JP2008158360A - トナーの製造方法およびトナー - Google Patents

トナーの製造方法およびトナー Download PDF

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晃 吉牟田
Hitoshi Takayanagi
均 高柳
Yoshihiro Sato
義浩 佐藤
Takayuki Ito
孝之 伊東
Kenichi Hirabayashi
憲一 平林
Hiroyuki Mariko
浩之 鞠子
Hiroyuki Onishi
弘幸 大西
Toshiaki Yamagami
利昭 山上
Masaya Shibatani
正也 柴谷
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Abstract

【課題】トナー粒子の凝集、粗大粒子の発生を防止でき、生産性に優れたトナーの製造方法、トナー粒子の粒度分布が狭く、高解像度の画像形成に適したトナーを提供すること。
【解決手段】本発明のトナーの製造方法は、樹脂、有機溶剤を含む分散質が分散した水系分散液を得る工程と、分散質を合一させて合一粒子を得る工程と、有機溶剤を除去する脱溶剤工程と、分散媒を除去する工程と、合一粒子を洗浄する洗浄工程と、ウェットケーキを得る脱水工程と、ウェットケーキの乾燥工程とを有し、脱溶剤工程は5.0kPa以下に減圧して有機溶剤に対し120〜150vol%の液体を留去し、洗浄工程は0.25≦攪拌槽の内径/攪拌翼の翼径≦0.40、攪拌翼の先端速度:3〜15m/秒で所定量のエネルギーを与えることで撹拌して洗浄を行い、ウェットケーキ中の有機溶剤を1000ppm以下とすることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、トナーの製造方法およびトナーに関するものである。
電子写真法としては、多数の方法が知られているが、一般には、光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成する工程(露光工程)と、該潜像をトナーを用いて現像する現像工程と、紙等の転写材(記録媒体)にトナー画像を転写する転写工程と、定着ローラを用いた加熱等により、前記トナー画像を定着する定着工程とを有している。
また、トナーとしては、粉砕法により製造されるトナーや、液相において粒成長を行うことにより得られるいわゆるケミカルトナー(例えば、分散液中において複数の分散質を合一させる乳化凝集法により得られるトナー等)がある。
粉砕法は、主成分である樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう。)と、着色剤とを含む原料を混練して混練物を得、その後、前記混練物を冷却、粉砕する方法である。このような粉砕法は、比較的容易にトナーを製造することができる点で優れている。しかしながら、粉砕法で得られるトナーは、粉砕可能な樹脂に限られる。また、その各粒子間での形状のばらつきが大きく、その粒径分布も広くなり易いという欠点を有している。その結果、各トナー粒子間での特性が大きく異なる結果となり、トナー全体としての転写効率が低下したり、帯電特性が低下する等の問題があった。また、近年、より解像度の高い画像を得るために、トナー粒子の小粒径化が求められているが、粉砕法では、この要求に十分に応えるのが困難である。すなわち、粉砕法では、一般に、粉砕物の粒径が比較的小さくなると、急激に粉砕の効率が低下し、また、粉砕とともに微粉の凝集が進行する。このため、粉砕法では、比較的粒径の小さいトナー粒子(例えば、平均粒径6μm以下のトナー粒子)を製造する場合、粉砕に要するエネルギーが非常に大きなものとなり、省エネルギーの観点等からも好ましくない。また、粉砕のために大きなエネルギーを与えると、混練物の構成材料が熱等により変性し易くなる。このため、目的とする特性のトナーを得るのが困難となり、トナーの信頼性が低下する。
一方、ケミカルトナーの製造は、液相中等で粒成長を行うため、トナー粒子の形状を、比較的真球度の高いものにしたり、トナー粒子間での形状のばらつきを抑制することができるという点等で優れている(例えば、特許文献1参照)。また、比較的低温でトナーの製造を行うことから、省エネルギーでトナーを製造できる。
しかしながら、上記のようなケミカルトナーは、粒成長を有機溶剤の存在下にて行うため、トナー粒子の洗浄、乾燥を行った際において、有機溶剤で膨潤したトナー粒子が、凝集し、粗大粒子が発生することがあり、このため、得られるトナー粒子の粒度分布は、粒成長を行った直後の粒子の粒度分布よりも、広いものとなってしまう問題があった。また、トナー画像を印刷した場合において、発生した粗大粒子によるすじ等の欠点が発生し、優れた解像度、画質を得られない問題があった。
また、有機溶剤の除去(脱溶剤)、洗浄を強化した場合では、上記の問題を解決することができるが、この場合、トナーの生産性に劣る問題があった。
特開2003−122051号公報
本発明の目的は、トナー粒子の凝集、粗大粒子の発生を防止でき、生産性に優れたトナーの製造方法および、トナー粒子の粒度分布が狭く、高解像度の画像形成に適したトナーを提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のトナーの製造方法は、樹脂材料および有機溶剤を含む分散質が、水系分散媒中に分散した分散液を調製する分散液調製工程と、
複数個の前記分散質を合一させ、合一粒子を形成する合一工程と、
減圧により、前記合一粒子から前記有機溶剤を除去する脱溶剤工程と、
固液分離により前記水系分散媒を除去し、前記合一粒子を分離する脱分散媒工程と、
攪拌槽内に攪拌翼を備えた攪拌装置を用いて、分離した前記合一粒子を、水性媒体で洗浄する洗浄工程と、
固液分離により前記水性媒体を除去し、前記合一粒子のウェットケーキを得る脱水工程と、
前記ウェットケーキを乾燥する乾燥工程とを有するトナーの製造方法であって、
前記脱溶剤工程は、5.0kPa以下に減圧した状態で、前記有機溶剤の仕込み量に対して120〜150vol%の液体を留去するまで行い、
前記洗浄工程は、前記攪拌装置として、前記攪拌槽の内径をD[cm]、前記攪拌翼の翼径をd[cm]としたとき、0.25≦d/D≦0.40の関係を満足する物を用い、前記攪拌翼の先端速度を3〜15m/秒とし、前記合一粒子と前記水性媒体との混合物1Lあたり、0.1〜1.0Whの攪拌エネルギーを与えることにより行うものであり、
前記ウェットケーキ中における前記有機溶剤の含有率を1000ppm以下とすることを特徴とする。
これにより、トナー粒子の凝集、粗大粒子の発生を防止でき、生産性に優れており、トナー粒子の粒度分布が狭く、高解像度の画像形成に適したトナーを製造できるトナーの製造方法を提供することができる。
本発明のトナーの製造方法は、樹脂材料Aおよび有機溶剤を含む分散質が、水系分散媒中に分散した分散液を調製する分散液調製工程と、
複数個の前記分散質を合一させ、合一粒子を形成する合一工程と、
前記合一粒子を含む分散液に、前記樹脂材料Aとは組成の異なる樹脂材料Bおよび有機溶剤を含む被膜形成用液体を添加し、前記合一粒子の表面を、前記樹脂材料Bを含む材料で構成された被膜で被覆する被覆工程と、
減圧により、前記合一粒子から前記有機溶剤を除去する脱溶剤工程と、
固液分離により前記水系分散媒を除去し、前記合一粒子を分離する脱分散媒工程と、
攪拌槽内に攪拌翼を備えた攪拌装置を用いて、分離した前記合一粒子を、水性媒体で洗浄する洗浄工程と、
固液分離により前記水性媒体を除去し、前記合一粒子のウェットケーキを得る脱水工程と、
前記ウェットケーキを乾燥する乾燥工程とを有するトナーの製造方法であって、
前記脱溶剤工程は、5.0kPa以下に減圧した状態で、前記有機溶剤の仕込み量に対して120〜150vol%の液体を留去するまで行うものであり、
前記洗浄工程は、前記攪拌装置として、前記攪拌槽の内径をD[cm]、前記攪拌翼の翼径をd[cm]としたとき、0.25≦d/D≦0.40の関係を満足する物を用い、前記攪拌翼の先端速度を3〜15m/秒とし、前記合一粒子と前記水性媒体との混合物1Lあたり、0.1〜1.0Whの攪拌エネルギーを与えることにより行うものであり、
前記ウェットケーキ中における前記有機溶剤の含有率を1000ppm以下とすることを特徴とする。
これにより、トナー粒子の凝集、粗大粒子の発生を防止でき、生産性に優れており、トナー粒子の粒度分布が狭く、高解像度の画像形成に適したトナーを製造できるトナーの製造方法を提供することができる。
本発明のトナーの製造方法では、前記攪拌翼が、エッジドタービン翼であることが好ましい。
これにより、トナー粒子から有機溶剤を特に効果的に除去でき、得られるトナー粒子の粒度分布が特に狭いトナーの製造方法を提供することができる。
本発明のトナーの製造方法では、前記攪拌装置は、前記攪拌槽内にバッフルを有するものであることが好ましい。
これにより、トナー粒子から有機溶剤を特に効果的に除去でき、得られるトナー粒子の粒度分布が特に狭いトナーの製造方法を提供することができる。
本発明のトナーの製造方法では、前記有機溶剤として、メチルエチルケトンを用いることが好ましい。
これにより、トナー粒子から有機溶剤を特に効果的に除去でき、得られるトナー粒子の粒度分布が特に狭いトナーの製造方法を提供することができる。
本発明のトナーの製造方法では、前記トナーを構成するトナー粒子は、樹脂材料AとしてポリエステルAを、樹脂材料Bとして前記ポリエステルAよりもガラス転移温度が高いポリエステルBとを含むものであり、
前記ポリエステルBは、その構成成分として、炭素数が100〜1000の炭化水素基を備えた高分子量成分を含むものであることが好ましい。
これにより、得られるトナー粒子の粒度分布が特に狭く、粗大粒子が特に少ないトナーの製造方法を提供することができる。また、高温領域でのオフセットをより確実に防止でき、トナー粒子の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)が優れ、低温領域での定着性のし易さ(低温定着性)が特に優れたトナー粒子を提供することができる。
本発明のトナーの製造方法では、前記高分子量成分は、前記ポリエステルBの側鎖を構成するものであることが好ましい。
これにより、得られるトナー粒子の粒度分布が特に狭く、粗大粒子が特に少ないトナーの製造方法を提供することができる。また、耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)が特に優れ、高温領域でのオフセットをより確実に防止することができるトナー粒子を提供することができる。
本発明のトナーは、本発明の方法を用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、トナー粒子の粒度分布が狭く、高解像度の画像形成に適したトナーを提供することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
<トナー>
まず、本発明のトナーについて説明する。
トナーは、多数個のトナー粒子(トナー母粒子)で構成されている。
《トナー粒子の構成材料》
トナー粒子は、樹脂成分と、着色剤とを含む材料で構成されたものである。
[樹脂成分]
トナー粒子に用いることのできる樹脂成分(バインダー樹脂)は、特に限定されず、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。このなかでも、ポリエステル系樹脂を含むことが好ましい。ポリエステル系樹脂は、透明性が高くかつ高グロスの画像を形成する上で有利である。
そして、トナー粒子は、ポリエステル系樹脂(ポリエステル系樹脂成分)として、ポリエステルAと、ポリエステルAよりもガラス転移温度の高いポリエステルBとを含むものであることが好ましい。言い換えると、トナー粒子は、ポリエステルBに比べてガラス転移温度の低いポリエステルAと、ポリエステルAに比べてガラス転移温度の高いポリエステルBとを含むことが好ましい。
以下、トナー粒子は、樹脂成分として、ポリエステルAとポリエステルBを含むものとして説明する。
(ポリエステルA)
ポリエステルAは、そのガラス転移温度Tg(A)が、後述するポリエステルBのガラス転移温度Tg(B)よりも低いものである。
ポリエステルAは、単独の樹脂成分で構成されるものであってもよいし、2種以上の樹脂成分で構成されるものであってもよい。
ポリエステルAのガラス転移温度Tg(A)は、ポリエステルBのガラス転移温度Tg(B)よりも低いものであればよいが、30〜60℃であるのが好ましく、35〜55℃であるのがより好ましく、37〜44℃であるのがさらに好ましい。ポリエステルAのガラス転移温度Tg(A)が前記範囲内の値であると、トナー粒子の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を十分に優れたものとしつつ、低温領域での定着性のし易さ(低温定着性)を特に優れたものとすることができる。
また、ポリエステルAの軟化温度T1/2(A)は、特に限定されないが、ポリエステルBの軟化温度T1/2(B)よりも低いものであるのが好ましく、具体的には、70〜180℃であるのが好ましく、90〜160℃であるのがより好ましい。これにより、低温定着性を特に優れたものとしつつ、高温領域でのオフセットの発生をより効果的に防止することができる。なお、本明細書で、軟化温度T1/2とは、定荷重押出し形細管式レオメータであるフローテスター(島津製作所製、CFT−500)を用いて、以下のようにして求められる値のことを指す。すなわち、図1(a)に示すようにノズル径Dが1.0mmでノズル長さ(深さ)Lが1.0mmのノズル6を有するシリンダ7に、試料8(重量1.5g)を充填し、ノズル6と反対の側から単位面積(cm)当たり10kgの荷重をかけ、その状態で毎分6℃の昇温速度で加熱したときの、荷重面9のストロークS(荷重面9の沈み値)を測定することにより、昇温した温度とストロークSとの関係を図1(b)に示すようにして求め、ノズル6からの試料8の流出が始まって急激にストロークSが大きくなり、カーブが立ち上がったときの温度をTfb[℃]とし、また、ノズル6からの試料8の流出がほぼ終了してカーブがねたときの温度をTend[℃]としたとき、TfbでのストロークSfbとTendでのストロークSendとの中間値となるS1/2での温度を、本明細書では軟化温度T1/2として採用している。
また、ポリエステルAの重量平均分子量Mw(A)は、特に限定されないが、ポリエステルBの重量平均分子量Mw(B)よりも小さいものであるのが好ましく、具体的には、1万〜18万であるのが好ましく、2万〜15万であるのがより好ましい。これにより、高温領域でのオフセットの発生をより効果的に防止するとともに、揮発性有機化合物量を特に少ないものとすることができる。
ポリエステルAの酸価AV(A)は、特に限定されないが、ポリエステルBの酸価AV(B)よりも小さいものであるのが好ましく、具体的には、5.0〜12.0KOHmg/gであるのが好ましく、7.0〜11.0KOHmg/gであるのがより好ましい。これにより、トナーの環境安定性と帯電性を特に優れたものにできる。
トナー粒子中におけるポリエステルAの含有率は、特に限定されないが、77〜97wt%であるのが好ましく、80〜95wt%であるのがより好ましい。ポリエステルAの含有率が前記範囲内の値であると、トナー粒子中において、ポリエステルAで構成された相と、後述するポリエステルBで構成された相とをより確実に分離させることができ、ポリエステルAおよびポリエステルBの特性をより効果的に発揮させることができる。より具体的には、トナーの耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)等を十分に優れたものとしつつ、トナーの低温定着性を特に優れたものとすることができる。
ポリエステルAは、後述するポリエステルBとは、異なる組成を有するものである。より詳しく説明すると、ポリエステルAは、ポリエステルBの構成成分である高分子量成分を含まない組成を有するものである。
ポリエステル系樹脂は、一般に、多塩基酸成分と多価アルコール成分とが脱水縮合した構成を有している。
ポリエステルAを構成する多塩基酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式カルボン酸類等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの多塩基酸の中でも、芳香族カルボン酸を使用するのが好ましい。
ポリエステルAを構成する多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等の脂環式ジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール類等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの多価アルコールの中でも、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、芳香族ジオール類がより好ましい。
なお、ポリエステルAは、多塩基酸成分、多価アルコール成分以外の構成成分(構成原料)を含むものであってもよい。例えば、ポリエステルAは、構成成分(構成モノマー)として、モノカルボン酸および/またはモノアルコールを含むものであってもよい。これにより、例えば、ポリエステルAの酸価を好適に調整されたものとすることができる。モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、無水酢酸、安息香酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸等が挙げられる。また、モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、フェノール等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ポリエステルAは、構成成分として、1分子中に3個以上のカルボキシル基を有する多塩基酸成分、および/または、1分子中に3個以上の水酸基を有する多価アルコール成分を含むものであってもよい。
また、ポリエステルAは、構成成分として、多価エポキシ化合物を含むものであってもよい。これにより、ポリエステルAを好適な架橋構造を有するものとすることができる。多価エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラキス1,1,2,2(p−ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体(共重合体を含む)、エポキシ化レゾルシノール−アセトン縮合物、部分エポキシ化ポリブタジエン、半乾性もしくは乾性脂肪酸エステルエポキシ化合物等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルが好ましい。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、大日本インキ化学工業社製のエピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、エピクロン3050等が挙げられ、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、大日本インキ化学工業社製のエピクロン830、エピクロン520等が挙げられ、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、大日本インキ化学工業社製のエピクロンN−660、エピクロンN−665、エピクロンN−667、エピクロンN−670、エピクロンN−673、エピクロンN−680、エピクロンN−690、エピクロンN−695等が挙げられ、フェノールノボラック型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、大日本インキ化学工業社製のエピクロンN−740、エピクロンN−770、エピクロンN−775、エピクロンN−865等が挙げられる。また、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、あるいはアクリル共重合体、スチレンとの共重合体等が挙げられる。
