JP2008076816A - 複合位相差板、その製造方法、複合光学部材及び液晶表示装置 - Google Patents

複合位相差板、その製造方法、複合光学部材及び液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】液晶セルに貼り合わせて使用したときに、コーティング位相差層に微細な割れが生じにくく、光漏れの発生を抑制できるとともに、耐水性にも優れた複合位相差板を提供し、その複合位相差板に偏光板の如き他の光学層を積層して複合光学部材とし、さらにそれを液晶表示装置に適用する。
【解決手段】透明樹脂からなる位相差板11、プライマー層12及び、有機修飾粘土複合体とバインダー樹脂とを含むコーティング位相差層14がこの順に積層されてなり、プライマー層12は、水を主体とする溶媒、水溶性樹脂及び水分散性ポリイソシアネート硬化剤を含む組成物から溶媒を除去することにより形成された層である複合位相差板10が提供される。複合位相差板10の好ましくは樹脂位相差板11側に偏光板21を積層して、複合光学部材20とすることができ、複合光学部材20は液晶セルと組み合わせて、液晶表示装置とされる。
【選択図】図2

Description

本発明は、液晶セルに貼り合わせて用いられる複合位相差板とその製造方法、それを用いた複合光学部材及び液晶表示装置に関するものである。本発明はまた、複合位相差板における耐水性を向上させる技術にも関係している。
近年、液晶表示装置は、低消費電力、低電圧動作、軽量、薄型などの特徴を生かして、携帯電話、携帯情報端末、コンピュータ用のモニター、テレビなど、情報用表示デバイスとして急速に普及してきている。液晶技術の発展に伴い、さまざまなモードの液晶表示装置が提案され、応答速度やコントラスト、狭視野角といった問題点が解消されつつある。
このような液晶表示装置の一つに、正又は負の誘電率異方性を有する棒状の液晶分子を基板に対して垂直に配向させた、垂直配向(VA)モードの液晶表示装置がある。かかる垂直配向モードは、非駆動状態においては、液晶分子が基板に対して垂直に配向しているため、光は偏光の変化を伴わずに液晶層を通過する。このため、液晶パネルの上下に互いに偏光軸が直交するように直線偏光板を配設することで、正面から見た場合にほぼ完全な黒表示を得ることができ、高いコントラスト比を得ることができる。しかし、このような液晶セルに偏光板のみを備えたVAモードの液晶表示装置では、それを斜めから見た場合に、配設された偏光板の軸角度が90°からずれてしまうことと、セル内の棒状の液晶分子が複屈折を発現することに起因して、光漏れが生じ、コントラスト比が著しく低下してしまう。
かかる光漏れを解消するためには、液晶セルと直線偏光板の間に光学補償フィルムを配置する必要があり、従来は、二軸性の位相差板を液晶セルと上下の偏光板の間にそれぞれ1枚ずつ配設する仕様や、正の一軸性位相差板と完全二軸性の位相差板を、それぞれ1枚ずつ液晶セルの上下に、又は2枚とも液晶セルの片側に配設する仕様が採用されてきた。例えば、特開 2001-109009号公報(特許文献1)には、垂直配向モードの液晶表示装置において、上下の偏光板と液晶セルの間に、それぞれaプレート(すなわち、正の一軸性位相差板)及びcプレート(すなわち、完全二軸性の位相差板)を配置することが記載されている。
正の一軸性位相差板とは、面内の位相差値R0 と厚み方向の位相差値Rthとの比 R0/Rthが概ね2のフィルムであり、また完全二軸性の位相差板とは、面内の位相差値R0 がほぼ0のフィルムである。ここで、フィルムの面内遅相軸方向の屈折率をnx 、フィルムの面内進相軸方向(面内で遅相軸と直交する方向)の屈折率をny 、フィルムの厚み方向の屈折率をnz、フィルムの厚みをdとしたとき、面内の位相差値R0及び厚み方向の位相差値Rthは、それぞれ下式(I)及び(II)で定義される。
0 =(nx−ny)×d (I)
th=〔(nx+ny)/2−nz〕×d (II)
正の一軸性フィルムでは、nz≒nyとなるため、R0/Rth≒2 となる。正の一軸性フィルムであっても、R0/Rth は延伸条件の変動により、1.8〜2.2程度の間で変化することもある。完全二軸性のフィルムでは、nx≒nyとなるため、R0≒0 となる。完全二軸性のフィルムは、厚み方向の屈折率のみが異なる(小さい)ものであることから、負の一軸性を有し、光学軸が法線方向にあるフィルムとも呼ばれ、また前述のとおり、cプレートと呼ばれることもある。
上記のような完全二軸性のフィルム(cプレート)の一つとして、有機修飾粘土複合体を含むコーティング層で構成されるものがある。例えば、特開 2005-338215号公報(特許文献2)には、面内に配向している透明樹脂フィルムからなる位相差板に、粘着剤層を介して、屈折率異方性を有するコーティング位相差層を積層し、さらにそのコーティング位相差層の表面に粘着剤層を設けて複合位相差板とすることが開示されており、その樹脂位相差板側に偏光板を積層することも記載されている。また特開 2006-10912 号公報(特許文献3)には、脂肪族ジイソシアネートをベースとするウレタン樹脂をバインダーとし、これと有機修飾粘土複合体とを含む組成物をフィルム状に形成してなる位相差板が開示されており、その位相差板を、粘着剤層を介して偏光板に積層し、複合偏光板とすることも記載されている。具体的には、粘着剤付き偏光板の粘着剤層側にコーティング位相差層を転写し、そのコーティング位相差層表面に第二の粘着剤層を設ける構成が示されている。
