JP7001099B2 - インクジェットヘッドの製造方法、インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェットヘッドの製造方法、インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置 Download PDF

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Description

本発明は、インクジェットヘッドの製造方法、インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置に関する。
従来、ノズルからインクを吐出させて画像などを形成するインクジェット記録装置がある。インクジェット記録装置のインクジェットヘッドは、ノズルが設けられたノズル基板を備え、このノズル基板としては、ノズルの開口が設けられたインク吐出面(開口形成面)に撥液層が形成されたものが広く用いられている。
撥液層の形成方法の一つに、導電性を有するノズル基板に対して複合めっきにより撥液層を形成する方法がある(例えば、特許文献1及び特許文献2)。この方法では、ノズル基板のノズルを樹脂などの充填部材で埋めてノズルの内壁面をマスクした後に、フッ素を含有する樹脂粒子の縣濁液をめっき液として用いて湿式めっき処理を行うことで、金属の基材層と、当該基材層の表面から一部が露出した状態で当該基材層中に分散されている樹脂粒子と、を有する撥液層を形成する。
特開2008-55701号公報 特開2002-1966号公報
しかしながら、上記従来の技術では、撥液層の形成後にノズルから充填部材を除去するステップが必要であり手間がかかるという課題がある。
この発明の目的は、より簡易にインクジェットヘッドを製造することができるインクジェットヘッドの製造方法、当該インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項1に記載のインクジェットヘッドの製造方法の発明は、
ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドの製造方法であって、
前記ノズル用の貫通孔が形成された金属の有孔基板における前記貫通孔の開口が設けられた開口形成面の一方を、被覆部材により被覆された状態とする被覆ステップ、
前記貫通孔の内壁面に保護層を形成することで、当該保護層を内壁面とする前記ノズルを前記有孔基板に形成する保護層形成ステップ、
前記一方の開口形成面から前記被覆部材を除去する被覆部材除去ステップ、
フッ素を含有する樹脂粒子の一部が表面から露出している金属の基材層を有する撥液層を、前記有孔基板を構成する金属の表面に選択的に金属を析出させる湿式めっきにより前記一方の開口形成面上に形成する撥液層形成ステップ、
を含み、
前記被覆ステップは、
導電性を有する平板状の前記被覆部材上における前記貫通孔を設ける位置を含む範囲に、絶縁性を有するパターニング部材を設けるパターニングステップ、
前記被覆部材の前記パターニング部材が設けられた面上に、湿式めっきにより前記有孔基板を形成する有孔基板形成ステップ、
を含み、
前記有孔基板形成ステップでは、前記被覆部材上から前記パターニング部材上の一部に亘る範囲に前記有孔基板を形成し、
前記被覆部材除去ステップでは、前記被覆部材及び前記パターニング部材を前記有孔基板の前記一方の開口形成面から除去し、
前記パターニングステップでは、前記被覆部材の表面からの高さが0.1μmより大きくかつ1μm未満である前記パターニング部材を設け、
前記樹脂粒子の直径の最大値が0.1μm以下である
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットヘッドの製造方法において、前記保護層形成ステップでは、絶縁性を有する前記保護層を形成する。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェットヘッドの製造方法において、
前記保護層形成ステップは、
前記貫通孔の内壁面に金属層を形成する金属層形成ステップ、
前記金属層の表面を酸化させて金属酸化膜を形成する金属酸化膜形成ステップ、
を含む。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のインクジェットヘッドの製造方法において、
前記金属層形成ステップでは、湿式めっきにより前記金属層を形成する。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のインクジェットヘッドの製造方法において、
前記金属酸化膜形成ステップでは、酸素を含有する雰囲気中で前記金属層を乾燥させる。
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載のインクジェットヘッドの製造方法において、
前記撥液層形成ステップでは、前記保護層の厚さ以下の厚さの前記撥液層を形成する。
請求項7に記載の発明は、請求項3に記載のインクジェットヘッドの製造方法において、
前記金属層形成ステップでは、蒸着により前記金属層を形成する。
請求項8に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェットヘッドの製造方法において、
前記保護層形成ステップでは、蒸着により前記貫通孔の内壁面に金属酸化膜を形成する。
請求項9に記載の発明は、請求項2から8のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドの製造方法において、
前記撥液層形成ステップでは、電解めっきにより前記撥液層を形成する。
請求項10に記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドの製造方法において、
前記撥液層形成ステップでは、無電解めっきにより前記撥液層を形成する。
請求項11に記載の発明は、請求項1から10のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドの製造方法において、
前記撥液層形成ステップでは、前記撥液層を形成する前に、前記一方の開口形成面と前記撥液層との密着性よりも前記撥液層との密着性が高い中間層を前記一方の開口形成面に形成する。
