以下、添付図面に従って、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
[露光装置]
まず、本発明の実施形態に係るノズルプレートの製造方法に用いられる傾斜回転型露光装置の構成例について概説する。
図1は露光装置の一例を示す構成図である。この露光装置10は、主として、光源12、照射光学系14、液浸容器16、透過補正板18及びステージ20から構成され、光源12から出た光を、照射光学系14によって図の下方に平行光として導き、傾斜回転しているステージ20上の透光性基板22を介してレジスト(感光性材料)24に照射して、レジスト24を感光させる構成となっている。
ステージ20は、液浸容器16の中に配設されており、液浸容器16に液体(例えば、純水)を導入して液体中で露光を行う液浸露光と、気体中で露光を行う通常(ドライ)露光とを切り替えることが可能である。
また、ステージ20は、テーブル面20aの面内回転が可能な回転機構と、テーブル面20aの傾斜角(水平面に対する傾斜角、つまり、照射光の入射角)の調節が可能な傾斜(揺動)機構とを備えた傾斜回転ステージとなっている。
すなわち、ステージ20は、テーブル面20aに垂直な回転軸21(第1回転軸)に取り付けられており、該回転軸21を中心に回転可能である。また、ステージ20の回転軸21は、テーブル面20aに直交する鉛直面内で揺動し得る機構となっており、ステージ20の回転軸21の揺動位置によってテーブル面20aの傾斜角を可変できる。さらに、ステージ20の回転軸21、ステージ20および液浸容器16の全体は、鉛直軸A(第2回転軸)を中心に、鉛直軸Aと平行な水平面内の回転が可能となっている。なお、ステージ20を傾斜回転させる機構の具体的構造については後述する。
図2は、露光部の拡大図である。図示のように、透光性基板22とレジスト24との間には、形成しようとするノズルプレートの一部としてのマスク32が形成されており、このマスク32を介してレジスト24に露光用の光が照射される。
レジスト24、マスク32および透光性基板22をステージ20上に固定した状態でレジスト24の裏面側に空隙部43が形成されるように、ステージ20のテーブル面20aには凹部44が形成されている。ドライ露光時には、この空隙部43が気体で満たされて気体層が形成される。一方、液浸露光時にはこの空隙部43が液体で満たされて液体層が形成される。また、凹部44には、反射防止膜46が形成されている。
一般的に、レジスト24の屈折率は約1.6、ドライ露光時の周囲気体(空気又は二酸化炭素)の屈折率は1、液浸露光時に導入する液体(例えば、純水)の屈折率は約1.4、液浸用の専用液の屈折率は約1.6、透明基板32としてのガラス(例えば、石英ガラス)の屈折率が1.47であることから、レジスト24の裏面反射は、気体中(気体層との界面)では大きく、液体中(液体層との界面)では小さい。
液体中で露光を行う場合(液浸露光時)には、レジスト24の裏面反射(空隙部43の液体層との界面での反射)が抑制されるため、当該裏面反射光によるレジスト感光はほとんどなく、透光性基板22側から入射した光によって、当該光の入射角に対応した円錐台形の範囲のレジスト24を感光させることができる。
更に、気体中で露光を行う場合(ドライ露光時)には、透光性基板22の周辺は気体(屈折率がほぼ1の媒質)と接していることから全反射により入射角の上限が約38度であるのに対し、液体中で露光を行う場合(液浸露光時)は、透光性基板22の屈折率(石英ガラスの場合、約1.47)と周辺環境の屈折率(純水の場合、約1.44)とを近づけることができるため、全反射による入射角の上限がドライ露光時よりも大きくなる。このため、液体中での傾斜露光は、広角テーパを形成するために適している。
また、図2に示したとおり、このステージ20には、レジスト24を透過する光を受光可能な受光センサ48が埋設されており、該受光センサ48によって透過光をモニタしながら露光量(すなわち、光の照射時間、または照射強度、もしくはこれらの組み合わせ)が制御される。
図3は、図1のステージに埋設されている受光センサ48の配置例を示す平面透視図である。なお、図3では、ステージ20上に(具体的には図1の透光性基板22とステージ20との間に)、4つのノズルプレート形成部50が設けられた例が示されている。
また、図3に示すように、ステージ20には、上記のいずれのノズルプレート形成部50とも重ならない領域に、受光モニタ用のダミーマスクパターンが形成された受光モニタ部52が形成されており、この受光モニタ部52の真下の対応位置に受光センサ48が配置される。すなわち、ステージ20中の受光センサ48はステージ20上のいずれのノズルプレート形成部50とも重ならない領域(ノズルプレート形成部以外の領域)に配置される。
なお、ノズルプレート形成部50や受光モニタ部52の形状、配置数、配置位置については、多様な形態が可能であり、図3の例に限定されない。
図4は、図1に示した露光装置10に用いられる光源12及び照射光学系14の構成図である。図4に示すように、本例の露光装置10に用いられる照明ユニット60は、超高圧水銀ランプ61を光源とするものである。超高圧水銀ランプ61より発せられた光は、楕円集光ミラー62により集光され、平面反射ミラー63によって水平方向に光路を曲げられた後、インテグレーターレンズ64に入射する。
インテグレーターレンズ64によって照度分布が均一化された光は、光源フィルタ65によって透過波長域が選択された後、平面反射ミラー66によって鉛直方向に光路が曲げられ、コリメーターレンズ67に入射する。コリメーターレンズ67により平行光とされた光は、照度分布が均一な平行照射光として照射面68に向けて照射される。
使用する光源の種類や波長は、使用するフォトレジストの感光特性との関係で適切な光源(波長)が選択される。本発明の実施に際し、照明用の光源として、固体レーザや半導体レーザ(例えば、波長:355nm、375nm、405nm)などを用いる態様も可能である。
次に、入射角度を可変する手段の構成について説明する。
図5は、本例の露光装置10におけるステージの傾斜回転機構及びその周辺の構成図である。ステージ20の回転軸21は、液浸容器16の底面を貫通する状態で取り付けられるが、この液浸容器16を貫く接続部分には、液浸容器16内の液体(例えば、純水70)がこの部分より漏れないように、防水加工が施されており、また、回転軸21の回転及び傾き角の調節(揺動)が可能なように、球面軸受72が設けられている。
すなわち、ステージ20の回転軸21は、液浸容器16の底面に取り付けられた球面軸受72を介して液浸容器16を貫いた状態で支持されており、回転軸21の下端は自由継手74を介してモータ76(「ステージ回転モータ」という。)の出力軸78と連結されている。このステージ回転モータ76は、直動ガイド80に沿って摺動するスライダ82に固定されており、モータ(「傾斜揺動モータ」という。)84の駆動によりスライダ82と共にステージ回転モータ76を直動ガイド80に沿って移動させることができる。
傾斜揺動モータ84の駆動によってスライダ82上のステージ回転モータ76を図5の左右方向に移動させることにより、ステージ20の回転軸21を球面軸受72における固定点86を中心に揺動させることが可能であり、その揺動位置によって回転軸21の傾斜角(すなわち、テーブル面の傾斜角)を調節できる。これにより、透光性基板22に対する光の入射角を変更できる。
また、ステージ回転モータ76の駆動によって出力軸78が回転することで、その回転力は自在継手74を介して回転軸21に伝達され、ステージ20が回転する。
ステージ20が収容される液浸容器16には、液体ポンプ88が設けられており、この液体ポンプ88により液浸用液体(ここでは純水70)の供給、排出が可能となっている。
液浸露光時には液体ポンプ88を介して液浸容器16内に純水70が導入され、液浸容器16内が純水70で満たされる。通常露光(ドライ露光時)には液浸容器16内から純水70が排出され、液浸容器16内が気体(例えば、空気)で置換される。
なお、液浸用の液体としては、純水70の他にも露光装置に用いることを意図して調合されてなる専用の液浸用液体があり、場合によっては、このような専用液を用いることも可能である。
液浸露光を行う場合、透光性基板22の周囲を覆う液体による露光光の吸収が生じる。液面に対して光を垂直に入射させ、かつ透光性基板22に対し略垂直に光を照射する場合(垂直露光又は狭角入射露光の場合)は、液体中を進む光について透光性基板22に到達するまでの距離(光路長)が透光性基板22の各位置において概ね一定であるため、液体による露光光の吸収は、透光性基板22上の各位置について光量が均一(実質的に均一と見做せる範囲の分布を有する略均一も含む)に減衰する等の問題が生じるのみである。
しかしながら、液面に対して光を垂直に入射させ、かつ透光性基板22に対して入射角が比較的大きい傾斜露光を行う場合では、露光光が液面に対し垂直に入射するため、液体中を進む光について透光性基板22に到達するまでの距離(光路長)が透光性基板22の各々の位置において場所によって異なる。この光路長の違いによる光吸収量の差によって透光性基板22上では光量分布が生じ、これによりレジスト24の露光が不均一となる。