また、ポリエステルAは、構成成分として、モノエポキシ化合物を含むものであってもよい。これにより、定着性、高温での耐オフセット性を特に優れたものとすることができる。モノエポキシ化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエステル、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、α−オレフィンオキサイド、モノエポキシ脂肪酸アルキルエステル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、アルキルグリシジルエステルが好ましい。アルキルグリシジルエステルの具体例としては、例えば、ネオデカン酸グリシジルエステル(シェルジャパン社製、カージュラE)等が挙げられる。
ポリエステルAは、上記の多価アルコール成分、多塩基酸成分等の成分を用いて縮合反応させることにより、製造することができる。例えば、上記の成分を、温度計、攪拌器、流下式コンデンサーを備えた反応容器に配合し、窒素等の不活性ガスの存在下で150〜250℃で加熱し、さらにその後、減圧雰囲気下で反応を進行させ、所定の物性値に達した時点で反応を停止させ、冷却することにより、目的とする反応物(ポリエステルA)を得ることができる。このように、減圧雰囲気下で反応を行うことにより、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去するとともに、未反応原料が生成物としてのポリエステルA中に残存するのを効果的に防止することができる。これにより、ポリエステルAとしての揮発性有機化合物(VOC)量を抑制することができる。
ポリエステルAの合成は、例えば、触媒を用いて行ってもよい。触媒(エステル化触媒)としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド等の有機金属;テトラブチルチタネート等の金属アルコキシド等が挙げられる。また、使用するカルボン酸成分が低級アルキルエステルである場合には、エステル交換触媒を使用することができる。エステル交換触媒としては、例えば、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸マグネシウム等の金属酢酸塩;酸化亜鉛、酸化アンチモン等の金属酸化物;テトラブチルチタネート等の金属アルコキシド等が挙げられる。触媒の添加量については、原材料の総量に対して0.01〜1wt%の範囲とするのが好ましい。
トナー粒子は、ポリエステルAとして、非芳香族の直鎖型ポリエステル系樹脂を含むものであるのが好ましい。これにより、高温領域でのオフセットを確実に防止し、トナー粒子の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を十分に優れたものとしつつ、低温領域での定着性のし易さ(低温定着性)を特に優れたものとすることができる。
特に、トナー粒子は、ポリエステルAとして、非芳香族の直鎖型ポリエステル系樹脂および架橋型ポリエステル系樹脂を含むものであるのが好ましい。これにより、高温領域でのオフセットをより確実に防止し、トナー粒子の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を優れたものとしつつ、低温領域での定着性のし易さ(低温定着性)を特に優れたものとすることができる。
(ポリエステルB)
ポリエステルBは、そのガラス転移温度Tg(B)が、前述したポリエステルAのガラス転移温度Tg(A)よりも高いものであり、かつ、後に詳述するようなる高分子量成分を含むものである。
ポリエステルBは、単独の樹脂成分で構成されるものであってもよいし、2種以上の樹脂成分で構成されるものであってもよい。
ポリエステルBのガラス転移温度Tg(B)は、ポリエステルAのガラス転移温度Tg(A)よりも高いものであればよいが、50〜80℃であるのが好ましく、55〜75℃であるのがより好ましく、60〜70℃であるのがさらに好ましい。ポリエステルBのガラス転移温度Tg(B)が前記範囲内の値であると、優れた定着性を保持できる温度領域(オフセットの発生を十分に防止できる温度領域)である定着良好域を十分に広いものとしつつ、トナー粒子の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)等を特に優れたものとすることができる。
また、ポリエステルBの軟化温度T1/2(B)は、特に限定されないが、ポリエステルAの軟化温度T1/2(A)よりも高いものであるのが好ましく、具体的には、150〜220℃であるのが好ましく、150〜200℃であるのがより好ましい。ポリエステルBの軟化温度T1/2(B)が前記範囲内の値であると、高温領域でのオフセットの発生をより効果的に防止するとともに、揮発性有機化合物量を特に少ないものとすることができる。
また、ポリエステルBの重量平均分子量Mw(B)は、特に限定されないが、ポリエステルAの重量平均分子量Mw(A)よりも大きいものであるのが好ましく、具体的には、15万〜45万であるのが好ましく、18万〜30万であるのがより好ましい。ポリエステルBの重量平均分子量Mw(B)が前記範囲内の値であると、高温領域でのオフセットの発生をより効果的に防止するとともに、揮発性有機化合物量を特に少ないものとすることができる。
ポリエステルBの酸価AV(B)は、特に限定されないが、ポリエステルAの酸価AV(A)よりも大きいものであるのが好ましく、具体的には、12.0〜19.0KOHmg/gであるのが好ましく、14.0〜18.0KOHmg/gであるのがより好ましい。これにより、トナーの環境安定性と帯電性を特に優れたものにできる。
トナー粒子中におけるポリエステルBの含有率は、特に限定されないが、1〜20wt%であるのが好ましく、2〜18wt%であるのがより好ましい。ポリエステルBの含有率が前記範囲内の値であると、トナー粒子中において、前述したポリエステルAで構成された相と、ポリエステルBで構成された相とをより確実に分離させることができ、ポリエステルAおよびポリエステルBの特性をより効果的に発揮させることができる。より具体的には、トナーの低温定着性を十分に優れたものとしつつ、高温領域でのオフセットをより確実に防止し、トナーの耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)等を特に優れたものとすることができる。
ポリエステルBは、その構成成分(構成原料)として、炭素数が100〜1000の炭化水素基を備えた高分子量成分を含むものであることが好ましく、110〜800であるのがより好ましく、130〜550であるのがさらに好ましい。これにより、トナー粒子中において、前述したポリエステルAで構成された相と、ポリエステルBで構成された相とを確実に分離させることができ、ポリエステルAおよびポリエステルBの特性を特に効果的に発揮させることができる。より具体的には、トナーの耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)等を特に優れたものとしつつ、トナーの低温定着性を特に優れたものとし、定着良好域を特に広いものとすることができる。また、上記のような炭化水素基をポリエステルBが有することにより、後述する製造方法において、有機溶剤をトナー粒子から特に効率よく溶出させることができ、効率よくトナー粒子を洗浄できる。この結果、トナー粒子の凝集が特に少なく、粗大粒子が特に少ないトナーが得られる。
これに対し、ポリエステルBの代わりに高分子量成分を有していない樹脂を用いた場合には、トナーの耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)が十分に優れたものとならない場合があり、高温領域でのオフセットが発生しやすくなる場合があり、定着良好域が狭いものとなる場合がある。また、後述するトナーの製造方法において、有機溶剤がトナー粒子から効率よく溶出させることが困難な場合があり、効率よくトナーを洗浄できない場合がある。また、高分子量成分を構成する炭化水素基の炭素数が前記下限値未満である場合には、トナーの耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)が十分に優れたものとならない場合があり、高温領域でのオフセットが発生しやすくなる場合があり、定着良好域が狭いものとなる場合がある。一方、高分子量成分を構成する炭化水素基の炭素数が前記上限値を超える場合には、低温でのトナーの定着性が十分に優れたものとならない場合があり、定着良好域が比較的狭くなる場合がある。
高分子量成分を構成する炭化水素基は、直鎖型の炭化水素基であるのが好ましい。これにより、ポリエステルAで構成された相と、ポリエステルBで構成された相とをより確実に分離させることができ、ポリエステルAおよびポリエステルBの特性をより効果的に発揮させることができる。
高分子量成分を構成する炭化水素基は、前述したような炭化水素基を有するカルボン酸成分(高分子量カルボン酸成分)であるのが好ましい。すなわち、ポリエステルBは、その構成成分として、多価アルコール成分、多塩基酸成分に加えて、前述したような炭化水素基を備え、かつ、前記多価塩基酸とは組成の異なる高分子量カルボン酸成分を有するものであるのが好ましい。これにより、ポリエステルAで構成された相と、ポリエステルBで構成された相とをより確実に分離させることができ、ポリエステルAおよびポリエステルBの特性をより効果的に発揮させることができる。また、ポリエステルBの合成時においては、容易かつ確実に、所望の割合の高分子量成分を含むポリエステルBを合成することができる。なお、ポリエステルBの合成に用いる高分子量カルボン酸成分は、カルボキシル基を有するカルボン酸であってもよいが、対応するカルボン酸の塩やエステル(例えば、活性エステル、酸無水物)等であってもよい。
高分子量カルボン酸成分の分子量は、特に限定されないが、1800〜14100であるのが好ましく、1900〜10000であるのがより好ましい。これにより、トナー粒子の耐久性、保存(耐熱保存性、長期保存性等)性を特に優れたものとするとともに、高温領域でのオフセットをより確実に防止することができる。
高分子量成分は、特に限定されないが、ポリエステルBの側鎖を構成するものであるのが好ましい。これにより、トナー粒子の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を特に優れたものとするとともに、高温領域でのオフセットをより確実に防止することができる。
また、ポリエステルBを構成する多塩基酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式カルボン酸類等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの多塩基酸の中でも、芳香族カルボン酸を使用するのが好ましい。
また、ポリエステルBを構成する多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等の脂環式ジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール類等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの多価アルコールの中でも、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、芳香族ジオール類がより好ましい。
また、ポリエステルBは、構成成分として、1分子中に3個以上のカルボキシル基を有する多塩基酸成分、および/または、1分子中に3個以上の水酸基を有する多価アルコール成分を含むものであってもよい。
なお、ポリエステルBは、多塩基酸成分、多価アルコール成分、高分子量成分以外の構成成分(構成原料)を含むものであってもよい。例えば、ポリエステルBは、構成成分(構成モノマー)として、モノカルボン酸および/またはモノアルコールを含むものであってもよい。これにより、例えば、ポリエステルBの酸価を好適に調整されたものとすることができる。モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、無水酢酸、安息香酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸等が挙げられる。また、モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、フェノール等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ポリエステルBは、構成成分として、多価エポキシ化合物を含むものであってもよい。これにより、ポリエステルBを好適な架橋構造を有するものとすることができる。多価エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラキス1,1,2,2(p−ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体(共重合体を含む)、エポキシ化レゾルシノール−アセトン縮合物、部分エポキシ化ポリブタジエン、半乾性もしくは乾性脂肪酸エステルエポキシ化合物等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルが好ましい。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、大日本インキ化学工業社製のエピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、エピクロン3050等が挙げられ、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、大日本インキ化学工業社製のエピクロン830、エピクロン520等が挙げられ、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、大日本インキ化学工業社製のエピクロンN−660、エピクロンN−665、エピクロンN−667、エピクロンN−670、エピクロンN−673、エピクロンN−680、エピクロンN−690、エピクロンN−695等が挙げられ、フェノールノボラック型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、大日本インキ化学工業社製のエピクロンN−740、エピクロンN−770、エピクロンN−775、エピクロンN−865等が挙げられる。また、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、あるいはアクリル共重合体、スチレンとの共重合体等が挙げられる。
また、ポリエステルBは、構成成分として、モノエポキシ化合物を含むものであってもよい。これにより、定着性、高温での耐オフセット性を特に優れたものとすることができる。モノエポキシ化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエステル、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、α−オレフィンオキサイド、モノエポキシ脂肪酸アルキルエステル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、アルキルグリシジルエステルが好ましい。アルキルグリシジルエステルの具体例としては、例えば、ネオデカン酸グリシジルエステル(シェルジャパン社製、カージュラE)等が挙げられる。
ポリエステルBは、上記の多価アルコール成分、多塩基酸成分、高分子量成分等の成分を用いて縮合反応させることにより、製造することができる。例えば、上記の成分を、温度計、攪拌器、流下式コンデンサーを備えた反応容器に配合し、窒素等の不活性ガスの存在下で150〜250℃で加熱し、さらにその後、減圧雰囲気下で反応を進行させ、所定の物性値に達した時点で反応を停止させ、冷却することにより、目的とする反応物(ポリエステルB)を得ることができる。このように、減圧雰囲気下で反応を行うことにより、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去するとともに、未反応原料が生成物としてのポリエステルB中に残存するのを効果的に防止することができる。これにより、ポリエステルBとしての揮発性有機化合物(VOC)量を抑制することができる。
ポリエステルBの合成は、例えば、触媒を用いて行ってもよい。触媒(エステル化触媒)としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド等の有機金属;テトラブチルチタネート等の金属アルコキシド等が挙げられる。また、使用するカルボン酸成分が低級アルキルエステルである場合には、エステル交換触媒を使用することができる。エステル交換触媒としては、例えば、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸マグネシウム等の金属酢酸塩;酸化亜鉛、酸化アンチモン等の金属酸化物;テトラブチルチタネート等の金属アルコキシド等が挙げられる。触媒の添加量については、原材料の総量に対して0.01〜1wt%の範囲とするのが好ましい。
上述したポリエステルAおよびポリエステルBは、以下のような関係を満足するものであるのが好ましい。
すなわち、ポリエステルBのガラス転移温度Tg(B)と、ポリエステルAのガラス転移温度Tg(A)との差Tg(B)−Tg(A)は、5〜35℃であるのが好ましく、10〜30℃であるのがより好ましい。これにより、高温領域でのオフセットを確実に防止し、トナー粒子の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を十分に優れたものとしつつ、低温領域での定着性のし易さ(低温定着性)を特に優れたものとすることができる。
ポリエステルBの酸価AV(B)は、ポリエステルAの酸価AV(A)よりも大きいものであるのが好ましい。これにより、後述するトナーの製造時において、ポリエステルBを外殻に位置させやすくなり、得られるトナーは、ポリエステルBでの保存性の向上の効果が一層発揮されやすくなる。
また、ポリエステルBの重量平均分子量Mw(B)は、ポリエステルAの重量平均分子量Mw(A)よりも大きいものであるのが好ましい。これにより、トナーの耐久性をより向上させることができる。
