以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1、図2は一実施形態の冷蔵庫を示す正面図及び右側面図である。冷蔵庫1は、上段に冷蔵室2が配され、中段に温度切替室3及び製氷室4が配される。冷蔵庫1の下段には野菜室5及び冷凍室6が配されている。
冷蔵室2は観音開きの扉を有し、貯蔵物を冷蔵保存する。温度切替室3は中段左側に設けられ、使用者により室温を切り替えられるようになっている。製氷室4は中段右側に設けられ、製氷を行う。野菜室5は下段左側に設けられ、野菜の貯蔵に適した温度(約8℃)に維持される。冷凍室6は下段右側に設けられ、製氷室4に連通して貯蔵物を冷凍保存する。
図3は冷蔵庫1の右側面断面図である。冷凍室6及び製氷室4には貯蔵物を収納する収納容器11が設けられる。野菜室5及び温度切替室3にも同様の収納容器11が設けられる。冷蔵室2には貯蔵物を載置する複数の収納棚41が設けられる。冷蔵室2の扉には収納ポケット42が設けられる。これらにより、冷蔵庫1の使い勝手が向上されている。また、冷蔵室2内の下部にはチルド温度帯(約0℃)に維持されたチルド室23が設けられている。
冷凍室6の背後には冷気通路31が設けられ、冷気通路31内には圧縮機35に接続された冷却器17が配される。冷蔵室2の背後には冷気通路31と連通する冷気通路32が設けられる。凝縮器、膨張器(いずれも不図示)が接続された圧縮機35の駆動によりイソブタン等の冷媒が循環して冷凍サイクルが運転される。これにより、冷凍サイクルの低温側となる冷却器17と冷気通路31を流通する空気とが熱交換して冷気が生成される。
また、冷気通路31、32内には冷凍室送風機18及び冷蔵室送風機28がそれぞれ配される。詳細を後述するように、冷却器17で生成された冷気は冷凍室送風機18の駆動により冷気通路31を介して冷凍室6、製氷室4、チルド室23及び温度切替室3に供給される。また、該冷気は、冷蔵室送風機28の駆動により冷気通路32を介して冷蔵室2及び野菜室5に供給される。
図4は温度切替室3を示す右側面断面図である。温度切替室3の上下面は断熱壁7、8により冷蔵室2及び野菜室5と断熱隔離されている。また、温度切替室3の側面は図示しない断熱壁により製氷室4及び冷凍室6と断熱隔離されている。温度切替室3の前面は回動式の扉9により開閉可能になっている。温度切替室3の背面は背面板33により覆われている。温度切替室3の上部には遠赤外線発生部53の天井部50が設けられている。
背面板33の上部には温度切替室3に空気が流入する流入口33aが設けられ、下部には温度切替室3から空気が流出する流出口33bが設けられる。流入口33aには後述する温度切替室送風機14の風向を可変する風向板33cが設けられる。風向板33cは温度に応じて形状が変化するバイメタルから成り、周囲温度が低温のときは吐出側の先端が下方に向かうように傾斜する。
また、風向板33cは周囲温度が上昇すると吐出側の先端が上方に反り返る。これにより、温度切替室3の温度が低いときは温度切替室3に流入する空気が風向板33cにより下方に導かれる。また、温度切替室3の温度が高いときは温度切替室3に流入する空気が上方の天井部50に向けて導かれる。これにより、天井部50が高温の空気によって熱せられる。
尚、温度切替室3が低温側であるときに風向板33cの吐出側の先端が略水平方向になるようにしておくと、温度切替室3の前方にまで冷気が流入する。これにより、温度切替室3内が均一に冷却され、貯蔵物を均一に冷却することができる。即ち、温度切替室3の温度帯によって異なる方向に風向板33cの向きが変化するようにしておくと、各温度帯で良好な冷却や加熱を行うことができる。