また、上記目的を達成するため、請求項12に記載のインクジェットヘッドの発明は、
ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドであって、
前記ノズル用の貫通孔が設けられている導電性を有する有孔基板と、
前記貫通孔の内壁面に設けられ、前記ノズルの内壁面を構成する保護層と、
前記有孔基板における前記貫通孔の開口が設けられた開口形成面の一方に設けられており、フッ素を含有する樹脂粒子の一部が表面から露出している金属の基材層を有する撥液層と、
を備え
前記一方の開口形成面は、前記貫通孔の開口が底面に設けられている凹部を有し、
前記凹部の深さが0.1μmより大きくかつ1μm未満であり、
前記樹脂粒子の直径の最大値が0.1μm以下である
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記保護層は、絶縁性を有する。
請求項14に記載の発明は、請求項12又は13に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記撥液層の厚さは、前記保護層の厚さ以下である。
請求項15に記載の発明は、請求項12から14のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記一方の開口形成面と前記撥液層との間に、前記一方の開口形成面と前記撥液層との密着性よりも前記撥液層との密着性が高い中間層が設けられている。
また、上記目的を達成するため、請求項16に記載のインクジェット記録装置の発明は、
請求項12から15のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドを備える。
本発明に従うと、より簡易にインクジェットヘッドを製造することができるという効果がある。
インクジェット記録装置の概略構成を示す図である。 インクジェットヘッドを側面側から見た断面図である。 ノズル基板の構成を示す断面図である。 撥液層の構成を示す断面図であり、図3Aにおける範囲Aの拡大図である。 ノズル基板の製造方法を示す断面図である。 変形例1のノズル基板の製造方法を示す断面図である。 変形例2のノズル基板の製造方法を示す断面図である。 変形例4のノズル基板の構成を示す断面図である。
以下、本発明のインクジェットヘッドの製造方法、インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態であるインクジェット記録装置100の概略構成を示す図である。
インクジェット記録装置100は、搬送ベルト101、搬送ローラー102、ヘッドユニット103などを備える。
搬送ローラー102は、図示しない搬送モーターの駆動によって、図1のX方向に平行な回転軸を中心に回転する。搬送ベルト101は、一対の搬送ローラー102により内側が支持された輪状のベルトであり、搬送ローラー102が回転動作するのに従って一対の搬送ローラー102の回りを周回移動する。インクジェット記録装置100は、搬送ベルト101上に記録媒体Mが載置された状態で、搬送ローラー102の回転速度に応じた速度で搬送ベルト101が周回移動することで記録媒体Mを搬送ベルト101の移動方向(図1のY方向)に搬送する搬送動作を行う。
ヘッドユニット103は、搬送ベルト101により搬送される記録媒体Mに対して画像データに基づいてノズルからインクを吐出して記録媒体M上に画像を記録する。本実施形態のインクジェット記録装置100では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット103が記録媒体Mの搬送方向上流側から順に所定の間隔で並ぶように配列されている。
各ヘッドユニット103は、平板状の基部103aと、当該基部103aを貫通する孔部に篏合した状態で基部103aに固定された複数の(ここでは7つの)インクジェットヘッド1とを有する。
インクジェットヘッド1では、インクを吐出する複数のノズルが記録媒体Mの搬送方向と交差する方向(本実施形態では搬送方向と直交する幅方向、すなわちX方向)に配列されている。また、各インクジェットヘッド1では、X方向に一次元配列されたノズルからなるノズル列が複数(例えば4列)設けられており、当該複数のノズル列は、ノズルの位置が互いにX方向にずれる位置関係で設けられている。
各ヘッドユニット103における7つのインクジェットヘッド1は、ノズルのX方向についての配置範囲が、搬送ベルト101上の記録媒体Mのうち画像が記録可能な領域のX方向についての幅をカバーするように千鳥格子状に配置されている。このようにインクジェットヘッド1が配置されることで、インクジェット記録装置100では、ヘッドユニット103を固定した状態でインクジェットヘッド1から画像データに応じた適切なタイミングでインクを吐出することで、搬送される記録媒体M上に画像を記録することができる。すなわち、インクジェット記録装置100は、シングルパス方式で画像を記録する。
図2は、インクジェットヘッド1を側面側(-X方向側)から見た断面図である。図2では、4つのノズル列に含まれる4つのノズル12を含む面でのインクジェットヘッド1の断面が示されている。
インクジェットヘッド1は、ヘッドチップ2と、共通インク室70と、支持基板80と、配線部材3と、駆動部4などを備える。
ヘッドチップ2は、ノズル12からインクを吐出させるための構成であり、複数、ここでは、4枚の板状の基板が積層形成されている。ヘッドチップ2における最下方の基板は、ノズル基板10である。ノズル基板10には複数のノズル12が設けられて、当該ノズル12のインク吐出口からノズル基板10の露出面(開口形成面)に対して略垂直にインクが吐出可能とされる。ノズル基板10の開口形成面とは反対側には、上方(図2のZ方向)に向かって順番に圧力室基板20(チャンバープレート)、スペーサー基板40及び配線基板50が接着されて積層されている。以下では、これらノズル基板10、圧力室基板20、スペーサー基板40及び配線基板50の各基板を各々又はまとめて積層基板10、20、40、50などとも記す。
