JP2008086225A - タンパク質の発現方法 - Google Patents
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Abstract
【課題解決手段】
宿主細胞において過剰発現が抑制されているタンパク質、タンパク分解酵素の切断部位および上記タンパク質と結合することにより、該タンパク質に対する発現量制御系の関与を外すタンパク質、あるいはさらに精製用のタグからなる融合タンパク質をコ−ドする遺伝子を用いて、宿主細胞において上記融合タンパク質を発現させ、得られた融合タンパク質をタンパク分解酵素で切断することにより、上記過剰発現が抑制されているタンパク質を製造する。
【選択図】なし
Description
このような問題点については、大腸菌などで発現させる場合は、発現を誘導するまで強力に翻訳を阻害したり(非特許文献1参照)、発現プラスミドのコピ−数を低く抑えておくこと(非特許文献2参照)で、部分的な解決が図られている。しかし、こうした手段によっても発現が困難なタンパク質は多数存在する。たとえば、アクチンのように、真核細胞の発現系でなければ機能的な組換えタンパク質が得られないものも多数存在し、その場合は、効率的な翻訳の抑制と誘導が困難であった。昆虫細胞の発現系を用いるという手段はあるが(非特許文献3参照)、この場合も大量発現が可能かどうかはケ−スバイケ−スであり、とくに真核細胞の発現系において、過剰発現が抑制されるタンパク質を効率的に発現できるような、新たな技術の開発が待たれていた。
(a)宿主細胞において過剰発現が抑制されているタンパク質をコ−ドする遺伝子DNAと、該タンパク質と結合することにより、該タンパク質に対する発現量制御系の関与を外すタンパク質またはペプチドをコ−ドする遺伝子を、タンパク分解酵素の切断部位をコ−ドするヌクレオチド配列を含むリンカ−ポリヌクレオチドを介して結合せしめて融合遺伝子を調製する工程。
(b)上記融合遺伝子をベクタ−に挿入し、組み換えベクタ−を得る工程。
(c)上記組み換えベクタ−を宿主細胞に導入して形質転換体を得る工程
(d)上記形質転換体を培養し、培養物から融合タンパク質を得る工程。
(e)得られた融合タンパク質をタンパク分解酵素で切断し、宿主細胞において過剰発現が抑制されているタンパク質を得る工程。
(f)切断されたタンパク質の混合液から、上記発現を調節するタンパク質を除去し、宿主細胞において過剰発現が抑制されているタンパク質を精製する過程。
(2)以下の(a)〜(d)の工程を含むことを特徴とする、融合タンパク質の製造方法。
(a)宿主細胞において過剰発現が抑制されているタンパク質をコ−ドする遺伝子DNAと、該タンパク質と結合することにより、該タンパク質に対する発現量制御系の関与を外すタンパク質またはペプチドをコ−ドする遺伝子を、タンパク分解酵素の切断部位をコ−ドするヌクレオチド配列を含むリンカ−ポリヌクレオチドを介して結合せしめて融合遺伝子を調製する工程。
(b)上記融合遺伝子をベクタ−に挿入し、組み換えベクタ−を得る工程。
(c)上記組み換えベクタ−を宿主細胞に導入して形質転換体を得る工程
(d)上記形質転換体を培養し、培養物から融合タンパク質を得る工程。
(3)上記タンパク質に対する発現量制御系の関与を外すタンパク質またはペプチドをコ−ドする遺伝子に、精製用のタグをコ−ドするヌクレオチド配列を結合させることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)宿主細胞において過剰発現が抑制されているタンパク質が、アクチンであり、該タンパク質の過剰発現を可能にする機能を有するタンパク質がプロフィリン、またはチモシンであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)タンパク質分解酵素の切断部位が、キモトリプシンであることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)宿主細胞において過剰発現が抑制されているタンパク質と、該タンパク質と結合することにより、該タンパク質に対する発現量制御系の関与を外すタンパク質またはペプチドが、タンパク質分解酵素の切断部位のアミノ酸配列を有するリンカ−ペプチドを介して結合していることを特徴とする、融合タンパク質。
(7)上記タンパク質に対する発現量制御系の関与を外すタンパク質またはペプチドのC末端に精製用のタグが付加されていることを特徴とする、上記(6)に記載の融合タンパク質。
(8)上記精製用タグがポリヒスチジンタグ、FLAGタグである上記(7)に記載の融合タンパク質。
