JP2008078020A - 固体高分子型燃料電池用電極触媒層、その製造方法および固体高分子型燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】強磁性体と弱磁性体によってパターン状に構成された平面状の基材3上に、ガス拡散層2を配置して、触媒インクを直接塗布し、電極触媒層1を形成する。この塗布操作および乾燥操作を磁束密度分布のある磁場内で行い、磁気力によって電極触媒層1中の造孔剤が、高分子電解質膜に対して厚さ方向または膜面方向に傾斜分布を有するようにする。好ましくは触媒インクに造孔剤と異なる磁化率を有する少なくとも1種の物質を溶解させ、磁化率差を増大させる。
【選択図】図1
Description
本発明は、磁束密度分布のある磁場内で触媒インクの塗布もしくは乾燥を行うことで、造孔剤と触媒インク分散溶媒にそれぞれ異なる磁気力を発生させ、造孔剤を磁気力で移動させる手法を用いて、高分子電解質膜に対してパターン状に厚さ方向または膜面方向にガス拡散性を高くした固体高分子型燃料電池用電極触媒層の製造方法を提供するものである。
〔触媒インクの調整〕
白金担持量が45wt%である白金担持カーボン触媒と、市販のプロトン伝導性高分子(ナフィオン)溶液と造孔剤とを溶媒中で混合し、遊星型ボールミル(FRITSCH社製 Pulverisette7)で分散処理を行った。ボールミルのポット、ボールにはジルコニア製のものを用いた。出発原料の組成比は白金担持カーボンとナフィオンと造孔剤の炭酸カルシウムは重量比で4:2:1とし、溶媒は10重量%塩化マンガン水溶液、1−プロパノ−ル、2−プロパノ−ルを体積比で1:1:1とした。また、固形分含有量は10重量%とした。
〔基材〕
不均一な磁束密度分布を形成する平面状の基材は、厚みが10mmのアルミニウム(弱磁性体)を母材に、直径1mmのシリンダー状の鉄(強磁性体)が基材を貫通しているものを使用した。
〔電極触媒層の作製方法〕
磁場発生装置に磁場強度10テスラを発生する超伝導マグネットを使用し、磁場発生空間内に25℃の水を循環させたガラス二重管を固定した。カーボンペーパーを基材上に配置し、磁場強度10テスラを印加した状態で、調整した触媒インキをカーボンペーパー上に加圧式スプレーで塗布し、乾燥することで電極触媒層を作製した。電極触媒層の厚さは、白金担持量が0.3mg/cm2になるように調節した。造孔剤は、1N硝酸によって取り除いた。
〔触媒インクの調整〕
実施例記載と同様の出発原料組成、分散方法で触媒インクを調整した。
〔基材〕
実施例記載と同様の基材を使用した。
〔電極触媒層の作製方法〕
超伝導マグネットを稼動させず、それ以外は全て実施例記載と同様に電極触媒層の作製を行った。
実施例および比較例において作製した電極を5.2cm2の正方形に打ち抜き、燃料極および空気極とした。プロトン伝導性高分子膜はデュポン株式会社製ナフィオン112を用いた。結着剤として5%ナフィオン溶液を電極上に滴下し、プロトン伝導性高分子膜をカーボンペーパー上に形成した二つの電極で挟持して、125℃、6.0×106Pa、30分の条件でホットプレスを行い、電解質膜電極接合体を得た。
〔水素吸着面積〕
各種膜電極接合体にセパレータを張り合わせ、これを燃料電池測定装置(東陽テクニカ社製GFT−SG1)でセル温度80℃の条件下、サイクリックボルタンメトリーを行い、水素脱着波から面積を求めた。この面積を、白金触媒が100%有効に使われたときの理論面積で除することで、白金の有効利用率を算出した。
〔発電特性〕
各種膜電極接合体にセパレータを張り合わせ、これを燃料電池測定装置(東陽テクニカ社製GFT−SG1)でセル温度80℃、アノード100%RH、カソード26%RHの条件下、電流電圧測定を行い、最大出力(mW/cm2)を計測した。燃料ガスとして水素を毎分200ml、酸化剤ガスとして酸素を毎分100ml一定に流し、発電特性の評価を行った。