これらの積層基板10、20、40、50には、ノズル12に連通するインク流路が設けられており、配線基板50の露出される側(+Z方向側)の面で開口されている。この配線基板50の露出面上には、全ての開口を覆うように共通インク室70が設けられている。共通インク室70のインク室形成部材70a内に貯留されるインクは、配線基板50の開口から各ノズル12へ供給される。
インク流路の途中には、圧力室21(インク貯留部)が設けられている。圧力室21は、圧力室基板20を上下方向(Z方向)に貫通して設けられており、圧力室21の上面は、圧力室基板20とスペーサー基板40との間に設けられた振動板30により構成されている。圧力室21内のインクには、振動板30を介して圧力室21と隣り合って設けられている格納部41内の圧電素子60の変位(変形)によって振動板30(圧力室21)が変形することで、圧力変化が付与される。圧力室21内のインクに適切な圧力変化が付与されることで、圧力室21に連通するノズル12からインク流路内のインクが液滴として吐出される。
支持基板80は、ヘッドチップ2の上面に接合されており、共通インク室70のインク室形成部材70aを保持している。支持基板80には、インク室形成部材70aの下面の開口とほぼ同じ大きさ及び形状の開口が設けられており、共通インク室70内のインクは、インク室形成部材70aの下面の開口、及び支持基板80の開口を通ってヘッドチップ2の上面に供給される。
配線部材3は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuits)などであり、配線基板50の配線に接続されている。この配線を介して格納部41内の配線51及び接続部52(導電部材)に伝えられる駆動信号により圧電素子60が変位動作する。配線部材3は、支持基板80を貫通して引き出されて駆動部4に接続される。
駆動部4は、インクジェット記録装置の制御部からの制御信号や、電力供給部からの電力供給などを受けて、各ノズル12からのインク吐出動作や非吐出動作に応じて、圧電素子60の適切な駆動信号を配線部材3に出力する。駆動部4は、IC(Integrated Circuit)などで構成されている。
図3Aは、ノズル基板10の構成を示す断面図である。図3Aでは、ノズル基板10のうちノズル12の近傍部分の断面が拡大して示されている。
ノズル基板10は、ノズル12のインク流路となる貫通孔111が設けられている有孔基板11と、貫通孔111の内壁面から有孔基板11の上面にかけて設けられた保護層13と、有孔基板11の貫通孔111の開口111aが設けられている面に形成された撥液層14と、を備える。
有孔基板11は、導電性を有する金属(本実施形態では、ニッケル)の板状部材である。有孔基板11には、上面及び下面の間を貫通する、平面視で円形状の貫通孔111が設けられている。また、貫通孔111が形成された一対の開口形成面の一方(図3Aの下面)(以下では、符号「11a」を付して開口形成面11aと記す)のうち、開口111aの近傍範囲には、平面視で円形状の底面を有する凹部112が設けられている。開口111aは、凹部112の底面の中心に設けられている。後述するように、有孔基板11は、湿式めっき(本実施形態では、電解めっき(電鋳))により形成される。本実施形態の有孔基板11の材質はニッケルであるが、クロム、銅、タングステン等、湿式めっきにより形成できる他の金属が用いられても良い。
保護層13は、貫通孔111の内壁面から、開口形成面11aとは反対側の面にかけて設けられている絶縁性を有する層(絶縁体層)である。ここで、絶縁性を有するとは、外部に露出した表面の電気伝導率が、湿式めっきにより表面に金属が析出する範囲の下限値未満であることをいう。保護層13は、表面に金属酸化膜が形成された金属層(ここでは、表面にクロム酸化膜が形成されたクロムの層)である。なお、保護層13の全体が金属酸化膜から構成されていても良い。
内壁面に保護層13が形成された貫通孔111により、ノズル12が構成される。
撥液層14は、有孔基板11の開口形成面11a(ノズル基板10のインク吐出面)に撥液性を持たせて、開口形成面11aへのインクや異物の付着を抑制するために設けられている層である。撥液層14を設けることで、ノズル12の開口にインクや異物が付着することによるインク吐出不良の発生を抑制することができる。
図3Bは、撥液層14の構成を示す断面図であり、図3Aにおける範囲Aの拡大図である。
撥液層14は、金属からなる基材層141と、当該基材層141の表面から一部が露出した状態で当該基材層141中に分散されている樹脂粒子142と、を備える。ここで、樹脂粒子142は、フッ素を含有し表面が撥液性を有する粒子である。撥液層14は、このように樹脂粒子142が基材層141の表面に露出していることで表面が撥液性を有している。
撥液層14は、樹脂粒子の縣濁液をめっき液として用いた湿式めっき(本実施形態では、電解めっき)によって、樹脂粒子142を分散させた状態で金属の基材層141を開口形成面11aに析出させることで(すなわち、樹脂粒子142との複合めっきにより)形成される。
本実施形態では、基材層141としてニッケルが用いられているが、クロム、銅、タングステン等、湿式めっきにより形成できる他の金属が用いられても良い。また、基材層141には、各種公知の添加剤が含まれていても良い。
また、本実施形態では、樹脂粒子142としてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が用いられている。樹脂粒子142は、PTFEに限られず、フッ素を含有し撥液性を有するものであれば任意のものを用いることができる。具体的には、樹脂粒子142としては、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ECTFE(クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体)などを用いることができる。
ノズル基板10の各部の寸法は、特には限られないが、例えば以下の範囲内とすることができる。
貫通孔111の直径R1:約10~300μm
ノズル12の直径R2:約10~100μm
凹部112の直径R3:数10~数100μm
凹部112の深さL(=後述するレジストパターン92の厚さ):約0.1~10μm
保護層13の厚さt1:約1~100μm
