JP2008084818A - アルカリ蓄電池用水素吸蔵合金及びアルカリ蓄電池 - Google Patents

アルカリ蓄電池用水素吸蔵合金及びアルカリ蓄電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 アルカリ蓄電池の負極に使用する希土類元素とNiとMgとを含むアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を改善し、アルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の水素吸蔵能力を向上させると共にアルカリ蓄電池のサイクル寿命を向上させる。
【解決手段】 アルカリ蓄電池の負極に、液体急冷法により急冷されて製造された水素吸蔵合金であって、一般式Ln1-xMgxNia-b-cAlbc(式中、LnはY,Zrを含む
希土類元素から選択される少なくとも1種の元素、ZはV,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Fe,Co,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,P及びBから選択される少なくとも1種の元素であり、0.05≦x<0.25、2.8≦a≦3.9、0<b≦0.3
0、0≦c≦0.25の条件を満たす。)で表されるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用いた。
【選択図】 図1

Description

この発明は、正極と、水素吸蔵合金を用いた負極と、アルカリ電解液とを備えたアルカリ蓄電池及びこのアルカリ蓄電池の負極に使用するアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金に係り、特に、アルカリ蓄電池の負極に使用するアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を改善し、水素吸蔵合金の水素吸蔵能力を向上させると共に、アルカリ蓄電池におけるサイクル寿命を向上させるようにした点に特徴を有するものである。
従来、アルカリ蓄電池としては、ニッケル・カドミウム蓄電池が広く使用されていたが、近年においては、ニッケル・カドミウム蓄電池に比べて高容量で、またカドミウムを使用しないため環境安全性にも優れているという点から、負極に水素吸蔵合金を用いたニッケル・水素蓄電池が注目されるようになった。
そして、このようなニッケル・水素蓄電池からなるアルカリ蓄電池が各種のポータブル機器に使用されるようになり、このアルカリ蓄電池をさらに高性能化させることが期待されている。
ここで、このようなアルカリ蓄電池においては、その負極に使用する水素吸蔵合金として、一般にCaCu5型の結晶を主相とする希土類−ニッケル系水素吸蔵合金や、Ti,Zr,V及びNiを含むラーベス相系の水素吸蔵合金等が一般に使用されている。
しかし、上記の水素吸蔵合金は、水素吸蔵能力が必ずしも十分であるとはいえず、アルカリ蓄電池をさらに高容量化させることが困難であった。
そして、近年においては、上記の希土類−ニッケル系水素吸蔵合金における水素吸蔵能力を向上させるために、上記の希土類−ニッケル系水素吸蔵合金にマグネシウムを含有させて、CaCu5型以外の結晶構造を有する水素吸蔵合金を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、上記のような希土類元素とニッケルとマグネシウムとを含む水素吸蔵合金を製造するにあたり、従来から一般的に用いられる金型鋳造法によって製造した場合、マグネシウムとその他の元素との融点や比重等の違いから、均質な組織を有する水素吸蔵合金を作製することが非常に困難であり、この水素吸蔵合金における耐食性などの特性が低下し、アルカリ蓄電池におけるサイクル寿命が低下するなどの問題があった。
このため、近年においては、上記のような希土類元素とニッケルとマグネシウムとを含む水素吸蔵合金を液体急冷法によって製造し、均質な組織を有する水素吸蔵合金を作製することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、このように希土類元素とニッケルとマグネシウムとを含む水素吸蔵合金を液体急冷法によって製造するようにした場合においても、この水素吸蔵合金の組成が適切でないと、依然として、アルカリ蓄電池におけるサイクル寿命が低下したり、水素吸蔵合金の水素吸蔵能力が低下するなどの問題があった。
特開2002−69554号公報 特開2004−115870号公報
この発明は、負極に希土類元素とニッケルとマグネシウムとを含むアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を使用したアルカリ蓄電池における上記のような問題を解決することを課題とするものであり、上記の希土類元素とニッケルとマグネシウムとを含むアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金が均質な組織を有すると共に適切な組成を有するようにし、このアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の水素吸蔵能力を向上させ、このようなアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を負極に用いたアルカリ蓄電池におけるサイクル寿命を向上させると共に、高容量のアルカリ蓄電池が得られるようにすることを課題とするものである。
この発明におけるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金においては、上記のような課題を解決するため、液体急冷法により急冷されて製造された水素吸蔵合金であって、一般式Ln1-xMgxNia-b-cAlbc(式中、LnはY,Zrを含む希土類元素から選択される少なくとも1種の元素、ZはV,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Fe,Co,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,P及びBから選択される少なくとも1種の元素であり、0.05≦x<0.25、2.8≦a≦3.9、0<b≦0.30、0≦c≦0.25の条件を満たす。)で表される組成を有するようにした。