これら特許文献2や特許文献3に開示される構成では、コーティング位相差層は二つの粘着剤層に挟まれているため、外部からの応力による影響を受けやすく、複合位相差板又は複合偏光板に物理的な外力が加わると、コーティング位相差層に応力が集中し、そこに割れが発生して、光漏れを生じることがあった。
一方で最近では、塗料分野において一般に有機溶剤系で使用されているポリイソシアネート硬化剤を水分散性としたものが開発されている。 例えば、DIC Technical Review,No. 8(2002年),p.66-67(非特許文献1)には、大日本インキ化学工業株式会社が開発した水分散性ポリイソシアネート硬化剤“バーノック DNW-5000” が紹介されている。また、特開 2002-194045号公報(特許文献4)及び特開 2002-194045号公報(特許文献5)には、水分散性ポリイソシアネート組成物が記載されている。
特開2001−109009号公報(請求項15及び段落0036) 特開2005−338215号公報 特開2006−10912号公報 特開2002−194045号公報 特開2002−194237号公報 渡辺正樹、他1名,"水分散性ポリイソシアネート硬化剤「バーノック(R) DNW-5000」",DIC Technical Review,No.8(2002年),p.66-67, 大日本インキ化学工業株式会社,[online][平成18年9月20日検索],インターネット<URL:http://www.dic.co.jp/rd/tech/no8/d02n09.pdf>
本発明者らは、透明樹脂からなる位相差板と屈折率異方性を有するコーティング位相差層を積層して複合位相差板とする際、両者の間に配置される粘着剤層をプライマー層に置き換えることで、物理的な外力によって発生しやすいコーティング位相差層の割れに起因する光漏れが抑えられることを見出し、特願 2006-225058号として特許出願している。このプライマー層は、基材上にプライマー層用塗工液を塗布する方法で形成できるが、プライマー層用塗工液は、基材へのダメージを考えると、有機溶媒溶液よりは水溶液の形で用いることが好ましい。上記特許出願の実施例では、プライマー層の形成に、水溶性のポリアミドエポキシ樹脂とポリビニルアルコールとを含む塗工液を用いており、この場合は、ポリアミドエポキシ樹脂がポリビニルアルコールを架橋させる硬化剤となる。ところが、このようなプライマー層を介して位相差板とコーティング位相差層を積層した複合位相差板、あるいはそのコーティング位相差層側に粘着剤を介して偏光板を積層した複合光学部材は、耐水性が必ずしも十分でなく、例えば、この複合位相差板又は複合光学部材を温水に浸漬したときに、プライマー層端部が白化したり、部分的に溶解したりする現象が起こりうることが明らかになってきた。
そこでさらに研究を行った結果、透明樹脂からなる位相差板にプライマー層を介して屈折率異方性を有するコーティング位相差層を積層してなる複合位相差板において、そのプライマー層の形成に、水溶性の樹脂及び、それとの反応性が高い水分散性ポリイソシアネート硬化剤を含む組成物を用いることで、耐水性に優れる複合位相差板が得られることを見出した。
したがって、本発明の目的は、液晶セルに貼り合わせて使用したときに、コーティング位相差層に微細な割れが生じにくく、光漏れの発生を抑制できるとともに、耐水性にも優れた複合位相差板を提供し、またその製造方法を提供することにある。本発明のもう一つの目的は、この複合位相差板に偏光板の如き他の光学機能を示す光学層を積層し、液晶セルに貼り合わせたときに光漏れが抑制できるとともに、耐水性にも優れた複合光学部材を提供することにある。さらに本発明のもう一つ別の目的は、この複合光学部材を液晶表示装置に適用することにある。
すなわち本発明によれば、透明樹脂からなる位相差板、プライマー層及び、有機修飾粘土複合体とバインダー樹脂とを含むコーティング位相差層がこの順に積層されてなり、そのプライマー層は、水を主体とする溶媒、水溶性樹脂及び水分散性ポリイソシアネート硬化剤を含む組成物から溶媒を除去することにより形成された層である複合位相差板が提供される。
また本発明によれば、この複合位相差板の製造方法も提供され、その方法は、透明樹脂からなる位相差板の表面に、水を主体とする溶媒、水溶性樹脂及び水分散性ポリイソシアネート硬化剤を含有するプライマー層用塗工液を塗布し、そこから溶媒を除去してプライマー層を形成し、そのプライマー層の表面に、有機修飾粘土複合体とバインダー樹脂とが有機溶媒中に含有されてなるコーティング位相差層用塗工液を塗布し、そこから溶媒を除去してコーティング位相差層を形成するものである。
さらに本発明によれば、上記の複合位相差板に、偏光板などの他の光学機能を示す光学層が積層された複合光学部材も提供される。さらにまた、この複合光学部材が、液晶セルの少なくとも一方の面に配置されている液晶表示装置も提供される。