撥液層14の厚さt2:約1~10μm
樹脂粒子142の直径d:約0.1μm以下
また、保護層13の厚さt1は、撥液層14の厚さt2以上とされている。これにより、撥液層14を形成する際に撥液層14がノズル12の内部に回り込んでノズル12のインク吐出口が狭くなる不具合が抑制される。
また、凹部112の深さLは、樹脂粒子142の直径dの最大値より大きくなっている。これにより、開口形成面11aを拭ってインクや異物などを取り除くワイピングを行う場合に、凹部112内において(すなわち、ノズル12のインク吐出口の近傍において)樹脂粒子142が剥がれ落ちて撥液層14の撥液性が低下する不具合の発生が抑制される。
次に、本実施形態のインクジェットヘッド1の製造方法について、ノズル基板10の製造方法を中心に説明する。
図4は、ノズル基板10の製造方法を示す断面図である。
この製造方法では、まず、導電性を有する平板状の保持基板91(被覆部材)の表面に、フォトリソグラフィー法などにより、貫通孔111の形成位置を含む範囲に、平面視で円形状の絶縁性を有するレジストパターン92(パターニング部材)が設けられる(図4のステップS101:パターニングステップ)。なお、図3Aにおける凹部112の深さLは、ここで形成されるレジストパターン92の保持基板91の表面からの高さと等しくなる。
次に、保持基板91のレジストパターン92が設けられた面に、湿式めっきにより(ここでは、電解めっきにより、すなわち電鋳法で)ニッケルの層を析出させることで有孔基板11が形成される(図4のステップS102:有孔基板形成ステップ)。このステップでは、レジストパターン92上では、レジストパターン92の端部からレジストパターン92上の一部に回り込むようにニッケルが析出する。レジストパターン92上でニッケルが析出する範囲は、レジストパターン92の端部からの距離が所定距離以下となる範囲であり、レジストパターン92の中心を通る断面では、ほぼ、レジストパターン92の端部を中心とする円の範囲内となる。このようにニッケルを析出させることで、保持基板91上からレジストパターン92上の一部に亘る範囲に有孔基板11が形成される。また、レジストパターン92上では、レジストパターン92からの距離が増大するに従って保持基板91の面に平行な断面の面積が逓増するような形状の貫通孔111が形成される。このステップS102により、開口形成面11aが保持基板91により被覆された状態の有孔基板11が得られる。
なお、有孔基板11は、無電解めっきにより形成されても良い。
上記のステップS101のパターニングステップ、及びステップS102の有孔基板形成ステップにより、有孔基板11における開口形成面11aを、保持基板91により被覆された状態とする被覆ステップが構成される。
次に、有孔基板11を乾燥させる前に、貫通孔111の内壁面を含む有孔基板11の表面(有孔基板11のうち保持基板91との接触面を除いた表面)に、湿式めっき(ここでは電解めっき)によりクロムからなる金属層13aが形成される(図4のステップS103:金属層形成ステップ)。ここでは、有孔基板11の開口形成面11aは、保持基板91及びレジストパターン92によって被覆されているため、金属層13aを、有孔基板11のうち貫通孔111の内壁面及び上面に対してのみ選択的に形成することができる。
なお、金属層13aは、無電解めっきにより形成されても良い。
次に、有孔基板11の開口形成面11aから保持基板91及びレジストパターン92が除去される。これにより、深さLの凹部112が設けられた有孔基板11の開口形成面11aが露出する。また、酸素を含有する雰囲気中で金属層13aを乾燥させることで、表面に金属酸化膜(ここでは、クロム酸化膜)が形成された保護層13が形成される。これにより、保護層13が内壁面に形成されたノズル12が得られる(図4のステップS104:被覆部材除去ステップ、金属酸化膜形成ステップ)。
金属酸化膜の形成は、低圧及び/又は高温環境下で行われることが好ましいが、大気圧及び/又は常温環境下で行われても良い。
上記のステップS103の金属層形成ステップ及びステップS104の金属酸化膜形成ステップにより、保護層形成ステップが構成される。
次に、有孔基板11の開口形成面11aに、複合めっきにより撥液層14が形成される(図4のステップS105:撥液層形成ステップ)。詳しくは、撥液層14は、フッ素を含有する樹脂粒子142の懸濁液をめっき液として用いた電解めっきにより、樹脂粒子142を分散させた状態でニッケルをインク吐出面に析出させる(すなわち、ニッケルと樹脂粒子142とを共析させる)ことにより形成される。このとき、有孔基板11の表面のうち導電性を有する金属(ニッケル)が露出しているのは開口形成面11aのみであり、ノズル12の内壁面を含む他の表面は、絶縁性を有する保護層13により覆われている。電解めっきでは、金属表面に選択的に金属を析出させることができるため、電解めっきを用いた複合めっきにより、自己組織化的に開口形成面11aに対してのみ撥液層14を形成することができる。
以上のステップS101からステップS105により、ノズル基板10が製造される。
このようにして製造されたノズル基板10と、圧力室基板20、スペーサー基板40及び配線基板50とを積層させてヘッドチップ2を製造し、共通インク室70等と組み合わせて所定の筐体に組み込むことで、インクジェットヘッド1が製造される。
(変形例1)
次に、上記実施形態の変形例1について説明する。本変形例は、有孔基板11の形成方法が上記実施形態と異なる。以下では、上記実施形態との相違点について説明する。
図5は、本変形例のノズル基板10の製造方法を示す断面図である。
本変形例のノズル基板10の製造方法では、まず、保持基板91の表面における貫通孔111を形成する位置に、形成される有孔基板11よりも保持基板91からの高さが大きいレジストパターン92が設けられる(図5のステップS201:パターニングステップ)。
次に、保持基板91のレジストパターン92が設けられた面に、湿式めっきにより、保持基板91の表面からの高さがレジストパターン92よりも低い有孔基板11が形成され(図5のステップS202:有孔基板形成ステップ)、その後、レジストパターン92が除去される(図5のステップS203:パターニング部材除去ステップ)。これにより、保持基板91上に、貫通孔111が形成された有孔基板11が形成される。