ここで、上記のようなアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を液体急冷法により急冷させて製造するにあたっては、公知の液体急冷法を用いることができる。液体急冷法とは、合金溶融物を超急冷して合金鋳塊を作製する方法であり、例えば、合金溶融物を高速回転するロール上に射出させるロール法(単ロール法、双ロール法)等が挙げられる。そして、合金溶融物の冷却速度が、従来の金型鋳造法では10K/s程度であるのに対して、液体急冷法では102〜103K/s以上であり、通常は104〜106K/s程度である。
そして、このように液体急冷法により急冷させて上記の一般式に示される組成になったアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を製造することにより、結晶構造がCe2Ni7型又はこれに類似した構造であって、高い結晶性を有する均質な構造のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金が得られる。
また、上記のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金において、Mgの割合が多くなりすぎると、上記のように液体急冷法によって製造しても、合金組織が均質化されず、耐食性が低下する一方、Mgの割合が少ないと、その結晶構造が大きく変化し、上記のCe2Ni7型又はこれに類似した結晶構造を維持することが困難になって水素吸蔵能力が大きく低下する。このため、上記のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金においては、上記の一般式におけるMgの割合を示すxの値が、上記のように0.05≦x<0.25の条件を満たすことが必要であり、好ましくは0.05≦x≦0.20の条件を満たすようにする。
また、上記のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金において、Mgの割合が多くなると高容量になり、Alの割合が多くなると耐食性が向上する傾向がある。ここで、上記の合金組織をEPMAで観察した結果、Mg濃度が高い部分ではAl濃度が低くなる一方、Al濃度が高い部分ではMg濃度が低くなり、MgとAlとは逆の濃度分布を示し、両者は混ざりにくい性質を有し、上記の合金組成におけるMgとAlの合計量が多い場合には、偏析が起こりやすくなる。このため、MgとAlの合計量が多い組成の水素吸蔵合金においては、合金組織を均質化させる効果に優れた液体急冷法の効果が大きくなり、特に、上記の一般式におけるMgとAlの合計量(x+b)が0.30以上になる水素吸蔵合金においては、その効果が大きくなり、容量及び耐食性に優れた水素吸蔵合金が得られる。
また、上記のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金において、上記の一般式におけるa,b,cの値が、2.8≦a≦3.9、0<b≦0.30、0≦c≦0.25の条件を満たすようにするのは、a,b,cの値がこの範囲を外れると、上記の場合と同様に、その結晶構造が大きく変化して、水素吸蔵能力が大きく低下するためである。
また、上記のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金においては、さらに組織を均質化させて水素吸蔵能力や耐食性を高めるために、上記のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金に対してさらに熱処理を行うことが好ましく、特に、液化開始温度Tmよりも25℃〜70℃低い温度で1〜15時間程度熱処理を行うことが好ましい。
また、この発明のアルカリ蓄電池においては、正極と、水素吸蔵合金を用いた負極と、アルカリ電解液とを備えたアルカリ蓄電池において、その負極に上記のようなアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用いるようにした。
この発明におけるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金においては、上記のように液体急冷法により急冷させて一般式Ln1-xMgxNia-b-cAlbc(式中、LnはY,Zrを含む希土類元素から選択される少なくとも1種の元素、ZはV,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Fe,Co,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,P及びBから選択される少なくとも1種の元素であり、0.05≦x<0.25、2.8≦a≦3.9、0<b≦0.30、0≦c≦0.25の条件を満たす。)で表される組成を有する水素吸蔵合金を得たため、結晶構造がCe2Ni7型又はこれに類似した構造であって、高い結晶性を有する均質な構造のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金が得られた。
この結果、この発明におけるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金においては、水素吸蔵能力や耐食性が向上した。
また、この発明におけるアルカリ蓄電池においては、その負極に上記のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用いたため、高い電池容量を有すると共にサイクル寿命にも優れたアルカリ蓄電池が得られるようになった。
以下、この発明の実施例に係るアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金及びこのアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用いたアルカリ蓄電池について具体的に説明すると共に、比較例を挙げ、この発明の実施例に係るアルカリ蓄電池においてはサイクル寿命が向上することを明らかにする。なお、この発明におけるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金及びアルカリ蓄電池は、下記の実施例に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
(実施例1)
