JP2001275683A - 重金属吸収能を有する形質転換生物体及びそれを用いた重金属類浄化方法 - Google Patents

重金属吸収能を有する形質転換生物体及びそれを用いた重金属類浄化方法

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JP2001275683A
JP2001275683A JP2000098432A JP2000098432A JP2001275683A JP 2001275683 A JP2001275683 A JP 2001275683A JP 2000098432 A JP2000098432 A JP 2000098432A JP 2000098432 A JP2000098432 A JP 2000098432A JP 2001275683 A JP2001275683 A JP 2001275683A
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thymosin
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heavy metal
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Yoshie Kobayashi
由枝 小林
Koichi Mizuno
幸一 水野
Tatsuto Fujimura
達人 藤村
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Taiheiyo Cement Corp
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Abstract

(57)【要約】 【解決課題】 生物学的方法により土壌、河川、湖沼、
汚泥等から重金属を除去する方法の提供。 【解決手段】 チモシンをコードする遺伝子を導入する
ことにより重金属の吸収蓄積能力を高めた形質転換生物
体を重金属含有媒体と接触させて生育させ、これにより
媒体中の重金属を形質転換体細胞中に吸収蓄積させるこ
とによる重金属類を除去して前記媒体を浄化する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チモシン遺伝子を
導入することにより重金属類の吸収蓄積能力を高めた形
質転換生物体及びこの形質転換生物体を用いた重金属含
有媒体の浄化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、重金属による汚染は広範囲に広が
っている。主な汚染源は、精錬工場からの排水、乗用車
等の排気ガス、廃棄物の焼却飛灰、塗料、廃棄物の不法
投棄等であるが、これらの汚染が河川等の流水や大気を
通じて土壌にも及び農産物の汚染や住民への健康被害が
懸念される。
【0003】従来、重金属で汚染された水から重金属を
除去する方法としては水酸化物を形成し共沈させる共沈
法、硫化物を生成する方法、金属イオン捕捉剤を用いる
方法あるいはイオン交換樹脂に吸着させる吸着法等があ
る。しかし、一般に、環境水中の重金属は低濃度であ
り、上記のような薬剤を用いる方法は、河川や湖沼等の
環境水中の重金属汚染を継続的に除去ないし浄化する処
理方法としては費用及び設備の面から効率的でない。
【0004】また、重金属で汚染された土壌の浄化対策
における最も基本的な方法としては排土、客土や土壌中
での重金属の不溶化等があるが、これらの方法は、汚染
土壌から重金属を取り除くものではなく対症療法的な効
果しか有しない。
【0005】一方、植物による各種重金属イオンの吸収
蓄積能力を利用して土壌や湖沼の汚染を浄化することが
研究されている(特開昭57-190号公報等)。例えば、ヒ
マワリ、セイタカアワダチソウ、ブタクサ、トウモロコ
シ、バシクルモン(キョウチクトウ科)等は鉛につい
て、インドカラシ、ヘビノネゴザ、スズメノヒエ等はカ
ドミウムについて、その他、イネ科、アブラナ科、ヒル
ガオ科の一部の植物もそれぞれ重金属について高い濃縮
能を有することが報告されている(Mofat, A.S.,"Plant
s providing their worth in toxic metal cleanup" Sc
ience, 269, 302-303 (1995))。しかし、植物を用いて