(9)宿主細胞において過剰発現が抑制されているタンパク質が、アクチンであり、該タンパク質に対する発現量制御系の関与を外すタンパク質が、プロフィリンまたはチモシンであることを特徴とする、上記(6)〜(8)のいずれかに記載の融合タンパク質。
(10)タンパク質分解酵素の切断部位が、キモトリプシンであることを特徴とする、上記(6)〜(9)のいずれかに記載の融合タンパク質。
(11)配列番号1または3に示されるアミノ酸配列を有するか、あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列を有する融合タンパク質であって、蛋白分解酵素により切断されてアクチン活性を有するタンパク質を産生することを特徴とする、融合タンパク質。
(12)配列番号5または7に示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、融合タンパク質。
(13)上記(6)〜(12)のいずれかに記載の融合タンパク質をコ−ドする遺伝子。
(14)配列番号2または4に記載の塩基配列を有するか、あるいは該塩基配列において、1または数個のヌクレオチドが欠失、置換または付加された塩基配列を有する遺伝子であって、該遺伝子が、蛋白分解酵素により切断されてアクチン活性を有するタンパク質を産生する融合タンパク質をコ−ドするものであることを特徴とする、遺伝子。
(15)配列番号6または8に示される塩基配列を有することを特徴とする、遺伝子。
(16)上記(13)〜(15)のいずれかに記載の遺伝子が挿入されていることを特徴とする、組換えベクタ−。
(17)上記(16)に記載の組み換えベクタ−が導入されていることを特徴とする形質転換体。
特に、本発明は、特に、真核細胞発現系において、過剰発現が困難な組換えタンパク質を、大量生産可能にする点で有用な技術である。
このような過剰発現が抑制されているタンパク質と該タンパク質に対する発現量制御系の関与を外すタンパク質またはペプチドの組み合わせとしては、例えば、アクチンとチモシンまたはプロフィリン、あるいはチュブリンダイマ−とスタスミン等が挙げられる。
重合して微小管を構成するチュブリンダイマ−は、細胞質のダイマ−濃度を介したフィ−ドバック制御径路で発現量が制限されることが知られており、過剰発現が困難な蛋白質である。これに対して、スタスミンはチュブリンダイマ−と1;1に結合することが知られているものである。
上記タンパク分解酵素としては、発現した融合タンパク質をタンパク分解酵素で切断する際、製造目的のタンパク質が切断されないタンパク質分解酵素を選択し、リンカ−ペプチドをコ−ドするポリヌクレオチドの塩基配列の設計においては、この選択されたタンパク分解酵素の切断部位のアミノ酸配列を有するリンカ−ペプチドをコ−ドするように設計する。
本願発明の方法は、広く普遍性を有し、製造目的のタンパク質は特定のものには限定されない。
アクチンは、そのフォ−ルディングに真核細胞のシャペロンを必要とするため、大腸菌発現系による発現は不可能である。一方、アクチンはすべての真核細胞の増殖にとって必須なタンパク質であり、その発現量は厳密にコントロ−ルされているため、真核細胞で組換えアクチン遺伝子を大量発現することは困難である。
また、アクチンは、細胞内で重合してアクチンフィラメントを形成することでその生理的機能を発揮するタンパク質である。一方、プロフィリンは、アクチンモノマ−結合性タンパク質として知られ、重合能を失ったADP結合アクチンモノマ−と1:1の複合体を形成してADPとATPの交換反応を促進し、ATP結合アクチンを再生して重合能を回復させることが生理的機能であると考えられている。しかしプロフィリンと結合したアクチンモノマ−は重合することができず、プロフィリンから解離しなければ重合できないことが知られている。また、チモシンもアクチンモノマ−と結合することにより、細胞内でアクチンフィラメントの重合を阻害していることが知られている。すなわち、これらタンパク質は、アクチンモノマ−が細胞内で過剰にならないように制御する作用を有する。
したがって、プロフィリンまたはチモシン遺伝子は、アクチン遺伝子の3‘末端側に連結する。
また、プロフィリンまたはチモシン遺伝子の3‘末端側には、精製用のタグをコ−ドするヌクレオチド配列を付すが、このような配列としては、6xHisまたはFLAG配列が望ましい。
上記形質転換細胞を培養することにより得られる融合タンパク質の例として、図1を示すが、この図1の融合タンパク質は、アクチンとチモシンとの融合タンパク質であり、アクチンとチモシンとの間にはキモトリプシン切断部位のアミノ酸配列を有するリンカ−ペプチド部分が挿入された構造を有し、精製のためのポリヒスチジン配列を有している。
