JP2008073047A - 異種タンパク質の製造方法、タンパク質の分泌方法並びに前記方法の実施のためのe.コリ菌株 - Google Patents

異種タンパク質の製造方法、タンパク質の分泌方法並びに前記方法の実施のためのe.コリ菌株 Download PDF

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Abstract

【課題】E.コリ菌株によって工業的規模で異種のタンパク質を発酵培地中で製造するための方法であって、該タンパク質が高収率で発酵培地中に分泌され、かつ異種のタンパク質が更なる後処理なくして発酵培地から直接的に精製することができる方法を提供する。
【解決手段】lpp遺伝子中もしくはlpp遺伝子のプロモーター領域中に突然変異を有し、かつ異種タンパク質をコードする遺伝子であってシグナルペプチドをコードするシグナル配列と機能的に結合されている遺伝子を有するE.コリ菌株を、工業的規模で発酵培地中で発酵させ、その際、該E.コリ菌株が、異種タンパク質を発酵培地中に分泌し、そして該タンパク質を発酵培地から分離する方法において、異種タンパク質が70個より多くのアミノ酸からなることを特徴とする方法によって解決される。
【選択図】なし

Description

本発明は、リポタンパク質−突然変異を有するエシェリキア・コリ菌株を使用した異種タンパク質の発酵的製造方法に関する。
組み換えタンパク質医薬品(医薬タンパク質/バイオロジクス)に関する市場は、近年に大きく成長している。その際、特に重要なタンパク質医薬品は、真核生物のタンパク質、とりわけ哺乳動物タンパク質及びヒトのタンパク質である。重要な医薬タンパク質の例は、サイトカイン、成長因子、プロテインキナーゼ、タンパク質ホルモン及びペプチドホルモン並びに抗体及び抗体フラグメントである。医薬タンパク質の製造コストが依然として非常に高いことに基づき、効率化されたことで廉価となったその製造のための方法及び系が絶え間なく探求されている。
一般に、組み換えタンパク質は、哺乳類細胞培養と微生物系のいずれかにおいて製造される。微生物系は、こうすることで組み換えタンパク質がより短時間でかつ少ないコストで製造できるという利点を、哺乳類細胞培養に対して有している。組み換えタンパク質の製造のためには、従ってとりわけ細菌が適している。その非常によく調査された遺伝学及び生理学と、短い発生時間と、容易な取り扱いに基づき、グラム陰性の腸内細菌であるエシェリキア・コリは、目下、組み換えタンパク質の製造のために最も頻繁に使用される生物である。E.コリでは、組み換えタンパク質は、通常は、種々の様式で製造することができる:
1. 可溶性タンパク質として細胞内産生;
2. 封入体("インクルージョンボディー")として細胞内産生;
3. ペリプラズムへの分泌。
ペリプラズムでの標的タンパク質の集積は、細胞内産生に対して種々の利点を有する:
1)分泌された標的タンパク質のN末端アミノ酸残基が、必ずしもメチオニンである必要はなく、産物の天然の開始アミノ酸と同一であってよいこと、
2)ペリプラズムもしくは発酵培地におけるプロテアーゼ活性が、細胞質中よりも明らかに低いこと、
3)場合により必要となるジスルフィド結合の形成が、酸化条件下で、かつペリプラズム性のシャペロンによって可能となること
である。
E.コリは、タンパク質を細胞質膜を通じてペリプラズムへと輸送するための種々の系を有する。組み換えタンパク質の分泌的製造のためには、最も頻繁に、Sec系が使用される。その際、所望のタンパク質の遺伝子を、通常E.コリからSec装置を利用して排出されるようなタンパク質(例えばPhoA、OmpA、OmpF、StII、Lpp、MalE)のシグナル配列と機能的に結合させる。しかしながら、異種のシグナル配列、例えば同様にE.コリのSec装置によって認識されるα−CGTアーゼ−シグナル配列も使用することができる(EP0448093号)。Sec系の場合に、タンパク質は、折り畳まれていない状態で細胞質膜を通じて輸送され、引き続きペリプラズムで初めて折り畳まれる。
組み換えタンパク質の製造方法は、その際常に、2つの部分に分かれる。第一の部分は、粗産物をもたらす発酵である。粗産物とは、この場合には、組み換えタンパク質と、更にくわえて不純物となる宿主固有のタンパク質とを含有する発酵成果物を指す。製造方法の第二の部分は、粗産物から出発する組み換えタンパク質の精製を含む。
組み換えタンパク質の労力と費用は、発酵直後に組み換えタンパク質と並んで宿主タンパク質を含む混合物として存在する粗産物の製造コストの他に、実質的に、所望の組み換えタンパク質へと粗産物を精製するコストによっても決められる。精製は、たいていの場合に、クロマトグラフィー法による複数の段階を介して行われる。その際、部分的に免疫原となるか又は毒性がある不純物としての宿主タンパク質の除去精製が重要な役割を担う。この場合に、ペリプラズム産生のような細胞内産生は、以下の欠点を有する:
1. 細胞を分解せねばならないこと
2. 標的タンパク質を多くの宿主タンパク質から精製せねばならないこと
である。
細胞内産生では、標的タンパク質がしばしば部分的に誤った折り畳みで存在する結果にもなる。
従って特に、E.コリにおける組み換えタンパク質のための製造方法であって、標的タンパク質が高収率でかつ正しい折り畳みで発酵培地に直接分泌される方法が好ましい。
文献においては、一連のE.コリ菌株とE.コリ菌株を用いた一連の方法が開示されており、それによって組み換えタンパク質の発酵培地への分泌が達成される(Shokri他著のAppl.Microbiol.Biotechnol.60(2003),654−664;Mergulhao他著のBiotechnology Advances 23(2005),177−202、ChoiとLee著のAppl.Microbiol.Biotechnol.64(2004),625−635を参照)。
EP0338410号及びEP0448093号では、発酵培地中での大量のタンパク質分泌を示すE.コリの"分泌突然変異体"の製造及び使用が開示されている。好適なE.コリ−分泌突然変異体の製造のための出発菌株としては、特にminA突然変異及び/又はminB突然変異を有する細胞(例えばDS410)又は外膜の1種もしくは複数種のタンパク質に突然変異を有する細胞(例えばBW7261)を使用することができる。これらの細胞は、更に、例えばN−メチル−N′−ニトロ−N−ニトロソグアニジンでの処理によって突然変異誘発手順に供された。引き続き、その際例えば細胞壁活性物質のD−シクロセリンに対する耐性についての選択が行われるか、又は改善されたタンパク質分泌についてのスクリーニングが、分泌可能なデンプン分解性酵素であるα−シクロデキストリン−グリコシル−トランスフェラーゼ(αCGTアーゼ)を指標タンパク質として使用した場合のアミロペクチン−アズール−寒天培地におけるハロー形成の分析によって行われる。前記のようにして作製された分泌突然変異体を用いて、異種タンパク質、例えばαCGTアーゼもしくはヒルジン誘導体が、240mg/lもしくは2.63g/lの細胞外収率で製造することができた。前記の分泌突然変異体の大きな欠点は、突然変異誘発とスクリーニングとによる費用のかかる製造手順にある。更に、その製造は、無指向性の突然変異誘発段階を含み、それは所望の突然変異の他に、不所望な突然変異ももたらすことがある。
EP0497757号は、生物学的に活性な、従って正しく折り畳まれた異種タンパク質を培養培地中に分泌するE.コリ菌株の製造方法において、E.コリ菌株を突然変異誘発剤で処理し、バクテリオファージT7に対する耐性によって、外膜に改変を有する突然変異体を探し、そして"培地中へのタンパク質分泌"の特性について試験する方法を記載している。係る菌株で培地中に達成されるタンパク質収率は、しかしながら非常に低い(5mg/l未満)。ここではまた、他の欠点は、係る菌株の費用がかかりかつ再現性に乏しい製造にある。
先行技術に記載されたアプローチは、以下の欠点の少なくとも1つを有する:
a)産生系を用いて、同種のタンパク質又はまったく特定のタンパク質しか細胞外で十分に高い収率で製造できないこと、又は
b)系が原則的に種々のタンパク質の製造のために適している場合に、それによって今まで経済的観点から低い収率しか達成されなかったこと、又は
c)培養に引き続き、例えば標的タンパク質と融合相手との開裂のような更なる工程を行わねばならず、これは、後処理を費用のかかるものにすること、又は
d)タンパク質を発酵培地中に高い収率で分泌できる分泌菌株の作製が、費用のかかる突然変異誘発法及びスクリーニング法によってのみ可能であること
である。