本変形例では、ステップS201のパターニングステップ、ステップS202の有孔基板形成ステップ、及びステップS203のパターニング部材除去ステップにより被覆ステップが構成される。
以下、上記実施形態と同様に、貫通孔111の内壁面を含む有孔基板11の表面に、湿式めっきによりクロムからなる金属層13aが形成される(図5のステップS204:金属層形成ステップ)。また、有孔基板11から保持基板91が除去され、金属層13aを乾燥させることで、表面に金属酸化膜が形成された保護層13が形成される(図5のステップS205:被覆部材除去ステップ、金属酸化膜形成ステップ)。なお、本変形例では、有孔基板11の厚さよりも高いレジストパターン92が形成されるため、有孔基板11の開口形成面11aには凹部が形成されない。
最後に、有孔基板11の開口形成面11aに、複合めっきにより撥液層14が形成されて(図5のステップS206:撥液層形成ステップ)、ノズル基板10が完成する。
(変形例2)
次に、上記実施形態の変形例2について説明する。本変形例は、有孔基板11の形成方法が上記実施形態と異なる。以下では、上記実施形態との相違点について説明する。
図6は、本変形例のノズル基板10の製造方法を示す断面図である。
本変形例のノズル基板10の製造方法では、まず、金属板にプレス加工といった各種公知の孔加工技術により貫通孔111を開けて有孔基板11を製造する(図6のステップS301:有孔基板製造ステップ)。有孔基板11を構成する金属板としては、例えば、SUS304、SUS631といったステンレス鋼を用いることができる。
次に、有孔基板11の開口形成面11aに、絶縁性を有する被覆部材93を接合する(図6のステップS302:被覆ステップ)。ここでは、次の金属層13aの形成工程において開口形成面11aと保持基板91との間にめっき液が侵入しないように密着させた状態で、かつ、金属層13aの形成後に被覆部材93を剥離できるような態様で、被覆部材93を開口形成面11aに接合する。本変形例の被覆部材93としては、各種の樹脂基板などを用いることができる。
以下、上記実施形態と同様に、貫通孔111の内壁面を含む有孔基板11の表面に、湿式めっきによりクロムからなる金属層13aが形成される(図6のステップS303:金属層形成ステップ)。また、有孔基板11から被覆部材93が除去され、金属層13aを乾燥させることで、表面に金属酸化膜が形成された保護層13が形成される(図6のステップS304:被覆部材除去ステップ、金属酸化膜形成ステップ)。
最後に、有孔基板11の開口形成面11aに、複合めっきにより撥液層14が形成されて(図6のステップS305:撥液層形成ステップ)、ノズル基板10が完成する。
(変形例3)
次に、上記実施形態の変形例3について説明する。本変形例は、上記の変形例1、2と組み合わされても良い。本変形例は、保護層13の形成方法が上記実施形態と異なる。以下では、上記実施形態との相違点について説明する。
本変形例では、保護層13となる金属層13aを、湿式めっきに代えて、各種の蒸着法により形成する。蒸着法としては、例えば、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、レーザーアブレーションといったPVD(Physical Vapor Deposition)や、CVD(Chemical Vapor Deposition)などを用いることができる。これらの各種蒸着法のいずれかにより形成された金属層13aの表面に金属酸化膜を形成することで、保護層13を形成することができる。本変形例によれば、形成される保護層13の厚さt1を、上記実施形態よりも小さく(例えば、約0.1~数10μm)することができる。
また、貫通孔111の内壁面に蒸着により直接金属酸化膜を形成することで保護層13を形成しても良い。この場合には、酸素を含有する雰囲気中で、酸素と反応させながら蒸着により金属層を形成すれば良い。これにより、金属層の形成と、当該金属層を酸化させることによる金属酸化膜の形成とを並行して進行させて、蒸着により直接金属酸化膜を形成することができる。
(変形例4)
次に、上記実施形態の変形例4について説明する。本変形例は、上記の変形例1~3と組み合わされても良い。
図7は、本変形例に係るノズル基板10の構成を示す断面図である。
本変形例のノズル基板10は、有孔基板11の開口形成面11aと撥液層14との間に設けられた中間層15を備える。中間層15は、撥液層14との密着性が、有孔基板11(開口形成面11a)と撥液層14との密着性よりも高い材料からなる層である。撥液層14の基材層141としてニッケルを用いる場合には、中間層15として銅やアルミを用いることができる。
本変形例のノズル基板10の製造方法では、開口形成面11aに撥液層14を形成する前に、蒸着などにより開口形成面11aに中間層15が形成され、その後、中間層15に重ねて複合めっきにより撥液層14が形成される。
(変形例5)
次に、上記実施形態の変形例4について説明する。本変形例は、上記の変形例1~4と組み合わされても良い。
上記実施形態では、電解めっきを用いた複合めっきにより有孔基板11の開口形成面11aに撥液層14を形成したが、本変形例では、無電解めっきを用いた複合めっきにより撥液層14を形成する。無電解めっきによっても、所定の金属(ここでは、有孔基板11を構成するニッケル)の表面に選択的に金属(基材層141)を析出させて撥液層14を形成することができる。
このような無電解めっきの例としては、置換めっきや触媒化学めっき(自己触媒めっき)がある。
置換めっきでは、めっきがなされる金属の被めっき物を、当該金属よりイオン化傾向が小さい金属イオンを含むめっき液中に浸すことで、被めっき物表面の金属をイオン化させるとともにめっき液中の金属イオンを被めっき物表面に析出させる(すなわち、被めっき物の表面の金属をめっき液中の金属に置換する)。置換めっきを用いる場合には、保護層13として、絶縁体の他、表面がめっき液中の金属イオンに置換されない金属(イオン化傾向がめっき液中の金属イオンより小さい金属)を用いても良い。
