行ってもよい。触媒(エステル化触媒)としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド等の有機金属;テトラブチルチタネート等の金属アルコキシド等が挙げられる。また、使用するカルボン酸成分が低級アルキルエステルである場合には、エステル交換触媒を使用することができる。エステル交換触媒としては、例えば、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸マグネシウム等の金属酢酸塩;酸化亜鉛、酸化アンチモン等の金属酸化物;テトラブチルチタネート等の金属アルコキシド等が挙げられる。触媒の添加量については、原材料の総量に対して0.01〜1wt%の範囲とするのが好ましい。
上述したポリエステルAおよびポリエステルBは、以下のような関係を満足するものであるのが好ましい。
すなわち、ポリエステルBのガラス転移温度Tg(B)と、ポリエステルAのガラス転移温度Tg(A)との差Tg(B)−Tg(A)は、5〜50℃であるのが好ましく、7〜40℃であるのがより好ましい。これにより、高温領域でのオフセットを確実に防止し、トナー粒子1の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を十分に優れたものとしつつ、低温領域での定着性のし易さ(低温定着性)を特に優れたものとすることができる。
また、ポリエステルBの重量平均分子量Mw(B)と、ポリエステルAの重量平均分子量Mw(A)との比率Mw(B)/Mw(A)は、3〜80であるのが好ましく、4〜60であるのがより好ましい。これにより、トナー粒子中において、ポリエステルAで構成されたコア領域11と、ポリエステルBで構成されたシェル領域12とをより確実に分離させることができ、ポリエステルAおよびポリエステルBの特性をより効果的に発揮させることができる。より具体的には、トナー粒子1の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)等を十分に優れたものとしつつ、トナーの低温定着性を特に優れたものとすることができる。
また、トナー中に含まれるポリエステルAの含有量α[wt%]、トナー中に含まれるポリエステルBの含有量β[wt%]との比率α/βは、3〜10であるのが好ましく、4〜8であるのがより好ましい。これにより、高温領域でのオフセットを確実に防止し、トナー粒子の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を十分に優れたものとしつつ、低温領域での定着性のし易さ(低温定着性)を特に優れたものとすることができる。
(着色剤)
シェル領域12を構成する着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、例えば、カーボンブラック、スピリットブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)、マグネタイト、チタンブラック、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、カルコオイルブルー、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ファイナルイエローグリーンG、ローダミン6G、キナクリドン、ローズベンガル(C.I.No.45432)、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー5:1、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー162、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、金属錯塩染料、シリカ、酸化アルミニウム、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料等が挙げられる。また、シェル領域12を構成する着色剤は、実質的に単一の物質(純物質)からなるものであってもよいし、複数種の物質の混合物であってもよい。
上述したように、シェル領域12中における着色剤の濃度C[wt%]は、コア領域11中における着色剤の濃度C[wt%]との間で、C>Cの関係を満足するものであるが、特に、以下のような条件を満足するものであるのが好ましい。
すなわち、シェル領域12中における着色剤の濃度Cは、0.5〜6.5wt%であるのが好ましく、0.8〜5.8wt%であるのがより好ましい。シェル領域12中における着色剤の濃度Cが前記範囲内の値であると、トナー粒子1の強度、形状の安定性(低温環境下での強度、形状の安定性を含む)を特に優れたものとすることができ、トナーの耐久性、保存性を特に優れたものとすることができる。また、トナーの発色性(着色濃度)を特に優れたものとすることができる。
また、シェル領域12中に含まれる着色剤(第2の着色剤)の平均粒径は、1〜50nmであるのが好ましく、3〜30nmであるのがより好ましい。これにより、トナーの発色性を十分に優れたものとしつつ、トナーの保存性(耐熱保存性、長期保存性等)、耐久性等を特に優れたものとすることができる。
シェル領域12に含まれる着色剤(第2の着色剤)は、コア領域11に含まれる着色剤(第1の着色剤)との間で、C>Cの関係を満足するものであればよいが、以下のような関係を満足するものであるのが好ましい。
コア領域11中における着色剤の濃度C[wt%]と、シェル領域12中における着色剤の濃度C[wt%]とは、C>Cの関係を満足するものであればよいが、1.3≦C/C≦20.0の関係を満足するのが好ましく、1.8≦C/C≦17.0の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、トナーの低温定着性を十分に優れたものとしつつ、トナー粒子1の強度、形状の安定性(低温環境下での強度、形状の安定性を含む)を特に優れたものとすることができ、耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)、発色性(着色濃度)を特に優れたものとすることができる。
また、コア領域11中に含まれる着色剤(第1の着色剤)と、シェル領域12中に含まれる着色剤(第2の着色剤)とは、平均粒径の異なるものであるのが好ましい。特に、シェル領域12中に含まれる着色剤(第2の着色剤)の平均粒径が、コア領域11中に含まれる着色剤(第1の着色剤)の平均粒径よりも小さいものであるのがより好ましい。これにより、トナーの低温定着性、耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を特に優れたものとすることができる。
特に、コア領域11中に含まれる着色剤(第1の着色剤)の平均粒径をd[nm]、シェル領域12中に含まれる着色剤(第2の着色剤)の平均粒径をd[nm]としたとき、0.05≦d/d≦0.80の関係を満足するのが好ましく、0.15≦d/d≦0.40の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、トナーの低温定着性、耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を特に優れたものとすることができる。
また、コア領域11中に含まれる着色剤(第1の着色剤)と、シェル領域12中に含まれる着色剤(第2の着色剤)とは、異なる組成を有するものであるのが好ましい。これにより、低温定着性、耐久性、保存性を優れたものとしつつ、所望の色調(単一の着色剤では表現することが困難な色調)のトナーを提供することができる。
ところで、従来においては、後述するような液相中での造粒を経て形成されるトナー粒子に異なる複数種の着色剤を含有させようとした場合、各着色剤を所望の割合で確実に含有させるのが困難であり、微妙な色調を確実に表現するのが困難であった。これは、トナーの製造に用いる液体(分散媒)に対する各着色剤の親和性、樹脂に対する各着色剤の親和性が異なること等により、着色剤の種類によって、液体(分散媒)中への流出の度合いが異なるためであると考えられる。これに対し、本発明のように、コア領域およびシェル領域に、着色剤を含有させた上で、さらに、コア領域に含まれる着色剤と、シェル領域に含まれる着色剤との組成を異なるものとすることにより、上記のような流出による影響を排除することができ、所望の色調のトナーを容易かつ確実に得ることができる。
(その他の成分)
また、シェル領域12には、上記以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、ポリエステルB以外の樹脂、ワックス、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。また、シェル領域12の構成材料(成分)としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いてもよい。
樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられる。
ワックスとしては、例えば、オゾケライト、セルシン、パラフィンワックス、マイクロワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、フィッシャー・トロプシュワックス等の炭化水素系ワックス、カルナバワックス、ライスワックス、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、キャンデリラワックス、綿ロウ、木ロウ、ミツロウ、ラノリン、モンタンワックス、脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等のエステル系ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス等のオレフィン系ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド等のアミド系ワックス、ラウロン、ステアロン等のケトン系ワックス、エーテル系ワックス等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、ベンジル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、含金属ビスアゾ染料、カッリクスアレン型のフェノール系縮合物、環状ポリサッカライド、トリメチルエタン系化合物、カテコールの金属塩、ニグロシン化合物、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、オニウム化合物、トニフェニルメタン系化合物、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフニン酸等が挙げられる。
磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたもの等が挙げられる。
また、シェル領域12の構成材料(成分)としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いてもよい。
また、シェル領域12の厚さは、特に限定されないが、80〜1000nmであるのが好ましく、120〜600nmであるのがより好ましい。シェル領域12の厚さが前記範囲内の値であると、トナーの低温定着性を阻害することなく、シェル領域12に十分な量の着色剤(第2の着色剤)を含有させることができるとともに、トナーの発色性(着色濃度)、トナー粒子1の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)等を特に優れたものとすることができる。