具体的には、露光光が液体に入射した後、透光性基板22の表面に到達するまでの距離(光路長)が短い領域では、露光光の減衰は少ないため、透光性基板22の表面に到達する露光光の光量は比較的多く、透光性基板22裏面に塗布されたフォトレジストを充分感光することができるが、露光光が液体に入射した後、透光性基板22の表面に到達するまでの距離(光路長)が長い領域では、露光光の減衰は大きいため、透光性基板22の表面に到達する露光光の光量は光路長が短い場合に比べ少なく、同じ露光時間ではフォトレジストを充分感光することができない。一方、光路長の長い領域において、充分に露光が行われるような露光時間で露光を行うならば、光路長の短い領域において露光オーバーとなり、光路長の長い領域と同じ状態でフォトレジストが感光しないため、フォトレジストの感光が不均一となる。
このため、本実施形態では、液体中の傾斜露光時に透光性基板22上で均一な光量分布が得られるように、透過率分布を補正するための透過補正板18が用いられる。この透過補正板18は、液体に入射した光が透光性基板22に到達するまでの距離(光路長)に対応させた透過率分布を有する透過率傾斜基板であり、液体に入射した後、透光性基板22に到達するまでの距離(光路長)が長い領域では透過率が高く、液体に入射した後、透光性基板22に到達するまでの距離(光路長)が短い領域では透過率が低くなるように構成されている。
この透過補正板18は、液浸容器16の上部に開閉ヒンジ90を介して取り付けられており、当該透過補正板18は開閉ヒンジ90によって液浸容器16の天面を封止する位置及び天面から退避した露光領域外の位置に移動可能である。
本実施の形態では、垂直露光の際、又は入射角が比較的小さい傾斜露光(「狭角傾斜回転露光工程」という。)の際には、透過補正板18を露光領域外に移動させ、入射角が比較的大きい傾斜露光(「広角傾斜回転露光工程」という。)の際には透過補正板18を露光領域内である液浸容器16上の上部(天面を封止する位置)に移動させる。
厳密に言えば、垂直露光時又は狭角傾斜回転露光工程のときには、照度分布を生じることになるが、狭角テーパ状には、殆ど影響を与えず、実用上支障がない。なお、狭角傾斜露光工程のときも含めて、傾斜露光時の光の入射角度に対応して、それぞれ適切な透過補正板を複数種類用意しておき、傾斜露光時の光の入射角度に応じて、透過補正板を切り替えて使用する態様も可能である。
このような透過補正板18を用いることにより、照明ユニット60から入射した露光光が当該透過補正板18及び液浸用の液体である純水70を介し、透光性基板22に到達した際、透光性基板22上で露光光の光量が全面にわたり均一になる。こうして、傾斜回転中の光軸距離に応じた照度変化や、面内での照度分布も補正可能なため、比較的大きなサイズ(長尺)のノズルプレートを作製する場合でも、バラツキの少ない安定したノズル形成が可能となる。
また、液浸用液体である純水70の表面、即ち空気と接する境界の面と接するように透過補正板18を配置し、液体を充満した状態で露光を行うことにより、液体の波打ちや気泡の巻き込みなど液浸露光に特有の弊害を防止することができる。
液浸傾斜露光時に透光性基板22上での光量を均一化するための他の方法として、透光性基板22と液浸に用いられる液体の液面とを平行にする方法も考えられるが、液面と透光性基板22とを常に平行の状態に保つことは、そのための装置等が必要となりコストアップに繋がる。さらに、液面に対して大きな入射角度で光を入射させると(透光性基板22に対する露光光の入射角度が大きい場合)、露光光が液面で全反射してしまい、露光マスクに露光光が到達しないという問題もある。
具体的には、屈折率1.44の純水の場合、液面に対し45度前後の角度で光を入射させた場合、全反射してしまうため、これより大きな入射角度で光を入射させることはできない。よって、露光装置の構成上からも液面に対し垂直に露光光を入射させることが望ましく、液浸露光装置により傾斜露光により広角のテーパを形成する場合には、上記のような透過補正板を用いる態様が好ましい。
また、液浸容器16内には受光センサ92が設けられており、露光光が透光性基板22により反射された光の光量を測定することができる構成となっている。これにより、透光性基板22の取り付け位置やステージ20の傾斜角が所定の位置や角度に設置されているか否かを確認することができる。透光性基板22がステージ20に対して浮いている場合には、ステージ20の回転により反射光の照射の方向が変動するため、受光センサ92が検出する透光性基板22からの反射光量は、ステージ20の回転に伴い変化する。よって、この反射光量の変動により、透光性基板22がステージ20に確実に固定されているか否かを検出することができる。また、ステージ20の傾斜角度が所定の傾斜角度で設置されていない場合には、所定の傾斜角度となるように、受光センサ92における反射光量に基づき、ステージ20の傾斜角を調整することが可能である。
更に、本例では、上述のとおり、ステージ20の回転軸21、自在継手74、ステージ回転モータ76、直動ガイド80、スライダ82、及び傾斜揺動モータ84等によって傾斜機構部94が構成されているが、この傾斜機構部94とこれに支持されている液浸容器16及びステージ20を含む全体を露光光の光軸に平行な軸を中心として、水平面内で回転させることが可能な光軸回転モータ96が設けられている。光軸回転モータ96により、全体が光軸回りに回転する構成になっているため、光量分布の均一性をより一層高めることができる。
[ノズルプレートおよびノズルプレートの製造方法]
次に、本発明に係るノズルプレートの製造方法によって製造される各種のノズルプレートについて、その製造方法とともに、各実施形態に分けて、詳細に説明する。
(第1実施形態)
図6(A)は、第1実施形態に係るノズルプレートの一例を示す断面図である。図面中の矢印Eは液体の吐出方向を示す。図6(A)では、図示の便宜上、ノズル51を2つのみ描いてあるが、ノズル51の数は特に限定されない。
図6(A)において、ノズルプレート30aは、液体流入側(図中の上側である)の面に開口したテーパ形状の複数のテーパ形状開口部51aを有するテーパ形状開口層31と、液体吐出側(図中の下側である)の面に開口したR形状(曲面状)の複数のR形状開口部51bを有するR形状開口層32とを備える。
ここで、R形状開口部51bは、少なくとも液体流入側の周縁(エッジ)が曲面状となっている。言い換えると、R形状開口部51bは、テーパ形状開口部51aに連続する部分が丸みを有する形状となっている。
R形状開口層32は、開口パターンが形成されている金属の薄膜からなる金属パターン膜321(第1の導電膜)と、金属パターン膜321の上面を覆うとともに、金属パターン膜321の開口パターン320の縁から開口パターン320の内壁面へオーバハングした金属の薄膜からなるオーバハング金属膜322(第2の導電膜)とによって構成されている。
このようなR形状開口層32のうちで少なくともオーバハング金属膜322は、露光用の光を透過しない非透光性を有している。
また、オーバハング金属膜322は、吐出液体に対して撥液性の材料を含む一方で、テーパ形状開口層31は、オーバハング金属膜322より撥液性を低く設定する。すなわち、オーバハング金属膜322に対する液体の接触角は、テーパ形状開口層31に対する液体の接触角よりも、大きい。
テーパ形状開口部51aにR形状開口部51bが連続しており、これらのテーパ形状開口部51aおよびR形状開口部51bによって、鋭角(0度より大きく90度より小さい角度である)の変曲点なしで、液体流入側へ向けて広角で開口したノズル51が構成されている。また、液体吐出側へ向けて液体吐出方向Eに沿って(すなわち液体吐出面30aに略直交して)開口したノズル51が構成されている。
図6(B)は、図6(A)のノズル51の部分を拡大して示す拡大断面図である。図6(B)において、テーパ形状開口部51aは、液体流入側から液体吐出側に向けて流路幅が直線状に小さくなるテーパ形状(円錐台形状)を有している。R形状開口部51bは、液体流入側から液体吐出側に向けて流路幅が曲線状に小さくなるR形状を有している。
詳細には、R形状開口部51bのテーパ形状開口部51aに連続する部分は、オーバハング金属膜322の厚みに相当する半径を有する円弧形状となっており、R形状開口部51bの液体吐出面30aに連続する部分は、液体吐出方向Eに沿ったストレート形状となっており、このストレート形状部分は液体吐出面30に対して略垂直になっている。ただし、金属パターン膜321の厚みや、オーバハング金属膜322の形成(電鋳)の条件等によって、R形状開口部51bの形状は、このような図6(B)に示す形状とは若干異なってくる場合がある。本発明において、R形状開口部51bの液体流入側の部分が正確な円弧である場合や、R形状開口部51bの液体吐出側の部分がストレート形状である場合に、限定されない。