実用的な水準で重金属の回収除去を行うためには、当該
植物体が高バイオマス、早い生長性、大きな重金属吸収
容量を有することが必要である。しかるに、既知の植物
ではこれらの条件を満たさない。
【0006】
【発明の解決課題】本発明は、従来の重金属除去方法に
おける上記問題の解決を意図したものであって、生物、
特に植物や原核生物を利用することにより、土壌、湖沼
や河川等の水、湖底や川床等の汚泥等の重金属含有媒体
から重金属を効率的に除去する方法を提供することを目
的とする。
【0007】
【課題を解決する手段】本発明者らは、従来、環境から
の重金属除去プロセスとは関連付けて考えられていなか
った哺乳動物における重金属無毒化機構に着目した。具
体的には、ヒトまたはラット等の生体内で重金属(鉛)
と結合した構造が報告されているチモシンタンパク質に
着目し、これをコードする遺伝子を導入することにより
重金属吸収蓄積能力に優れた形質転換生物体を得ること
に成功した。また、この形質転換生物体を利用すれば重
金属含有媒体から重金属が効率的に除去できることを見
出し本発明を完成するに至った。
【0008】すなわち、本発明は、(1)チモシン遺伝
子を導入することにより重金属類に対する吸収蓄積能力
を高めたことを特徴とする形質転換生物体に関する。本
発明の上記の形質転換体は、(2)形質転換生物体が原
核生物または植物である形質転換生物体、(3)前記遺
伝子が、チモシンβ4遺伝子である上記(1)または
(2)の形質転換体を含む。
【0009】さらに、本発明は、(4)チモシン遺伝子
を導入した形質転換生物体を重金属含有媒体と接触させ
ながら生育させ、重金属を吸収蓄積させた後にこの生物
体を除去することにより前記媒体を浄化することを特徴
とする重金属含有媒体の浄化方法に関する。本発明の上
記の浄化方法は、(5)前記形質転換生物体を、重金属
を含有する土壌に植え付けて生育させ、または重金属を
含有する媒体に投入して生育させる方法、及び(6)前
記形質転換生物体が単子葉植物または双子葉植物であ
り、重金属が鉛である浄化方法を含む。
【0010】
【発明の実施の態様】上述の通り、本発明は、チモシン
タンパク質をコードする遺伝子を原核生物や植物に導入
することにより、重金属の吸収及び/または蓄積能力を
高めた形質転換生物体を得、これを用いて重金属被汚染
物から重金属を吸収して除去するものである。以下、実
施態様に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0011】(A)形質転換生物体 (a)導入遺伝子 本発明で重金属の吸収能力を高めるために導入する遺伝
子はチモシンファミリー族に属するタンパク質をコード
する遺伝子である。チモシンは、哺乳動物体内で分泌さ
れるポリペプチドホルモンであり、α1及びβ類が知ら
れている。コードされるチモシンタンパク質は、これら
のチモシンファミリー族に属するものであればよいが、
チモシンβ類が好ましく、その例としては、チモシンβ
4、β8、β9等が挙げられる。これらは相同性の高いタ
ンパク質ファミリーを形成しており、そのいずれも用い
得るが、例えば、チモシンβ4が利用できる。チモシン
β4は5kDaのポリペプチドで、無脊椎動物から哺乳動物
までの細胞質中に豊富に存在している。ヒトチモシンβ
4のアミノ酸配列を配列番号1に、ノルウェーラットチ
モシンβ4のアミノ酸配列を配列番号2に示す。
【0012】チモシンは、アクチン結合性のタンパク質
としてよく知られているが、最近、チモシンβ4が動物
生体内で重金属と結合することが明らかになっている。
例えば、ヒト腎臓においてジアゼパム結合性インヒビタ
ーおよびチモシンβ4が鉛結合タンパク質として同定さ
れた(Quintanilla-Vega, B. et al. "Lead-binding pro
teins in brain tissue of environmentally lead-expo
sed persons" Chem.-Biol. Interact., 98, 193-209 (1
995))。また、チモシンβ4は、ヒト脳においても鉛と結
合することが報告されている(Galoyan,A.A. et al. "A
hypothalamicactivator of calmodulin-dependent enz
ymes is thymosin β4" Neurochem. Res., 17, 773-777