また、ポリエステルBの重量平均分子量Mw(B)と、ポリエステルAの重量平均分子量Mw(A)との比率Mw(B)/Mw(A)は、3〜40であるのが好ましく、4〜20であるのがより好ましい。これにより、トナー粒子中において、ポリエステルAで構成された相と、ポリエステルBで構成された相とをより確実に分離させることができ、ポリエステルAおよびポリエステルBの特性をより効果的に発揮させることができる。より具体的には、トナーの耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)等を十分に優れたものとしつつ、トナーの低温定着性を特に優れたものとすることができる。
また、トナー中に含まれるポリエステルAの含有量α[wt%]、トナー中に含まれるポリエステルBの含有量β[wt%]との比率α/βは、3〜10であるのが好ましく、4〜8であるのがより好ましい。これにより、高温領域でのオフセットを確実に防止し、トナー粒子の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を十分に優れたものとしつつ、低温領域での定着性のし易さ(低温定着性)を特に優れたものとすることができる。
上記のように、トナー粒子がポリエステルAとポリエステルBとを含むことにより、特に優れた効果が得られる。これに対し、上記のような2種のポリエステル系樹脂を併用しない場合には、上記のような優れた効果は得られない場合がある。例えば、トナー粒子が、ポリエステルAを含みかつポリエステルBを含まないものである場合、トナーの耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)が特に優れたものとならない場合があり、高温領域でのオフセットが発生し易くなる場合があり、定着良好域を十分に広いものとできない場合がある。また、トナー粒子が、ポリエステルBを含みかつポリエステルAを含まないものである場合、低温でのトナーの定着性を優れたものとすることができない場合があり、定着良好域を十分に広いものとできない場合がある。
なお、上記のようなトナー粒子は、ポリエステルAとポリエステルB以外の樹脂成分をさらに含むものでもよい。このような樹脂としては、例えば、上述したような樹脂成分が挙げられ、これらの中から、1種類または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
[着色剤]
トナー粒子を構成する着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、例えば、カーボンブラック、スピリットブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)、マグネタイト、チタンブラック、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、カルコオイルブルー、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ファイナルイエローグリーンG、ローダミン6G、キナクリドン、ローズベンガル(C.I.No.45432)、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー5:1、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー162、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、金属錯塩染料、シリカ、酸化アルミニウム、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
[その他の成分]
また、トナー粒子には、上記以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、ワックス、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。
ワックスとしては、例えば、オゾケライト、セルシン、パラフィンワックス、マイクロワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、フィッシャー・トロプシュワックス等の炭化水素系ワックス、カルナバワックス、ライスワックス、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、キャンデリラワックス、綿ロウ、木ロウ、ミツロウ、ラノリン、モンタンワックス、脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等のエステル系ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス等のオレフィン系ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド等のアミド系ワックス、ラウロン、ステアロン等のケトン系ワックス、エーテル系ワックス等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、ベンジル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、含金属ビスアゾ染料、カッリクスアレン型のフェノール系縮合物、環状ポリサッカライド、トリメチルエタン系化合物、カテコールの金属塩、ニグロシン化合物、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、オニウム化合物、トニフェニルメタン系化合物、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフニン酸等が挙げられる。
磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたもの等が挙げられる。
また、トナー粒子の構成材料(成分)としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いてもよい。
また、トナー粒子は、例えば、上記のような材料で構成されたトナー母粒子の表面付近に、外添剤が付与されたものであってもよい。外添剤としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、チタニア、酸化亜鉛、マグネタイト等の金属酸化物、窒化珪素等の窒化物、炭化珪素等の炭化物、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、脂肪族金属塩等の無機材料で構成された微粒子、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、脂肪族金属塩等の有機材料で構成された微粒子やこれらの複合物で構成された微粒子等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、外添剤としては、上記のような微粒子の表面に、HMDS、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、フッ素含有シラン系カップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施したものを用いてもよい。
《トナー粒子の構造》
本発明において、トナー粒子は、いかなる構造を有するものであってもよいが、以下、トナー粒子の構造の一例について説明する。
図2は、本発明のトナーを構成するトナー粒子の好適な実施形態を示す模式的な断面図である。
トナー粒子1は、コア領域(芯部、核)11と、コア領域11の外周を被覆するシェル領域(外殻)12とを有するものである。コア領域11およびシェル領域12に用いる材料は、上述したような材料を用いることができ、いかなるものであってもよい。以下の説明では、コア領域が前述したポリエステルAを含む材料で構成されたものであり、かつ、シェル領域が前述したポリエステルBを含む材料で構成されたものとして説明する。
[コア領域]
コア領域11は、ポリエステルAと上述したような着色剤とを含む材料で構成されたものである。これにより、トナー全体としての定着良好域を特に広いものとすることができる。
また、コア領域11には、上記以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、ポリエステルAおよびポリエステルB以外の樹脂成分、ワックス、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。
また、コア領域11の構成材料(成分)としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いてもよい。
また、トナー粒子1中においてコア領域11の占める割合は、50〜99.5vol%であるのが好ましく、60〜95vol%であるのがより好ましい。コア領域11の占める割合が前記範囲内の値であると、トナー粒子1の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)等を十分に優れたものとしつつ、コア領域11の構成材料の特性をより効果的に発揮させることができる。
[シェル領域]
シェル領域12は、コア領域11の外周を被覆するように設けられたものである。
シェル領域12は、常温(25℃)において、コア領域11よりも強度の高いものであるのが好ましい。これにより、トナー粒子1全体としての強度を高いものとしつつ、シェル領域12を構成する材料の特性を効果的に発揮させることができる。
シェル領域12は、ポリエステルBを含む材料で構成されたものである。これにより、トナー粒子中において、ポリエステルAで構成された相としてのコア領域11と、ポリエステルBで構成された相としてのシェル領域12とを確実に分離させることができ、コア領域11とシェル領域12との境界が不明瞭になる(少なくとも一部が相溶してしまう)ことを防止することができる。その結果、ポリエステルAおよびポリエステルBの特性を効果的に発揮させることができる。より具体的には、例えば、トナーの耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)等を十分に優れたものとしつつ、トナーの低温定着性を特に優れたものとすることができる。
また、シェル領域12の厚さは、特に限定されないが、0.01〜1.5μmであるのが好ましく、0.02〜1.0μmであるのがより好ましい。シェル領域12の厚さが前記範囲内の値であると、トナーの定着良好域を十分に広いものとしつつ、トナーの耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)等を優れたものとすることができる。
また、シェル領域12には、上記以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、ポリエステルAおよびポリエステルB以外の樹脂成分、着色剤、ワックス、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。また、シェル領域12の構成材料(成分)としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いてもよい。
《トナー粒子の全体構成》
上記のようなトナー粒子1の平均粒径は、特に限定されないが、2.5〜10μmであるのが好ましい。トナー粒子1の平均粒径が前記範囲内の値であると、高解像度の画像形成に好適に適用することができるとともに、低温定着性の向上に有利であり、また、コア領域11の構成材料の特性およびシェル領域12の構成材料の特性を、より確実に発揮させることができる。なお、本明細書で、平均粒径とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒径のことを指す。
トナーを構成するトナー粒子は、均一な形状を有し、粒度分布のシャープな(幅の小さい)ものであるのが好ましい。
具体的には、下記式(I)で表されるトナー粒子についての平均円形度Rは、0.95〜0.99であるのが好ましい。平均円形度Rが前記範囲内の値であると、トナーの転写効率を特に優れたものとしつつ、画像形成装置内におけるクリーニング性を十分に優れたものとすることができる。
R=L/L・・・(I)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円(完全な幾何学的円)の周囲長を表す。)
また、トナー粒子についての円形度の標準偏差は、0.04以下であるのが好ましい。このように、円形度の標準偏差が十分に小さいと、帯電特性、定着特性等のばらつきが特に小さくなり、トナー全体としての、信頼性がさらに向上する。
また、トナー粒子の粒径の標準偏差(σ(D))をトナー粒子の平均粒径(D)で除した数値(σ(D)/D)×100として表されるトナー粒子の粒径についての変動係数は、24.0以下であるのが好ましく、20.0以下であるのがより好ましい。これにより、トナー粒子の粒度分布は特にシャープなものとなり、トナーを用いて形成される画像を、より良好なものとすることができる。また、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等のばらつきを特に小さいものとすることができ、トナー全体としての信頼性を特に優れたものとすることができる。また、例えば、トナーの製造時においては、トナーの乾燥を容易かつ確実に行うことができ、トナー中の含水量を抑制することができる。
また、トナー粒子についての50%体積粒径をDv(50)[μm]、50%個数粒径をDn(50)[μm]としたとき、Dv(50)/Dn(50)の値は、1.00〜1.25であるのが好ましく、1.00〜1.10であるのがより好ましい。これにより、トナーを用いて形成される画像を、より良好なものとすることができる。
なお、Dv(50)、Dn(50)の値は、例えば、コールター社製マルチサイザーII型(アパーチャーチューブ径:100μm)を用いた測定により求めることができる。
上記のようなトナー粒子は、後述するような方法により、容易かつ確実に得ることができる。
本発明のトナーは、一成分系現像剤として用いられるものであってもよいし、二成分型現像剤として用いられるものであってもよい。また、本発明のトナーは、乾式トナーとして用いられるものであってもよいし、液体現像剤に用いられるものであってもよい。
<トナーの製造方法>
次に、上述したようなトナーの製造方法の好適な実施形態について説明する。以下の説明では、コア領域が前述したポリエステルAを含む材料で構成されたものであり、かつ、シェル領域が前述したポリエステルBを含む材料で構成されたものとして説明する。
本実施形態の製造方法は、樹脂成分と着色剤とを含む材料で構成された分散質が分散(乳化および/または懸濁)した分散液(乳化懸濁液)を調製する工程(乳化懸濁液調製工程)と、複数個の分散質を合一させ、合一粒子を得る工程(合一工程)と、合一粒子の表面を、合一粒子を構成する樹脂成分とは異なる組成の樹脂成分で構成された被膜で被覆する工程(被覆工程)と、減圧により合一粒子から前記有機溶剤を除去する工程(脱溶剤工程)と、固液分離により水系分散媒を除去し、前記合一粒子を分離する工程(脱分散媒工程)と、攪拌槽内に攪拌翼を備えた攪拌装置を用いて、分離した前記合一粒子を、水性媒体で洗浄する工程(洗浄工程)と、固液分離により水性媒体を除去し、合一粒子のウェットケーキを得る工程(脱水工程)と、ウェットケーキを乾燥する工程(乾燥工程)とを有する。
[乳化懸濁液調製工程(分散液調製工程)]
まず、乳化懸濁液調製工程について説明する。
本工程で調製する乳化懸濁液は、トナー粒子1のコア領域11を形成に用いるものである。
乳化懸濁液は、いかなる方法で調製してもよいが、例えば、ポリエステルAと着色剤と有機溶剤(有機溶媒)とを含む液体である着色樹脂液を、水性媒体と混合することにより調製することができる。
着色樹脂液を構成する樹脂成分としては、前述したコア領域11の構成材料としての樹脂成分またはその前駆体(例えば、プレポリマー、モノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー等)を用いることができる。また、着色剤としては、前述したコア領域11の構成材料として例示したものを用いることができる。
また、有機溶剤(有機溶媒)としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン系溶媒、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−メトキシエタノール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、2−メトキシエタノール等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ジデカン、メチルシクロヘキセン、イソプレン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、四塩化炭素等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル等のエステル系溶媒、アクリロニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を混合したものを用いることができる。
有機溶剤としては、25℃での100重量部の水に対する溶解度が、5〜40重量部であるのが好ましく、10〜30重量部であるのがより好ましい。これにより、後述する合一工程および被覆工程にて好適に合一粒子を製造できるとともに、引き続く溶剤除去工程および洗浄工程にて好適に有機溶剤を除去できる。これに対し、有機溶剤の25℃での100重量部の水に対する溶解度が前記下限値値未満であると、後述する溶剤除去工程および洗浄工程にて、トナー粒子に含まれた有機溶剤が水に溶出しずらくなり、有機溶剤を十分に除去することが困難になる場合がある。一方、有機溶剤の25℃での100重量部の水に対する溶解度が前記上限値を超えると、有機溶剤の水に対する親和性が高くなりすぎ、減圧下にて、効率よく有機溶剤を回収することが困難になる場合がある。また、合一工程、被覆工程において、合一粒子の大きさにばらつきが生じる場合がある。
また、有機溶剤の沸点(常圧(1気圧)での沸点。以下、同様。)は、水の沸点よりも低いのが好ましい。これにより、有機溶剤の回収を効率良く行うことができる。
上記のような条件を満足する有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒等が挙げられる。中でも、メチルエチルケトンおよび酢酸エチルを用いことが好ましい。これにより、樹脂成分(特に、ポリエステル系樹脂)を容易に溶解、分散させることができる。特に、メチルエチルケトンを用いることが好ましい。これにより、上記の効果に加え、後述する脱溶剤工程および洗浄工程において有機溶剤を特に容易にトナー粒子から除去することができる。
