以下、本発明に係る第1の実施の形態について説明する。
〔露光マスク〕
本発明に係る第1の実施の形態に用いられる露光マスクの作製方法について図1に基づき説明する。
図1(a)に示すように、ガラス等からなる基板101上に光干渉膜102を形成する。光干渉膜102は、高屈折率材料と低屈折率材料とを交互に積層形成した、いわゆる光学多層膜からなるものである。積層される高屈折率材料と低屈折率材料の膜厚を調整することにより、所定の波長で、所望の透過率を得ることができる。高屈折率材料としては、Al2O3(酸化アルミ二ウム)や、TiO2(酸化チタン)が用いられ、低屈折率材料としては、SiO2(酸化シリコン)やMgF2(フッ化マグネシウム)が用いられる。光干渉膜102は、これらの材料をスパッタリングや真空蒸着といった手法により交互に成膜することにより形成する。本実施の形態では、図2に示されるように、波長365〔nm〕光について、光干渉膜102面に対し垂直に光を入射させた場合(0度)には、約30〔%〕の透過率を示し、光干渉膜102面に対し35度以上の角度で光を入射させた場合、光の透過率は略0〔%〕となるような(図2より推察)材料及び膜厚を選定して構成されている。
次に、図1(b)に示すように、基板101上に光干渉膜102を形成したものの上に、スピンコーター等によりフォトレジスト103を塗布する。
次に、フォトレジスト103の塗布された基板101のプリベークを行い、図1(c)に示すように、この後、露光マスクを用いて露光し現像を行うことにより、形成される光遮断膜の開口領域のみフォトレジスト層103bを形成する。
次に、図1(d)に示すように、基板101上のフォトレジスト層103bの形成された面の全面に、光遮断膜104を形成する。光遮断膜104は、Cr(クロム)または、酸化クロムからなるものであり、スパッタリングや真空蒸着といった方法により形成する。
光遮断膜104の成膜をおこなった後、基板101全体を有機溶剤に浸漬させる、いわゆるリフトオフにより、フォトレジスト層103bの形成されている領域上の光遮断膜104をフォトレジスト層103bと共に除去する。これにより、図1(e)に示すように、フォトレジスト層103bの形成されていなかった領域においてのみ光遮断膜が残存し光遮断層104bが形成される。
この後、光干渉膜102の開口領域となる部分をレーザートリマー等により除去することにより、図1(f)に示すように光干渉層102bが形成される。
これにより、本実施の形態において用いる露光マスクが作製される。
〔ノズルプレートの作製〕
次に、本実施の形態におけるノズルプレートの作製方法について図3に基づき説明する。図3は、本実施の形態におけるノズルプレートの作製の流れを示す。
最初に、ステップ102(S102)において、露光マスク上にネガレジストを塗布する(感光性材料付着工程)。具体的には、図4(a)に示すように、露光マスク105の光干渉層102b、光遮断層104bの形成されている面に、スピンコーター等によりネガレジスト110、即ち、ネガタイプのフォトレジストを塗布する。塗布する膜厚は、作製されるノズルプレートの厚さに対応するため、本実施の形態では、厚膜レジストを用いている。尚、ドライフィルム(DRF)を用いて、露光マスク105に密着させる方法や、ネガレジスト110が塗布された基板を用い、ネガレジスト110面と露光マスク105を密着させる方法であってもよい。
この後、ステップ104(S104)において、露光マスク105にネガレジスト110を塗布したものについて、プリベークをおこなう。
この後、ステップ106(S106)において、露光マスクに対し垂直な露光光を照射する(第1露光工程)。具体的には、図4(b)に示すように、露光マスク105の光干渉層102b及び光遮断層104bの形成されていない面に対し矢印に示すように垂直に光を照射する。これにより、光干渉層102bの開口領域は、照射された露光光が全く吸収されることがないため、最も強度の強い光がネガレジスト110に照射される。このため、図に示すように最も奥の領域まで感光し、照射された露光光は、ネガレジスト110を貫通し、110aの領域が感光される。次に、光遮断層104bの開口領域において、光干渉層102bの形成されている領域では、光干渉層102bにより、照射した光のうち30%しか透過しない。このため、照射された露光光はネガレジスト110を貫通することはなく、ネガレジスト110の途中の領域、即ち、図に示す110bの領域まで感光する。光遮断層104bの開口領域であって光干渉層102bが形成されている領域においても同様であり、図に示す110cの領域が感光される。尚、露光マスク105の光遮断層104bにより覆われた領域では、露光光は、光遮断層104bを透過することはないため、この領域に形成されたネガレジスト110が感光することはない。
ここで、本実施の形態に用いられる露光装置について説明する。
最初に、光源及び光学系について説明する。図5に示すように、本実施の形態に用いられる露光装置の光源及び光学系130は、超高圧水銀ランプ131を光源とするものであり、超高圧水銀ランプ131より発せられた光は、楕円集光ミラー132により、平面反射ミラー133によって光路を曲げられた後、インテグレーターレンズ134において集光される。集光された光は、365〔nm〕より短波長の光をカット、又は、365〔nm〕の光を透過するフィルタ129を介し、平面反射ミラー135により光路を曲げられたのち、コリメーターレンズ136により平行光とされた後、照射面137に照射される。ステップ106では、このように平行光となった光が照射される。
本実施の形態に用いられる露光装置は、図6に示すように、上記光源及び光学系130を備えており、露光マスク105は、ステージ138に密着固定されている。ステージ138の露光マスク105が固定されている面の反対面は、ステージ138に垂直な回転軸139が取り付けられており、この回転軸139を中心にステージ138全体が回転する構成となっている。また、露光光に対し、ステージ138と回転軸139は全体が揺動する機構(不図示)となっており、この機構により露光光を垂直に照射すること(垂直露光)や、斜めに照射すること(傾斜露光)が可能となる。