また、本発明においては、これら配列番号2または4に示されるアミノ酸配列において、1乃至数個のアミノ酸残基が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列を有する融合タンパク質であっても、蛋白質分解酵により切断されて、アクチン活性を有するタンパク質を産生する融合タンパク質も包含する。
アクチン−チモシン融合タンパク質(配列番号5)
(化1)
MDGEDVQALVIDNGSGMCKAGFAGDDAPRAVFPSIVGRPRHTGVMVGMGQKDSYVGDEAQSKRGILTLKYPIEHGIVTNWDDMEKIWHHTFYNELRVAPEEHPVLLTEAPLNPKANREKMTQIMFETFNTPAMYVAIQAVLSLYASGRTTGIVMDSGDGVSHTVPIYEGYALPHAILRLDLAGRDLTDYMMKILTERGYSFTTTAEREIVRDIKEKLAYVALDFEAEMQTAASSSALEKSYELPDGQVITIGNERFRCPEALFQPSFLGMESAGIHETTYNSIMKCDVDIRKDLYGNVVLSGGTTMFPGIADRMNKELTALAPSTMKIKIIAPPERKYSVWIGGSILASLSTFQQMWISKEEYDESGPSIVHRKCFASRGGSGGSGGSASDKPDMAEIEKFDKSKLKKTETQEKNPLPSKETIEQEKQAGESHHHHHHHH*
(下線部は、キモトリプシンの切断部位であるリンカ−配列、リンカ−より上流側はDictyostelium discoideum Actlin15配列、 リンカ−より下流側はヒト・チモシンβ配列、及び2重下線部は精製用のポリヒスチジンタグをそれぞれ表す。)
(化2)
MDGEDVQALVIDNGSGMCKAGFAGDDAPRAVFPSIVGRPRHTGVMVGMGQKDSYVGDEAQSKRGILTLKYPIEHGIVTNWDDMEKIWHHTFYNELRVAPEEHPVLLTEAPLNPKANREKMTQIMFETFNTPAMYVAIQAVLSLYASGRTTGIVMDSGDGVSHTVPIYEGYALPHAILRLDLAGRDLTDYMMKILTERGYSFTTTAEREIVRDIKEKLAYVALDFEAEMQTAASSSALEKSYELPDGQVITIGNERFRCPEALFQPSFLGMESAGIHETTYNSIMKCDVDIRKDLYGNVVLSGGTTMFPGIADRMNKELTALAPSTMKIKIIAPPERKYSVWIGGSILASLSTFQQMWISKEEYDESGPSIVHRKCFASRGGSGGSGGSAMSWQQYVDEQLTGAGLSQGAILGANDGGVWAKSSGINITKPEGDGIAALFKNPAEVFAKGALIGGVKYMGIKGDPQSIYGKKGATGCVLVRTGQAIIVGIYDDKVQPGSAALIVEKLGDYLRDNGYHHHHHHHH*
(上記塩基配列中、下線部はキモトリプシンの切断部位であるリンカ−配列、リンカ−より上流側はDictyostelium discoideum Act1in 15配列、下流側はDictyostelium discoideum Profilin I配列、及び二重下線部は精製用のポリヒスチジンタグをそれぞれ表す。)
また、本発明においては、これら配列番号・・または・・に示される塩基配列において、1乃至数個のヌクレオチド残基が欠失、置換または付加され塩基配列を有する遺伝子であっても、蛋白質分解酵により切断されて、アクチン活性を有するタンパク質を産生する融合タンパク質をコ−ドする融合蛋白質をコ−ドする遺伝子を包含する。
アクチン−チモシン融合遺伝子の塩基配列(配列番号6)
(化3)
ATGGATGGTGAAGACGTCCAAGCTTTAGTTATTGATAACGGTTCTGGTATGTGTAAAGCCGGTTTTGCTGGTGACGATGCTCCACGTGCTGTTTTCCCATCAATTGTTGGTCGTCCAAGACACACTGGTGTTATGGTTGGTATGGGTCAAAAAGACTCATATGTAGGTGATGAAGCCCAATCAAAGAGAGGTATCTTAACCCTCAAATACCCAATTGAACACGGTATCGTTACCAACTGGGATGATATGGAAAAAATCTGGCATCATACTTTCTACAATGAACTCCGTGTTGCACCAGAAGAACACCCAGTTTTGTTAACAGAAGCTCCATTAAATCCAAAAGCCAACAGAGAAAAAATGACCCAAATTATGTTTGAAACCTTCAACACCCCAGCCATGTACGTTGCCATTCAAGCCGTCTTATCCTTATATGCCTCTGGTCGTACCACCGGTATTGTTATGGATTCAGGTGATGGTGTCTCCCACACTGTACCAATCTATGAAGGTTATGCCTTACCACATGCCATCTTACGTTTAGATTTAGCTGGTCGTGATCTCACCGATTACATGATGAAAATCTTAACTGAACGTGGTTACTCATTCACCACCACTGCCGAAAGAGAAATCGTCAGAGATATCAAAGAGAAATTAGCCTACGTCGCCCTCGACTTTGAAGCTGAAATGCAAACTGCTGCCTCCTCGAGTGCCCTCGAAAAATCATACGAATTACCAGACGGTCAAGTTATCACCATTGGTAACGAACGTTTCCGTTGTCCAGAAGCCCTCTTCCAACCATCATTCTTAGGTATGGAATCTGCTGGTATCCACGAAACCACATACAACTCCATCATGAAATGTGATGTTGATATCCGTAAAGATTTATACGGTAATGTCGTCTTATCAGGTGGTACCACTATGTTCCCAGGTATTGCTGATCGTATGAACAAAGAATTAACTGCTTTAGCACCATCAACCATGAAAATTAAAATCATTGCTCCACCAGAACGTAAATACTCTGTCTGGATTGGTGGATCTATTTTAGCTTCACTCTCAACTTTCCAACAAATGTGGATCTCAAAAGAAGAATATGATGAATCTGGTCCATCAATTGTCCACAGAAAATGTTTCGCTAGCAGAGGTGGATCCGGAGGTTCTGGAGGTAGTGCATCAGATAAACCAGATATGGCTGAAATCGAGAAGTTCGATAAGTCAAAGCTTAAGAAAACTGAAACACAAGAAAAGAATCCATTACCATCAAAAGAGACAATTGAACAAGAGAAACAAGCAGGTGAATCACATCATCACCATCATCACCATCATTAA
(上記塩基配列中、下線部はリンカ−配列をコ−ドするヌクレオチド配列、リンカ−より上流側はDictyostelium discoideum act15をコ−ドする塩基配列、下流側はヒト・チモシンβのアミノ酸配列をコ−ドする塩基配列、及び二重下線は精製用のポリヒスチジンタグをコ−ドする塩基配列をそれぞれ表す。)
(化4)
ATGGATGGTGAAGATGTTCAAGCTTTAGTTATTGATAACGGTTCTGGTATGTGTAAAGCCGGTTTTGCTGGTGACGATGCTCCACGTGCTGTTTTCCCATCAATTGTTGGTCGTCCAAGACACACTGGTGTTATGGTTGGTATGGGTCAAAAAGACTCATATGTAGGTGATGAAGCCCAATCAAAGAGAGGTATCTTAACCCTCAAATACCCAATTGAACACGGTATCGTTACCAACTGGGATGATATGGAAAAAATCTGGCATCATACTTTCTACAATGAACTCCGTGTTGCACCAGAAGAACACCCAGTTCTCTTAACCGAAGCTCCATTAAATCCAAAAGCCAACAGAGAAAAAATGACCCAAATTATGTTTGAAACCTTCAACACCCCAGCCATGTACGTTGCCATTCAAGCCGTCTTATCCTTATATGCCTCTGGTCGTACCACCGGTATTGTTATGGATTCAGGTGATGGTGTCTCCCACACTGTACCAATCTATGAAGGTTATGCCTTACCACATGCCATCTTACGTTTAGATTTAGCTGGTCGTGATCTCACCGATTACATGATGAAAATCTTAACTGAACGTGGTTACTCATTCACCACCACTGCCGAAAGAGAAATCGTCAGAGATATCAAAGAGAAATTAGCCTACGTCGCCCTCGACTTTGAAGCTGAAATGCAAACTGCTGCCTCATCATCAGCCCTCGAAAAATCATACGAATTACCAGACGGTCAAGTTATCACCATTGGTAACGAACGTTTCCGTTGTCCAGAAGCCCTCTTCCAACCATCATTCTTAGGTATGGAATCTGCTGGTATCCACGAAACCACATACAACTCCATCATGAAATGTGATGTTGATATCCGTAAAGATTTATACGGTAATGTCGTCTTATCAGGTGGTACAACTATGTTCCCAGGTATTGCTGATCGTATGAACAAAGAATTAACTGCTTTAGCACCATCAACCATGAAAATTAAAATCATTGCTCCACCAGAACGTAAATACTCTGTCTGGATTGGTGGATCTATTTTAGCTTCACTCTCAACTTTCCAACAAATGTGGATCTCAAAAGAAGAATATGATGAATCTGGTCCATCAATTGTCCACAGAAAATGTTTCGCTAGCAGAGGTGGATCCGGAGGTTCTGGAGGTAGTGCAATGAGCTGGCAACAATATGTCGATGAACAATTAACTGGTGCAGGACTTTCTCAAGGAGCAATTTTAGGTGCAAATGATGGTGGTGTTTGGGCTAAATCATCAGGTATTAATATTACTAAACCAGAAGGTGATGGTATAGCTGCTTTATTCAAAAATCCAGCTGAGGTATTTGCTAAGGGTGCTTTGATTGGTGGAGTAAAATATATGGGTATTAAGGGTGACCCACAAAGTATCTATGGTAAAAAGGGAGCAACTGGTTGTGTTCTTGTTAGAACAGGCCAAGCAATCATTGTTGGCATTTATGATGATAAAGTCCAACCAGGATCAGCTGCACTTATTGTTGAAAAGTTAGGTGATTACTTAAGAGATAATGGTTATCATCATCACCATCATCACCATCATTAA
(上記塩基配列中、下線部はリンカ−をコ−ドするヌクレオチド配列、リンカ−より上流側はDictyostelium discoideum act15をコ−ドする塩基配列、下流側はDictyostelium discoideum pfiIをコ−ドする塩基配列、及び二重下線は精製用のポリヒスチジンタグをコ−ドする塩基配列をそれぞれ表す。)
このようにして得られたアクチンは、正常な重合活性をもち(図1)、アクチンフィラメントは電子顕微鏡的に正常であり(図2)、さらにミオシンとの相互作用も正常である。また、タンパク質化学的な解析によっても、N末のメチオニンの除去と2番目のアスパラギン酸のアセチル化,74番のヒスチジンのメチル化は正常に起こっており、さらに、C末が天然アクチンと同じ376番のフェニルアラニンであることを確認している。したがって本発明により得られた組換えアクチンは機能的にも構造的にも完全に正常なアクチンであり、しかも、その生産量は極めて大量である(1Lの培養から約5 mg)。
(1)アクチン−プロフィリン融合タンパク質をコ−ドする遺伝子含有プラスミドの調製
a)pTIKLAct15の構築
細胞性粘菌のact15 遺伝子(accession # M14146)をGFP融合タンパク質の形で発現するプラスミドpBIG GFP−actin (Asano et al., Cell Motility and the Cytoskeleton 59:17−27, 2004)をテンプレ−ト、5’actttcatgcaatctagataaaaa(配列番号9)および5’aacgaattcacgcgttagctagcgaaacattttctgtggacaat(配列番号10)をプライマ−とするPCRを行い、5’側にXbaI、3’側にNheI−stop−MluI−EcoRIを付加したact15 のpromoterとcoding sequenceを含む増幅産物を得、これをpGEM7−Zf(−)(Promega)のXbaI/EcoRIサイトにサブクロ−ンしてpGEMact15を得た。次に、pLD1A15SN(Robinson and Spudich, J Cell Biol. 150:823−838, 2000)をMluIとBamHIで切断して5’側にMluI、3’側にBamHIをもつact15 terminator 配列を切り出し、これを、pGEMact15のMluI/BamHIサイトに挿入して、 pGEMact15NheMluTermを得た。次に、挿入配列全体をXbaIとSacIで切り出し、pTIKL (Liu et al., PNAS 95: 14124−14129, 1998)のXbaI/SacIサイトに挿入して、act15の発現プラスミドであるpTIKLAct15を得た。
細胞性粘菌Ax2株から定法に従ってTotal RNAを抽出し、5’ccagtgagcagagtgacgaggactcgagctcaagcttttttttttttttttt(配列番号11)プライマ−とReverTra Ace 逆転写酵素(Toyobo)を用いて定法に従いfirst strandを合成した。Cetrisepスピンカラムによりプライマ−を除去した後、これをテンプレ−ト、5’gtcgacaatgagctggcaacaatatgtcg(配列番号12)および5’gaggactcgagctcaagctt(配列番号13)をプライマ−とするPCRを行い、増幅産物をpGEM T easyベクタ−(Promega)にサブクロ−ンして、pfiI 遺伝子(accession # X61581)を含むプラスミドを選択し、pGEMpfiIとした。
