JP5135704B2 - 固体高分子型燃料電池用電極触媒層の製造方法 - Google Patents
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Description
アノードに対向するセパレータ表面には、燃料ガスを流通させるための凹溝状の燃料ガス流路が設けられている。また、カソードに対向するガスセパレータ表面には、酸化剤ガスを流通させるための凹溝状の酸化剤ガス流路が設けられている。
そして、燃料ガス流路に水素を主体とした改質ガス(又は水素ガス)を供給すると共に、酸化剤ガス流路に酸化剤ガス(通常は空気)を供給し、電解質膜を介して燃料ガスの水素と酸化剤ガスの酸素とにより下記の電気化学反応を生じさせて熱と同時に起電力を得るようにしたものである。
酸化剤極;4H++4e−+O2→2H2O (2)
燃料電池は、用いるイオン伝導体の種類によって類別され、プロトン伝導性固体高分子膜を用いたものは、固体高分子型燃料電池と呼ばれる。
この三相界面の面積が燃料電池の性能に大きく影響する。
細孔は、燃料ガスや酸化剤ガスおよび水などを輸送する通路の役割を果たす。
前記溶媒蒸発工程を、電場および磁場内で行い、触媒担持カーボン粒子にローレンツ力を発生させ、電極触媒層中の触媒担持カーボン粒子濃度を傾斜させる方法が開示されている。
電場および磁場の強さ、方向を変えることで電極触媒層の厚さ方向に傾斜を制御する。(特許文献2参照)
このため、電極触媒層において、安定した触媒担持カーボン粒子濃度の傾斜が得られないという問題点が生じている。
電極触媒層の厚さ方向に移動させる手法を用いて、電極触媒層の厚さ方向に組成が連続的に傾斜した固体高分子型燃料電池用電極触媒層の製造方法を提供するものである。
しかし、触媒インク中の溶媒に磁化率を大きくする物質を溶解させることによって、触媒担持カーボンと触媒インク中の溶媒の磁化率差が増大するので、その結果、本発明では磁気力を利用した触媒担持カーボンの移動ができることになる。
具体的には、触媒インク中の溶媒に常磁性遷移元素化合物を添加することで、触媒インク中の溶媒が常磁性体になる。
磁束密度分布のある磁場を形成する方法としては、強磁性体と弱磁性体で構成された基材に磁場を印加する方法を用いることができる。
磁石と相互作用が大きいFeやNi、Coといった強磁性体は、磁束密度を高める効果がある。
しかし、弱磁性体は、磁場との相互作用が極めて小さいので、そのまま磁力線が透過する。従って、基材表面では、強磁性体と弱磁性体のパターンに相当する磁束密度分布のある磁場が電極触媒層の面方向に形成される。
また、磁束密度分布は、基材から遠ざかるほど均一になるので、電極触媒層の厚さ方向にも磁束密度分布のある磁場が形成される。
つまり、Feなどの強磁性体の表面では磁束密度が高いので、常磁性体の触媒インク中の溶媒が面方向に移動し、また、Alなどの弱磁性体の表面では磁束密度が低いので、反磁性体の触媒担持カーボンが電極触媒層の面方向に移動する。
この時、Feなどの強磁性体の磁気力が面方向に傾斜を持つ。
即ち、強磁性体で発生した磁気力は強く、反磁性体の触媒担持カーボンが電極触媒層面方向に移動する。
これにより、本発明で製造した電極触媒層は、面方向に組成が連続的に傾斜する。
また、これらの触媒の粒径は、大きすぎると触媒の活性が低下し、小さすぎると触媒の安定性が低下するため、0.5〜20nmが好ましい。
更に好ましくは、1〜5nmが良い。
炭素の種類は、微粒子状で導電性を有し、触媒におかされないものであればどのようなものでも構わないが、カーボンブラックやグラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレンが使用できる。
更に好ましくは、10〜100nmが良い。
市販のパーフルオロカーボンスルホン酸(デュポン社製、ナフィオン)をプロトン伝導性固体高分子膜として用いる場合は、触媒インキ中のプロトン伝導性物質としてはパーフルオロカーボンスルホン酸(デュポン社製、ナフィオン)を使用するのが好ましい。
また、これらの溶剤のうち二種以上を混合させたものも使用できる。
また、溶剤として低級アルコールを用いたものは発火の危険性が高く、このような溶媒を用いる際は水との混合溶媒にするのが好ましい。
プロトン伝導性物質となじみがよい水が含まれていてもよい。
水の添加量は、プロトン伝導性物質が分離して白濁を生じたり、ゲル化したりしない程度であれば特に制限はない。