また、シェル領域12の平均厚さをL[nm]、シェル領域12に含まれる着色剤(第2の着色剤)の平均粒径をd[nm]としたとき、0.03≦d/L≦0.25の関係を満足するのが好ましく、0.04≦d/L≦0.20の関係を満足するのがより好ましい。これにより、トナーの発色性(着色濃度)、トナー粒子1の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)等を特に優れたものとすることができる。
上記のように、コア領域11およびシェル領域12に、それぞれ、着色剤を含むことにより、トナーの低温定着性などを十分に優れたものとしつつ、トナー粒子1全体としての着色剤の含有率を高めることができる。これにより、所定の濃度(着色濃度)の画像を形成するのに要するトナー量を少なくすることができ、画像形成に要するコストの低減を図ることができ、また、省資源の観点からも有利である。
トナー粒子1全体に対する着色剤の含有率は、4.5〜20.0wt%であるのが好ましく、6.5〜15.0wt%であるのがより好ましい。これにより、上記のような効果をより顕著に発揮させることができる。
[コア領域、シェル領域以外の構成]
また、トナー粒子1は、コア領域11、シェル領域12以外の構成を有するものであってもよい。例えば、上記のような構成のトナー母粒子(コア領域11およびシェル領域12を有するトナー母粒子)の表面付近に、外添剤が付与されたものであってもよい。外添剤としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、チタニア、酸化亜鉛、マグネタイト等の金属酸化物、窒化珪素等の窒化物、炭化珪素等の炭化物、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、脂肪族金属塩等の無機材料で構成された微粒子、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、脂肪族金属塩等の有機材料で構成された微粒子やこれらの複合物で構成された微粒子等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、外添剤としては、上記のような微粒子の表面に、HMDS、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、フッ素含有シラン系カップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施したものを用いてもよい。
《トナー粒子の形状》
上記のようなトナー粒子1の平均粒径は、特に限定されないが、3.0〜10.0μmであるのが好ましく、3.0〜6.2μmであるのがより好ましい。トナー粒子1の平均粒径が前記範囲内の値であると、トナーの低温定着性を十分に優れたものとしつつ、耐久性、保存性、発色性(着色濃度)を特に優れたものとすることができる。また、高解像度の画像形成に好適に適用することができる。
トナーを構成するトナー粒子は、均一な形状を有し、粒度分布のシャープな(幅の小さい)ものであるのが好ましい。
具体的には、下記式(I)で表されるトナー粒子についての平均円形度Rは、0.95〜0.99であるのが好ましい。平均円形度Rが前記範囲内の値であると、トナーの転写効率を特に優れたものとしつつ、画像形成装置内におけるクリーニング性を十分に優れたものとすることができる。
R=L/L・・・(I)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円(完全な幾何学的円)の周囲長を表す。)
また、トナー粒子についての円形度の標準偏差は、0.04以下であるのが好ましい。このように、円形度の標準偏差が十分に小さいと、帯電特性、定着特性等のばらつきが特に小さくなり、トナー全体としての、信頼性がさらに向上する。
また、トナー粒子の粒径の標準偏差(σ(D))をトナー粒子の平均粒径(D)で除した数値(σ(D)/D)×100として表されるトナー粒子の粒径についての変動係数は、24.0以下であるのが好ましく、22.0以下であるのがより好ましい。これにより、トナー粒子の粒度分布は特にシャープなものとなり、トナーを用いて形成される画像を、より良好なものとすることができる。また、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等のばらつきを特に小さいものとすることができ、トナー全体としての信頼性を特に優れたものとすることができる。また、例えば、トナーの製造時においては、トナーの乾燥を容易かつ確実に行うことができ、トナー中の含水量を抑制することができる。
また、トナー粒子についての50%体積粒径をDv(50)[μm]、50%個数粒径をDn(50)[μm]としたとき、Dv(50)/Dn(50)の値は、1.00〜1.25であるのが好ましく、1.05〜1.15であるのがより好ましい。これにより、トナーを用いて形成される画像を、より良好なものとすることができる。
なお、Dv(50)、Dn(50)の値は、例えば、コールター社製マルチサイザーII型(アパーチャーチューブ径:100μm)を用いた測定により求めることができる。
上記のようなトナー粒子は、後述するような方法により、容易かつ確実に得ることができる。
上記のようなトナー粒子1は、いかなる方法で製造されたものであってもよいが、O/W型の乳化液中に含まれる複数個の分散質を合一させること(特に、後述するような方法)により製造されたものであるのが好ましい。これにより、トナー粒子1の円形度を適度に高いものとすることができ、トナーの転写効率、クリーニング性を特に優れたものとすることができる。また、トナーの低温定着性を特に優れたものとすることができる。また、従来の方法において、複数種の着色剤を含むトナーを、O/W型の乳化液中に含まれる複数個の分散質を合一させる方法を用いて製造しようとした場合、着色剤の種類による分散媒(水系分散媒)への流出の度合いが大きく異なるため、各着色剤を所望の割合で含むトナーを製造するのが極めて困難であったが、本発明によれば、O/W型の乳化液を用いる製造方法においても、各着色剤を所望の割合で含むトナーを確実に製造することができる。
本発明のトナーは、一成分系現像剤として用いられるものであってもよいし、二成分型現像剤として用いられるものであってもよい。また、本発明のトナーは、乾式トナーとして用いられるものであってもよいし、液体現像剤に用いられるものであってもよい。
<トナーの製造方法>
次に、上述したようなトナーの製造方法の好適な実施形態について説明する。以下の説明では、コア領域が前述したポリエステルAを含む材料で構成されたものであり、かつ、シェル領域が前述したポリエステルBを含む材料で構成されたものとして説明する。
本実施形態の製造方法は、樹脂材料と着色剤(第1の着色剤)とを含む材料で構成された分散質が分散(乳化および/または懸濁)した分散液(乳化懸濁液)を調製する工程(乳化懸濁液調製工程)と、複数個の分散質を合一させ、合一粒子を得る工程(合一工程)と、合一粒子の表面を、樹脂材料と着色剤(第2の着色剤)とを含む材料で構成された被膜で被覆する工程(被覆工程)とを有する。
[乳化懸濁液調製工程(分散液調製工程)]
まず、乳化懸濁液調製工程について説明する。
本工程で調製する乳化懸濁液は、トナー粒子1のコア領域11の形成に用いるものである。
乳化懸濁液は、いかなる方法で調製してもよいが、例えば、ポリエステルAと着色剤(第1の着色剤)と有機溶剤(有機溶媒)とを含む液体である着色樹脂液を、水性媒体と混合することにより調製することができる。
着色樹脂液を構成する樹脂材料としては、前述したコア領域11の構成材料としてのポリエステルAまたはその前駆体(例えば、プレポリマー、モノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー等)を用いることができる。
また、有機溶剤(有機溶媒)としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン系溶媒、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−メトキシエタノール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、2−メトキシエタノール等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ジデカン、メチルシクロヘキセン、イソプレン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、四塩化炭素等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル等のエステル系溶媒、アクリロニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を混合したものを用いることができる。
有機溶剤としては、25℃での100重量部の水に対する溶解度が、5〜45重量部のものであるのが好ましく、5〜40重量部のものであるのがより好ましい。
また、有機溶剤の沸点(常圧(1気圧)での沸点。以下、同様。)は、水の沸点よりも低いのが好ましい。これにより、有機溶剤の回収を効率良く行うことができる。
上記のような条件を満足する有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒等が挙げられる。中でも、メチルエチルケトン、酢酸エチルは、ポリエステル系樹脂(ポリエステルA)の溶解性、分散性が高いため、好ましい。
着色樹脂液は、例えば、樹脂材料と着色剤(第1の着色剤)と有機溶剤と含む材料を、高速攪拌機等の攪拌機により混合することにより得ることができる。また、着色樹脂液は、例えば、樹脂材料と着色剤(第1の着色剤)とを含む組成物を予め混練しておき、混練により得られた混練物と、有機溶剤とを混合することにより、調製してもよい。着色樹脂液の調製に用いることのできる攪拌機としては、例えば、DESPA(浅田鉄工社製)、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼(プライミクス社製)等が挙げられる。
攪拌機を用いた混合時における翼先端速度は、例えば、4〜30m/秒であるのが好ましく、10〜25m/秒であるのがより好ましい。翼先端速度が前記範囲内の値であると、樹脂材料の有機溶剤への溶解、分散を効率良く行うことができるとともに、着色剤(第1の着色剤)の着色樹脂液中における着色剤(第1の着色剤)の分散状態をより均一なものとすることができる。これに対し、翼先端速度が前記下限値未満であると、樹脂材料、着色剤(第1の着色剤)、有機溶剤の組成等によっては、着色樹脂液中における着色剤(第1の着色剤)の微分散が不十分になる可能性がある。一方、翼先端速度が前記上限値を超えると、有機溶剤の組成等によっては、剪断による発熱が大きくなり、有機溶剤の揮発等と相まって均一な攪拌が困難になる可能性がある。
また、攪拌時における材料温度は、20〜60℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのがより好ましい。
得られる着色樹脂液中において、樹脂材料、着色剤(第1の着色剤)は、有機溶剤に溶解または分散している。