この後、ステップ108(S108)において、露光マスク105に対し斜めの角度より露光光を照射する(第2露光工程)。具体的には、図6に示したように本実施の形態に用いられる露光装置のステージ138を揺動機構により、露光光に対し垂直方向から傾けることにより、露光マスク105に対し露光光を斜めから照射する。傾斜角度は、本実施の形態においては、露光光に対し約35度となるように傾ける。図2から類推されるように、35度に傾けた場合、光干渉層102bにおいて光の干渉により、光干渉層102bを透過する露光光の光量は略0になるからである。
図4(c)に、露光マスクを傾けて、回転させながら露光光を照射したときの様子を具体的に示す。露光マスク105に対し矢印に示すように斜めに露光光が照射されることにより、光干渉層102bの開口領域を透過した光は、ネガレジスト110を貫通し、これによりネガレジスト110にテーパ領域110dが形成されるように感光される。一方、光干渉層102bの設けられている領域は、図2における説明のように、35度に傾いた状態では、光の干渉により露光光の透過率は略0%となるため、露光光によりネガレジスト110が感光することはない。よって、ステップ108によりネガレジスト110が感光するのは、光干渉層102bの開口領域より入射する露光光にのみによるものである。
図7に、斜めからの露光光により露光マスク105に塗布されたネガレジスト110の露光の際の様子を示す。ステージ138を露光光に対し傾斜させて、回転軸139を軸に回転させることにより、全面にわたり露光光を斜め方向より入射させることが可能となる。尚、ステージ138の表面を露光光の波長を反射する部材により構成している場合では、図8に示すように、斜めから入射した露光光は、ネガレジスト110を透過し、ステージ138の表面において反射するため、ネガレジスト110のステージ138の近傍においては、ステージ138からの反射光により広い範囲が感光するため、広角のテーパ領域が感光される。尚、ステージ138が露光光の波長の光を反射する部材により構成されていない場合であっても、ネガレジスト110とステージ138の間に空間を設けることにより、ネガレジスト110の界面は空気と接する。ネガレジスト110と空気との界面において、露光光の波長の光は少なからず反射するため、この反射光を用いても同様の効果は得られる。尚、ネガレジスト110の塗布された基板を露光マスク105に密着させた場合では、基板は露光光に用いられる波長の光を反射する材料により構成してもよい。
この後、ステップ110(S110)において、露光マスク105に形成されたネガレジスト110について、現像を行ったのちポストベークを行う。
この後、ステップ112(S112)において、Ni(ニッケル)の共析メッキを行う。具体的には、図9(a)に示すように、ネガレジスト層111a、111bが形成された露光マスク105についてNi共析メッキを行う。Ni共析メッキは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を含有するメッキ液を用い、1〜3〔μm〕の膜厚になるまで行う。Ni共析メッキは、金属部分にのみメッキが施されるため、図9(a)に示すように、光遮断膜104bの表面にのみNi共析メッキ層113が形成される。
この後、ステップ114(S114)において、Ni電鋳を行う。具体的には、図9(a)に示すようにNi共析メッキの施された領域、即ち、Ni共析メッキ層113上に、Ni電鋳により、Ni電鋳層114を堆積させる。このとき堆積させるNiの膜厚は、10〜50〔μm〕である。
図10にステージ138上のNi電鋳層114を堆積させたものの上面図を示す。Ni共析メッキ層113及びNi電鋳層114を堆積させたものは長方形状に形成されており、この部分が将来的にノズルプレートとなる。尚、図面ではノズル51となる孔は省略されている。
この後、ステップ116(S116)において、有機溶媒等によりネガレジスト層111a、111bの除去を行った後、ステップ118(S118)において、露光マスク105より、Ni共析メッキ層113、Ni電鋳層114により形成されるノズルプレート60を剥離する。これにより、図9(b)に示すように、ノズル51、親水性トラップ溝62、接着剤逃げ溝63が形成されたノズルプレート60ができあがる。
この後、ステップ120(S120)において、図9(c)に示すように、作製されたノズルプレート60と液体吐出ヘッドの連通板59と接合し、液体吐出ヘッドを作製する。
この接合には、接着剤等を用いて接合を行うが、接合の際の接着剤の余りが、接着剤逃げ溝63に入り込むため、高い歩留まりで綺麗に接合を行うことができる。
〔液体吐出ヘッドの構造〕
次に、上記工程により作製されたノズルプレートを用い作製された液体吐出ヘッドの具体的な構造について図11に基づき説明する。
図11に示すように、圧力室ユニット53は、インクを吐出するノズル51と連通する圧力室52によって形成され、供給口54を介してインクを供給する共通液室55と連通している。圧力室52の一面(図では天面)は振動板56で構成され、その上部には、振動板56を変形させる圧電素子58が接合されており、圧電素子58の上面には個別電極57が形成される。尚、振動板56は共通電極を兼ねている。ノズル51は、ノズルプレート60を連通板59に接合することにより形成されている。ノズルプレート60には、親水性トラップ溝62が形成されている。圧電素子58は、共通電極(振動板56)と個別電極57によって挟まれており、共通電極(振動板56)と個別電極57との間に駆動電圧を印加することによって変形する。圧電素子58の変形によって振動板56が変形し、圧力室52の容積が縮小されて、圧力室52内のインクに圧力がかかり、ノズル51からインクが吐出されるような構造となっている。共通電極(振動板56)と個別電極57との間に印加されていた電圧が解除されると圧電素子58がもとに戻り、圧力室52の容積が元の大きさに回復し、共通液室55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給されるようになっている。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図12は、本発明の実施形態に係る画像形成装置であるインクジェット記録装置の概略を示す全体構成図である。図12に示すように、このインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数の液体吐出ヘッド(以下、単に「ヘッド」と称する場合あり)12K、12C、12M、12Yを有する印字部12と、各ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、ヘッド12K、12C、12M、12Yのノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16(記録媒体)の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26を備えている。