(1992))。
【0013】哺乳動物の腎臓や脳といった主要な標的器
官において、重金属と結合している低分子量のタンパク
質としては、例えば、ラットの腎臓において鉛によるヘ
ム合成経路の酵素σ-アミノレブリン酸脱水酵素(σ-AL
AD)活性阻害を減弱させる低分子量4量体からなる63
kDaのタンパク質)、α2 μ-グロブリン、核内封入体に
含まれる30kDaの酸性タンパク質等が同定されている
が、本発明では、これらの鉛結合性タンパク質のうち最
も分子量が小さく、またアミノ酸配列、塩基配列のいず
れもが既知であるチモシンを利用するものである。
【0014】本発明で、生物の形質転換に用いるチモシ
ンをコードする遺伝子について、その由来する動物の種
は特に限定されない。例えば、アミノ酸配列が既知であ
るヒトあるいはラットのチモシンをコードする遺伝子を
利用できる。なお、チモシンタンパク質が重金属と結合
する機構の詳細は不明であるが、配列番号1に示すよう
に、チモシンβ4はアスパラギン酸とグルタミン酸を多
く含んでおり、これらのカルボキシル基と重金属イオン
が結合し、キレート構造を形成しているとも推測され
る。従って、本発明で用い得る「チモシンをコードする
遺伝子」にはチモシンファミリーに属するタンパク質の
アミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸残基が
付加、欠失または置換されているタンパク質であって、
かつ重金属に結合する活性を有するタンパク質をコード
する遺伝子も本発明に含まれる。
【0015】これらの遺伝子は、その塩基配列のまま適
当な発現ベクターに組み込んで原核生物に導入しても良
いが、好ましくは1以上のコドンを、導入するべき生物
において使用頻度の高い等価のコドンに置換した合成遺
伝子を用いる。また、チモシンβ4は5kDaと低分子量で
あるため、大腸菌等の導入細胞において発現力が害され
たりターンオーバーが早いことが考えられる。かかる問
題を防ぐために、合成した遺伝子を1個(シングルチモ
シン:STb)だけでなく、2個(タブルチモシン:DTb)
または3個(トリプルチモシン:TTb)連結した融合遺
伝子を用いることが好ましい。
【0016】(b)形質転換生物 本発明でチモシンをコードする遺伝子を導入する生物
は、土壌等の媒体中において生育可能な生物であればよ
く、原核生物、植物等が含まれる。原核生物の種類は使
用時において有害な毒素を産生しない限り特に限定され
ない。例えば、大腸菌等の細菌類が含まれる。
【0017】植物としては、従来、重金属吸収能が認め
られてきた植物〔例えば、ヒマワリ(Pb)、セイタカア
ワダチソウ(Pb)、ブタクサ(Pb)、トウモロコシ(P
b)、バシクルモン(Pb)、バミューダグラス(Pb)、
ハウチワマメ(Pb)、コムギ(Pb)、ソルガム(Pb)、
インドカラシ(Pb,Cd,Cr,Cu)、ヘビノネゴザ(Pb,
Cd)、アブラナ(Cd,Zn)、スズメノヒエ(137Cs)、
ハタザオ(90Sr)、カヤツリグサ(U)、サツマイモ(C
u)等〕にも適用できるが、これら以外の単子葉植物
(例えば、イネ科植物)や双子葉植物等も含まれる。
【0018】これらの生物体への遺伝子の導入は、チモ
シンをコードする遺伝子(チモシン遺伝子またはこれを
上記(a)に従い改変した遺伝子)を適当なベクターに組
み込んで微生物あるいは植物体細胞に導入すればよい。
ベクターの調製やその細胞への導入等は常法に準じて行
なえばよい。例えば、原核生物へはバクテリオファージ
やプラスミドをベクターとして導入可能である。植物体
へはプラスミドをベクターとして導入可能である。プラ
ズミドの導入方法は、特に限定されず、直接接種による
方法、植物細胞に感染するバクテリアに導入した後、当
該バクテリアに植物体細胞を感染させる方法、電気刺激
による方法、リーフディスク法等を適宜選択して適用す
ることができる。
【0019】(B)重金属含有媒体の浄化方法 本発明の重金属浄化方法は、上記の形質転換体を重金属
を含む媒体と接触させて生育させ、前記遺伝子を発現さ
せることにより細胞内にてチモシンまたはその改変タン
パク質を産生させ、これにより媒体中の重金属を形質転
換体細胞中に吸収蓄積し、しかる後に、前記生物を分離
することにより行われる。
【0020】形質転換体と重金属を含む媒体(被汚染物)
とを接触させる方法は、後工程で生物体が分離可能であ