なお、図6(B)に示すテーパ形状開口部51aは、液体流入側から液体吐出側に向けて、直線状に流路幅が小さくなる形状となっているが、図6(C)に示すテーパ形状開口部51a’は、液体流入側から液体吐出側に向けて、曲線状に流路幅が小さくなる形状となっている。このようなテーパ形状開口部51a’は、そのテーパ形状開口部51a’を形成するときの露光光の波長を短波化(例えば300nm以下)することにより得られる。
図6(B)に示すノズル51は、液体流入側に向けてテーパ形状開口部51aを広角化でき且つテーパ形状開口部51aが液体流入側において直線状なので、液体の流入性能及び吐出性能において優れている。一方で、図6(C)に示すノズル51は、液体流入側の断面積を極小化する際に有利である。
金属パターン膜321の一例の平面図を図7に示す。図7において、金属パターン膜321の開口320(以下「開口パターン」と称する)は、ノズル51の配置パターン(例えば図28に示すような2次元配列)と同じ配置パターンで形成されている。本例の金属パターン膜321の開口パターン320は略円形状であり、開口パターン320の半径は、R形状開口部51bの液体吐出側端部の開口半径よりも、オーバハング金属膜322の厚み分だけ大きい。すなわち、ノズル51の液体吐出側端部の開口幅は、金属パターン膜321の開口パターン320の開口幅よりも、オーバハング金属膜322が開口パターン320の内壁面に成膜している分だけ、小さい。なお、ノズル51の液体吐出側端部の開口および金属パターン膜321の開口パターン320の形状は、本発明において、円形状に特に限定されない。
図8(A)〜(D)および図9(E)〜(H)は、図6(A)のノズルプレート30aの製造処理例の説明に用いる工程図である。
まず、図8(A)に示すように、石英ガラスからなる透光性基板22の上面の全面に、リフトオフ法あるいはエッチング法を用いて、ニッケル(Ni)の薄膜からなる金属パターン膜321を形成する。
透光性基板22の材料は、後述の露光に用いる光を透過させる性質(透光性)を有する非導電性材料であれば、石英ガラスに特に限定されない。例えばg線(波長436nm)やi線(波長365nm)などの紫外線を露光に用いる場合には、その露光用の紫外線を透過させる非導電性材料を用いる。また、後述の共析電鋳で共析電鋳液中の導電性材料をほとんど析出させない程度の抵抗を有する非導電性材料であればよい。
金属パターン膜321の材料は、後述の共析電鋳の電極として使用可能な導電性材料であれば、ニッケルに特に限定されない。
金属パターン膜321の開口パターン320の開口幅は、形成しようとするノズル51の液体吐出側端部の開口幅(すなわちR形状開口部51bの液体吐出側端部の開口幅)よりも、オーバハング金属膜322の膜厚(例えば1〜5μm)の略2倍だけ、大きい。
金属パターン膜321の形成は、リフトオフ法やエッチング法に特に限定されず、例えばスクリーン印刷により行ってもよい。
次に、図8(B)に示すように、透光性基板22の金属パターン膜321が形成されている面に、ニッケル(Ni)およびPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を含有する電鋳液(メッキ液)を用いて共析電鋳を行い、金属パターン膜321の上面を覆うとともに、金属パターン膜321の開口パターン320の縁からその開口パターン320の内壁へオーバハングしたオーバハング金属膜322を形成する。ここで、共析電鋳は、オーバハング金属膜322が所定の膜厚(例えば1〜5μm)になるまで行う。
電鋳では、導電性材料である金属部分のみ析出が生じるので、金属パターン膜321の上面および開口パターン320の内壁が、ニッケルおよび撥液性材料のPTFEを含有する薄膜のオーバハング金属膜322によって均一の膜厚で覆われ、開口パターン320の縁ではR形状(曲面形状)となる。R形状の曲率は、薄膜のオーバハング金属膜322の膜厚によって決まる。すなわち、高精細なR形状を有するオーバハング金属膜322が形成される。
また、共析電鋳により、撥液性材料のPTFEがニッケルとともにオーバハング金属膜322として共に析出するので、オーバハング金属膜322が導電性だけでなく撥液性を有することになる。
なお、共析電鋳用の電鋳液は、ニッケルおよびPTFEを含有する場合に特に限定されず、次の電鋳の電極として使用可能であるとともに後述の露光でマスクとして使用可能であるように非透光性の導電性材料と、吐出液体に対して撥液性を有する撥液性材料とを含有し、これらの導電性材料および撥液性材料が共析される液体であればよい。
次に、図8(C)に示すように、透光性基板22のオーバハング金属膜322が形成されている面の全面に、スピンコートやスキージ塗布により、ネガタイプのレジスト24を付着させる。レジスト24の膜厚は、例えば20〜60μmとする。
なお、塗布による付着に代えて、ドライフイルムレジスト(DFR)でラミネートするようにしてもよい。
次に、透光性基板22に付着させたレジスト24について、プリベークを行う。
次に、図8(D)に示すように、透光性基板22のレジスト24を付着させた面とは反対側の面に対して斜め方向から光を照射しつつ、透光性基板22を回転させて、レジスト24を感光させる露光(以下「裏面傾斜回転露光」という)を行うことにより、オーバハング金属膜322をマスクとして用いてR形状開口部51bのみに光を透過させて、レジスト24中にテーパ形状の感光部25を形成する。
このような裏面傾斜回転露光は、図1の露光装置10のステージ20上に、図2に示すように、透光性基板22、マスクとしてのR形状開口層32(金属パターン膜321およびオーバハング金属膜322)、および、レジスト24からなる構造体を載置して行う。ここで、広角のテーパ形状を形成するには、純水中で裏面傾斜回転露光を行うことが、好ましい。
次に、露光後のレジスト24について現像を行う。そうすると、図9(E)に示すように、テーパ形状の感光部25を残して、非感光部が除去される。
次に、図9(F)に示すように、テーパ形状の感光部25を型として用い、オーバハング金属膜322を電極として用いて、ニッケルを含有する電鋳液で電鋳(ニッケル電鋳)を行って、オーバハング金属膜322上に、テーパ形状開口部51aを有するテーパ形状開口層31を堆積する。そうすると、鋭角(0度より大きく90度より小さい角度である)の変曲点がなく、R形状開口部51bとこれに連続したテーパ形状開口部51aからなるノズル51が形成される。テーパ形状開口層31の厚みは、例えば10〜50μmとする。
次に、図9(G)に示すように、ニッケル電鋳の型として用いた感光部25を、有機溶媒により、除去する。
そして、図9(H)に示すように、金属パターン膜321、オーバハング金属膜322およびテーパ形状開口層31からなるノズルプレート30aを、透光性基板22から剥離する。ここで、金属パターン膜321は、オーバハング金属膜322に密着したまま、透光性基板22から剥離される。
なお、図6(A)に本実施形態の一例として示すノズルプレート30aは、液体流入側の面(テーパ形状開口層31の上面である)のテーパ形状開口部51aの周辺が平面となっているが、図10に本実施形態の他の例として示すノズルプレート30bのように、ノズル51の液体吐出側にストレート形状開口部51sを付与するとともに、液体流入側の面のテーパ形状開口部51aの周辺に、溝33を設けてもよい。
ノズル51のストレート形状開口部51sは、ノズル51のR形状開口部51bに連続して形成される。詳細には、R形状開口部51bの液体吐出側端部は第1段の金属パターン膜3211の厚みに相当する長さのストレート形状を有するが、更に、第2段の金属パターン膜3212の厚みに相当する長さを有するストレート形状開口部51sが、R形状開口部51bの液体吐出側端部に連続して形成されている。
このようなストレート部51sは、吐出安定性を一層向上させる。また、溝33は、接着剤を用いてノズルプレート30cを他の流路構造体(例えば図29の連通板156)と接着する際に、余剰接着剤を溝33内へ逃がす機能を有する。
図11(A)〜(C)は、図10のノズルプレート30bの製造処理例の説明に用いる工程図である。
図11(A)に示すように、透光性基板22上に、開口パターン320を有する第1段の金属パターン膜3211を形成した後、図11(B)に示すように、第1段の金属パターン膜3211上に、開口パターン320とともに溝パターン3213を有する第2段の金属パターン膜3212を形成し、図11(C)に示すように、第1段の金属パターン膜3211および第2段の金属パターン環状膜3212を覆うようにオーバハング金属膜322を形成する。その後の工程は、図8(C)から(D)および図9(E)〜(H)を用いて説明した前述の工程と同様であり、ここでは説明を省略する。そうすると、図10に示すような、液体吐出側にストレート形状開口部51sを有するとともに、液体流入側の面のテーパ形状開口部51aの周辺に溝33が配置されたノズルプレート30bが得られる。なお、溝33の幅が、ノズル51の液体流入側の面における開口幅(すなわちテーパ形状開口部51aの液体流入側端部の開口幅)よりも、小さくなるように、溝パターン3213の幅およびテーパ形状開口層31の厚みを設定する。