図12では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図12のように、裁断用のカッター28が設けられており、前記カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、前記固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置されている。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくともヘッド12K、12C、12M、12Yのノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が平面をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図12に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバー34が設けられており、この吸着チャンバー34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図12中不図示、図16に符号88で図示)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図12において、時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は、図12の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラが接触するので、画像が滲み易いという問題がある。従って、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹きつけ、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
図13は、インクジェット記録装置10の印字部12周辺を示す要部平面図である。
図13に示すように、印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙送り方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドを有している。印字部12を構成する各ヘッド12K、12C、12M、12Yは、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の搬送方向に沿って上流側(図12の左側)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応したヘッド12K、12C、12M、12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各ヘッド12K、12C、12M、12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部12によれば、紙送り方向について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち、1回の副走査で)記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、ヘッドが紙送り方向と直交する主走査方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出するヘッドを追加する構成も可能である。
図12に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各ヘッド12K、12C、12M、12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは図示を省略した管路を介して各ヘッド12K、12C、12M、12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、前記イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各ヘッド12K、12C、12M、12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列とからなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が2次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色のヘッド12K、12C、12M、12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいため、熱風を吹きつける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことができ、画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
このようにして生成されたプリント物は、排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(不図示)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に、本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成されている。
また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
〔液体吐出ヘッドの構成〕
次に、ヘッドの構造について説明する。色別の各ヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示すものとする。
図14(a) はヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図14(b) はその一部の拡大図である。また、図14(c) はヘッド50の他の構造例を示す平面透視図である。
記録紙16上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図14(a)〜(c) に示したように、インク滴の吐出孔であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室(液室)52、供給口54等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)を狭め、高密度化を達成している。
紙送り方向と略直交する主走査方向に記録紙16の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図14(a) の構成に代えて、図14(c) に示すように、複数のノズル51が2次元状に配列された短尺のヘッドブロック50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙16の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
なお、本例では圧力室52の平面形状が略正方形である態様を示したが、圧力室52の平面形状は略正方形に限定されず、略円形状、略だ円形状、略平行四辺形(ひし形)など様々な形状を適用することができる。また、ノズル51や供給口54の配置も図14(a)〜(c)に示す配置に限定されず、圧力室52の略中央部にノズル51を配置してもよいし、圧力室52の側壁側に供給口54を配置してもよい。
図14(b) に示すように、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造や、2列の千鳥配置されたノズル列を有する構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、記録媒体の幅方向(主走査方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図14(a)〜(c)に示すようなマトリクス状に配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。
一方、上述したフルラインヘッドと記録紙16とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
なお、本実施形態ではフルラインヘッドを例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、記録紙16の幅よりも短い長さのノズル列を有する短尺のヘッドを記録紙16の幅方向に走査させながら、記録紙16の幅方向の印字を行うシリアル型ヘッドにも適用可能である。
尚、図14(a)〜(c)に示すように、各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部に形成されたノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は図14(a)、(b)に示す供給口を介して不図示の共通流路(共通液室)と連通されている。前記共通流路は不図示のインク供給タンクと連通しており、前記インク供給タンクから供給されるインクは前記共通流路を介して各圧力室52に分配供給される。
〔吐出回復装置〕
図15は、インクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インクタンク90は印字ヘッド50にインクを供給するための基タンクであり、図12で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インクタンク90の形態には、インク残量が少なくなった場合に、補充口(図示省略)からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を替える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じて吐出制御を行うことが好ましい。なお、図15のインクタンク90は、先に記載した図12のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図15に示したように、インクタンク90と印字ヘッド50を繋ぐ管路の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ92が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは印字ヘッド50のノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図15には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズルの乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ94と、ノズル面50Aの清掃手段としてのクリーニングブレード96とが設けられている。
これらキャップ94及びクリーニングブレード96を含むメンテナンスユニットは、図示を省略した移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動されるようになっている。
キャップ94は、図示しない昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。昇降機構は、電源OFF時や印刷待機時にキャップ94を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面50Aのノズル領域をキャップ94で覆うようになっている。