また、触媒化学めっきでは、被めっき物表面の金属が触媒として作用することでめっき液中の還元剤の酸化し、これによりめっき液中の金属イオンが被めっき物の表面に析出する。以降、析出した金属自体が触媒として作用することで継続して金属を析出させることができる。触媒化学めっきを用いる場合には、保護層13として、表面が触媒として作用しない任意の材料を用いることができる。
以上のように、本実施形態に係るインクジェットヘッド1の製造方法は、ノズル12用の貫通孔111が形成された金属の有孔基板11における貫通孔111の開口が形成された開口形成面11aの一方を、保持基板91(被覆部材)により被覆された状態とする被覆ステップ、貫通孔111の内壁面に保護層13を形成することで、当該保護層13を内壁面とするノズル12を有孔基板11に形成する保護層形成ステップ、上記一方の開口形成面11aから保持基板91を除去する被覆部材除去ステップ、フッ素を含む樹脂粒子142の一部が表面から露出している金属の基材層141を有する撥液層14を、有孔基板11を構成する金属の表面に選択的に金属を析出させる湿式めっきにより開口形成面11a上に形成する撥液層形成ステップ、を含む。
このような方法によれば、有孔基板11の開口形成面11aが保持基板91により被覆された状態で保護層13を形成することにより、貫通孔111の内壁面に対して過不足なく正確に保護層13を形成することができる。また、保持基板91を除去した後に、上記のように保護層13が形成された状態で有孔基板11を構成する金属の表面に選択的に金属を析出させる湿式(樹脂粒子142との複合めっき)により撥液層14を形成することで、有孔基板11の開口形成面11aに対してのみ、自己組織化的に正確に撥液層14を形成することができる。すなわち、撥液層14を貫通孔111(ノズル12)の内部に撥液層14を成長(形成)させることなく、正確に開口形成面11a上においてのみ成長させることができる。
また、ノズル12内に撥液層14を形成させないためのマスクとして機能した保護層13を、そのままノズル12のインク流路を保護するための部材(ノズルの内壁面)として用いることができる。よって、撥液層14の形成後に保護層13を除去する必要がないため、より簡易にノズル基板10及びインクジェットヘッド1を製造することができる。
また、保護層13により、ノズル12のインク流路がインクにより腐食したり異物により損傷したりするのを抑制することができる。
また、貫通孔111の内壁面に対して過不足なく保護層13を形成することができるため、ノズル12のインク流路の全体を効果的に保護層13により保護することができる。また、ノズル12内に均質な保護層13を形成できるため、ノズル12からのインクの吐出特性(吐出方向、吐出速度、吐出量など)を安定させることができる。
また、保護層形成ステップでは、絶縁性を有する保護層13を形成する。これにより、より効果的にノズル12のインク流路の腐食を抑制することができる。すなわち、従来の構成のようにインク流路の壁面がニッケルといった金属で構成されていても、酸性のインクが用いられる場合などでは当該壁面がインクにより腐食し得るが、絶縁性を有する保護層13を形成することでノズル12の壁面の腐食を効果的に抑制することができる。
また、保護層形成ステップは、貫通孔111の内壁面に金属層13aを形成する金属層形成ステップ、金属層13aの表面を酸化させて金属酸化膜を形成する金属酸化膜形成ステップ、を含む。これにより、簡易な方法で所望の範囲に正確に保護層13を形成することができる。
また、金属層形成ステップでは、湿式めっきにより金属層13aを形成する。このような方法によれば、貫通孔111の内壁面の全体を正確に隙間なく保護層13で覆うことができる。よって、貫通孔を充填部材で埋めて貫通孔の内壁面を覆う従来の方法と比較して、内壁面の一部が被覆されない状態となりにくく、内壁面の一部に撥液層14が形成されてしまう不具合の発生をより確実に抑制することができる。また、貫通孔111の壁面内の各位置での金属層13aの厚さのばらつきや、貫通孔111の内部と外部(有孔基板11の上面)との間の金属層13aの厚さのばらつきを抑えることができる。また、蒸着法と比較して低コストで金属層13aを形成することができる。
また、金属酸化膜形成ステップでは、酸素を含有する雰囲気中で金属層13aを乾燥させる。これにより、十分な絶縁性を有した保護層13を形成することができる。
撥液層形成ステップでは、保護層13の厚さt1以下の厚さt2の撥液層14を形成する。これにより、複合めっきにより撥液層14がノズル12の内壁面に回り込んで形成されてしまうのを抑制することができる。よって、ノズル12内に撥液層14が形成されることによるインクの吐出特性の変動を抑制することができる。
また、金属層形成ステップでは、蒸着により金属層13aを形成する。このような方法によっても、貫通孔111の内壁面の全体を正確に隙間なく保護層13で覆うことができる。
また、保護層形成ステップでは、蒸着により貫通孔111の内壁面に金属酸化膜を形成することで、より簡易な方法で保護層13を形成することができる。
また、貫通孔111の内壁面に絶縁性を有する保護層13が形成された状態で、撥液層形成ステップにおいて電解めっき(樹脂粒子142との複合めっき)により撥液層14を形成することで、有孔基板11の開口形成面11aに対してのみ、自己組織化的に正確に撥液層14を形成することができる。
また、変形例5のように、撥液層形成ステップにおいて、有孔基板11の金属に対して選択的に金属を析出させる無電解めっき(樹脂粒子142との複合めっき)により撥液層14を形成することによっても、有孔基板11の開口形成面11aに対してのみ、自己組織化的に正確に撥液層14を形成することができる。
また、被覆ステップは、導電性を有する平板状の保持基板91上における貫通孔111を設ける位置を含む範囲に、絶縁性を有するレジストパターン92を設けるパターニングステップ、保持基板91のレジストパターン92が設けられた面上に、湿式めっきにより有孔基板11を形成する有孔基板形成ステップ、を含み、有孔基板形成ステップでは、保持基板91上からレジストパターン92上の一部に亘る範囲に有孔基板11を形成し、被覆部材除去ステップでは、保持基板91及びレジストパターン92を有孔基板11の上記一方の開口形成面11aから除去する。これにより、保持基板91によって開口形成面11aのみが過不足なく正確に被覆された状態の有孔基板11が得られる。このように開口形成面11aが被覆された有孔基板11の貫通孔111の内壁面に保護層13を形成することで、貫通孔111の内壁面に対して過不足なく正確に保護層13を形成することができる。
