以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
まず、本発明に係る現像装置が搭載される画像形成装置の第1の実施の形態の構成について、図面を使用しながら説明する。図1は、本発明に係る現像装置が搭載される画像形成装置の第1の実施の形態の全体の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。なお、図1では、本実施の形態の画像形成装置の主な構成要素を中心に簡略化して記載された一例であって、本発明に係る現像方法を実施する画像形成装置の構成に何ら限定されるものではない。
画像形成装置100は、静電潜像担持体となる感光体51を複数( 本実施の形態では、黄色画像用、マゼンタ画像用、シアン画像用、および黒色画像用の4つ )備えるカラー画像を形成可能とするタンデム方式のカラー画像形成装置である。画像形成装置100は、ネットワーク(図示せず)を介して接続されたPC( Personal Computer )等の各種端末装置(図示せず)から送信される画像データや、スキャナ等の原稿読み取り装置105(図3参照)によって読み取られた画像データに基づいて、被転写材(記録媒体)となる用紙Pに対して、カラー画像またはモノクロ画像を形成するプリンタ機能を有するものである。
画像形成装置100は、図1に示すように、用紙Pに画像を形成する機能を有する画像形成ステーション部50(50Y、50M、50C、50B)、当該画像形成ステーション部50で記録媒体Pに形成されたトナー像を定着させる機能を有する定着装置40、記録媒体Pを載置する供給トレイ60から画像形成ステーション部50および定着装置40へと記録媒体Pを搬送する機能を有する搬送部30を備えている。
画像形成ステーション部50は、黄色画像用、マゼンタ画像用、シアン画像用および黒色画像用のそれぞれ4つの画像形成ステーション50Y、50M、50C、50Bから構成されている。
具体的には、供給トレイ60と定着装置40との間において、供給トレイ60側から、黄色画像形成ステーション50Y、マゼンタ画像形成ステーション50M、シアン画像形成ステーション50C、および黒色画像形成ステーション50Bがこの順に並設されている。
これら各色の画像形成ステーション50Y、50M、50C、50Bは、それぞれ、実質的に同一の構成を有しており、各色に対応する画像データに基づいて、黄色、マゼンタ、シアン、および黒色の画像を形成して、最終的に被転写材(記録媒体)となる用紙P上に転写するものである。
なお、図1における各画像形成ステーション部の構成部品の符号について、黄色画像用の画像形成ステーション50Yに代表させて示し、他の各画像形成ステーション部50M、50C、50Bの構成部品の符号は、省略してある。
各画像形成ステーション50Y、50M、50C、50Bは、それぞれ静電潜像が形成される潜像担持体となる感光体51を備え、これらの感光体51の周囲には、周方向に帯電装置52、露光装置53、現像装置1、転写装置55、およびクリーニング装置56がそれぞれ配置されている。
感光体51は、OPC( Organic Photoconductor;有機光導電体 )等の感光性材料を表面に有する略円筒のドラム形状を呈し、露光ユニット1の下方に配設され、駆動手段と制御手段(図3参照)によって、所定方向(図中矢印F方向)に回転駆動するように制御されている。
帯電装置52は、感光体51の表面を所定の電位に均一に帯電するための帯電手段であって、感光体51の上方でその外周面に近接して配置されている。本実施の形態では、接触型のローラ方式の帯電ローラが使用されているが、チャージャー型やブラシ方式の帯電装置を代用しても良い。