磁場強度10テスラを印加した状態で作製した電極触媒層は、水素吸着面積から求めた有効利用率は36%であり、最大出力は1.4W/cm2と高い値を示した(実施例)。一方、超伝導マグネットを稼動していない状態で作製した電極触媒層は、水素吸着面積から求めた有効利用率は26%であり、最大出力は1.2W/cm2と高い値を示した(比較例)。従って、実施例で得られた電極触媒層は白金の有効利用率が高く、電気化学反応場である三相界面が比較例と比べて増大していることが推察された。また、最大出力も比較例と比べて増大していることから、高負荷運転でも物質輸送が円滑に行われていることが推察される。
Claims (11)
- 一対の電極触媒層で挟まれたプロトン伝導性高分子電解質膜を、一対のガス拡散層で挟持した固体高分子型燃料電池における、前記電極触媒層の製造方法であって、触媒物質を担持したカーボン粒子と高分子電解質と造孔剤とを分散溶媒に分散させた触媒インクを、平面状の基材上に塗布する工程および前記触媒インク中の分散溶媒を蒸発させる工程から選択された少なくとも1つの工程を磁束密度分布のある磁場内で行い、磁気力によって前記電極触媒層中の細孔が、前記高分子電解質膜に対して厚さ方向または膜面方向に傾斜分布を持つことを特徴とする固体高分子型燃料電池用電極触媒層の製造方法。
- 前記磁束密度分布のある磁場を形成する永久磁石もしくは磁場発生装置の最大磁束密度が0.1テスラ以上であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用電極触媒層の製造方法。
- 磁化率の異なる2種の物質で構成された基材に磁場を印加して、前記基材内における磁化率の最も高い物質に磁力を集中させ、所望の磁束密度分布を有する磁場を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の固体高分子型燃料電池用電極触媒層の製造方法。
- 前記触媒インクの分散溶媒と異なる磁化率を有する少なくとも1種の造孔剤を前記分散溶媒に分散させたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用電極触媒層の製造方法。
- 前記造孔剤と異なる磁化率を有する少なくとも1種の物質を前記触媒インキに溶解させ、前記造孔剤と前記分散溶媒との磁化率差を増大させたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用電極触媒層の製造方法。
- 前記分散溶媒に分散させた前記造孔剤を、電極触媒層形成後に前記造孔剤の溶媒によって除去することで、前記電極触媒層の細孔が前記高分子電解質膜に対して厚さ方向または膜面方向に傾斜分布を持つことを特徴とする請求項4に記載の固体高分子型燃料電池用電極触媒層の製造方法。
- 前記分散溶媒に分散させた前記造孔剤を、発電で発生する水によって除去することで、前記電極触媒層の細孔が前記高分子電解質膜に対して厚さ方向または膜面方向に傾斜分布を持つことを特徴とする請求項4に記載の固体高分子型燃料電池用電極触媒層の製造方法。
- 前記基材の温度が20℃〜120℃であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用電極触媒層の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により作製された前記固体高分子型燃料電池用電極触媒層において、電極触媒層の細孔がプロトン伝導性高分子電解質膜に対して厚さ方向または膜面方向に傾斜分布を持つことを特徴とする固体高分子型燃料電池用電極触媒層。
- 一対の電極触媒層で挟まれたプロトン伝導性高分子電解質膜を、一対のガス拡散層で挟持した固体高分子型燃料電池において、少なくとも一方の前記電極触媒層が、請求項9に記載の固体高分子型燃料電池用電極触媒層からなることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
- 前記少なくとも一方の電極触媒層とプロトン伝導性高分子電解質膜の間に、プロトン伝導性高分子からなる層を有することを特徴とする請求項10に記載の固体高分子型燃料電池。
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