以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式によって画像を形成するプリンタの一実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、潜像担持体としてのドラム状の感光体25(例えば、有機感光体:OPC)は、図中時計回り方向に回転駆動される。
操作者がコンタクトガラス50に図示しない原稿を載置し、図示しないプリントスタートスイッチを押すと、原稿照明光源25及びミラー52を具備する第1走査光学系53と、ミラー54,55を具備する第2走査光学系56とが移動して、原稿画像の読み取りが行われる。
走査された原稿画像がレンズ57の後方に配設された画像読み取り素子58で画像信号として読み込まれ、読み込まれた画像信号はデジタル化された後に画像処理される。そして、処理後の信号でレーザーダイオード(LD)が駆動され、このレーザーダイオードからのレーザー光がポリゴンミラー59で反射した後、ミラー60を介して感光体25を走査する。この走査に先立って、感光体25は帯電装置61によって一様に帯電せしめられており、レーザー光による走査により、感光体25の表面に静電潜像が形成される。
この静電潜像は、現像装置30によってトナーが付着せしめられてトナー像に現像された後、感光体25の回転に伴って、転写チャージャー66との対向領域である転写領域に搬送される。この転写領域には、感光体25上のトナー像と同期するように、第1給紙コロ64を具備する第1給紙部62、又は第2給紙コロ65を具備する第2給紙部63から記録紙Pが送り込まれる。そして、感光体25上のトナー像は、転写チャージャー66のコロナ放電によって記録紙P上に転写される。このようにしてトナー像が転写された記録紙Pは、分離チャージャー67のコロナ放電によって感光体25表面から分離された後、搬送ベルト68によって定着ローラ対69に向けて搬送される。そして、定着ローラ対69の2つのローラの当接によって形成された定着ニップ内に進入して、トナー像が定着せしめられた後、機外の排紙トレイ70に向けて排紙される。
転写領域を通過した感光体25表面に付着している転写残トナーは、クリーニング装置71によって感光体25表面から除去される。このようにしてクリーニング処理が施された感光体25表面は、除電ランプ72によって除電されて次の潜像形成に備えられる。
図2は、本プリンタの現像装置30を感光体25とともに示す拡大構成図である。同図の現像装置30は、ケーシング31内に、トナーと磁性粒子とを含有する図示しない混合剤を収容する収容部を有している。また、収容部から供給されるトナーを受け取って感光体25との対向領域である現像領域まで搬送するための筒状のトナー搬送基板1を収容するトナー搬送部33も有している。
上述の収容部は、第1収容部32aと第2収容部32bと第3収容部32cとに分かれており、第1収容部32aと第2収容部32bとは仕切壁31aによって区切られている。第1収容部32a内には、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられながら、混合剤を図紙面に直交する方向の手前側から奥側に向けて搬送する第1搬送スクリュウ34が配設されている。また、第2収容部32a内には、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられながら混合剤を同方向の奥側から手前側に向けて搬送する第2搬送スクリュウ35が配設されている。また、第3収容部32c内には、供給ロール36が配設されている。
第1収容部32a内において、第1搬送スクリュウ34の回転に伴って図中手前側から奥側の端部付近まで搬送された混合剤は、仕切壁31aに設けられた図示しない連通口を通って第2収容部32b内に進入する。そして、第2搬送スクリュウ34の回転に伴って、今度は図中奥側から手前側に向けて搬送される。
第3収容部32c内に配設された供給ロール36は、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動せしめられる非磁性パイプからなる供給スリーブ36aと、これに連れ回らないように内包されるマグネットローラ36bとを有している。そして、マグネットローラ36bは、その周方向にN極とS極とが交互に並ぶ6つの磁極を具備している。
第2収容部32b内において第2搬送スクリュウ34の回転に伴って図中奥側から手前側に搬送される混合剤の一部は、マグネットローラ36bの発する磁力によって供給スリーブ36aの表面に吸着される。そして、混合剤担持体たる回転する供給スリーブ36aに汲み上げられて第3収容部32c内に進入する。その後、供給スリーブ36aに連れ回りながら、ドクターグレード37との対向位置でスリーブ上での層厚が規制された後、トナー搬送部33内における筒状のトナー搬送基板1との対向位置に至る。
供給ロール36には、ロール電源回路38によってロールバイアスが印加されている。供給スリーブ36aに連れ回りながらトナー搬送基板1との対向位置に進入した混合剤中のトナーは、このロールバイアスと、トナー搬送基板1の搬送電極に印加されるパルス電圧の平均電位との電位差により、混合剤から離脱してトナー搬送基板1上に転移する。この転移により、トナー搬送基板1の被供給領域にトナーが供給される。なお、トナー搬送基板1の搬送電極に印加されるパルス電圧については、後述する。
トナー搬送基板1の被供給領域に供給された粉体としてのトナーは、後述する進行電界の作用によってトナー搬送基板1の曲面に沿ってホッピングしながら、相対的に図中反時計回り方向に搬送される。そして、感光体25と対向する現像領域に進入して、その一部が現像に寄与する。現像に寄与しなかったトナーは、トナー搬送基板1の曲面に沿ったホッピングを更に続けて、やがて供給スリーブ36a上に回収される。なお、トナーをホッピングによってトナー搬送基板1の曲面上を図中反時計回り方向に搬送する例について説明したが、逆回りに搬送してもよい。また、周面を有さない扁平状のトナー搬送基板1を用いて、基板の一端側から他端側に向けてトナーを搬送してもよい。
第3収容部32cの供給スリーブ36a上において、トナー搬送基板1にトナーを供給した混合剤は、スリーブの回転に伴ってトナー搬送基板1との対向位置を通過した後、第2収容部32bとの対向位置に戻ってくる。そして、スリーブ表面から離脱して第2収容部32bに戻る。更に、第2搬送スクリュウ35の回転に伴って図紙面に直交する方向の手前側端部付近まで搬送された後、仕切壁31aに設けられた図示しない連通口を通って第1収容部32a内に戻る。