(第2実施形態)
図12は、第2実施形態に係るノズルプレートの一例を示す断面図である。図面中の矢印Eは液体の吐出方向を示す。図12では、図示の便宜上、ノズル51を2つのみ描いてあるが、ノズル51の数は特に限定されない。なお、図12において、図6(A)に示した第1実施形態のノズルプレート30aと同じ構成要素には、同じ符号を付してあり、既に説明した内容については、ここではその説明を省略する。
図12に示すように、本実施形態のノズルプレート30cは、液体流入側の面に第1の溝331が形成されており、液体吐出側の面に第2の溝332が形成されている。液体流入側の面における第1の溝331の幅は、ノズル51の液体流入側端部の開口幅(すなわちテーパ形状開口部51aの液体流入側端部の開口幅)よりも、小さい。また、液体吐出側の面における第2の溝332の幅は、ノズル51の液体吐出側端部の開口幅(すなわちR形状開口部51bの液体吐出側端部の開口幅)よりも、小さい。
液体流入側の面に形成されている第1の溝331は、接着剤を用いてノズルプレート30cを他の流路構造体(例えば図29の連通板156)と接着する際に、余剰接着剤を第1の溝331内へ逃がす機能を有する。液体吐出側の面に形成されている第2の溝332は、インクトラップ、ワイピング性向上などの機能を有する。さらに、ノズルプレート30cの表裏に溝26、27が形成されていることにより、接着時や環境温度変化時の熱応力の緩和が可能となる。
図13(A)〜(E)および図14(F)〜(H)は、図12のノズルプレート30cの製造処理例の説明に用いる工程図である。
まず、図13(A)に示すように、石英ガラスからなる透光性基板22の上面の全面に、リフトオフ法あるいはエッチング法を用いて、ニッケル(Ni)の薄膜からなる金属パターン膜321を形成する。
本実施形態における金属パターン膜321には、ノズル51の配置パターンと同じ配置パターンでR形状開口部51bの形成に寄与する第1の開口パターン320aが形成されているとともに、溝331、332の配置パターンと同じ配置パターンで溝331、332の形成に寄与する第2の開口パターン320bが形成されている。第1の開口パターン320aの開口幅は、形成しようとするノズル51の液体吐出側端部の開口幅(すなわちR形状開口部51bの液体吐出側端部の開口幅)よりも、オーバハング金属膜322の膜厚の略2倍だけ、大きい。また、第2の開口パターン320bの開口幅は、形成しようとする第1の溝331の液体吐出面における幅よりも、オーバハング金属膜322の膜厚の略2倍だけ、大きい。
透光性基板22の材料、金属パターン膜321の材料、および、金属パターン膜321の形成法については、第1実際形態において説明したので、ここではその説明を省略する。
次に、図13(B)に示すように、透光性基板22の金属パターン膜321が形成されている面に、非透光性の金属(例えばNi)および撥液性材料(例えばPTFE)を含有する電鋳液を用いて共析電鋳を行い、金属パターン膜321の上面を覆うとともに、金属パターン膜321の第1の開口パターン320aの縁および第2の開口パターン320bの縁を覆うようにオーバハングしたオーバハング金属膜322を形成する。ここで、共析電鋳は、オーバハング金属膜322が所定の膜厚(例えば1〜5μm)になるまで行う。
電鋳では、金属部分のみ析出が生じるので、金属パターン膜321の上面、第1の開口パターン320aの内壁、および、第2の開口パターン320bの内壁が、薄膜のオーバハング金属膜322によって均一の膜厚で覆われ、また、第1の開口パターン320aの縁および第2の開口パターン320bの縁ではR形状となる。すなわち、高精細なR形状を有するオーバハング金属膜322が形成される。また、共析電鋳により、撥液性材料が金属とともにオーバハング金属膜322として析出するので、オーバハング金属膜322が導電性だけでなく撥液性を有することになる。
次に、図13(C)に示すように、透光性基板22のオーバハング金属膜322が形成されている面の全面に、ネガタイプのレジスト24を付着させる。レジスト24の膜厚は、例えば20〜60μmとする。
次に、図13(D)に示すように、透光性基板22のレジスト24を付着させた面とは反対側の面に、透明部23aおよび半透過マスク23b(光学フィルタ)を有する光学シート23を付着する。詳細には、ノズル51の一部となるR形状開口部51bを透明部23aで覆う一方で、第2の溝332の一部となる開口部332bを半透過マスク23bで覆う。ここで、半透過マスク23bは、露光用の光について、透明部23aよりも、光透過率が低い。
次に、図13(E)に示すように、オーバハング金属膜322をマスクとして用い、透光性基板22のレジスト24を付着させた面とは反対側の面に対して斜め方向から光を照射しつつ透光性基板22を回転させ、レジスト24を感光させる裏面傾斜回転露光を行うことにより、レジスト24中に、テーパ形状の第1の感光部25a、および、第2の感光部25bを形成する。
ここで、光学シート23の透明部23aを介して露光された第1の感光部25aは、レジスト24を厚み方向において貫通するまで成長させる。一方で、光学シート23の半透過マスク23bを介して露光された第2の感光部25bは、透過光量の相違により、レジスト24の厚み方向において途中まで成長する。
このような裏面傾斜回転露光は、図1の露光装置10を用いて行う。また、広角のテーパ形状を形成するには、純水中で裏面傾斜回転露光を行うことが、好ましい。
次に、露光後のレジスト24について現像を行う。そうすると、図14(F)に示すように、第1の感光部25aおよび第2の感光部25bを残して、非感光部が除去される。
次に、図14(G)に示すように、第1の感光部25aおよび第2の感光部25bを型として用い、オーバハング金属膜322を電極として用いて、ニッケル電鋳を行う。
ここで、テーパ形状の開口部51aと、第1の溝331と、第2の溝332の上半分と、を有するテーパ形状開口層31が、オーバハング金属膜322上に形成される。テーパ形状開口層31の厚みは、例えば10〜50μmである。第1の溝331の幅は、テーパ形状開口部51aの液体流入側端部の開口幅よりも、小さい。
次に、図14(H)に示すように、ノズルプレート30c(R形状開口層31およびテーパ形状開口層32)を透光性基板22から剥離するとともに、型として用いた第1の感光部25aおよび第2の感光部25bを、有機溶媒により、除去する。
ここで、第2の感光部25bが除去されることにより、液体吐出側の面に第2の溝332が形成される。第2の溝332の液体吐出側の面における幅は、R形状開口部51bの液体吐出側端部の開口幅よりも、小さい。
(第3実施形態)
図15は、第3実施形態に係るノズルプレートの一例を示す断面図である。図面中の矢印Eは液体の吐出方向を示す。図15では、図示の便宜上、ノズル51を2つのみ描いてあるが、ノズル51の数は特に限定されない。なお、図15において、図6(A)に示した第1実施形態のノズルプレート30aと同じ構成要素には、同じ符号を付してあり、既に説明した内容については、ここではその説明を省略する。
また、図15のノズルプレート30dを液体吐出側から見た平面図を図16に示す。なお、図16の15―15線に沿った断面図が図15となっている。
図15および図16に示すように、本実施形態のノズルプレート30dは、テーパ形状開口層31とR形状開口層32としてのオーバハング金属膜323とからなる。また、オーバハング金属膜323の液体吐出側の面に凹形状のザグリ部34が形成されている。ザグリ部34は、ノズルプレート30dの液体吐出側の面に開口している一方で、ノズル51のR形状開口部51bに連結している。ザグリ部28の開口幅は、ノズル51の液体吐出側端部の開口幅(R形状開口部51bの液体吐出側端部の開口幅である)よりも大きい。このようなザグリ部28は、ワイピング時やジャミング時にノズル51を保護する機能を有し、液体吐出の信頼性を向上させる。
図17(A)〜(E)および図18(F)〜(I)は、図15のノズルプレート30dの製造処理例の説明に用いる工程図である。
まず、図17(A)に示すように、非導電性および透光性を有する石英ガラスからなる透光性基板22の上面の全面に、真空蒸着法を用いて、導電性および透光性を有するITO(酸化インジウム・スズ)からなる透光性導電膜26を形成する。
ITOは、酸化インジウムに5〜10重量%の酸化スズを添加して作製され、In3+に置換したSn4+がキャリア電子を発生する。
透光性基板22の材料は、後述の露光に用いる光を透過させる透光性を有する非導電材料であれば、石英ガラスに特に限定されない。
透光性導電膜26の材料は、透光性および導電性を有する材料であれば、ITOに特に限定されない。例えば、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ガリウムなどを用いてもよい。
