JP2008085114A - 固体電解コンデンサおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
表面に陽極酸化皮膜が形成された陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、導電性高分子を保持させた固体電解コンデンサにおいて、
前記コンデンサ素子に導電性高分子とともにポリビニルエーテル骨格を有する化合物を含有させたことを特徴とする固体電解コンデンサであり、
前記コンデンサ素子を、モノマーと酸化剤とポリビニルエーテル骨格を有する化合物とを混合した溶液に浸漬し、化学重合させる工程を含むことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法である。
【選択図】図1
Description
ここで、陰極側の電気的な引き出しは、導電性を有する電解質層によって行われる。つまり、電解コンデンサにおいて真の陰極はこの電解質層が担うこととなる。この真の陰極として機能する電解質層は、電解コンデンサの電気特性に大きな影響を及ぼすため、数々の電解質層の形成方法が提案されている。
このような電解コンデンサのうち、電解液を用い、耐電圧向上のため、ポリビニルエーテル骨格を有する化合物を溶解させたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、上記の電解コンデンサは液状の電解質を用いるため、高周波領域におけるインピーダンス特性の悪化は避けられなかった。
例えば、陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回し、当該セパレータに導電性高分子を保持させて巻回型の固体電解コンデンサを構成することが検討されている。このような巻回型の固体電解コンデンサでは電極面積を広く確保できるという利点がある。なお、陽極箔としてアルミニウム等が用いられる。
まず、素子作製工程において、化成済みの陽極箔と陰極箔とがマニラ紙等の紙繊維からなるセパレータを介して巻回されたコンデンサ素子が作製される。
そして、このように作製されたコンデンサ素子の陽極箔に化成処理が施される修復化成と、コンデンサ素子を200℃以上の温度に加熱する熱処理とが行われる。
その後、保持層形成工程において化学重合が行われ、コンデンサ素子のセパレータ層に導電性高分子が保持される。このようにして、コンデンサ素子において導電性高分子を保持した保持層が形成される。
なお、上記の熱処理は、紙繊維を細くすることによりセパレータ層の密度を小さくして、ESR(Equivalent Series Resistance;等価直列抵抗)を低減する目的で行われる。
しかしながら、このような熱処理が施されると、コンデンサ素子の巻きが緩んで耐電圧が低下し、漏れ電流が増大したり、エージング工程においてショートパンクが発生する等の問題が生じるおそれがある。
また、上記工程以外でも化学重合工程の加熱処理等、コンデンサ素子に熱処理が施されると、電極箔に加わる熱的ストレスや機械的ストレスによって、漏れ電流が増大するおそれがある。
前記コンデンサ素子に、導電性高分子とともにポリビニルエーテル骨格を有する化合物を含有させたことを特徴とする。
また、R2およびR3は、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のアラルキルをそれぞれ表す。R2およびR3同士は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。
また、nは、500以下の自然数を表す。ここで、nが2以上の場合にR1同士は互いに同一であっても異なっていてもよい。また、R2同士は互いに同一であっても異なっていてもよく、R3同士も互いに同一であっても異なっていてもよい。
前記コンデンサ素子を、少なくともモノマー、酸化剤、ドーパントのうちいずれかを含む溶液にポリビニルエーテル骨格を有する化合物を混合した溶液に浸漬し、化学重合させる工程を含むことを特徴とする。
そして、固体電解コンデンサを構成するアルミニウム電極箔の酸化皮膜は、電解コンデンサの使用温度が上昇し、印加される電流または電圧が高くなると、化学反応を起こし、劣化して耐電圧が低下するが、本発明による化合物を導電性高分子とともに電極間に存在させれば、その構造中に存在するエーテル結合の酸素原子が酸化皮膜と配位結合して、電極箔表面に存在することで、電極箔の化学反応を抑え、結果として固体電解コンデンサの耐電圧を向上できると考えられる。