本発明の複合位相差板は、透明樹脂からなる位相差板とコーティング位相差層との間をプライマー層で貼着することで、それを液晶セルに貼り合わせたときに、物理的な外力によって生じやすいコーティング位相差板の割れに起因する光漏れを効果的に抑制することができるとともに、プライマー塗工液に、水分散性であって反応性の高いポリイソシアネート硬化剤を水溶性樹脂とともに含有させ、それを塗布してプライマー層を形成したことで、特にプライマー層の耐水性を高めることができる。したがって、この複合位相差板を偏光板などの他の光学機能を示す光学層と組み合わせた複合光学部材を適用した液晶表示装置は、表示状態に優れ、耐水性にも優れたものとなる。
以下、添付の図面も適宜参照しながら、本発明の実施形態を詳しく説明する。本発明では、図1に示すように、透明樹脂からなる位相差板11、プライマー層12及びコーティング位相差層14をこの順に積層して、複合位相差板10とする。
位相差板11は、透明樹脂からなり、一般には面内で配向しているもので構成される。これに用いる樹脂は、透明性に優れ、光学的に均一なものであればよいが、配向性を有するフィルムの製造のしやすさなどの点から、透明な熱可塑性樹脂の延伸フィルムが好ましく用いられる。熱可塑性樹脂として具体的には例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、セルロース系樹脂、プロピレンやエチレンの如きオレフィンを主要なモノマーとするポリオレフィン系樹脂、ノルボルネンの如き多環式の環状オレフィンを主要なモノマーとする環状ポリオレフィン系樹脂などを挙げることができる。また、セルロース系樹脂などの透明樹脂基板に、液晶性物質などからなる塗布層を設け、位相差を発現させたものも、位相差板11として用いることができる。
樹脂位相差板11の面内位相差値は、複合位相差板の用途により、30〜300nm程度の範囲から適宜選択すればよい。例えば、携帯電話や携帯情報端末の如き比較的小型の液晶表示装置に複合位相差板を適用する場合、樹脂位相差板11は、1/4波長板であるのが有利である。
プライマー層12は、塗布により形成される透明樹脂で構成される。プライマーとは、一般に下塗りを意味するが、本発明におけるプライマー層12は、コーティングによって形成される位相差層14の下塗り層として機能する。また、プライマー層12の存在により、そこに直接、コーティング位相差層14用の塗工液を塗布する場合であっても、その塗工液中の有機溶媒による位相差板11への影響を防ぐことができる。プライマー層12は、粘着剤ほどの弾性を示さない樹脂で構成される。
一般的に、プライマー層を形成するための塗工液には有機溶媒の溶液を用いることが多いが、本発明で対象とする樹脂位相差板11の上にこのような有機溶媒溶液を塗布した場合には、樹脂位相差板11を膨潤させたり侵食したりして、その光学特性に影響を及ぼすことが多い。このため、通常の樹脂に対しては非溶媒である水を溶媒とした塗工液からプライマー層12を形成する。なお、水を主体とする溶媒を用いることが必要であるが、粘度の調節や表面張力の調整などのために、アルコール類などの水溶性有機溶媒を添加することは可能である。アルコール類の例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコールなどが挙げられる。
そこで、プライマー層12には、水溶性の樹脂を用いる。水溶性樹脂の例としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリルポリオール系樹脂、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルアミン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、水溶性セルロース誘導体などが挙げられる。とりわけ、イソシアナト基との反応性や水に対する溶解性などの観点から、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂は、部分ケン化ポリビニルアルコールや完全ケン化ポリビニルアルコールのほか、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコールのような、変性されたポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。適当なポリビニルアルコール系樹脂の市販品としては、それぞれ(株)クラレから販売されている部分ケン化ポリビニルアルコールである
“PVA-403” 、カルボキシル基変性部分ケン化ポリビニルアルコールである“KL-506”及び“KL-318”(いずれも商品名)などがある。
ポリビニルアルコール系樹脂をはじめとする水溶性樹脂は、その水溶性ゆえにそれ単独では耐水性が悪いため、耐水性を高めるべく何らかの硬化剤を用いて架橋してやる必要がある。架橋のためには、プライマー層用塗布液に、水溶性樹脂を架橋しうる硬化剤を入れたものを塗布する方法を採用することができる。この場合、主に、溶媒を除去することで水溶性樹脂と硬化剤の反応が進行することになる。
硬化剤は、水溶性樹脂との反応性が高いものほど、反応後の架橋密度が高くなるため、得られるプライマー層が良好な耐水性を示すようになる。しかし、硬化剤の反応性が高すぎると、塗工液中で反応が起こりやすくなってしまう。すなわち、硬化剤が溶媒と反応して失活するために耐水性が上がらないとか、あるいは塗工液中で水溶性樹脂と反応してしまって塗工液の粘度が急激に上昇するために良好な塗膜が得られないなどの不具合を生じやすい。耐水性が良好なプライマー層を形成するためには、液中での硬化剤の安定性を確保したうえで、溶媒除去時の反応性をなるべく高くすることが重要である。