また、透光性導電膜26の形成は、真空蒸着法に特に限定されない。例えば、スパッタリング法、ゾルゲル法、クラスタビーム法、PLD法を用いて、透光性導電膜26を形成してもよい。
次に、図17(B)に示すように、透光性導電膜26上に、スピンコート法あるいはマスク露光法により、レジスト(例えば樹脂材料)からなる凸部27(以下「ランドパターン」という)を形成する。
ランドパターン27は、形成しようとするザグリ部(図15の34)の型となる形状(例えば円盤形状)を有する。ランドパターン27は、形成しようとするノズル51の液体吐出側端部の開口面積(すなわちR形状開口部51bの液体吐出側端部の開口面積)よりも大きな面積を有する。このようなランドパターン27を、ノズル51の配置パターンと同一の配置パターンで、透光性導電膜26上に配置する。
ランドパターン27の材料は、露光用の光を透過させる透光性を有し、且つ、非導電性の材料であれば、樹脂材料に特に限定されない。
次に、図17(C)に示すように、透光性基板22の透光性導電膜26およびランドパターン27が形成されている面に、非透光性の金属(例えばNi)および撥液性材料(例えばPTFE)を含有する電鋳液を用いて共析電鋳を行い、透光性導電膜26上の露出部分(すなわちランドパターン27の非形成領域)を覆うとともに、ランドパターン27の縁へその周囲からオーバハングしたオーバハング金属膜323を形成する。ここで、共析電鋳は、オーバハング金属膜323が所定の膜厚(例えば1〜5μm)になるまで行う。
電鋳では、金属部分のみ析出が生じるので、透光性導電膜26の露出部分、および、析出した金属が成長するランドパターン27の縁が、オーバハング金属膜323によって均一の膜厚で覆われ、また、ランドパターン27の縁ではR形状となる。すなわち、高精細なR形状を有するオーバハング金属膜323が形成される。また、共析電鋳により、撥液性材料が金属とともにオーバハング金属膜323として析出するので、オーバハング金属膜323が導電性だけでなく撥液性を有することになる。
次に、図17(D)に示すように、透光性基板22のオーバハング金属膜323が形成されている面の全面に、ネガタイプのレジスト24を付着させる。レジスト24の膜厚は、例えば20〜60μmとする。
次に、図17(E)に示すように、オーバハング金属膜323をマスクとして用い、透光性基板22のレジスト24を付着させた面とは反対側の面に対して斜め方向から光を照射しつつ透光性基板22を回転させ、レジスト24を感光させる露光を行うことにより、レジスト24中に、テーパ形状の感光部25を形成する。
次に、露光後のレジスト24について現像を行う。そうすると、図18(F)に示すように、感光部25を残して、非感光部が除去される。
次に、図18(G)に示すように、感光部25を型として用い、ニッケル電鋳を行って、オーバハング金属膜323上に、テーパ形状の開口部51aを有するテーパ形状開口層31が形成される。ここで、テーパ形状開口層31の厚みは、10〜50μmである。
次に、図18(H)に示すように、感光部25を、有機溶媒により、除去する。
次に、図18(I)に示すように、オーバハング金属膜323(R形状開口層32)およびテーパ形状開口層31からなるノズルプレート30dを、透光性基板22、透光性導電膜26、および、ランドパターン27から剥離する。
ここで、透光性基板22に透光性導電膜26およびランドパターン27を付着させたまま残し、透光性基板22、透光性導電膜26、および、ランドパターン27からなる基板22b(電極およびパターン付きの基板)として再利用すれば、図17(A)の透光性導電膜26の形成工程および図17(B)のランドパターン27の形成工程を省略し、図17(C)に示すオーバハング金属膜323の形成工程から開始してノズルプレート30dを再製造できるので、経済的なノズルパターンの製造が可能となる。
(第4実施形態)
図19は、第4実施形態に係るノズルプレートの一例を示す断面図である。図面中の矢印Eは液体の吐出方向を示す。図19では、図示の便宜上、ノズル51を2つのみ描いてあるが、ノズル51の数は特に限定されない。なお、図19において、図15に示した第3実施形態のノズルプレート30dと同じ構成要素には、同じ符号を付してあり、既に説明した内容については、ここではその説明を省略する。
図19に示すように、本実施形態のノズルプレート30eは、液体流入側の面に第1の溝331が形成されており、液体吐出側の面に第2の溝332が形成されている。液体流入側の面に形成されている第1の溝331の幅は、ノズル51の液体流入側端部の開口幅(すなわちテーパ形状開口部51aの液体流入側端部の開口幅)よりも、小さい。また、液体吐出側の面に形成されている第2の溝332の幅は、ノズル51の液体吐出側端部の開口幅(すなわちR形状開口部51bの液体吐出側端部の開口幅)よりも、小さい。
液体流入側の面に形成されている第1の溝331は、接着剤を用いてノズルプレート30cを他の流路構造体(例えば図29の連通板156)と接着する際に、余剰接着剤を第1の溝331内へ逃がす機能を有する。液体吐出側の面に形成されている第2の溝332は、インクトラップ、ワイピング性向上などの機能を有する。さらに、ノズルプレート30cの表裏に溝26、27が形成されていることにより、接着時や環境温度変化時の熱応力の緩和が可能となる。
本実施形態のノズルプレート30eは、図17の(A)〜(E)および図18の(F)〜(I)に示す第3実施形態において説明した製造処理に、第2実施形態において説明した工程を応用し、製造することができる。
具体的には、図20(A)に示す透光性導電膜26の形成工程(図17(A)に示す第3実施形態における透光性導電膜26の形成工程と同じである)の後に、図20(B)に示す工程(図17(A)に示す第3実施形態における透光性導電膜26の形成工程に対応する)において、R形状開口部51bの形成に寄与するランドパターン27aと第2の溝332の形成に寄与する凸形状のパターン27b(例えばストライプパターン)とを、透光性導電膜26上に形成する。
また、図20(C)に示すオーバハング金属膜323の形成工程(図17(C)に示す第3実施形態におけるオーバハング金属膜323の形成工程と同じである)と、図20(D)に示すレジスト24の付着工程(図17(D)に示す第3実施形態におけるレジスト24の付着工程と同じである)の後に、図20(E)に示す露光工程(図17(E)に示す第3実施形態における露光工程に相当する)において、図13(E)に示す第2実施形態の露光工程と同様に、透光性基板22のレジスト24を付着させた面とは反対側の面に、透明部23aおよび半透過マスク23b(光学フィルタ)を有する光学シート23を付着した状態で露光を行う。
その後の工程は、図18(R)〜(I)に示す第3実施形態の各工程と同様であり、ここでは各工程の説明を省略する。
(第5実施形態)
図21は、第5実施形態に係るノズルプレートの一例を示す断面図である。図面中の矢印Eは液体の吐出方向を示す。図21では、図示の便宜上、ノズル51を2つのみ描いてあるが、ノズル51の数は特に限定されない。なお、図21において、図15に示した第3実施形態のノズルプレート30dと同じ構成要素には、同じ符号を付してあり、既に説明した内容については、ここではその説明を省略する。
図21に示すように、本実施形態のノズルプレート30fは、液体流入側(図中の上側である)の面に開口した複数のテーパ形状開口部51aが形成されているテーパ形状開口層31と、複数のR形状開口部51bが形成されているR形状開口層32と、液体吐出側(図中の下側)の面に開口した複数の逆テーパ形状開口部51cが形成されている逆テーパ形状開口層35とを備える。
逆テーパ形状開口部51cは、R形状開口部51bに連続して形成されており、液体吐出側から液体流入側に向けて流路幅が略直線状(または緩やかな曲線状)に小さくなる逆テーパ形状(逆円錐台形状)を有している。
本実施形態のノズルプレート30fは、テーパ形状(円錐台形状)のテーパ形状開口部51aと、逆テーパ形状(逆円錐台形状)の逆テーパ形状開口部51cとが、R形状開口部51bを挟んで、上下に組み合わされた、所謂「くびれ形状」(鼓形状)のノズル51を有する。
なお、逆テーパ形状開口部51cの液体吐出側の端部は、R形状開口部51bのR形状よりも曲率が小さい緩やかな曲面形状となっている。
図22(J)〜(M)および図22(N)〜(P)は、本実施形態に係るノズルプレート製造処理の一例の各工程の説明に用いる工程図である。
本実施形態では、第3実施形態において製造されたノズルプレート30d(以下「ノズルプレート中間構造体」と称する)に対して更に加工を施して、「くびれ形状」のノズルを有するノズルプレート30fを製造する。
まず、図22(J)に示すように、ノズルプレート中間構造体30dの液体流入側の面、すなわち、テーパ形状開口部51aが形成されている面に、ネガタイプのレジスト24を付着させた透光性基板22を密着させる。