着色樹脂液は、例えば、樹脂成分と着色剤と有機溶剤と含む材料を、高速攪拌機等の攪拌機により混合することにより得ることができる。また、着色樹脂液は、例えば、樹脂成分と着色剤とを含む組成物を予め混練しておき、混練により得られた混練物と、有機溶剤とを混合することにより、調製してもよい。着色樹脂液の調製に用いることのできる攪拌機としては、例えば、DESPA(浅田鉄工社製)、T.K.ロボミクス/T.K.ホモデスパー2.5型翼(プライミクス社製)等が挙げられる。
攪拌機を用いた混合時における翼先端速度は、例えば、4〜30m/秒であるのが好ましく、10〜25m/秒であるのがより好ましい。翼先端速度が前記範囲内の値であると、樹脂成分の有機溶剤への溶解、分散を効率良く行うことができるとともに、着色剤の着色樹脂液中における着色剤の分散状態をより均一なものとすることができる。これに対し、翼先端速度が前記下限値未満であると、樹脂成分、着色剤、有機溶剤の組成等によっては、着色樹脂液中における着色剤の微分散が不十分になる可能性がある。一方、翼先端速度が前記上限値を超えると、有機溶剤の組成等によっては、剪断による発熱が大きくなり、有機溶剤の揮発等と相まって均一な攪拌が困難になる可能性がある。
また、攪拌時における材料温度は、20〜60℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのがより好ましい。
得られる着色樹脂液中において、樹脂成分、着色剤は、有機溶剤に溶解または分散している。
着色樹脂液中におおける固形分の含有率は、特に限定されないが、40〜75wt%であるのが好ましく、50〜73wt%であるのがより好ましく、50〜70wt%であるのがさらに好ましい。固形分の含有率が前記範囲内の値であると、後述する乳化懸濁液を構成する分散質を、より球形度の高いもの(真球に近い形状もの)とすることができ、最終的に得られるトナー粒子1の形状を、より確実に好適なものとすることができる。
また、着色樹脂液は、乳化剤(分散剤)を含むものであってもよい。これにより、後に詳述する乳化懸濁液中における分散質の分散性を、容易に、特に優れたものとすることができる。
乳化剤としては、一般に、分散剤、分散安定剤、界面活性剤として用いられているものを適用することができる。本発明において、乳化剤として適用することのできる具体的な材料としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルや、各種プルロニック系等のノニオン系乳化剤、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系乳化剤、第4級アンモニウム塩等のカチオン系乳化剤等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、乳化剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。これにより、乳化懸濁液中における分散質の分散性を特に優れたものとしつつ、最終的なトナー中に乳化剤が残存した場合であっても、トナー粒子の帯電特性に対して悪影響を及ぼすのを効果的に防止することができるとともに、TVOC(揮発性有機化合物)量が増大するのを効果的に防止することができる。アルキルベンゼンスルホン酸塩が有するアルキル基としては、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノナニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられるが、ドデシル基が好ましい。すなわち、アルキルベンゼンスルホン酸塩は、ドデシルベンゼンスルホン酸塩であるのが好ましい。これにより、乳化懸濁液中における分散質の分散性をさらに優れたものとしつつ、最終的なトナー中に乳化剤が残存した場合であっても、トナー粒子の帯電特性に対して悪影響を及ぼすのをより効果的に防止することができるとともに、TVOC(揮発性有機化合物)量が増大するのをより効果的に防止することができる。
使用する乳化剤の量は、固形分含有量に対し0.1〜3.0wt%であるのが好ましく、0.3〜2.0wt%であるのがより好ましく、0.3〜1.5wt%であるのがさらに好ましい。使用する乳化剤の量が前記下限値未満であると、粗大粒子発生に対する防止効果が十分に得られない可能性がある。一方、使用する乳化剤の量が前記上限値を超えると、後述する合一工程において、分散質の合一が十分に進行せず、所定粒径より小さい微粒子が残存し、着色樹脂微粒子の収率が低下する可能性がある。
なお、着色樹脂液中には、樹脂成分、着色剤、有機溶剤以外の成分として、前述したようなワックス、帯電制御剤、磁性粉末等を含むものであってもよい。
また、着色樹脂液の調製においては、調製すべき着色樹脂液の構成成分をすべて同時に混合してもよいし、予め、調製すべき着色樹脂液の構成成分のうち一部を混合して混合物(マスター)を得、その後、当該混合物(マスター)を、他の成分と混合してもよい。例えば、着色剤と樹脂成分とを混合(混練)し、着色剤マスターを得た後、着色剤マスターと、樹脂成分(追加樹脂)と、有機溶剤とを、混合することにより、着色樹脂液を調製してもよい。これにより、各成分が均一に混ざり合った着色樹脂液を、より確実に得ることができる。
ポリエステルAが重量平均分子量の異なる少なくとも3種の樹脂成分を含む場合、すなわち、ポリエステルAが、第1の樹脂成分と、前記第1の樹脂成分よりも重量平均分子量の大きい第2の樹脂成分と、前記第1の樹脂成分よりも重量平均分子量の小さい第3の樹脂成分とを含むものである場合、前記第1の樹脂成分を着色剤マスターの調製に用い、当該着色剤マスターを、前記第2の樹脂成分、前記第3の樹脂成分、および有機溶剤と混合することにより、着色樹脂溶液を調製してもよい。これにより、乳化懸濁液中において、ポリエステルAを含む材料で構成された分散質中に着色剤をより確実に内包させることができる。その結果、所望の着色濃度のトナー粒子を容易かつ確実に製造することができる。
ポリエステルAとして、上記のような第1の樹脂成分、第2の樹脂成分、および、第3の樹脂成分を含むものを用いる場合、それぞれの樹脂の混合体全体として前述の重量平均分子量の範囲に入ることが好ましく、各樹脂成分の重量平均分子量は、以下のような条件を満足するものであるのがより好ましい。すなわち、第3の樹脂成分の重量平均分子量は、1000〜5500であるのが好ましく、1500〜5000であるのがより好ましい。また、第1の樹脂成分の重量平均分子量は、5500〜100000であるのが好ましく、7000〜80000であるのがより好ましい。また、第2の樹脂成分の重量平均分子量は、100000〜300000であるのが好ましく、120000〜280000であるのがより好ましい。これらの条件を満足することにより、乳化懸濁液中において、ポリエステルAを含む材料で構成された分散質中に着色剤をより確実に内包させることができ、定着性を確保しつつ所望の着色濃度のトナー粒子をより確実に製造することができる。
また、着色樹脂液の構成成分としてワックスを用いる場合、例えば、ワックスと、樹脂成分と、有機溶剤とを含む材料を混合し、ワックスマスターを得、このワックスマスターを、着色剤マスター、樹脂成分(追加樹脂)および有機溶剤と混合することにより、着色樹脂液を調製してもよい。また、ワックスマスターの調製においては、ワックスの粒子が水系分散媒中に分散したワックス分散液(いわゆる、ワックスエマルジョン)を用いてもよい。
上記のような着色樹脂液を、水性媒体と混合することにより乳化懸濁液を調製する。
水性媒体としては、主として水で構成されたものを用いることができる。
水性媒体中には、例えば、水との相溶性に優れる溶媒(例えば、25℃での100重量部の水に対する溶解度が、50重量部以上である溶媒)を含むものであってもよい。
また、水性媒体は、乳化剤(分散剤)を含むものであってもよい。
また、乳化懸濁液の調製に際して、例えば、中和剤を用いてもよい。これにより、例えば、ポリエステル系樹脂(ポリエステルA)が有する官能基(カルボキシル基)を中和することができ、調製される乳化懸濁液中における分散質の形状、大きさの均一性、分散質の分散性を特に優れたものとすることができる。また、中和剤を用いることにより、乳化剤の使用量を抑制したり、乳化剤等を用いなくても、分散質の分散性を十分に優れたものとすることができるため、乳化剤等を用いることによる不都合の発生を防止することができる。例えば、比較的多量の乳化剤等を用いた場合、乳化懸濁液の調製時において、比較的高い剪断力が必要となり、これにより、粗大粒子(粗大な分散質)の発生、分散質の粒度分布が広がる等の問題が発生し易いが、中和剤による中和を行うことにより、このような問題の発生を防止することができる。
中和剤は、例えば、着色樹脂液に添加されるものであってもよいし、水性媒体に添加されるものであってもよい。
また、中和剤は、乳化懸濁液の調製において、複数回に分けて添加されるものであってもよい。例えば、前述したように調製された着色樹脂液に対して中和剤を添加した後に、当該着色樹脂液(中和剤が添加された着色樹脂液)と水性媒体とを混合し、さらにその後、混合液中に中和剤を添加してもよい。これにより、着色樹脂液と水性媒体との混合時における液体の粘度上昇を効果的に抑制しつつ、分散質が均一かつ微細に分散した乳化懸濁液を容易に得ることができる。
中和剤としては、塩基性化合物を用いることができ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン等の有機塩基等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、中和剤は、上記のような化合物を含む水溶液であってもよい。
また、塩基性化合物の使用量は、ポリエステル系樹脂が有する全カルボキシル基を中和するために必要な量の1〜3倍に相当する量(1〜3当量)が好ましく、1〜2倍に相当する量(1〜2当量)がより好ましい。これにより、異形の分散質が形成されるのを効果的に防止することができ、また、後に詳述する合一工程において得られる粒子の粒度分布を、よりシャープなものとすることができる。
本工程で得られた乳化懸濁液において水を滴下した後の水(乳化のために使用した水、ワックスマスターの調製に用いたワックス分散液(いわゆる、ワックスエマルジョン)からの水、中和塩基等を加えた水の全量)と有機溶媒との比率は、体積比で、50:50〜80:20であるのが好ましく、60:40〜80:20であるのがより好ましい。これにより、調製される乳化懸濁液中における分散質の形状、大きさの均一性、分散質の分散性を特に優れたものとすることができる。
着色樹脂液と水性媒体との混合は、いかなる方法で行うものであってもよいが、攪拌機等により着色樹脂液に剪断を加えつつ、着色樹脂液中に水性媒体を徐々に添加(滴下)することにより行い、最終的に、水性媒体中に、着色樹脂液由来の分散質が分散した分散液を得るのが好ましい。これにより、例えば、分散質が均一かつ微細に分散した乳化懸濁液を、容易かつ確実に得ることができる。
乳化懸濁液の調製に用いることのできる攪拌機としては、例えば、DESPA(浅田鉄工社製)、T.K.ロボミクス/T.K.ホモデスパー2.5型翼(プライミクス社製)、スラッシャ(三井鉱山社製)、キャビトロン(ユーロテック社製)等の高速攪拌機、あるいは高速分散機等が挙げられる。
攪拌機を用いた混合時における翼先端速度は、例えば、4〜30m/秒であるのが好ましく、10〜25m/秒であるのがより好ましい。翼先端速度が前記範囲内の値であると、乳化懸濁液を効率良く得ることができるとともに、乳化懸濁液中における分散質の形状、大きさのばらつきを特に小さいものとすることができ、分散質の均一分散性を特に優れたものとすることができる。これに対し、翼先端速度が前記下限値未満であると、乳化懸濁液中における分散質の微分散を十分に達成することが困難になる可能性がある。一方、翼先端速度が前記上限値を超えると、攪拌時に、着色樹脂液と水性媒体との混合液の飛散が激しくなり、不溶解物が混在する可能性がある。
また、攪拌時における材料温度は、20〜60℃であるのが好ましく、20〜50℃であるのがより好ましい。
[合一工程]
次に、複数個の分散質を合一させ、合一粒子を得る(合一工程)。得られる合一粒子(着色樹脂微粒子)は、製造すべきトナー粒子1のコア領域11に対応するものである。分散質の合一は、通常、有機溶剤を含む分散質が衝突することにより、これらが融着して進行する。
複数個の分散質を合一させる方法は、特に限定されないが、分散液中に、電解質を添加する方法が好ましい。これにより、容易かつ確実に合一粒子を得ることができる。また、電解質の添加量を調節することにより、容易かつ確実に、合一粒子(着色樹脂微粒子)の粒径を制御することができる。
電解質としては、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素アンモニウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸ナトリウム等の塩や、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸等の酸性物質等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、1価のカチオンの硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム)、炭酸塩が好ましい。
電解質の添加は、複数回に分けて行ってもよい。これにより、容易かつ確実に、所望の大きさの着色樹脂微粒子(合一粒子)を得ることができるとともに、得られる着色樹脂微粒子(合一粒子)の円形度を確実に、十分に大きいものとすることができる。
本工程で添加される電解質の量は、特に限定されないが、電解質が添加される分散液の固形分100重量部に対し、0.1〜20重量部であるのが好ましく、0.2〜10重量部であるのがより好ましい。
また、電解質は、水溶液の状態で添加されるのが好ましい。これにより、速やかに分散液全体に、電解質を拡散させることができるとともに、電解質の添加量を容易かつ確実に制御することができる。
本工程における処理温度は、特に限定されないが、10〜50℃であるのが好ましく、15〜40℃であるのがより好ましく、20〜35℃であるのがさらに好ましい。処理温度が前記下限値未満であると、合一の進行が遅くなり、トナーの生産性が低下する場合がある。一方、処理温度が前記上限値を超えると、不本意な凝集物や粗大粒子が発生し易くなる。
本工程は、分散液を攪拌した状態で行うのが好ましい。これにより、粒子間での形状、大きさのばらつきが特に小さい合一粒子を得ることができる。
本工程では、例えば、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼等の攪拌翼を用いることができるが、中でも、マックスブレンド翼、フルゾーン翼が好ましい。これにより、分散質を効率良く合一させつつ、一旦形成された合一粒子(着色樹脂微粒子)が崩壊するのをより確実に防止することができる。その結果、粒子間での形状、粒径のばらつきの小さい合一粒子を効率良く得ることができる。
攪拌翼の翼先端速度は、例えば、0.1〜10m/秒であるのが好ましく、0.2〜8m/秒であるのがより好ましく、0.2〜6m/秒であるのがさらに好ましい。翼先端速度が前記範囲内の値であると、分散質をより効率良く合一させつつ、一旦形成された合一粒子が崩壊するのをさらに確実に防止することができる。その結果、粒子間での形状、粒径のばらつきが特に小さい合一粒子を効率良く得ることができる。これに対し、翼先端速度が前記下限値未満であると、攪拌が不均一となり、必要以上に粗大化した粗大粒子が発生し易くなる。一方、翼先端速度が前記上限値を超えると、合一粒子の形成に寄与しない微粒子が残存し易くなる傾向がある。
合一粒子が所望の粒径に達したら、合一を停止させる。これにより、所望の粒径の合一粒子を確実に得ることができる。
合一を停止させる方法としては、例えば、攪拌速度を挙げる方法、分散液(合一粒子が分散した分散液)の温度を低下させる方法、分散液中に水を添加する方法や、これらのうち2つ以上を組み合わせた方法等が挙げられる。中でも、合一を停止させる方法としては、分散液中に水を添加する方法を用いるのが好ましい。これにより、不本意な合一粒子の更なる合一や崩壊等を確実に防止しつつ、速やかに分散質の合一を停止させることができる。その結果、所望の粒径を有し、粒度分布がシャープなトナーを確実に得ることができる。なお、分散液中に水を添加することにより合一を停止させる場合、添加した水により分散質中に含まれる有機溶剤が抽出され、分散質粒子が硬くなる。その結果、合一が停止するとともに、合一粒子の崩壊が確実に防止されるものと考えられる。
分散液中に水を添加することにより合一を停止させる場合、添加する水は、分散液中に含まれる有機溶剤100重量部に対して、分散液中に含まれる水の総量が、400重量部以上となるように加えるのが好ましく、500重量部以上となるように加えるのがより好ましい。
また、分散液中に水を添加することにより合一を停止させる場合、水の添加後(合一の停止後)に、固形分の含有率が18〜25wt%となるように、水を加えるのが好ましい。これにより、トナー製造時における有機溶剤、水の使用量を十分に抑制しつつ、大きさ、形状のばらつきの小さい好適なトナーを製造することができる。また、分散液中の有機溶剤の濃度が適度なものになり、後述する脱溶剤工程において、特に効率よく有機溶剤を除去できる。
[被覆工程]
次に、上記のような合一粒子(着色樹脂微粒子)の表面に、当該分散質を構成する樹脂成分とは異なる樹脂成分で構成された被膜を形成する(被覆工程)。
本工程で形成する被膜は、形成すべきトナー粒子1のシェル領域12に対応するものである。
被膜の形成は、例えば、被膜を構成する樹脂成分と、有機溶剤とを含む液体である被膜形成用液と、前述した合一粒子が分散した分散液とを混合することにより、行うことができる。
被膜を構成する樹脂成分としては、前述したシェル領域12の構成材料としての樹脂成分(ポリエステルB)またはその前駆体(例えば、プレポリマー、モノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー等)を用いることができる。
被膜形成用液を構成する有機溶剤としては、例えば、前述した着色樹脂液の構成材料として例示したものを用いることができる。
被膜形成用液を構成する有機溶剤と、前述した着色樹脂液を構成する有機溶剤とは、実質的に同一の組成を有するものであってもよいし、異なる組成を有するものであってもよいが、少なくとも、共通の成分を含むものであるのが好ましい。これにより、合一粒子の表面に、効率良く被膜を形成することができる。
また、被膜形成用液は、例えば、樹脂成分を含む材料で構成された分散質が、水系の分散媒(水系媒体)中に微分散した分散液であってもよい。これにより、被膜の形成を容易かつ確実に行うことができるとともに、形成される被膜の厚さの均一性を高めることができる。
また、被膜形成用液を構成する樹脂成分は、中和剤により中和されたものであってもよい。これにより、例えば、被膜が形成された状態での合一粒子(分散質)の分散性を特に優れたものとすることができる。
中和剤の種類、添加量、添加方法等の各種条件は、例えば、前述した乳化懸濁液調製工程で説明したのと同様とすることができる。これにより、上述したのと同様の効果が得られる。
合一粒子が分散した分散液と被膜形成用液との混合は、いかなる方法で行うものであってもよいが、攪拌機等により合一粒子が分散した分散液に剪断を加えつつ、合一粒子が分散した分散液中に被膜形成用液を徐々に添加(滴下)することにより行うのが好ましい。これにより、容易かつ確実に、均一な厚さの被膜を形成することができる。