その他に、原則的に、いわゆる"漏出性(Leaky)"菌株の使用の可能性がある。その菌株とは、E.コリ又はサルモネラ菌の突然変異体であって、外膜に欠陥を有し、従ってペリプラズム性タンパク質を部分的に発酵培地中に放出する突然変異体を表す。それは、非特異的な機構である(LazzaroniとPortalier著(1981年)、J.Bact.145,1351−58)。係る"漏出性"突然変異体の一例は、外膜に改変されたリポタンパク質部分を有する菌株(例えばlpp突然変異体)である(Hirota他著(1977年)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74,1417−20;YemとWu著(1978年)、J.Bact.133,1419−26;Suzuki他著(1978年)、Mol.Gen.Genet.167,1−9)。
lpp突然変異体が、細胞固有のペリプラズム性タンパク質、例えばアルカリ性ホスファターゼPhoA又はRNアーゼIを発酵培地中に放出することは知られている。係る菌株は、EDTA、種々の界面活性剤及び色素に対して極めて感受性である(Fung他著(1978年)、J.Bact.133,1467−71;Suzuki他著(1978年)、Mol.Gen.Genet.167,1−9;Hirota他著(1977年)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74,1417−20)。
E.コリのlpp突然変異体を工業的規模で異種タンパク質の製造のために使用することは、今まで記載されていない。それどころか、常に、lpp突然変異体にも属するE.コリの"漏出性"菌株は十分に頑強でなく、従って大工業的培養のためには適していないことが指摘されている(EP0357391号;WanとBaneyx著(1998年)、Protein Expres.Purif.14,13−22;Shokri他著(2003年)、Appl.Microbiol.Biotechnol.60:654−64;Ray他著(2002年)、Protein Expres.Purif.26,249−59)。
ここで僅かな文献において、lpp突然変異体の研究室規模での使用は、この菌株の純粋な特性決定の枠を超えている。ここで、E.コリのlpp欠失突然変異体は、その特性に基づきペリプラズム性タンパク質を部分的に発酵培地中に放出し、開裂可能なシグナルペプチドを有する排出タンパク質をコードする潜在的な毒性遺伝子を病原性微生物からハロー形成スクリーニングを介して同定するためのツールとして使用された(Giladi他著(1993年)、J.Bact.175,4129−36)。異種の標的タンパク質は、その際、E.コリ固有のペリプラズム性のアルカリ性ホスファターゼとの融合タンパク質として作製され、そして融合タンパク質として発酵培地中に分泌された。
他のアプローチでは、E.コリのマルトース結合タンパク質(MBP)とペディオコッカス・アシジラクティシ(Pediococcus acidilactici)由来のバクテリオシンであるペディオシンAcH(PapA)とからなる融合タンパク質を、E.コリのlpp挿入突然変異体を使用して細胞外集積させることが記載されている(Miller他著(1998年)、Appl.Environ.Microbiol.64,14−20)。ここでもまた、異種の標的タンパク質は、細胞固有のタンパク質との融合タンパク質として培養培地中に分泌された。
両方の刊行物は、融合タンパク質を振盪フラスコ中で研究室規模において複雑かつ高価な研究室用培地(例えばルリア−ベルタニブロス)中で製造することを記載している。
更に、Kanamori他(1988年、Gene 66,295−300)、Morishiva他(1994年、Thrombosis Research 73,193−204)及びUS5223482号には、lpp突然変異体のJE5505(Suzuki他著(1978年)、Mol.Gen.Genet.167,1−9)を、最大70個のアミノ酸から比較的容易に合成されている真核生物のポリペプチドの細胞外製造のために使用することが開示されている。それぞれ培養に使用される最少塩培地M9CAは、更に、カザミノ酸の補給と共に高価な錯体成分を含有する。発酵工程では、経済的な方法にとっては関心が持たれない最大50mg/lといった低い細胞外産物収率のみを達成できるにすぎず、これは恐らく前記の発酵条件下で該菌株の頑強性が不足していることに起因する。
更に、lpp突然変異体が、外膜のベシクルを切り離すこと(McBroomとKuehn著、2005年5月12日、2.2.4章、Outer Membrane Vesicles.In A.Boeck,R.Curtiss III,J.B.Kaper,F.C.Neidhardt,T.Nystroem,K.E.Rudd,and C.L.Squires(ed.),EcoSal−Escherichia coli and Salmonella:cellular and molecular biology.[Online.]http://www.ecosal.org.ASM Press,Washington,D.C.)、そして発酵培地中に放出されたタンパク質がこのベシクル中に包含されていること(KestyとKuehn著(2004年)、J.Biol.Chem.279,2069−76)が記載されている。それによって、該タンパク質は、ジスルフィド結合形成の通常の過程と、複雑なタンパク質の折り畳みのためにペリプラズムで必要とされるペリプラズム性の異性体化系から免れる。従って、平均的な当業者は、複雑な異種のタンパク質の場合に誤った又は不完全な折り畳みに導かれるということから出発する。
融合タンパク質としてのタンパク質の産生も正しく折り畳まれていないタンパク質の産生も望ましくない。それというのも、標的タンパク質の労力のかかる高価な後処理が必要となるからである。このように、融合タンパク質の場合には、所望の標的タンパク質は、費用をかけて、特定の化学薬品又は酵素によって融合相手から開裂させ、精製せねばならない。誤って折り畳まれたタンパク質の場合には、面倒な変性手順と再フォールディング手順が必要となる。
EP0448093号 EP0338410号 EP0497757号 EP0357391号 US5223482号 Shokri他著、Appl.Microbiol.Biotechnol.60(2003),654−664 Mergulhao他著、Biotechnology Advances 23(2005),177−202 ChoiとLee著、Appl.Microbiol.Biotechnol.64(2004),625−635 LazzaroniとPortalier著(1981)、J.Bact.145,1351−58 YemとWu著(1978年)、J.Bact.133,1419−26 Suzuki他著(1978年)、Mol.Gen.Genet.167,1−9 Fung他著(1978年)、J.Bact.133,1467−71 Hirota他著(1977年)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74,1417−20 WanとBaneyx著(1998年)、Protein Expres.Purif.14,13−22 Ray他著(2002年)、Protein Expres.Purif.26,249−59 Giladi他著(1993年)、J.Bact.175,4129−36 Miller他著(1998年)、Appl.Environ.Microbiol.64,14−20 Kanamori他(1988年)、Gene 66,295−300 Morishiva他(1994年)、Thrombosis Research 73,193−204 KestyとKuehn著(2004年)、J.Biol.Chem.279,2069−76
本発明の課題は、E.コリ菌株によって工業的規模で異種のタンパク質を発酵培地中で製造するための方法であって、該タンパク質が高収率で発酵培地中に分泌され、かつ異種のタンパク質が更なる後処理なくして発酵培地から直接的に精製することができる方法を提供することである。
前記課題は、lpp遺伝子中もしくはlpp遺伝子のプロモーター領域中に突然変異を有し、かつ異種タンパク質をコードする遺伝子であってシグナルペプチドをコードするシグナル配列と機能的に結合されている遺伝子を有するE.コリ菌株を、工業的規模で発酵培地中で発酵させ、その際、該E.コリ菌株が、異種タンパク質を発酵培地中に分泌し、そして該タンパク質を発酵培地から分離する方法において、異種タンパク質が70個より多くのアミノ酸からなることを特徴とする方法によって解決される。
有利には、異種タンパク質は、100個より多くのアミノ酸からなる。
高い収率とは、その際、培養の終わりに発酵培地中で、有利には500mg/lより高いタンパク質濃度を有利には有することを表し、あるいは既に良好な収率で産生できるタンパク質の場合には、目下の技術水準により製造できるその110%より高い収率を表す。
lpp遺伝子中に突然変異を有するE.コリ菌株は、文献に記載されている(Hirota他著(1977年)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74,1417−20;YemとWu著(1978年)、J.Bact.133,1419−26)。