クリーニングブレード96は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示を省略したブレード移動機構により印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル面50A)に摺動可能である。ノズル面50Aにインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード96をノズル面50Aに摺動させることでノズル面50Aを拭き取り、ノズル面50Aを清浄化するようになっている。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、そのノズル51近傍のインク粘度が上昇した場合、粘度が上昇して劣化したインクを排出すべく、キャップ94に向かって予備吐出が行われる。
すなわち、印字ヘッド50は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用のアクチュエータ(圧電素子58)が動作してもノズル51からインクが吐出しなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(圧電素子58の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、インク受けに向かって圧電素子58を動作させ、粘度が上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。また、ノズル面50Aの清掃手段として設けられているクリーニングブレード96等のワイパーによってノズル面50Aの汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル51内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内のインク)に気泡が混入した場合、印字ヘッド50にキャップ94を当て、吸引ポンプ97で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク98へ送液する。この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも行われ、粘度が上昇して固化した劣化インクが吸い出され除去される。
具体的には、ノズル51や圧力室52内に気泡が混入したり、ノズル51内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、圧電素子58を動作させる予備吐出ではノズル51からインクを吐出できなくなる。このような場合、印字ヘッド50のノズル面50Aに、キャップ94を当てて圧力室52内の気泡が混入したインク又は増粘インクをポンプ97で吸引する動作が行われる。
ただし、上記の吸引動作は、圧力室52内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きい。したがって、粘度上昇が少ない場合はなるべく予備吐出を行うことが好ましい。なお、図15で説明したキャップ94は、吸引手段として機能するとともに、予備吐出のインク受けとしても機能し得る。
また、好ましくは、キャップ94の内側が仕切壁によってノズル列に対応した複数のエリアに分割されており、これら仕切られた各エリアをセレクタ等によって選択的に吸引できる構成とする。
〔制御系の説明〕
図16はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal serial bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42(図12に図示)等のヒータ89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、前記画像データに基づいてヘッドドライバ84を介してヘッド12のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御(打滴制御)が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図16において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色のヘッド12K,12C,12M,12Yの圧電素子58を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印字検出部24は、図12で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいてヘッド50に対する各種補正を行う。
なお、システムコントローラ72及びプリント制御部80は、1つのプロセッサから構成されていてもよいし、システムコントローラ72とモータドライバ76及びヒータドライバ78とを一体に構成したデバイスや、プリント制御部80とヘッドドライバとを一体に構成したデバイスを用いてもよい。
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態は、第1の実施の形態とは異なる方法により作製する露光マスクの作製方法である。
本実施の形態に係る露光マスクの作製方法について図17に基づき説明する。
図17(a)に示すように、ガラス等からなる基板201上に、後に形成される光干渉層の開口領域となる部分にレジスト層202を形成する。具体的には、基板201上にスピンコーター等によりレジストを塗布した後、プリベークを行い所定の露光マスクにより露光した後、現像することにより形成する。