そこで、本発明においては、水分散性ポリイソシアネート硬化剤を用いることで、液の安定性を確保したうえで溶媒除去時の反応性を高め、良好な耐水性を示すプライマー層が得られるようにした。ここでいう水分散性ポリイソシアネート硬化剤とは、1分子内に少なくとも2個のイソシアナト基(−NCO)を有する化合物(ポリイソシアネート)を含有するものであって、水やアルコールに対する反応性の高いイソシアナト基を有していながら、水中や樹脂水溶液中で安定に存在し得るものである。具体的には、通常は疎水性であるポリイソシアネートを、疎水性部位と親水性部位とを含む物質との組成物とすることで、水中に分散させたときに、親水性部位が最外殻層(シェル)となり、疎水性部位が内殻層(コア)となったミセル形状をとり、ポリイソシアネートをそのミセル構造のコア内部に取り込んだ構造となるものであることができる。このような構造をとる水分散性ポリイソシアネート硬化剤を用いれば、ポリイソシアネート中のイソシアナト基と、水、アルコール又は水溶性樹脂類との反応を防ぐことができ、液の安定性が高く、かつ、溶媒を除去した段階でミセル構造が壊れるために、速やかにイソシアナト基と水溶性樹脂の反応が進行して、耐水性を高めることができる。
水分散性ポリイソシアネート硬化剤の具体例は、例えば、前記特許文献4(特開 2002-194045号公報)や特許文献5(特開 2002-194045号公報)に示されている。適当な水分散性ポリイソシアネート硬化剤の市販品としては、大日本インキ化学工業(株)から販売されている“バーノック DNW-5000”(商品名) があり、この商品は、前記非特許文献1
(DIC Technical Review,No. 8(2002年),p.66-67)に紹介されている。
プライマー層12を形成するために用いる水溶性樹脂と水分散性ポリイソシアネート硬化剤の割合は、水溶性樹脂100重量部に対して、水分散性ポリイソシアネート硬化剤が10〜200重量部程度となる範囲から、水溶性樹脂の種類や水分散性ポリイソシアネート硬化剤の種類などに応じて適宜決定すればよく、とりわけ20〜100重量部、さらには20〜60重量部程度の範囲から選択するのが好ましい。また、プライマー層用塗工液は、その固形分濃度が5〜30重量%程度となるようにするのが好ましい。プライマー層12の厚みは、0.1〜10μm程度の範囲、とりわけ0.5〜10μm程度とするのが好ましい。
プライマー層12の形成にあたり、使用する塗工方式は特に制限されるものでなく、ダイレクト・グラビア法、リバース・グラビア法、ダイコート法、カンマコート法、バーコート法など、公知の各種コーティング法を用いることができる。
コーティング位相差層14は、有機修飾粘土複合体とバインダー樹脂とを有機溶媒中に含有してなる塗工液から溶媒を除去して形成される層である。ここで有機修飾粘土複合体は、有機物と粘土鉱物との複合体であって、具体的には例えば、層状構造を有する粘土鉱物と有機化合物を複合化したものであることができ、有機溶媒に分散可能なものである。層状構造を有する粘土鉱物としては、スメクタイト族や膨潤性雲母などが挙げられ、その陽イオン交換能により有機化合物との複合化が可能となる。なかでもスメクタイト族は、透明性にも優れることから好ましく用いられる。スメクタイト族に属するものとしては、ヘクトライト、モンモリロナイト、ベントナイトなどが例示できる。これらのなかでも化学合成されたものは、不純物が少なく、透明性に優れるなどの点で好ましい。特に、粒径を小さく制御した合成ヘクトライトは、可視光線の散乱が抑制されるために好ましく用いられる。
粘土鉱物と複合化される有機化合物としては、粘土鉱物の酸素原子や水酸基と反応しうる化合物、また交換性陽イオンと交換可能なイオン性の化合物などが挙げられ、有機修飾粘土複合体が有機溶媒に膨潤又は分散できるようになるものであれば特に制限はないが、具体的には含窒素化合物などを挙げることができる。含窒素化合物としては、例えば、1級、2級又は3級のアミン、4級アンモニウム化合物などが挙げられる。なかでも、陽イオン交換が容易であることなどから、4級アンモニウム化合物が好ましく用いられる。4級アンモニウム化合物としては、例えば、長鎖アルキル基を有するもの、アルキルエーテル鎖を有するものなどが挙げられる。とりわけ、炭素数6〜30、特に炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム化合物や、n=1〜50、特にn=5〜30の−(CH2CH(CH3)O)nH基、又は −(CH2CH2CH2O)nH基を有する4級アンモニウム化合物が好ましい。
有機修飾粘土複合体には、その製造の際に用いられる各種副原料に起因して、塩素を含む化合物が不純物として混入していることが多い。そのような塩素化合物の量が多いと、コーティング位相差層とした後にフィルムからブリードアウトする可能性がある。その場合には、粘着剤を介してそのコーティング位相差層を液晶セルガラスに貼合したときに、粘着力が経時で大幅に低下してしまう。そこで、有機修飾粘土複合体からは、洗浄により塩素化合物を除去しておくのが好ましく、その中に含まれる塩素の量を2,000ppm以下とした状態で有機溶媒中に含有させれば、かかる粘着力の低下を抑えることができる。塩素化合物の除去は、有機修飾粘土複合体を水洗する方法により行うことができる。