そうすると、図22(K)に示すように、透光性基板22によって押し出されたレジスト24で、テーパ形状開口部51a内およびR形状の開口部51b内が埋まるとともに、R形状開口部51bの液体吐出側(ザグリ部34が形成されている側である)の端部からレジスト24が突出する。
次に、図22(L)に示すように、ノズルプレート中間構造体30dの液体吐出側の面、すなわち、ザグリ部34が形成されている面に、さらにネガタイプのレジスト24を付着させる。
そうすると、テーパ形状開口部51aおよびR形状開口部51bに埋められていたレジスト24と、後からザグリ部34側から埋められたレジスト24とが結合する。
次に、図22(M)に示すように、オーバーハン金属膜323(R形状開口層32)をマスクとして用い、ノズルプレート中間構造体30dの液体流入側の面(透光性基板22のレジスト24を付着させた面とは反対側の面である)に対して斜め方向から光を照射しつつ透光性基板を回転させ、レジスト24を感光させる裏面傾斜回転露光を行うことにより、レジスト24中に、テーパ形状感光部29aと逆テーパ形状感光部29bとが組合された鼓形状の感光部29が形成される。
次に、透光性基板22をノズルプレート30dから剥離して、露光後のレジスト24について現像を行う。そうすると、図23(N)に示すように、テーパ形状感光部29aおよび逆テーパ形状感光部29bを残して、非感光部が除去される。
次に、図23(O)に示すように、逆テーパ形状感光部29bを型として用い、金属(例えばNi)および撥液性材料(例えばPTFE)を含有する電鋳液を用いて共析電鋳を行い、R形状開口層32の液体吐出側の面に、逆テーパ形状(逆円錐台形状)の逆テーパ形状開口部51cを有する逆テーパ形状開口層35を形成する。
電鋳では、金属部分のみ析出が生じるので、逆テーパ形状開口部51cの液体吐出側の端部は緩やかな曲面形状となる。
次に、有機溶媒により、感光部29a、29bを、除去すると、図23(P)に示すように本実施形態のノズルプレート30fが得られる。すなわち、液体流入側の端部がテーパ形状(円錐台形状)を有したテーパ形状開口部51aであり、これにR形状を有したR形状開口部51bが連続し、これに逆テーパ形状(逆円錐台形状)を有した逆テーパ形状開口部51bが連続し、且つ、液体吐出側の端部が緩やかな曲面形状となったノズル51となる。
なお、図22(M)の露光工程において、裏面傾斜回転露光を行う場合、すなわち、透光性基板22の裏面に対して斜めから光を照射しつつ透光性基板22を回転させて露光を行う場合を例に説明したが、本発明はこのような場合に限定されず、図22(M)の露光工程において、透光性基板22の裏面に対して垂直に光を照射する露光(裏面垂直露光)を行うようにしてもよい。このように裏面垂直露光を行うと、R形状開口部51bに逆テーパ形状開口部51cが連結する代わりに、ストレート形状の開口部が連結されることになり、更なる液体の飛翔安定化を図ることが可能となる。この場合、図10と同様に、テーパ形状開口部51aに、R形状開口部51b、ストレート形状開口部が順に連結した「ストレート付き」のノズルが形成されることになる。
また、図23(O)に示す逆テーパ形状開口層35の形成工程では、共析電鋳により逆テーパ形状開口層35を形成する場合を例に説明したが、特に共析電鋳には限定されず、塗布、蒸着などによりテーパ形状開口層35を形成してもよい。例えば、フッ素系、シリコーン系、または、フリオロシリコーン系の撥水剤によるコーティングを行ってもよい。
また、図15に示す第3実施形態のノズルプレート30dを中間構造体として用いる場合を例に説明したが、図19に示す第4実施形態のノズルプレート30eを中間構造体として用いることにより、図24に示す本実施形態の他の例のノズルプレート30gを製造するようにしてもよい。
図24に示す本実施形態の他の例のノズルプレート30gは、くびれ形状のノズル51(51a、51b、51c)を有するとともに、液体流入側に第1の溝331を有し、且つ、液体吐出側に第2の溝332を有する。
このようなノズルプレート30gは、図19に示す第4実施形態のノズルプレート30eを中間構造体として用い、図22(J)〜(M)および図23(N)〜(P)に示す各工程と同様の工程を行うことにより得られる。ただし、図20(E)に示す露光の後、図23(N)に示すレジスト除去において、第2の溝332内のレジスト24は除去せず残しておき、図23(O)に示す共析電鋳(逆テーパ形状開口層の形成)を行う。
そうすると、図25に示すように、第2の溝332内に残されたレジスト24は非導電性なので、第2の溝332のレジスト24の露出部分には電鋳時に金属が析出しない。よって、第2の溝332の開口350が形成される。また、第2の溝332は、親液性のテーパ形状開口層31の一部を有することになる。
その後、感光部29a、29bとともに、第2の溝332内のレジスト24を除去すると、図24に示す本実施形態のノズルプレート30gが得られる。
また、本実施形態では、逆テーパ形状開口層35が撥液性を有しているので、オーハング電鋳層323は、撥液性材料を含む電鋳液を用いた電鋳ではなく、撥液性材料を含まない電鋳液を用いた電鋳で形成することが、好ましい。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
次に、本発明の実施形態に係るノズルプレートの製造方法によって製造されたノズルプレートを用いたインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置の例について説明する。
図26は、本発明の実施形態に係る画像形成装置であるインクジェット記録装置の概略を示す全体構成図である。図26に示すように、このインクジェット記録装置210は、インクの色毎に設けられた複数の液体吐出ヘッド(以下、単に「ヘッド」と称する場合あり)212K、212C、212M、212Yを有する印字部212と、各ヘッド212K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部214と、記録紙216を供給する給紙部218と、記録紙216のカールを除去するデカール処理部220と、ヘッド212K、212C、212M、212Yのノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙216(記録媒体)の平面性を保持しながら記録紙216を搬送する吸着ベルト搬送部222と、印字部212による印字結果を読み取る印字検出部224と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部226を備えている。
インク貯蔵/装填部214は、各ヘッド212K,212C,212M,212Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路を介してヘッド212K,212C,212M,212Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部214は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
図26では、給紙部218の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部218から送り出される記録紙216はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部220においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム230で記録紙216に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、カッター228によって、所定のサイズにカットされた記録紙216は、吸着ベルト搬送部222へと送られる。吸着ベルト搬送部222は、ローラ231、232間に無端状のベルト233が巻き掛けられた構造を有し、少なくともヘッド212K、212C、212M、212Yのノズル面及び印字検出部224のセンサ面に対向する部分が平面をなすように構成されている。
ベルト233は、記録紙216の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図26に示したとおり、ローラ231、232間に掛け渡されたベルト233の内側において印字部212のノズル面及び印字検出部224のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバー234が設けられており、この吸着チャンバー234をファン235で吸引して負圧にすることによってベルト233上の記録紙216が吸着保持される。
ベルト233が巻かれているローラ231、232の少なくとも一方にモータ(不図示)の動力が伝達されることにより、ベルト233は図26において、時計回り方向に駆動され、ベルト233上に保持された記録紙216は、図26の左から右へと搬送される。なお、吸引吸着方式に代えて、静電吸着方式の搬送機構を用いる態様も可能である。