露光装置53は、画像処理部(図示省略)から出力された画像データに基づいて、帯電装置52にて帯電される感光体51の表面にレーザ光を照射して露光することにより、当該表面に画像データに応じた静電潜像を書込み形成する機能を有する。露光装置53は、各画像形成ステーション50Y、50M、50C、50Bに応じて、黄色、マゼンタ、シアン、または黒色に対応する画像データが入力されることにより、対応する色に応じた静電潜像を形成するようになっている。露光装置53としては、レーザ照射部および反射ミラーを備えたレーザスキャニングユニット(LSU)や、ELやLED等の発光素子をアレイ状に並べた書込み装置(例えば、書込みヘッド)を使用することができる。
現像装置1は、現像剤を担持する現像剤潜像体となる現像ローラ3を有している。現像ローラ3は、トナーが感光体51へ移動し得る現像領域へ現像剤を搬送するように構成されている。この現像装置1は、本実施の形態では、トナーとキャリアとを含む2成分系の現像剤を用いて、露光装置53にて感光体51表面に形成された静電潜像を当該トナーにて反転現像してトナー像(可視像)を形成する。
現像装置1には、各画像形成ステーション50Y、50M、50C、50Bの画像形成に応じて、黄色、マゼンタ、シアン、または黒色の現像剤が収容されている。この現像剤は、感光体51に帯電される表面電位と同極性に帯電されるトナーを含んでいる。なお、感光体51に帯電される表面電位の極性および使用するトナーの帯電極性は、ここでは、何れもマイナスとされている。
転写装置55は、感光体51上のトナー像を搬送ベルト33にて搬送される被転写材P上に転写するものであり、トナーの帯電極性とは、逆極性( ここでは、プラス極性 )のバイアス電圧が印加される転写ローラ55を有している。
クリーニング装置56は、被転写材となる用紙Pへの現像・画像転写後に、感光体51の外周面上に残存しているトナーを除去・回収するものである。本実施の形態では、感光体51を挟んで現像装置1と略対向する位置で感光体51の側方で略水平(図1では、左側)に配置されている。
搬送部30は、駆動ローラ31、従動ローラ32、および搬送ベルト33を備え、各画像形成ステーション50Y、50M、50C、50Bにおいて、各色のトナー像が転写される被転写材Pを搬送するものである。搬送部30は、無端状の搬送ベルト33が駆動ローラ31と従動ローラ32との間に張架された構成となっており、供給トレイ60から給紙された被転写材(記録媒体)となる用紙Pを各画像形成ステーション50Y、50M、50C、50Bへと順に搬送するようになっている。
定着装置40は、加熱ローラ41および加圧ローラ42を備え、これらのニップ部に被転写材Pを搬送することで、用紙P上に転写されたトナー像を熱圧着して当該用紙P上に定着させるものである。
また、本実施の形態の画像形成装置100は、現像ローラ3と感光体51との間の電位差が連続的かつ周期的に変化するように、振動バイアス電圧を現像ローラ3に印加するバイアス電圧印加手段となるバイアス電圧印加部110を具備する(図3参照)。振動バイアス電圧は、帯電されるトナーに対して現像ローラ3から感光体51に向かう方向の力を及ぼし得る現像側電位と、帯電されるトナーに対して感光体51から現像ローラ3に向かう方向の力を及ぼし得る逆現像側電位とが交互に切り替わる電圧である。この振動バイアス電圧の印加の詳細については、後述する。
このように構成された画像形成装置100では、搬送部30にて搬送される用紙Pは、各画像形成ステーション50Y、50M、50C、50Bの感光体51との対向位置を通過する際に、当該対向位置において、搬送ベルト33を介して下方に配置された転写ローラ55による転写電界の作用にて、各感光体51上のトナー像が順次に用紙P上に転写される。これによって、各色のトナー像が当該用紙P上に重なり合い、用紙P上に所望のフルカラー画像が形成される。こうしてトナー像が転写された被転写材となる用紙Pは、定着装置40によってトナー像の定着処理が行われた後に、不図示の排紙トレイに送出される。
次に、本実施の形態の現像装置1の構成について、図面を使用しながら説明する。図2は、図1に示す各画像形成ステーションにおける現像装置の概略構成を示す側面図(本実施の形態の現像装置の要部構成を示す縦断面図)である。なお、図2では、本実施の形態の現像装置の主な構成要素を中心に簡略化して記載された一例であって、本発明に係る現像方法を実施する現像装置の構成に何ら限定されるものではない。