実施例1においては、負極に用いるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を製造するにあたり、希土類元素のLa,Pr及びNdと、Mgと、Niと、Alとを所定の合金組成になるように混合し、これをアルゴンガス雰囲気中において高周波誘導溶解炉により溶融させた後、単ロール鋳造装置を用いた液体急冷法によりこれを急冷させて水素吸蔵合金塊を鋳造した。その後、この水素吸蔵合金塊をアルゴンガス雰囲気中おいて、液化開始温度Tmよりも35℃低い温度で12時間熱処理して、組成がLa0.18Pr0.34Nd0.34Mg0.13Ni3.17Al0.23になった水素吸蔵合金塊を得た。なお、上記の液化開始温度Tmは示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した。
そして、上記の水素吸蔵合金塊を不活性雰囲気中において機械的に粉砕し、これを分級して、体積平均粒径が65μmになった水素吸蔵合金粉末を得た。
そして、負極を作製するにあたっては、上記の水素吸蔵合金粉末100重量部に対して、結着剤として、スチレン・ブタジエン共重合ゴムを1重量部、ポリアクリル酸ナトリウムを0.2重量部、カルボキシメチルセルロースを0.2重量部添加し、導電剤として、ニッケル金属フレークを1重量部、カーボンブラックを1重量部添加し、さらに水を50重量部添加してこれらを混練させ、ペーストを調製した。そして、このペーストをパンチングメタルからなる導電性芯体の両面に均一に塗布し、これを乾燥させてプレスした後、これを所定の寸法に切断して、水素吸蔵合金電極からなる負極を作製した。
一方、正極を作製するにあたっては、亜鉛を2.5重量%,コバルトを1.0重量%含有する水酸化ニッケル粉末を硫酸コバルト水溶液中に投入し、これを攪拌しながら、1モルの水酸化ナトリウム水溶液を徐々に滴下してpHを11にして反応させ、その後、沈殿物を濾過し、これを水洗し、真空乾燥させて、表面に水酸化コバルトが5重量%被覆された水酸化ニッケルを得た。次いで、このように水酸化コバルトが被覆された水酸化ニッケルに、25重量%の水酸化ナトリウム水溶液を1:10の重量比になるように加えて含浸させ、これを8時間攪拌しながら85℃で加熱処理した後、これを水洗し、乾燥させて、上記の水酸化ニッケルの表面がナトリウム含有コバルト酸化物で被覆された正極材料を得た。なお、上記のコバルト酸化物におけるコバルトの価数は3.05であった。
次いで、この正極材料を95重量部、酸化亜鉛を3重量部、水酸化コバルトを2重量部の割合で混合させたものに、0.2重量%のヒドロキシプロピルセルロース水溶液を50重量部加え、これらを混合させてスラリーを調製し、このスラリーを目付けが約600g/m2、多孔度が95%、厚みが約2mmになったニッケル発泡体に充填し、これを乾燥させてプレスした後、所定の寸法に切断して非焼結式ニッケル極からなる正極を作製した。
そして、セパレータにポリプロピレン製の不織布を使用し、またアルカリ電解液として、KOHとNaOHとLiOHとが15:2:1の重量比で含まれ、比重が1.30になったアルカリ電解液を使用し、図1に示すような円筒型で設計容量が1500mAhになったアルカリ蓄電池を作製した。
ここで、上記のアルカリ蓄電池を作製するにあたっては、図1に示すように、上記の正極1と負極2との間にセパレータ3を介在させ、これらをスパイラル状に巻いて電池缶4内に収容させ、正極1を正極リード5を介して正極蓋6に接続させると共に、負極2を負極リード7を介して電池缶4に接続させ、この電池缶4内にアルカリ電解液を注液させた後、電池缶4と正極蓋6との間に絶縁パッキン8を介して封口し、上記の絶縁パッキン8により電池缶4と正極蓋6とを電気的に分離させた。また、上記の正極蓋6に設けられたガス放出口6aを閉塞させるようにして、この正極蓋6と正極外部端子9との間にコイルスプリング10によって付勢された閉塞板11を設け、電池の内圧が異常に上昇した場合には、このコイルスプリング10が圧縮されて、電池内部のガスが大気中に放出されるようにした。
(実施例2)
実施例2においては、実施例1におけるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の製造において、希土類元素のLa,Pr及びNdと、Mgと、Niと、Alとの混合割合を変更させ、それ以外は実施例1の場合と同様にして、組成がLa0.17Pr0.33Nd0.33Mg0.17Ni3.10Al0.20になったアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を製造すると共に、このアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用い、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例2のアルカリ蓄電池を作製した。
(実施例3)
実施例3においては、実施例1におけるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の製造において、希土類元素のLa,Pr及びNdと、Mgと、Niと、Alとの混合割合を変更させ、それ以外は実施例1の場合と同様にして、組成がLa0.18Pr0.36Nd0.36Mg0.11Ni3.20Al0.20になったアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を製造すると共に、このアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用い、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例3のアルカリ蓄電池を作製した。
(実施例4)
実施例4においては、実施例1におけるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の製造において、希土類元素のLa,Pr及びNdと、Mgと、Niと、Alと、Coとを所定の合金組成になるように混合させると共に、水素吸蔵合金塊をアルゴンガス雰囲気中おいて熱処理する温度を液化開始温度Tmよりも60℃低い温度にし、それ以外は実施例1の場合と同様にして、組成がLa0.35Pr0.225Nd0.225Mg0.20Ni3.20Al0.10Co0.10になったアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を製造し、このアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用い、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例4のアルカリ蓄電池を作製した。