縁無しプリント等を印字するとベルト233上にもインクが付着するので、ベルト233の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部236が設けられている。ベルト清掃部236の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
吸着ベルト搬送部222により形成される用紙搬送路上において印字部212の上流側には、加熱ファン240が設けられている。加熱ファン240は、印字前の記録紙216に加熱空気を吹きつけ、記録紙216を加熱する。印字直前に記録紙216を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部212の各ヘッド212K,212C,212M,212Yは、当該インクジェット記録装置210が対象とする記録紙216の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図27参照)。
ヘッド212K,212C,212M,212Yは、記録紙216の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド212K,212C,212M,212Yが記録紙216の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
吸着ベルト搬送部222により記録紙216を搬送しつつ各ヘッド212K,212C,212M,212Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙216上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド212K,212C,212M,212Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙216と印字部212を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙216の全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシリアルスキャン型(シャトル型)ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
図26に示した印字検出部224は、印字部212の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ又はエリアセンサ)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像から、ノズルの目詰まりや着弾位置ずれなどの吐出不良をチェックする手段として機能する。各色のヘッド212K,212C,212M,212Yにより印字されたテストパターン又は実技画像が印字検出部224により読み取られ、各ヘッドの吐出判定が行われる。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。
印字検出部224の後段には後乾燥部242が設けられている。後乾燥部242は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。
後乾燥部242の後段には、加熱・加圧部244が設けられている。加熱・加圧部244は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ245で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして生成されたプリント物は排紙部226から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置210では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部226A、226Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)248によってテスト印字の部分を切り離す。また、図26には示さないが、本画像の排出部226Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
〔ヘッドの構造〕
次に、ヘッドの構造について説明する。色別の各ヘッド212K,212C,212M,212Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号250によってヘッドを示すものとする。
図28(a)はヘッド250の構造例を示す平面透視図である。図28(a)に示すように、本例のヘッド250は、インク滴の吐出口であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室252等からなるインク室ユニット(1ノズルに対応した記録素子単位となる液滴吐出素子)253を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。なお、ノズル51は、図6(A)、図10、図12、図15、図19、図21、図24等において符号51で説明したノズルである。
なお、記録媒体216の送り方向(矢印S方向;副走査方向)と略直交する方向(矢印M方向;主走査方向)に、記録媒体216の全幅に対応する長さ以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図28(a)の構成に代えて、図28(b)に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドユニット250’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで長尺化し、記録媒体216の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室252は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51への流出口と供給インクの流入口(供給口)254が設けられている。なお、圧力室252の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。また、ノズル51や供給口254の配置も図28(a),(b)に示す配置に限定されず、例えば、圧力室252の略中央部にノズル51を配置してもよいし、圧力室252の側壁側に供給口254を配置してもよい。
図29は1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル51に対応したインク室ユニット253)の立体的構成を示す断面図である。同図では、図12で説明した第2実施形態のノズルプレート30cを備えたヘッド250の例を示したが、他の実施形態のノズルプレート(図6(A)の30a、図10の30b、図15の30c、図19の30e、図21の30f、および、図24の30g)を採用する構成も可能である。
図29に示すように、ヘッド250は、ノズルプレート30、連通板156、共通流路形成プレート260、絞り板262、圧力室形成プレート264、振動板266及び圧電素子268を積層接合した構造から成る。
連通板156は、圧力室252からノズル51へと繋がる連通路(ノズル流路)270の一部を形成するとともに、各圧力室252にインクを供給するための共通流路272の床面を形成する部材である。共通流路形成プレート260は、共通流路272の側壁部となる部分を形成するとともに、連通路270の一部を形成する流路形成部材である。
絞り板262は、共通流路272から圧力室252にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としてのインク供給口254を形成するとともに、連通路270の一部を形成する流路形成部材である。圧力室形成プレート264は、圧力室252の側壁部となる部分を形成する流路形成部材である。
振動板266は、圧力室252の一部の面(図29おいて天面)を構成する部材であるとともに、ステンレス鋼(SUS)などの導電性材料から成り、各圧力室252に対応して配置される複数の圧電素子268の共通電極を兼ねる。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様も可能であり、この場合は、振動板部材の表面に金属などの導電材料による共通電極層が形成される。
振動板266の圧力室252側と反対側(図29において上側)の表面には、各圧力室252に対応する位置に、圧電体274が設けられており、該圧電体274の上面(共通電極を兼ねる振動板266に接する面と反対側の面)に個別電極275が形成されている。この個別電極275と、これに対向する共通電極(ここでは振動板266が兼ねる)と、これら電極間に挟まれるように介在する圧電体274とで圧電素子(「アクチュエータ」に相当)268が構成される。圧電体274には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電材料が好適に用いられる。