更に、当業者には、任意のE.コリ菌株からlpp突然変異体を作製する方法は知られている。塩基配列において、lpp野生型遺伝子の配列とは突然変異に基づき相違しているDNA配列は、lppアレルとも呼称する。文献で同義語として使用されるlpp遺伝子についての名称は、mlpA又はlpoである。
ここで、lppアレルは、例えばP1−ファージによる遺伝子導入によって、又は接合によって、lpp突然変異を有する菌株からlpp野生株に移入させることができ、その際、lpp野生型遺伝子はlppアレルと交換される。
更に、当業者には、lppアレルの作製のための他の方法は知られている。係るlppアレルは、一般に、簡素化のため、まずインビトロで作製され、そして引き続き細胞の染色体中に組み込まれ、それによって本来存在していたlpp野生型遺伝子が交換され、こうしてlpp突然変異体が作製される。lpp遺伝子のアレルは、例えば出発材料としてlpp野生型遺伝子のDNAを用いて非特異的又は狙いを定めた突然変異誘発によって製造することができる。lpp遺伝子内部又はlpp遺伝子のプロモーター領域内部の非特異的な突然変異は、例えば化学剤、例えばニトロソグアニジン、エチルメタンスルホン酸などによって及び/又は物理的方法及び/又は規定の条件下で実施されるPCR反応によって作製することができる。DNA断片内の特定部位に突然変異を挿入するための方法は公知である。ここで、例えばlpp遺伝子及びそのプロモーター領域を含むDNA断片中の1つ以上の塩基の交換は、PCRによって好適なオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して実施することができる。
記載された方法によってインビトロで作製されたlppアレルは、簡単な標準的方法によって、宿主細胞の染色体中に、lpp野生型遺伝子/プロモーターの代わりに組み込むことができる。これは、例えばLink他(1997年、J.Bacteriol.179:6228−37)において記載された、染色体突然変異を遺伝子中に相同組み換えの機構によって組み込むための方法によって実施できる。全lpp遺伝子又はその一部の染色体内欠失の挿入は、例えばλ−Red レコンビナーゼ系を用いて、DatsenkoとWanner(2000年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:6640−5)によって記載された方法に従って可能である。
E.コリのlpp遺伝子のDNA配列(配列番号1)は、配列番号2の配列を有するLppタンパク質をコードしている。その際、最初の60個のヌクレオチドは、Lppタンパク質のペリプラズムへの分泌を制御し、かつこの移行過程の間に再び開裂されるシグナルペプチドをコードしている。lpp遺伝子のプロモーター領域は、InouyeとInouye(1985年、Nucleic Acids Res.13,3101−10)で定義されている。
lpp遺伝子中の突然変異は、有利にはlpp遺伝子中又はlpp遺伝子のプロモーター領域中の1つ以上のヌクレオチドの置換、欠失又は挿入であって、lpp遺伝子がもはや発現されないもしくは僅か少しだけ発現されるか、又はLppタンパク質の機能の低下を伴うLppタンパク質のアミノ酸配列の改変をもたらすものである。
突然変異に基づき低減されたlpp遺伝子の発現は、本発明の範囲では、細胞において、野生型菌株W3110(ATTC:27325)の細胞と比較してLppタンパク質量が最大で80%しか検出できない場合を指す。これは、例えば抗Pal抗体を用いたLppタンパク質の免疫学的定量化によって行うことができる(Cascales他著(2002年)、J.Bacteriol.184,754−9)。
更に、当業者には、Lppタンパク質の機能の低下を測定するための種々の方法は知られている。ここで、例えば発酵培地中に遊離される指標タンパク質である"アルカリ性ホスファターゼ"の活性の測定によって測定可能なE.コリのペリプラズム性のタンパク質の発酵培地中での出現(漏出性)か、界面活性剤、EDTA又は規定の色素に対する高められた感受性か、又は抗生物質であるグロボマイシンに対する高められた耐性か、又はLppタンパク質の低減された機能の示唆としての電子顕微鏡写真におけるいわゆる泡(Bleb)形成の観察が用いられる(Hirota他著(1977年)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74,1417−20;YemとWu著(1978年)、J.Bacteriol.133,1419−26;Zwiebel他著(1981年)、J.Bacteriol.145,654−656)。
本発明の範囲における、細胞内のLpp機能の低下は、有利には、lpp遺伝子中もしくはlpp遺伝子のプロモーター領域中の突然変異に基づき、細胞固有のペリプラズム性のタンパク質である"アルカリ性ホスファターゼ"の全活性の少なくとも10%が発酵の間に細胞から発酵培地中に遊離した場合か、又はグロボマイシンに対する細胞の耐性が、lpp野生型菌株のW3110と比較して2倍だけ高められている場合を指す。
特に、lpp遺伝子中の突然変異であって、配列番号2の位置77のアルギニン残基をシステイン残基で交換した突然変異体(lpp1突然変異体)と、配列番号2の位置14のグリシン残基をアスパラギン酸残基で交換した突然変異体(lpp3突然変異体)とが好ましい。
同様に、lpp遺伝子自体における又はlpp遺伝子のプロモーター領域における少なくとも1つのヌクレオチドの欠失に基づき、細胞がペリプラズム性のタンパク質について高められた漏出性を示すこととなる突然変異が好ましい。
その際、高められた漏出性とは、細胞が発酵の後に、E.コリW3110(ATCC27325)菌株より高い濃度のペリプラズム性のタンパク質、例えばアルカリ性ホスファターゼを栄養培地中に有することを表す。
lpp突然変異体中で製造可能なタンパク質は、異種のタンパク質である。異種のタンパク質とは、E.コリK12株のプロテオームに属さない、すなわち天然の全タンパク質装備に属さないタンパク質を表す。天然でE.コリK12株中に存在する全てのタンパク質は、E.コリK12の公知のゲノム配列(Genbankのアクセッション番号NC_000913)から誘導することができる。更に、本発明の範囲における"異種のタンパク質"という概念は、E.コリのタンパク質との融合タンパク質を含まない。
その際、異種のタンパク質は、それぞれの異種のタンパク質について特徴的な比活性もしくはその作用(機能)の50%より高く、有利には70%より高く、特に有利には90%より高くを示す。
異種の、特に有利には真核生物のタンパク質であって1つ以上のジスルフィド結合を有するタンパク質又は異種の、特に有利には真核生物のタンパク質であってその機能形では二量体又は多量体として存在するタンパク質が好ましい。真核生物のタンパク質のための例は、抗体及びそのフラグメント、サイトカイン、成長因子、プロテインキナーゼ並びにタンパク質ホルモンである。
本発明による方法によって、異種のタンパク質であってその機能形において二量体もしくは多量体として存在する、すなわち四次構造を有し、かつ複数の同一の(同種の)サブユニット又は非同一の(異種の)サブユニットから構成されているタンパク質を、高収率で正しい活性な二量体もしくは多量体の構造において発酵培地から、単量体のタンパク質鎖が分泌のためのシグナルペプチドと結合されており、かつSec形によってペリプラズムに輸送される場合に得ることができる。それは、ホモダイマーもしくはホモマルチマーでも、ヘテロダイマーもしくはヘテロマルチマーの場合にも、従ってサブユニットのタンパク質鎖がそのアミノ酸配列において異なるタンパク質の場合にもうまくいく。その際、特に好ましいのは、多くの種々のタンパク質鎖から構成されているタンパク質、従ってヘテロダイマーもしくはヘテロマルチマーである。そのことが全く予測されなかったのは、係るタンパク質の場合に、個々のタンパク質鎖が、Sec系によってまず、互いに無関係にペリプラズムに輸送されるはずであり、そこで通常は、ペリプラズム性の酵素及びシャペロンの共作用下で正しい二次構造、三次構造及び四次構造に折り畳まれもしくは会合されるからである。ここで、当業者は今まで、発酵培地中でのタンパク質の遊離は、係る複雑なフォールディング過程及び会合過程によって妨害され、かつ係るタンパク質を機能形で分泌することは従って特に困難であるということから出発していた。
多くのタンパク質サブユニットから構成される特に重要なタンパク質のクラスは、抗体である。抗体は、研究、診断において、かつ療法剤としても広範囲で使用されるので、特に効率的でかつ工業的規模で可能な製造方法が必要である。