次に、図17(b)に示すように、基板201上のレジスト層202の形成された面に、光干渉膜203を形成する。光干渉膜203は、高屈折率材料と低屈折率材料とを交互に積層形成した、いわゆる光学多層膜からなるものである。積層される高屈折率材料と低屈折率材料の膜厚を調整することにより、所定の波長で、所望の透過率を得ることができる。高屈折率材料としては、Al2O3(酸化アルミ二ウム)や、TiO2(酸化チタン)が用いられ、低屈折率材料としては、SiO2(酸化シリコン)やMgF2(フッ化マグネシウム)が用いられる。光干渉膜203は、これらの材料をスパッタリングや真空蒸着といった手法により交互に成膜することにより形成する。本実施の形態では、図2に示されるような、波長365〔nm〕光について、光干渉膜203面に対し垂直に光を入射させた場合(0度)には、約30〔%〕の透過率を示し、光干渉膜203面に対し35度以上の角度で光を入射させた場合、光の透過率は略0〔%〕となるような(図2より推察)材料及び膜厚を選定して構成されている。
次に、図17(c)に示すように、基板201上に光干渉膜203を形成したものを有機溶剤に浸漬させリフトオフにより、レジスト層202の形成されている領域上の光干渉膜203をレジスト層202と共に除去する。これにより、レジスト層202の形成されていなかった領域においてのみ光干渉膜が残存し光干渉層203bが形成される。
次に、図17(d)に示すように、光干渉層203bを形成された基板201上に、スピンコーター等によりフォトレジスト204を塗布する。フォトレジストは、スピンコーターにより塗布されるため、基板201上の凹凸がある場合であっても、フォトレジスト204の表面は略平坦に塗布される。
次に、光干渉層203bの形成された基板201上にフォトレジスト204を塗布した後、プリベークを行い、図17(e)に示すように、この後に形成される光遮断層の開口領域のみフォトレジスト層204bが形成されるように、露光マスクを用いて露光し現像を行う。
次に、図17(f)に示すように、基板201上にフォトレジスト層204bが形成された面の全面に、光遮断膜205を形成する。光遮断膜205は、クロム(Cr)または、酸化クロムからなるものであり、スパッタリングや真空蒸着といった成膜方法により形成する。
光遮断膜205の成膜をおこなった後、再度有機溶剤に浸漬させリフトオフにより、フォトレジスト層204bの形成されている領域上の光遮断膜205をフォトレジスト層204bと共に除去する。これにより、図17(f)に示すように、フォトレジスト層204bの形成されていなかった領域においてのみ光遮断膜が残存し光遮断層205bが形成される。
以上の工程により作製される露光マスクは、第1の実施の形態において説明した露光マスクと同一のものである。光干渉層203bの開口領域、光遮断層205bの開口領域は共にリフトオフにより作製されるため、本実施の形態に係る露光マスクは簡素な製造装置で作製可能である。
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態について図18に基づき説明する。
第3の実施の形態は、第1の実施の形態とは異なる方法による本発明に係るノズルプレートの作製方法である。図18は、本実施の形態におけるノズルプレートの作製の流れを示す。
最初に、ステップ302(S302)において、露光マスク上にポジレジストを塗布する(感光性材料付着工程)。具体的には、図19(a)に示すように、露光マスク105の光干渉層102b、光遮断層104bの形成されている面に、スピンコーター等によりポジレジスト120、即ち、ポジタイプのフォトレジストを塗布する。塗布するレジストの膜厚は、作製されるノズルプレートの厚さに対応するため、本実施の形態では、厚膜レジストを用いている。尚、ポジレジスト120が塗布された基板において、ポジレジスト120が塗布された面と露光マスク105を密着させてもよい。
この後、ステップ304(S304)において、露光マスク105上にポジレジスト120の塗布したものについて、プリベークをおこなう。
この後、ステップ306(S306)において、露光マスクに対し垂直な露光光を照射する(第1露光工程)。具体的には、図19(b)に示すように、露光マスク105の光干渉層102b及び光遮断層104bの形成されていない面に対し矢印に示すように垂直に光を照射する。これにより、光干渉層102bの開口領域では、照射された露光光が全く吸収されることがないため、最も強度の強い光がポジレジスト120に照射される。このため、最も奥の領域まで感光し、照射された露光光は、ポジレジスト120を貫通する。これにより、図に示すように120aの領域が感光される。次に、光遮断層104bの開口領域であって、光干渉層102bの形成されている領域では、光干渉層102bにより、照射した光のうち30%しか透過しない。このため、照射された露光光はポジレジスト120を貫通することはなく、ポジレジスト120の途中の領域、即ち、120bの領域まで感光する。光遮断層104bの開口領域であって、光干渉層102bの形成されている領域においても同様であり、図に示すように110cの領域が感光される。尚、露光マスク105の光遮断層104bにより覆われた領域では、露光光は、光遮断層104bを透過することはないため、この領域に形成されたポジレジスト120が、感光することはない。
ここで、本実施の形態に用いられる露光装置は、第1の実施の形態と同一のものである。具体的には、図5に示すように、本実施の形態に用いられる露光装置の光源及び光学系130は、超高圧水銀ランプ131を光源とするものであり、超高圧水銀ランプ131より発せられた光は、楕円集光ミラー132により、平面反射ミラー133によって光路を曲げられた後、インテグレーターレンズ134において集光される。集光された光は、365〔nm〕より短波長の光をカット、又は、365〔nm〕の光を透過するフィルタ129を介し、平面反射ミラー135により光路を曲げられたのち、コリメーターレンズ136により平行光とされた後、照射面137に照射される。ステップ106では、このように平行光となった光が照射される。
又、本実施の形態に用いられる露光装置は、図6に示すように、上記光源及び光学系130を備えており、露光マスク105は、ステージ138に密着固定されている。ステージ138の露光マスク105の固定されている面の反対面は、ステージ138に垂直な回転軸139が取り付けられており、この回転軸139を中心にステージ138全体が回転する構成となっている。また、露光光に対し、ステージ138と回転軸139は全体が揺動する機構(不図示)となっており、この機構により露光光を垂直に照射すること(垂直露光)や、斜めに照射すること(傾斜露光)が可能である。