例えば、急速冷凍のときは直接貯蔵物に冷気が当るように風向板33cの向きを下方にすると冷凍を迅速に行うことができる。上記のように、冷凍温度から冷蔵温度領域は風向板33cの向きを略水平にして均一に冷却することができる。高温領域では風向板33cを天井部50に向けると、遠赤外線による加熱を行うことができる。
風向板33cを温度に応じて形状が変化する形状記憶合金により形成してもよい。また、風向板33cを駆動する駆動装置を設け、温度切替室3の温度に応じて風向板33cを駆動して風向を可変してもよい。この時、風向板33cを後述する温度切替室戻りダンパ20や温度切替室吐出ダンパ13に連動させると駆動モータを共通化することができる。
流入口33a及び流出口33b近傍には温度切替室3内の温度を検知する温度センサ24、16が設けられる。
背面板33の後方には、外壁を形成する断熱壁10との間に導入通風路12が設けられている。導入通風路12には温度切替室吐出ダンパ13が設けられ、冷気通路31に連通して冷却器17(図3参照)で発生した冷気を温度切替室3に導く。また、温度切替室吐出ダンパ13の開閉により冷却器17と温度切替室3の流入側との間の冷気経路が開閉され、開閉量によって導入通風路12から温度切替室3に流入する風量が調整される。
導入通風路12内には、温度切替室吐出ダンパ13と流入口33aとの間に温度切替室送風機14が設けられている。温度切替室送風機14の駆動によって冷気通路31の冷気が容易に温度切替室3に導かれる。
流出口33bの後方には温度切替室戻りダンパ20が設けられる。温度切替室戻りダンパ20は開口部20a、20bを有し、回動により一方を開いて他方を閉じるバッフル20cを有している。開口部20bを開くと、温度切替室3から流出する空気は矢印Fに示すように戻り通風路19(図6参照)を介して冷却器17に導かれる。
図5に示すように、開口部20aを開くと温度切替室3から流出する空気は温度切替室送風機14の吸気側に導かれるとともに、温度切替室3の流出側と冷却器17との冷気経路が閉じられる。従って、温度切替室送風機14を駆動し、開口部20bを閉じて温度切替室戻りダンパ20を閉じることにより、矢印Gに示すように温度切替室3の空気を循環させることができる。尚、温度切替室送風機14を温度切替室3内に設けてもよい。
温度切替室3の流入口33aの背後にはヒータ15が設けられる。ヒータ15は熱輻射式のガラス管ヒータから成り、背面板33を介して放出される輻射熱により温度切替室3を昇温する。ヒータ15は温度切替室送風機14の吹出し側に配置されている。これにより、ヒータ15の表面温度を下げて安全性を向上させることができる。また、流出口33bには、所定の温度まで高温になるとヒータ15の通電を遮断する温度ヒューズ30が設けられる。
温度切替室3内には貯蔵物を載置する引出し式の上面を開口した収納容器11が配されている。温度切替室3内には、板状の天井部50及び前面部52から成る遠赤外線発生部53が設けられる。天井部50は温度切替室3の天井面に沿って収納容器11の上方に配される。前面部52は扉9の背面に取り付けられる。
遠赤外線発生部53はアルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレス等から成る基材の表面に遠赤外線発生物質が配されている。遠赤外線発生物質はセラミック、木炭粉、竹炭粉、シリコン等から成り、加熱によって大量の遠赤外線を放出するものが用いられる。この遠赤外線発生物質を含有した塗料を基材に塗布して遠赤外線発生物質の層が形成されている。
遠赤外線発生部53を遠赤外線発生物質であるセラミックにより形成してもよい。また、基材を樹脂により形成してもよい。これにより、遠赤外線発生部53を複雑な形状にも簡単に加工できる。基材として耐熱ABSや熱可塑性耐熱ポリイミド樹脂等の耐熱樹脂を使用すると遠赤外線発生部53は高温(例えば、120℃)にも耐えられ、風向板33cや背面板33を一体に形成することができる。