る限り限定されない。例えば、形質転換体が植物である
場合は、重金属汚染土壌や重金属汚染水に植物体を定
植、浸漬などして通常の条件により生育させればよい。
これによって、土壌中や汚染水等の媒体中から重金属が
その植物体に吸収蓄積され、重金属濃度を低減すること
ができる。重金属を吸収蓄積させた後は、適当な時点で
この植物体を刈り取って焼却処分して減容化するか、ま
たは植物体が多年草植物のように長寿命の場合はそのま
ま重金属を吸収させ続けることもできる。
【0021】形質転換体が微生物(例えば、原核生物)
の場合は、細胞をビーズ状、ハニカム状、チューブ状等
の固定化担体に固定し、これをタンクやパイプ等の反応
領域内に充填し、形質転換体を生育させつつ、被汚染物
またはその水溶液、懸濁液、スラリー等を導入して形質
転換体に重金属を吸収蓄積させる。あるいは、イオンは
通すが細胞体は通さない膜でタンクを2以上の領域に仕
切り、膜で仕切られた一方の領域に形質転換体を充填
し、他方に被汚染物質またはその水溶液、懸濁液等を導
入し、後者から前者に重金属を含む溶液を流通させて、
液中の重金属を形質転換体に吸収蓄積させる。所定の蓄
積量に達した後、菌体を分離して重金属を回収し、適
宜、滅菌の上、焼却処分などにより減容化するか、菌体
から重金属を溶出させて分離回収する。
【0022】重金属を含む媒体(被汚染物)は、液状、粉
粒状、スラリー状等のいずれでもよい。被汚染物が固形
物の場合は、これを水や適当な酸等で洗浄し、その洗浄
水について本発明を適用してもよい。従って、本発明
は、重金属を含む土壌、汚泥、湖沼や河川等の環境水、
廃水、溶液、粉塵、飛灰等に対して適用可能である。上
述のように、チモシンによる重金属の捕捉は、基本的に
は、キレート体の形成によるものと考えられ、鉛、カド
ミウム、銅、亜鉛、水銀、ニッケル、クロム等の2価乃
至3価の重金属に対し有効である。
【0023】
【実施例】実施例1 以下、原核生物として大腸菌を用いた実施例によって本
発明を具体的に示す。 I.実験材料と実験方法 (1)実験材料と試薬 制限酵素HindIII、NcoI、XbaI、salI、GeneTaq、T4 DNA
リガーゼ、T4 ポリヌクレオチドキナーゼ、クレノーフ
ラグメントおよびISOGENはニッポンジーン社より購入し
た。また、pT7 Blue T-ベクター、pET23ベクターはノバ
ジェン社より、pIG121ベクターはクローンテック社より
購入した。その他試薬は、全て特級のものを使用した。
塩基配列解析には、パーキン・エルマ社製のBigDye Pri
mer Cycle Sequencing FS Ready Reaction kitおよびAB
I Prism 310 genetic analyzerを用いた。プリントグラ
フはアトー社のAE-6915型を、また分光光度計は島津製
作所のUV-1600を用いた。
【0024】(2)チモシンβ4遺伝子の合成 ヒトチモシンβ4のcDNA配列をもとに、原核生物の
細胞内での発現を可能とするために、原核生物で使われ
ている頻度の高いコドンに置換した改変チモシンβ4
伝子を設計した〔配列番号3;図1(a)〕。これは、全長
138bpのチモシンβ4遺伝子の5′側より50bpにhin
dIII認識部位を導入し、また、遺伝子を連結可能にする
ため塩基配列の両末端にNcoI認識部位を付加したもので
ある。
【0025】二本鎖DNAを得るために、HindIII認識
部位から前半、後半部分に分けて下記の合計4種類のオ
リゴヌクレオチドプライマーaTb4-1、aTb4-2、aTb4-3お
よびaTb4-4を作製した(図1(b))。aTb4-1およびaTb4-
2は前半部分に、aTb4-3およびaTb4-4は後半部分に対応
しており、図1(b)の枠で囲んで示したように、それぞ
れ10塩基対分相補している。
【0026】 aTb4-1 Primer: 5′-GCCATGGCTGACAAACCTGATATGGCTGAGATCG-3′(配列番号4) aTb4-2 Primer: 5′-GAAGCTTGGACTTATCGAACTTCTCGATCTCAGC-3′(配列番号5) aTb4-3 Primer: 5′-GAAGCTTAAGAAGACAGAGACTCAAGAGAAGAATCCACTGCCTTCCAAGG-3′(配列番号6) aTb4-4 Primer: 5′-GCCATGGATTCGCCTGCTTGCTTCTCCTGTTCAATAGTTTCCTTGGAAGG-3′(配列番号7)