有機修飾粘土複合体は、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。適当な有機修飾粘土複合体の市販品には、それぞれコープケミカル(株)から“ルーセンタイト STN”や“ルーセンタイト SPN”の商品名で販売されている合成ヘクトライトと4級アンモニウム化合物との複合体などがある。
このような有機溶媒に分散可能な有機修飾粘土複合体は、プライマー層12へのコーティングのしやすさ、光学特性の発現性や力学的特性などの点から、バインダー樹脂と組み合わせて用いられる。有機修飾粘土複合体と併用するバインダー樹脂は、トルエン、キシレン、アセトン、酢酸エチルなどの有機溶媒に溶解するもの、とりわけ、ガラス転移温度が室温以下(約20℃以下)であるものが、好ましく用いられる。また、液晶表示装置に適用する場合に必要とされる良好な耐湿熱性及びハンドリング性を得るためには、疎水性を有するものが望ましい。このような好ましいバインダー樹脂としては、ポリビニルブチラールやポリビニルホルマールの如きポリビニルアセタール樹脂、セルロースアセテートブチレートの如きセルロース系樹脂、ブチルアクリレートの如きアクリル系樹脂、ウレタン樹脂、メタアクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
適当なバインダー樹脂の市販品としては、電気化学工業(株)から“デンカブチラール #3000-K”の商品名で販売されているポリビニルアルコールのアルデヒド変性樹脂、東亞合成(株)から“アロン S1601”の商品名で販売されているアクリル系樹脂、住化バイエルウレタン(株)から“SBU ラッカー 0866” の商品名で販売されているイソホロンジイソシアネートベースのウレタン樹脂などがある。
有機溶媒に分散可能な有機修飾粘土複合体とバインダー樹脂の割合は、前者:後者の重量比で1:2〜10:1の範囲、とりわけ1:1〜2:1の範囲にあることが、有機修飾粘土複合体とバインダー樹脂からなる層の割れ防止などの力学的特性向上のために好ましい。
有機修飾粘土複合体とバインダー樹脂は、有機溶媒に含有させたコーティング位相差層用塗工液の形で、プライマー層12上に塗布される。この際一般には、バインダー樹脂は有機溶媒に溶解され、そして有機修飾粘土複合体は有機溶媒中に分散される。この塗工液の固形分濃度は、調製後の塗工液が実用上問題ない範囲でゲル化したり白濁したりしなければ制限はないが、通常、有機修飾粘土複合体とバインダー樹脂の合計固形分濃度が3〜15重量%程度となる範囲で使用される。最適な固形分濃度は、有機修飾粘土複合体とバインダー樹脂それぞれの種類や両者の組成比により異なるため、組成毎に設定される。また、製膜する際の塗布性を向上させるための粘度調整剤や、疎水性及び/又は耐久性をさらに向上させるための硬化剤など、各種の添加剤を加えてもよい。
また、このコーティング位相差層用塗工液は、カールフィッシャー水分計で測定される含水率を0.15〜0.35重量%の範囲としておくのが好ましい。この含水率が 0.35重量%を越えると、非水溶性有機溶媒中での相分離を生じ、塗工液が2層に分離してしまう傾向にある。一方、その含水率が 0.15重量%を下回ると、コーティング位相差層としたときに、ヘイズ値を高める傾向にある。水分の測定方法には、乾燥法、カールフィッシャー法、誘電率法などがあるが、ここでは、簡便かつ微量単位の測定が可能なカールフィッシャー法を採用する。
コーティング位相差層用塗工液の含水率を上記範囲に調整する方法は特に制限されないが、塗工液中に水を添加する方法が簡便で、望ましい。本発明で用いるような有機溶媒、有機修飾粘土複合体及びバインダー樹脂を、通常の方法で混合しただけでは、 0.15重量%以上の含水率を示すことはほとんどない。そこで、有機溶媒、有機修飾粘土複合体及びバインダー樹脂を混合した塗工液に少量の水を添加することにより、含水率を上記範囲とするのが好ましい。水を添加する方法は、塗工液の調製工程のいかなる時期の添加でも有効であり、特に制限はないが、塗工液の調製工程で一定時間経過後、サンプリングして含水率を測定したのち、所定量の水を添加する方法が、再現性及び精度よく含水率を制御できる点で好ましい。なお、添加された水の量が、カールフィッシャー水分計による測定結果と合わないこともある。その原因として、水が一部、有機修飾粘土複合体との相互作用(例えば、吸着)を起こしていることなどが考えられる。ただし、カールフィッシャー水分計で測定される水分率を0.15〜0.35重量%に保てば、得られるコーティング位相差板のヘイズ値が低く抑えられる。
コーティング位相差層14を形成するのに使用する塗工方式も特に制限されるものでなく、ダイレクト・グラビア法、リバース・グラビア法、ダイコート法、カンマコート法、バーコート法など、公知の各種コーティング法を用いることができる。
コーティング位相差層の厚み方向の屈折率異方性は、前記式(II)により定義される厚み方向の位相差値Rthで表され、この値は、面内の遅相軸を傾斜軸として40度傾斜させて測定される位相差値R40と面内の位相差値R0 とから算出できる。すなわち、式(II)による厚み方向の位相差値Rthは、面内の位相差値R0 、遅相軸を傾斜軸として40度傾斜させて測定した位相差値R40、フィルムの厚みd、及びフィルムの平均屈折率n0 を用い、以下の式 (III)〜(V)から数値計算によりnx、ny及びnz を求め、これらを前記式(II)に代入して、算出することができる。