合一粒子が分散した分散液と被膜形成用液との混合においては、例えば、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼等の攪拌翼を用いることができるが、中でも、マックスブレンド翼、フルゾーン翼が好ましい。これにより、膜厚のばらつきの小さい被膜を、効率良く形成することができる。
攪拌翼の翼先端速度は、例えば、0.1〜10m/秒であるのが好ましく、0.2〜8m/秒であるのがより好ましく、0.2〜6m/秒であるのがさらに好ましい。翼先端速度が前記範囲内の値であると、分散質の不本意な合一を確実に防止しつつ、均一な厚さの被膜を効率良く形成することができる。
また、攪拌時における材料温度は、20〜60℃であるのが好ましく、20〜50℃であるのがより好ましい。
また、合一粒子が分散した分散液と被膜形成用液との混合時に、電解質を添加してもよい。これにより、被膜の形成を促進することができる。また、電解質の添加量を調節することにより、容易かつ確実に、被膜の厚さを制御することができる。
電解質としては、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素アンモニウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸ナトリウム等の塩や、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸等の酸性物質等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、1価のカチオンの硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム)、炭酸塩が好ましい。
本工程で添加される電解質の量は、特に限定されないが、被膜形成用液の固形分100重量部に対し、0.1〜3重量部であるのが好ましく、0.3〜2重量部であるのがより好ましい。
また、電解質は、水溶液の状態で添加されるのが好ましい。これにより、速やかに混合液(合一粒子が分散した分散液と被膜形成用液との混合液)全体に、電解質を拡散させることができるとともに、電解質の添加量を容易かつ確実に制御することができる。
こうして、得られる合一粒子に対して、脱溶剤、洗浄、乾燥が行われ、トナー粒子が得られる。このようにして得られたトナー粒子は、本来、粒度分布が狭く、低温定着性が優れ、定着量広域の広いトナー粒子となる。しかしながら、従来のトナー粒子は、分散液から脱溶剤し、合一粒子を洗浄、乾燥した際において、合一粒子が凝集し、粗大粒子が発生する問題があり、得られるトナー粒子は、粒度分布が狭いものとならない場合があった。このため、画像形成した際において、トナーに含まれる粗大粒子によって、トナー画像中にすじ、かすれ等の欠陥が発生する場合があった。また、トナー粒子の粒度分布が広くなることから、トナー粒子の特性のばらつきが大きくなり、現像、転写を高効率で行えず、高い解像度を得るのが難しい場合があった。このため、従来のトナーは、高解像度の画像形成装置に適したトナーとならない問題があった。
一方で、脱溶剤、洗浄を通常よりも長い時間行った場合、上記のような問題は防止することができるが、トナーの生産性に劣る問題があった。
そこで、発明者らは、鋭意検討した結果、合一粒子に対して、以下のような処理を行うことで上記のような問題を解決することができ、さらに高効率でトナーを製造できることを見出した。また、合一粒子に対して以下のような処理を行うことで、得られたトナーをカートリッジに保存する場合において、トナーに残存した有機溶剤による臭気の発生やトナー粒子の凝集を防止することができる。
[脱溶剤(脱溶媒)工程]
本発明において、分散液中に含まれる有機溶剤を除去する脱溶剤工程は、減圧により有機溶剤を気化させ、留去することにより行う。これにより、樹脂成分等の構成材料の変性等を十分に防止しつつ、効率良く有機溶剤を除去することができる。留去して得られる液体は、主として有機溶剤と水性媒体とを含むものである。
減圧の方法は、特には限定されないが、例えば、減圧容器に分散液を入れ真空ポンプにて減圧して有機溶剤の除去を行う方法が挙げられる。
本工程において、減圧によって留去される液体は、各工程で仕込んだ有機溶剤の量に対して、120〜150vol%である。これにより、有機溶剤の大部分の量を本工程にて効率よく取り除くことができ、洗浄、乾燥工程での合一粒子の凝集することを防止することができ、粗大粒子の発生を防止することができる。これに対し、留去される液体が、仕込んだ有機溶剤の量に対して少なすぎると、有機溶剤の留去が不十分となり、分散液中のTVOC(揮発性有機化合物)量が大きくなるため、洗浄、乾燥工程にて、合一粒子の凝集が発生し、また、粗大粒子が発生してしまう。このため、得られたトナー粒子の粒度分布が広いものとなってしまう。また、得られたトナーを用いて画像形成を行った際にトナー画像の解像度を優れたものにできず、すじ等の欠点が発生する場合がある。一方、留去される液体が、仕込んだ有機溶剤の量に対して多すぎると、分散液中の固形濃度が高くなり、突沸しやすくなる場合があり、突沸によってトナー粒子が変形、破壊される場合がある。また、分散液中にある水等の有機溶剤以外の構成成分を大量に留去してしまい、本工程において大量のエネルギーを必要としてしまう。また、本工程に係る時間が長くなってしまい、生産性を優れたものとできない。特に、減圧によって留去された液体は、上記の範囲内であればよいが、各工程で仕込んだ有機溶剤の量に対して、125〜140vol%であることが好ましい。
また、本工程内において、減圧時の減圧容器内の圧力は5.0Pa以下である。これにより、有機溶剤が効率よく気化することができ、有機溶剤の留去が容易に行われる。これに対し、減圧時の減圧容器内の圧力が高すぎると、有機溶剤が十分に気化できず、除去されないため、本工程中において合一粒子同士の凝集が起こる結果、最終的に得られるトナー粒子の粒度分布が広くなってしまう。また、有機溶剤の除去速度が遅くなり、生産性に劣る。
減圧時の減圧容器内の圧力は、5.0kPa以下であればよいが、特に、0.3〜3.5kPaであることが好ましく、0.5〜3.0kPaであることがより好ましい。これにより、有機溶剤を特に効率よく除去できるとともに、分散液中の有機溶剤の突沸を確実に防止することができる。これに対し、減圧時の減圧容器内の圧力が低すぎると、有機溶剤が突沸する場合があり、安全に有機溶剤を除去できない場合がある。一方、減圧時の減圧容器内の圧力が高すぎると、生産性を優れたものとできない場合があり、最終的に得られるトナー粒子の粒度分布を狭いものとできない場合がある。
また、減圧時において、減圧容器内の圧力は、変化してもよい。例えば、減圧時において、比較的圧力が高い第1段階と、それに引き続く比較的圧力の低い第2段階を設けてもよい。これにより、第1段階では、減圧の開始に伴う急激な減圧を避けることができ、分散液が突沸することを防止することができる。また、第2段階では、より低い圧力で処理が行われることから、より効率よく、迅速に水性媒体を留去することができる。このような場合、第1段階における減圧容器内の圧力は、2.0〜5.0kPaであることが好ましく、2.0〜3.0kPaであることがより好ましい。また、第2段階における減圧容器内の圧力は、0.3〜2.0kPaであることが好ましく、0.5〜1.8kPaであることがより好ましい。これにより、上述の効果をより顕著に得ることができる。
また、本工程での処理温度は、合一粒子を構成する全ての樹脂成分のガラス転移点(Tg)よりも低い温度であるのが好ましい。これにより、合一粒子の凝集を防止することができ、最終的に得られるトナー粒子の粒度分布を特に狭いものとすることができる。
また、減圧時における、減圧容器内の材料温度は10〜40℃であることが好ましく、15〜40℃であることがより好ましい。これにより、上述の効果をより顕著に得られるとともに、有機溶剤の除去を効率よく行うことができる。
また、減圧容器内の材料温度は、必要に応じて加温、冷却を行ってもよい。
また、減圧時において、減圧容器内の材料温度は、変化してもよい。例えば、常温または冷却下の比較的低い材料温度にて減圧を開始する第1段階と、徐々に加温する第2段階と、一定の温度で保温しながら減圧を行う第3段階を有していてもよい。これにより、第1段階において、分散液から有機溶剤をより選択的に除去することができる。また、比較的低い材料温度にすることにより、合一粒子の凝集および粗大粒子の発生を防止できる。このため、最終的に得られるトナー粒子の粒度分布を特に狭いものにできる。また、回収して得られる水および有機溶剤が含まれた混合物中の有機溶剤の濃度が比較的高くなるため、回収した有機溶剤を再利用することが容易になる。一方、第2段階では、徐々に加温することにより、分散液中の温度のむらが発生することを防ぎ、合一粒子が凝集することを防ぐことができる。また、第3段階では、分散液は、比較的有機溶剤の濃度が低いものとなっており、このため、比較的高い温度でも、合一粒子の凝集が発生しにくくなる。また比較的高温であるため、効率よく分散液を留去することができる。
また、このような場合、第1段階における材料温度は5〜25℃であることが好ましく、10〜25℃であることがより好ましい。また、第2段階における加温速度は0.1〜0.5℃/分であることが好ましく、0.1〜0.3℃/分であることがより好ましい。また、第3段階における材料温度は、全ての樹脂成分のガラス転移点(Tg)よりも低い温度であるのが好ましく、10〜40℃であることがより好ましく、15〜35℃であることがさらに好ましい。これにより、上述の効果をより顕著に得ることができる。
また、本工程は、分散液に、消泡剤を添加した状態で行ってもよい。これにより、効率良く有機溶剤を除去することができる。
消泡剤としては、例えば、鉱物油系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、シリコーン系消泡剤のほか、低級アルコール類、高級アルコール類、油脂類、脂肪酸類、脂肪酸エステル類、リン酸エステル類等を用いることができる。
消泡剤の使用量は、特に限定されないが、分散液中に含まれる固形分に対して、重量比で、20〜300ppmであるのが好ましく、30〜100ppmであるのがより好ましい。
また、本工程においては、有機溶剤とともに、分散液中に含まれる未反応原料(モノマー等)を除去することができる。その結果、最終的に得られるトナーにおける、揮発性有機化合物(TVOC)量を特に少ないものとすることができる。
なお、本工程においては、必ずしも全ての有機溶剤(分散液中に含まれる有機溶剤の全量)が除去されなくてもよい。このような場合であっても、後述する洗浄工程、乾燥工程において残存する有機溶剤を十分に除去することができる。
[脱分散媒工程]
次に、固液分離により、分散液に残った水系分散媒を除去し、合一粒子のウェットケーキを得る。これにより、脱溶剤工程後に残存している有機溶剤、未反応原料(モノマー等)等を水系分散媒とともに合一粒子から除去できる。
固液分離の方法は、特に限定されず、例えば、吸引ろ過機、遠心分離機(例えばバスケット型、デラバル型、シャープレス型、デカンタ型、冷却方式等)、フィルタープレス、ドラムドライヤー、単板濾過機等の装置を用いることができるが、この中でも、バスケット型遠心分離機を用いて固液分離を行うことが好ましい。バスケット型遠心分離機は、固液分離時において熱をかける必要がない。また脱水が迅速であり、得られる固形分は、比較的高い固形分濃度となる。また、得られた固形分を回収することが非常に容易である。このため、バスケット型遠心分離機を用いることにより、トナーの凝集を防ぎつつ、迅速かつ効率的に合一粒子から分散媒を除去することができ、固形分濃度の高い固形分(ウェットケーキ)が得られる。
また、バスケット型遠心分離機を用いた場合、分散媒を固形分から分離した後に、バスケット型遠心分離機を回転させつつ、水性媒体を加えて、再び脱水を行うことにより、ウェットケーキを予備洗浄することが好ましい。これにより、ウェットケーキ中に含まれる有機溶剤等の不純物を特に有効に除去することができる。また、水性媒体を加える際に、バスケット型遠心分離機の回転速度を落として、ウェットケーキ中に水性媒体を一定時間保持してもよい。これにより、有機溶剤を水性媒体により効率的に溶出させることができる。
また、用いる水性媒体は、固形分に対して重量比で1〜10倍量であることが好ましく、2〜8倍量であることがより好ましい。これにより、効率よく有機溶剤等の不純物を除去できるとともに、用いる水系媒体の量を少ないものとすることができる。
[洗浄工程]
次に、ウェットケーキ(着色樹脂微粒子ケーキ)として得られた合一粒子の洗浄を行う。
本工程を行うことにより、不純物として、有機溶剤、未反応原料(モノマー等)等が残存している場合であっても、これらを効率良く除去することができる。その結果、最終的に得られるトナーの粒度分布を狭いものとすることができ、トナー中に含まれる粗大粒子を減らすことができる。また、揮発性有機化合物(TVOC)量を特に少ないものとすることができる。
本工程は、固液分離(水系媒体からの分離)により分離した合一粒子のウェットケーキを、さらにその後、水性媒体中へ再分散(リスラリー)して合一粒子分散液を得、その後、固液分離をすることにより行うことができる。すなわち、ウェットケーキを水性媒体へ分散した際に、合一粒子のウェットケーキ中にある残存した有機溶剤および他の不純物を、水性媒体中に溶解または分散させることができる。この水性媒体を固液分離によって除去することにより、合一粒子中にある有機溶剤および他の不純物を除去することができる。これにより、有機溶剤による合一粒子の凝集を防ぎ、最終的に得られるトナー粒子の粒度分布を狭いものとすることができ、得られたトナーを用いて画像形成した場合、解像度が優れ、欠点の少ないトナー画像が得られる。
本工程では、合一粒子のウェットケーキに以下のような処理を施すことにより、合一粒子のウェットケーキ中における有機溶剤の含有率を1000ppm以下とする。これにより、後述する乾燥工程等において、残存した有機溶剤によって合一粒子が膨潤したり、変形したりすることを防止し、合一粒子の凝集、粗大粒子の発生を防止することができる。合一粒子のウェットケーキ中における有機溶剤の含有率は、900ppm以下であることが好ましく、800ppm以下であることがより好ましく、上述の効果をより顕著に得ることができる。
合一粒子のウェットケーキの水性媒体への再分散は、攪拌槽内に攪拌翼を供えた攪拌装置を用いて行う。
図3に本発明に好適に用いられる攪拌装置の一例を示す。
図4は図3の攪拌装置が有する攪拌翼の一例の平面図(a)およびその斜視図(b)である。図3に図示するように、攪拌装置K100は、合一粒子のウェットケーキおよび水性媒体の混合物2を保持する攪拌槽K1と、撹拌槽K1内で混合物を撹拌する攪拌翼K2を有している。また、攪拌翼K2に動力を与える動力部K3と、攪拌翼K2に動力部K3から動力を伝達する動力伝達部K4と、ウェットケーキの水性媒体への分散効率を高めるバッフルK5とを有している。
攪拌槽K1は、有底筒状の形状であり、ウェットケーキおよび水性媒体の混合物2を保持することができ、攪拌槽K1内にてウェットケーキの水性媒体への分散が行われる。また、攪拌槽K1の内径はD[cm]で表される。
攪拌翼K2は、混合物2中、または混合物2に接して設置される。また、攪拌翼K2には、動力伝達部K4が接続されており、動力伝達部K4が伝える動力により、攪拌翼K2は回転することができる。この攪拌翼K2が回転することにより、混合物2が撹拌され、ウェットケーキの水性媒体への分散が行われる。これにより、合一粒子と水性媒体との接触面積を増加させることができ、合一粒子中に含まれている有機溶剤を効率よく溶出させることができる。また、攪拌翼K2の翼径はd[cm]で表される。
本発明において、攪拌槽K1の内径D[cm]と攪拌翼K2の翼径d[cm]とは、0.25≦d/D≦0.40の関係を満足するものである。これにより、攪拌による発泡を抑えつつ、ウェットケーキを効率よく水性媒体へ分散でき、有機溶剤を水性媒体へ効率よく溶出させることができる。これに対し、d/Dが前記関係の下限値未満だと、攪拌翼K2が小さすぎて、効率よく混合物2を攪拌できず、ウェットケーキを水性媒体へ十分に分散できない。一方、d/Dが前記関係の上限値を超えると、攪拌時において発泡が起き、引き続く固液分離を好適に行うことができない。攪拌槽K1の内径D[cm]と攪拌翼K2の翼径d[cm]とは、上記のような関係を満足すればよいが、0.30≦d/D≦0.40の関係を満足することが好ましい。これにより、上述の効果をより顕著に得ることができる。
また、攪拌時のおける攪拌翼K2の先端速度は、3〜15m/秒である。これにより、合一粒子の破壊を防ぎつつ、好適にウェットケーキを水性媒体へ分散させることができる。このため、得られるトナー粒子は、粒度分布が狭いものとなる。これに対し、攪拌時における攪拌翼K2の先端速度が、上記下限値未満だと、ウェットケーキを均一に水性媒体へ分散できず、ウェットケーキ中に含まれる有機溶剤を十分に水性媒体へ溶出させることができない。一方、攪拌翼K2の先端速度が、上記上限値を超えると、水性媒体や、ウェットケーキが飛散してしまい、攪拌槽K1の壁部分にあった汚れ等が混合物中に混入する場合があり、また、攪拌翼K2のせん断力によって、合一粒子が破壊される場合がある。また、撹拌することによって、発泡が起き、引き続く固液分離を好適に行うことができない。
攪拌時のおける攪拌翼K2の先端速度は、上記の関係を満たせばよいが、5〜12m/秒であるのが好ましく、7.5〜11m/秒であるのがより好ましい。これにより、上述の効果をより顕著に得ることができる。
撹拌翼K2としては、いかなるものであってもよく、例えば、アンカー翼、タービン翼、エッジドタービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼等を用いることができるが、図4に示すようなエッジドタービン翼を用いることが好ましい。図4(a)および(b)に示すように、撹拌翼K2は、円盤状の形状を有しており、円周の端部にある複数のエッジK21が円盤と垂直に交互に折れ曲がった形を有している。この撹拌翼K2は、図に示す方向からみて、中心部K22を軸に時計回りに回転する。エッジK21は、撹拌翼K2の外周をつないだ外周円K23に接する点において、常に外周円K23の接線Lと、一定範囲の角αを常に有している。このような攪拌翼K2を用いることにより、好適に合一粒子のウェットケーキを水性媒体に分散でき、ウェットケーキ中に残存した有機溶剤を水性媒体へ効率よく溶出させることができる。
動力部K3は、図示されないモータが内包されており、これにより攪拌翼K2が回転するための動力を作り、動力伝達部K4を通じて攪拌翼K2に動力を与える。
動力伝達部K4は、柱状の形状を有しており、端部は動力部K3と攪拌翼K2に接続しており、動力部K3による動力を、攪拌翼K2に伝えることができる。
バッフルK5は、攪拌槽内に、混合物(分散液)2と接する状態で固定して設置されており、攪拌翼K2の回転によって生じた混合物2の水平方向の回転運動を上下方向への運動に変換する機能を有している。これにより、ウェットケーキの水性媒体への分散をより容易かつ迅速に行うことができる。また、バッフルK5は、攪拌槽内に2以上設置されていてもよい。これにより、ウェットケーキの水性媒体への分散をより容易にすることができる。