【0027】一回目のPCRでプライマー同士を結合さ
せ、二本鎖DNAを合成し、二回目の反応で一回目の反
応液の一部を鋳型として目的DNA断片を増幅した。P
CR(1回目)は、10mM Tris/HCl、pH8.8、50mM
KCl、1.5mM MgCl2、0.1%Triton X-100、
0.2mMのdATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、2mMの各プラ
イマーおよびGene Taqを含む50μLで行った。反応プ
ログラムは、94℃30秒、44℃3分、72℃30秒
とした。PCR(2回目)は1回目の反応液の10倍希
釈液1μL、10mM Tris/HCl、pH8.8、50mM KC
l、1.5mM MgCl2、0.1% Triton X-100、0.2
mMのdATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、0.2mMのプライマ
ーおよびGene Taqを含む50μLで行った。反応プログ
ラムは94℃1分、72℃1分を30サイクルとした。
【0028】次に、前半、後半部分に分けて合成した上
記PCR産物をそれぞれHindIIIで消化した後、T4 DNA
リガーゼにより連結し、これを鋳型にaTb4-1とaTb4-4を
用いて、さらにPCRを行い、チモシンβ4遺伝子の全
長を得た。PCRはT4 DNAリガーゼにより連結して得た
二本鎖DNAを含む反応液3μLとaTb4-1およびaTb4-4
プライマーを用い、94℃30秒、72℃30秒を30
サイクルのプログラムにより行った。
【0029】各々のPCR産物について、5%PAGEで精
製後pT7 BIue T-ベクターに挿入しサンガー法による塩
基配列解析を行った。終止コドンには、XbaI認識部位
(AGATCT)が導入されている下記のストップコドンリン
カー: 5′-CTAACTAATTAGATCTTAATTAGTTAG-3′(配列番号8) を付加した。
【0030】ストップコドンリンカーのリン酸化の反応
は、39.3μM ストップコドンリンカー、50mM Tris
/HCl、pH7.6、10mM MgCl2、5mM DTT(ジチ
オスレイトール)、0.1mMスペルミジン(spermidin
e)、0.1mM EDTA、10mM dNTPおよびT4 ポリヌクレオ
チドキナーゼを含む10μLで37℃4時間行った。そ
の反応液に20mM Tris酢酸,30mM 酢酸マグネシウム
10μLを加え100℃3分で熱変性した後除冷し、二
本鎖にした。チモシンβ4遺伝子の後半部分を含むpT7 B
lue T-ベクターはNcoIで消化後、クレノーフラグメント
により平滑化した。ここに二本鎖ストップコドンリンカ
ーを挿入した。
【0031】(3)発現プラスミドの作製 大腸菌での発現誘導・チモシンβ4遺伝子の鉛吸収能を
評価するために、大腸菌の発現系を用いた。チモシンβ
4は合成遺伝子そのまま(STb4)、合成遺伝子を2個連
結した(DTb4)または3個連結した(TTb4)融合遺伝子
を用い、発現ベクター(pET23d)に構築した(図2)。
具体的操作は以下の通りである。
【0032】チモシンβ4cDNA前半部分はHindIIIとNco
Iを用いて、ストップコドンを付加した後半部分はHindI
IIはSalIを用いてそれぞれpT7 Blue T-ベクターから切
り出した。これらをpET23dに挿入し、連結させた。チモ
シンβ4遺伝子を2個または3個連結させたベクターを
作製するためには、さらに両端にNcol認識部位を持つ全
長断片を挿入した。
【0033】(4)大腸菌の形質転換と発現誘導 作製したプラスミドを大腸菌BL21(DE3)に導入し、形
質転換体をIPTG(イソプロピル-β-D-チオガラクトピ
ラノシド)により発現誘導した。発現状況を調べるため
に、発現誘導後30分、1時間および2時間の菌体から
全RNAをlSOGENによって抽出した。全RNA(5μ
g)をグリオキサル処理後、1.2%アガロースゲルで電
気泳動により分離した。ゲルを100mg/L臭化エチジウ
ム水溶液で染色後、プリントグラフで検出した。その結
果、各チモシンβ4遺伝子を導入した菌体特異的なバン
ドを確認した。
【0034】(5)大腸菌の致死鉛濃度の検討 pET23dベクターを導入したBL21(DE3)を用い、菌体の鉛