着色樹脂液中におおける固形分の含有率は、特に限定されないが、40〜75wt%であるのが好ましく、50〜73wt%であるのがより好ましい。固形分の含有率が前記範囲内の値であると、後述する乳化懸濁液を構成する分散質を、より球形度の高いもの(真球に近い形状もの)とすることができ、最終的に得られるトナー粒子1の形状を、より確実に好適なものとすることができる。
また、着色樹脂液は、乳化剤(分散剤)を含むものであってもよい。これにより、後に詳述する乳化懸濁液中における分散質の分散性を、容易に、特に優れたものとすることができる。
乳化剤としては、一般に、分散剤、分散安定剤、界面活性剤として用いられているものを適用することができる。乳化剤として適用することのできる具体的な材料としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルや、各種プルロニック系等のノニオン系乳化剤、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系乳化剤、第4級アンモニウム塩等のカチオン系乳化剤等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、乳化剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。これにより、乳化懸濁液中における分散質の分散性を特に優れたものとしつつ、最終的なトナー中に乳化剤が残存した場合であっても、トナー粒子の帯電特性に対して悪影響を及ぼすのを効果的に防止することができるとともに、VOC(揮発性有機化合物)量が増大するのを効果的に防止することができる。アルキルベンゼンスルホン酸塩が有するアルキル基としては、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノナニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられるが、ドデシル基が好ましい。すなわち、アルキルベンゼンスルホン酸塩は、ドデシルベンゼンスルホン酸塩であるのが好ましい。これにより、これにより、乳化懸濁液中における分散質の分散性をさらに優れたものとしつつ、最終的なトナー中に乳化剤が残存した場合であっても、トナー粒子の帯電特性に対して悪影響を及ぼすのをより効果的に防止することができるとともに、VOC(揮発性有機化合物)量が増大するのをより効果的に防止することができる。
使用する乳化剤の量は、固形分含有量に対し0.1〜3.0wt%であるのが好ましく、0.3〜2.0wt%であるのがより好ましい。使用する乳化剤の量が前記下限値未満であると、粗大粒子発生に対する防止効果が十分に得られない可能性がある。一方、使用する乳化剤の量が前記上限値を超えると、後述する合一工程において、分散質の合一が十分に進行せず、所定粒径より小さい微粒子が残存し、着色樹脂微粒子の収率が低下する可能性がある。
なお、着色樹脂液中には、樹脂材料、着色剤(第1の着色剤)、有機溶剤以外の成分として、前述したようなワックス、帯電制御剤、磁性粉末等を含むものであってもよい。
また、着色樹脂液の調製においては、調製すべき着色樹脂液の構成成分をすべて同時に混合してもよいし、予め、調製すべき着色樹脂液の構成成分のうち一部を混合して混合物(マスター)を得、その後、当該混合物(マスター)を、他の成分と混合してもよい。
例えば、着色剤(第1の着色剤)と樹脂材料とを混練し、混練物としての着色剤マスターを得た後、着色剤マスターと、樹脂材料(追加樹脂)と、有機溶剤とを、混合することにより、着色樹脂液を調製してもよい。これにより、各成分が均一に混ざり合った着色樹脂液を、より確実に得ることができる。
ポリエステルAが重量平均分子量の異なる少なくとも3種の樹脂成分を含む場合、すなわち、ポリエステルAが、第1の樹脂成分と、前記第1の樹脂成分よりも重量平均分子量の大きい第2の樹脂成分と、前記第1の樹脂成分よりも重量平均分子量の小さい第3の樹脂成分とを含むものである場合、前記第1の樹脂成分を着色剤マスターの調製に用い、当該着色剤マスターを、前記第2の樹脂成分、前記第3の樹脂成分、および有機溶剤と混合することにより、着色樹脂溶液を調製してもよい。これにより、乳化懸濁液中において、ポリエステルAを含む材料で構成された分散質中に着色剤(第1の着色剤)をより確実に内包させることができる。その結果、所望の着色濃度のトナー粒子を容易かつ確実に製造することができる。
ポリエステルAとして、上記のような第1の樹脂成分、第2の樹脂成分、および、第3の樹脂成分を含むものを用いる場合、各樹脂成分の重量平均分子量は、以下のような条件を満足するものであるのが好ましい。すなわち、第1の樹脂成分の重量平均分子量は、1000〜5500であるのが好ましく、1500〜5000であるのがより好ましい。また、第2の樹脂成分の重量平均分子量は、5500〜100000であるのが好ましく、7000〜80000であるのがより好ましい。また、第3の樹脂成分の重量平均分子量は、100000〜300000であるのが好ましく、120000〜280000であるのがより好ましい。これらの条件を満足することにより、乳化懸濁液中において、ポリエステルAを含む材料で構成された分散質中に着色剤(第1の着色剤)をより確実に内包させることができ、所望の着色濃度のトナー粒子をより確実に製造することができる。
また、着色樹脂液の構成成分としてワックスを用いる場合、例えば、ワックスと、樹脂材料と、有機溶剤とを含む材料を混合し、ワックスマスターを得、このワックスマスターを、着色剤マスター、樹脂材料(追加樹脂)および有機溶剤と混合することにより、着色樹脂液を調製してもよい。また、ワックスマスターの調製においては、ワックスの粒子が水性分散媒中に分散したワックス分散液(いわゆる、ワックスエマルジョン)を用いてもよい。
上記のような着色樹脂液を、水性媒体と混合することにより乳化懸濁液を調製する。
水性媒体としては、主として水で構成されたものを用いることができる。
水性媒体中には、例えば、水との相溶性に優れる溶媒(例えば、25℃での100重量部の水に対する溶解度が、50重量部以上である溶媒)を含むものであってもよい。
また、水性媒体は、乳化剤(分散剤)を含むものであってもよい。
また、乳化懸濁液の調製に際して、例えば、中和剤を用いてもよい。これにより、例えば、ポリエステル系樹脂(ポリエステルA)が有する官能基(カルボキシル基)を中和することができ、調製される乳化懸濁液中における分散質の形状、大きさの均一性、分散質の分散性を特に優れたものとすることができる。また、中和剤を用いることにより、乳化剤の使用量を抑制したり、乳化剤等を用いなくても、分散質の分散性を十分に優れたものとすることができるため、乳化剤等を用いることによる不都合の発生を防止することができる。例えば、比較的多量の乳化剤等を用いた場合、乳化懸濁液の調製時において、比較的高い剪断力が必要となり、これにより、粗大粒子(粗大な分散質)の発生、分散質の粒度分布が広がる等の問題が発生し易いが、中和剤による中和を行うことにより、このような問題の発生を防止することができる。
中和剤は、例えば、着色樹脂液に添加されるものであってもよいし、水性媒体に添加されるものであってもよい。
また、中和剤は、乳化懸濁液の調製において、複数回に分けて添加されるものであってもよい。例えば、前述したように調製された着色樹脂液に対して中和剤を添加した後に、当該着色樹脂液(中和剤が添加された着色樹脂液)と水性媒体とを混合し、さらにその後、混合液中に中和剤を添加してもよい。これにより、着色樹脂液と水性媒体との混合時における液体の粘度上昇を効果的に抑制しつつ、分散質が均一かつ微細に分散した乳化懸濁液を容易に得ることができる。
中和剤としては、塩基性化合物を用いることができ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン等の有機塩基等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、中和剤は、上記のような化合物を含む水溶液であってもよい。
また、塩基性化合物の使用量は、ポリエステル系樹脂(ポリエステルA)が有する全カルボキシル基を中和するために必要な量の1〜3倍に相当する量(1〜3当量)が好ましく、1〜2倍に相当する量(1〜2当量)がより好ましい。これにより、異形の分散質が形成されるのを効果的に防止することができ、また、後に詳述する合一工程において得られる粒子の粒度分布を、よりシャープなものとすることができる。
本工程で得られた乳化懸濁液において水を滴下した後の水(乳化のために使用した水、ワックスマスターの調製に用いたワックス分散液(いわゆる、ワックスエマルジョン)からの水、中和塩基等を加えた水の全量)と有機溶媒との比率は、体積比で、50:50〜80:20であるのが好ましく、60:40〜80:20であるのがより好ましい。これにより、調製される乳化懸濁液中における分散質の形状、大きさの均一性、分散質の分散性を特に優れたものとすることができる。
着色樹脂液と水性媒体との混合は、いかなる方法で行うものであってもよいが、攪拌機等により着色樹脂液に剪断を加えつつ、着色樹脂液中に水性媒体を徐々に添加(滴下)することにより行い、最終的に、水性媒体中に、着色樹脂液由来の分散質が分散した分散液を得るのが好ましい。これにより、例えば、分散質が均一かつ微細に分散した乳化懸濁液を、容易かつ確実に得ることができる。
乳化懸濁液の調製に用いることのできる攪拌機としては、例えば、DESPA(浅田鉄工社製)、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼(プライミクス社製)、スラッシャ(三井鉱山社製)、キャビトロン(ユーロテック社製)等の高速攪拌機、あるいは高速分散機等が挙げられる。
攪拌機を用いた混合時における翼先端速度は、例えば、4〜30m/秒であるのが好ましく、10〜25m/秒であるのがより好ましい。翼先端速度が前記範囲内の値であると、乳化懸濁液を効率良く得ることができるとともに、乳化懸濁液中における分散質の形状、大きさのばらつきを特に小さいものとすることができ、分散質の均一分散性を特に優れたものとすることができる。これに対し、翼先端速度が前記下限値未満であると、乳化懸濁液中における分散質の微分散を十分に達成することが困難になる可能性がある。一方、翼先端速度が前記上限値を超えると、攪拌時に、着色樹脂液と水性媒体との混合液の飛散が激しくなり、不溶解物が混在する可能性がある。
また、攪拌時における材料温度は、20〜60℃であるのが好ましく、20〜50℃であるのがより好ましい。
[合一工程]
次に、複数個の分散質を合一させ、合一粒子を得る(合一工程)。得られる合一粒子(着色樹脂微粒子)は、製造すべきトナー粒子1のコア領域11に対応するものである。分散質の合一は、通常、有機溶剤を含む分散質が衝突することにより、これらが融着して進行する。
複数個の分散質を合一させる方法は、特に限定されないが、分散液中に、電解質を添加する方法が好ましい。これにより、合一粒子中に含まれる着色剤(第1の着色剤)の含有率を容易かつ確実に制御することができる。また、電解質の添加量を調節することにより、容易かつ確実に、合一粒子(着色樹脂微粒子)の粒径を制御することができる。