第1収容部32a内に戻った混合剤は、第1搬送スクリュウ34の回転に伴って図中手前側から奥側に搬送される過程で、ケーシング31の底面に固定された透磁率センサ等からなるトナー濃度センサ40によってトナー濃度が検知される。この検知結果は、図示しないトナー濃度制御部に送られる。トナー濃度制御部は、トナー濃度センサ40による検知結果が所定の閾値以下であると、図示しないトナー補給装置を所定時間だけ駆動する。これにより、ケーシング31のトナー補給口31bを通して第1収容部32a内にトナーが補給され、トナー濃度の回復を図る。
第1収容部32a内に補給されたトナーは、第1搬送スクリュウ34や第2搬送スクリュウ35によって磁性粒子と撹拌混合されながら搬送されたり、供給スリーブ36a上でドクターブレード37による混合剤層厚規制で加圧されたりすることで、十分に摩擦帯電せしめられる。そして、この状態でトナー搬送基板1の現像前搬送領域に供給される。
供給スリーブ36aの回転駆動系、ロール電源回路38からの出力のオンオフ、及び後述する搬送電源回路5からの出力のオンオフは、制御プログラムを記憶している図示しない制御部によって制御される。この制御部は、演算手段たるCPU(Central Processing Unit)、データ記憶手段たるROM(Read Only Memory)、データ記憶手段たるRAM(Random Access Memory)等を有しており、各種駆動系のオンオフや、バイアス印加のオンオフを制御するのである。
図3は、トナー搬送基板1を感光体25とともに示す拡大構成図である。なお、同図においては、便宜上、トナー搬送基板1を扁平板状に示しているが、実際には、トナー搬送基板1は先に図2に示したように筒状の形状になっている。
図3において、トナー搬送基板1は、基体たる絶縁性の支持基板1aと、これの表面に所定のピッチで配設された複数の搬送電極1bからなる電極列と、支持基板1aの非電極形成面や搬送電極1bを覆う無機又は有機の絶縁性材料からなる表面層1cとを有している。電極列は、互いに並び順が連続するn個の搬送電極1bの組が繰り返し配設されたものである。以下、A相搬送電極、B相搬送電極、C相搬送電極という3個の搬送電極の組が繰り返し配設された電極列を採用した例について説明するが、4個以上の搬送電極の組の繰り返しを採用してもよい。
支持基板1aとしては、ガラス、樹脂、セラミックス等の絶縁性材料からなる基板、ステンレス等の導電性材料からなる基層の表面にSiO2等の絶縁膜を成膜した基板、ポリイミドフィルムなどのフレキシブルに変形可能な材料からなる基板等を採用することが可能である。
複数の搬送電極1bは、それぞれ、支持基板1aの表面上に、Al、Ni−Cr等の導電性材料が0.1〜10[μm]、好ましくは0.5〜2.0[μm]で成膜されたものを、フォトリソグラフィー等の技術によって所要の電極形状にパターン化したものである。これらの搬送電極1bのトナー搬送方向(電極並び方向)における長さ(電極幅)については、トナーの平均粒径の1倍以上20倍以下とすることが望ましい。また、搬送電極1bのトナー搬送方向の配設ピッチについては、粒子の平均粒径の1倍以上20倍以下とすることが望ましい。
表面層1cとしては、例えばSiO2、TiO2、TiO4、SiON、BN、TiN、Ta2O5等の材料からなる、厚さ0.5〜10[μm]、好ましくは0.5〜3[μm]のものを例示することができる。
それぞれの搬送電極1bに対しては、トナー搬送基板1上に進行電界を形成するための互いに位相ずれしたn相(本例では3相)の繰り返しのパルス電圧がパルス電圧印加手段たる搬送電源回路5によって印加される。具体的には、感光体25との対向領域で且つ感光体25に比較的近い領域である現像領域Ar2においては、A相搬送電極、B相搬送電極、C相搬送電極に対して、互いに位相ずれした繰り返しパルス電圧であるVa2、Vb2、Vc2が印加される。この印加のために、搬送電源回路5におけるVa2を出力するための端子Sa2は、導通線や基板内に形成された図示しないリード電極により、現像領域Ar2における各A相搬送電極に接続されている。また、搬送電源回路5におけるVb2を出力するための端子Sb2は、導通線や基板内に形成された図示しないリード電極により、現像領域Ar2における各B相搬送電極に接続されている。また、搬送電源回路5におけるVc2を出力するための端子Sc2は、導通線や基板内に形成された図示しないリード電極により、現像領域Ar2における各C相搬送電極に接続されている。
これに対し、現像領域Ar2とは異なる領域においては、A相搬送電極、B相搬送電極、C相搬送電極に対して、互いに位相ずれした繰り返しパルス電圧であるVa1、Vb1、Vc1が印加される。この印加のために、搬送電源回路5におけるVa1を出力するための端子Sa1は、導通線や基板内に形成された図示しないリード電極により、現像領域Ar2における各A相搬送電極に接続されている。また、搬送電源回路5におけるVb1を出力するための端子Sb1は、導通線や基板内に形成された図示しないリード電極により、現像領域Ar2とは異なる領域における各B相搬送電極に接続されている。また、搬送電源回路5におけるVc1を出力するための端子Sc1は、導通線や基板内に形成された図示しないリード電極により、現像領域Ar2とは異なる領域における各C相搬送電極に接続されている。
現像領域Ar2よりもトナー搬送方向上流側の基板領域は、トナー搬送基板1上のトナーTを現像領域Ar2に向けて搬送するための現像前搬送領域Ar1となっている。また、現像領域Ar2よりもトナー搬送方向下流側の基板領域は、感光体1の表面に過剰に付着したトナーTをトナー搬送基板1上に戻したり、トナー搬送基板1上からトナーTを回収したりする現像後搬送領域Ar3となっている。
トナー搬送基板1上のトナーTは、各搬送電極1bに繰り返しのパルス電圧が印加されることによって基板上に形成される進行電界により、基板上でホッピングしながら図中右側から左側へと搬送されていく。これにより、現像前搬送領域Ar1内に存在するトナーTが現像前搬送領域Ar1内から現像領域Ar2に向けて搬送され、現像領域Ar2内に進入する。現像領域Ar2では、トナー搬送基板1の上方に、図示しない駆動手段によって回転駆動されるドラム状の感光体25がトナー搬送基板1と所定の現像ギャップを介して対向するように配設されている。そして、ホッピングによって感光体25にある程度近づいたトナーTに対し、周知の電子写真プロセスによって感光体25の表面に形成された静電潜像による電界が作用して、トナーTが静電潜像に付着する。このとき、感光体25の非画像部(地肌部)上にはトナーTを静電反発させる電界が形成されているため、殆どのトナーTは地肌部に付着せずに、静電潜像だけに選択的に付着する。このような選択的なトナーTの付着により、感光体25上の静電潜像がトナー像に現像される。