a)pTIKLARPの構築
将来act15内に効率的に変異を導入するため、act15コ−ド領域をユニ−クサイト(AatII, HpaI, XhoI, KpnI, NheI)で区切られた4つの領域(Frag1, Frag2, Frag3, Frag4)に分ける操作を行った(ただしAatIIサイトは、act15コ−ド領域の13−18残基に位置し、12残基目までは上記分割領域に含まれない)。このため、pBIG GFP−actinをテンプレ−トとし、以下の4組プライマ−を用いたPCRを行った。
Frag1用:5’GACGTCCAAGCTTTAGTTATTGATAA(配列番号18)と5’GTTAACAAAACTGGGTGTTCTTCTGGTG3’ (配列番号19)、
Frag2用:5’GTTAACAGAAGCTCCATTAAATCCAAAA(配列番号20)と5’CTCGAGGAGGCAGCAGTTTGCATTT3’ (配列番号21)、
Frag3用:5’CTCGAGTGCCCTCGAAAAATCATAC(配列番号22)と5’GGTACCACCTGATAAGACGACATTAC3’ (配列番号23)、
Frag4用:5’GGTACCACTATGTTCCCAGGTATTG(配列番号24)と5’GCTAGCGAAACATTTTCTGTGGACAAT3’(配列番号25)。
次に、pBluescrptAct15P(東大・須藤和夫教授より分与)をテンプレ−ト、5’GACGTCTTCACCATCCATTTTTATTTTTTATTTAATTTAA3’(配列番号26)と5’CAGGAAACAGCTATGAC3’(配列番号27)をプライマ−とするPCRを行い、3’側にAatIIサイトまでのact15の18残基を付加したact15プロモ−タ−を増幅し、これをpGEM−T easyに挿入してpGEM−a15pを得た。
pGEM−F1のSac I, Aat II切断により得られたFrag1を、pGEM−a15pのSac I/Aat IIサイトに挿入し、pGEM−pF1とした。同様にpGEM−F2のSacI, HpaI切断により得られたFrag2をpGEM−pF1のSacI/HpaIサイトに挿入し、pGEM−pF1−2とした。次にpUC19−F3のPvuII、XhoI切断により得られたFrag3をpGEM−pF1−2のNaeI/XhoIサイトに挿入し、pGEM−pF1−3とした。最後に、pUC19−F4をKpnIで切断し、得られたFrag4をpGEM−pF1−3のKpnIサイトに挿入して、サイレント変異により四つのユニ−クサイトをもつ変異型act15遺伝子ARを完成させ、pGEM−ARとした。なお、挿入されたFrag4の方向は配列を読むことにより確認した。pGEM−ARをXbaI、NheIで切断し、得られたAR断片をpTIKL−APのXbaI、NheIサイトに挿入して、pTIKLARPとした。
発現のホストである細胞性粘菌はヒトとコドン使用頻度が大きく異なるので、ヒト・チモシンβ4遺伝子をそのまま細胞性粘菌で発現させると発現効率が低下する恐れがあった。そこで、細胞性粘菌のコドンバイアスを考慮しつつ、ヒト・チモシンβ4をコ−ドする遺伝子は以下に述べるPCRを用いた合成法によって得た。まずチモシンβ4配列を二つの領域に分割し、それぞれを、二つのオリゴヌクレオチドによる相互伸長反応により合成した。伸長反応条件は通常のPCRの条件を用い、オリゴヌクレオチドは以下の二組を用いた。
5’GGTTCTGGAGGTAGTGCATCAGATAAACCAGATATGGCTGAAA(配列番号28)
と5’CTTAAGCTTTGACTTATCGAACTTCTCGATTTCAGCCATATCTGG(配列番号29)及び、
5’CTTAAGAAAACTGAAACACAAGAAAAGAATCCATTACCATCAAAAGAGACAATTGAAC(配列番号30)
と5’ATGATGGTGATGATGTGATTCACCTGCTTGTTTCTCTTGTTCAATTGTCTCTTTTGA(配列番号31)
(下線部は、互いのオリゴヌクレオチドがアニ−リングする領域を示す。)
反応産物はそれぞれpUC19のSmaIサイトに挿入し、配列を確認して、それぞれpUC19−Thymo1とpUC19−Thymo2とした。pUC19−Thymo2をEcoRIとAflIIで切断し、得られた断片をpUC19−Thymo1のEcoRI/AflIIサイトに挿入し、 pUC19−Thymosinを得た。