0 =(nx−ny)×d (III)
40=(nx−ny')×d/cos(φ) (IV)
(nx+ny+nz)/3=n0 (V)
ここで、
φ=sin-1〔sin(40°)/n0
y'=ny×nz/〔ny 2×sin2(φ)+nz 2×cos2(φ)〕1/2
コーティング位相差層の厚み方向位相差値Rthは、40〜300nm程度の範囲から、その用途、特に液晶セルの特性に合わせて、適宜選択するのが好ましい。その厚み方向位相差値Rthは、有利には50nm以上、また有利には200nm以下である。
次に、複合位相差板10の製造方法について説明する。まず、水を主体とする溶媒に、水溶性樹脂及び水分散性ポリイソシアネート硬化剤を混合して、プライマー層用塗工液を調製する。この塗工液における溶媒は、水を主体とするものであり、水だけであってもよいし、水に少量の水溶性有機溶媒を混合したものであってもよい。混合しうる水溶性有機溶媒には、先に例示したアルコール類や、水分散性ポリイソシアネート硬化剤の溶剤として用いられることがある各種溶媒、例えばエーテル類などが包含される。
このプライマー層用塗工液を、透明樹脂からなる位相差板11の表面に塗布し、そこから溶媒を除去してプライマー層12を形成する。次にそのプライマー層12の表面に、有機修飾粘土複合体とバインダー樹脂とが有機溶媒中に含有されてなるコーティング位相差層用塗工液を塗布し、そこから溶媒を除去してコーティング位相差層14を形成する。プライマー層を形成するための溶媒の除去や、コーティング位相差層を形成するための溶媒の除去は、適当な温度に加熱して乾燥させることにより行われる。各塗工液の組成や塗布方法などは、これまでの説明に準じればよい。
次に、複合光学部材について説明する。図1に示したような複合位相差板10は、その一方の面に、偏光板などの他の光学機能を示す光学層に積層して、複合光学部材とすることができる。複合光学部材の層構成の例を図2に断面模式図で示した。この例では、図1に示した複合位相差板10における透明樹脂からなる位相差板11側に、他の光学機能を示す光学層21が積層され、複合光学部材20となっている。両者の積層には、例えば、粘着剤を用いることができ、図2ではこれを粘着剤層22として表示している。他の光学機能を示す光学層21は、少なくとも偏光板を含むことが好ましいが、その他に例えば、輝度向上フィルムなど、液晶表示装置等の形成に従来から用いられているものを挙げることができる。
他の光学層21として用いる偏光板は、面内の一方向に振動面を有する直線偏光を透過し、面内でそれと直交する方向に振動面を有する直線偏光を吸収するものであればよい。具体的には、ポリビニルアルコールフィルムに二色性色素が吸着配向している偏光子の少なくとも片面(片面又は両面)に保護フィルムが貼合されたものを用いることができる。二色性色素として、ヨウ素を用いたヨウ素系偏光板や、二色性有機染料を用いた染料系偏光板があるが、いずれも用いることができる。また保護フィルムとしては、トリアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂や、ノルボルネンの如き多環式の環状オレフィンを主要なモノマーとする環状ポリオレフィン系樹脂などが用いられる。他の光学層21が偏光板を含む場合は、図2に示すように、複合位相差板10の樹脂位相差板11側に、この偏光板を含む他の光学層21を積層するのが好ましい。
他の光学層21の貼合に粘着剤を用いる場合、その粘着剤は、アクリル系ポリマーや、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルなどをベースポリマーとするもので構成することができる。なかでも、アクリル系粘着剤のように、光学的な透明性に優れ、適度の濡れ性や凝集力を保持し、基材との接着性にも優れ、さらには耐候性や耐熱性などを有し、加熱や加湿の条件下で浮きや剥がれ等の剥離問題を生じないものを選択して用いることが好ましい。アクリル系粘着剤においては、メチル基やエチル基、ブチル基等の炭素数が20以下のアルキル基を有するアクリル酸のアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどからなる官能基含有アクリル系モノマーとを、ガラス転移温度が好ましくは25℃以下、さらに好ましくは0℃以下となるように配合した、重量平均分子量が10万以上のアクリル系共重合体が、ベースポリマーとして有用である。
図2に示すような複合光学部材20は、液晶セルの少なくとも一方の面に配置して、液晶表示装置とすることができる。液晶セルの両面に、このような複合光学部材を配置することもできる。液晶セルの片面に複合光学部材を配置した場合、液晶セルのもう一方の面には、他の偏光板が、必要に応じて位相差板を介在させて配置される。液晶セルは、背景技術の項で述べた如く、垂直配向(VA)モードのものが好ましいが、その他、ベンド配向(ECB)モードなど、他の方式の液晶セルに対しても、本発明により製造される複合位相差板又は複合光学部材は、有効に機能する。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ない限り重量基準である。