(実施例5)
実施例5においては、実施例1におけるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の製造において、希土類元素のLa,Pr及びNdと、Zrと、Mgと、Niと、Alとの混合割合を変更させ、それ以外は実施例1の場合と同様にして、組成がLa0.49Pr0.15Nd0.15Zr0.01Mg0.20Ni3.30Al0.10になったアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を製造すると共に、このアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用い、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例5のアルカリ蓄電池を作製した。
(実施例6)
実施例6においては、実施例1におけるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の製造において、希土類元素のLa及びNdと、Mgと、Niと、Alと、Coとを所定の合金組成になるように混合させると共に、水素吸蔵合金塊をアルゴンガス雰囲気中おいて熱処理する温度を液化開始温度Tmよりも60℃低い温度にし、それ以外は実施例1の場合と同様にして、組成がLa0.50Nd0.30Mg0.20Ni3.20Al0.10Co0.10になったアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を製造し、このアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用い、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例6のアルカリ蓄電池を作製した。
(実施例7)
実施例7においては、実施例1におけるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の製造において、希土類元素のLa,Pr及びNdと、Mgと、Niと、Alと、Coとを所定の合金組成になるように混合させると共に、水素吸蔵合金塊をアルゴンガス雰囲気中おいて熱処理する温度を液化開始温度Tmよりも60℃低い温度にし、それ以外は実施例1の場合と同様にして、組成がLa0.35Pr0.225Nd0.225Mg0.20Ni3.17Al0.13Co0.10になったアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を製造し、このアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用い、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例7のアルカリ蓄電池を作製した。
(比較例1)
比較例1においては、実施例1におけるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の製造において、希土類元素のLaと、Mgと、Niと、Alと、Coとを所定の合金組成になるように混合させ、それ以外は実施例1の場合と同様にして、組成がLa0.75Mg0.25Ni3.20Al0.10Co0.10になったアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を製造し、このアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用い、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例1のアルカリ蓄電池を作製した。
(比較例2)
比較例2においては、実施例1におけるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の製造において、希土類元素のLa,Pr及びNdと、Mgと、Niと、Alとを所定の合金組成になるように混合し、これをアルゴンガス雰囲気中において高周波誘導溶解炉により溶融させた後、液体急冷法による急冷を行わずに、これを金型に流し込んで自然冷却させて、組成が上記の実施例1と同じLa0.18Pr0.34Nd0.34Mg0.13Ni3.17Al0.23になったアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を製造し、このアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用い、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例2のアルカリ蓄電池を作製した。
(比較例3)
比較例3においては、実施例1におけるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の製造において、希土類元素のLa,Pr及びNdと、Mgと、Niと、Alとの混合割合を変更させると共に、これをアルゴンガス雰囲気中において高周波誘導溶解炉により溶融させた後、上記の比較例2と同様に、液体急冷法による急冷を行わずに、これを金型に流し込んで自然冷却させて、組成が上記の実施例2と同じLa0.17Pr0.33Nd0.33Mg0.17Ni3.10Al0.20になったアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を製造し、このアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用い、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例3のアルカリ蓄電池を作製した。
(比較例4)
比較例4においては、実施例1におけるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の製造において、希土類元素のLaと、Mgと、Niと、Alと、Coとを所定の合金組成になるように混合させると共に、これをアルゴンガス雰囲気中において高周波誘導溶解炉により溶融させた後、上記の比較例2と同様に、液体急冷法による急冷を行わずに、これを金型に流し込んで自然冷却させて、組成が上記の比較例1と同じLa0.75Mg0.25Ni3.2Al0.10Co0.10になったアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を製造し、このアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用い、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例4のアルカリ蓄電池を作製した。