図2に示すように、本実施の形態の現像装置は、上述した現像ローラ3に加えて、当該現像ローラ3上の現像剤の層厚を規制する規制部材となる規制ブレード6と、現像剤を現像ローラ3に搬送すると共に現像剤の撹拌を行う撹拌・搬送部材となる一対の撹拌・搬送スクリュー4、5と、トナーとキャリアとを含む2成分系の現像剤を収容する現像槽2とを備える。
現像槽2には、一対の撹拌・搬送スクリュー4、5が略平行に配設されている。これらの撹拌・搬送スクリュー4、5間には、軸線方向の両端部側を除いて仕切る隔壁7が設けられている。このように現像槽2内に隔壁7を設けることによって、現像槽2内には、隔壁7を境にして独立した現像剤の搬送路が形成される。そして、現像装置1は、現像槽2内に収容される現像剤中のトナーが当該現像槽2に配設された撹拌・搬送スクリュー4、5の撹拌動作によって、キャリアと共に撹拌されて摩擦帯電されるようになっている。
また、現像槽2における感光体51と対向する位置には、現像用開口部Qが設けられており、現像ローラ3は、感光体51との間に現像ギャップ(0.3〜1.0mm程度)を設けて、現像槽2の開口部Qより一部を露出させた状態となるように当該現像槽2に配設されている。
現像ローラ3は、周方向に沿って複数の磁極部材が並設されるように含むマグネットローラ8と、当該マグネットローラ8に対して一定方向(図2におけるG方向)に回転自在に外嵌された略円筒形状のアルミニウム合金および黄銅等で形成された非磁性の現像スリーブ9とを有しており、当該現像スリーブ9が不図示の制御手段・駆動手段によって、所定方向(図中矢印G方向)に回転駆動するように構成されている。
現像剤は、磁性体よりなるキャリアを含んでいる。この現像剤は、マグネットの磁力により現像スリーブ9表面に吸着され、現像スリーブ9の回転方向Gに沿って当該現像スリーブ9上を搬送される。このとき、キャリアは、マグネットローラ8の磁力によって現像スリーブ9表面に吸着されて磁気ブラシを形成し、トナーは、摩擦帯電によるクーロン力にてキャリアに付着する。
また、現像用開口部Qにおける現像スリーブ9の回転方向Gの上流側には、規制ブレード6の先端部が現像スリーブ9に対向するように配置されている。規制ブレード6は、本実施の形態では、現像ローラ3表面に形成された現像剤の層厚を規制するように構成されている。
本実施の形態の現像装置1を以上説明したような構成とすることにより、現像装置1は、感光体51との対向位置に一定量の現像剤が供給され、当該対向位置へ供給された現像剤におけるトナーが感光体51の表面に形成された静電潜像の静電気力にて吸引され、静電潜像を現像してトナー像を形成するようになっている。また、現像装置1は、上記の対向位置へ供給された現像剤のうち、キャリアおよび現像に供されなかったトナーが現像スリーブ9の回転によって、再び現像槽2内に戻されるようになっている。
次に、本実施の形態の現像装置を備える画像形成装置100の制御系について、図面を使用しながら説明する。図3は、本実施の形態に係る画像形成装置の制御部の構成を概略的に示すブロック図である。なお、図3では、本実施の形態の画像形成装置に備わる現像装置による現像動作を実行するための主な構成要素を中心に簡略化して記載された一例であって、本発明に係る現像装置の制御部の構成に何ら限定されるものではない。
現像装置1を備える画像形成装置100は、装置動作を統括制御する制御手段となる制御部150を備える。制御部150は、画像形成装置100の動作制御の中心的素子となるCPU151を有し、このCPU151には、CPU151が実行するプログラムや各種データが格納されたROM152、作業用のメモリ等として使用されるRAM153が接続されている。CPU151は、ROM152に記憶されたデータ、プログラム等に従って画像形成装置100をシーケンス動作させる。