[実施例1]
(a)塗工液の調製
(a1)プライマー層用塗工液
水溶性樹脂として、(株)クラレから販売されている部分ケン化ポリビニルアルコールである“PVA-403”(商品名、ケン化度約80モル%) を、また硬化剤として、大日本インキ化学工業(株)から販売されている水分散性イソシアネート硬化剤である“バーノック DWN-5000” 〔商品名、固形分濃度約80%のジエチレングリコールジメチルエーテル溶液)を用い、以下の組成で配合して、プライマー層用塗工液を調製した。なお、水分散性イソシアネート硬化剤“バーノック DWN-5000” は、上記固形分濃度約80%の溶液量で表示した。固形分としては約6部になる。塗工液の調製にあたっては、水を80℃に温めながらポリビニルアルコール“PVA-403” と混合し、攪拌後、室温まで冷却し、さらに水分散性ポリイソシアネート硬化剤“バーノック DNW-5000”を加えて攪拌した。
Figure 2008076816
(a2)コーティング位相差層用塗工液
有機修飾粘土複合体として、コープケミカル(株)から販売されている合成ヘクトライトとトリオクチルメチルアンモニウムイオンとの複合体である“ルーセンタイト STN”
(商品名)を、またバインダー樹脂として、住化バイエルウレタン(株)から販売されているイソホロンジイソシアネートベースのポリウレタン樹脂で固形分濃度30%の樹脂ワニスである“SBU ラッカー 0866”(商品名) を用い、以下の組成で配合して、コーティング位相差層用塗工液を調製した。
Figure 2008076816
ここで用いた有機修飾粘土複合体は、メーカーにて、有機修飾前の合成ヘクトライト製造後に酸洗浄し、それを有機修飾し、さらに水洗した状態で入手したものである。そこに含まれる塩素量は1,111ppmであった。また、この塗工液は、上記組成で混合し、攪拌後、孔径1μm のフィルターで濾過して調製したものであり、カールフィッシャー水分計で測定される含水率は 0.25%であった。この塗工液における有機修飾粘土複合体/バインダー樹脂の固形分重量比は6/4である。
(b)複合位相差板の作製
ノルボルネン系樹脂の一軸延伸フィルムである位相差板〔住友化学(株)から販売されている“CSES430120Z-S-KY”(商品名)、面内位相差値120nm〕に、上記(a1)で調製したプライマー層用塗工液を塗布し、80℃で約3分間乾燥して、厚さ約2μm のプライマー層を形成した。次に、そのプライマー層の上に、上記(a2)で調製したコーティング位相差層用塗工液を塗布し、その後90℃で6分間乾燥してコーティング位相差層を形成し、樹脂位相差板/プライマー層/コーティング位相差層の順に積層された複合位相差板を得た。得られた複合位相差板は、例えば三層を手で剥がそうとしても剥離せず、三層が十分な強度で接着していた。
(c)複合光学部材の作製
上記(b)で得た複合位相差板の樹脂位相差板側表面に、粘着剤付きのポリビニルアルコール/ヨウ素系偏光板〔住友化学(株)から販売されている “SRW062AP6-HC2”(商品名)〕をその粘着剤層側で貼合し、偏光板/粘着剤層/樹脂位相差板/プライマー層/コーティング位相差層の順に積層された複合光学部材を作製した。
(d)複合光学部材の評価
(d1)耐水性の評価
上記(c)で作製した複合光学部材を60℃の温水に30分間浸漬してから引き上げ、端部を顕微鏡で観察して耐水性の評価を行った。その結果、複合光学部材の端部から内側に向けてプライマー層が白化した部分の幅は、最大で0.2mm であった。
(d2)外力によるコーティング位相差層の割れに起因する光漏れの評価
上記(c)で作製した複合光学部材をそのコーティング位相差層側でアクリル系粘着剤を介してガラス板に貼合し、鉛筆硬度試験機を用いて、偏光板側から硬度Hの鉛筆で押圧し、鉛筆への荷重を増やしていって、外力によるコーティング位相差層の割れに起因する光漏れの評価を行った。この際、複合光学部材の偏光板とクロスニコル状態になるよう、別の偏光板をガラス板の複合光学部材が貼合されている面と反対の面に配置し、ライトボックス上で光漏れを確認した。その結果、荷重限界である2.0kg の荷重を加えても、光漏れは生じなかった。
[比較例1]
(a)プライマー層用塗工液の調製
水溶性樹脂として、実施例1で用いたのと同じ部分ケン化ポリビニルアルコール“PVA-403” を、また硬化剤として、住化ケムテックス(株)から販売されているポリアミドエポキシ樹脂である“スミレーズレジン 650(30)”(商品名、固形分濃度30%の水溶液)を用い、以下の組成で配合して、比較のためのプライマー層用塗工液を調製した。なお、ポリアミドエポキシ樹脂“スミレーズレジン 650(30)”は、上記固形分濃度30%の水溶液量で表示した。固形分としては 2.25部になる。 塗工液の調製にあたっては、水を80℃に温めながらポリビニルアルコール“PVA-403” と混合し、攪拌後、室温まで冷却し、さらにポリアミドエポキシ樹脂“スミレーズレジン 650(30)”を加えて攪拌した。
Figure 2008076816
(b)複合位相差板の作製
実施例1で用いたのと同じノルボルネン系樹脂の一軸延伸フィルムである位相差板