現像領域Ar2内では、このようにしてトナーTの一部が現像に寄与しながら、残りがホッピングの繰り返しによって図中右側から左側へと搬送されていき、現像領域Ar2を通過して現像後搬送領域Ar3に進入する。
現像後搬送領域Ar3における入口側付近では、感光体25の地肌部電位と、各搬送電極1bのパルス電位との関係により、ホッピングしたトナーTを地肌部からトナー搬送基板1に向けて静電移動させる電界が形成される。これにより、地肌部上に付着してしまったトナーTがトナー搬送基板1に回収される。
上述の現像ギャップについては、50〜1000[μm]、好ましくは150〜400[μm]に設定することが望ましい。
トナー搬送基板12の複数の搬送電極1bに対してn相(本例では3相)のパルス電圧を印加すると、基板表面には移相電界が発生する。基板表面上のトナー粒子は、この進行電界による静電気的な吸引力又は反発力を受けてホッピングする。
n相のパルス電圧としては、例えば図4に示すように、グランドG(0V)と正(+)又は負(−)電圧+との間で変化するパルス電圧であって、且つ互いに出現周期が位相ずれしたA相、B相、C相の3相パルス電圧を例示することができる。
以下、グランドGと正(+)との間で変化する3相パルス電圧を採用した例について説明する。トナー搬送基板1の表面上で負極性に帯電しているトナー粒子Tは、3相パルス電圧によって各搬送電極1bの電位状態が図5(a)に示すような「G」、「G」、「+」、「G」、「G」という状態になると、「+」の電位になっている搬送電極1bの上に存在するようになる。この状態から少し時間が経過して各搬送電極1bの電位状態が図5(b)に示すような「+」、「G」、「G」、「+」、「G」という状態になると、トナー粒子Tには左側の「G」の搬送電極1bとの間で反発力が、右側の「+」の搬送電極1bとの間で吸引力がそれぞれ作用する。これにより、トナーT粒子は「+」の右側の搬送電極1b側に向けてホッピングする。さらに事件が経過して各搬送電極1bの電位状態が図5(c)に示すような「G」、「+」、「G」、「G」、「+」という状態になると、トナー粒子Tに対して同様の反発力と吸引力がそれぞれ作用するので、トナー粒子Tは更に右側の「+」の搬送電極1bに向けてホッピングする。このようなホッピングを繰り返すことで、図中左側から右側へと搬送されていく。
ホッピングについて更に詳述すると、あるタイミングでトナー粒子Tは図6(a)に示すようにA〜Fという符号が付されているそれぞれの搬送電極1bがいずれも0V(G)で、トナー搬送基板1bの表面上に均一に散らばっているとする。この状態から、図6(b)に示すようにA、Dの搬送電極1bに「+」が印加されると、均一に散らばっていたトナー粒子Tは、A,Dの何れかの搬送電極1bに引かれて、これら電極の上に移る。次いで、図6(c)に示すようにA、Dの搬送電極1bが何れも「0」になるとともに、B、Eの搬送電極1bに「+」が印加されると、A、Dの搬送電極1bから反発力を受けるとともに、B、Eの搬送電極1bから吸引力を受ける。これにより、BやEの搬送電極1b上に移る。更に、図6(d)に示すように、B、Eの搬送電極1bが何れも「0」になるとともに、C、Fの搬送電極1bに「+」が印加されると、B、Eの搬送電極1bから反発力を受けるとともに、C、Fの搬送電極1bから吸引力を受ける。これにより、CやFの搬送電極1bの上に転移する。このようにして、負極性に帯電したトナー粒子Tは、3パルス電圧によって形成される進行波電界の作用により、図中左側から右側へとホッピングしていく。なお、正極性に帯電したトナー粒子を採用する場合には、3相パルス電圧の波形出現パターンを逆にすることで同様にトナー粒子を図中右側に向けてホッピングさせていくことが可能である。
図7は、搬送電源回路5の回路構成を示すブロック図である。同図においては、搬送電源回路5は、パルス信号を生成出力するパスル信号発生回路1gと、このパルス信号発生回路1gからのパルス信号を入力して駆動波形であるパルス状電圧Va1、Vb1、Vc1を生成出力する波形増幅器5a、5b、5cと、パルス信号発生回路1gからのパルス信号を入力してパルス状電圧Va2、Vb2、Vc2を生成出力する波形増幅器5d、5e、5fとを有する。
パルス信号発生回路1gは、例えばロジックレベルの入力パルスを受けて、各120°に位相シフトした2組みパルスで、次段の波形増幅器5a〜5c、5d〜5fに含まれるスイッチング手段、例えばトランジスタを駆動して100Vのスイッチングを行うことができるレベルの出力電圧10〜15Vのパルス信号を生成して出力する。
波形増幅器5a、5b、5cは、現像前搬送領域や現像後搬送領域の各搬送電極1bに対して、3相の駆動波形(駆動パルス)Va1、Vb1、Vc1を印加し、波形増幅器5d、5e、5fは、現像領域の各搬送電極1bに対して、3相の駆動波形(駆動パルス)Va2、Vb2、Vc2を印加する。
現像前搬送領域や現像後搬送領域では、A,B,C相の搬送電極1bに対して図8に示すように、各相のVhiの印加時間taを繰り返し周期tfの1/3である約33%に設定した(これを「搬送電圧パターン」という)3相の駆動波形(駆動パルス)Va1、Vb1、Vc1が印加される。この駆動波形は搬送領域においてトナーを安定搬送させるのに適した波形である。
これに対し、現像領域では、各搬送電極1bに対し、図9に示すように、各相のVhi又は0Vの印加時間taを繰り返し周期tfの2/3である約67%に設定した(これを「現像電圧パターン」という)3相の駆動波形(駆動パルス)Va2、Vb2、Vc2が印加される。現像領域ではトナー粒子Tを感光体25に向けて真っ直ぐに打ち上げ易くすることが好ましく、図9の駆動波形はトナー粒子を打ち上げるのに適している。
なお、現像電圧パターンの駆動波形を印加した場合でも、0V電極のセンターに位置したトナー以外は、横方向への力も受けるため、すべてのトナーがいっせいに高く打ち上げられるというものではなく、水平方向に移動するトナーもある。逆に、搬送電圧パターンの駆動波形を印加した場合でも、トナーの位置によっては、大きな角度で斜めに打ち上げられて水平に移動するよりも上昇距離の方が大きいものがある。従って、現像前、現像後の搬送領域において各搬送電極1bに印加される駆動波形パターンは前述した図8に示す搬送電圧パターンに限られるものではない。また、現像領域の各搬送電極1bに印加される駆動波形パターンも前述した図9に示す現像電圧パターンに限られるものではない。