本実施の形態では、CPU151は、現像装置1に備わる現像ローラ3の現像スリーブ9に振動バイアス電圧を印加するバイアス電圧印加部(バイアス電圧印加手段)110、現像スリーブ102を回転駆動させる駆動モータ120、帯電装置52を駆動させる帯電バイアス電源130等に制御信号を送信して画像形成動作を実行させる。ここで、現像スリーブ9の駆動手段となる駆動モータ120は、独立して現像スリーブ102を駆動するようにしてもよいし、例えば、感光体駆動手段140と駆動源が共通のものとしてもよい。なお、本実施の形態におけるバイアス電圧印加部110から現像バイアスとして振動バイアス電圧を現像ローラ3に印加する際の制御動作については、後述する。
また、制御部150には、画像処理部160が接続されている。画像処理部160は、原稿読み取り装置105、或いは、画像形成装置100の装置本体に対して通信可能に接続された不図示のPC等の外部ホスト機器からの画像データ信号を受信すると共に、この画像データ信号を画像形成に係る画像形成信号に変換して、制御部150のCPU151に送信する。そして、CPU151は、当該画像形成信号に従って、画像形成装置100の各部の動作を制御する。
次に、画像形成装置100の現像装置1で実行される現像動作について、図面を使用しながら説明する。図4は、本実施の形態に係る画像形成装置に備わる現像装置で実行される現像動作で使用される振動バイアス電圧のバイアス波形の一例を示す図である。
バイアス電圧印加部110は、トナーを現像ローラ3から感光体51に向ける力を及ぼす現像側電位、およびトナーを感光体51から現像ローラ3に向ける力を及ぼす逆現像側電位が周期的に入れ替わる振動バイアス電圧として、図4に示すような波形のバイアス電圧を現像ローラ3の現像スリーブ9に印加する。このバイアス電圧印加部110によって印加される振動バイアス電圧は、感光体51上の画像部に対応する領域となる画像部電位VLと、感光体51上の非画像部に対応する領域となる非画像部電位V0との関係によって変化し得るようになる。このため、画像部電位VLおよび非画像部電位V0は、ここでは、予め設定された値とされており、本実施の形態では、それぞれ−100V、−600Vとして、以下の説明を行う。
本実施の形態の画像形成装置100の現像装置1で実行される現像動作で使用される振動バイアス電圧のバイアス波形において、現像バイアスの時間平均値となる平均電圧Vdcよりトナーを感光体51に現像する側にかかっている時間をT1、当該平均電圧Vdcよりトナーを現像ローラ3に戻す側にかかっている時間をT2と定義する。ここで、現像バイアスとなる振動バイアス電圧のデューティ比をT1/(T1+T2)と定義すると、感光体51側が画像部であるか、非画像部であるかによって、時間の値は異なるが、当該デューティ比は、トナーが現像スリーブ9から感光体51に向かう方向に電圧が印加されている時間の比率の指標となる。
また、当該デューティ比は、キャリア上りと非常に大きな相関性を有する。このデューティ比とキャリア上りの相関性を示すデータとして、平均電圧Vdcを一定とした場合のデューティ比とキャリア上りの関係を測定した結果の一実施例を図5に示す。なお、図5では、縦軸にキャリア上りの大きさ(単位:a.u.)、横軸に感光体51の電位Vopcと振動バイアス電圧の平均電圧Vdcとの差分電圧を示す。また、本実施例では、平均粒径35ミクロンのキャリアを使用した。
図5のグラフに示されるように、デューティ比が50%から38%、25%と低下させるに伴って、キャリア上りが減少していることがわかる。特に、振動バイアス電圧のデューティ比を下げることによって、感光体51への印加電圧と振動バイアス電圧の平均電圧Vdcとの差分電圧を大きくした場合であっても、キャリア上りを低減させられることがわかる。