上記b)で得られたpUC19−Thymosinをテンプレ−トとし、5’GCTAGCAGAGGTGGATCCGGAGGTTCTGGAGGTA(配列番号32)と5’ACGCGTTAATGATGGTGATGATGGTGATGATGTGATTCACCT(配列番号33)をプライマ−とするPCRを行い、5’側にNheIサイト、3’側にHHHHHH(配列番号17)をコ−ドする配列とstopコドンおよびMluIサイトを付加した人工チモシン4遺伝子を得て、これをpUC19のSmaIサイトに挿入し、pUC19−link−Thymosin−Hisを得た。次に、pUC19−link−Thymosin−HisをNheIとMluIで切断し、得られた断片を上記(2)a)で得られたpTIKLARPのNheI/MluIサイトに導入して、pfiI遺伝子を人工チモシン遺伝子で置換したpTIKLARTを得た
野生型Dictyostelium discoidem Ax2株を、electroporation 法(文献Egelhoff et al., 1991)によりpTIKLARTで形質転換し、温度21度において形質転換体を12 mg/mL G418を含むHL5培地中(文献Sussman, 1987)で選択培養し、さらに1−3 LのHL5培地で大量培養した。
得られた細胞を遠心(1700×g, 5 min)によって集菌した。以後の操作はすべて4 ℃または氷上にて行った。細胞ペレットは10 mM Tris−HCl pH 7.4で二度洗浄し、細胞重量の2倍量のBinding buffer 1 (10 mM Imidazole pH 7.4, 10 mM Hpes pH7.4, 300 mM NaCl, 2 mM MgCl2, 1 mM ATP, 7 mM βメルカプトエタノ−ル)を加え、懸濁した。さらにBinding Buffer 2 (Binding Buffer1プラス2.5% Triton X−100およびタンパク質分解酵素阻害剤) を細胞重量の2倍量を加えることで溶菌させ、遠心(40,000×g, 30 min)した。
粗精製液に、タンパク質の重量比で200 : 1になるようにTLCK処理済みキモトリプシンを加え、25℃で40分間消化反応を行った。反応は0.2 mM PMSFを加えることで停止させた。この段階で1 mM ATPを加えて遊離したアクチンを重合させ、超遠心(300,000×g, 15 min, 4℃)することでアクチンフィラメントを沈殿させ、その他の夾雑タンパク質から分離することができた。
Lane 1,2:粗精製アクチン・チモシン融合タンパク質を超遠心したペレット(1)と上澄(2)。
Lane 3:キモトリプシン処理後。
Lane 4: High Q Sepharose素通り分画。
Lane 5: High Q Sepharoseから溶出したアクチン分画。Lane 6, 7: 同分画を重合条件下で超遠心したペレット(精製アクチン:6)と上澄(7)。
Lane 8, 9: 同分画を脱重合条件下(G buffer中)で超遠心したペレット(8)と上澄(9)。
実施例1(1)b)で得られたpTIKLAPを用い、実施例2と同様に野生型Dictyostelium discoidem Ax2株の形質転換を行い、実施例2と同様に形質転換体の選択培養、および大量培養を行った。
以後の操作はすべて4 ℃または氷上にて行った。細胞は、低速遠心(1700×g, 5 min)によって収穫し、さらに10 mM Tris−HCl pH 7.4で二度洗浄した。細胞ペレットを細胞重量の2倍量のBinding buffer 1 (10 mM Imidazole pH 7.4, 10 mM Hpes pH 7.4, 300 mM NaCl, 2 mM MgCl2, 1 mM ATP, 7 mM βメルカプトエタノ−ル)に懸濁した。さらにBinding Buffer 2 (Binding Buffer1プラス 1% Triton X−100,プロテア−ゼ阻害剤混合液) を細胞重量の2倍量を加えることで溶菌させ、ただちに遠心(40,000×g, 30 min)した。
Lane 1, 2:粗精製アクチン・プロフィリンを超遠心した上澄(S)とペレット(P)。
Lane 3, 4:キモトリプシン処理後超遠心した上澄(S)とペレット(P)。
Lane 5: 骨格筋アクチン。
Lane 1: Ni−カラムから溶出したアクチン・プロフィリン融合タンパク質の粗精製分画。
Lane 2: 同分画をキモトリプシン処理したもの。
Lane 3: キモトリプシン処理液をQ−Sepharoseカラムにロ−ドしたときの素通り分画。Lane 4: Q−Sepharoseからの溶出したアクチン分画。
Lane 5: 骨格筋アクチン。
Claims (17)
- 以下の(a)〜(f)の工程を含むことを特徴とする、宿主細胞において過剰発現が抑制されているタンパク質の製造方法。