(比較例5)
比較例5においては、実施例1におけるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の製造において、希土類元素のLa,Pr及びNdと、Mgと、Niと、Alと、Coとを所定の合金組成になるように混合させ、これをアルゴンガス雰囲気中において高周波誘導溶解炉により溶融させた後、上記の比較例2と同様に、液体急冷法による急冷を行わずに、これを金型に流し込んで自然冷却させ、またこの水素吸蔵合金塊をアルゴンガス雰囲気中おいて熱処理する温度を液化開始温度Tmよりも60℃低い温度にし、組成が上記の実施例4と同じLa0.35Pr0.225Nd0.225Mg0.20Ni3.20Al0.10Co0.10になったアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を製造し、このアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用い、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例5のアルカリ蓄電池を作製した。
(比較例6)
比較例6においては、実施例1におけるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の製造において、希土類元素のLa,Pr及びNdと、Zrと、Mgと、Niと、Alと、Coとを所定の合金組成になるように混合させ、これをアルゴンガス雰囲気中において高周波誘導溶解炉により溶融させた後、上記の比較例2と同様に、液体急冷法による急冷を行わずに、これを金型に流し込んで自然冷却させ、またこの水素吸蔵合金塊をアルゴンガス雰囲気中おいて熱処理する温度を液化開始温度Tmよりも50℃低い温度にし、組成が上記の実施例5と同じLa0.49Pr0.15Nd0.15Zr0.01Mg0.20Ni3.30Al0.10になったアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を製造し、このアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用い、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例6のアルカリ蓄電池を作製した。
(比較例7)
比較例7においては、実施例1におけるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の製造において、希土類元素のLa及びNdと、Mgと、Niと、Alと、Coとを所定の合金組成になるように混合させ、これをアルゴンガス雰囲気中において高周波誘導溶解炉により溶融させた後、上記の比較例2と同様に、液体急冷法による急冷を行わずに、これを金型に流し込んで自然冷却させ、またこの水素吸蔵合金塊をアルゴンガス雰囲気中おいて熱処理する温度を液化開始温度Tmよりも50℃低い温度にし、組成が上記の実施例6と同じLa0.50Nd0.30Mg0.20Ni3.20Al0.10Co0.10になったアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を製造し、このアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用い、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例7のアルカリ蓄電池を作製した。
(比較例8)
比較例8においては、実施例1におけるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の製造において、希土類元素のLa,Pr及びNdと、Mgと、Niと、Alと、Coとを所定の合金組成になるように混合させ、これをアルゴンガス雰囲気中において高周波誘導溶解炉により溶融させた後、上記の比較例2と同様に、液体急冷法による急冷を行わずに、これを金型に流し込んで自然冷却させ、またこの水素吸蔵合金塊をアルゴンガス雰囲気中おいて熱処理する温度を液化開始温度Tmよりも50℃低い温度にし、組成が上記の実施例7と同じLa0.35Pr0.225Nd0.225Mg0.20Ni3.17Al0.13Co0.10になったアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を製造し、このアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用い、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例8のアルカリ蓄電池を作製した。
次に、上記のようにして作製した実施例1〜7及び比較例1〜8の各アルカリ蓄電池を45℃の温度条件において12時間放置させた。その後、上記の各アルカリ蓄電池を25℃の温度条件において、150mAの電流で16時間充電させて1時間放置させた後、300mAの電流で電池電圧が1.0Vなるまで放電させて1時間放置させ、これを1サイクルとして、3サイクルの充放電を行って各アルカリ蓄電池を活性化させた。
そして、上記のように活性化させた実施例1〜7及び比較例1〜8の各アルカリ蓄電池を、それぞれ1500mAの電流で充電させ、電池電圧が最大値に達した後、10mV低下するまで充電させて20分間休止させた後、1500mAの電流で電池電圧が1.0Vになるまで放電させて10分間休止させ、これを1サイクルとして、充放電を繰り返して行い、それぞれ放電容量が1サイクル目の放電容量の70%に低下するまでのサイクル数を求め、上記の比較例2のアルカリ蓄電池におけるサイクル数を100とした指数で、各アルカリ蓄電池のサイクル寿命を求め、その結果を下記の表1に示した。
Figure 2008084818