また、バッフルK5は、いかなるバッフルであってもよく、例えば、平板バッフル、フィンガーバッフル、D型バッフル、丸バッフル、伝熱管を兼用した蛇管コイル、ヘアピンコイル等が挙げられ、このうち1種類または2種類以上を組み合わせて使用することができる。この中でも、平板バッフルを用いることが好ましく、これにより、ウェットケーキの水性媒体への分散を特に容易にすることができる。
上記のような、攪拌装置K100を用いることにより、好適にウェットケーキを水性媒体へ分散でき、残存した有機溶剤、未反応原料(モノマー等)を水性媒体へ溶出または分散させることができる。
なお、本発明では、撹拌装置は、上述したような攪拌装置K100に限定されない。
例えば、攪拌装置はバッフルを有していなくてもよい。
また、攪拌装置は攪拌翼を複数有するものであってもよい。
また、本工程では、混合物2:1Lあたり、0.1〜1.0Whのエネルギーを与えることにより、攪拌を行う。
ただし、混合物2:1Lあたりの攪拌エネルギーE[Wh/L]は、攪拌時における攪拌装置の消費電力をE1[Wh]、空運転時における攪拌装置K100の消費電力をE0[Wh]、混合物2の体積をV[L]としたとき、E=(E1−E0)/Vとして求められる。
混合物2:1Lあたりの攪拌エネルギーE[Wh/L]をこのような範囲の値とすることにより、ウェットケーキを均一に水性媒体に分散することができ、ウェットケーキに含まれる有機溶剤等の不純物を水性媒体に十分に溶解、分散させることができる。また、このようなエネルギーを加えることで、攪拌時における合一粒子の破壊を防止できる。このため、得られるトナー粒子は粒度分布の狭いものとなる。
これに対し、混合物2:1Lあたりの攪拌エネルギーE[Wh/L]が前記下限値未満であると、ウェットケーキと水性媒体とが十分均一に混合されず、ウェットケーキ中に含まれる有機溶剤等の不純物を水性媒体へ十分に、溶解、分散させることができない。このため、合一粒子に残存した有機溶剤によって合一粒子が膨潤、凝集して、粗大粒子が発生する場合があり、得られるトナー粒子は、粒度分布を狭いものとできない。
また、混合物2:1Lあたりの攪拌エネルギーE[Wh/L]が前記上限値を超えると、合一粒子が変形したり、物理的なせん断力により破損しやすくなる。また、破損した合一粒子の微分が、凝集して粗大粒子を形成してしまう。このため、得られるトナー粒子は、粒度分布が狭いものとできない。
前述したように、混合物2:1Lあたりの攪拌エネルギーEは、0.1〜1.0Wh/Lであるが0.1〜0.9Wh/Lであるのが好ましく0.1〜0.8Wh/Lであるのがより好ましい。攪拌エネルギーがこのような範囲の値であると、前述したような効果がより顕著なものとなる。
また、複数回、本工程を行う場合は、混合物2:1Lあたりの撹拌エネルギーE[Wh/L]は、各回の分散に用いた混合物2:1Lあたりの撹拌エネルギーE[Wh/L]を合計して求められる。
また、ウェットケーキの水性媒体への分散時において、得られた合一粒子分散液の固形分濃度は8〜30wt%であることが好ましく、13〜25wt%であることがより好ましい。これにより、攪拌時のせん断力による合一粒子の変形、破壊を防止しつつ、特に効率よく有機溶剤を水性媒体へ溶出させることができ、また引き続く固液分離作業の効率を優れたものとすることができる。
また、本工程および、下記に説明する脱水工程は、数度繰り返してもよい。これにより、ウェットケーキから有機溶剤をより確実に除去できる。
また、本工程における材料温度は、5〜40℃であることが好ましく、10〜35℃であることがより好ましい。これにより、本工程において合一粒子が凝集すること、および粗大粒子が発生することを防止することができる。また、合一粒子の樹脂成分のガラス転移点が上記上限値よりも小さい場合には、本工程における材料温度は、合一粒子の樹脂成分のガラス転移点よりも低いことが好ましい。
[脱水工程]
次に、引き続き、得られた合一粒子水系分散液について、固液分離を行い、再び合一粒子のウェットケーキを得る。水性媒体に遊離した有機溶剤、未反応原料等の不純物を、水性媒体とともに分離することで、合一粒子中の不純物を少ないものとすることができる。固液分離には、脱分散媒工程で用いたような装置を用いることができ、この中でも、バスケット型遠心分離機を用いることが好ましい。これにより、固形分に熱をかけることなく、効率よく固液分離が行えるとともに、固形分(ウェットケーキ)の回収を容易に行える。
また、バスケット型遠心分離機を用いた場合、水性媒体を固形分から分離した後に、バスケット型遠心分離機を回転させつつ、新たな水性媒体を加えて、再び脱水を行うことにより、ウェットケーキを簡易的に洗浄することが好ましい。これにより、ウェットケーキ中に含まれる有機溶剤等の不純物を特に有効に除去することができる。また、新たな水性媒体を加える際に、バスケット型遠心分離機の回転速度を落として、ウェットケーキ中に水性媒体を一定時間保持してもよい。これにより、有機溶剤を水性媒体により効率的に溶出させることができる。また、この作業に用いる水性媒体は、固形分に対して重量比で1〜10倍量であることが好ましく、2〜8倍量であることがより好ましい。これにより、効率よく有機溶剤等の不純物を除去できるとともに、用いる水系媒体の量を少ないものとすることができる。
また、本工程における材料温度は、5〜40℃であることが好ましく、10〜35℃であることがより好ましい。これにより、本工程において合一粒子が凝集すること、および粗大粒子が発生することを防止することができる。また、合一粒子の樹脂成分のガラス転移点が上記上限値よりも小さい場合には、本工程における材料温度は、合一粒子の樹脂成分のガラス転移点よりも低いことが好ましい。
[乾燥工程]
その後、乾燥処理を施すことにより、最終的なトナー粒子1(トナー)を得ることができる(乾燥工程)。脱溶剤工程および洗浄工程にて、ウェットケーキ中の有機溶剤を十分に除去することにより、合一粒子の凝集および粗大粒子の発生を防止しつつ、乾燥を行うことができる。
乾燥工程は、例えば、真空乾燥機(例えば、リボコーン(大川原製作所社製)、ナウター(ホソカワミクロン社製)等)、流動層乾燥機(大河原製作所社製)等を用いて行うことができる。
また、本工程での処理温度は、シェル領域を構成する樹脂成分のガラス転移点(Tg)よりも低い温度であるのが好ましい。
また、本発明のトナーの製造方法においては、必要に応じて、外添剤を付与する外添工程を有していてもよい。
次に、上述した本発明のトナーが適用される画像形成装置について説明する。
図5は、本発明のトナーが適用される画像形成装置の好適な実施形態を示す全体構成図、図6は、図5の画像形成装置が有する現像装置の断面図、図7は、図5の画像形成装置に用いられる定着装置の詳細構造を示し、一部破断面を示す斜視図、図8は、図7の定着装置の要部断面図である。
画像形成装置10の装置本体20内には、感光体ドラムからなる像担持体30が配設され、図示しない駆動手段によって図示矢印方向に回転駆動される。この像担持体30の周囲には、その回転方向に沿って、像担持体(感光体)30を一様に帯電するための帯電装置40、像担持体30上に静電潜像を形成するための露光装置50、静電潜像を現像するためのロータリー現像装置60、像担持体30上に形成された単色のトナー像を一次転写するための中間転写装置70が配設されている。
ロータリー現像装置60は、イエロー用現像装置60Y、マゼンタ用現像装置60M、シアン用現像装置60Cおよびブラック用現像装置60Kが支持フレーム600に装着され、支持フレーム600は図示しない駆動にモータより回転駆動される構成になっている。これらの複数の現像装置60Y、60C、60M、60Kは、像担持体30の1回転毎に選択的に一つの現像装置の現像ローラ604が像担持体30に対向するように回転移動するようにされている。なお、各現像装置60Y、60C、60M、60Kには、各色のトナーが収納されたトナー収納部が形成されている。
現像装置60Y、60C、60M、60Kは、いずれも同一の構造を有している。したがって、ここでは現像装置60Yの構造について説明するが、現像装置60C、60M、60Kについても、構造、機能は同様である。
図6に示すように現像装置60Yでは、その内部にトナーTを収容するハウジング601に供給ローラ603および現像ローラ604が軸着されており、当該現像装置60Yが上記した現像位置に位置決めされると、「トナー担持体」として機能する現像ローラ604が像担持体(感光体)30と当接してまたは所定のギャップを隔てて対向位置決めされるとともに、これらのローラ603、604が本体側に設けられた回転駆動部(図示省略)と係合されて所定の方向に回転するように構成されている。この現像ローラ604は、現像バイアスを印加されるべく銅、ステンレス、アルミニウム等の金属または合金により円筒状に形成されている。
また、現像装置60Yでは現像ローラ604の表面に形成されるトナー層の厚みを所定厚みに規制するための規制ブレード605が配置されている。この規制ブレード605は、ステンレスやリン青銅などの板状部材605aと、板状部材605aの先端部に取り付けられたゴムや樹脂部材などの弾性部材605bとで構成されている。この板状部材605aの後端部はハウジング601に固着されており、現像ローラ604の回転方向D3において、板状部材605aの先端部に取り付けられた弾性部材605bが板状部材605aの後端部よりも上流側に位置するように配設されている。
中間転写装置70は、駆動ローラ90および従動ローラ100と、両ローラにより図示矢印方向に駆動される中間転写ベルト110と、ベルト110の裏面で像担持体30に対向して配設された一次転写ローラ120と、ベルト110上の残留トナーを除去する転写ベルトクリーナ130と、駆動ローラ90に対向して配設され、中間転写ベルト110に形成された4色フルカラー像を記録媒体(紙等)上に転写するための二次転写ローラ140とからなっている。
装置本体20の底部には給紙カセット150が配設され、給紙カセット150内の記録媒体は、ピックアップローラ160、記録媒体搬送路170、二次転写ローラ140、定着装置190を経て排紙トレイ200に搬送されるように構成されている。なお、230は両面印刷用搬送路である。
上記構成からなる画像形成装置の作用について説明する。図示しないコンピュータからの画像形成信号が入力されると、像担持体30、現像装置60の現像ローラ604および中間転写ベルト110が回転駆動し、先ず、像担持体30の外周面が帯電装置40によって一様に帯電され、一様に帯電された像担持体30の外周面に、露光装置50によって第1色目(例えばイエロー)の画像情報に応じた選択的な露光がなされ、イエローの静電潜像が形成される。
一方、現像装置60Yでは、2つのローラ603、604が接触しながら回転することで、イエロートナーが現像ローラ604の表面に擦り付けられて所定の厚みのトナー層が現像ローラ604の表面に形成される。そして、規制ブレード605の弾性部材605bが現像ローラ604の表面に弾性的に当接して、現像ローラ604の表面上のトナー層を、所定の厚みに規制する。
像担持体30上に形成された潜像位置には、イエロー用現像装置60Yが回動してその現像ローラ604が当接し、これによってイエローの静電潜像のトナー像が像担持体30上に形成され、次に、像担持体30上に形成されたトナー像は一次転写ローラ120により中間転写ベルト110上に転写される。このとき、二次転写ローラ140は中間転写ベルト110から離間されている。
上記の処理が画像形成信号の第2色目、第3色目、第4色目に対して、像担持体30と中間転写ベルト110の1回転による潜像形成、現像、転写が繰り返され、画像形成信号の内容に応じた4色のトナー像が中間転写ベルト110上において重ねられて転写される。そして、このフルカラー画像が二次転写ローラ140に達するタイミングで、記録媒体が記録媒体搬送路170から二次転写ローラ140に供給され、このとき、二次転写ローラ140が中間転写ベルト110に押圧されるとともに二次転写電圧が印加され、中間転写ベルト110上のフルカラートナー像が記録媒体上に転写される。そして、この記録媒体上に転写されたトナー像は定着装置190により加熱加圧され定着される。中間転写ベルト110上に残留しているトナーは転写ベルトクリーナ130によって除去される。
なお、両面印刷の場合には、定着装置190を出た記録媒体は、その後端が先端となるようにスイッチバックされ、両面印刷用搬送路230を経て、二次転写ローラ140に供給され、中間転写ベルト110上のフルカラートナー像が記録媒体上に転写され、再び定着装置190により加熱加圧され定着される。
図5において、本発明に係わる定着装置190は、熱源を有する定着ローラ210とこれに圧接される加圧ローラ220とから構成され、定着ローラ210と加圧ローラ220の軸を結び線は水平線からθの角度を有するように配置されている。なお、0°≦θ≦30°である。
次に定着装置190について、詳細に説明する。
図7において、ハウジング240内には定着ローラ210が回動自在に装着されている。そして、定着ローラ210に対向して加圧ローラ220が回動自在に装着されている。加圧ローラ220の軸方向長さは定着ローラ210のそれよりも短く、その空いたスペースに軸受250が設けられて、加圧ローラ220の両端は軸受250により支持されている。軸受250には加圧レバー260が回動可能に設けられ、加圧レバー260の一端とハウジング240間には加圧スプリング270が配設され、これにより加圧ローラ220と定着ローラ210が加圧されるように構成されている。
図8において、定着ローラ210は、内部にハロゲンランプ等の熱源210aを有する金属製の筒体210b、筒体210bの外周に設けられたシリコンゴム等からなる弾性層210cと、弾性層210cの表面に被覆されたフッ素ゴム、フッ素樹脂(例えばパーテトラフロロエチレン(PTFE))よりなる表層(図示せず)と、筒体210bに固定された回転軸210dとから構成されている。
加圧ローラ220は、金属製の筒体220bと、筒体220bに固定された回転軸220dと、回転軸220dを軸支持する軸受250と、定着ローラ210と同様に、筒体220bの外周に設けられた弾性層220cと、弾性層220cの表面に被覆されたフッ素ゴム、フッ素樹脂よりなる表層(図示せず)とから構成されている。定着ローラ210の弾性層210cの厚みは、加圧ローラ220の弾性層220cの厚みより極端に小さくし、これにより加圧ローラ220側が凹状にへこむような定着ニップ部が形成されている。
図7および図8に示すように、ハウジング240の両側面には、支持軸290、300が設けられており、この支持軸290、300にそれぞれ定着ローラ210側の剥離部材310と加圧ローラ220側の剥離部材320が回動自在に装着されている。これにより、定着ローラ210と加圧ローラ220の軸方向で定着ニップ部の記録媒体搬送方向下流側に剥離部材310、320が配設されることになる。
本実施形態では、図7および図8に示すように、定着ローラ210と加圧ローラ220の軸方向でニップ部の記録媒体搬送方向下流側に剥離部材310、320を配設している。定着ローラ210側の剥離部材310の先端は、ニップ部の出口に向けて傾斜するように配置され、定着ローラ210に非接触でかつ近接されている。加圧ローラ220側の剥離部材320の先端は、定着ローラ210側の剥離部材310の先端よりも記録媒体搬送方向下流側に配置されている。
両面印刷の場合、片面に印刷された記録媒体は定着ローラ210側の剥離部材310により剥離された後、記録媒体の後端が先端となるようにスイッチバックされ、両面印刷用搬送路230を経て二次転写ローラ140に供給され、中間転写ベルト110上のフルカラートナー像が記録媒体上に転写され、再び定着ローラ210により加熱加圧され定着され、このとき、加圧ローラ220に付着し巻き付いてしまう記録媒体は、加圧ローラ220側の剥離部材320により剥離されることになる。
上記のように、本実施形態の定着装置では、定着ローラおよび加圧ローラの軸方向かつ定着ニップ部の記録媒体搬送方向下流側に、定着ローラおよび加圧ローラに近接して配設される剥離部材を備え、前記定着ローラ側の剥離部材の位置決めは定着ローラ表面で行い、前記加圧ローラ側の剥離部材の位置決めは加圧ローラの軸受表面で行うので、定着ローラおよび加圧ローラからの記録媒体の剥離性を向上させることができる。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、前述した実施形態では、トナー粒子が、コア領域とシェル領域とを有するものとして説明したが、本発明において、トナー粒子は、このような構成を有していないものであってもよい。
また、トナー粒子は、コア領域およびシェル領域以外の構成を有するものであってもよい。例えば、本発明のトナーは、単一のトナー粒子内に、複数のコア領域を有し、隣接するコア領域間にシェル領域と同一の材料で構成された隔壁を有するものであってもよい。これにより、トナーの保存性、耐久性を特に優れたものとすることができる。また、このような構成であると、シェル領域の厚さが比較的薄い場合であっても、トナー粒子の耐久性、保存性を特に優れたものとすることができるため、トナー粒子中に占めるコア領域の割合を高めることができる。その結果、コア領域の構成材料の特性をより効果的に発揮させることができ、例えば、低温定着性や発色性等を特に優れたものとすることができる。
また、トナー粒子はポリエステルAとポリエステルBとを含むものでなくてもよい。
[1]トナーの製造
トナーの製造に先立ち、樹脂の合成を行い、さらに、合成された樹脂を用いて、ワックスマスター、着色剤マスター、ミルベース、無着色樹脂分散液の調製を行った。
<樹脂R−1(直鎖型ポリエステル系樹脂)の合成>
精留塔、攪拌装置、窒素ガス導入口、温度計を備え付けた50リットルの反応釜に、下記の原材料を入れて、常圧窒素気流下にて210℃で11時間反応を行った。その後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM E28−517に基づいて軟化点により追跡し、該軟化点が87℃に達した時点で反応を終了した。
テレフタル酸 53.1重量部
イソフタル酸 79.7重量部
エチレングリコール 26.0重量部
ネオペンチルグリコール 43.7重量部
テトラブチルチタネート 1.0重量部
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価10.0KOHmg/g、ガラス転移温度(Tg)46℃、軟化点(T1/2)が95℃であった。
また、重量平均分子量をGPC測定装置(東ソー製HLC−8120GPC)によって、分離カラムとして東ソー製TSK−GEL G5000HXL・G4000HXL・G3000HXL・G2000HXLを組み合わせて使用し、カラム温度:40℃・溶媒:テトラヒドロフラン・溶媒濃度0.5質量%、フィルター:0.2μm・流量:1ml/minにて測定し標準ポリスチレンを用いて換算し分子量を求めた。結果として、重量平均分子量は5200であった。
<樹脂R−2、R−3、R−4(直鎖型ポリエステル系樹脂)の合成>
各原材料の使用量(使用比率)、常圧での加熱温度、常圧での加熱時間を表1に示すようにするとともに、反応終了時点の基準とする軟化点(ASTM E28−517に基づく軟化点)を表1に示すようにした以外は、前記樹脂R−1の合成と同様にして反応を行い、3種の樹脂R−2、R−3、R−4を得た。