(a)宿主細胞において過剰発現が抑制されているタンパク質をコ−ドする遺伝子DNAと、該タンパク質と結合することにより、該タンパク質に対する発現量制御系の関与を外すタンパク質またはペプチドをコ−ドする遺伝子を、タンパク分解酵素の切断部位をコ−ドするヌクレオチド配列を含むリンカ−ポリヌクレオチドを介して結合せしめて融合遺伝子を調製する工程。
(b)上記融合遺伝子をベクタ−に挿入し、組み換えベクタ−を得る工程。
(c)上記組み換えベクタ−を宿主細胞に導入して形質転換体を得る工程
(d)上記形質転換体を培養し、培養物から融合タンパク質を得る工程。
(e)得られた融合タンパク質をタンパク分解酵素で切断し、宿主細胞において過剰発現が抑制されているタンパク質を得る工程。
(f)切断されたタンパク質の混合液から、上記発現を調節するタンパク質を除去し、宿主細胞において過剰発現が抑制されているタンパク質を精製する過程。 - 以下の(a)〜(d)の工程を含むことを特徴とする、融合タンパク質の製造方法。
(a)宿主細胞において過剰発現が抑制されているタンパク質をコ−ドする遺伝子DNAと、該タンパク質と結合することにより、該タンパク質に対する発現量制御系の関与を外すタンパク質またはペプチドをコ−ドする遺伝子を、タンパク分解酵素の切断部位をコ−ドするヌクレオチド配列を含むリンカ−ポリヌクレオチドを介して結合せしめて融合遺伝子を調製する工程。
(b)上記融合遺伝子をベクタ−に挿入し、組み換えベクタ−を得る工程。
(c)上記組み換えベクタ−を宿主細胞に導入して形質転換体を得る工程
する工程。
(d)上記形質転換体を培養し、培養物から融合タンパク質を得る工程。 - 上記タンパク質に対する発現量制御系の関与を外すタンパク質またはペプチドをコ−ドする遺伝子に、精製用のタグをコ−ドするヌクレオチド配列を結合させることを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
- 宿主細胞において過剰発現が抑制されているタンパク質が、アクチンであり、該タンパク質の過剰発現を可能にする機能を有するタンパク質がプロフィリン、またはチモシンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- タンパク質分解酵素の切断部位が、キモトリプシンであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 宿主細胞において過剰発現が抑制されているタンパク質と、該タンパク質と結合することにより、該タンパク質に対する発現量制御系の関与を外すタンパク質またはペプチドが、タンパク質分解酵素の切断部位のアミノ酸配列を有するリンカ−ペプチドを介して結合していることを特徴とする、融合タンパク質。
- 上記タンパク質に対する発現量制御系の関与を外すタンパク質またはペプチドのC末端に精製用のタグが付加されていることを特徴とする請求項6に記載の融合タンパク質。
- 上記精製用タグがポリヒスチジンタグ、FLAGタグである請求項7に記載の融合タンパク質。
- 宿主細胞において過剰発現が抑制されているタンパク質が、アクチンであり、該タンパク質に対する発現量制御系の関与を外すタンパク質が、プロフィリンまたはチモシンであることを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載の融合タンパク質。
- タンパク質分解酵素の切断部位が、キモトリプシンであることを特徴とする、請求項6〜9のいずれかに記載の融合タンパク質。
- 配列番号1または3に示されるアミノ酸配列を有するか、あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列を有する融合タンパク質であって、蛋白分解酵素により切断されてアクチン活性を有するタンパク質を産生することを特徴とする、融合タンパク質。
- 配列番号5または7に示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、融合タンパク質。
- 請求項6〜12のいずれかに記載の融合タンパク質をコ−ドする遺伝子。
- 配列番号2または4に記載の塩基配列を有するか、あるいは該塩基配列において、1または数個のヌクレオチドが欠失、置換または付加された塩基配列を有する遺伝子であって、該遺伝子が、蛋白分解酵素により切断されてアクチン活性を有するタンパク質を産生する融合タンパク質をコ−ドするものであることを特徴とする、遺伝子。
- 配列番号6または8に示される塩基配列を有することを特徴とする、遺伝子。
- 請求項13〜15のいずれかに記載の遺伝子が挿入されていることを特徴とする、組換えベクタ−。
- 請求項16に記載の組み換えベクタ−が導入されていることを特徴とする形質転換体。
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