電解質としては、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素アンモニウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸ナトリウム等の塩や、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸等の酸性物質等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、1価のカチオンの硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム)、炭酸塩が好ましい。
電解質の添加は、複数回に分けて行ってもよい。これにより、容易かつ確実に、所望の大きさの着色樹脂微粒子(合一粒子)を得ることができるとともに、得られる着色樹脂微粒子(合一粒子)の円形度を確実に、十分に大きいものとすることができる。
本工程で添加される電解質の量は、特に限定されないが、電解質が添加される分散液の固形分100重量部に対し、0.1〜20重量部であるのが好ましく、0.2〜10重量部であるのがより好ましい。
また、電解質は、水溶液の状態で添加されるのが好ましい。これにより、速やかに分散液全体に、電解質を拡散させることができるとともに、電解質の添加量を容易かつ確実に制御することができる。
本工程における処理温度は、特に限定されないが、10〜50℃であるのが好ましく、15〜40℃であるのがより好ましい。処理温度が前記下限値未満であると、合一の進行が遅くなり、トナーの生産性が低下する場合がある。一方、処理温度が前記上限値を超えると、不本意な凝集物や粗大粒子が発生し易くなる。
本工程は、分散液を攪拌した状態で行うのが好ましい。これにより、粒子間での形状、大きさのばらつきが特に小さい合一粒子を得ることができる。
本工程では、例えば、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼等の攪拌翼を用いることができるが、中でも、マックスブレンド翼、フルゾーン翼が好ましい。これにより、分散質を効率良く合一させつつ、一旦形成された合一粒子(着色樹脂微粒子)が崩壊するのをより確実に防止することができる。その結果、粒子間での形状、粒径のばらつきの小さい合一粒子を効率良く得ることができる。
攪拌翼の翼先端速度は、例えば、0.1〜10m/秒であるのが好ましく、0.2〜8m/秒であるのがより好ましい。翼先端速度が前記範囲内の値であると、分散質をより効率良く合一させつつ、一旦形成された合一粒子が崩壊するのをさらに確実に防止することができる。その結果、粒子間での形状、粒径のばらつきが特に小さい合一粒子を効率良く得ることができる。これに対し、翼先端速度が前記下限値未満であると、攪拌が不均一となり、必要以上に粗大化した粗大粒子が発生し易くなる。一方、翼先端速度が前記上限値を超えると、合一粒子の形成に寄与しない微粒子が残存し易くなる傾向がある。
合一粒子が所望の粒径に達したら、合一を停止させる。これにより、所望の粒径の合一粒子を確実に得ることができる。
合一を停止させる方法としては、例えば、攪拌速度を挙げる方法、分散液(合一粒子が分散した分散液)の温度を低下させる方法、分散液中に水を添加する方法や、これらのうち2つ以上を組み合わせた方法等が挙げられる。中でも、合一を停止させる方法としては、分散液中に水を添加する方法を用いるのが好ましい。これにより、不本意な合一粒子の更なる合一や崩壊等を確実に防止しつつ、速やかに分散質の合一を停止させることができる。その結果、所望の粒径を有し、粒度分布がシャープなトナーを確実に得ることができる。なお、分散液中に水を添加することにより合一を停止させる場合、添加した水により分散質中に含まれる有機溶剤が抽出され、分散質粒子が硬くなる。その結果、合一が停止するとともに、合一粒子の崩壊が確実に防止されるものと考えられる。
分散液中に水を添加することにより合一を停止させる場合、添加する水は、分散液中に含まれる有機溶剤100重量部に対して、分散液中に含まれる水の総量が、400重量部以上となるように加えるのが好ましく、500重量部以上となるように加えるのがより好ましい。
また、分散液中に水を添加することにより合一を停止させる場合、水の添加後(合一の停止後)に、固形分の含有率が18〜25wt%となるように、水を加えるのが好ましい。これにより、トナー製造時における有機溶剤、水の使用量を十分に抑制しつつ、大きさ、形状のばらつきの小さい好適なトナーを製造することができる。
[被覆工程]
次に、上記のような合一粒子(着色樹脂微粒子)の表面に、樹脂材料および着色剤(第2の着色剤)を含む材料で構成された被膜を形成する(被覆工程)。
本工程で形成する被膜は、形成すべきトナー粒子1のシェル領域12に対応するものである。
被膜の形成は、例えば、被膜を構成する樹脂材料、着色剤(第2の着色剤)および有機溶剤を含む液体である被膜形成用液と、前述した合一粒子が分散した分散液とを混合することにより、行うことができる。
被膜を構成する樹脂材料としては、前述したシェル領域12の構成材料としてのポリエステルBまたはその前駆体(例えば、プレポリマー、モノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー等)を用いることができる。
被膜形成用液を構成する有機溶剤としては、例えば、前述した着色樹脂液の構成材料として例示したものを用いることができる。
被膜形成用液を構成する有機溶剤と、前述した着色樹脂液を構成する有機溶剤とは、実質的に同一の組成を有するものであってもよいし、異なる組成を有するものであってもよいが、少なくとも、共通の成分を含むものであるのが好ましい。これにより、合一粒子の表面に、効率良く被膜を形成することができる。
また、被膜形成用液は、例えば、樹脂材料を含む材料で構成された分散質が、水性の分散媒(水性媒体)中に微分散した分散液であってもよい。これにより、被膜の形成を容易かつ確実に行うことができるとともに、形成される被膜の厚さの均一性を高めることができる。
また、被膜形成用液を構成する樹脂材料は、中和剤により中和されたものであってもよい。これにより、例えば、被膜が形成された状態での合一粒子(分散質)の分散性を特に優れたものとすることができる。
中和剤の種類、添加量、添加方法等の各種条件は、例えば、前述した乳化懸濁液調製工程で説明したのと同様とすることができる。これにより、上述したのと同様の効果が得られる。
合一粒子が分散した分散液と被膜形成用液との混合は、いかなる方法で行うものであってもよいが、攪拌機等により合一粒子が分散した分散液に剪断を加えつつ、合一粒子が分散した分散液中に被膜形成用液を徐々に添加(滴下)することにより行うのが好ましい。これにより、容易かつ確実に、均一な厚さの被膜を形成することができる。
合一粒子が分散した分散液と被膜形成用液との混合においては、例えば、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼等の攪拌翼を用いることができるが、中でも、マックスブレンド翼、フルゾーン翼が好ましい。これにより、膜厚のばらつきの小さい被膜を、効率良く形成することができる。
攪拌翼の翼先端速度は、例えば、0.1〜10m/秒であるのが好ましく、0.2〜8m/秒であるのがより好ましい。翼先端速度が前記範囲内の値であると、分散質の不本意な合一を確実に防止しつつ、均一な厚さの被膜を効率良く形成することができる。
また、攪拌時における材料温度は、20〜60℃であるのが好ましく、20〜50℃であるのがより好ましい。
また、合一粒子が分散した分散液と被膜形成用液との混合時に、電解質を添加してもよい。これにより、形成される被膜中に含まれる着色剤(第2の着色剤)の含有率を容易かつ確実に制御することができる。また、所望の厚さの被膜を、より効率良く形成することができる。
電解質としては、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素アンモニウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸ナトリウム等の塩や、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸等の酸性物質等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、1価のカチオンの硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム)、炭酸塩が好ましい。
本工程で添加される電解質の量は、特に限定されないが、被膜形成用液の固形分100重量部に対し、0.1〜6重量部であるのが好ましく、0.3〜4重量部であるのがより好ましい。
また、電解質は、水溶液の状態で添加されるのが好ましい。これにより、速やかに混合液(合一粒子が分散した分散液と被膜形成用液との混合液)全体に、電解質を拡散させることができるとともに、電解質の添加量を容易かつ確実に制御することができる。
[脱溶剤(脱溶媒)工程]
その後、分散液中に含まれる有機溶剤を除去する(脱溶剤工程)。これにより、トナー粒子1が得られる。
有機溶剤の除去は、いかなる方法で行ってもよいが、例えば、減圧により行うことができる。これにより、樹脂材料等の構成材料の変性等を十分に防止しつつ、効率良く有機溶剤を除去することができる。
また、本工程での処理温度は、被膜を構成する樹脂材料(最終的に得られるトナー粒子でのシェル領域12を構成する樹脂)のガラス転移点(Tg)よりも低い温度であるのが好ましい。
また、本工程は、分散液に、消泡剤を添加した状態で行ってもよい。これにより、効率良く有機溶剤を除去することができる。
消泡剤としては、例えば、鉱物油系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、シリコーン系消泡剤のほか、低級アルコール類、高級アルコール類、油脂類、脂肪酸類、脂肪酸エステル類、リン酸エステル類等を用いることができる。
消泡剤の使用量は、特に限定されないが、分散液中に含まれる固形分に対して、重量比で、20〜300ppmであるのが好ましく、30〜100ppmであるのがより好ましい。
また、本工程においては、有機溶剤とともに、少なくとも一部の水性媒体が除去されてもよい。
また、本工程においては、有機溶剤とともに、分散液中に含まれる未反応原料(モノマー等)を除去することができる。その結果、最終的に得られるトナーにおける、揮発性有機化合物(VOC)量を特に少ないものとすることができる。
なお、本工程においては、必ずしも全ての有機溶剤(分散液中に含まれる有機溶剤の全量)が除去されなくてもよい。このような場合であっても、後述する洗浄工程、乾燥工程において残存する有機溶剤を十分に除去することができる。
[洗浄工程]
次に、トナー粒子1の洗浄を行う(洗浄工程)。
本工程を行うことにより、不純物として、有機溶剤、未反応原料(モノマー等)等が含まれる場合であっても、これらを効率良く除去することができる。その結果、最終的に得られるトナーにおける、揮発性有機化合物(VOC)量を特に少ないものとすることができる。
本工程は、例えば、固液分離(水性媒体からの分離)によりトナー粒子を分離し、さらにその後、固形分(トナー)の水中への再分散および固液分離(水性媒体からのトナー粒子の分離)をすることにより行うことにより、行うことができる。固形分(トナー)の水中への再分散および固液分離は、複数回、繰り返し行ってもよい。
[乾燥工程]
その後、乾燥処理を施すことにより、最終的なトナーを得ることができる(乾燥工程)。
乾燥工程は、例えば、真空乾燥機(例えば、リボコーン(大川原製作所社製)、ナウター(ホソカワミクロン社製)等)、流動層乾燥機(大川原製作所社製)等を用いて行うことができる。