本発明によるポリビニルエーテル骨格を有する化合物を導電性高分子内に含有させることで、ESRが低減され、耐電圧が高く、漏れ電流の小さい固体電解コンデンサを提供することが可能となる。また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法によると、かかる固体電解コンデンサを製造することが可能となる。
図1に示すように、本実施形態に係る固体電解コンデンサに用いられるコンデンサ素子4は、陽極箔1と陰極箔3とを備えており、陽極箔1と陰極箔3とがセパレータ2を介して巻回された構造を有する。
陽極箔1は、アルミニウム等の弁作用金属で形成されており、図2に示すように、陽極箔1の表面はエッチング処理により粗面化されるとともに酸化皮膜(図示せず)が形成されている。陰極箔3は、陽極箔1と同様、アルミニウム等で形成されており、その表面も粗面化されている。なお、粗面化は、エッチング処理に替えて蒸着か塗布によって行ってもよい。
このような導電性高分子7は、アニリンもしくはその誘導体、ピロールもしくはその誘導体、またはチオフェンもしくはその誘導体の化学重合により生成される。
次に、図1〜3を参照して、本発明を適用した固体電解コンデンサの製造方法を説明する。
次に、粗面化された陽極箔1に化成処理を施して酸化皮膜を形成する。そして、巻回工程(素子作製工程)において、酸化皮膜が形成された陽極箔1と陰極箔3にそれぞれ電極タブを介してリード線5、6を接続するとともに、これら陽極箔1と陰極箔3とをセパレータ2を介して巻回し、円筒状のコンデンサ素子4を作製する。
また、モノマーとドーパントとを混合した溶液をコンデンサ素子に含浸し、続いて、モノマーと酸化剤との混合溶液をコンデンサ素子に含浸し、化学重合させてもよい。
さらに、モノマー液をコンデンサ素子に含浸し、続いて、ドーパントと酸化剤とを混合した液をコンデンサ素子に含浸し、化学重合させてよい。
また、ドーパントと酸化剤を混合した溶液をコンデンサ素子に含浸し、続いて、モノマー溶液をコンデンサ素子に含浸し、化学重合させてもよい。
上記において、ポリビニルエーテル骨格を有する化合物はどの溶液に添加してもよい。
例えば、1,5−ナフタレンジスルホン酸、1,6−ナフタレンジスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、2,6−ナフタレンジスルホン酸、2,7−ナフタレンジスルホン酸、2−メチル−5−イソプロピルベンゼンスルホン酸、4−オクチルベンゼンスルホン酸、4−ニトロトルエン−2−スルホン酸、m−ニトロベンゼンスルホン酸、n−オクチルスルホン酸、n−ブタンスルホン酸、n−ヘキサンスルホン酸、o−ニトロベンゼンスルホン酸、p−エチルベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、p−デシルベンゼンスルホン酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−ニトロベンゼンスルホン酸、p−ペンチルベンゼンスルホン酸、エタンスルホン酸、カンファースルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、アセチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、トリクロロベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ハイドロオキシベンゼンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、メタンスルホン酸等があり、その塩としては、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、銀塩、銅塩、鉄塩、アルミニウム塩、セリウム塩、タングステン塩、クロム塩、マンガン塩、スズ塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、エチルメチルアンモニウム塩、ジエチルメチルアンモニウム塩、ジメチルエチルアンモニウム塩、トリエチルメチルアンモニウム塩、トリメチルエチルアンモニウム塩、ジエチルジメチルアンモニウム塩、プロピルアンモニウム塩、ジプロピルアンモニウム塩、イソプロピルアンモニウム塩、ジイソプロピルアンモニウム塩、ブチルアンモニウム塩、ジブチルアンモニウム塩、メチルプロピルアンモニウム塩、エチルプロピルアンモニウム塩、メチルイソプロピルアンモニウム塩、エチルイソプロピルアンモニウム塩、メチルブチルアンモニウム塩、エチルブチルアンモニウム塩、テトラメチロールアンモニウム塩、テトラ−n−ブチルアンモニウム塩、テトラ−sec−ブチルアンモニウム塩、テトラ−t−ブチルアンモニウム塩、ピペリジウム塩、ピロリジウム塩、モノホリニウム塩、ピペラジニウム塩、ピリジニウム塩、α−ピコリニウム塩、β−ピコリニウム塩、γ−ピコリニウム塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、ピロリニウム塩、アンモニウム塩等がある。