また、温度切替室3の温度が高いときに風向板33cによって温度切替室送風機14から遠赤外線発生部53の天井部50に向かって送風が行われる。これにより、ヒータ15で加熱された空気が天井部50に当たり、効率よく遠赤外線を発生させることができる。
遠赤外線発生部53の天井部50は温度切替室3の両側壁に設けられたレール51により支持される。レール51の上面には凹部51aが設けられ、天井部50の下面には凸部50aが設けられる。凹部51aに凸部50aが嵌合して天井部50が位置決めされている。温度切替室3の側壁の後部にストッパを突設し、天井部50の後端がストッパに当接して天井部50の背面板33側への移動を規制してもよい。
天井部50の上方に凸部50aの突出量よりも広い隙間を有してレール51と同様のレールを設けてもよい。これにより、天井部50の上下方向のガタツキがある程度規制され、天井部50の安定性が向上して使用者に安心感を与えることができる。該隙間を天井部50の背面板33付近で微小にすると、上下方向のガタツキを更に規制することができる。また、天井部50の上面を下方に付勢するバネ性のある押さえ板状のものをビス止め等によって温度切替室3の天井部や側面に設けると、凹部51aと凸部50aとの嵌合がより確実になる。これにより、振動等による異常音を抑制することができ、更に安定性が向上する。
天井部50の前部には下方に屈曲した把手部50bが設けられる。また、温度切替室3の前面の開口部3aの上端の高さよりも天井部50の上面の高さが低く配置されている。これにより、把手部50bに手指を掛けて引くと、凹部51aを凸部50aが乗り越えて前方に天井部50を引き出すことができるようになっている。従って、天井部50及び温度切替室3の天井面の清掃を行うことができ、天井部50や温度切替室3を清潔に保つことができる。
尚、把手部50bの前端を鉛直下方や傾斜面に対して垂直な方向に1〜3mm程度折曲した係り部を設けると、把手部50bが手指に引っ掛かりやすくなる。これにより、天井部50を手前に引き出しやすくなる。また、該係り部を天井部50の左右方向の端部や中央部等の一部に設けると、温度切替室3内の空気の流れに影響を与えない。
尚、レール51を省いて天井部50を温度切替室3の天井面にビス止めしてもよい。即ち、温度切替室3の天井面にネジ孔を螺設したボスを設け、天井部50にはボスに対向して貫通孔を設けてビスを貫通孔に挿通してボスに螺合する。この時、貫通孔を長孔に形成し、端部にビスの頭よりも大径の孔を形成した鍵穴状に形成するとよい。これにより、ビスに天井部50を掛着し、天井部50をスライドして簡単に着脱することができる。
従って、上記と同様に天井部50や温度切替室3を清潔に保つことができる。また、開口部3aの上端よりも高い位置に天井部50を配置することができ、温度切替室3の容積を広く確保することができる。また、温度切替室3の上方の断熱壁7にネジ孔を設けると、天井部50を温度切替室3の天井側に更に近づけて配置することができるのでより望ましい。この時、天井部50と温度切替室3の天井面との間に凹凸による嵌合部を設けて位置決めしてもよい。
扉9の背面側は背面板9aで覆われ、扉9の内部には断熱材62が充填されている。扉9の後部は温度切替室3の前面の開口部3aの内側に入り込んでいる。これにより、扉9の厚みを充分確保し、温度切替室3を低温にした際の外部からの吸熱や高温にした際の外部への放熱による熱ロスを低減することができる。
背面板9aの上部には更に後方に突出する取付部9bが設けられる。これにより、背面板9aの上面が温度切替室3の天井面と奥行方向に対向する距離が長くなる。従って、温度切替室3内の対流によって開口部3aの前端に到達する冷気や暖気を減らして熱ロスをより低減することができる。