また、トナーを感光体51に現像する側にかかる現像側電位のピーク電位V1から1/10Vpp( Vppは、振動バイアス電圧の現像側電位のピーク電位と逆現像側電位のピーク電位との差分を示すピーク・トゥー・ピーク電位 )以内の電位にある時間をT3とし、トナーを現像ローラ3に戻す側にかかる逆現像側電位のピーク電位V2から1/10Vpp以内の電位にある時間をT4と定義し、T3とT4の値を変えた場合のキャリア上りと濃度との関係について、図6に示す。図6は、ピーク・トゥー・ピーク電位Vpp、平均電位Vdc、デューティ比が一定の条件で、T3とT4の値を変更した場合のキャリア上りと濃度の状態を確認して、これらの確認結果について示す表である。なお、当該表では、キャリア上りについては、100K枚を印字した場合にキャリア上りによるキャリアの減少がキャリア全体の5%以下になる場合を「○」で表示している。また、濃度については、画像濃度が確保された場合を「○」で表示している。
図6に示すように、T1/(T1+T2)がT3/(T3+T4)より大きい場合、すなわち、下記の関係式(1)の範囲にある場合には、キャリア上りを低減し、濃度を上げることが出来ることがわかる。
T1/(T1+T2) > T3/(T3+T4)・・・(1)
この確認結果において、ピーク・トゥー・ピーク電位Vpp一定、平均電位Vdc一定の条件でT3を小さくし、T4を大きくするということは、現像側電位のピーク電位V1と現像バイアスの平均電圧Vdcの電位差を広げ、逆現像側電位のピーク電位V2と現像バイアスの平均電圧Vdcの電位差を狭くすることを意味する。現像側電位のピーク電位V1と現像バイアスの平均電圧Vdcの電位差が大きくなると、用紙上に形成される画像の濃度が上がる。逆現像側電位のピーク電位V2と現像バイアスの平均電圧Vdcの電位差を小さくするとキャリア上りが低減する。このため、上記式の範囲にある時に、キャリア上りと濃度を良くすることができると考えられる。
また、現像バイアスとなる振動バイアス電圧において、トナーを感光体51に現像する側にかかる現像側電位のピーク電位をV1、トナーを現像ローラ3に戻す側にかかる逆現像側電位のピーク電位をV2とすると、当該V2と画像部電位VLの関係によって、用紙等に転写されるトナー画像のドット再現性、細線再現性が大きく変化する。このような現像バイアスの特性を検証するために、画像部電位VLを−100Vと一定にして、逆現像側電位のピーク電位V2の値を変更した場合のドット再現性の検討結果について、図7に示す。図7は、画像部電位VLを−100Vと一定にした場合の逆現像側電位のピーク電位V2とドット再現性との関係を示す表である。
図7に示すように、V2−VL<+100、すなわちV2<VL+100の範囲にある場合に、用紙等への転写画像のドット再現性は、良好となる。一方、V2>VL+100の場合には、当該ドット再現性は、劣化する。このことは、画像部に対してトナーを現像ローラ3に戻す側にかかる電界が強くなり、いったん画像部に到達したトナーが引き剥がされ、ドットが乱されることが悪影響していることに起因すると考えられる。
以上の検討結果から、感光体51の画像部電位VLに対して、現像バイアス波形が100Vを越えないようにバイアス電圧印加部110が制御部150で制御されることが本発明の作用・効果を奏するために、好適であることがわかる。なお、本実施例では、トナーの帯電がマイナスの場合を説明しているが、トナーの帯電がプラスの場合は、V2とVLの関係式が異なる。この場合には、V2>VL−100の範囲にあれば、ドット再現性が良好になる。以上の検討結果から、本実施例では、図4の波形において、T1=0.04msec、T2=0.06msec、T3=0.015msec、T4=0.032msecとしている。