A,B,Cの3相からなるパルス電圧の例について説明したが、これをn相に一般化すると、次のようになる。即ち、各搬送電極1bに対してn相(nは3以上の整数)のパルス電圧(駆動波形)を印加して進行波電界を発生させる場合、1相あたりの電圧印加時間が{繰り返し周期時間×(n−1)/n}未満となる電圧印加デューティとすることによって、搬送、現像の効率を上げることができる。例えば、3相の駆動波形を用いる場合には、各相の電圧印加時間taを繰り返し周期時間tfの2/3である約67%未満に設定し、4相の駆動波形を用いる場合には、各相の電圧印加時間を繰り返し周期時間の3/4である75%未満に設定することが好ましい。また、電圧のデューティについては、{繰り返し周期時間/n}以上に設定することが好ましい。例えば、3相の駆動波形を用いる場合には、各相の電圧印加時間taを繰り返し周期時間tfの1/3である約33%以上に設定することが好ましい。これらにより、ある1つの電極に印加する電圧と進行方向上流側や下流側でこれに隣接する電極に印加する各電圧との間には、上流側で隣接する電極を反発、下流側で隣接する電極を吸引という時間で設定することによって、効率を向上することができる。特に、駆動周波数が高い場合は、{繰り返し周期時間/n}以上で{繰り返し周期時間×(n−1)/n}未満の範囲内に設定することにより、電極上のトナーに対する初期速度が得られ易くなる。n層駆動波形を用いた場合も、現像領域での搬送基板表面電位は、算出時間平均値と一致する。
矩形状の波形となるパルス電圧を採用した例について説明したが、sin波や三角波を採用してもよい。
搬送領域や現像領域に印加する駆動波形パターン電圧の最大値Vhi、最小値Vlo、VhiとVloの電圧差Vpp、周波数tfなどのパラメータについては、プロセス制御によって任意の値に設定することができるようになっている。
また、搬送領域での駆動波形パターンのパラメータについては、トナー搬送中に安定して搬送できる条件を、現像領域での駆動波形パターンについてはトナー粒子を像担持体に向かって打ち上げ易くできる条件になっている。
また、搬送領域と現像領域を同一領域として駆動波形パターンを設定する場合もある。この場合は特に現像領域では搬送性と現像性を両立させなければならないことから、駆動波形パターン設定が難しい反面、前例の搬送領域と駆動領域を分ける場合と比較して波形増幅器、搬送基板を簡易化することができる。
従来、表面移動する現像ローラ等の現像剤担持体に担持したトナーを、その表面移動に伴って潜像担持体との対向領域である現像領域に搬送する1成分現像方式や二成分現像方式が知られている。これらの方式では、現像領域にて、現像担持体上のトナーを現像剤担持体の表面と潜像担持体上の静電潜像との電位差によって静電移動させて現像を行う。かかる構成においては、前述の電位差を比較的大きくしなければならない。トナーに対して、ファンデルワールス力や鏡像力等による現像剤担持体との付着力に打ち勝つだけの力を付与しなければならないからである。
一方、本プリンタのようなホッピング方式によって現像を行うものでは、1成分現像方式や二成分現像方式に比べて上記電位差を大幅に低減することが可能である。そして、周囲の地肌部との電位差を僅か数十[V]にした状態で静電潜像にトナーを選択的に付着させる低電位現像を実現することも可能である。
2成分現像方式についてより詳しく説明しておくと、この方式は高速現像に非常に適していることから、現在の中速機や高速機で主に採用されている。高画質を狙うためには、静電潜像との接触部における現像剤の状態を非常に緻密にする必要がある。このため、近年においては、キャリア粒子の小径化が進んでおり、商用レベルでは30[μm]程度のキャリアも使われ始めている。しかし、高画質化に対する要求は益々高まっており、必要とされる画素のドットサイズ自身が現状のキャリア粒子径と同等もしくはそれよりも小さい必要があるために、孤立ドットの再現性という意味では更にキャリア粒子を小さくする必要がある。そして、キャリア径を小さくしていくと、キャリア粒子の透磁率が低下するために、現像材担持体からのキャリア離脱が生じ易くなる。離脱したキャリア粒子が潜像担持体に付着した場合には、キャリア付着そのものによる画像欠陥が生じるだけでなく、それを起点として潜像担持体に傷を付けるなど、様々な副作用が生じる。かかるキャリア離脱を防止するために、材料面からキャリア粒子の透磁率を上げる試みや、現像剤担持体に内包されるマグネットの磁力を強くする試みが進められているが、低コスト化及び高画質化との兼ね合いの中で開発は困難を極めている。また、小型化の煽りを受けて、現像ローラは益々小径化の一途をたどっていることからも、キャリア離脱を完全に抑止できるような強力な磁場構成を有した現像剤担持体の設計が困難となっている。更には、磁気ブラシと呼ばれる2成分現像剤の穂を静電潜像に対して擦り付けるようにしてトナー像を形成するプロセスを採用していることから、穂の不均一性によって、孤立ドットの現像性にムラを発生させ易い。現像剤担持体と潜像担持体との間に交番電界を形成する事で画質化を係ることは可能だが、二成分現像剤の穂のムラといった根本的な画像ムラを完全に解消することは困難である。潜像担持体に現像されたトナー像を転写する工程や、転写後に潜像担持体上に残存するトナーをクリーニングする工程において、転写効率やクリーニング効率を向上させるためには潜像担持体とトナーとの非静電的付着力を極力下げる必要もある。潜像担持体とトナーとの非静電的付着力を下げる方法としては、潜像担持体表面の摩擦係数を下げる事が効果的であることが知られているが、この場合、2成分現像剤の穂が滑らかに現像部をすり抜けてしまうために現像効率やドット再現性が非常に悪くなってしまう。
また、1成分現像方式についてより詳しく説明しておくと、この方式は機構が小型軽量になることから、現在の低速機で主に採用されている。現像剤担持体上にトナー薄層を形成する目的から、ブレードやローラなどのトナー規制部材を現像剤担持体に当接させている。この規制の際に、トナーは現像剤担持体やトナー規制部材と摺擦せしめられて帯電が助長される。現像剤担持体上に薄層形成された帯電トナー層は、現像領域に運ばれて現像される。接触型と非接触型との2型に大別され、前者では現像剤担持体と潜像担持体とが非接触に配設される。また、後者は両者が接触している。何れの型であっても、トナー層を現像剤担持体上で薄層化せしめる際に圧縮してしまうことから、現像領域での電場に対するトナー応答性が非常に悪くなる。よって、通常は高画質を得るために、現像剤担持体と潜像担持体との間に強力な交番電場を形成することになる。しかし、この交番電場の形成をもってしても静電潜像に対して一定量のトナーを安定して現像することは困難であり、高解像度の微小ドットを均一に現像することが難しい。また、現像剤担持体へのトナー薄層形成時にトナーに対して非常に大きなストレスをかけてしまうことから、現像装置内を循環するトナーの劣化が非常に早い。トナーの劣化に連れて、現像剤担持体へのトナー薄層形成の工程でもムラなどが生じやすくなり、一般には高速や高耐久の画像形成装置としては向かない。