更に、取付部9bの上面には上方に延びた補助パッキン63が設けられる。これにより、温度切替室3の天井面と扉9との隙間をより狭くし、対流によって開口部3aの前端に到達する冷気や暖気を更に減らすことができる。取付部9bは扉9の全周に設けると、より熱ロスを低減することができる。
遠赤外線発生部53の前面部52はビス65により取付部9bに取付けられる。遠赤外線発生部53の前面部52によって温度切替室3の前部から赤外線や遠赤外線が照射される。これにより、温度切替室3の後方から供給される温風やヒータ15の放熱と、前方から供給される赤外線や遠赤外線とによって温度切替室3内を均一に暖めることができる。
取付部9bは後方に突出するため、前面部52と背面板9aとの間に空間Sが形成される。これにより、前面部52の発熱や、前面部52で遮蔽される温度切替室3内の冷気や暖気による冷熱や熱が、断熱材62に加えて空間Sによって更に断熱される。従って、空間Sにより断熱効果を向上して扉9の前面からの熱漏洩を低減し、熱ロスを低減することができる。
尚、取付部9bを背面板9aの全周に設け、前面部52の上下の一部を取付部9bに取り付けてもよい。この時、前面部52の左右端と取付部9bとの間に2〜3mm程度の隙間を形成すると、断熱効果をより向上することができる。
また、扉9内の断熱材62は取付部9b内にも充填される。このため、取付部9bに接触する前面部52の発熱や、前面部52で遮蔽される冷気や暖気による冷熱や熱を更に断熱して熱ロスをより低減することができる。
尚、ビス65が挿通される前面部52のネジ孔を長孔に形成し、端部にビス65の頭よりも大径の孔を形成した鍵穴状に形成するとよい。これにより、ビス65に前面部52を掛着し、前面部52をスライドして簡単に着脱することができる。従って、前面部52を取り外して前面部52や扉9を清掃して清潔に保つことができる。尚、前面部52と背面板9aとの間に凹凸による嵌合部を設けて位置決めしてもよい。
赤外線発生部53の前面部52は収納容器11の開口した上面よりも上方に延びて配置される。これにより、前面部52で発生した赤外線や遠赤外線を収納容器11の内部の貯蔵物に照射することができる。また、前面部52には収納容器11の上面の開口部に向けて鉛直に対して傾斜する傾斜面52a、52bが設けられる。
これにより、前面部52で発生した赤外線や遠赤外線をより効率よく収納容器11の内部の貯蔵物に照射することができる。前面部52を前方に突き出して湾曲する弓形に形成し、弓形の上部によって鉛直に対して傾斜する傾斜面を構成してもよい。また、前面部52の中央部を前方に突き出して湾曲する凹面に形成し、凹面の上部によって鉛直に対して傾斜する傾斜面を構成してもよい。
また、前面部52の上端の傾斜面52bによって温度切替室3の後部から前方に向かって流通する冷気や暖気を効率よく下方に導くことができる。加えて、傾斜面52bが補助パッキン63よりも後方に配置されて空気を遮蔽するため、温度切替室3の天上面と背面板9aの上面との間の対流を少なくすることができる。これにより、熱ロスをより低減することができる。
また、赤外線発生部53の天井部50に設けた把手部50bの下面を前端から延長した延長線が前面部52に交差するように前面部52及び天井部50が配置される。これにより、天井部50に沿って前方へ流通する冷気や暖気を簡単に前面部52に沿って下方に導くことができる。従って、前面部52よりも前方への空気の流通を低減し、熱ロスを更に低減することができる。尚、把手部50bが曲面から成る場合は下面の前端の接線が前面部52と交差すればよい。
また、天井部50の前端と前面部52の上端の少なくとも一方にスポンジ状等に形成されたシール部材を設けてもよい。これにより、扉9を閉じた際に天井部50の前端と前面部52の上部とが密着して前面部52の前方の空間を塞ぐことができ、熱ロスをより低減することができる。