また、上記で説明したように、現像バイアスとなる振動バイアス電圧のデューティ比T1/(T1+T2)を小さくすることによって、キャリア上りを減少させることができる。しかし、その反面、当該デューティ比を小さくすることによって、かぶりが増加してしまう。このため、現像ローラ3に印加する現像バイアスとして使用できるデューティ比には、制限が加えられる。そこで、キャリア上りの減少およびかぶり発生の抑制を両立し得る好適なデューティ比を検証するための実験結果を図8に示す。図8は、デューティ比を変更した場合におけるかぶり発生およびキャリア上りと、感光体の非画像部電位V0と現像バイアスの平均電圧Vdcとの差分電圧との関係について示すグラフである。なお、図8に示すグラフは、非画像部電位V0とバイアス波形を保ったまま平均電位Vdcをシフトさせ、キャリア上りとかぶりを測定したものであり、デューティ比25%、38%、50%の結果を示している。
かぶりの発生およびキャリア上りの抑制を両立し得る感光体の非画像部電位V0と現像バイアスの平均電圧Vdcとの差分電圧の範囲として、|V0−Vdc|=100V〜200Vを中心に比較すると、図8に示すように、デューティ比50%では、かぶりが良好であるものの、キャリア上りが200Vで非常に多くなっている。一方、デューティ比25%では、キャリア上りが250Vくらいまで良くなっているものの、100Vでのかぶりが多くなっている。また、デューティ比38%の場合は、かぶりもキャリア上りの両方の抑制に好適な値になっていることがわかる。
また、同様の実験をデューティ比43%、32%に対しても行った結果を図9に示す表にまとめる。図9に示すように、デューティ比T1/(T1+T2)が0.3〜0.45の範囲にある場合に、キャリア上りとかぶりの抑制のバランスが共に良くなり、利用できる電圧範囲も広がる結果が得られている。
また、デューティ比が0.3〜0.45の範囲では、トナー濃度も高く保つことができる。図10にデューティ比と感光体に付着するトナー濃度の関係を示す。デューティ比が30%(0.3)までは、デューティ比が50%(0.5)の場合と略同一の濃度を保つことができるが、30%(0.3)以下になると、感光体51へのトナー付着量が減少することより、用紙に転写されるトナー画像の濃度低下が顕著に現れ、好適な画像濃度を形成可能な現像装置1として使用できる条件から外れてしまう。すなわち、デューディ比がT1/(T1+T2)<0.45の範囲にあれば、キャリア上りを低減され、T1/(T1+T2)>0.3の範囲にあれば、かぶりの増加も使用範囲に抑えられ、かつ、濃度もデューティ比50%の時と同等以上に維持することができる。以上の点から、デューティ比T1/(T1+T2)は、0.3〜0.45の範囲にあること、すなわち下記の関係式(2)を満たす範囲にあることが望ましいことがわかる。なお、図4に示す実施例では、デューティ比は、38%としている。
0.3 < T1/(T1+T2) < 0.45・・・(2)
次に、非画像部電位V0に対する電位となる現像側電位のピーク電位V1および逆現像側電位のピーク電位V2の関係について検討する。V1とV0の電位差は、非画像部においてトナーを現像ローラ3から感光体51への方向に移動させる力の強さを表し、V2とV0の電位差は、非画像部において感光体51から現像ローラ3への方向にトナーを戻す力の強さを表している。
これらの電位V1、V2を与える時間も多少は、かぶりの発生量に影響するが、大半は、|V1−V0|と|V2−V0|の大小によって、かぶりの発生量が決定される。すなわち、|V1−V0|が|V2−V0|より大きい場合には、非画像部において、トナーを現像ローラ3から感光体51への方向に移動させる力が感光体51から現像ローラ3への方向にトナーを戻す力より強くなっている。このため、感光体51に付着したトナーを現像ローラ3に確実に戻すことが出来なくなり、かぶりが増加することとなる。
ここで、感光体51から現像ローラ3への方向にトナーを戻す電界がかかる時間を長くしたとしても、充分には、かぶり発生状況は、改善できない。このため、本実施例では、|V1−V0|を|V2−V0|より小さく設定し、例えば、|V1−V0|を350V、|V2−V0|を450Vと設定することによって、かぶりを低く抑えている。換言すると、制御部150が下記の関係式(3)を満たすように、バイアス電圧印加部110を制御することによって、かぶり発生が抑制されるようになる。