抗体では、全長抗体と抗体フラグメントで区別される。全長抗体は、4つのタンパク質鎖と、2つの同一の重鎖と、2つの同一の軽鎖とからなる。種々の鎖は、ジスルフィド結合によって互いに結合されている。各重鎖は、可変領域(VH)と定常領域とから構成され、後者は3つのドメインCH1、CH2及びCH3を含む。ドメインCH2とCH3とを含みかつFc領域とも呼称される重鎖の領域は、抗原結合に関与せず、例えば補体系の活性化のような他の機能を有する。各軽鎖は、可変領域(VL)と定常領域とから構成され、後者はドメインCLを含む。重鎖のアミノ酸配列に依存して、抗体(免疫グロブリン)は、5つのクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMに分類される。全長抗体という概念とは、軽鎖がそれぞれドメインVL及びCLを含み、かつ重鎖が実質的にドメインVH−CH1−CH2−CH3から構成されているあらゆる抗体であって、従って該抗体が特異抗原を結合できる特性の他に、他の機能(例えば補体系の活性化)を実行できる抗体を表す。
更に、抗体フラグメントは、単に全長抗体の一部から、通常は抗原結合部位を一緒に含む部分からなる。抗体フラグメントのための例は、とりわけ、i)軽鎖がそれぞれドメインVL及びCLを含み、かつ重鎖がそれぞれドメインVH及びCH1を含むFabフラグメント、ii)原則的にFabフラグメントであるが、CH1ドメインのC末端に更に1つ以上のシステイン残基を有するFab′フラグメント、又はiii)2つのFab′フラグメントがCH1ドメインのC末端にあるシステイン残基によってジスルフィド結合を介して互いに結合されているF(ab′)2フラグメントである。
抗体フラグメントの製造のためには、既にE.コリが使用されているが、その製造はその際、細胞質かペリプラズムのいずれかで実施された。両方の場合において、E.コリ細胞を分解せねばならず、かつ抗体フラグメントを残りのE.コリのタンパク質から分離せねばならない。
US6204023号及びEP0396612号は、Fabフラグメントの細胞外製造を記載している。収率は、1リットルあたり数ミリグラムの範囲にある。Better他(1993年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90,457−61)は、キメラのFab′−及びF(ab′)2−抗体フラグメントを、E.コリ菌株W3110ara-を用いて細胞外で製造することを記載している。また、その際に達成される200〜700mg/lの収率は、工業的規模では経済的な方法のためには低すぎる。
全長抗体は、E.コリにおいて今まではもっぱら、ペリプラズムにおいて正しい四次構造で製造することができた(WO02/061090号)。抗体を得るためには、その際、細胞を分解することが必要である。その収率は、最大で156mg/lと非常に低かった。880mgまでのより高い収率は、抗体鎖の他に、dsbタンパク質もしくはFkpAのようなペリプラズム性のフォールディング補助因子をプラスミドで同時発現させた場合にのみ達成された。該抗体は、多くの他のE.コリのタンパク質から精製せねばならなかった。
本発明の範囲での試みにおいて、驚くべきことに、E.コリのlpp突然変異体を抗体フラグメントの製造のために使用した場合に、工業的規模で、1g/lより高い細胞外収率が得られることが示された。好ましい抗体フラグメントは、その際、Fab、Fab′及びF(ab′)2フラグメント、特に有利にはFabフラグメントである。
更に、全長抗体の製造に際しても、本発明による方法によって、正しく折り畳まれた機能的な細胞外の抗体が高い収率で得られることは驚くべきことであった。好ましい全長抗体は、その際、IgGクラス及びIgMクラスの抗体、特にIgGクラスの抗体である。
細胞質からペリプラズムへのタンパク質の分泌のためには、生産されるべきタンパク質の遺伝子の5′末端が、タンパク質排出のためのシグナル配列の3′末端と読み枠内で(in frame)結合されていることが必要である。そのために、原則的には、E.コリにおいて標的タンパク質の移行をSec装置によって可能とするあらゆるシグナル配列の遺伝子が適している。以下の種々のシグナル配列は、先行技術において記載されており、例えば以下の遺伝子:phoA、ompA、pelB、ompF、ompT、lamB、malE、スタフィロコッカスのプロテインA、StIIなどのシグナル配列である(ChoiとLee(2004年))。有利には、E.コリのphoA遺伝子及びompA遺伝子のシグナル配列が好ましく、特に配列番号3の配列を有するクレブシエラ・ニューモニアエ(Klebsiella pneumoniae)M5a1由来のシクロデキストリン−グリコシルトランスフェラーゼ(CGTアーゼ)のためのシグナル配列が好ましい。
シグナル配列と組み換え標的タンパク質の遺伝子とからなる少なくとも1つの融合物を含むDNA分子の製造は、当業者に公知の方法に従って行われる。
ここで、標的タンパク質の遺伝子を、まずPCRによってプライマーとしてオリゴヌクレオチドを使用して増幅させ、それを引き続き通常の分子生物学的技術によって、シグナルペプチドの配列を含みかつ標的タンパク質の遺伝子と同様に作製されたDNA分子と、読み枠内融合(in frame Fusion)、すなわちシグナル配列と標的タンパク質の遺伝子を含む通しの読み枠が生ずるように結合させることができる。選択的に、上述の両方の機能的断片を含む全DNA分子を遺伝子合成によって製造することもできる。前記のシグナル配列−組み換え遺伝子融合物を、次いで、ベクター、例えばプラスミド中に導入することもでき、又は直接的に公知の方法に従って宿主細胞の染色体中に組み込むこともできる。有利には、シグナル配列−組み換え遺伝子融合物はプラスミドに導入される。
複数の種々のサブユニットからなるタンパク質を、細胞質からペリプラズムへと分泌させるためには、産生されるべきサブユニットのそれぞれの遺伝子(標的遺伝子)の5′末端を、読み枠内で、タンパク質排出のためのシグナル配列の3′末端と結合させる必要がある。その際、異なるサブユニットの遺伝子を異なるシグナル配列と結合させることなどが可能である。異なるシグナル配列との結合が好ましく、特に、1つのサブユニットをE.コリのphoA遺伝子もしくはompA遺伝子のシグナル配列と結合させることが好ましく、かつ第二のサブユニットを配列番号3の配列を有するクレブシエラ・ニューモニアエ由来のシクロデキストリン−グリコシルトランスフェラーゼ(CGTアーゼ)のためのシグナル配列と結合させることが好ましい(EP0448093号)。
個々のサブユニットのシグナル配列−標的遺伝子融合物を、次いで、ベクター、例えばプラスミド中に導入することもでき、又は直接的に公知の方法に従って宿主細胞の染色体中に組み込むこともできる。その際、個々のサブユニットのシグナル配列−標的遺伝子融合物を、別々であるが、互いに和合性のプラスミドにクローニングすることができ、又は該融合物を1つのプラスミドにクローニングすることもできる。その際、遺伝子融合物は、1つのオペロンにまとめることができ、又は該融合物を、それぞれ別個のシストロンで発現させることもできる。ここでは1つのオペロンにまとめることが好ましい。まさに、両方の遺伝子構築物を、1つのオペロンにまとめることができ、又はそれぞれ別個のシストロンで、宿主細胞の染色体中に組み込むこともできる。ここでも1つのオペロンにまとめることが好ましい。
有利には、シグナル配列と、分泌されるべきタンパク質をコードする組み換え遺伝子とからなるDNA発現構築物は、E.コリ中で機能的な発現シグナル(プロモーター、転写開始部位、翻訳開始部位、リボソーム結合部位、ターミネーター)を備えている。
プロモーターとしては、当業者に公知のあらゆるプロモーター、例えば一方では誘導可能なプロモーター、例えばlacプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、λPLプロモーター、araプロモーター又はtetプロモーター又はそれらから誘導される配列が適している。他方では、構成的プロモーター、例えばGAPDHプロモーターを使用することによって持続的な発現を行うこともできる。しかしながら、通常は、産生されるべき組み換えタンパク質の遺伝子と結合されたプロモーターを使用することもできる。
産生されるべきタンパク質のためのこの発現構築物(プロモーター−シグナル配列−組み換え遺伝子)を、次いで、当業者に公知の方法を使用してlpp突然変異を有する細胞中に導入する。
それは、例えばベクター上で、例えばプラスミド上で、例えば公知の発現ベクターの誘導体、例えばpJF118EH、pKK223−3、pUC18、pBR322、pACYC184、pASK−IBA3又はpET上で行われる。プラスミドのための選択マーカーとしては、例えばアンピシリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、カナマイシン又は別の抗生物質に対する耐性をコードする遺伝子が適している。