また、前面部52の左右端を後方に突出するように屈曲させると、冷気や暖気の流れを下方により効率よく流すことができる。また、冷気や暖気を効率よく流通させて圧力損失を低減することにより、不要な渦流を生じさせずに渦流等による騒音の発生も抑えることもできる。
図6は冷蔵庫1の中段付近の正面断面図を示している。冷凍室6の背後の冷気通路31(図3参照)は冷凍室送風機18の前面上部を開口し、冷凍室送風機18によって製氷室4に空気が送出される。製氷室4に連通する冷凍室6の下部には冷凍室ダンパ22が設けられる。冷凍室6の後方下部には、冷凍室ダンパ22を介して冷却器17に空気を導いて冷気通路31に戻る戻り通風路21(図3参照)が設けられている。冷凍室ダンパ22の開閉により冷凍室6から流出する冷気の風量が調整される。
冷気通路31の上部は冷蔵室ダンパ27を介して冷気通路32に連通する。また、冷気通路31は分岐され、チルド室ダンパ25を介してチルド室23と連通するとともに、前述のように導入通風路12(図4参照)に連通する。
冷蔵室2の背面下部には冷蔵室流出口(不図示)が開口し、野菜室5には野菜室流入口(不図示)が設けられる。冷蔵室流出口と野菜室流入口とは温度切替室3の背面を通る通路(不図示)により連結され、冷蔵室2と野菜室5が連通している。
温度切替室戻りダンパ20は温度切替室3の下部に設けられる。温度切替室3及び野菜室5の背後には、温度切替室戻りダンパ20から下方に延びて戻り通風路21(図3参照)に連通する戻り通風路19が設けられている。前述したように、温度切替室3内の空気は温度切替室戻りダンパ20の開口部20b(図4参照)を開くことにより戻り通風路19、21を介して冷却器17に導かれる。尚、野菜室5の背面には戻り通風路19に連通する野菜室流出口(不図示)が設けられる。
図7は冷蔵庫1の冷気の流れを示す冷気回路図である。冷凍室6、冷蔵室2及び温度切替室3はそれぞれ並列に配される。また、製氷室4は冷凍室6と直列に配され、野菜室5は冷蔵室2と直列に配される。冷却器17で生成された冷気は、冷凍室送風機18の駆動により矢印A(図6参照)に示すように冷気通路31を上昇して製氷室4に送出される。製氷室4に送出された冷気は製氷室4及び冷凍室6を流通し、冷凍室ダンパ22から流出する。そして、戻り通風路21を介して冷却器17に戻る。これにより、製氷室4及び冷凍室6内が冷却される。
冷蔵室送風機28の駆動により、冷凍室送風機18の排気側となる冷気通路31の上部で分岐した冷気は冷蔵室ダンパ27を介して矢印B(図6参照)に示すように冷気通路32を流通し、冷蔵室2に送出される。また、矢印C(図6参照)に示すようにチルド室23に送出される。
これらの冷気は冷蔵室2及びチルド室23を流通した後、野菜室5に流入する。野菜室5に流入した冷気は野菜室5内を流通して戻り通風路19、21を介して冷却器17に戻る。これにより、冷蔵室2及び野菜室5内が冷却され、設定温度になると冷蔵室ダンパ27及びチルド室ダンパ23が閉じられる。
また、温度切替室送風機14の駆動により、冷凍室送風機18の排気側となる冷気通路31の上部で分岐した冷気は矢印D(図6参照)に示すように導入通風路12を流通し、温度切替室吐出ダンパ13を介して温度切替室3に流入する。温度切替室3に流入した冷気は温度切替室3内を流通し、矢印F(図4参照)に示すように温度切替室戻りダンパ20から流出する。そして、矢印E(図6参照)に示すように、戻り通風路19、21を介して冷却器17に戻る。これにより、温度切替室3内が冷却される。
流入口33aから温度切替室3に流入する冷気は低温(例えば、−22℃)に維持されるため、バイメタルから成る風向板33cは吐出側の先端が下方に向かうように傾斜する。これにより、冷気は流入口33aから矢印J(図4参照)に示すように下方に向かって温度切替室3内に吹出され、天井部50から下方に離れて流通する。その後、前方へ流通する冷気は扉9に沿って降下して収納容器11の底面を流通し、背面側の流出口33bから流出する。