また、パターニングステップでは、保持基板91の表面からの高さLが樹脂粒子142の直径dの最大値よりも大きいレジストパターン92を設ける。これにより、開口形成面11aを拭ってインクや異物などを取り除くワイピングを行う場合に、レジストパターン92に対応する凹部112内において(すなわち、ノズル12のインク吐出口の近傍において)樹脂粒子142が剥がれ落ちて撥液層14の撥液性が低下する不具合の発生を抑制することができる。
また、変形例1に係るインクジェットヘッド1の製造方法では、被覆ステップは、導電性を有する平板状の保持基板91上における貫通孔111を設ける位置に、絶縁性を有するレジストパターン92を設けるパターニングステップ、保持基板91のレジストパターン92が形成された面上に、湿式めっきにより、保持基板91の表面からの高さがレジストパターン92よりも低い有孔基板11を形成する有孔基板形成ステップ、保持基板91上からレジストパターン92を除去するパターニング部材除去ステップを含む。このような方法によっても、保持基板91によって開口形成面11aのみが過不足なく正確に被覆された状態の有孔基板11が得られる。
また、変形例2に係るインクジェットヘッド1の製造方法では、被覆ステップの前に、金属板に貫通孔111を開けて有孔基板11を製造する有孔基板製造ステップを含み、被覆ステップでは、有孔基板11の上記一方の開口形成面11aを保持基板91により被覆する。このような方法によっても、保持基板91によって開口形成面11aが被覆された状態の有孔基板11が得られる。
また、変形例4に係る撥液層形成ステップでは、撥液層14を形成する前に、上記一方の開口形成面11aと撥液層との密着性よりも撥液層14との密着性が高い中間層15を上記一方の開口形成面11aに形成する。これにより、撥液層14が開口形成面11aから剥離して撥液性が低下する不具合の発生を抑制することができる。
また、上記実施形態のインクジェットヘッド1は、ノズル12用の貫通孔111が設けられている導電性を有する有孔基板11と、貫通孔111の内壁面に設けられ、ノズル12の内壁面を構成する保護層13と、有孔基板11における貫通孔111の開口が設けられた開口形成面11aの一方に設けられており、フッ素を含有する樹脂粒子142の一部が表面から露出している金属の基材層141を有する撥液層14と、を備える。このような構成によれば、貫通孔111の内壁面の保護層13によって、ノズル12のインク流路がインクにより腐食したり異物により損傷したりするのを抑制することができる。また、開口形成面11aに撥液層14が設けられていることで、ノズル12の開口にインクや異物が付着することによるインク吐出不良の発生を抑制することができる。
また、保護層13が絶縁性を有する構成とすることで、ノズル12の壁面の腐食を効果的に抑制することができる。
また、撥液層14の厚さを、保護層13の厚さ以下とすることにより、撥液層14がノズル12の内壁面に回り込んでいない構造とすることができる。よって、ノズル12内に撥液層14が形成されることによるインクの吐出特性の変動を抑制することができる。
また、変形例4に係るノズル基板10では、上記一方の開口形成面11aと撥液層14との間に、開口形成面11aと撥液層14との密着性よりも撥液層14との密着性が高い中間層15が設けられている。これにより、撥液層14が開口形成面11aから剥離して撥液性が低下する不具合の発生を抑制することができる。
また、上記一方の開口形成面11aは、貫通孔111の開口が底面に設けられている凹部112を有し、凹部112の深さLは、樹脂粒子142の直径dより大きい。これにより、開口形成面11aを拭ってインクや異物などを取り除くワイピングを行う場合に、凹部112内において(すなわち、ノズル12のインク吐出口の周辺において)樹脂粒子142が剥がれ落ちて撥液層14の撥液性が低下する不具合の発生を抑制することができる。
また、上記のインクジェットヘッド1を用いることで、インクジェットヘッド1において、ノズル12の腐食、及びノズル12の開口へのインクや異物の付着といった不具合の発生しにくいインクジェット記録装置100を実現することができる。
なお、本発明は、上記実施形態及び各変形例に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施形態及び各変形例では、貫通孔111の内壁面から有孔基板11の上面にかけて保護層13を形成する例を用いて説明したが、保護層13は、少なくとも貫通孔111の内壁面に設けられていれば良く、有孔基板11の上面には必ずしも設けられていなくても良い。
また、保護層13の形成方法として、金属層13aを酸化させて金属酸化膜を形成する方法を例に挙げて説明したが、これに限られず、絶縁性を有する被膜の層を貫通孔111の内壁面に直接形成しても良い。
また、上記実施形態及び変形例では、シングルパス方式のインクジェット記録装置100を例に挙げて説明したが、ヘッドユニットやインクジェットヘッドを走査させながら画像の記録を行うインクジェット記録装置に本発明を適用しても良い。
また、上記実施形態及び変形例では、圧電素子60を用いたピエゾ方式のインクジェット記録装置100を例に挙げて説明したが、これに限られず、例えば、加熱によりインクに気泡を生じさせてインクを吐出するサーマル方式のインクジェット記録装置といった他の方式のインクジェット記録装置にも本発明を適用することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
本発明は、インクジェットヘッドの製造方法、インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置に利用することができる。
1 インクジェットヘッド
2 ヘッドチップ
3 配線部材
4 駆動部
10 ノズル基板
11 有孔基板
11a 開口形成面
111 貫通孔
111a 開口
112 凹部
12 ノズル
13 保護層
13a 金属層
14 撥液層
141 基材層
142 樹脂粒子