存在による増殖の影響を調べた。形質転換体のシングル
コロニーを100μg/mLのアンピシリンを含む3mLのL
B培地(LA培地)で各々37℃一晩振とう培養した。
それらの一部(20μL)を硝酸鉛Pb(NO32を各々
0、1、5、10または20mM含む新しい3mLのLA培
地に移し、28℃で28時間振とう培養した。Pb(N
32下での培養開始時および28時間後の菌体のOD
600値を分光光度計により測定した。各形質転換体につ
いて3連で調査したところ、1mM Pb(NO32下で
の増殖は0mMの時とあまり変わらず、10mMでは、増殖
は強く抑制され、20mMではほとんど増殖が認められな
かった。よって20mMをこの菌株の致死濃度と定め、以
下の実験は1〜10mMの範囲で行った。
【0035】(6)チモシンβ4遺伝子発現による鉛吸
収能力の評価 形質転換体のシングルコロニーをLA培地で37℃一晩
振とう培養した。その一部(200μL)を100μg/m
Lの新しい10mLのLA培地に移し、37℃で振とう培
養した。融合遺伝子の発現を誘導するためには、OD
600値が0.6の時に40μLの0.1Mイソプロピル-β-
D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加した。遺伝
子発現を30℃で2時間誘導した後、1,000×g 90分
間の遠心により大腸菌を回収した。それらを10mLの
1、3、5、7または10mMのPb(NO32水溶液に
再懸濁し、30℃2時間振とう培養した。3,000×g10
分間の遠心により上清と大腸菌を分離した。
【0036】鉛は試料溶液にヨウ化カリウム(KI)溶
液を加え、ヨウ化鉛(Pbl2;黄色難容性沈澱)により検
出した。1〜5mMのPb(NO32処理を行った上清1
mLには1M−KI溶液を10μL加え、7または10mMの
Pb(NO32処理を行った上清1mLには1M−KI溶液
を2μL加え、生じたPbI2の量について分光光度計に
よりOD600値を測定した。大腸菌1×108当たりの鉛
吸収率を算出した結果(%)を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】上記の結果から、チモシンβ4をコードす
る遺伝子を有する大腸菌は鉛吸収能力を有することが確
認された。チモシンβ4遺伝子の連結数の違いによる効
果をみると、1〜5mM間での鉛吸収量はSTb4<DTb4<TT
b4という傾向が見られる。これはチモシンβ4の存在比
によることが推測できる。しかし、濃度が7mMまたは1
0mMになると、これらの差はなくなってくる。10mM
Pb(NO32では大腸菌の増殖が強く阻害されること
から、これらの濃度での鉛吸収率の低下は大腸菌の生育
限界濃度であったためと考えられる。
【0039】実施例2 実施例1で作成した大腸菌発現用プラスミドpET23dベク
ターからチモシンβ4遺伝子(STb4、DTb4、TTb4)を切
り出し、図3に示すようにpIG121のGUS領域上流のカリ
フラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(35SPR
O)に連結した。3′側シグナルにはノパリンシンター
ゼのターミネーター領域(NOS TER)を用いた。
【0040】これらのプラスミドをアグロバクテリウム
EHA105に導入し、イネ(日本晴)カルスに感染させるこ
とにより、チモシン遺伝子で形質転換された植物体を作
成した。なおこの例では、遺伝子導入後も順調に生育が
可能であったが、前述のようにチモシンはアクチン結合
性タンパク質であり、真核生物に導入した場合は、G−
アクチンの重合阻害作用を介して細胞骨格(ミクロフィ
ラメント)の形成不良や構造変化を招き生物体の持続的
な生育が不可能となる可能性もある。従って、植物体へ
の導入については個別の種に応じた導入遺伝子の構成等
を考慮する必要がある。
【0041】
【発明の効果】本発明により、チモシン遺伝子を導入し
た生物は重金属吸収能力を有する。また、形質転換後も
通常の生育条件で生育可能である。このため、重金属汚
染媒体と接触させて培養することにより媒体中の重金属
を細胞内に吸収蓄積して媒体を浄化する能力を有する。
従って、この形質転換体を用いることにより従来困難で
あった土壌、湖沼、河川の重金属汚染の低コストでの効
率的かつ継続的な浄化処理が可能となる。