溶媒の磁化率を大きくする物質として、常磁性遷移元素化合物、および、Fe、Ni、Coなどの強磁性体を用いることができる。
溶媒の磁化率を大きくする物質の大きさとしては、100nm以下が好ましく、10〜20nmが更に好ましい。
取り除くことによって、電極触媒層の空隙率および空孔径が大きくなる。
固形分は触媒担持カーボンとプロトン伝導性物質からなるが、触媒担持カーボンの含有量を多くすると同じ固形分含有量でも粘度は高くなり、少なくすると粘度は低くなる。
触媒担持カーボンの固形分に占める割合は10〜80%が好ましい。
また、このときの触媒インクの粘度は、磁気力による物質移動を行うことを考慮すると、0.1〜500cP程度が好ましく、5〜100cPがさらに好ましい。
また触媒インク中に分散剤を添加することで、粘度の制御をすることもできる。
分散処理は、様々な装置を用いて行うことができる。
例えば、ボールミル装置やロールミル装置、せん断ミル装置、湿式ミル装置、超音波分散処理装置などが挙げられる。
また、遠心力で撹拌を行うホモジナイザーなどを用いてもよい。
不均一な磁束密度分布を形成するための磁場発生方法としては、永久磁石を用いる方法でも良いが、磁場強度が強く、かつ、大きな電極触媒層を形成するために、磁場発生空間を広くすることが好ましい。
例えば、電磁石や超伝導マグネットを用いる方法などが挙げられる。
磁場発生装置の最大磁束密度は0.1テスラ以上であることが好ましく、さらに好ましくは2テスラ以上が好ましい。
特に超伝導マグネットを用いる場合は、超伝導コイルの冷却の影響により磁場発生空間の温度が安定しないので、ガラス二重管に恒温槽から水を循環させることにより超伝導コイルを冷却するのが望ましい。
中でもスプレー法は、基材に塗工されたインキを乾燥させる際に触媒担持カーボンの凝集が起こり難く、均質で空孔率の高い電極触媒層が得ることができる。
強磁性体としては、FeやNi、Coなどが挙げられる。
また、弱磁性体としては、磁場と全く相互作用を起こさない物質を用いることができ、アルミやガラス、ガラス、紙、プラスチックなどを用いることができる。
例えば、弱磁性体の母材に強磁性体が規則的に埋め込まれた基材や、強磁性体と弱磁性体が市松模様に配置された基材、強磁性体の母材に弱磁性体が規則的に埋め込まれた基材などである。
基材の厚みが薄いと強磁性体で磁束密度を高める効果が低いので、磁束密度分布が基材表面からすぐに均一になる。
基材の厚みは100nm以上であることが好ましく、さらに好ましくは1mm以上が好ましい。
強磁性体パターンの幅は、広すぎると電極触媒層の傾斜配置の効果がなくなり、狭すぎると基材表面から磁束密度分布がすぐに均一になってしまうので、100nm〜10mmが好ましい。
目処層は、触媒インクがガス拡散層の中に染み込むことを防止する層であり、触媒インクの塗布量が少ない場合でも、触媒インクを電極上に堆積させることができ、三相界面の形成を容易にする。
目処層の形成方法としては、カーボンとフッ素系樹脂を混練してガス拡散財に塗布した後、フッ素系樹脂の融点以上の温度で焼結させる方法を用いることができる。
フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が利用できる。
エージングが短すぎると物質移動が不十分となり、長すぎると成膜レートが遅くなるので、エージング時間は0.1秒〜1分が好ましい。
20〜120℃に加熱した基材に触媒インクを塗布することによって、触媒インク中の溶媒を塗布直後に乾燥させるこができ、よって、塗布後の触媒担持カーボンの凝集を防止でき、よって、電極触媒層の空孔度を向上させることができる。
基材表面が20℃未満である場合は、触媒インク中の溶媒を瞬時に乾燥させる効果が低い。また、基材表面が120℃を越えると、触媒インクの乾燥ムラが発生することが懸念される。
まず、白金担持量が45wt%である白金担持カーボン触媒と、市販のプロトン伝導性物質(デュポン社製、ナフィオン)溶液を溶媒中で混合し、遊星型ボールミル(FRITSCH社製 Pulverisette7)で分散処理を行った。
ボールミルのポット、ボールにはジルコニア製のものを用いた。
出発原料の組成比は、白金担持カーボン触媒とナフィオンは重量比で2:1、溶媒は10wt%塩化マンガン水溶液、1−プロパノ−ル、2−プロパノ−ルを体積比で1:1:1とした。
触媒インクの固形分含有量は10wt%とした。
本実施例で用いた基材の模式図を図2に示す。
厚みが1mmのアルミ(弱磁性体)と、厚みが1mmの鉄(強磁性体)を積層し、図2にように1mmから10mmに厚みが傾斜するように研磨した。