この後、ステップ308(S308)において、露光マスク105に対し斜めの角度より露光光を照射する(第2露光工程)。具体的には、本実施の形態に用いられる露光装置のステージ138を揺動機構により、露光光に対し垂直方向から傾けることにより、露光マスク105に対し露光光を斜めから照射する。傾斜角度は、本実施の形態においては、露光光に対し約35度となるように傾ける。図2より類推されるように、35度傾斜させることにより、光干渉層102bにおいて光の干渉により、光干渉層102bを透過する露光光の光量は略0になるからである。
図19(c)に、露光マスクを傾けて、回転させながら露光光を照射したときの様子を具体的に示す。露光マスク105に対し矢印に示すように斜めに露光光が照射することにより、光干渉層102bの開口領域を透過した光は、そのままポジレジスト120を貫通し、これによりポジレジスト120は、テーパ領域120dが形成される領域が感光される。一方、光干渉層102bの設けられている領域は、図2における説明のように、35度傾斜させた状態では、光の干渉により露光光の透過率は0%となるため、露光光によりポジレジスト120が感光することはない。よって、ステップ308によりポジレジスト120が感光するのは、光干渉層102bの開口領域より入射する露光光にのみによるものである。
図7に、斜めからの露光光により露光マスク105に塗布されたポジレジスト120を露光する際の様子を示す。ステージ138を露光光に対し傾斜させて、回転軸139を軸に回転させることにより、全面にわたり露光光を斜め方向より入射させることが可能となる。尚、ステージ138の表面を露光光の波長を反射する部材により構成している場合では、図8に示すように、斜めから入射した露光光は、ポジレジスト120を透過し、ステージ138の表面において反射するため、ポジレジスト120のステージ138の近傍においては、ステージ138からの反射光により広い範囲が感光するため、広角のテーパ領域が感光される。尚、ポジレジスト120の塗布された基板を露光マスク105に密着させた場合では、基板は露光光に用いられる波長の光を反射する材料により構成してもよい。
この後、ステップ310(S310)において、図20(a)に示すように、露光マスク105の裏面であるポジレジスト120の塗布されている面について、別の露光マスク121を用い裏面露光を行う。尚、この裏面露光は、接着剤逃げ溝を形成するために行うものであり、露光マスク121は、所望の接着剤逃げ溝のパターンが形成されている。この裏面露光は、露光マスク121に対し垂直に光を照射することにより行われる。この工程により後に接着剤逃げ溝となる領域120eが感光する。
この後、ステップ312(S312)において、露光マスク105に形成されたポジレジスト120について、現像を行ったのちポストベークを行う。
この後、ステップ314(S314)において、不図示の保護膜コートを行う。これは、ノズルプレートを構成する主材料がポジレジストであるためインクに対する耐液性を高めるために形成するものである。
この後、ステップ316(S316)において、図20(c)に示すように、ポジレジスト120fを連通板59と接合した後、露光マスク105を剥離する。尚、ポジレジスト120fには、図20(b)に示すようにノズル51、親水性トラップ溝62、接着剤逃げ溝63が形成されている。
この後、ステップ318(S318)において、撥液コートを行った後、ステップ320(S320)において、液体吐出ヘッドと接合する。
以上の工程により、図11に示す液体吐出ヘッドと同様構成の液体吐出ヘッドを作製することができる。
〔第4の実施の形態〕
第4の実施の形態は、図21に示すように露光マスク105に塗布されたフォトレジストを露光する際に、液浸方式の露光装置(液浸露光装置)により露光を行うものである。
図21に傾斜露光可能な液浸露光装置を示す。本実施の形態の置ける露光装置は、図21に示すように、上記光源及び光学系130を備えており、露光マスク105は、ステージ138により密着固定されている。ステージ138の露光マスク105の固定された面の反対面は、ステージ138の面に垂直に回転軸139が取り付けられており、この回転軸139を中心にステージ138全体が回転する構成となっている。また、露光光に対し、ステージ138と回転軸139は全体が揺動する機構となっており、この機構により露光光を垂直に照射することや、斜めに照射することが可能となる。露光マスク105は、ステージ138と共に液浸用液体容器140の中に設置されており、液浸用液体容器140には、液浸用の液体である純水141が入れられている。液浸用液体である純水141の表面、即ち空気と接する面には、透過率傾斜基板142が設けられており、照射された露光光が露光マスク105上で均一な光量分布が得られるように構成されている。また、回転軸139は、液浸用液体容器140を貫通しており、独立して回転可能な構成となっている。尚、この貫通部分から液体が漏れないように、防水加工が施されている。更に、液浸用液体容器141は、露光光の光軸を軸として、容器回転軸143により全体が回転する構成になっており、光量分布の均一性をより一層高めることができる構成となっている。
このような液浸用露光装置において、傾斜露光を行う場合では、不図示の揺動機構によりステージ138を露光光に対し傾斜させた後、透過率傾斜基板142を取り付けた状態で露光を行う。一方、垂直露光を行う場合では、不図示の揺動機構により、ステージ138を露光光に対し垂直にした後、透過率傾斜基板142は取り外して露光が行われる。
露光の際の露光マスク105の周辺環境の屈折率が、一般的な通常露光の場合は、空気の場合はほぼ1であるのに対し、液浸露光装置では、液体の屈折率、例えば純水を用いた場合では、約1.44となる。露光マスク105の基板は一般に石英ガラス等により構成されているが、石英ガラスの屈折率は、約1.47であるため、液浸露光装置では、露光マスク105の基板の屈折率と周辺環境の屈折率とを近づけることができる。このため液浸露光装置ではない通常の露光装置では、露光マスク105の周辺は空気と接していることから、全反射により露光マスク105に塗布されたフォトレジストの露光により形成されるテーパ角は約38度が上限であるのに対し、液浸露光装置を用いた場合では、これ以上のテーパ角を形成することが可能となる。よって、液浸露光装置により傾斜露光を行う方式は、ノズル部分において広角のテーパを形成するために適している。