|V1−V0|<|V2−V0|・・・(3)
次に、現像ローラ3に印加される現像バイアスの周波数とかぶり発生の関係について、図面を使用しながら説明する。図11は、現像バイアスの繰り返し周波数とかぶりの関係を示すグラフである。当該グラフ中のデューティ比50%の場合を見るとわかるように、周波数が高くなるにつれて、かぶりが少なくなることがわかる。この傾向は、デューティ比が変わっても同じである。図11に示すグラフ中の現像バイアスの繰り返し周波数10kHzでデューティ比38%の場合を見ると、上述したように、現像バイアスのデューティ比を下げると、かぶりが多くなると述べたように、デューティ比50%の場合よりも、かぶりが多くなっている。すなわち、現像バイアスのデューディ比を小さくすると、キャリア上りは、減少するものの、かぶりは、増加してしまう。
しかしながら、現像バイアスの繰り返し周波数5kHzでデューティ比50%の場合と比較すると、かぶりが少なくなっており、デューティ比を下げた本技術においては、現像バイアスの繰り返し周波数を5kHz以上、好ましくは、10kHz程度と高めに設定することが望ましいことが判明した。このことから、本実施の形態では、現像バイアスの周波数を高くすると、かぶりを減少させる特性を利用して、制御部150は、現像バイアスの繰り返し周波数を高周波数となるような5kHz以上20kHz以下の範囲にバイアス電圧印加部110を制御することにより、現像バイアスのデューディ比を小さくしたことに起因する欠点を補って、かぶり発生およびキャリア上りの双方の抑制を両立可能とする。なお、本実施例では、当該周波数を10kHzに設定している。
また、上述の一連の実験をしている際に、図12に示すように、T2の時間の中で電圧のオーバーシュートが見られることがあった。この場合のキャリア上りを図4の波形のキャリア上りと比較すると、オーバーシュートが無い場合と比べて、オーバーシュートがある場合は、図13に示すように、キャリア上り個数が増加していることがわかった。このようなオーバーシュートが発生すると、|V2−Vdc|の値が短時間でも大きくなり、その間にキャリア上りが発生し易くなることによって、キャリア上りが増加していると考えられる。したがって、現像側電位のピーク電位V1からピーク・トゥー・ピーク電位Vppの1/10以内の電位にある時間T3の期間においては、キャリア上りを抑制するために、現像バイアスは、オーバーシュートがなく、単調に変化する波形であることが望ましい。
さらに、平均粒径が50ミクロン以上のキャリアを使用した場合、キャリア上りは、比較的少ないが、50ミクロン以下になると、キャリア上りは、非常に多くなってくるので、現像バイアスとして印加する振動バイアス電圧面での工夫が必要になってくる。本実施の形態では、キャリア上りの低減に効果があるため、特に、平均粒径が50ミクロン以下の小粒径キャリアに対して有効である。一方、キャリアの平均粒径が20ミクロン以下になると、キャリア上りがさらに深刻になるため、本発明における技術に加えて、更なる工夫を施すことが必要になってくる。
従って、20〜50ミクロンの間の平均粒径を持つキャリアが上述したような本発明の作用・効果を奏するのに好適である。すなわち、現像ローラ3に印加する現像バイアスとして、振動バイアス電圧を上述の設定条件で現像ローラ3に印加することによって、平均粒径が50ミクロン以下の小粒径キャリアに対してもキャリア上りの抑制効果を奏するので、かぶり発生およびキャリア上りの双方の抑制を両立可能とする。すなわち、キャリア上りが深刻になる小粒径キャリアに用いた場合に、本実施の形態の現像装置1における現像バイアスの設定条件が特に有効となる。なお、本実施例の検証実験には、平均粒径が35ミクロンのキャリアが使用された。