また、本工程での処理温度は、シェル領域12を構成する樹脂のガラス転移点(Tg)よりも低い温度であるのが好ましい。
また、トナーの製造方法においては、必要に応じて、外添剤を付与する外添工程を有していてもよい。
<画像形成装置>
次に、上述した本発明のトナーが適用される画像形成装置について説明する。
図3は、本発明のトナーが適用される画像形成装置の好適な実施形態を示す全体構成図、図4は、図3の画像形成装置が有する現像装置の断面図、図5は、図3の画像形成装置に用いられる定着装置の詳細構造を示し、一部破断面を示す斜視図、図6は、図5の定着装置の要部断面図である。
画像形成装置10の装置本体20内には、感光体ドラムからなる像担持体30が配設され、図示しない駆動手段によって図示矢印方向に回転駆動される。この像担持体30の周囲には、その回転方向に沿って、像担持体(感光体)30を一様に帯電するための帯電装置40、像担持体30上に静電潜像を形成するための露光装置50、静電潜像を現像するためのロータリー現像装置60、像担持体30上に形成された単色のトナー像を一次転写するための中間転写装置70が配設されている。
ロータリー現像装置60は、イエロー用現像装置60Y、マゼンタ用現像装置60M、シアン用現像装置60Cおよびブラック用現像装置60Kが支持フレーム600に装着され、支持フレーム600は図示しない駆動にモータより回転駆動される構成になっている。これらの複数の現像装置60Y、60C、60M、60Kは、像担持体30の1回転毎に選択的に一つの現像装置の現像ローラ604が像担持体30に対向するように回転移動するようにされている。なお、各現像装置60Y、60C、60M、60Kには、各色のトナーが収納されたトナー収納部が形成されている。
現像装置60Y、60C、60M、60Kは、いずれも同一の構造を有している。したがって、ここでは現像装置60Yの構造について説明するが、現像装置60C、60M、60Kについても、構造、機能は同様である。
図4に示すように現像装置60Yでは、その内部にトナーTを収容するハウジング601に供給ローラ603および現像ローラ604が軸着されており、当該現像装置60Yが上記した現像位置に位置決めされると、「トナー担持体」として機能する現像ローラ604が像担持体(感光体)30と当接してまたは所定のギャップを隔てて対向位置決めされるとともに、これらのローラ603、604が本体側に設けられた回転駆動部(図示省略)と係合されて所定の方向に回転するように構成されている。この現像ローラ604は、現像バイアスを印加されるべく銅、ステンレス、アルミニウム等の金属または合金により円筒状に形成されている。
また、現像装置60Yでは現像ローラ604の表面に形成されるトナー層の厚みを所定厚みに規制するための規制ブレード605が配置されている。この規制ブレード605は、ステンレスやリン青銅などの板状部材605aと、板状部材605aの先端部に取り付けられたゴムや樹脂部材などの弾性部材605bとで構成されている。この板状部材605aの後端部はハウジング601に固着されており、現像ローラ604の回転方向D3において、板状部材605aの先端部に取り付けられた弾性部材605bが板状部材605aの後端部よりも上流側に位置するように配設されている。
中間転写装置70は、駆動ローラ90および従動ローラ100と、両ローラにより図示矢印方向に駆動される中間転写ベルト110と、ベルト110の裏面で像担持体30に対向して配設された一次転写ローラ120と、ベルト110上の残留トナーを除去する転写ベルトクリーナ130と、駆動ローラ90に対向して配設され、中間転写ベルト110に形成された4色フルカラー像を記録媒体(紙等)上に転写するための二次転写ローラ140とからなっている。
装置本体20の底部には給紙カセット150が配設され、給紙カセット150内の記録媒体は、ピックアップローラ160、記録媒体搬送路170、二次転写ローラ140、定着装置190を経て排紙トレイ200に搬送されるように構成されている。なお、230は両面印刷用搬送路である。
上記構成からなる画像形成装置の作用について説明する。図示しないコンピュータからの画像形成信号が入力されると、像担持体30、現像装置60の現像ローラ604および中間転写ベルト110が回転駆動し、先ず、像担持体30の外周面が帯電装置40によって一様に帯電され、一様に帯電された像担持体30の外周面に、露光装置50によって第1色目(例えばイエロー)の画像情報に応じた選択的な露光がなされ、イエローの静電潜像が形成される。
一方、現像装置60Yでは、2つのローラ603、604が接触しながら回転することで、イエロートナーが現像ローラ604の表面に擦り付けられて所定の厚みのトナー層が現像ローラ604の表面に形成される。そして、規制ブレード605の弾性部材605bが現像ローラ604の表面に弾性的に当接して、現像ローラ604の表面上のトナー層を、所定の厚みに規制する。
像担持体30上に形成された潜像位置には、イエロー用現像装置60Yが回動してその現像ローラ604が当接し、これによってイエローの静電潜像のトナー像が像担持体30上に形成され、次に、像担持体30上に形成されたトナー像は一次転写ローラ120により中間転写ベルト110上に転写される。このとき、二次転写ローラ140は中間転写ベルト110から離間されている。
上記の処理が画像形成信号の第2色目、第3色目、第4色目に対して、像担持体30と中間転写ベルト110の1回転による潜像形成、現像、転写が繰り返され、画像形成信号の内容に応じた4色のトナー像が中間転写ベルト110上において重ねられて転写される。そして、このフルカラー画像が二次転写ローラ140に達するタイミングで、記録媒体が記録媒体搬送路170から二次転写ローラ140に供給され、このとき、二次転写ローラ140が中間転写ベルト110に押圧されるとともに二次転写電圧が印加され、中間転写ベルト110上のフルカラートナー像が記録媒体上に転写される。そして、この記録媒体上に転写されたトナー像は定着装置190により加熱加圧され定着される。中間転写ベルト110上に残留しているトナーは転写ベルトクリーナ130によって除去される。
なお、両面印刷の場合には、定着装置190を出た記録媒体は、その後端が先端となるようにスイッチバックされ、両面印刷用搬送路230を経て、二次転写ローラ140に供給され、中間転写ベルト110上のフルカラートナー像が記録媒体上に転写され、再び定着装置190により加熱加圧され定着される。
図3において、本発明に係わる定着装置190は、熱源を有する定着ローラ210とこれに圧接される加圧ローラ220とから構成され、定着ローラ210と加圧ローラ220の軸を結び線は水平線からθの角度を有するように配置されている。なお、0°≦θ≦30°である。
次に定着装置190について、詳細に説明する。
図5において、ハウジング240内には定着ローラ210が回動自在に装着されている。そして、定着ローラ210に対向して加圧ローラ220が回動自在に装着されている。加圧ローラ220の軸方向長さは定着ローラ210のそれよりも短く、その空いたスペースに軸受250が設けられて、加圧ローラ220の両端は軸受250により支持されている。軸受250には加圧レバー260が回動可能に設けられ、加圧レバー260の一端とハウジング240間には加圧スプリング270が配設され、これにより加圧ローラ220と定着ローラ210が加圧されるように構成されている。
図6において、定着ローラ210は、内部にハロゲンランプ等の熱源210aを有する金属製の筒体210b、筒体210bの外周に設けられたシリコンゴム等からなる弾性層210cと、弾性層210cの表面に被覆されたフッ素ゴム、フッ素樹脂(例えばパーテトラフロロエチレン(PTFE))よりなる表層(図示せず)と、筒体210bに固定された回転軸210dとから構成されている。上述したように、本発明のトナーは、十分な着色剤を含有しつつ、低温定着性にも優れている。このため、定着ローラ210の表面の設定温度を比較的低いものとすることができる。具体的には、定着装置190において、定着ローラ210の表面の設定温度は、120〜210℃であるのが好ましく、140〜180℃であるのがより好ましい。これにより、定着に要するエネルギーを抑制しつつ、トナーを記録媒体に確実に定着させることができる。また、より高速での画像形成にも好適に対応することができる。
加圧ローラ220は、金属製の筒体220bと、筒体220bに固定された回転軸220dと、回転軸220dを軸支持する軸受250と、定着ローラ210と同様に、筒体220bの外周に設けられた弾性層220cと、弾性層220cの表面に被覆されたフッ素ゴム、フッ素樹脂よりなる表層(図示せず)とから構成されている。定着ローラ210の弾性層210cの厚みは、加圧ローラ220の弾性層220cの厚みより極端に小さくし、これにより加圧ローラ220側が凹状にへこむような定着ニップ部が形成されている。
図5および図6に示すように、ハウジング240の両側面には、支持軸290、300が設けられており、この支持軸290、300にそれぞれ定着ローラ210側の剥離部材310と加圧ローラ220側の剥離部材320が回動自在に装着されている。これにより、定着ローラ210と加圧ローラ220の軸方向で定着ニップ部の記録媒体搬送方向下流側に剥離部材310、320が配設されることになる。
本実施形態では、図5および図6に示すように、定着ローラ210と加圧ローラ220の軸方向でニップ部の記録媒体搬送方向下流側に剥離部材310、320を配設している。定着ローラ210側の剥離部材310の先端は、ニップ部の出口に向けて傾斜するように配置され、定着ローラ210に非接触でかつ近接されている。加圧ローラ220側の剥離部材320の先端は、定着ローラ210側の剥離部材310の先端よりも記録媒体搬送方向下流側に配置されている。
両面印刷の場合、片面に印刷された記録媒体は定着ローラ210側の剥離部材310により剥離された後、記録媒体の後端が先端となるようにスイッチバックされ、両面印刷用搬送路230を経て二次転写ローラ140に供給され、中間転写ベルト110上のフルカラートナー像が記録媒体上に転写され、再び定着ローラ210により加熱加圧され定着され、このとき、加圧ローラ220に付着し巻き付いてしまう記録媒体は、加圧ローラ220側の剥離部材320により剥離されることになる。
上記のように、本実施形態の定着装置では、定着ローラおよび加圧ローラの軸方向かつ定着ニップ部の記録媒体搬送方向下流側に、定着ローラおよび加圧ローラに近接して配設される剥離部材を備え、前記定着ローラ側の剥離部材の位置決めは定着ローラ表面で行い、前記加圧ローラ側の剥離部材の位置決めは加圧ローラの軸受表面で行うので、定着ローラおよび加圧ローラからの記録媒体の剥離性を向上させることができる。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、前述した実施形態では、トナーは、乳化懸濁液調製工程と、合一工程と、被覆工程とを有する方法により製造されるものとして説明したが、本発明のトナーは、このような方法で製造されたものに限定されない。
また、前述した実施形態では、被覆工程後に脱溶剤工程を設けるものとして説明したが、例えば、合一工程と被覆工程との間に脱溶剤工程(第1の脱溶剤工程)を設けるとともに、被覆工程の後に脱溶剤工程(第2の脱溶剤工程)を設けてもよい。