尚、貯蔵物を冷却保存する低温側の温度切替室3では冷気の温度がマイナスになり、温度切替室送風機14の風速は1m/秒以下になっている。これにより、冷気は下方に傾斜する風向板33cに沿って短い距離を移動しただけで下方に導かれる。従って、冷気を確実に下方に導くことができる。尚、風向板33cの吹出し方向が上向きに固定されていてもよい。この場合であっても、風速を1m/秒以下にすることによって風向板33c通過後の冷気が自重によって下方に導かれる。
冷気を下方に吹出すことにより温度切替室3の下部に冷気が流れるため、下部に配された貯蔵物を効率よく冷却できる。特に冷凍保存を行うときは、短時間で貯蔵物を冷凍して貯蔵物の保存効率を上げることができる。尚、温度切替室3がマイナスの温度領域の冷気が流入する低温側の時は、天井部50による遠赤外線の発生エネルギーは微小となるため冷却効率に影響はない。
また、天井部50を収納容器11の上面を塞ぐように配置してもよく、ダクトや風向板等により天井部50の上面上に冷気を導くようにしてもよい。このようにすると、収納容器1内は天井部50を介して間接冷却される。これにより、温度切替室3の室内温度が8℃や3℃で野菜等の貯蔵物を冷却保存する際に、例えば−18〜−10℃の冷気を当てずに貯蔵物が冷却される。従って、貯蔵物の乾燥を防止することができる。この時、天井部50の前部の近傍に冷気を下方に導く案内板やダクトを設けてもよい。これにより、扉9の背面側を下方に冷気が流れやすくなる。
前述のように、温度切替室3は使用者の操作により室内温度を切り替えることができるようになっている。温度切替室3の動作モードは温度帯に応じてワイン(8℃)、冷蔵(3℃)、チルド(0℃)、ソフト冷凍(−8℃)、冷凍(−15℃)の各冷却モードが設けられる。
これにより、使用者は所望の温度で貯蔵物を冷凍または冷蔵して冷却保存できる。室内温度の切り替えは温度切替室吐出ダンパ13を開く量を可変して行うことができる。尚、例えば冷凍の室内温度から冷蔵の室内温度に切り替える際にヒータ15に通電して昇温してもよい。これにより、迅速に所望の室内温度に切り替えることができる。
また、ヒータ15に通電することにより、温度切替室3の室内温度を貯蔵物を冷却保存する低温側から調理済み加熱食品の一時的な保温や温調理等を行う高温側に切り替えることができる。高温側の室内温度は、主な食中毒菌の発育温度が30℃〜45℃であるため、ヒータ容量の公差や温度切替室3内の温度分布等を考慮して50℃以上にするとよい。これにより、雑菌の繁殖を防止できる。
また、冷蔵庫に用いられる一般的な樹脂製部品の耐熱温度が80℃であるため、高温側の室内温度を80℃以下にすると安価に実現することができる。加えて、食中毒菌を滅菌するためには、例えば腸管出血性大腸菌(病原性大腸菌O157)の場合では75℃で1分間の加熱が必要である。従って、高温側の室内温度を75℃〜80℃にするとより望ましい。
以下は55℃での食中毒菌の減菌に関する試験結果である。試験サンプルは初期状態で大腸菌2.4×103CFU/mL、黄色ブドウ球菌2.0×103CFU/mL、サルモネラ2.1×103CFU/mL、腸炎ビブリオ1.5×103CFU/mL、セレウス4.0×103CFU/mLを含んでいる。この試験サンプルを40分間で3℃から55℃に加温し、55℃で3.5時間保温後、80分間で55℃から3℃に戻して再度各菌の量を調べた。その結果、いずれの菌も10CFU/mL以下(検出せず)のレベルまで減少していた。従って、温度切替室3の高温側の設定温度を55℃としても充分減菌効果がある。
また、遠赤外線発生部53の遠赤外線発生物質は50℃〜60℃で遠赤外線を大量に放出する。このため、高温側の室内温度を50℃〜60℃にすると、後述する遠赤外線による加熱効果を少ない電力で得ることができる。