【0042】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Taiheiyo Cement Corporation <120> Method for purging heavy-metals polluted media using transformant having heavy metal absorbing properties <130> OCP3315 <140> 2000-03-31 <160> 8 <170> PatentIn Ver. 2.0 <210> 1 <211> 44 <212> PRT <213> Homo sapiens <300> <301> Hisashi Gondo; Jiro Kudo; James W. White; Cathy Barr; Peter Selvan ayagam; and Grady F. Saunders <302> Differntial expression of the human thymosin-beta4 gene in lymphoc ytes, macrophages and granulocytes <303> The Journal of Immunology <304> 139 <305> 11 <306> 3840-3848 <307> 1987-12-01 <400> 1 Met Ser Asp Lys Pro Asp Met Ala Glu Ile Glu Lys Phe Asp Lys Ser 1 5 10 15 Lys Leu Lys Lys Thr Glu Thr Gln Glu Lys Asn Pro Leu Pro Ser Lys 20 25 30 Glu Thr Ile Glu Gln Glu Lys Gln Ala Gly Glu Ser 35 40 <210> 2 <211> 44 <212> PRT <213> Rattus norvegicus <300> <301> Michael J. Atkinson; Mason F. Freeman; and Henry M. Kronenberg <302> Thymosin beta4 is expressed in ROS 17/2.8 osteosarcoma cells in a regulated manner <303> Molecular Endocrinology <304> 4 <305> 1 <306> 69-74 <307> 1990-01 <400> 2 Met Ser Asp Lys Pro Asp Met Ala Glu Ile Glu Lys Phe Asp Lys Ser 1 5 10 15 Lys Leu Lys Lys Thr Glu Thr Gln Glu Lys Asn Pro Leu Pro Ser Lys 20 25 30 Glu Thr Ile Glu Gln Glu Lys Gln Ala Gly Glu Ser 35 40 <210> 3 <211> 138 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Modified thymosin beta-4 gene <400> 3 ccatggctga caaacctgat atggctgaga tcgagaagtt cgataagtcc aagcttaaga 60 agacagagac tcaagagaag aatccactgc cttccaagga aactattgaa caggagaagc 120 aagcaggcga atccatgg 138 <210> 4 <211> 34 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: aTb4-1 Primer <400> 4 gccatggctg acaaacctga tatggctgag atcg 34 <210> 5 <211> 34 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: aTb4-2 Primer <400> 5 gaagcttgga cttatcgaac ttctcgatct cagc 34 <210> 6 <211> 40 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: aTb4-3 Primer <400> 6 gaagcttaag aagacagaga ctcaagagaa gaatccactg ccttccaagg 40 <210> 7 <211> 40 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: aTb4-4 Primer <400> 7 gccatggatt cgcctgcttg cttctcctgt tcaatagttt ccttggaagg 40 <210> 8 <211> 27 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: stop codon linker <400> 8 ctaactaatt agatcttaat tagttag 27
【図面の簡単な説明】
【図1】 ヒトチモシンβ4遺伝子を用いた合成遺伝子
(a)とその合成法の概略(b)を示す模式図。
【図2】 チモシンβ4遺伝子及びその融合遺伝子の構
造を示す模式図。
【図3】 チモシンβ4遺伝子を植物細胞に導入するた
めに用いるプラスミドの構成を示す模式図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C02F 11/02 A62D 3/00 ZAB 4D040 C12N 1/21 C12R 1:91) 4D059 5/10 C12N 15/00 ZNAA // A62D 3/00 ZAB B09B 3/00 ZABE (C12N 15/09 ZNA C12N 5/00 C C12R 1:91) C12R 1:91) Fターム(参考) 2B030 AA02 AB03 AD20 CA06 CA17 CA19 CB03 CD02 CD07 CD09 CD17 2E191 BA02 BB01 BC05 BD20 4B024 AA08 AA17 BA80 CA04 CA05 CA06 CA07 CA10 CA20 DA01 DA05 DA06 EA04 GA11 GA19 4B065 AA11X AA26X AA88X AA93Y AB01 AC14 AC16 AC20 BA02 BA16 BB01 BB02 BC01 BC03 BC26 BD50 CA24 CA53 CA56 4D004 AA41 AB03 CA17 CC07 CC15 4D040 CC01 DD01 DD20 4D059 AA11 BA22

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チモシン遺伝子を導入することにより重
    金属類に対する吸収蓄積能力を高めたことを特徴とする
    形質転換生物体。
  2. 【請求項2】 形質転換生物体が原核生物または植物で
    ある請求項1に記載の形質転換生物体。
  3. 【請求項3】 前記遺伝子が、チモシンβ4遺伝子であ
    る請求項1または2に記載の形質転換生物体。
  4. 【請求項4】 チモシン遺伝子を導入した形質転換生物
    体を重金属含有媒体と接触させながら生育させ、重金属
    を吸収蓄積させた後にこの生物体を除去することにより
    前記媒体を浄化することを特徴する重金属類の浄化方
    法。
  5. 【請求項5】 前記形質転換生物体を、重金属を含有す
    る土壌に植え付けて生育させ、または重金属を含有する
    媒体に投入して生育させる請求項4の浄化方法。
  6. 【請求項6】 前記形質転換生物体が単子葉植物または
    双子葉植物であり、重金属が鉛である請求項5の浄化方
    法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005100268A1 (ja) * 2004-04-15 2005-10-27 Nippon Sheet Glass Company, Limited ヒ素の無害化方法
JP2008086225A (ja) * 2006-09-29 2008-04-17 National Institute Of Advanced Industrial & Technology タンパク質の発現方法
JP5216967B2 (ja) * 2006-02-09 2013-06-19 国立大学法人愛媛大学 重金属に汚染された媒体の浄化方法

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