2成分現像方式や1成分現像方式の欠点をそれぞれ補い合うべく、特開2003−100575号公報に記載のようなハイブリッド方式も幾つか提案されている。かかる構成では、現像装置そのものの大きさや部品点数は増えてしまうものの、幾つかの欠点が克服される。しかし、現像領域においては、1成分現像方式における欠点を解消することができないために、高解像度の微小均一ドットを現像することには難が残る。
高解像度の微小均一ドットを現像する方法として、特開2003−113474号公報に記載の方式がある。この方式は、上述の記ハイブリッド方式の構成に、高周波バイアスが印加されるワイヤを現像領域に付設することにより、現像領域でのトナークラウド化を図って、高解像度のドット現像性を実現しようとするものである。かかる方式では、現像装置の構成が複雑になってしまう。
特開2003−21967号公報には、且つ安定なトナークラウドを効率良く形成するために、回転ローラ上に電界カーテンを形成する方法が提案されている。かかる方法によれば、装置構成の複雑化を回避しつつ、高画質の現像を得ることができる。しかしながら、本発明者らが鋭意研究した結果、理想的な高画質を得るためには、形成する電界カーテンや現像などの条件を限定しなくてはならないことがわかった。適正な条件から外れた条件で作像を行ってしまうと、全く効果が得られないばかりか、返って粗悪な画質を提供してしまった。
ところで、多色画像を得るために、潜像担持体に第1のトナー像を形成し、その上に第2のトナー像、第3のトナー像・・・を順次形成していくような作像プロセスを採用することがある。かかる構成においては、先に潜像担持体上に形成されているトナー像を乱さないように、後続のトナー像を現像する必要がある。非接触一成分現像方式や、特開2003−113474号公報に記載のようなトナークラウド現像方式を用いることで、潜像担持体上に順次に各色トナーを形成していくことは可能である。しかし、何れの方式も、潜像担持体と現像剤担持体との間には交番電界が形成されてしまうために、潜像担持体上に先に形成されたトナー像からトナーの一部が引き剥がされて現像装置に入り込んでしまう。これによって、潜像担持体上の画像が乱されてしまうばかりでなく、現像装置内のトナーが混色するという問題も生じてしまう。これらは高画質画像を得るには致命的であり、この問題を解決する方法としては潜像担持体と現像剤担持体との間には交番電場を形成せずに、クラウド現像を実現する必要がある。かかるクラウド現像を実現できる方法としては、上述した特開2003−21967号公報に記載のものがあるが、これは先に述べた通り、適当な条件のもとで利用しないと全く効果が無い。
以上のような従来技術における欠点を、本プリンタのようなホッピング方式は、何れも克服することができる。なお、上述したフレア現像方式においても、何れの欠点も克服することができる。
次に、本発明者らが行った実験について説明する。
本発明者らは、これまで説明してきた実施形態に係るプリンタと同様の構成の試験機を用意した(各搬送電極1bのトナー搬送方向の配設ピッチは30[μm]、搬送方向の長さ(電極幅)は30[μm])。そして、この試験機を用いて、トナー搬送基板1上でのトナー搬送を長期間停止した状態から、トナーの搬送を開始したときにおけるトナーの搬送性(以下、搬送開始性という)を調査した。
具体的には、室温20[℃]、湿度50[%]の環境下において、トナー搬送基板1上における単位時間あたりのトナー付着量(供給量)が0.10[mg/cm2]になるように基板にトナーを補給しながら、周波数5[kHz]、Vpp300[V](Vhi=150V、Vlo=−150V)の3相パルス電圧を各搬送電極1bに印加した。そして、この条件下で、1時間の連続トナー搬送を行った。この連続トナー搬送により、表面にトナー添加物(外添剤等)を多量に付着させた状態のトナー搬送基板1を得た。その後、トナー搬送基板1を表面上のトナーとともに室温27[℃]、湿度80[%]の環境下で48時間放置した。室温や湿度を連続トナー搬送のときよりも高くしたのは、水分付着などにより、トナーとトナー搬送基板1の表面との付着力を高くする狙いからである。48時間放置後のトナーの一部をトナー搬送基板1上から採取してその帯電量を測定したところ、−7[μC/g]であった。
次に、48時間放置後のトナー搬送基板1の各搬送電極1bに対し、周波数5[kHz]、Vpp200[V](duty50%の矩形波)の3相パルス電圧を出力してトナー搬送を再開した。そして、このときの基板上におけるトナーの挙動を高速度カメラで撮影して、搬送開始性をランク1、2、3、4、5(数値が高くなるほどトナーの搬送性が良いことを示す)の5段階で区別して評価した。その後、同様の実験を、トナー搬送再開時におけるVppを50[V]ずつ上げていった各条件について行った。なお、搬送開始性のランク分けについては、単位時間あたりに何gのトナーを搬送することができたかを調査した結果に基づいて行った。ランク5では0.300[mg/cm2]以上、ランク4では0.225〜0.300[mg/cm2]、ランク3では0.175〜0.225[mg/cm2]、ランク2では0.100[mg/cm2]以下のトナー搬送量である。なお、搬送開始性の許容範囲は、実使用を考慮するとランク4以上である。
以上の確認を最初の基板上のトナー付着量Xを変更しながら逐次行った。この実験の結果を図10に示す。
次に、本発明者らは、試験機を用いて、電極列搭載部材たるトナー搬送基板の端部(トナー搬送方向と直交する面方向の端部)におけるトナーの蓄積状況を調査した。具体的には、まず、先の実験と同じ条件にて、1時間の連続トナー搬送を行った後、トナー搬送基板1を表面上のトナーとともに室温27[℃]、湿度80[%]の環境下で48時間放置した。次いで、温度20[℃]、湿度50[%]の環境下で、トナー搬送基板1上における単位時間あたりのトナー付着量(供給量)が0.26[mg/cm2]になるように基板にトナーを補給しながら、1時間の連続トナー搬送を行った。このとき、各相のVhiの印加時間を繰り返し周期5[kHz]の1/3にした場合における算出トナー搬送速度が900[mm/sec]になるようにした。プロセス線速(感光体25の線速)を300[mm/sec](A4横通紙で60枚/分)にした場合を想定すると、必要なトナー付着量(基板上での付着量)は0.17[mg/cm2]になる。そこで、余裕を考慮して少し多めの1.5倍のトナー付着量(0.26mg/cm2)になるように基板にトナーを供給したのである。