温度切替室3を高温側に切り替えると、温度切替室送風機14から送出される空気はヒータ15で昇温され、流入口33aから温度切替室3内に送出される。この時、風向板33cは加熱された空気との接触によって上方に反る。このため、矢印K(図5参照)に示すように、温度切替室送風機14から送出される空気は遠赤外線発生部53の天井部50に向けて吹出される。
天井部50に当たった温風は天井部50の下面に沿って流通し、前部の屈曲部50bに沿って斜め下方に導かれる。下方に導かれた温風は前面部52に沿って下方に流通し、収納容器11の下方を流通して背面側の流出口33bから流出する。これにより、収納容器11に収納された貯蔵物には直接温風が当らず、肉や魚等の貯蔵物の乾燥を防ぐことができる。
天井部50及び前面部52は温風により暖められ、上昇した温度に応じた遠赤外線が発生する。これにより、温度切替室3内の貯蔵物が遠赤外線によって効率よく中まで暖められる。収納容器11は上面が開口しているため、収納容器11内の貯蔵物は上方の天井部50や前面部52から放射された赤外線や遠赤外線によって上方から暖められる。また、収納容器11内の貯蔵物は収納容器11の下方を流れる温風により下方からも間接的に暖められる。従って、収納容器11内の貯蔵物は温度むらなく内部まで温められる。
尚、遠赤外線発生部53から放出される遠赤外線は、遠赤外線発生部53の絶対温度の4乗と貯蔵物の絶対温度の4乗との差に比例した熱量を貯蔵物に与える。温風は温風の絶対温度の1乗と貯蔵物の絶対温度の1乗との差に比例した熱量を貯蔵物に与える。従って、遠赤外線により高い熱量が貯蔵物に与えられ、迅速な調理を行うことができる。
また、温風を貯蔵物に直接当てて加熱すると、貯蔵物の表面のみがすぐに温風と同じ温度となるため熱の受け渡し量が早期に減少する。これにより、温風による熱を効率よく貯蔵物の内部にまで与えることができない。これに対して、電磁波である遠赤外線は貯蔵物に当たると内部の分子が振動してこの摩擦熱により貯蔵物を暖める。このため、貯蔵物の表面から内部まで均一に加熱され、効率よく保温することができる。更に、温風が高温の場合は貯蔵物を焼きむらがなくこんがりと焼きあげることができる。
更に、高温の温風を直接貯蔵物に当てて加熱すると貯蔵物の乾燥が生じるとともに、表面のみがすぐに温風と同じ温度になるため内部を暖める前に貯蔵物を焦がす場合がある。これに対して、遠赤外線発生部53の温度を高温(例えば、120℃)に上昇させても、高温の空気が直接貯蔵物に接触しない。このため、貯蔵物を焦がすことなく貯蔵物の内部まで暖めることが可能となる。
天井部50は流入口33aの上端付近まで下げた位置に配置してもよく、天井部50の後端を流入口33aの上端付近まで下がるように曲げてもよい。これらによって、流出口33aから吹き出された温風を天井部50の上面に導くと、収納容器11内の貯蔵物は温風が当たることなく間接的に暖められる。これにより、貯蔵物の乾燥を防ぐことができる。風向板33cにより天井部50の上面に温風を導いてもよく、ダクトや案内板を設けてもよい。また、天井部50の前部の近傍に温風を下方に導く案内板やダクトを設けてもよい。これにより、扉9の背面側を下方に温風が流れやすくなる。
また、上下方向に複数のレール51を並設することにより、天井部50の上下方向の配置を可変することができる。これにより、天井部50を収納容器11の近傍に配置して収納容器11をより確実に塞いで貯蔵物の乾燥を防止できる。また、天井部50の上面に貯蔵物を載置して載置棚として用いることもできる。天井部50を収納容器11から離れて配置すると、板状の天井部50全体からの赤外線及び遠赤外線の放射によって温度切替室3内の温度分布を均一にすることができる。また、大きな貯蔵物も収納することができる。