“CSES430120Z-S-KY”に、上記(a)で調製したプライマー層用塗工液を塗布し、80℃で約3分間乾燥して、厚さ約2μm のプライマー層を形成した。次に、そのプライマー層の上に、実施例1の(a2)に示したのと同じコーティング位相差層用塗工液を塗布し、その後90℃で6分間乾燥してコーティング位相差層を形成し、樹脂位相差板/プライマー層/コーティング位相差層の順に積層された複合位相差板を得た。得られた複合位相差板は、例えば三層を手で剥がそうとしても剥離せず、三層が十分な強度で接着していた。
(c)複合光学部材の作製
上記(b)で得た複合位相差板の樹脂位相差板側表面に、実施例1の(c)で用いたのと同じ粘着剤付き偏光板“SRW062AP6-HC2” をその粘着剤層側で貼合し、偏光板/粘着剤層/樹脂位相差板/プライマー層/コーティング位相差層の順に積層された複合光学部材を作製した。
(d)複合光学部材の評価
(d1)耐水性の評価
上記(c)で作製した複合光学部材について、実施例1の(d)と同様の方法で60℃の温水に30分間浸漬する耐水性評価を行った。その結果、複合光学部材の端部から内側に向けてプライマー層が白化した部分の幅は、最大で1mmであった。
(d2)外力によるコーティング位相差層の割れに起因する光漏れの評価
上記(c)で作製した複合光学部材について、実施例1の(d2)と同様の鉛筆硬度試験機を用いた外力による光漏れの評価を行った。その結果、荷重限界である2.0kg の荷重を加えても、光漏れは生じなかった。
[比較例2]
離型処理が施された厚さ38μm のポリエチレンテレフタレートフィルム(この例では以降、「離型フィルム」とする)の離型処理面に、実施例1の(a2)に示したコーティング位相差層用塗工液を塗布し、その後90℃で3分間乾燥して、コーティング位相差層を形成した。そのコーティング位相差層の表面に、実施例1の(b)で用いた樹脂位相差板と同じ材質でかつ同じ面内位相差値を有し、片面に粘着剤層が設けられた位相差板〔住友化学(株)から販売されている“CSES430120Z6-F8-KY”(商品名)〕をその粘着剤層側で貼合して、樹脂位相差板/粘着剤層/コーティング位相差層/離型フィルムの四層構成とした。次に、その樹脂位相差板側表面に、実施例1の(c)で用いたのと同じ粘着剤付き偏光板“SRW062AP6-HC2” をその粘着剤層側で貼合して、偏光板/粘着剤層/樹脂位相差板/粘着剤層/コーティング位相差層/離型フィルムの六層構成とした。そこから離型フィルムを剥ぎ取った後、露出したコーティング位相差層側で、アクリル系粘着剤を介してガラス板に貼合した。この状態で、実施例1の(d2)と同様の鉛筆硬度試験機を用いた外力による光漏れの評価を行った。その結果、600gの荷重を加えた時点で光漏れが観察された。
以上の実施例及び比較例の結果を表1にまとめた。
Figure 2008076816
複合位相差板の構成を概略的に示す断面模式図である。 複合光学部材の構成を概略的に示す断面模式図である。
符号の説明
10……複合位相差板、
11……透明樹脂からなる位相差板、
12……プライマー層、
14……コーティング位相差層
20……複合光学部材、
21……他の光学機能を示す光学層、
22……粘着剤層。

Claims (9)

  1. 透明樹脂からなる位相差板、プライマー層及び、有機修飾粘土複合体とバインダー樹脂とを含むコーティング位相差層がこの順に積層されてなり、該プライマー層は、水を主体とする溶媒、水溶性樹脂及び水分散性ポリイソシアネート硬化剤を含む組成物から溶媒を除去することにより形成された層であることを特徴とする複合位相差板。
  2. 透明樹脂からなる位相差板は、面内で配向している透明樹脂フィルムからなる請求項1に記載の複合位相差板。
  3. プライマー層を構成する水溶性樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂である請求項1又は2に記載の複合位相差板。
  4. 水分散性ポリイソシアネート硬化剤は、少なくとも親水性部位と疎水性部位とを含有してなり、水に分散させたときに、該親水性部位をシェル、該疎水性部位をコアとするミセル形状をとるものである請求項1〜3のいずれかに記載の複合位相差板。
  5. 透明樹脂からなる位相差板の表面に、水を主体とする溶媒、水溶性樹脂及び水分散性ポリイソシアネート硬化剤を含有するプライマー層用塗工液を塗布し、そこから溶媒を除去してプライマー層を形成し、そのプライマー層の表面に、有機修飾粘土複合体とバインダー樹脂とが有機溶媒中に含有されてなるコーティング位相差層用塗工液を塗布し、そこから溶媒を除去してコーティング位相差層を形成することを特徴とする複合位相差板の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の複合位相差板に、他の光学機能を示す光学層が積層されていることを特徴とする複合光学部材。
  7. 他の光学層は、少なくとも偏光板を含む請求項6に記載の複合光学部材。
  8. 複合位相差板のコーティング位相差層側に偏光板が積層されている請求項7に記載の複合光学部材。
  9. 液晶セルの少なくとも一方の面に、請求項6〜8のいずれかに記載の複合光学部材が配置されていることを特徴とする液晶表示装置。
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