従って本発明は、lpp遺伝子中もしくはlpp遺伝子のプロモーター領域中に突然変異を有するE.コリ菌株であって、70個より多くのアミノ酸からなる分泌されるべき真核生物のタンパク質をコードする組み換え遺伝子であってE.コリ中で活性なシグナルペプチドをコードする遺伝子と機能的に結合されている遺伝子を有することを特徴とするE.コリ菌株にも関する。
本発明によるE.コリ菌株においては、E.コリ中で活性のシグナルペプチドをコードするシグナル配列と機能的に結合された組み換え遺伝子は、有利には更にE.コリ中で機能的な発現シグナルを、有利にはプロモーター、転写開始部位、翻訳開始部位、リボソーム結合部位及びターミネーターを備えている。それは、有利には既に上述した発現シグナルである。
発現プラスミドで形質転換された細胞の培養(発酵)は、工業的規模で、通常の当業者に公知の発酵法に従ってバイオリアクター(発酵器)中で行われる。
発酵は、有利には、通常のバイオリアクター、例えば撹拌槽、気泡塔型発酵器又はエアリフト型発酵器中で行われる。特に撹拌槽型発酵器が好ましい。その際、工業的規模とは、臨床試験のためにもしくは医薬タンパク質を含有する医薬品の認可後に患者に使用するために十分な量で医薬タンパク質を製造するための発酵器のサイズである。従って有利には、5lより大きい容量を有する発酵器、特に有利には50lより大きい容量を有する発酵器である。
発酵に際して、タンパク質産生菌株の細胞を、液体培地中で16〜150時間の期間にわたり培養し、その際、種々のパラメータ、例えば栄養物質の供給、酸素分圧、pH値及び培養の温度が絶えず調節され、かつ厳密に制御される。培養の時間は、有利には24〜72時間である。
発酵培地としては、原則的に当業者に公知の、微生物の培養のためのあらゆる通常の培地が該当する。
その際、複合培地又は、規定の割合の複合成分、例えばペプトン、トリプトン、酵母エキス、蜜ろう又はコーンスティープリカーが添加された最少塩培地を用いることができる。その際、Ca2+イオンを、4mg/lより高い濃度で、有利には4mg/lより高く最大で5000mg/lまでの濃度で、特に有利には10mg/l〜5000mg/lの濃度で、殊に有利には40mg/l〜5000mg/lの濃度で含有する又はMg2+イオンを、48mg/lより高い濃度で、有利には48mg/lより高く最大で5000mg/lまでの濃度で含有する培地が好ましい。特に、Ca2+イオンとMg2+イオンとを上述の濃度で含有する培地が好ましい。
医薬タンパク質(医薬活性タンパク質)の製造のためには、化学的に定義された塩培地、従って完全培地に対して厳密に定義された基質組成を有する培地が好ましい。感受性の微生物は、係る培地中では増殖しない又はゆっくりと増殖することは知られている。従って、lpp突然変異を有し、並びにE.コリ中で機能的なシグナルペプチドをコードするシグナル配列と読み枠内で結合されている異種タンパク質をコードする遺伝子を有するE.コリ菌株を、Ca2+イオン及びMg2+イオンを含有する定義された塩培地中で増殖させることで、多量の異種タンパク質がその塩培地中に分泌されることは予想外であり驚くべきことであった。
前記方法において、lpp突然変異を有し、並びにE.コリ中で機能的なシグナルペプチドをコードするシグナル配列と読み枠内で結合されている異種タンパク質をコードする遺伝子を有するE.コリ菌株は、lpp突然変異を有さない菌株に匹敵する短い発酵時間で匹敵する高い細胞密度まで増殖し、その際に多量の異種タンパク質をその塩培地中に分泌する。その際、特に、Ca2+イオンを、4mg/lより高い濃度で、有利には4mg/lより高く5000mg/lまでの濃度で、特に有利には10mg/l〜5000mg/lの濃度で、殊に有利には40mg/l〜5000mg/lの濃度で含有する又はMg2+イオンを、48mg/lより高い濃度で、有利には48mg/lより高く最大で5000mg/lまでの濃度で含有する塩培地が好ましい。特に、Ca2+イオンとMg2+イオンとを上述の濃度で含有する塩培地が好ましい。
発酵のために最重要な炭素源としては、原則的に、細胞によって利用可能なあらゆる糖、糖アルコール又は有機酸もしくはそれらの塩を使用することができる。その際、グルコース、ラクトース又はグリセリンを使用することが好ましい。特に、グルコース及びラクトースが好ましい。また複数の種々異なる炭素源を組み合わせて供給することも可能である。その際、炭素源は、発酵の開始時に完全に発酵培地中に仕込むこともでき、又は開始時には炭素源を全く仕込まないかもしくは一部のみを仕込み、発酵の過程において炭素源を追加供給してもよい。その際、特に、炭素源の一部を仕込み、そして一部を供給する実施態様が好ましい。特に、炭素源を、10〜30g/lの濃度で仕込み、濃度が5g/l未満に落ち込んだら供給を開始し、そして濃度が5g/l未満に保持されるように構成することが好ましい。
培養中の酸素分圧(pO2)は、有利には10〜70%飽和である。有利には、pO2は、30〜60%飽和であり、特に有利にはpO2は、45〜55%飽和である。
培養のpH値は、有利にはpH6〜pH8である。有利には、pH値は、6.5〜7.5で調整され、特に有利には培養のpH値は、6.8〜7.2に保持される。
培養の温度は、有利には15〜45℃である。20〜40℃の温度範囲が好ましく、特に25〜35℃の温度範囲が好ましく、殊に30℃が好ましい。
上記の条件下で、lpp突然変異を有し、並びにE.コリ中で機能的なシグナルペプチドをコードするシグナル配列と読み枠内で結合されている異種タンパク質をコードする遺伝子を有するE.コリ菌株は、短い発酵時間で生産規模で、すなわち5lより大きい作業容量を有する発酵器において通常の細胞密度にまで増殖し、その際、多量の異種タンパク質をその発酵培地中に分泌する。
粗産物からの分泌されたタンパク質の精製は、通常の当業者に公知の精製法、例えば先行技術において知られた方法によって行うことができる。通常は、第一段階において、遠心分離又は濾過のような分離法によって、細胞と分泌された標的タンパク質とを分離する。標的タンパク質を、次いで、例えば限外濾過によって濃縮し、次に沈降、クロマトグラフィーもしくは限外濾過のような標準的方法によって更に精製することができる。特に、その場合に、既に正しく折り畳まれたタンパク質の本来のコンフォメーションを利用する親和性クロマトグラフィーのような方法が好ましい。
次の実施例は、本発明を更に説明するために用いられるものである。
使用される全ての分子生物学的方法、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、遺伝子合成、DNAの単離及び精製、制限酵素、クレノウ断片及びリガーゼによるDNAの改変、形質転換などは、当業者に公知のように、文献に記載されるように、又はその都度製造元に推奨されるようにして実施した。
実施例1:E.コリ野生株からの染色体lpp欠失突然変異体の作製
E.コリ野生株W3110(米国微生物系統保存機関(ATCC):27325)のlpp欠失突然変異体をλ−レコンビナーゼを用いて作製するために、DatsenkoとWannerの方法(2000年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.97:6640−5)に従って実施した。その際、まずポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、プライマーとしてオリゴヌクレオチドlpp1(配列番号4)とlpp2(配列番号5)を使用し、かつ鋳型としてプラスミドpKD3(大腸菌ストックセンター(CGSC):7631)を使用して、クロラムフェニコール耐性遺伝子を有し、かつlpp遺伝子の上流領域もしくは下流領域のそれぞれ50塩基対から隣接されている直鎖状DNA断片を作製した。菌株W3110を、まずプラスミドpKD46(CGSC:7739)で形質転換した。こうして得られたW3110 pKD46の、DatsenkoとWannerの指示に従って製造されたコンピテント細胞を、PCRにより作製された直鎖状のDNA断片で形質転換した。W3110の染色体中にlpp遺伝子の位置でクロラムフェニコール耐性カセットを組み込んだことに対する選択を、20mg/lのクロラムフェニコールを含有するLBアガープレート上で実施した。前記のようにして、lpp遺伝子がほぼ完全にクロラムフェニコール耐性遺伝子と交換された細胞が得られた。染色体中の正しい位置で組み込みが行われたことは、PCRによってオリゴヌクレオチドpykF(配列番号6)とynhG2(配列番号7)を使用し、かつ鋳型としてクロラムフェニコール耐性細胞の染色体DNAを使用して確認した。
その細胞から、プラスミドpKD46を記載された手順(DatsenkoとWanner)に従ってキュアリングし、前記のように作製された菌株を、W3110lpp::catと呼称した。菌株W3110lpp::catの染色体からのクロラムフェニコール耐性カセットの除去は、DatsenkoとWannerによる刊行物に従って、FLP−レコンビナーゼ遺伝子を有するプラスミドpCP20(CGSC:7629)を用いて実施した。最後に前記手順により得られたクロラムフェニコール感受性のW3110のlpp欠失突然変異体を、W3110Δlppと呼称した。