2度目の連続トナー搬送の終了後に、トナー搬送基板1の端部に溜まったトナーの量を測定し、その量に応じてランク1〜5の5段階でトナー蓄積ランクを評価した。ランク5は基板端部への飛散量(蓄積量)が低く、ランクが低くなるほど飛散量が多い。なお、連続トナー搬送終了後のトナーの帯電量は−14[μC/g]であった。また、トナー蓄積ランクの許容範囲は、実使用を考慮するとランク4以上である。
次に、本発明者らは、試験機を用いて、地汚れの発生状況を調査した。具体的には、先の実験と同様にして、1回目の連続トナー搬送を1時間行った後、トナー搬送基板1を表面上のトナーとともに室温27[℃]、湿度80[%]の環境下で48時間放置した。次いで、搬送領域(Ar1、Ar3)と現像領域(Ar2)とで同じパターンの3相パルス電圧を印加しながら、先の実験と同様にして2回目の連続トナー搬送を行った。このとき、感光体25を−200[V]に一様帯電せしめながら、線速300[mm/sec]で回転駆動した。そして、感光体25の表面のトナーをクリーニングするドラムクリーニング装置(71)内に溜まったトナーの量を測定した結果に基づいて、地汚れを1〜5の5段階で評価した。ランク5は地汚れ無しであり、ランクが低くなるほど地汚れトナーの量が多くなる。なお、地汚れランクの許容範囲は、実使用を考慮するとランク4以上である。
トナー蓄積ランク及び地汚れランクの実験結果を図11に示す。同図のグラフの横軸に示されるVppは、2回目の連続トナー搬送時におけるものである。このグラフより、Vppを250〜300[V]に設定すると、トナー蓄積、地汚れのそれぞれについて、ランク5という最高評価が得られることがわかる。しかしながら、このようなVppの条件では、図10に示したように、搬送開始性がランク2.5〜3.5となって許容範囲を外れてしまう。搬送開始性、トナー蓄積、地汚れを何れも許容範囲内(ランク4以上)に留めるには、Vppを350[V]以上にすればよいが、これでは、搬送開始性、トナー蓄積、地汚れの全てをランク5にすることはできない。
ところで、搬送開始性は、搬送開始から0.5〜1秒程度の時間が経過するまでのトナーの搬送性である。1秒以降はVppの値にかかわらずトナーが良好に搬送される。本発明者らは、このことに着目した。具体的には、搬送開始から0.5秒程度の時間が経過するまでの第1期においてVppを十分に高くすることで搬送開始性をランク5にし、その後の第2期においてVppを第1期よりも低くしてトナー蓄積や地汚れを抑えるのである。これにより、トナー蓄積や地汚れについても、ランク5を達成することができるかもしれない。
そこで、そのことを確認するために、次のような実験を行った。即ち、トナーをトナー搬送基板1上に0.26[mg/cm2]の量で付着させた状態で48時間放置した。このとき、トナーは、円筒状のトナー搬送基板1の全周に渡って一様に存在している。その後、連続トナー搬送を開始した。このとき、感光体25を−200[V]に一様帯電せしめながら、線速300[mm/sec]で回転駆動した。また、トナー搬送開始から0.5秒(トナーのホッピングを開始させるまでに十分な時間である)が経過するまでの第1期に印加するVpp(以下、Vpp1という)を350[V]にした。また、トナー搬送開始から0.6秒以降の第2期に印加するVpp(以下、Vpp2という)を250[V]とし、この状態で60秒間のトナー搬送を行った後、静止状態のまま48時間放置した。以上の工程を1セットとし、これを60セット繰り返した後にトナー蓄積ランク及び地汚れランクを評価した。すると、各セットにおける搬送開始性について何れもランク5を達成しつつ、60セット実行後におけるトナー蓄積及び地汚れもランク5を達成することができた。
以上のことから、搬送開始から所定時間が経過するまでの第1期にて、その後の第2期よりもVpp(パルス電圧の振幅)を大きくすることで、搬送開始性、トナー蓄積、地汚れについて、何れも良好な結果が得られることが確認された。
Vpp1やVpp2の値を適宜変更しながら、同様の実験を行った結果を図12、図13に示す。これらの図より、良好な搬送開始性を得るべくVpp1をかなり高くしても、その後のVpp2をある程度低くすることで、トナー蓄積や地汚れの発生を良好に抑え得ることがわかる。なお、便宜上、図12においては、地汚れランク4以上を○、ランク3以下を×として示した。また、図13において、トナー蓄積ランク4以上を○、ランク3以下を×として示した。
本発明者らは更に、Vpp1の印加時間、即ち第1期の時間を、0.1〜1.0秒の範囲で変化させながら、同様の実験を行ったが、同様の結果を得ることができた。
なお、第2期よりもパルス電圧の振幅を大きくする第1期においては、基板面からのトナーの打ち上げ性を向上させていることで、トナー蓄積や地汚れに対しては不利に働いていると思われた。この一方で、トナー蓄積や地汚れの発生を抑えるには、非現像ポテンシャルを大きくすることも有効である。具体的には、これまで説明してきた各実験においては、何れもプラス側及びマイナス側に等しい大きさで振れ、且つその振れの時間が等しいパルス電圧を採用しているので、パルス電圧の単位時間あたりにおける平均電位は0[V]となる。現像領域においては、この平均電位と、感光体25の地肌部電位との差である非現像ポテンシャルにより、地肌部の近傍のトナーを感光体側から基板側に向けて静電移動させる。かかる非現像ポテンシャルは大きくなるほど、地汚れに対しては有利に働くことになる。また、トナーが搬送電極1bにより強く静電移動せしめられることから、トナー蓄積に対しても有利に働くことになる。
そこで、第1期のVpp1を第2期のVpp2よりも大きくすることに加えて、第1期の非現像ポテンシャルを第2期よりも大きくする実験を行ってみた。具体的には、第1期には、各搬送電極に+100[V]の直流電圧を印加しながら、これにVpp1を重畳した。これにより、パルス電圧の単位時間あたりにおける平均電位が+100[V]になるため、第1期における非現像ポテンシャルは300[V]になる。第2期については、先の実験と同様に、各搬送電極にVpp2だけを印加した。この結果を図14、図15に示す。これらの図より、第1期の非現像ポテンシャルを第2期よりも大きくすることによっても、トナー蓄積や地汚れを抑え得ることがわかる。また、「非現像ポテンシャルを大きくする」、「Vpp1をVpp2よりも大きくする」の何れか一方を採用する場合に比べて、両方を採用する場合にはトナー蓄積や地汚れの発生を更に良好に抑え得ることもわかる。