また、トナー粒子は、コア領域およびシェル領域以外の構成を有するものであってもよい。例えば、本発明のトナーは、単一のトナー粒子内に、複数のコア領域を有し、隣接するコア領域間にシェル領域と同一の材料で構成された隔壁を有するものであってもよい。これにより、例えば、トナーの耐久性,保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を特に優れたものとすることができる。また、このような構成であると、シェル領域の厚さが比較的薄い場合であっても、トナー粒子の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を特に優れたものとすることができるため、トナー粒子中に占めるコア領域の割合を高めることができる。その結果、コア領域の構成材料の特性をより効果的に発揮させることができ、例えば、低温定着性や発色性等を特に優れたものとすることができる。
[1]トナーの製造
トナーの製造に先立ち、樹脂(樹脂H1、樹脂H2、樹脂H3、樹脂L1、樹脂L2)の合成を行い、さらに、合成された樹脂を用いて、ワックスマスター(ワックスマスターWM−1)、着色剤マスター(着色剤マスターPM−1、PM−2)、ミルベース(ミルベースMB−1、MB−2)の調製を行った。
<樹脂H1(高分子量樹脂(架橋型ポリエステル樹脂))の合成>
50リットルの反応釜に、下記の組成の酸、アルコール成分、触媒等の原材料を入れて、常圧窒素気流下にて240℃で12時間反応を行った。その後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM E28−517に基づいて軟化点により追跡し、該軟化点が160℃に達した時点で反応を終了した。
テレフタル酸 9.06質量部
イソフタル酸 3.90質量部
エチレングリコール 2.54質量部
ネオペンチルグリコール 4.26質量部
テトラブチルチタネート 0.1 質量部
エピクロン830 0.3 質量部
カージュラE 0.1 質量部
(ただし、エピクロン830は、大日本インキ化学工業社製のビスフェノールF型エポキシ樹脂であり、このエポキシ当量は、170g/eqである。また、カージュラEは、シェルジャパン社製のアルキルグリシジルエステルであり、このエポキシ当量は250g/eqである。)
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価10.0KOHmg/g、ガラス転移温度(Tg)65℃、軟化点(T1/2)が178℃であった。なお、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(島津製作所社製、DSC60−A)を用いて、測定温度領域:20〜150℃、昇温速度:6℃/min、試料質量:20mgの条件で、セカンドランの昇温時の曲線を、オンセット法により解析することにより求めた。また、以下に説明する他の樹脂についても同様にして、ガラス転移温度を求めた。
また、重量平均分子量をGPC測定装置(東ソー製HLC−8120GPC)によって、分離カラムとして東ソー製TSK−GEL G5000HXL・G4000HXL・G3000HXL・G2000HXLを組み合わせて使用し、カラム温度:40℃・溶媒:テトラヒドロフラン・溶媒濃度0.5質量%、フィルター:0.2μm・流量:1ml/minにて測定し標準ポリスチレンを用いて換算し分子量を求めた。結果として、重量平均分子量は230000であった。
<樹脂H2(高分子量樹脂(架橋型ポリエステル樹脂))の合成>
50リットルの反応釜に、下記の組成の酸、アルコール成分、触媒等の原材料を入れて、常圧窒素気流下にて240℃で12時間反応を行った。その後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM E28−517に基づいて軟化点により追跡し、該軟化点が160℃に達した時点で反応を終了した。
テレフタル酸 1.94質量部
イソフタル酸 9.07質量部
アジピン酸 1.71質量部
エチレングリコール 2.54質量部
ネオペンチルグリコール 4.26質量部
テトラブチルチタネート 0.1 質量部
エピクロン830 0.3 質量部
カージュラE 0.1 質量部
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価9.8KOHmg/g、ガラス転移温度(Tg)40℃、軟化点(T1/2)は178℃であった。また、重量平均分子量は176000であった。
<樹脂H3(高分子量樹脂(架橋型ポリエステル樹脂))の合成>
50リットルの反応釜に、下記の組成の酸、アルコール成分、触媒等の原材料を入れて、常圧窒素気流下にて240℃で12時間反応を行った。その後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM E28−517に基づいて軟化点により追跡し、該軟化点が130℃に達した時点で反応を終了した。
テレフタル酸 3.9 質量部
イソフタル酸 9.06質量部
エチレングリコール 2.54質量部
ネオペンチルグリコール 4.26質量部
テトラブチルチタネート 0.1 質量部
エピクロン830 0.3 質量部
(大日本インキ化学工業製ビスフェノールF型エポキシ樹脂エポキシ当量170(g/eq)
カージュラE 0.1 質量部
(シェルジャパン製アルキルグリシジルエステル)エポキシ当量250(g/eq)
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価11.0KOHmg/g、ガラス転移温度(Tg)59℃、軟化点(T1/2)が138℃であった。また、重量平均分子量は85000であった。
<樹脂L1(低分子量樹脂(直鎖型ポリエステル樹脂))の合成>
50リットルの反応釜に、下記の組成の酸、アルコール成分、触媒等の原材料を入れて、常圧窒素気流下にて210℃で12時間反応を行った。その後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM E28−517に基づいて軟化点により追跡し、該軟化点が87℃に達した時点で反応を終了した。
テレフタル酸 5.31質量部
イソフタル酸 7.97質量部
エチレングリコール 2.6 質量部
ネオペンチルグリコール 4.37質量部
テトラブチルチタネート 0.1 質量部
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価10.0KOHmg/g、ガラス転移温度(Tg)46℃、軟化点(T1/2)が95℃であった。また、重量平均分子量は5200であった。
<樹脂L2(低分子量樹脂(直鎖型ポリエステル樹脂))の合成>
50リットルの反応釜に、下記の組成の酸、アルコール成分、触媒等の原材料を入れて、常圧窒素気流下にて210℃で12時間反応を行った。その後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM E28−517に基づいて軟化点により追跡し、該軟化点が104℃に達した時点で反応を終了した。
テレフタル酸 7.97質量部
イソフタル酸 5.31質量部
エチレングリコール 2.6 質量部
ネオペンチルグリコール 4.37質量部
テトラブチルチタネート 0.1 質量部
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価10.0KOHmg/g、ガラス転移温度(Tg)56℃、軟化点(T1/2)が106℃であった。また、重量平均分子量は8000であった。
上記のようにして合成した各樹脂の物性等を表1にまとめて示す。
Figure 2008089912
<ワックスマスターWM−1の調製>
高速乳化機(プライミクス社製、T.K.ホモミクサMARKII2.5型)付属の3L円筒容器に、水:1300重量部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:25.7重量部を添加して、温度を95℃に調整し、翼先端速度:16.7m/秒の攪拌下に、さらに、予め融解しておいたカルナバワックス:700重量部を添加して、ワックスの乳化物を得た。冷却後、固形分の含有率が35wt%となるように、水を加え、第1のワックス分散液を得た。
次に、高速分散機(プライミクス社製、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼)付属の3L円筒容器に、メチルエチルケトン:856重量部を仕込み、攪拌下に、樹脂L2:700重量部を徐々に添加して、樹脂L2が均一に溶解したことを確認した後、上記第1のワックス分散液:878.6重量部を添加して、予備混合液の調製を行った。次いで、該予備混合液をスターミル(アシザワファインテック社製、LMZ−10)で混合を行い、固形分含有量45.0wt%のワックスマスターWM−1を得た。得られたワックスマスターWM−1の組成は、重量比で、樹脂L2:ワックス:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:メチルエチルケトン:水=31.3:13.4:0.3:29.5:25.5であった。
<着色剤マスターPM−1の調製>
C.I.ピグメントレッド122:2000重量部と、樹脂L2:2000重量部とを、ST/A0羽根をセットした20Lヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)へ投入し、翼先端速度:10m/秒で2分間攪拌し、混合物を得た。該混合物をオープンロール連続押し出し混練機(三井鉱山社製、ニーデックス MOS140−800)を用いて溶融混練し、着色剤マスターPM−1を得た。着色マスターPM−1の組成は、重量比で、着色剤:樹脂=50:50であった。また、得られた着色剤マスターPM−1を樹脂L2およびメチルエチルケトンを用いて希釈し、400倍の光学顕微鏡で着色剤の微分散状態、粗大粒子の有無を観察したところ、粗大粒子は認められず、均一に微分散している様子が認められた。
<着色剤マスターPM−2の調製>
C.I.ピグメントレッド57:1:2000重量部と、樹脂H1:2000重量部とを、ST/A0羽根をセットした20Lヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)へ投入し、翼先端速度:10m/秒で2分間攪拌し、混合物を得た。該混合物をオープンロール連続押し出し混練機(三井鉱山社製、ニーデックス MOS140−800)を用いて溶融混練し、着色剤マスターPM−2を得た。着色マスターPM−2の組成は、重量比で、着色剤:樹脂=50:50であった。また、得られた着色剤マスターPM−2を樹脂H1およびメチルエチルケトンを用いて希釈し、400倍の光学顕微鏡で着色剤の微分散状態、粗大粒子の有無を観察したところ、粗大粒子は認められず、均一に微分散している様子が認められた。
<ミルベースMB−1の調製>
高速分散機(プライミクス社製、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼)付属の2L円筒容器(ディスパー翼の翼径40mm)に、メチルエチルケトン(希釈メチルエチルケトン):179.4重量部を仕込み、さらに、樹脂H1(希釈樹脂):49.8重量部を加えた。この状態で、翼先端速度:7.5m/秒で攪拌した。攪拌した状態で、着色剤マスターPM−1:63重量部、樹脂L2(希釈樹脂):87.2重量部、ワックスマスターWM−1:223.9重量部、および、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:1.09重量部を、この順序で、前記円筒容器内に投入することにより、各成分の溶解・分散を行った。さらに、その後、固形分含有量が55wt%となるように、メチルエチルケトンを追加投入し、ミルベースMB−1を得た。なお、攪拌時における材料温度は、30〜40℃に保持されるようにした。