実施例2:E.コリ野生株からの染色体lpp1突然変異体の作製
菌株W3110の染色体中のlpp野生型遺伝子とlpp1アレルとの交換は、相同組み換えによって実施した。そのために、以下のように実施した:
遺伝子合成によって、lpp1アレルと、lpp野生型遺伝子の3′側にあるDNA領域の約200塩基対とを有するDNA分子(配列番号8)を製造した。更に、このDNA分子は、両末端に、それぞれ制限酵素BamHIのためのそれぞれ1つの切断部位を有する。そのlpp1アレルは、配列番号8の塩基8〜245を含む。lpp野生型遺伝子(配列番号1)との差異において、lpp1アレルは、lpp遺伝子の位置229に塩基置換(CからT)を有し、それは未処理のLppタンパク質において位置77のアルギニン残基のシステイン残基への交換をもたらす。遺伝子合成によって作製された配列番号8を有するDNA分子を、完全に制限酵素BamHIによって切断した。クローニングベクターpKO3(Link他著(1997年)、J.Bacteriol.179:6228−37;Harvard Medical School,Department of Genetics,200 Longwood Ave,Boston,MA 02115)を、まず同様に制限酵素BamHIによって切断した。前記のように直鎖化されたプラスミドを、後に該ベクターの再ライゲーションを回避するために、引き続きアルカリ性ホスファターゼで処理した。前記のようにして切断されたDNA分子を互いにライゲーションした。こうして作製されたプラスミドを、pKO3−lpp1と呼称した(図1)。菌株W3110を、CaCl2法によってプラスミドpKO3−lpp1で形質転換し、その際、アンピシリンを用いてプラスミド保有細胞について選択した。lpp野生型遺伝子とlpp1アレルとの引き続いての交換は、相同組み換えの機構を介して、Link他(1997)に記載される手順に従って行った。前記の交換が正確な塩基で染色体中の正しい位置で行われたことは、染色体のlpp領域を、PCRによってオリゴヌクレオチドpykF(配列番号6)とynhG2(配列番号7)を使用し、かつ誤認されたlpp1突然変異体の染色体DNAを鋳型として使用してまず増幅させ、そして引き続きそのPCR産物を同一のオリゴヌクレオチドと一緒に配列決定することによって調べた。
最後に前記のように作製されたW3110のlpp1突然変異体を、W3110lpp1と呼称した。
実施例3:E.コリ野生株からの染色体lpp3突然変異体の作製
lpp1突然変異体と同様にlpp遺伝子中に1つの点突然変異のみを有するW3110の染色体lpp3突然変異体を作製する際に、実施例2と同様に実施したが、配列番号8を有するDNA断片の代わりに、同様に遺伝子合成によって製造された配列番号9を有するDNA分子を使用したことが異なる。このDNA分子は、lpp3アレル(塩基211〜447)と、lpp野生型遺伝子の5′側にあるDNA領域の約200塩基対とを有する。更に、このDNA分子は、両末端に、それぞれ制限酵素BamHIのためのそれぞれ1つの切断部位を有する。lpp3アレルは、配列番号1との差異において、lpp遺伝子の位置41に塩基置換(GからA)を有し、これは、まだ処理されていないLppタンパク質において位置14のグリシン残基のアスパラギン酸残基への交換をもたらす。それぞれBamHIで切断されたプラスミドpKO3と、lpp3アレルを有するDNA分子のDNA断片のライゲーションによって作製されたプラスミドpKO3−lpp3(図2)を、前記のように菌株W3110中に形質転換した。Link他による手順によって、最後に菌株W3110lpp3が得られた。菌株の調査は、実施例2に記載されるように実施した。
実施例4:lpp突然変異体による10l規模でのシクロデキストリン−グリコシルトランスフェラーゼの発酵的製造
配列番号10を有し、クレブシエラ・ニューモニアエM5a1由来のシクロデキストリン−グリコシルトランスフェラーゼ(CGTアーゼ)遺伝子を有するDNA断片(Genbank番号M15264)を、遺伝子合成によって製造した。このDNA断片を、発現ベクターpJF118ut(図3)中にクローニングした。該ベクターは、DSMZ−ドイツ微生物細胞培養収集館(Braunschweig)で番号DSM18596として寄託されている。pJF118utは、公知の発現ベクターpKK223−3(Amersham Pharmacia Biotech)の誘導体であり、β−ラクタマーゼ遺伝子とテトラサイクリン耐性遺伝子の他に、さらに同様にプラスミド上に存在するLacIq遺伝子産物によって再始動されかつ例えばD−ラクトースもしくはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)のようなインデューサーによってスイッチオンすることができるtacプロモーターをも有する。プラスミドpJF118utを、制限酵素EcoRIで完全に切断し、かつそれぞれ直鎖状DNA断片の5′末端で突出した塩基を、S1ヌクレアーゼで分解した。前記のようにして予備調製されたベクターDNA分子を、CGTアーゼを含むDNA断片(配列番号10)とT4−リガーゼを使用してライゲーションした。菌株DH5αを、ライゲーションバッチでCaCl2法に従って形質転換し、その際、アンピシリン(100mg/l)によってプラスミド保有細胞について選択した。アンピシリン耐性形質転換体から、再びプラスミドを単離し、そして制限分析によって調査した。前記のようにして作製された、CGTアーゼ遺伝子の発現がtacプロモーターの制御下にあるプラスミドを、pCGTと呼称した(図4)。
シクロデキストリン−グリコシルトランスフェラーゼの10l規模での製造のために、菌株W3110Δlpp、W3110lpp1及びW3110lpp3を、それぞれプラスミドpCGTでCaCl2法によって形質転換した。プラスミド保有細胞についての選択は、アンピシリン(100mg/l)によって実施した。
製造は、10lの撹拌槽型発酵器中で実施した。
6lの発酵培地FM4(1.5g/lのKH2PO4;5g/lの(NH42SO4;0.5g/lのMgSO4×7H2O;0.15g/lのCaCl2×2H2O、0.075g/lのFeSO4×7H2O;1g/lのNa3クエン酸塩×2H2O;0.5g/lのNaCl;1ml/lの微量元素溶液(0.15g/lのNa2MoO4×2H2O;2.5g/lのNa3BO3;0.7g/lのCoCl2×6H2O;0.25g/lのCuSO4×5H2O;1.6g/lのMnCl2×4H2O;0.3g/lのZnSO4×7H2O);5mg/lのビタミンB1;3g/lのフィトン;1.5g/lの酵母エキス;10g/lのグルコース;100mg/lのアンピシリン)で満たされた発酵器に、1:10の比率で、一晩同じ培地中で培養された前培養を植えた。発酵の間に、30℃の温度に調整し、そしてpH値をNH4OHもしくはH3PO4を計量供給することによって7.0の値に一定に保った。グルコースは、発酵にわたって計量供給され、その際、発酵培地中の最大グルコース濃度を10g/l未満にすることに努めた。発現の誘導は、対数増殖期の終わりにイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を0.1mMで添加することによって実施した。
72時間の発酵後に、試料を取りだし、細胞を発酵培地の遠心分離によって分離し、発酵上清中のCGTアーゼ含有率を以下の活性試験によって測定した:
試験バッファー:5mMのトリス塩酸バッファー(>pH6.5)、5mMのCaSO4・2H2
基質:試験バッファー(pH6.5)中の10%のNoredux溶液
試験バッチ:1mlの基質溶液+1mlの遠心分離され、場合により希釈された培養上清(5分、12000rpm)+3mlのメタノール
反応温度:40℃
酵素試験:
・ 溶液を予熱する(約5分、40℃で)。
・ 酵素溶液を基質溶液に添加する;迅速に混合する(渦ミキサ(Whirl−Mixer))。
・ 40℃で3分間インキュベートする。
・ 酵素反応をメタノールの添加によって停止させる;迅速に混合する(渦ミキサ)。
・ バッチを氷上で冷却する(約5分間)。
・ 遠心分離(5分、12000rpm)をし、そして澄明な上清をピペットで取り出す。
・ 生じたCDをHPLCによって分析する。
酵素活性:A=G*V1*V2/(t*MG)(ユニット/ml)
A=活性
G=CDの含有率(mg/l)=試験バッチ:単位表面×104/標準溶液(10mg/ml)/単位表面
V1=試験バッチにおける希釈係数(前記のように実施した場合:V1=5)
V2=試験で使用する前の培養上清の希釈係数;非希釈の場合:V2=1
t=反応時間(分)
MG=分子量(g/モル)(CD=973g/モル)