以上の実験結果に鑑みて、本実施形態に係るプリンタにおいては、電圧印加手段たる搬送電源回路5として、第1期(現像動作の開始に伴って各搬送電極へのパルス電圧の出力を開始してから0.1〜1.0秒経過するまで)に出力するパルス電圧Vpp1の振幅を、第2期(第1期経過後)に出力するパルス電圧Vpp2の振幅よりも大きくするものを用いている。また、この搬送電源回路5については、第1期における非現像ポテンシャルを第2期よりも大きくするようにも構成している。
搬送電源回路5から出力されるパルス電圧の振幅を第1期で第2期よりも大きくしたり、非現像ポテンシャルを第1期で第2期よりも大きくしたりする具体的な方法としては、プリンタ全体の制御を司る制御部からの制御信号に基づいて、搬送電源回路5に対してパルス電圧の幅や非現像ポテンシャルを変更させるようにすることが挙げられる。この場合、搬送電源回路5と制御部との組合せにより、電圧印加手段が構成されることになる。
一方、制御部からは、パルス電圧の出力のON開始命令やOFF命令の制御信号だけを出力させ、このON開始命令に基づいて電圧の出力を開始する第1期にだけ、パルス電圧の振幅を大きくしたり、非現像ポテンシャルを大きくしたりするように搬送電源回路5を構成してもよい(以下、かかる構成の搬送電源回路を自己判断式の搬送電源回路という)。この場合、搬送電源回路5が単独で、電圧の印加条件を第1期と第2期とで異ならせる電圧印加手段として機能することになる。かかる構成の搬送電源回路5を、プリンタ本体にではなく、現像装置に搭載すれば、現像装置に対して単独で本発明を達成させることも可能である。また、後述するプロセスユニットに搭載すれば、プロセスユニットに対して単独で本発明を達成させることも可能である。
次に、実施形態に係るプリンタの変形例装置について説明する。なお、以下に特筆しない限り、変形例装置の構成は実施形態と同様である。
図16は、実施形態に係るプリンタの変形例装置を示す概略構成図である。この変形例装置は、複写機及びプリンタとして機能することができる複合機であり、複写機として機能するときには、図示しないスキャナが追加搭載される。そして、スキャナから読み込まれた画像情報がA/D変換、MTF補正、階調処理等の種々の画像処理によって書込みデータに変換される。また、プリンタとして機能するときには、コンピュータ等から転送されるページ記述言語やビットマップ等の形式の画像情報に対して画像処理が施されることで元の画像情報が書込みデータに変換される。
本変形例装置は、イエロー,マゼンタ,シアン,ブラック(以下、Y,M,C,Kという)の4色にそれぞれ個別に対応する4つの光書込装置80Y,M,C,Kや、4つのプロセスユニット81Y,M,C,Kを備えている。また、記録紙を収納する給紙カセット82、このカセットから記録紙を給紙する給紙ローラ83なども備えている。更には、給紙ローラ83から送り出された記録紙を各プロセスユニットの転写部に搬送する転写ベルト84、記録紙に対して画像を定着せしめる定着ユニット87、画像定着後の記録紙を載置する排紙トレイ88なども備えている。
4つのプロセスユニット81Y,M,C,Kは、使用するトナーの色が異なる点の他は同様の構成になっている。Yトナー像を形成するためのYプロセスユニット81Yを例にすると、これは、図17に示すように、負帯電性の感光体25Y、帯電手段たる帯電ローラ51Y、現像装置30Y、クリーニングブレード52Yなどを、支持体たるケーシング内に有している。そして、画像形成装置本体に対して着脱可能になっている。
帯電ローラ51Yは、芯金上に中抵抗層が被覆されたものであり、図中反時計回り方向に回転駆動される感光体25Yに対して、連れまわり方向に回転駆動される。帯電ローラ51Yの中抵抗層としては、ウレタン樹脂、導電性粒子としてのカーボンブラック、硫化剤、発泡剤等を処方した中抵抗の発泡ウレタン材料をローラ状に形成した弾性層を例示することができる。ウレタン、エチレン−プロピレン−ジエンポリエチレン(EPDM)、ブタジエンアクリロニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴムや、イソプレンゴム等に抵抗調整のためにカーボンブラックや金属酸化物等の導電性物質を分散したゴム材や、またこれらを発泡させたものを、中抵抗層の材料としてもよい。
クリーニングブレード52Yは、片持ち支持されており、その自由端側を感光体25の回転方向に対してカウンタ方向で当接させている。かかるクリーニングブレード25Yによって感光体25Yから掻き取られた転写残トナーは、プロセスユニット81Yのケーシング上部に設けられた廃トナー格納部49Yに格納される。
現像装置30Y内には、非磁性のYトナーと磁性粒子とを含む混合剤が収容されている。この混合剤は第1撹拌翼42Yと第2撹拌翼43Yとによって撹拌せしめられることで、Yトナーの摩擦帯電が促される。Yトナーが十分に摩擦帯電せしめられた混合剤は、時計回り方向に回転駆動される供給ロール36Yによって汲み上げられた後、ローラの回転に伴って筒状のトナー搬送基板1における被供給領域との対向位置に運ばれる。
供給ロール36Yには、図示しないロール電源回路によってロールバイアスが印加されており、供給ロール36Y上のYトナーは、ロールバイアスと、各搬送電極に印加されるパルス電圧との電位差による静電気力を受けて、磁性キャリアから離脱してトナー搬送基板1Yの被供給領域に転移する。そして、トナー搬送基板1Y上の進行電界により、トナー搬送基板1Yの曲面に沿ってホッピングしながら、相対的に図中時計回り方向に搬送され、現像前搬送領域(Ar1)を通過する。そして、分離後にトナー搬送基板1上に残ったトナー粒子は、現像領域(Ar2)に進入して現像に寄与する。
Yトナーを用いるY用のプロセスユニット81Yだけについて説明したが、他色用のプロセスユニット81M,C,Kも同様の構成になっている。
Yプロセスユニット81Yのケーシング背面側には、Y光書込装置(80Y)からのレーザービームLをケーシング内に入射するためのスリットが設けられている。このスリット内を通過したレーザービームLによる光走査が行われることで、感光体25Y上にY用の静電潜像が形成される。感光体25Yの表面は、このスリットとの対向位置に進入するのに先立って、帯電ローラ51Yによる一様帯電処理が施される。具体的には、図示しない電源により、帯電ローラ51Yの芯金に−200Vの直流電圧、及び振幅1200[V]、周波数2[kHz]の交流電圧が印加され、これにより帯電ローラ51Yと感光体25Yとの間で放電が生じせしめられる。この放電により、感光体25の表面が約−200[V]に一様帯電せしめられる。