一方、液浸露光装置では、露光マスク105の周囲は純水141等の液浸用液体で囲まれており、通常、純水等の液体は光を吸収してしまう。図22に純水中における各色の光路長に対する透過率の一例を示す。光路長が長くなるに従い光はより多く吸収されるため、到達する光量は減少する。また各色(光の波長)により透過率も異なる。本実施の形態では、波長365〔nm〕の紫外光を用いているため図22の中では紫に近い透過率となる。
このように、液浸露光装置では、露光マスク105の周囲を覆う純水141等の液浸用液体による露光光の吸収が生じる。ここで、通常の露光マスク105に対し垂直に露光を行う場合では、露光光の吸収は、光量が減衰する等の問題が生じるのみである。しかしながら、傾斜露光を行う場合では、露光光が液面に対し垂直に入射するため、露光マスク105に到達した露光光は、露光マスク105上では光量分布が生じ、これにより露光マスク105上に塗布されたフォトレジストの露光が不均一となる。即ち、純水中に入射した後露光マスク105の表面に到達するまでの距離(光路長)が、露光マスク105の各々の位置において異なるため光量に分布が生じてしまう。具体的には、露光光が液体に入射した後露光マスク105の表面に到達するまでの距離(光路長)が短い領域では、露光光の減衰は少ないため、露光マスク105の表面に到達する露光光の光量は比較的多く、露光マスク105に塗布されたフォトレジストを充分感光することができるが、露光光が液体に入射した後、露光マスク105の表面に到達するまでの距離(光路長)が長い領域では、露光光の減衰は大きいため、露光マスク105の表面に到達する露光光の光量は光路長が短い場合に比べ少なく、同じ露光時間ではフォトレジストを充分感光することができない。一方、光路長の長い領域において、充分に露光が行われるような露光時間で露光を行うならば、光路長の短い領域において露光オーバーとなり、光路長の長い領域と同じ状態でフォトレジストが感光しないため、フォトレジストの感光が不均一となる。
このため、傾斜露光を行う場合においては、液体に入射した後露光マスク105に到達するまでの距離(光路長)に対応させた透過率分布を有する透過率傾斜基板142を用いる。この透過率傾斜基板142は、入射した露光光が透過率傾斜基板142、及び、液浸用の液体である純水141を介し、露光マスク105に到達した際、露光マスク105上で露光光の光量が全面にわたり均一になるように形成されている。具体的には、液体に入射した後露光マスク105に到達するまでの距離(光路長)が長い領域では透過率が高く、液体に入射した後露光マスク105に到達するまでの距離(光路長)が短い領域では透過率が低くなるように構成されている。
尚、傾斜露光を行う場合において、露光マスク105と液浸に用いられる液体の液面とを平行にする方法も考えられるが、液面と露光マスク105とを常に平行の状態に保つことは、そのための装置等が必要となりコストアップに繋がること、露光マスク105に対する露光光の入射角度が浅い場合には、露光光が全反射してしまい、露光マスク105に露光光が到達しないため露光が行われない。具体的には、屈折率1.44の純水の場合、液面に対し45度前後の角度で光を入射させた場合、全反射してしまうため、これ以下の角度で光を入射させることはできない。よって、露光装置の構成上からも液面に対し垂直に露光光を入射させることが望ましく、液浸露光装置により傾斜露光により広角のテーパを形成する場合には、透過率傾斜基板142を用いることが必要である。
尚、液浸用の液体としては、純水141の他にも露光装置に用いられる液浸用液体があり、場合によっては、このような液体を用いることも可能である。
以上、本発明に係る液体吐出ヘッド及び画像形成装置について詳細に説明したが、光源としては、本実施の形態において用いた超高圧水銀ランプ131の他、固体レーザ等のレーザ光源を用いてもよく、この場合は光学系にビームエキスパンダを用い、露光マスク105における光干渉層102bはレーザ光の波長にあわせて構成する。
また、ステップ106の露光光は、垂直露光だけでなく、わずかに傾斜させてステップ108のように傾斜露光させることにより、広角テーパと狭角テーパからなるノズル51を形成することが可能となる。
更に、第1の実施の形態において、図23(a)に示すような光遮断層104bをノズル51周辺部の厚みが厚くなるように形成した露光マスク105を用いることにより、図23(b)に示すように、ノズル51の周囲に凹形状の窪み65を有したノズルプレート60を作製することができ、ワイピングなどのメンテナンス性が向上する。又、第3の実施の形態においても、図23(a)に示すような露光マスク105を用いることにより、図23(c)に示すように、後にノズルプレートを形成するノズル51の周囲に凹形状の窪み65を有したポジレジスト120fを作製することができ、上記と同様にワイピングなどのメンテナンス性が向上する。
また、第4の実施の形態における液浸方式の露光では、透過率傾斜基板142を脱着可能な構成としたが、装着したままの状態で垂直露光しても、ノズル51形状に対する影響は小さいので(ノズルのストレート深さのバラツキは形状寄与が少ない。)、形状誤差が許容できる場合は固定式にしてもよい。
本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行うことは可能である。
51…ノズル、59…連通板、60…ノズルプレート、62…親水性トラップ溝、63…接着剤逃げ溝、101…基板、102b…光干渉層、104b…光遮断層、105…露光マスク、110…ネガレジスト、110a…垂直露光により光干渉層の開口領域において感光するネガレジスト領域、110b、110c…垂直露光により光遮断層の開口領域であって光干渉層が形成されている領域において感光するネガレジスト領域、110d…傾斜露光により感光するネガレジスト領域、111a、111b…現像後に露光マスクに付着しているネガレジスト、113…Ni共析メッキ層、114…Ni電鋳層