1ユニット=1マイクロモルの産物/分
前記のように測定されたCGTアーゼ活性から、発酵上清中に存在するCGTアーゼの量を計算することができる。その際、150U/mlのCGTアーゼ活性は、約1g/lのCGTアーゼタンパク質に相当する。
第1表は、それぞれ達成されたシクロデキストリン−グリコシルトランスフェラーゼ収率を示している。
第1表:72時間の発酵後の発酵上清中でのシクロデキストリン−グリコシルトランスフェラーゼ収率
Figure 2008073047
実施例5:lpp突然変異体による10l規模でのインターフェロンα2bの発酵的製造
更なる医薬品として関心が持たれる、E.コリのlpp突然変異体によって細胞外で製造できるタンパク質は、インターフェロンα2bである。インターフェロンα2b遺伝子のための発現ベクターの作製において、以下のように実施した:
配列番号11を有し、EP0220714号に記載されるCGTアーゼ−シグナル配列(配列番号3)とインターフェロンα2bのための遺伝子とからなる遺伝子融合物を有するDNA断片を、遺伝子合成によって製造した。このDNA断片を、制限酵素EcoRI及びPstIで切断し、そして同じ制限酵素で切断されている発現ベクターpJF118utとライゲーションした。このクローニングから得られた、インターフェロンα2b遺伝子の発現がtacプロモーターの制御下にあるプラスミドを、pIFN(図5)と呼称した。
インターフェロンα2bの製造のために、菌株W3110Δlpp、W3110lpp1及びW3110lpp3を、まずそれぞれプラスミドpIFNでCaCl2法によって形質転換した。プラスミド保有細胞についての選択は、アンピシリン(100mg/l)によって実施した。
インターフェロンα2bの10l規模での製造は、実施例4に記載される方法と同様にして、菌株W3110Δlpp/pIFN、W3110lpp1/pIFN及びW3110lpp3/pIFNを用いて実施した。72時間の発酵後に、試料を取りだし、引き続き細胞を発酵培地の遠心分離によって分離し、発酵上清中のインターフェロンα2b含有率を測定した。このために、発酵上清中のタンパク質を電気泳動によりSDSポリアクリルアミドゲル中で分離させ、そしてイムノブロットにおける抗インターフェロン特異抗体による検出によって以下のように定量化した:
1μlの上清を、サンプルバッファーと混合した(2×Tris SDS−サンプルバッファー(Invitrogen カタログ番号LC2676):0.125Mのトリス塩酸(pH6.8)、4%(w/v)のSDS、20%(v/v)のグリセリン、0.005%(v/v)のブロモフェノールブルー、5%のβ−メルカプトエタノール)。更に、定義された量のインターフェロンα2bを、スタンダードとして一緒に施与した。タンパク質の変性を、100℃に5分間加熱し、氷上で2分間冷却し、そして遠心分離することによって実施した。それらのタンパク質を、電気泳動によって、12%のNuPAGE(登録商標)Bis−Tris−Gel(Invitrogen カタログ番号NP0341)中で、1×MES含有ランニングバッファー(Invitrogen カタログ番号NP0002)を用いて分離させた(電気泳動パラメータ:200Vで40分間)。イムノブロットによる検出と定量化を、以下の仕様に従って実施した:
湿式ブロッティング法での転写
モジュール:Amersham:Hoefer TE 22 Mini Tank Transfer Unit、コード番号:80−6204−26。
メンブレン:ニトロセルロースメンブレン(Schleicher&Schuell,BA85,硝酸セルロース(E),0.45μmの細孔サイズ)
Whatmanフィルタとニトロセルロースメンブレンを、適切な大きさに切断し、そして発泡物品(スポンジ)で転写バッファー(Invitrogen カタログ番号LC3675)に気泡なく染み込ませた。
積層の構成:黒い格子、カソードとの接続、各3mm厚を有する2つのスポンジ、Whatmanペーパー、SDSポリアクリルアミドゲル、NCメンブレン、Whatman、6mm厚を有する1つのスポンジ、白い格子、アノードとの接続
転写条件:I=200mAの一定の電流、U=無制限、運転時間60分
プレハイブリダイゼーション
25mlのプレハイブリダイゼーションバッファー中で該メンブレンをインキュベートする。
室温で30分間振り動かす。
一次抗体のハイブリダイゼーション
25mlのプレハイブリダイゼーションバッファー+0.15μg/ml(→3.75μg)の抗ヒトIFN抗体(Pepro Tech EC,Biozolを経由した カタログ番号:500−P32A)中で該メンブレンをインキュベートする。
室温で90分間又は一晩振り動かす。
洗浄
1×PBSと一緒に室温で10秒間振り動かし、バッファーを捨てる。
1×PBSと一緒に室温で15分間2回振り動かし、バッファーを捨てる。
二次抗体のハイブリダイゼーション
25mlのプレハイブリダイゼーションバッファー+25μl(1:1000)のヤギ抗ウサギIgGセイヨウワサビペルオキシダーゼコンジュゲート(HRP)(Southern Biotech、Biozolを経由した カタログ番号4050−05)中で該メンブレンをインキュベートする。
室温で60分間振り動かす。
洗浄
1×PBSと一緒に室温で10秒間振り動かし、バッファーを捨てる。
1×PBSと一緒に室温で15分間2回振り動かし、バッファーを捨てる。
化学発光による検出
Lumi−Lightウェスタンブロッティング基質(Roche,カタログ番号2015200)を準備する:Lumi−Lightルミノール/エンハンサー溶液とLumi−Light安定ペルオキシド溶液とを1:1の比率で混合する:NCメンブレン当たり3ml。
ブロットを室温でLumi−Lightウェスタンブロッティング基質と一緒に5分間インキュベートし、過剰の水気を切り、メンブレンをラップフィルムで覆って、直ちにX線フィルム(Kodak、X−OMAT)を載せ、2分間暴露し、現像し、そして固定する。シグナルが弱い場合に、暴露をより長時間にわたり繰り返す。
バッファー
プレハイブリダイゼーションバッファー:1×PBS中の5%脱脂粉乳
10×PBS:100mMのNaH2PO4、1.5MのNaCl、NaOHでpH7.5、0.5%のTriton100
1×PBS:10×PBSを完全脱塩水で1:10希釈したもの
定量化
定量的評価は、Biorad社製のGS−800 Calibrated Densitometerでイムノブロットをスキャンすることによって、Quantity One 1−D分析ソフト(Biorad)を用いて、施与されたスタンダードと比較することによって実施した。
第2表において、前記のように測定された発酵上清中のインターフェロンα2bの収率を示す。
第2表:72時間の発酵後の発酵上清中でのインターフェロンα2bの収率
Figure 2008073047
実施例6:lpp突然変異体による10l規模でのFab抗体フラグメントの発酵的製造
E.コリのlpp突然変異体を用いて、機能的なFab抗体フラグメントを細胞外で製造することもできる。その際、該細胞は、ドメインVLとCLとを含む軽鎖の相応のフラグメント及びドメインVHとCH1とを含む重鎖の相応のフラグメントを同時に合成し、次いでペリプラズム中に分泌し、最後には発酵培地中に分泌せねばならない。細胞質の外で、その際、両方の鎖の機能的なFabフラグメントへの会合が行われる。
本実施例は、良好に特徴付けられた抗リゾチーム抗体D1.3のFabフラグメントの製造を記載する。
抗リゾチームFabフラグメントの遺伝子のクローニングと発現のための出発ベクターとして、プラスミドpJF118utを使用した。このプラスミド中に、2つの連続した工程において、抗リゾチームFabフラグメントの重鎖(VH−CH1−ドメイン)もしくは軽鎖(VL−CL−ドメイン)についての両方の読み枠を、それぞれシグナル配列を含めてクローニングした。そのために以下のように実施した:
配列番号12を有するDNA断片(重鎖)を、遺伝子合成によって製造し、そして該DNA断片は、E.コリのompA遺伝子のシグナル配列と、Fabフラグメントの重鎖(VH−CH1)のための読み枠とからなる遺伝子融合物を含む。この読み枠直後に6個のヒスチジンコドンが引き続き、従って融合タンパク質のC末端を形成している。このヒスチジンタグによって、後に完全に会合されたFabフラグメントの簡単な精製が親和性クロマトグラフィーによって可能となる。このDNA断片を、制限酵素EcoRI及びPstIで切断し、そして同じ制限酵素で切断されている発現ベクターpJF118utとライゲーションした。このクローニングから得られた、重鎖のための遺伝子の発現がtacプロモーターの制御下にあるプラスミドを、pHC−Anti−Lysozym(図6)と呼称した。