先に示した図16において、Y,M,C,K光書込装置80Y,M,C,Kは、図示しない半導体レーザー、コリメートレンズ、ポリゴンミラー等の光偏向器、走査結像用光学系等から構成されている。そして、装置外部のパーソナルコンピュータ等のホスト(画像処理装置)から入力される各色用の画像データに応じて変調されたレーザービームを出射する。出射されたレーザービームは、Y,M,C,K用の感光体25Y,M,C,Kを走査して、静電潜像を書き込む。ポリゴンを用いたレーザー光学系による光書込装置に代えて、LEDアレイによるものを採用してもよい。
画像形成動作が開始されると、各プロセスユニット81Y,M,C,Kの感光体25Y,M,C,Kが帯電ローラによって一様帯電せしめられた後、光書込装置80Y,M,C,Kから画像データに応じたレーザービームが照射されて静電潜像を担持する。この静電潜像は、現像装置のトナー搬送基板によるETH現像により、各色のトナーによって現像され顕像化される。
各プロセスユニット81Y,M,C,Kの各色の画像形成に同期して、供給カセット82内の記録紙が給紙ローラ83によって送り出された後、転写ベルト84に向けて搬送される。そして、記録紙は無端移動する転写ベルト84に保持されながら各プロセスユニット81Y,M,C,Kにおける転写部に順次送られる。そして、各転写部で、感光体25Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像が転写体たる転写ベルト84に重ね合わせて転写される。これにより、記録紙にフルカラー画像が形成される。記録紙は、定着ユニット87内に送られてフルカラー画像が定着せしめられた後、機外の排紙トレイ88に向けて排紙される。
なお、同図において、符号85が付されているのは、転写ベルト84を複数のローラによって張架しながら図中時計回り方向に無端移動せしめる転写手段たる転写ユニットを示している。この転写ユニット85は、転写ベルト84のループ内側に転写ローラ86Y,M,C,Kを有しており、感光体25Y,M,C,Kと転写ローラ86Y,M,C,Kとの間に転写ベルト84を挟み込んで転写部を形成している。転写ローラ86Y,M,C,Kには、図示しないバイアス印加手段によって転写バイアスが印加される。これにより、各色用の転写部では、感光体25Y,M,C,Kと転写ローラ86Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成され、感光体25Y,M,C,K上のトナー像が転写ベルト84上に保持される記録紙Pに重ね合わせて転写される。
転写ローラ86Y,M,C,Kは、少なくとも芯金とこれを被覆する導電性弾性層とを有している。導電性弾性層はポリウレタンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンポリエチレン(EPDM)等の弾性材料に、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化スズ等の導電性付与剤を配合分散して電気抵抗値(体積抵抗率)を106〜1010[Ω・cm]の中抵抗に調整した層である。
各色の重ね合わせによってフルカラー画像が形成された記録紙Pは、転写ベルト84から定着ユニット87に受け渡される。そして、定着ユニット87内において、発熱源を内包する加熱ローラと、これに当接する加圧ローラとの当接による定着ニップに挟まれて、フルカラー画像の定着処理が施される。
なお、記録紙Pは、転写ベルト84のおもて面に当接する吸着ローラに所定の電圧が印加されることで転写ベルト84のおもて面に静電吸着される。
転写ユニット85は、図示のように、水平方向よりも鉛直方向にスペースをとる縦長の姿勢で転写ベルト84を張架している。画像形成装置の筺体には、図示しない開閉扉が設けられており、この開閉扉が開かれた状態で、転写ユニット85は図中最も下側に位置する張架ローラである従動ローラの回転軸を中心にして、図18に示すように回動することが可能になっている。この回動により、鉛直方向よりも水平方向にスペースをとる横長の姿勢になると、図示のように各色のプロセスユニット81Y,M,C,Kを外部に露出させることができる。各色のプロセスユニット81Y,M,C,Kは、この状態で、水平方向にスライド移動せしめられることで、画像形成装置本体に対して着脱される。
各色トナー像の色ずれやトナー濃度の調整を行うモードでは、プロセスユニット81Y,M,C,Kから転写ベルト84に対して所定パターンの基準パターン像が形成される。そして、この基準パターン像のパターンが光学センサ99(図16)によって読み取られ、読取結果に基づいて光書込みタイミングや現像バイアスの変更等が行われる。これにより、最適なカラー画像を得ることができる状態に調整される。
転写ベルト84上の基準パターン像は、吸着ローラに印加されたバイアスによって帯電極性が整えられた後、転写ローラ86Y,M,C,Kに印加された電圧によってプロセスユニット81Y,M,C,Kに回収される。
以上の構成の変形例装置における各プロセスユニット81Y,M,C,Kには、上述した自己判断式の搬送電源回路がそれぞれ搭載されている。
これまで、3相以上のパルス電圧によってトナーをトナー搬送基板1上でホッピングさせ、そのホッピングによるトナーの動きだけによってトナーを現像領域まで搬送するプリンタについて説明したが、フレア現像方式の画像形成装置にも、本発明の適用が可能である。この場合、トナー搬送基板1の各電極に対して2相以上のパルス電圧を印加してトナーを電極間で往復方向にホッピングさせながら、トナー搬送基板1の回転駆動によってそのホッピングトナーを現像領域まで搬送させるようにすればよい。
以上、実施形態に係るプリンタや変形例装置においては、各搬送電極にパルス電圧を印加する電圧印加手段として、印加条件であるパルス電圧の振幅を第1期にて第2期よりも大きくする(Vpp1>Vpp2)もの、を用いている。かかる構成では、上述したように、トナー蓄積や地汚れの発生をランク5まで抑えることに加えて、搬送開始性もランク5を実現することができる。
また、電圧印加手段として、潜像担持体たる感光体25の地肌部電位と、パルス電圧の単位時間あたりにおける平均電位との差である非現像ポテンシャルを、第1期にて第2期よりも大きくするもの、を用いている。かかる構成では、上述したように、トナー蓄積及び地汚れの発生をランク5まで抑えることができる。