<樹脂R−5(架橋型ポリエステル系樹脂)の合成>
精留塔、攪拌装置、窒素ガス導入口、温度計を備え付けた50リットルの反応釜に、下記の原材料を入れて、常圧窒素気流下にて240℃で12時間反応を行った。その後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM E28−517に基づいて軟化点により追跡し、該軟化点が159℃に達した時点で反応を終了した。
テレフタル酸 19.4重量部
イソフタル酸 90.7重量部
アジピン酸 17.1重量部
エチレングリコール 25.4重量部
ネオペンチルグリコール 42.6重量部
テトラブチルチタネート 1.0重量部
エピクロン830 3.0重量部
(大日本インキ化学工業製ビスフェノールF型エポキシ樹脂エポキシ当量170(g/eq)
カージュラE 1.0重量部
(シェルジャパン製アルキルグリシジルエステル)エポキシ当量250(g/eq)
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価9.8KOHmg/g、ガラス転移温度(Tg)40℃、軟化点(T1/2)が176℃であった。また、樹脂R−1の分子量の測定に用いたGPC測定装置を用いて同様にして測定したところ、重量平均分子量は176000であった。
<樹脂R−6、R−7(架橋型ポリエステル系樹脂)の合成>
各原材料の使用量(使用比率)、常圧での加熱温度、常圧での加熱時間を表1に示すようにするとともに、反応終了時点の基準とする軟化点(ASTM E28−517に基づく軟化点)を表1に示すようにした以外は、前記樹脂R−5の合成と同様にして反応を行い、2種の樹脂R−6、R−7を得た。
<樹脂R−8(高分子量カルボン酸成分を含むポリエステル系樹脂)の合成>
精留塔、攪拌装置、窒素ガス導入口、温度計を備え付けた50リットルの反応釜に、エチレングリコール:35.6重量部、ネオペンチルグリコール:39.8重量部、エピクロン830(大日本インキ化学工業製ビスフェノールF型エポキシ樹脂エポキシ当量170(g/eq):4.6重量部を仕込み、攪拌装置による攪拌を行いつつ、1時間かけて反応系内の温度を120℃まで昇温した。
次に、反応系内が均一に攪拌されていることを確認し、反応釜内に、ジブチル錫オキサイド:0.5重量部を投入した。
その後、さらに反応釜内に、テレフタル酸:103.8重量部、イソフタル酸:45.8重量部を加え、精製する水を留去しつつ、12時間かけて、反応系内の温度を240℃まで昇温した。
その後、サンプリングにより、反応生成物の酸価を確認しつつ、240℃で反応を進行させた。反応生成物の酸価が20〜25KOHmg/gとなったことを確認した時点で、反応釜内に、高分子量カルボン酸成分:6.0重量部を加え、240℃でさらに8時間反応を進行させることにより、高分子量成分を有する樹脂R−8を得た。高分子量カルボン酸成分としては、CH(CH138COOHという化学式で表される、炭化水素基(アルキル基)の末端にカルボキシル基を有する直鎖型飽和脂肪酸(炭素数:140、分子量:2010)を用いた。
得られた樹脂R−8は、無色の固体であり、酸価16.0KOHmg/g、ガラス転移温度(Tg)63℃、軟化点(T1/2)が182℃であった。また、樹脂R−1の分子量の測定に用いたGPC測定装置を用いて同様にして測定したところ、重量平均分子量は237000であった。
<樹脂R−9〜R−14(高分子量カルボン酸成分を含むポリエステル系樹脂)の合成>
高分子量カルボン酸成分の種類、各原材料の使用量(使用比率)を表2に示すようにした以外は、前記樹脂R−8の合成と同様にして反応を行い、5種の樹脂R−9、R−10、R−11、R−12、R−13、R−14を得た。
<樹脂R−15(高分子量カルボン酸成分を含まないポリエステル系樹脂)の合成>
高分子量カルボン酸成分を用いた反応を省略した以外は、前記樹脂R−8の合成と同様にして反応を行い、樹脂R−15を得た。
<樹脂R−16(高分子量カルボン酸成分を含むポリエステル系樹脂)の合成>
精留塔、攪拌装置、窒素ガス導入口、温度計を備え付けた50リットルの反応釜に、エチレングリコール:35.6重量部、ネオペンチルグリコール:39.8重量部、エピクロン830(大日本インキ化学工業製ビスフェノールF型エポキシ樹脂エポキシ当量170(g/eq):4.6重量部を仕込み、攪拌装置による攪拌を行いつつ、1時間かけて反応系内の温度を120℃まで昇温した。
次に、反応系内が均一に攪拌されていることを確認し、反応釜内に、ジブチル錫オキサイド:0.5重量部を投入した。
その後、さらに反応釜内に、テレフタル酸:103.8重量部、イソフタル酸:45.8重量部、および、高分子量カルボン酸成分:6.0重量部を加え、精製する水を留去しつつ、12時間かけて、反応系内の温度を240℃まで昇温した。
その後、240℃で8時間反応を進行させることにより、高分子量成分を有する樹脂R−16を得た。高分子量カルボン酸成分としては、HOOC(CH398COOHという化学式で表される、炭化水素基(アルキル基)の両末端にカルボキシル基を有する直鎖型飽和脂肪酸(炭素数:400、分子量:5700)を用いた。
上記のようにして合成した各樹脂についての合成条件、物性等を表1、表2にまとめて示す。
Figure 2008158360
Figure 2008158360
<ワックスマスターWM−1の調製>
高速乳化機(プライミクス社製、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼)付属の3L円筒容器に、水:1300重量部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:25.7重量部を添加して、温度を95℃に調整し、翼先端速度:16.7m/秒の攪拌下に、さらに、予め融解しておいたカルナバワックス:700重量部を添加して、ワックスの乳化物を得た。冷却後、固形分の含有率が35wt%となるように、水を加え、第1のワックス分散液を得た。
次に、高速分散機(プライミクス社製、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼)付属の3L円筒容器に、メチルエチルケトン:856重量部を仕込み、攪拌下に、樹脂R−1:700重量部を徐々に添加して、樹脂R−1が均一に溶解したことを確認した後、上記第1のワックス分散液:878.6重量部を添加して、予備混合液の調製を行った。次いで、該予備混合液をスターミル(アシザワファインテック社製、LMZ−10)で混合を行い、固形分含有量45.0wt%のワックスマスターWM−1を得た。得られたワックスマスターWM−1の組成は、重量比で、樹脂R−1:ワックス:乳化剤:メチルエチルケトン:水=31.3:13.4:0.3:29.5:25.5であった。
<ワックスマスターWM−2の調製>
高速乳化機(プライミクス社製、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼)付属の3L円筒容器に、水:1300重量部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:25.7重量部を添加して、温度を95℃に調整し、翼先端速度:16.7m/秒の攪拌下に、さらに、予め融解しておいたカルナバワックス:700重量部を添加して、ワックスの乳化物を得た。冷却後、固形分の含有率が35wt%となるように、水を加え、第1のワックス分散液を得た。
次に、高速分散機(プライミクス社製、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼)付属の3L円筒容器に、メチルエチルケトン:856重量部を仕込み、攪拌下に、樹脂R−2:700重量部を徐々に添加して、樹脂R−2が均一に溶解したことを確認した後、上記第1のワックス分散液:878.6重量部を添加して、予備混合液の調製を行った。次いで、該予備混合液をスターミル(アシザワファインテック社製、LMZ−10)で混合を行い、固形分含有量45.0wt%のワックスマスターWM−2を得た。得られたワックスマスターWM−1の組成は、重量比で、樹脂R−2:ワックス:乳化剤:メチルエチルケトン:水=31.3:13.4:0.3:29.5:25.5であった。
<着色剤マスターPM−Cの調製>
シアン顔料(大日本インキ化学工業社製、KET BLUE 111):2000重量部と、樹脂R−1:2000重量部とを、ST/A0羽根をセットした20Lヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)へ投入し、翼先端速度:10m/秒で2分間攪拌し、混合物を得た。該混合物をオープンロール連続押し出し混練機(三井鉱山社製、ニーデックス MOS140−800)を用いて溶融混練し、着色剤マスターPM−Cを得た。着色マスターCの組成は、重量比で、着色剤:樹脂=50:50であった。また、得られた着色剤マスターPM−Cを樹脂R−1およびメチルエチルケトンを用いて希釈し、400倍の光学顕微鏡で着色剤の微分散状態、粗大粒子の有無を観察したところ、粗大粒子は認められず、均一に微分散している様子が認められた。
<着色剤マスターPM−C2の調製>
シアン顔料(大日本インキ化学工業社製、KET BLUE 111):2000重量部と、樹脂R−2:2000重量部とを、ST/A0羽根をセットした20Lヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)へ投入し、翼先端速度:10m/秒で2分間攪拌し、混合物を得た。該混合物をオープンロール連続押し出し混練機(三井鉱山社製、ニーデックス MOS140−800)を用いて溶融混練し、着色剤マスターPM−Cを得た。着色マスターCの組成は、重量比で、着色剤:樹脂=50:50であった。また、得られた着色剤マスターPM−C2を樹脂R−2およびメチルエチルケトンを用いて希釈し、400倍の光学顕微鏡で着色剤の微分散状態、粗大粒子の有無を観察したところ、粗大粒子は認められず、均一に微分散している様子が認められた。
<着色剤マスターPM−Mの調製>
シアン顔料の代わりにマゼンタ顔料(クラリアントジャパン社製、Permanent Rubine F6B)を用いた以外は、前記着色剤マスターPM−Cと同様にして、混合、混練を行い、着色剤マスターPM−Mを得た。また、得られた着色剤マスターPM−Mを樹脂R−1およびメチルエチルケトンを用いて希釈し、400倍の光学顕微鏡で着色剤の微分散状態、粗大粒子の有無を観察したところ、粗大粒子は認められず、均一に微分散している様子が認められた。
<着色剤マスターPM−Yの調製>
シアン顔料の代わりにイエロー顔料(クラリアントジャパン社製、Toner Yellow HG)を用いた以外は、前記着色剤マスターPM−Cと同様にして、混合、混練を行い、着色剤マスターPM−Yを得た。また、得られた着色剤マスターPM−Yを樹脂R−1およびメチルエチルケトンを用いて希釈し、400倍の光学顕微鏡で着色剤の微分散状態、粗大粒子の有無を観察したところ、粗大粒子は認められず、均一に微分散している様子が認められた。
<ミルベース(着色樹脂液)MB−1の調製>
ステンレス容器にメチルエチルケトン8.6重量部を仕込み、撹拌機(アサダ鉄工所製 デスパー翼径230mm)の回転数500min-1(翼先端速度:5.5m/秒)で撹拌しながら樹脂R−5(希釈樹脂)4.48重量部を加えた。その後、撹拌翼の回転数を777min-1(翼先端速度:8.5m/秒)にし、着色剤マスターPM−Cを3.78重量部、樹脂R−1(希釈樹脂)を9.74重量部、ワックスマスター分散液WM−1を20.15重量部、及び、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:0.1重量部を、この順序で、容器内に投入することにより、各成分の溶解・分散を行った。さらに、その後、固形分含有量が65wt%となるように、メチルエチルケトンを追加投入し、ミルベースMB−1を得た。なお、撹拌時における材料温度は、30〜40℃に保持した。また、作製したミルベースMB−1の配合順序、配合量、攪拌条件を表3に示す。
Figure 2008158360
<ミルベース(着色樹脂液)MB−2の調製>
ステンレス容器にメチルエチルケトン8.6重量部を仕込み、撹拌機(アサダ鉄工所製 デスパー翼径230mm)の回転数500min-1(翼先端速度:5.5m/秒)で撹拌しながら樹脂R−5(希釈樹脂)4.48重量部を加えた。その後、撹拌翼の回転数を777min-1(翼先端速度:8.5m/秒)にし、着色剤マスターPM−C2を3.78重量部、樹脂R−3(希釈樹脂)を9.74重量部、ワックスマスター分散液WM−2を20.15重量部、及び、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:0.1重量部を、この順序で、容器内に投入することにより、各成分の溶解・分散を行った。さらに、その後、固形分含有量が65wt%となるように、メチルエチルケトンを追加投入し、ミルベースMB−2を得た。なお、撹拌時における材料温度は、30〜40℃に保持した。
<無着色樹脂分散液NRD−1の調製>
メチルエチルケトン7.33重量部、樹脂R−8:6重量部を35〜40℃の範囲で翼径135mmのデスパー(アサダ鉄工所製)を使用して撹拌翼の撹拌速度(回転数)を1200min-1とし、30分間撹拌、混合した。その後、アニオン性乳化剤ネオゲンSC−F(第一工業製薬製):0.04重量部を添加し30分混合して溶解・分散液を得た。次いで1規定アンモニア水:1.77重量部を加えて撹拌した後、温度を35℃に調整した。次いで、撹拌速度を1550min-1に変更して13.83重量部の水を0.6重量部/minで滴下して乳化液を作製した。この時の撹拌翼の周速は11m/sであった。水を添加していくにつれ、系の粘度は上昇していったが、水は滴下と同時に系内に取り込まれ撹拌混合は均一であった。水を10.00重量部添加した後、粘度の急激な低下する転相乳化が観測された。更に残りの水を所定量添加し、無着色樹脂分散液NRD−1を得た。無着色樹脂分散液NRD−1を光学顕微鏡で観察すると、樹脂は溶解しており、未乳化物は観察されなかった。乳化懸濁液の水性媒体中のメチルエチルケトンの比率(以下、MEK比率とも称す)は31.95wt%であった。
(実施例1)
以下のようにして、トナーを製造した。なお、温度条件が記載されていない工程(処理)については、室温(25℃)で行った。
《乳化懸濁液調製工程》
翼径230mmの撹拌翼を有する撹拌機(アサダ鉄工所製 デスパー)を備えた円筒型の容器に着色樹脂溶液MB−1:46.85重量部(固形分27重量部)を仕込み、次いで塩基性化合物として、1規定アンモニア水:5重量部を加えて、777min-1にて充分に撹拌した後、温度を30℃に調整した。
次いで、撹拌速度(回転数)を1100min-1に変更して35.77重量部の水を1.5重量部/minの速度で滴下した。この時の撹拌翼の翼先端速度は13.2m/sであった。水を添加して行くにつれ、系の粘度は上昇していったが、水は滴下と同時に系内に取り込まれ、撹拌混合を均一に行うことができた。これにより、乳化健濁液を得た。
《合一工程》
翼径340mmのマックスブレンド翼(登録商標)付属の円筒容器に、上記乳化懸濁液を移送した後、撹拌速度(回転数)を85min-1として撹拌を行いながら、温度を25℃に調整した。その後、回転数を120min-1に調整し、3.5wt%の硫酸ナトリウム水溶液:10.8重量部を、1重量部/minで滴下し、滴下終了5分後、回転数85min-1で5分間、65min-1で5分間撹拌し、47min-1で20分間撹拌を継続して行った。このときの撹拌翼の翼先端速度は0.47m/sであった。引き続き、撹拌翼の回転数を120min-1に調整し、5.0wt%の硫酸ナトリウム水溶液を1重量部/minで2.5重量部滴下し、滴下終了5分後、撹拌翼の回転数を85min-1で5分間、65min-1で5分間撹拌した。その後、撹拌翼の回転数を47min-1として撹拌を継続し、粒径4.5μmになったところで、撹拌翼の回転数を85min-1として30分間撹拌した。これにより、目的とする合一粒子が分散した分散液(着色樹脂微粒子分散液)を得た。なお、粒径の測定は、100μmのアパーチャーチューブを用いたコールターカウンターマルチサイザーTAII(ベックマンコールター社製)により行った。
《被覆工程》
合一工程で得られた着色樹脂微粒子分散液を翼径340mmのマックスブレンド翼(登録商標)付属の円筒容器に移送した。温度を25℃、マックスブレンド翼の回転数を120min-1に調整した後、無着色樹脂分散液NRD−1:5.2重量部を0.5重量部/minで滴下し、滴下終了2分後、回転数75min-1で10分間撹拌した。この無着色樹脂分散液NRD−1の滴下、撹拌を同様な方法で、さらに2回行い、合計で無着色樹脂分散液NRD−1を15.6重量部滴下した。その後、マックスブレンド翼の回転数を120min-1に調製し、5.0wt%の硫酸ナトリウム水溶液:2重量部を、1重量部/minで滴下し、滴下終了5分後、回転数:85min-1にて5分間、65min-1にて5分間撹拌を行った。マックスブレンド翼の回転数を47min-1として撹拌を継続し、粒径が5.8μmに成長した段階で希釈水を10重量部添加し、被膜の形成を終了させた。これにより、合一粒子の表面に、被膜が形成された。被膜を有する分散質(合一粒子)について、その粒径の測定を行った。その結果、50%体積粒径をDv(50)[μm]、50%個数粒径をDn(50)[μm]としたときの、Dv(50)は、5.85μm、Dv(50)/Dn(50)は、1.12であった。
《脱溶剤工程》
その後、シリコーン系消泡剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、BY22−517):0.068重量部を添加し、反応に用いた容器を密閉し、真空ポンプを取り付けた。
次に、室温(25℃)にて、真空ポンプを用いて真空度2.7kPaの圧力で30分間減圧を行い、脱溶剤を行った。
次に、圧力を下げながら、反応に用いた容器を90分間かけて加温していき、内部の材料温度を4℃/時の速度で減圧容器内の材料温度が21℃になるまで昇温した。90分後、内部の材料温度が21℃になったら、同じ温度を維持しつつ、引き続き同じ圧力で減圧を行った。減圧にて留去した液体が、用いたメチルエチルケトンの138vol%になるまで、減圧を行い、合一粒子のスラリー(着色樹脂微粒子スラリー)を得た。このとき、最終的な圧力は1.0kPaであった。
《脱分散媒工程》
上記のようにして得られたスラリーに対し、バスケット型遠心分離機を用いて、周速1250min−1にて、脱分散媒を行った。脱分散媒を行った後、引き続きバスケット型遠心分離機を同周速で回転させながら、スラリーにある固形分の6倍量(重量換算)の水を加え、簡易的に洗浄(以下、リンスという)を行い、水を振り切って、合一粒子のウェットケーキ(着色樹脂微粒子ケーキ)を得た。
《洗浄、脱水工程》
図2のような撹拌装置から、バッフルを取り外し、撹拌槽内に合一粒子のウェットケーキを入れた。撹拌槽にある混合物中の固形分含有量が、15〜20wt%になるように水を加え、水温が30℃になるように温度制御を行った。この状態で、撹拌翼としてエッジドタービン翼を用い、撹拌翼の翼先端速度が8.2m/sとなるようにして、30分間、撹拌を行い、再分散スラリーを得た。