まず、磁場発生装置に磁場強度10テスラを発生する超伝導マグネットを使用し、磁場発生空間内に25℃の水を循環させたガラス二重管を固定した。
カーボンペーパーを基材上に配置し、磁場強度10テスラを印加した状態で、調整した触媒インキを加圧式スプレーでカーボンペーパーに塗布し、乾燥して酸化剤極を作製した。電極触媒層の厚さは、白金担持量が0.3mg/cm2であった。
触媒インクに塩化マンガンを添加しなかったこと以外は、空気極と同様の方法を用いて、燃料極を作製した。
燃料極および酸化剤極の触媒層どうしを向かい合わせにして、厚さ50μmのパーフルオロカーボンスルホン酸(デュポン株式会社製、Nafion112)を挟んで、温度130℃、圧力5.9×106Paの条件の基、30分間熱圧着してMEAを作製した。
(触媒インクの調整)
実施例記載と同様の出発原料組成、分散方法で触媒インクを調整した。
(基材)
実施例記載と同様の基材を使用した。
(電極の作製)
超伝導マグネットを稼動させず、それ以外は全て実施例記載と同様に電極触媒層の作製を行った。
燃料極および酸化剤極の触媒層どうしを向かい合わせにして、厚さ50μmのパーフルオロカーボンスルホン酸(デュポン株式会社製、Nafion112)を挟んで、温度130℃、圧力5.9×106Paの条件の基、30分間熱圧着してMEAを作製した。
実施例で作製した電極触媒層の断面の元素分析を行った。
その結果、基材の強磁性体が薄い箇所では、厚い箇所よりもPtリッチになっていた。
また、電極触媒層におけるPt濃度の変化は、電極触媒層の面方向に連続的に傾斜していた。
(図3に本発明による電極触媒層の模式的断面図を示した。)
実施例で作製したMEAおよび比較例で作製したMEAをセパレータで挟持し、これを燃料電池測定装置(東陽テクニカ社製GFT−SG1)を用いて、セル温度80℃、アノード加湿器80℃、カソード加湿器50℃の条件下で、燃料ガスとして水素を、酸化剤ガスとして酸素を流して、発電特性の評価を行った。
実施例で作製した電極触媒層は、酸化剤ガス上流部にPtリッチ側が来る方向に配置して発電特性の評価を行った。
実施例で作製したMEAの方が、比較例で作製したMEAよりも発電特性が優れていた。
2・・・ガス拡散層
3・・・強磁性体と弱磁性体で構成される基材
11・・・強磁性体
12・・・弱磁性体
21・・・プロトン伝導性物質
22・・・触媒担持カーボン
23・・・鉄
24・・・アルミ
Claims (4)
- 触媒担持カーボンと、プロトン伝導性物質を溶媒に分散させた触媒インクを、平面状の基材上に塗布する触媒インク塗布工程と、前記触媒インク中の溶媒を蒸発させることにより、前記基材上に電極触媒層を形成する溶媒蒸発工程を有する固体高分子型燃料電池用電極触媒層の製造方法であって、
前記触媒インク塗布工程、および、溶媒蒸発工程の少なくとも1つの工程を、磁束密度分布を有する磁場内で行い、
前記基材が磁化率の異なる2の物質で構成されており、該基材に磁場を印加することにより該基材に含まれる最も磁化率の高い物質に磁力を集中させ、所望の磁束密度分布を有する磁場を発生させ、
前記基材に含まれる最も磁化率の高い物質の濃度が、前記基材の面方向に傾斜しており、
触媒担持カーボンと異なる磁化率を持つ少なくとも1つ以上の物質を、触媒インク中に分散させ、前記触媒担持カーボンと前記触媒インクとの磁化率差を増大させることを特徴とする固体高分子型燃料電池用電極触媒層の製造方法。 - 前記磁束密度分布を有する磁場の形成に用いる、永久磁石または磁場発生装置の最大磁束密度が、0.1テスラ以上であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用電極触媒層の製造方法。
- 前記触媒担持カーボンと異なる磁化率を持つ少なくとも1つ以上の物質を、前記電極触媒層形成後に溶媒により除去することにより、前記電極触媒層に細孔を形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の固体高分子型燃料電池用電極触媒層の製造方法。
- 前記触媒インク塗布工程及び前記溶媒蒸発工程において、前記基材の温度を20℃〜120℃に調節することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池用電極触媒層の製造方法。
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