また、先述したように、ドット再現性を良好にするためには、本実施例では、V2<VL+100の範囲で用いる必要がある。現像バイアスの平均電位Vdcを一定とすれば、現像バイアスが画像部電位VLの近辺で押さえられてしまうことになり、ピーク・トゥー・ピーク電位Vppを大きく上げることができなくなる。換言すると、現像側電位のピーク電位V1を上述したような本発明の設定条件とした場合では、感光体51に供給される現像剤のトナー濃度が不足し易くなる。しかしながら、本実施例の検証実験では、感光体51と現像ローラ3が互いに対向する現像領域において、現像剤と感光体51とが接触する、いわゆる接触現像が使用され、当該接触現像では、トナーの濃度を比較的確保し易くなるので、用紙上に転写される画像も好適な濃度で形成されるようになる。なお、実施例のようにトナーが負に帯電している場合はV2<VL+100の範囲を満たせば良い。一方、トナーが正に帯電している場合は、V2>VL−100の範囲で用いれば良い。両方を考慮して表現すると、画像部電位VLを現像バイアス波形が横切る領域を少なくして、感光体51に一度付着したトナーを引き剥がす方向に働く力を減少させるためには、逆現像側電位のピーク電位V2は、画像部電位VLに対して100Vを越えない範囲となるように制御されることが好ましい。
以上説明したように、本実施の形態の現像バイアスとして上述したようなデューディ比の条件の振動バイアス電圧を現像ローラ3に印加することによって、感光体51の画像部電位VLを現像バイアス波形が横切る領域を少なくし、いったん感光体51に付着したトナーを引き剥がす方向に働く力を減少させることが出来る。このため、画像を構成するドットが用紙上により鮮明に形成され、ドット再現性が向上される。
また、現像バイアスの時間平均値よりトナーを感光体51に現像する側にかかっている時間T1と現像バイアスの時間平均値よりトナーを現像ローラ3に戻す側にかかっている時間T2を一定と考えた場合、逆現像側電位のピーク電位V2から、ピーク・トゥー・ピーク電位Vppの1/10以内の電位にある時間T4を長くすることによって、逆現像側電位のピーク電位V2と現像バイアスの時間平均値で示される平均電圧Vdcの差が縮小されるので、キャリア上りを低減することができる。
さらに、現像側電位のピーク電位V1からピーク・トゥー・ピーク電位Vppの1/10以内の電位にある時間T3を小さくすることによって、現像側電位V1と現像バイアスの平均電圧Vdcの差が大きくなるので、用紙上に形成される画像の濃度を上げることができる。
また、現像バイアスとなる振動バイアス電圧におけるトナーが現像剤担持体から潜像担持体に向かう方向に電圧が印加されている時間の比率を示すデューディ比がT1/(T1+T2)<0.45の範囲にあれば、キャリア上りを低減され、T1/(T1+T2)>0.3の範囲にあれば、かぶりの増加も使用範囲に抑えられ、かつ、濃度もデューティ比50%の時と同等以上に維持することができる。
すなわち、デューディ比T1/(T1+T2)を当該条件で設定して、印加される現像バイアス波形や電圧値を規定することによって、かぶり発生およびキャリア上りを抑制して、用紙上に形成される画像の濃度を確保し、ドット再現性が向上するようになる。
また、現像バイアスのデューディ比T1/(T1+T2)を変えた矩形波のバイアス波形を一定の範囲で滑らかにする等の制御を実行することによって、印加される現像バイアス波形や電圧値を規定し、キャリア上りとかぶりを抑えつつ、用紙等の記録媒体上に転写される画像のトナー濃度を確保し、ドット再現性や画像品位を向上させることが実現される。すなわち、現像ローラ3に印加する現像バイアスを制御部150で上述した設定条件とすることにより、キャリア上りを改善しドット再現性を上げながら、濃度とかぶりを維持することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記第1の実施の形態では、静電潜像担持体を複数備えたタンデム方式のカラー画像形成装置を例示しているが、単体の静電潜像担持体によってカラー画像を形成する多回転方式のカラー画像形成装置であっても、或いは、モノクロ画像形成装置であっても、本発明の現像装置を適用可能とする。