次に、再分散スラリーについて、脱分散媒工程と同様に脱水、リンスを行った。このとき、リンスに用いる水は、再分散スラリーの固形分の3倍量(重量換算)とした。
この操作を計2回行い、洗浄された合一粒子のウェットケーキを得た。なお、最後の簡易洗浄に用いた水は、再分散スラリーの固形分の6倍量(重量換算)とした。該ウエットケーキの含水率は35wt%であった。
また、今回用いた攪拌槽K1の内径D[cm]と攪拌翼K2の翼径d[cm]との比d/Dは0.37であり、混合物:1Lあたりの攪拌エネルギーは、0.25[Wh/L]であった。
また、ウェットケーキの一部をテトラヒドロフランに溶解させ、ガスクロマトグラフィー(島津製作所社製 GC/MS)を用いて、ウェットケーキ中のメチルエチルケトンの含有量を測定したところ、305ppmであった。
ウエットケーキ中のメチルエチルケトンの含有量の測定は、次のように行った。まず、ウェットケーキ250mgをスクリュー栓付き試験管に秤量し、これにテトラヒドロフランを5ml加え、超音波洗浄器で分散・攪拌した。その後、静置させ上澄みをそのままGC/MS用バイアル瓶に移し分析を行った。内部標準としては、THF中に不純物として含まれるブチルアセテートを用いた。なお、ガスクロマトグラフィーによる分析条件は、下記のようにした。
装置 GC/MS−QP2010
カラム DB−WAX (長さ30m 内径0.25mm 膜厚0.2
5μm)
気化室温度 200℃
インターフェース温度 220℃
イオン源温度 180℃
注入量 1μl
イオン化法 EI
測定モード SIM(m/z56、m/z57)
《乾燥工程》
その後、真空乾燥機を用いて、25℃(室温)で24時間、ウェットケーキを乾燥することにより、トナー母粒子を得た。得られたトナー母粒子は、樹脂成分と着色剤とを含むコア領域と、着色剤を含まないシェル領域とを有するものであることが確認された。また、トナー母粒子についての50%体積粒径をDv(50)[μm]、50%個数粒径をDn(50)[μm]としたときの、Dv(50)は、5.0μm、Dv(50)/Dn(50)は、1.09であった。また、トナー母粒子の平均円形度Rは0.985であった。
また、トナー母粒子を構成するコア領域の平均粒径は4.76μm、シェル領域の平均厚さは0.12μmであった。また、トナー母粒子中において、コア領域の占める割合は、83.3vol%であった。
《外添工程》
トナー母粒子:100重量部に対して、外添剤として大粒径のシリカ(日本アエロジル(株)製RX50):1.0重量部、小粒径のシリカ(日本アエロジル(株)製RX200):1.0重量部、酸化チタン(チタン工業(株)製STT30S):0.5重量部を添加した。このトナー母粒子を10Lヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製)に投入して羽先端周速30m/sで2分間混合し、トナーを得た。
(実施例2〜12)
ワックスマスター、着色剤マスター、ミルベース、無着色樹脂分散液の調製に用いる樹脂の種類、使用量を調整するとともに、各工程(合一工程、被覆工程)における硫酸ナトリウム水溶液の使用量、被覆工程における無着色樹脂分散液の使用量、各工程での攪拌条件を調整することにより、トナー母粒子の構成を表4に示すように変更した。
また、脱溶剤工程での脱溶剤初期および脱溶剤後期の真空度、有機溶剤の留去量、洗浄、脱水工程の回数、撹拌翼の種類、バッフルの有無、および得られるウェットケーキの有機溶剤含有量等の脱溶剤工程、洗浄、脱水工程の条件を表6に示すように変更した。それ以外については、実施例1と同様にしてトナーを製造した。なお、バッフルを用いる場合、平板バッフル1枚を装置内に取り付けて使用した。また、用いた平板バッフルは、5×52×1026(mm)の平板であった。
(実施例13)
ミルベースMB−1の代わりにミルベースMB−2を用い、表6に示すように、2回の洗浄、脱水工程を行い、洗浄工程にて、2回洗浄工程での合計の撹拌エネルギーが0.19Wh/Lとなるまで撹拌を行った以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
(実施例14)
ワックスマスター、着色剤マスター、ミルベースの調製に用いる樹脂の種類、使用量を変更し、合一工程における硫酸ナトリウム水溶液の使用量、各工程での攪拌条件を調整するとともに、被覆工程を省略し、トナー母粒子の構成を表4に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
(比較例1〜8)
脱溶剤工程、洗浄、脱水工程の条件を表6に示すように変更した以外は、前記実施例6と同様にしてトナーを製造した。なお、比較例4、8においては、脱水工程において発泡が起こり、バスケット型遠心分離機での脱水作業の作業性が著しく劣っていた。
(比較例9)
脱溶剤工程、洗浄、脱水工程の条件を表6に示すように変更した以外は、前記実施例6と同様にしてトナーを製造を試みた。この結果、脱溶剤工程にて、48時間経っても、留去した液体が、用いた有機溶剤の100vol%を超えず、トナーの製造ができなかった。
表4、表5には、トナー母粒子の主な構成をまとめて示した。なお、表4、表5中には、高分子量成分を構成成分として含む樹脂をポリエステルBとし、ポリエステルB以外の樹脂をポリエステルAとしたときの、トナー中に含まれるポリエステルAの含有量α[wt%]、トナー中に含まれるポリエステルBの含有量β[wt%]との比率α/βも示した。また、表4、表5中には、トナーを構成するポリエステルAのガラス転移温度Tg(A)、重量平均分子量Mw(A)、酸価AV(A)、および、トナーを構成するポリエステルBのガラス転移温度Tg(B)、重量平均分子量Mw(B)、酸価AV(B)を示した。なお、高分子量成分を構成成分として含む樹脂を含まないトナーについては、コア領域を構成する樹脂をポリエステルAとみなし、シェル領域を構成する樹脂をポリエステルBとみなした場合についての値を表中に示した。また、各実施例および各比較例のトナーを構成する樹脂成分は、原料として用いた樹脂と同一のガラス転移温度、軟化温度、平均分子量を示すものであった。
Figure 2008158360
Figure 2008158360
表6に各実施例、各比較例での脱溶剤工程、洗浄工程での処理条件を示した。
Figure 2008158360
[2]評価
[2.1]トナー画像のすじ、かすれ評価
図5〜図8に示すような構成を有する画像形成装置を用いて、前記各実施例および前記各比較例で得られたトナーによる所定パターンの画像を記録紙上に形成し、目視にてトナー画像にすじ、かすれ等の欠点がないかを調べ、下記の基準に従い、評価した。
◎:トナー画像にすじ、かすれ等の欠点が全く認められない。
○:トナー画像にすじ、かすれ等の欠点がほとんど認められない。
△:トナー画像にすじ、かすれ等の欠点がわずかに認められる。
×:トナー画像にすじ、かすれ等の欠点がはっきりと認められる。
[2.2]生産時間
前記各実施例および前記各比較例での脱溶剤工程から乾燥工程までの生産時間を、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:実施例1と比較して、脱溶剤、洗浄、乾燥にかかる時間が150%未満であった。
○:実施例1と比較して、脱溶剤、洗浄、乾燥にかかる時間が150%以上、200%未満であった。
△:実施例1と比較して、脱溶剤、洗浄、乾燥にかかる時間が200%以上、400%未満であった。
×:実施例1と比較して、脱溶剤、洗浄、乾燥にかかる時間が400%以上であった。
[2.3]定着良好域、低温定着性
前記各実施例および前記各比較例で得られたトナーについて、以下のようにして定着良好域、低温定着性の評価を行った。
まず、定着装置を有していない以外は、図5、図6に示すような構成を有する画像形成装置(カラープリンタ)を用意した。この画像形成装置を用いて、記録媒体(セイコーエプソン社製、上質普通紙)上にトナー像が転写された未定着の画像サンプルを採取した。なお、採取するサンプルのベタは付着量を0.5mg/cmに調整した。
次に、画像形成装置を構成する定着装置の定着ローラの表面温度を所定温度に設定した状態で、上記の未定着のトナー像が転写された記録媒体を、図7、図8に示すような定着装置の内部に導入することにより、トナー像を記録媒体に定着させ、定着後におけるオフセットの発生の有無を目視で確認した。この定着装置では、トナーがニップ部を通過する速度を150mm/sに設定した。
同様に、定着ローラの表面の設定温度を100〜200℃の範囲で順次変更していき、各温度でのオフセットの発生の有無を確認し、オフセットが発生しなかった温度範囲を、「定着良好域」として求め、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:定着良好域の幅が50℃以上である。
○:定着良好域の幅が40℃以上50℃未満である。
△:定着良好域の幅が30℃以上40℃未満である。
×:定着良好域の幅が30℃未満である。
[2.4]定着強度
前記各実施例および前記各比較例で得られたトナーについて、以下のようにして定着強度の評価を行った。
まず、図5〜図8に示すような構成を有する画像形成装置(カラープリンタ)を用意した。この画像形成装置を用いて、記録媒体(セイコーエプソン社製、上質普通紙)上に、OD値で0.75の所定のパターンのトナー像を転写、定着し、定着トナー画像を得た。この画像形成装置においては、トナーがニップ部を通過するのに要する速度を150mm/s、定着ローラの表面の設定温度を150℃に設定した。
上記のようにして得られた記録媒体上の定着トナー画像を消しゴム(ライオン事務機社製、砂字消し「LION 261−11」)を押圧荷重1.0kgfで1回擦り、画像濃度の残存率をX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定し、以下の5段階の基準に従い評価した。
◎◎:画像濃度残存率が95%以上。
◎ :画像濃度残存率が90%以上95%未満。
○ :画像濃度残存率が80%以上90%未満。
△ :画像濃度残存率が70%以上80%未満。
× :画像濃度残存率が70%未満。
[2.5]長期保存性
前記各実施例および前記各比較例で得られたトナーを、温度:20〜28℃の環境下に、8ヵ月間静置した。その後、トナーの様子を目視にて確認し、保管前のトナーと比較して、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:トナー母粒子の凝集がまったく認められない。
○:トナー母粒子の凝集がほとんど認められない。
△:トナー母粒子の凝集がわずかに認められる。
×:トナー母粒子の凝集がはっきりと認められる。
[2.6]耐熱保存性
前記各実施例および前記各比較例で得られたトナー:10gをガラスビンに投入し、恒温槽で55℃、12時間、保管し、トナー粒子の凝集を目視にて観察し、保管前のトナーと比較して、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:トナー母粒子の凝集がまったく認められない。
○:トナー母粒子の凝集がほとんど認められない。
△:トナー母粒子の凝集がわずかに認められる。
×:トナー母粒子の凝集がはっきりと認められる。
各実施例、比較例の評価結果を表7に示した。
Figure 2008158360
表7から明らかなように、本発明の製造方法により製造したトナーは、トナー母粒子の粒度分布が狭く、粗大粒子も少なかった。また、画像形成を行ったところ、トナー画像は、優れた解像力があり、欠点の少ないものとなった。また、特に、高分子量成分を含むトナーでは、定着良好域が広く、特に優れた低温定着性を示すとともに、特に優れた長期保存性、耐熱保存性を示すものであり、また、記録媒体に対する定着強度にも優れていた。
また、第1の樹脂成分としての樹脂R−2を用いて調製した着色剤マスターPM−C2を、第2の樹脂成分としての樹脂R−5、第3の樹脂成分としてのR−3等と混合することにより、ミルベース(着色樹脂液)を調製した実施例13では、着色剤の使用量が他の実施例、比較例と同様であるにもかかわらず、着色濃度が特に高いトナーが得られた。これは、乳化懸濁液中において、ポリエステルAを含む材料で構成された分散質中に着色剤をより確実に内包させ、着色剤の不本意な流失を効果的に防止することができたためであると考えられる。これに対し、比較例のトナーは、比較例2のトナーを除いて、満足の行く結果を得ることができなかった。また、比較例2は、有機溶剤の除去に時間がかかり、生産性が著しく劣っていた。
また、着色剤マスターPM−Cの代わりに、着色剤マスターPM−M、着色剤マスターPM−Yを用いた以外は、上記と同様にトナーの製造、評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
軟化点の求め方を説明するための図であり、(a)は、測定に用いる装置を模式的に示す速断面図、(b)は、測定結果から軟化点(T1/2)を求める方法を説明するためのグラフである。 本発明のトナーを構成するトナー粒子の好適な実施形態を示す模式的な断面図である。 本発明のトナーの製造方法に適用される撹拌装置の好適な実施形態を示す全体図である。 図3の撹拌装置が有する撹拌翼の全体図である。 本発明のトナーが適用される画像形成装置の好適な実施形態を示す全体構成図である。 図5の画像形成装置が有する現像装置の断面図である。 図5の画像形成装置に用いられる定着装置の詳細構造を示し、一部破断面を示す斜視図である。 図5の定着装置の要部断面図である。
符号の説明
1…トナー粒子 11…コア領域(芯部、核) 12…シェル領域(外殻) 2…混合物(分散液) 6…ノズル 7…シリンダ 8…試料 9…荷重面 K100…撹拌装置 K1…撹拌槽 K2…撹拌翼 K21…エッジ K22…中心部 K23…外周円 K3…動力部 K4…動力伝達部 K5…バッフル 10…画像形成装置 20…装置本体 30…像担持体 40…帯電装置 50…露光装置 60…ロータリー現像装置 600…支持フレーム 601…ハウジング 603…供給ローラ 604…現像ローラ 605…規制ブレード 605a…板状部材 605b…弾性部材 60Y…イエロー用現像装置 60M…マゼンタ用現像装置 60C…シアン用現像装置 60K…ブラック用現像装置 70…中間転写装置 90…駆動ローラ 100…従動ローラ 110…中間転写ベルト 120…一次転写ローラ 130…転写ベルトクリーナ 140…二次転写ローラ 150…給紙カセット 160…ピックアップローラ 170…記録媒体搬送路 190…定着装置 200…排紙トレイ 210…定着ローラ(加熱定着部材) 210a…熱源 210b…筒体 210c…弾性層 210d…回転軸 220…加圧ローラ(加圧部材) 220b…筒体 220c…弾性層 220d…回転軸 230…両面印刷用搬送路 240…ハウジング 250…軸受 260…加圧レバー 270…加圧スプリング 290…支持軸 300…支持軸 310…剥離部材 320…剥離部材 T…トナー

Claims (8)

  1. 樹脂材料および有機溶剤を含む分散質が、水系分散媒中に分散した分散液を調製する分散液調製工程と、
    複数個の前記分散質を合一させ、合一粒子を形成する合一工程と、
    減圧により、前記合一粒子から前記有機溶剤を除去する脱溶剤工程と、
    固液分離により前記水系分散媒を除去し、前記合一粒子を分離する脱分散媒工程と、
    攪拌槽内に攪拌翼を備えた攪拌装置を用いて、分離した前記合一粒子を、水性媒体で洗浄する洗浄工程と、
    固液分離により前記水性媒体を除去し、前記合一粒子のウェットケーキを得る脱水工程と、
    前記ウェットケーキを乾燥する乾燥工程とを有するトナーの製造方法であって、
    前記脱溶剤工程は、5.0kPa以下に減圧した状態で、前記有機溶剤の仕込み量に対して120〜150vol%の液体を留去するまで行い、
    前記洗浄工程は、前記攪拌装置として、前記攪拌槽の内径をD[cm]、前記攪拌翼の翼径をd[cm]としたとき、0.25≦d/D≦0.40の関係を満足する物を用い、前記攪拌翼の先端速度を3〜15m/秒とし、前記合一粒子と前記水性媒体との混合物1Lあたり、0.1〜1.0Whの攪拌エネルギーを与えることにより行うものであり、
    前記ウェットケーキ中における前記有機溶剤の含有率を1000ppm以下とすることを特徴とするトナーの製造方法。
  2. 樹脂材料Aおよび有機溶剤を含む分散質が、水系分散媒中に分散した分散液を調製する分散液調製工程と、
    複数個の前記分散質を合一させ、合一粒子を形成する合一工程と、
    前記合一粒子を含む分散液に、前記樹脂材料Aとは組成の異なる樹脂材料Bおよび有機溶剤を含む被膜形成用液体を添加し、前記合一粒子の表面を、前記樹脂材料Bを含む材料で構成された被膜で被覆する被覆工程と、
    減圧により、前記合一粒子から前記有機溶剤を除去する脱溶剤工程と、
    固液分離により前記水系分散媒を除去し、前記合一粒子を分離する脱分散媒工程と、
    攪拌槽内に攪拌翼を備えた攪拌装置を用いて、分離した前記合一粒子を、水性媒体で洗浄する洗浄工程と、
    固液分離により前記水性媒体を除去し、前記合一粒子のウェットケーキを得る脱水工程と、
    前記ウェットケーキを乾燥する乾燥工程とを有するトナーの製造方法であって、
    前記脱溶剤工程は、5.0kPa以下に減圧した状態で、前記有機溶剤の仕込み量に対して120〜150vol%の液体を留去するまで行うものであり、
    前記洗浄工程は、前記攪拌装置として、前記攪拌槽の内径をD[cm]、前記攪拌翼の翼径をd[cm]としたとき、0.25≦d/D≦0.40の関係を満足する物を用い、前記攪拌翼の先端速度を3〜15m/秒とし、前記合一粒子と前記水性媒体との混合物1Lあたり、0.1〜1.0Whの攪拌エネルギーを与えることにより行うものであり、
    前記ウェットケーキ中における前記有機溶剤の含有率を1000ppm以下とすることを特徴とするトナーの製造方法。
  3. 前記攪拌翼が、エッジドタービン翼である請求項1または2に記載のトナーの製造方法。
  4. 前記攪拌装置は、前記攪拌槽内にバッフルを有するものである請求項1ないし3のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  5. 前記有機溶剤として、メチルエチルケトンを用いる請求項1ないし4のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  6. 前記トナーを構成するトナー粒子は、樹脂材料AとしてポリエステルAを、樹脂材料Bとして前記ポリエステルAよりもガラス転移温度が高いポリエステルBとを含むものであり、
    前記ポリエステルBは、その構成成分として、炭素数が100〜1000の炭化水素基を備えた高分子量成分を含むものである請求項1ないし5のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  7. 前記高分子量成分は、前記ポリエステルBの側鎖を構成するものである請求項6に記載のトナーの製造方法。
  8. 請求項1ないし7のいずれかに記載の方法を用いて製造されたことを特徴とするトナー。
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