そして、エージングを行う。エージング工程では、例えば、温度が100℃の条件下で60分間、定格電圧を印加する。これによって固体電解コンデンサが完成する。
以上説明したように、本形態では、導電性高分子とともにポリビニルエーテル骨格を有する化合物を含有している。
かかるポリビニルエーテル骨格を有する化合物は、その構造中に存在するエーテル結合の酸素原子がアルミニウム酸化皮膜と配位結合して、電極表面に存在することで、電極箔の化学反応を抑え、結果として固体電解コンデンサの耐電圧を向上させることができる。
それ故、ESRを損なうことなく、漏れ電流の低減、および耐電圧の向上を可能とした固体電解コンデンサを提供することができる。
実施例1では、陽極箔(化成電圧47V)と陰極箔とを、ヘンプ紙の単抄からなるセパレータを介して巻回することにより、円筒形のコンデンサ素子を得る。
次に、アジピン酸二アンモニウム水溶液に浸漬し、修復化成工程として、47Vの電圧印加を60分間行った後、コンデンサ素子を300℃で90分間の熱処理を行った。
次に、3,4−エチレンジオキシチオフェンとp−トルエンスルホン酸鉄(III)と下記の化学式3で表される化合物Aとをn−ブタノールに溶解した溶液(モノマーと酸化剤と化合物Aとブタノールの重量比 1:1:0.01:1)にコンデンサ素子を浸漬後、温度150℃の条件で5分間保持して化学重合によりPEDOTを形成する。
このようにして得られたコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納し、開口部をゴムパッキング等により密封した後、エージングを行い定格16V−220μFの固体電解コンデンサを作製した。
実施例2では、陽極箔(化成電圧47V)と陰極箔とを、マニラ麻紙からなるセパレータを介して巻回することにより、円筒形のコンデンサ素子を得る。次に、実施例1と同様の修復化成と熱処理を行った後、3,4−エチレンジオキシチオフェンとp−トルエンスルホン酸鉄(III)と下記の化学式4で表される化合物Bとをn−ブタノールに溶解した溶液(モノマーと酸化剤と化合物Bとブタノールの重量比 1:1:0.05:1)に上記コンデンサ素子を浸漬後、温度200℃の条件で6分間保持して化学重合によりPEDOTを形成する。
このようにして得られたコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納し、実施例1と同様にして、定格16V−220μFの固体電解コンデンサを作製した。
実施例3では、実施例1と同様にして作製したコンデンサ素子に実施例1と同様の修復化成と熱処理を行った後、p−トルエンスルホン酸鉄(III)と下記の化学式5で表される化合物Cとをn−ブタノールに溶解した溶液(酸化剤と化合物Cとブタノールの重量比 2:0.05:3)に上記コンデンサ素子を浸漬後、温度150℃の条件で10分間保持してブタノールを蒸散させ、その後、3,4−エチレンジオキシチオフェンをメタノールに溶解した溶液(モノマーとメタノールの重量比 1:1)に浸積し、温度200℃の条件で6分間保持して化学重合によりPEDOTを形成する。
このようにして得られたコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納し、実施例1と同様にして、定格16V−220μFの固体電解コンデンサを作製した。
実施例4では、実施例1と同様にして作製したコンデンサ素子に実施例1と同様の修復化成と熱処理を行った後、p−トルエンスルホン酸鉄(III)をn−ブタノールに溶解した溶液(酸化剤とブタノールの重量比 2:3)にコンデンサ素子を浸漬後、温度180℃の条件で5分間保持してブタノールを蒸散させ、その後、3,4−エチレンジオキシチオフェンと下記の化学式6で表される化合物Dとをメタノールに溶解した溶液(モノマーと化合物Dとメタノールの重量比 1:0.01:1)を浸積し、温度200℃の条件で6分間保持して化学重合によりPEDOTを形成する。