<ミルベースMB−2の調製>
高速分散機(プライミクス社製、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼)付属の2L円筒容器(ディスパー翼の翼径40mm)に、メチルエチルケトン(希釈メチルエチルケトン):367重量部を仕込み、さらに、樹脂H1(希釈樹脂):70.8重量部を加えた。この状態で、翼先端速度:7.5m/秒で攪拌した。攪拌した状態で、着色剤マスターPM−2:21重量部、樹脂H1(希釈樹脂):208.2重量部を、この順序で、前記円筒容器内に投入することにより、各成分の溶解・分散を行った。その後、材料温度を40℃にし、1Nのアンモニア水:80重量部を添加し、翼先端速度を16.5m/秒まで上昇させ、この攪拌条件下、水:701重量部を、20重量部/分の速度で滴下することにより、ミルベースMB−2を得た。得られたミルベースMB−2の固形分含有量は20.72wt%であった。
(実施例1)
以下のようにして、トナーを製造した。なお、温度条件が記載されていない工程(処理)については、室温(25℃)で行った(実施例2以降についても同様)。
《乳化懸濁液調製工程》
ミルベースMB−1を調製した同一容器に、引き続き、1Nアンモニア水:50重量部を加え、翼先端速度:7.5m/秒にて攪拌した後、温度が30℃以下となるように調整した。
その後、翼先端速度:16.5m/秒に変更し、この状態で、350重量部の水(脱イオン水)を20重量部/分の速度で滴下し、分散液(乳化懸濁液)を調製した。脱イオン水を添加するにつれ、系の粘度は上昇していったが、水は滴下と同時に系内に取り込まれ、攪拌混合は均一であった。脱イオン水を200重量部添加した段階で粘度の低下が観察された(転相点)。さらに残りの脱イオン水を所定量滴下した後(350重量部の脱イオン水を滴下した後)、希釈水として185重量部の水を一括で添加した。この分散液中において、分散性の悪い粗大粒子の存在は認められなかった。
《合一工程》
次に、マックスブレンド翼(翼径:65mm)およびコンデンサー付属の2L円筒容器に、上記分散液を移送した後、翼先端速度:1.09m/秒に保持した状態で、温度を25℃に調整した。
その後、マックスブレンド翼の翼先端速度を1.53m/秒に調整し、3.5wt%の硫酸ナトリウム水溶液:120重量部を10g/分で滴下した。滴下終了後、翼先端速度を15分間かけて、1.53m/秒から0.54m/秒まで減速し、さらに、0.54m/秒で20分間攪拌を行った。
その後、マックスブレンド翼の翼先端速度を1.53m/秒に調整し、5.0wt%の硫酸ナトリウム水溶液を40重量部滴下し、その後、翼先端速度を1.53m/秒から0.54m/秒まで減速し、さらに0.54m/秒で10分間攪拌を行った。
その後、マックスブレンド翼の翼先端速度を1.53m/秒に調整し30分間攪拌を行った。
その後、マックスブレンド翼の翼先端速度を1.53m/秒に調整した状態で、5.0wt%の硫酸ナトリウム水溶液:10重量部を滴下し、翼先端速度を1.53m/秒から0.54m/秒に、15分間かけて減速し、さらに、0.54m/秒で10分間攪拌を行った。ここで、この分散液について、観察を行った。その結果、分散質が複数個合一した合一粒子が多数確認された。
その後、マックスブレンド翼の翼先端速度を1.53m/秒に調整した状態で、5.0wt%の硫酸ナトリウム水溶液:10重量部を滴下し、翼先端速度を1.53m/秒から0.54m/秒に、15分間かけて減速し、さらに、0.54m/秒で10分間攪拌する処理を、さらに、2回繰り返し行った(計3回)。
その後、マックスブレンド翼の翼先端速度を1.02m/秒に調整した状態で、30分間攪拌を行い、さらに、水:400重量部を添加し、分散質の合一を停止させることにより、目的とする合一粒子(着色樹脂微粒子)が分散した分散液を得た。
《被覆工程》
上記合一工程を行った2L円筒容器内において、マックスブレンド翼の翼先端速度を1.53m/秒に調整した状態で、ミルベースMB−2:289.6重量部を5g/分の速度で滴下した。滴下終了後に、マックスブレンド翼の翼先端速度を1.53m/秒から0.85m/秒に減速し、翼先端速度を保持した状態で、さらに、20分間攪拌を行った。その後、翼先端速度を1.53m/秒に調整し、5.0wt%の硫酸ナトリウム水溶液:20重量部を滴下した。その後、15分間かけて翼先端速度を1.53m/秒から0.54m/秒まで減速し、翼先端速度を保持した状態で、20分間攪拌を行った。これにより、合一粒子の表面に、被膜が形成された。
《脱溶剤工程》
その後、シリコーン系消泡剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、BY22−517):0.034重量部を添加し、減圧により、固形分含有量が23wt%以上となるまで、メチルエチルケトンおよび水の一部を留去し、スラリー(着色樹脂微粒子スラリー)を得た。
《洗浄工程》
上記のようにして得られたスラリーに対し、固液分離を行い、さらに、水中への再分散、固液分離を繰り返し行うことによる洗浄処理を施した。その後、吸引ろ過法により、着色樹脂微粒子のウェットケーキ(着色樹脂微粒子ケーキ)を得た。
《乾燥工程》
その後、真空乾燥機を用いて、ウェットケーキを乾燥することにより、トナー粒子を得た。トナー粒子については、TEM(透過型電子顕微鏡)による構造観察、および粒径の測定を行った。その結果、得られたトナー粒子は、着色剤を含むコア領域と、着色剤を含むシェル領域とを有するものであることが確認された。また、コア領域中における着色剤の含有率が、シェル領域中における着色剤の含有率よりも高いものであることを確認した。また、トナー粒子についての50%体積粒径をDv(50)[μm]、50%個数粒径をDn(50)[μm]としたときの、Dv(50)は、5.1μm、Dv(50)/Dn(50)は、1.09であった。また、トナー粒子の平均円形度Rは0.981であった。また、トナー粒子を構成するコア領域の平均粒径は4.7μm、シェル領域の平均厚さは0.2μmであった。また、トナー粒子中において、コア領域の占める割合は、78vol%であった。また、コア領域中に含まれる着色剤(第1の着色剤)の平均粒径は、50nmであった。また、シェル領域中に含まれる着色剤(第2の着色剤)の平均粒径は、10nmであった。
なお、粒径、粒度分布の測定は、マイクロトラックMT−3000(日機装社製粒度分布測定装置)により行った。また、以下に説明する他の粒子についても同様にして、粒径、粒度分布の測定を行った。
また、平均円形度は、フロー式粒子像分析装置(東亜医用電子社製、FPIP−1000)を用いた測定により求めた。また、以下に説明する他の粒子についても同様にして、平均円形度を求めた。
(実施例2〜5)
乳化懸濁液調製工程で用いるミルベース(ミルベースMB−1)中における着色剤および樹脂の含有率、着色剤の平均粒径、被覆工程で用いるミルベース(ミルベースMB−2)中における着色剤および樹脂の含有率、着色剤の平均粒径を変更するとともに、合一工程、被覆工程における硫酸ナトリウム水溶液の使用量、被覆工程におけるミルベースの使用量、各工程での攪拌条件を調整することにより、トナー粒子の構成を表2に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
(実施例6)
被覆工程において、C.I.ピグメントレッド57:1の代わりに、C.I.ピグメントレッド122を含むミルベースを用いた以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
(実施例7〜10)
乳化懸濁液調製工程で用いるミルベース中における着色剤および樹脂の含有率、着色剤の平均粒径、被覆工程で用いるミルベース中における着色剤および樹脂の含有率、着色剤の平均粒径を変更するとともに、合一工程、被覆工程における硫酸ナトリウム水溶液の使用量、被覆工程におけるミルベースの使用量、各工程での攪拌条件を調整することにより、トナー粒子の構成を表2に示すように変更した以外は、前記実施例6と同様にしてトナーを製造した。
(実施例11)
乳化懸濁液調製工程において、C.I.ピグメントレッド122の代わりに、C.I.ピグメントイエロー185を含むミルベースを用い、被覆工程において、C.I.ピグメントレッド57:1の代わりに、C.I.ピグメントイエロー74を含むミルベースを用いた以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
(実施例12〜15)
乳化懸濁液調製工程で用いるミルベース中における着色剤および樹脂の含有率、着色剤の平均粒径、被覆工程で用いるミルベース中における着色剤および樹脂の含有率、着色剤の平均粒径を変更するとともに、合一工程、被覆工程における硫酸ナトリウム水溶液の使用量、被覆工程におけるミルベースの使用量、各工程での攪拌条件を調整することにより、トナー粒子の構成を表3に示すように変更した以外は、前記実施例11と同様にしてトナーを製造した。
(実施例16、17)
乳化懸濁液調製工程で用いるミルベースを構成する樹脂の組成、被覆工程で用いるミルベースを構成する樹脂の組成を変更した以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
(比較例1)
被覆工程において、着色剤を含まないミルベースを用いた以外は、前記実施例4と同様にしてトナーを製造した。
(比較例2)
乳化懸濁液調製工程で用いるミルベース中における着色剤および樹脂の含有率を変更することにより、トナー粒子の構成を表3に示すように変更した以外は、前記比較例1と同様にしてトナーを製造した。
(比較例3)
乳化懸濁液調製工程において、着色剤を含まないミルベースを用いた以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
(比較例4)
乳化懸濁液調製工程で用いるミルベース中における着色剤および樹脂の含有率、被覆工程で用いるミルベース中における着色剤および樹脂の含有率を変更することにより、コア領域およびシェル領域における着色剤の含有率を変更した以外は、前記実施例7と同様にしてトナーを製造した。
(比較例5)
被覆工程で用いるミルベース中における着色剤および樹脂の含有率を変更するとともに、合一工程、被覆工程における硫酸ナトリウム水溶液の使用量、被覆工程におけるミルベースの使用量、各工程での攪拌条件を変更することにより、トナー粒子の構成を表3に示すように変更した以外は、前記比較例4と同様にしてトナーを製造した。
表2、表3には、トナー粒子の主な構成をまとめて示した。なお、表中、C.I.ピグメントイエロー185を「Y185」、C.I.ピグメントイエロー74を「Y74」、C.I.ピグメントレッド122を「R122」、C.I.ピグメントレッド57:1を「R57:1」で示した。また、各実施例および各比較例のトナーを構成する樹脂は、原料として用いた樹脂と同一のガラス転移温度、軟化温度、平均分子量を示すものであった。
Figure 2008089912
Figure 2008089912
[2]評価
[2.1]画像濃度
前記各実施例および前記各比較例で得られたトナーについて、以下のようにして画像濃度の評価を行った。