また、前面部52または天井部50にリード線ヒータ等の補助ヒータを設けてもよい、これにより、温度切替室3内を過加熱することなく、前面部52や天井部50の温度を更に高温(例えば、120℃)にすることができる。従って、より大量の赤外線や遠赤外線を発生させることができる。この場合は、レール51となる部分には耐熱樹脂や金属を用い、天井部50はレール51との接触面積が少なくなるように形成される。例えば、天井部50の左右端を略90度に折り曲げたり、天井部50の下面に凹凸形状が設けられる。
本実施形態によると、温度切替室3に遠赤外線発生部53を設けたので、ヒータ15と遠赤外線発生部53とによって温度切替室3内が加熱される。従って、温度切替室3内の温度分布を均一にすることができる。また、遠赤外線によって温風を直接当てずに短時間で貯蔵物の内部まで加熱することができる。従って、貯蔵物の乾燥や表面の焦げを防止して良好な保温や温調理を行うことができる。
また、遠赤外線発生部53の前面部52を扉9に設けたので、扉9を開いて前面部52を簡単に清掃することができる。従って、遠赤外線発生部53の前面部52や扉9を清潔に保つことができる。加えて、温度切替室3内の暖気や冷気を前面部52で遮蔽するため前面からの熱や冷熱の漏洩を低減し、熱ロスを低減することができる。
また、遠赤外線発生部53が前面部52と天井部50とを有するので、貯蔵物に供給される遠赤外線が増加してより良好な保温や温調理を行うことができる。また、温度切替室3内の温度分布をより均一にすることができる。
また、天井部50を温度切替室3の上部に配置し、温度切替室送風機14は温度切替室3が低温側の時は風向板33cによって下方に吹出すので、低温側の時に温度切替室3下部に配される貯蔵物を効率よく冷却することができる。また、温度切替室送風機14は高温側の時は風向板33cによって天井部50に向けて上方に吹出すので、天井部50を効率よく加熱することができる。
本実施形態において、収納容器11の下面を支持する支持板を設け、該支持板を天井部50と同様の赤外線発生部により形成してもよい。これにより、複数の赤外線発生部が上下に分けて設けられる。その結果、遠赤外線の放射が収納容器11の下方からも与えられてより効率的に貯蔵物を加熱することができる。
また、野菜室5の流出口にダンパを設けてもよい。これにより、温度切替室3を高温側から低温側に切り替えた際に、該ダンパを閉じて温度切替室3からの熱風が野菜室5に逆流することを防止できる。また、温度切替室3を高温側から低温側へ切り替える際に冷凍室送風機18が停止されている場合には、冷凍室ダンパ22が閉じられるようになっている。これにより、温度切替室送風機14の駆動によって冷凍室ダンパ22から冷凍室6内へ熱風が逆流することを防止できる。
また、冷却器17によって冷凍室6及び冷蔵室2を冷却しているが、冷蔵室2及び野菜室5専用の冷却器を別途設けてもよい。この時、冷却器17によって冷凍室6及び温度切替室3を冷却することができる。
また、左右に並設された製氷室4及び温度切替室3の下方に冷凍室6と野菜室5を左右に並設しているが、他の配置でもよい。例えば、左右に並設された製氷室4及び温度切替室3の下方に冷凍室6を設けてその下方に野菜室5を設けてもよい。また、左右に並設された製氷室4及び温度切替室3の下方に野菜室5を設けてその下方に冷凍室6を設けてもよい。
尚、野菜室5は冷却温度が高いため、温度切替室3の下方に野菜室5を設けると断熱壁8の厚みを薄くしても高温側の温度切替室3から野菜室5への熱の受け渡しが少なくてすむ。また、低温側の温度切替室3によって野菜室5を間接冷却することができる。
また、冷却器17は冷媒蒸発型の冷凍サイクルの蒸発器から成っているが、他の冷却方式の低温部から成る冷却器を用いてもよい。例えば、ペルチェ素子のペルチェ効果を利用した冷却器であっても、スターリングサイクル冷凍機の低温部を利用した冷却器であっても、上記と同様の効果が得られる。