図29の構成において、共通流路272はインク供給源たるインクタンク(図29中不図示、図26においてインク貯留/装填部214と等価なもの)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは図29の共通流路272を介して各圧力室252に供給される。
圧力室252にインクを充填した状態で、個別電極275と共通電極(振動板266で兼用)と間に駆動電圧を印加することによって圧電素子268が変形して圧力室252の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル51からインクが吐出される。インク吐出後、圧電素子268の変位が元に戻る際に、共通流路272からインク供給口254を通って新しいインクが圧力室252に再充填される。
図30は、インクジェット記録装置210におけるインク供給系及び吐出回復装置(メンテナンスユニット)の構成を示した概要図である。インクタンク290はヘッド250にインクを供給するための基タンクであり、図26で説明したインク貯蔵/装填部214に設置される。インクタンク290の形態には、インク残量が少なくなった場合に、補充口(図示省略)からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を替える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じて吐出制御を行うことが好ましい。
図30に示したように、インクタンク290とヘッド250を繋ぐ管路の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ292が設けられている。フィルタ・メッシュサイズはヘッド250のノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図30には示さないが、ヘッド250の近傍又はヘッド250と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置210には、ノズルの乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ294と、ノズル面250Aの清掃手段としてのクリーニングブレード296とが設けられている。
これらキャップ294及びクリーニングブレード296を含むメンテナンスユニットは、図示を省略した移動機構によってヘッド250に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド250下方のメンテナンス位置に移動されるようになっている。
キャップ294は、図示しない昇降機構によってヘッド250に対して相対的に昇降変位される。昇降機構は、電源OFF時や印刷待機時にキャップ294を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド250に密着させることにより、ノズル面250Aのノズル領域をキャップ294で覆うようになっている。また、このキャップ294は、ノズル吸引のための吸引手段として機能するとともに、予備吐出のインク受けとしても機能し得る。
クリーニングブレード296は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示を省略したブレード移動機構によりヘッド250のインク吐出面(ノズル面250A)に摺動可能である。ノズル面250Aにインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード296をノズル面250Aに摺動させることでノズル面250Aを拭き取り、ノズル面250Aを清浄化するようになっている。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、そのノズル51近傍のインク粘度が上昇した場合、粘度が上昇して劣化したインクを排出すべく、キャップ294に向かって予備吐出が行われる。
すなわち、ヘッド250は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用のアクチュエータ(圧電素子268)が動作してもノズル51からインクが吐出しなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(圧電素子268の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、インク受けに向かって圧電素子268を動作させ、粘度が上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。また、ノズル面250Aの清掃手段として設けられているクリーニングブレード296等のワイパーによってノズル面250Aの汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル51内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
また、ヘッド250内のインク(圧力室252内のインク)に気泡が混入した場合、ヘッド250にキャップ294を当て、吸引ポンプ297で圧力室252内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク298へ送液する。この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも行われ、粘度が上昇して固化した劣化インクが吸い出され除去される。
具体的には、ノズル51や圧力室252内に気泡が混入したり、ノズル51内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、圧電素子268を動作させる予備吐出ではノズル51からインクを吐出できなくなる。このような場合、ヘッド250のノズル面250Aに、キャップ294を当てて圧力室252内の気泡が混入したインク又は増粘インクをポンプ297で吸引する動作が行われる。
ただし、上記の吸引動作は、圧力室252内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きい。したがって、粘度上昇が少ない場合はなるべく予備吐出を行うことが好ましい。また、好ましくは、キャップ294の内側が仕切壁によってノズル列に対応した複数のエリアに分割されており、これら仕切られた各エリアをセレクタ等によって選択的に吸引できる構成とする。
なお、本実施形態ではフルラインヘッドを例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、記録媒体の幅よりも短い長さのノズル列を有する短尺のヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら、記録媒体の幅方向の印字を行うシリアル型(シャトルスキャン型)ヘッドにも適用可能である。
また、上述の実施形態においては、インクジェットヘッドのノズルプレートを製造する方法について説明したが、本発明に係るノズルプレートの製造方法により製造されるノズルプレートの適用範囲は上述したインクジェト記録装置に限らず、工業用の精密塗布装置、レジスト印刷装置、電子回路基板の配線描画装置、染色加工装置など、液体を吐出(噴射)する各種の液滴吐出装置に用いられる液滴吐出ヘッドに適用可能である。
本発明は、本明細書において説明した例や図面に図示された例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の設計変更や改良を行ってよいのはもちろんである。
10…露光装置、12…光源、14…照射光学系、16…液浸容器、18…透過補正板、19…回転軸、20…ステージ、22…透光性基板、23…光学シート、23b…半透過膜(光学フィルタ)、24…レジスト、25、25a、25b…レジストの感光部、26…透光性導電膜、27…レジストパターン膜(透光性非導電膜)、30(30a、30b、30c、30d、30e、30f、30g)…ノズルプレート、31…テーパ形状開口層(Ni電鋳層)、32…R形状開口層(曲面付き開口層)、321、3211、3212…金属パターン膜、322…オーバハング金属膜、323…オーバハング金属膜(曲面付き開口層)、33、331、332…溝、34…ザグリ部、51…ノズル、51a…テーパ形状開口部、51b…R形状開口部(曲面付きの開口部)、51c…逆テーパ形状開口部、48…受光センサ、52…受光モニタ部、60…照明ユニット、70…純水、106…気体層、108…液体層、115…ノズルプレート、118…くびれ付き広角テーパノズル、120…半透過領域、121…半透過領域、122…露光マスク、150…ノズルプレート、140…凹部、170…反射部材、194…不透過膜、210…インクジェット記録装置、212K,212C,212M,212Y…ヘッド、250…ヘッド