15 中間層
20 圧力室基板
21 圧力室
30 振動板
40 スペーサー基板
50 配線基板
60 圧電素子
70 共通インク室
80 支持基板
91 保持基板
92 レジストパターン
93 被覆部材
100 インクジェット記録装置
101 搬送ベルト
102 搬送ローラー
103 ヘッドユニット
M 記録媒体

Claims (16)

  1. ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドの製造方法であって、
    前記ノズル用の貫通孔が形成された金属の有孔基板における前記貫通孔の開口が設けられた開口形成面の一方を、被覆部材により被覆された状態とする被覆ステップ、
    前記貫通孔の内壁面に保護層を形成することで、当該保護層を内壁面とする前記ノズルを前記有孔基板に形成する保護層形成ステップ、
    前記一方の開口形成面から前記被覆部材を除去する被覆部材除去ステップ、
    フッ素を含有する樹脂粒子の一部が表面から露出している金属の基材層を有する撥液層を、前記有孔基板を構成する金属の表面に選択的に金属を析出させる湿式めっきにより前記一方の開口形成面上に形成する撥液層形成ステップ、
    を含み、
    前記被覆ステップは、
    導電性を有する平板状の前記被覆部材上における前記貫通孔を設ける位置を含む範囲に、絶縁性を有するパターニング部材を設けるパターニングステップ、
    前記被覆部材の前記パターニング部材が設けられた面上に、湿式めっきにより前記有孔基板を形成する有孔基板形成ステップ、
    を含み、
    前記有孔基板形成ステップでは、前記被覆部材上から前記パターニング部材上の一部に亘る範囲に前記有孔基板を形成し、
    前記被覆部材除去ステップでは、前記被覆部材及び前記パターニング部材を前記有孔基板の前記一方の開口形成面から除去し、
    前記パターニングステップでは、前記被覆部材の表面からの高さが0.1μmより大きくかつ1μm未満である前記パターニング部材を設け、
    前記樹脂粒子の直径の最大値が0.1μm以下である、インクジェットヘッドの製造方法。
  2. 前記保護層形成ステップでは、絶縁性を有する前記保護層を形成する請求項1に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  3. 前記保護層形成ステップは、
    前記貫通孔の内壁面に金属層を形成する金属層形成ステップ、
    前記金属層の表面を酸化させて金属酸化膜を形成する金属酸化膜形成ステップ、
    を含む請求項2に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  4. 前記金属層形成ステップでは、湿式めっきにより前記金属層を形成する請求項3に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  5. 前記金属酸化膜形成ステップでは、酸素を含有する雰囲気中で前記金属層を乾燥させる請求項4に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  6. 前記撥液層形成ステップでは、前記保護層の厚さ以下の厚さの前記撥液層を形成する請求項4又は5に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  7. 前記金属層形成ステップでは、蒸着により前記金属層を形成する請求項3に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  8. 前記保護層形成ステップでは、蒸着により前記貫通孔の内壁面に金属酸化膜を形成する請求項2に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  9. 前記撥液層形成ステップでは、電解めっきにより前記撥液層を形成する請求項2から8のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  10. 前記撥液層形成ステップでは、無電解めっきにより前記撥液層を形成する請求項1から8のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  11. 前記撥液層形成ステップでは、前記撥液層を形成する前に、前記一方の開口形成面と前記撥液層との密着性よりも前記撥液層との密着性が高い中間層を前記一方の開口形成面に形成する請求項1から10のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  12. ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドであって、
    前記ノズル用の貫通孔が設けられている導電性を有する有孔基板と、
    前記貫通孔の内壁面に設けられ、前記ノズルの内壁面を構成する保護層と、
    前記有孔基板における前記貫通孔の開口が設けられた開口形成面の一方に設けられており、フッ素を含有する樹脂粒子の一部が表面から露出している金属の基材層を有する撥液層と、
    を備え
    前記一方の開口形成面は、前記貫通孔の開口が底面に設けられている凹部を有し、
    前記凹部の深さが0.1μmより大きくかつ1μm未満であり、
    前記樹脂粒子の直径の最大値が0.1μm以下である、インクジェットヘッド。
  13. 前記保護層は、絶縁性を有する請求項12に記載のインクジェットヘッド。
  14. 前記撥液層の厚さは、前記保護層の厚さ以下である請求項12又は13に記載のインクジェットヘッド。
  15. 前記一方の開口形成面と前記撥液層との間に、前記一方の開口形成面と前記撥液層との密着性よりも前記撥液層との密着性が高い中間層が設けられている請求項12から14のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
  16. 請求項12から15のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置。
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