まず、図2〜図5に示すような構成を有する画像形成装置(カラープリンタ)を用意した。この画像形成装置を用いて、記録媒体(セイコーエプソン社製、上質普通紙)上に、所定のパターンのトナー像を転写、定着し、定着トナー画像を得た。この画像形成装置においては、トナーがニップ部を通過する際の記録媒体の搬送速度を150m/秒、定着ローラの表面の設定温度を170℃に設定した。
上記のようにして得られた記録媒体上の定着トナー画像について、グレタグマクベス社製、スペクトロリーノを用いて、D50光源、視野角2°、フィルターなし、バック黒色板という条件での測定によりOD値を求めた。
C.I.ピグメントレッド122および/またはC.I.ピグメントレッド57:1
を含むトナーについては、以下の5段階の基準に従い評価した。
◎◎:OD値が1.7以上。
◎ :OD値が1.6以上1.7未満。
○ :OD値が1.5以上1.6未満。
△ :OD値が1.4以上1.5未満。
× :OD値が1.4未満。
また、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー74を含むトナーについては、以下の5段階の基準に従い評価した。
◎◎:OD値が1.5以上。
◎ :OD値が1.4以上1.5未満。
○ :OD値が1.3以上1.4未満。
△ :OD値が1.2以上1.3未満。
× :OD値が1.2未満。
[2.2]トナー粒子の室温での強度
前記各実施例および前記各比較例で得られたトナーについて、トナー粒子の室温(25℃)での強度の評価を行った。トナー粒子の強度は、微小圧縮試験機(島津製作所社製、MCT−W500)を用い、上部加圧圧子:50μm径フラット圧子、下部加圧板:SKS平板、負荷速度:0.473988N/秒、温度:25℃、湿度:50%という条件の測定により得られる、試験力−変位グラフから、5%変位時の荷重、最初にみられる変曲点での荷重および変位量の値により評価した。5%変位時の荷重、最初にみられる変曲点での荷重の値が大きいほど、また、最初にみられる変曲点での変位量の値が大きいほど、優れた強度を有していると判断することができる。
[2.3]トナー粒子の低温環境下での強度
前記各実施例および前記各比較例で得られたトナーについて、トナー粒子の低温環境下での強度の評価を行った。トナー粒子の強度は、微小圧縮試験機(島津製作所社製、MCT−W500)を用い、上部加圧圧子:50μm径フラット圧子、下部加圧板:SKS平板、負荷速度:0.473988N/秒、温度:−5℃、湿度:50%という条件の測定により得られる、試験力−変位グラフから、5%変位時の荷重、最初にみられる変曲点での荷重および変位量の値により評価した。5%変位時の荷重、最初にみられる変曲点での荷重の値が大きいほど、また、最初にみられる変曲点での変位量の値が大きいほど、優れた強度を有していると判断することができる。
[2.4]定着良好域、低温定着性
前記各実施例および前記各比較例で得られたトナーについて、以下のようにして定着良好域、低温定着性の評価を行った。
まず、定着装置を有していない以外は、図2、図3に示すような構成を有する画像形成装置(カラープリンタ)を用意した。この画像形成装置を用いて、記録媒体(セイコーエプソン社製、上質普通紙)上にトナー像が転写された未定着の画像サンプルを採取した。なお、採取するサンプルのベタは付着量を0.5g/cmに調整した。
次に、画像形成装置を構成する定着装置の定着ローラの表面温度を所定温度に設定した状態で、上記の未定着のトナー像が転写された記録媒体を、図4、図5に示すような定着装置の内部に導入することにより、トナー像を記録媒体に定着させ、定着後におけるオフセットの発生の有無を目視で確認した。この定着装置では、トナーがニップ部を通過する際の記録媒体の搬送速度を150m/秒に設定した。
同様に、定着ローラの表面の設定温度を100〜220℃の範囲で順次変更していき、各温度でのオフセットの発生の有無を確認し、オフセットが発生しなかった温度範囲を、「定着良好域」として求め、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:定着良好域の幅が50℃以上である。
○:定着良好域の幅が40℃以上50℃未満である。
△:定着良好域の幅が30℃以上40℃未満である。
×:定着良好域の幅が30℃未満である。
[2.5]定着強度
前記各実施例および前記各比較例で得られたトナーについて、以下のようにして定着強度の評価を行った。
まず、図2〜図5に示すような構成を有する画像形成装置(カラープリンタ)を用意した。この画像形成装置を用いて、記録媒体(セイコーエプソン社製、上質普通紙)上に、所定のパターンのトナー像を転写、定着し、定着トナー画像を得た。この画像形成装置においては、トナーがニップ部を通過する際の記録媒体の搬送速度を150m/秒、定着ローラの表面の設定温度を170℃に設定した。
上記のようにして得られた記録媒体上の定着トナー画像を消しゴム(ライオン事務機社製、砂字消し「LION 261−11」)を押圧荷重1.0kgfで1回擦り、画像濃度の残存率をX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定し、以下の5段階の基準に従い評価した。
◎◎:画像濃度残存率が95%以上。
◎ :画像濃度残存率が90%以上95%未満。
○ :画像濃度残存率が80%以上90%未満。
△ :画像濃度残存率が70%以上80%未満。
× :画像濃度残存率が70%未満。
これらの結果を表4に示した。また、表4には、定着良好域の下限値も示した。この下限値が低いほど、低温定着性に優れている。
Figure 2008089912
表4から明らかなように、本発明のトナーでは、画像濃度の高いトナー画像を好適に形成することができた。これにより、トナーの使用量の削減を図ることができ、省資源の観点からも好ましい。また、本発明のトナーは、優れた強度を有し、耐久性に優れるものであった。特に、本発明のトナーは、常温での強度に優れるとともに、低温環境下における強度にも優れていた。また、本発明のトナーでは、定着良好域が広く、低温定着性に優れるとともに、記録媒体への定着強度にも優れるものであった。特に、コア領域とシェル領域とで、着色剤の組成が異なる実施例1〜5、11〜15、16、17では、トナー画像の色調の微妙な調整を、容易かつ確実に行うことができた。
これに対し、各比較例のトナーでは、満足のいく結果が得られなかった。特に、シェル領域に着色剤を含まない比較例1のトナーでは、画像濃度が十分に高いトナー画像を形成することができなかった。また、画像濃度を高める目的で、比較例1に比べ、コア領域中における着色剤含有率を高めた比較例2のトナーでは、低温環境下でのトナー粒子の強度が低く、定着良好域が狭く、低温定着性に劣るとともに、トナー画像の定着強度も低いものであった。また、比較例1、2では、本発明のトナーに比べて、室温でのトナー粒子の強度にも劣るものであった。また、コア領域に着色剤を含まない比較例3のトナーでは、画像濃度が十分に高いトナー画像を形成することができなかった。また、シェル領域中の着色剤含有率が、コア領域中の着色剤含有率よりも高い比較例4のトナーでも、画像濃度が十分に高いトナー画像を形成することができなかった。また、トナー粒子全体としての着色剤の含有率を高める目的で、比較例4に比べ、シェル領域中における着色剤を高めるとともに、シェル領域の厚さを厚くした比較例5では、トナー粒子の強度が低く、特に、低温環境下での強度が著しく低いものであった。また、比較例5のトナーでは、定着良好域が狭く、低温定着性に劣るとともに、トナー画像の定着強度も低いものであった。
本発明のトナーを構成するトナー粒子の好適な実施形態を示す模式的な断面図である。 軟化点の求め方を説明するための図であり、(a)は、測定に用いる装置を模式的に示す速断面図、(b)は、測定結果から軟化点(T1/2)を求める方法を説明するためのグラフである。 本発明のトナーが適用される画像形成装置の好適な実施形態を示す全体構成図である。 図3の画像形成装置が有する現像装置の断面図である。 図3の画像形成装置に用いられる定着装置の詳細構造を示し、一部破断面を示す斜視図である。 図5の定着装置の要部断面図である。
符号の説明
1…トナー粒子 11…コア領域(芯部、核) 12…シェル領域(外殻) 6…ノズル 7…シリンダ 8…試料 9…荷重面 10…画像形成装置 20…装置本体 30…像担持体 40…帯電装置 50…露光装置 60…ロータリー現像装置 600…支持フレーム 601…ハウジング 603…供給ローラ 604…現像ローラ 605…規制ブレード 605a…板状部材 605b…弾性部材 60Y…イエロー用現像装置 60M…マゼンタ用現像装置 60C…シアン用現像装置 60K…ブラック用現像装置 70…中間転写装置 90…駆動ローラ 100…従動ローラ 110…中間転写ベルト 120…一次転写ローラ 130…転写ベルトクリーナ 140…二次転写ローラ 150…給紙カセット 160…ピックアップローラ 170…記録媒体搬送路 190…定着装置 200…排紙トレイ 210…定着ローラ(加熱定着部材) 210a…熱源 210b…筒体 210c…弾性層 210d…回転軸 220…加圧ローラ(加圧部材) 220b…筒体 220c…弾性層 220d…回転軸 230…両面印刷用搬送路 240…ハウジング 250…軸受 260…加圧レバー 270…加圧スプリング 290…支持軸 300…支持軸 310…剥離部材 320…剥離部材 T…トナー

Claims (8)

  1. 多数個のトナー粒子を含むトナーであって、
    前記トナー粒子は、コア領域と、前記コア領域の外周を被覆し、前記コア領域とは異なる組成のシェル領域とを有するものであり、
    前記コア領域および前記シェル領域は、それぞれ、着色剤と樹脂とを含む材料で構成されたものであり、
    前記コア領域中における前記着色剤の濃度をC[wt%]が、前記シェル領域中における前記着色剤の濃度をC[wt%]としたとき、C>Cの関係を満足することを特徴とするトナー。
  2. 前記コア領域中における前記着色剤の濃度Cが、6.0〜22.0wt%である請求項1に記載のトナー。
  3. 前記シェル領域中における前記着色剤の濃度Cが、0.5〜6.5wt%である請求項1または2に記載のトナー。
  4. 前記コア領域中における前記着色剤の濃度C[wt%]と、前記シェル領域中における前記着色剤の濃度C[wt%]とが、1.3≦C/C≦20.0の関係を満足する請求項1ないし3のいずれかに記載のトナー。
  5. 前記シェル領域の平均厚さは、80〜1000nmである請求項1ないし4のいずれかに記載のトナー。
  6. 前記シェル領域の平均厚さをL[nm]、前記シェル領域に含まれる前記着色剤の平均粒径をd[nm]としたとき、0.03≦d/L≦0.25の関係を満足する請求項1ないし5のいずれかに記載のトナー。
  7. 前記コア領域に含まれる前記着色剤と、前記シェル領域に含まれる前記着色剤とは、組成の異なるものである請求項1ないし6のいずれかに記載のトナー。
  8. 前記コア領域に含まれる前記着色剤と、前記シェル領域に含まれる前記着色剤とは、平均粒径の異なるものである請求項1ないし7のいずれかに記載のトナー。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011227262A (ja) * 2010-04-19 2011-11-10 Casio Electronics Co Ltd マイクロカプセルトナー及びその製造方法

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