このようにして得られたコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納し、実施例1と同様にして、定格16V−220μFの固体電解コンデンサを作製した。
従来例1では、陽極箔(化成電圧47V)と陰極箔とを、ヘンプ紙の単抄からなるセパレータを介して巻回することにより、円筒形のコンデンサ素子を得る。
次に、実施例1と同様の修復化成と熱処理を行った後、3,4−エチレンジオキシチオフェンとp−トルエンスルホン酸鉄(III)とをn−ブタノールに溶解した溶液(モノマーと酸化剤とブタノールの重量比 1:1:1)にコンデンサ素子を浸漬後、温度150℃の条件で5分間保持して化学重合によりPEDOTを形成する。
このようにして得られたコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納し、実施例1と同様にして、定格16V−220μFの固体電解コンデンサを作製した。
従来例2では、陽極箔(化成電圧47V)と陰極箔とを、マニラ麻紙からなるセパレータを介して巻回することにより、円筒形のコンデンサ素子を得る。
次に、実施例1と同様の修復化成と熱処理を行った後、3,4−エチレンジオキシチオフェンとp−トルエンスルホン酸鉄(III)とをn−ブタノールに溶解した溶液(モノマーと酸化剤とブタノールの重量比 1:1:1)にコンデンサ素子を浸漬後、温度150℃の条件で5分間保持して化学重合によりPEDOTを形成する。
このようにして得られたコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納し、実施例1と同様にして、定格16V−220μFの固体電解コンデンサを作製した。
上記の効果は、ヘンプ紙の単抄からなるセパレータを使用した場合も、マニラ麻紙からなるセパレータを使用した場合も、同様であった。
上記の実施例においては、PEDOTを固体電解質として用いたが、PEDOT以外の公知の導電性高分子(例えばポリアニリンやポリピロール)を固体電解質として用いた場合にも同様の効果が得られることが確認された。
また、上記の実施例においては、1液法および2液法を用いて実施されているが、上記の実施例以外の2液法および3液法を用いた場合にも同様の効果が得られた。
2 セパレータ
3 陰極箔
4 コンデンサ素子
5 陽極リード棒
6 陰極リード棒
7 導電性高分子
Claims (4)
- 表面に陽極酸化皮膜が形成された陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、導電性高分子を保持させた固体電解コンデンサにおいて、
前記コンデンサ素子に、導電性高分子とともにポリビニルエーテル骨格を有する化合物を含有させたことを特徴とする固体電解コンデンサ。 - 前記ポリビニルエーテル骨格を有する化合物が、下記の化学式1および化学式2の何れかで表されるものであることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
R1は、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表し、
R2およびR3は、互いに同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のアラルキルをそれぞれ表し、
nは500以下の自然数を表し、
nが2以上の場合にR1同士は互いに同一であっても異なっていてもよく、R2同士は互いに同一であっても異なっていてもよく、R3同士は互いに同一であっても異なっていてもよい。 - 前記導電性高分子が、アニリンもしくはその誘導体、ピロールもしくはその誘導体、またはチオフェンもしくはその誘導体を重合してなることを特徴とする請求項1または2に記載の固体電解コンデンサ。
- 表面に陽極酸化皮膜が形成された陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に導電性高分子を保持させる固体電解コンデンサの製造方法において、
前記コンデンサ素子を、少なくともモノマー、酸化剤、ドーパントのうちいずれかを含む溶液にポリビニルエーテル骨格を有する化合物を混合した溶液に浸漬し、化学重合させる工程を含むことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
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