この結果、前記の一般式Ln1-xMgxNia-b-cAlbcで表される水素吸蔵合金であって、Mgの割合を示すxの値が0.05≦x<0.25の条件を満たすと共に、上記の水素吸蔵合金を液体急冷法により急冷させて製造したアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用いた実施例1〜7の各アルカリ蓄電池は、Mgの割合を示すxの値が0.25になったアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用いた比較例1,4のアルカリ蓄電池や、Mgの割合を示すxの値が0.05≦x<0.25の条件を満たすが、上記の水素吸蔵合金を液体急冷法ではなくて金型で自然冷却させたアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用いた比較例2,3,5〜8の各アルカリ蓄電池に比べてサイクル寿命が向上していた。
また、上記の実施例4及び比較例1,5において作製した各アルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用い、それぞれ水素吸蔵合金粉末25重量部に対して、ニッケルパウダーを75重量部の割合で加え、これらをペレット状に加圧成形して、上記の各アルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用いた各負極を作製した。
一方、正極としては、円筒状に形成した焼結式ニッケル極を使用し、アルカリ電解液としては、30重量%の水酸化カリウム水溶液を用い、図2に示すような試験セルを作製した。
ここで、上記の試験セルにおいては、ポリプロピレン製の容器20内に上記のアルカリ電解液23を収容させ、上記の円筒状に形成した正極21内に負極22と酸化水銀電極からなる参照極24を収容させた状態で、上記の正極21と負極22と参照極24とを上記のアルカリ電解液23に浸漬させた。
そして、上記の各負極22を用いた各試験セルを、水素吸蔵合金1g当り180mAの電流で150%まで充電させた後、水素吸蔵合金1g当り180mAの電流で上記の参照極24に対する負極22の電位が−0.7Vになるまで放電させ、このような充放電を5回繰り返して行い、各負極における最大容量を求め、上記の比較例1のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用いた負極における最大容量を100とした指数で、実施例4及び比較例1,5のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用いた負極の最大容量を算出し、これを水素吸蔵合金の電気化学容量として、下記の表2に示した。
Figure 2008084818
この結果、一般式Ln1-xMgxNia-b-cAlbcで表される水素吸蔵合金であって、Mgの割合を示すxの値が0.05≦x<0.25の条件を満たすと共に、上記の水素吸蔵合金を液体急冷法により急冷させて製造した実施例4のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金は、Mgの割合を示すxの値が0.25になった前記の比較例1のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金や、Mgの割合を示すxの値が0.05≦x<0.25の条件を満たすが、水素吸蔵合金を液体急冷法ではなくて金型で自然冷却させて製造した前記の比較例5のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金に比べて、水素吸蔵合金の電気化学容量が増加していた。
また、上記の表1及び表2の結果から、同じ組成になったアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金であっても、液体急冷法によって製造した実施例4のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金は比較例5のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金に比べて、耐食性に優れ、高容量の水素吸蔵合金が得られることが分かる。
この発明の実施例及び比較例において作製したアルカリ蓄電池の概略断面図である。 この発明の実施例4及び比較例1,5において作製したアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を負極に用いた試験セルの概略断面図である。
符号の説明
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 電池缶
5 正極リード
6 正極蓋
6a ガス放出口
7 負極リード
8 絶縁パッキン
9 正極外部端子
10 コイルスプリング
11 閉塞板
20 容器
21 正極
22 負極
23 アルカリ電解液
24 参照極

Claims (3)

  1. 液体急冷法により急冷されて製造された水素吸蔵合金であって、一般式Ln1-xMgxNia-b-cAlbc(式中、LnはY,Zrを含む希土類元素から選択される少なくとも1
    種の元素、ZはV,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Fe,Co,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,P及びBから選択される少なくとも1種の元素であり、0.05≦x<
    0.25、2.8≦a≦3.9、0<b≦0.30、0≦c≦0.25の条件を満たす。)で表される組成を有していることを特徴とするアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金。
  2. 請求項1に記載したアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金において、前記の一般式におけるxの値が、0.05≦x≦0.20の条件を満たすことを特徴とするアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金。
  3. 正極と、水素吸蔵合金を用いた負極と、アルカリ電解液とを備えたアルカリ蓄電池において、上記の負極に前記の請求項1又は請求項2に記載したアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を用いたことを特徴とするアルカリ蓄電池。
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