配列番号13を有するDNA断片(軽鎖)を、同様に遺伝子合成によって製造し、そして該DNA断片は、CGTアーゼのシグナル配列(配列番号3)と、Fabフラグメントの軽鎖(VL−CL)のための読み枠とからなる遺伝子融合物を含む。このDNA断片を、まず、制限酵素PstIで切断し、引き続き同じ制限酵素で切断されているベクターpHC−Anti−Lysozymとライゲーションした。こうして得られたプラスミドを、pFab−Anti−Lysozym(図7)と呼称した。前記のようにして、重鎖と軽鎖についてのそれぞれの読み枠からなる、tacプロモーターの制御下にある人工オペロンを作製した。
従って、インデューサー(例えばIPTG)の添加によって、両方の遺伝子の同期発現が可能である。
抗リゾチームFabフラグメントの製造のために、菌株W3110Δlpp、W3110lpp1及びW3110lpp3を、それぞれプラスミドpFab−Anti−LysozymでCaCl2法によって形質転換した。プラスミド保有細胞についての選択は、アンピシリン(100mg/l)によって実施した。
抗リゾチームFabフラグメントの10l規模での製造は、実施例4に記載される方法と同様にして、菌株W3110Δlpp/pFab−Anti−Lysozym、W3110lpp1/pFab−Anti−Lysozym及びW3110lpp3/pFab−Anti−Lysozymを使用して実施した。72時間の発酵後に、試料を取りだし、引き続き細胞を発酵培地の遠心分離によって分離した。
発酵上清からの抗リゾチームFabフラグメントの精製は、Skerra(1994年、Gene 141,79−84)に記載される親和性クロマトグラフィーによって実施した。
精製された抗リゾチームFabフラグメントの定量化並びに活性の測定は、抗原としてリゾチームを用いたELISA試験(Skerra,1994年、Gene 141,79−84)によって実施した。
第3表において、それぞれ20mlの発酵上清から72時間の発酵後に単離することができた機能的な抗リゾチームFabフラグメントの収率を列記する。
第3表:72時間の発酵後の発酵上清中での抗リゾチームFabフラグメントの収率
Figure 2008073047
実施例7:lpp突然変異体による10l規模での全長抗体の発酵的製造
E.コリのlpp突然変異体を用いて、機能的な全長抗体を細胞外で製造することもできる。Fabフラグメントの製造と同様に、該細胞は、抗体の軽鎖と重鎖を同時に合成し、次いでペリプラズム中に分泌し、最後には発酵培地中に分泌せねばならない。次いで、細胞質の外で、両方の鎖の機能的な全長抗体への会合が行われる。
本実施例は、抗組織因子(αTF)IgG1−抗体の製造を記載している。
抗αTF抗体の遺伝子のクローニングと発現のための出発ベクターとして、プラスミドpJF118utを使用した。このプラスミド中に、2つの連続した工程において、抗αTF抗体の重鎖もしくは軽鎖についての両方の読み枠を、それぞれシグナル配列を含めてクローニングした。そのために以下のように実施した:
配列番号14を有するDNA断片(重鎖)を、遺伝子合成によって製造し、そして該DNA断片は、E.コリのompA遺伝子のシグナル配列と、抗αTF抗体の重鎖のための読み枠とからなる遺伝子融合物を含む。このDNA断片を、まず制限酵素EcoRI及びPstIで切断し、そして同じ制限酵素で切断されている発現ベクターpJF118utとライゲーションした。このクローニングから得られた、重鎖のための遺伝子の発現がtacプロモーターの制御下にあるプラスミドを、pHC−Anti−TF(図8)と呼称した。
配列番号15を有するDNA断片(軽鎖)を、同様に遺伝子合成によって製造し、そして該DNA断片は、CGTアーゼのシグナル配列(配列番号3)と、抗αTF抗体の軽鎖のための読み枠とからなる遺伝子融合物を含む。このDNA断片を、まず、制限酵素PstIで切断し、引き続き同じ制限酵素で切断されているベクターpHC−Anti−TFとライゲーションした。こうして得られたプラスミドを、pAK−Anti−TF(図9)と呼称した。前記のようにして、重鎖と軽鎖についてのそれぞれの読み枠からなる、tacプロモーターの制御下にある人工オペロンを作製した。従って、インデューサー(例えばIPTG)の添加によって、両方の遺伝子の同期発現が可能である。
抗αTF抗体の製造のために、菌株W3110Δlpp、W3110lpp1及びW3110lpp3を、それぞれプラスミドpAK−Anti−TFでCaCl2法によって形質転換させた。プラスミド保有細胞についての選択は、アンピシリン(100mg/l)によって実施した。
抗αTF抗体の10l規模での製造は、実施例4に記載される方法と同様にして、菌株W3110Δlpp/pAK−Anti−TF、W3110lpp1/pAK−Anti−TF及びW3110lpp3/pAK−Anti−TFを用いて実施した。72時間の発酵後に、試料を取りだし、引き続き細胞を発酵培地の遠心分離によって分離した。
発酵培地中に分泌された抗αTF抗体の定量化を、ELISA試験での活性測定によって、抗原(コーティング)として可溶性の組織因子を用い、かつ二次抗体としてペルオキシダーゼとコンジュゲートされたヤギ抗ヒトF(ab′)2−フラグメントを用いて、Simmons他(2002年、J.Immunol.Methods 263,133−47)に記載されるようにして実施した。
第4表において、前記のように測定された、機能的な抗αTF抗体の収率を列記する。
第4表:72時間の発酵後の発酵上清中での抗αTF抗体の収率
Figure 2008073047
図1は、実施例2からのベクターpKO3−lpp1を示している。 図2は、実施例3からのベクターpKO3−lpp3を示している。 図3は、実施例4からのクローニングベクターpJF118utを示している。 図4は、実施例4からのCGTアーゼ−発現プラスミドpCGTを示している。 図5は、実施例5からのインターフェロンα2b発現プラスミドpIFNを示している。 図6は、実施例6からのプラスミドpHC−Anti−Lysozymを示している。 図7は、実施例6からのFab発現プラスミドpFab−Anti−Lysozymを示している。 図8は、実施例7からのプラスミドpHC−Anti−TFを示している。 図9は、実施例7からの抗TF抗体発現プラスミドpAK−Anti−TFを示している。
符号の説明
tac p/o tac−プロモーター/オペレーター、 cmR クロラムフェニコール耐性、 lpp1 アミノ酸交換Arg77Cys(R77C)をもたらす塩基置換を有するlpp1アレル、 lpp3 アミノ酸交換Gly14Asp(G14D)をもたらす塩基置換を有するlpp3アレル、 M13Ori M13−複製起点、 sacB バシラス由来のレバンスクラーゼ遺伝子、 repA pSC101−複製起点、温度感受性、 rrnB ターミネーター、 bla β−ラクタマーゼ遺伝子(アンピシリン耐性)、 ColE1 ColE1−複製起点、 TcR テトラサイクリン耐性遺伝子、 lacIq tacプロモーターのリプレッサー、 cgt−SP CGTアーゼのシグナルペプチド、 CGTase CGTアーゼ遺伝子、 SD シャイン−ダルガノ配列、 IFNalpha2b インターフェロンα2b遺伝子、 ompA−SP ompA−シグナルペプチド、 (VH)−CH1 ドメインVH及びCH1とC末端Hisタグを有する重鎖のフラグメントのための読み枠、 (VL)−CL ドメインVL及びCLを有する軽鎖のフラグメントのための読み枠、 His−Tag Fabフラグメントの重鎖のC末端のHisタグ、 HC(Anti−TF) 抗TF抗体の重鎖の読み枠、 LC(Anti−TF) 抗TF抗体の軽鎖の読み枠

Claims (15)

  1. 異種タンパク質をE.コリ菌株によって発酵培地中で製造するにあたり、lpp遺伝子中もしくはlpp遺伝子のプロモーター領域中に突然変異を有し、かつ異種タンパク質をコードする遺伝子であってシグナルペプチドをコードするシグナル配列と機能的に結合されている遺伝子を有するE.コリ菌株を、工業的規模で発酵培地中で発酵させ、その際、該E.コリ菌株が、異種タンパク質を発酵培地中に分泌し、そして該タンパク質を発酵培地から分離する製造方法において、異種タンパク質が70個より多くのアミノ酸からなることを特徴とする方法。
  2. 請求項1記載の方法において、lpp遺伝子中の突然変異が、lpp遺伝子中もしくはlpp遺伝子のプロモーター領域中の1個以上のヌクレオチドの置換、欠失もしくは挿入であって、lpp遺伝子がもはや発現されないもしくは僅か少しだけ発現されることとなるもの、又はLppタンパク質の機能の低下を伴うLppタンパク質のアミノ酸配列の改変をもたらすものであることを特徴とする方法。
  3. 請求項1又は2記載の方法において、lpp遺伝子中の突然変異が、配列番号2の位置77のアルギニン残基のシステイン残基との交換をもたらすもの(lpp1突然変異体)であるか、又は配列番号2の位置14のグリシン残基のアスパラギン酸残基との交換をもたらすもの(lpp3突然変異体)であるか、又はlpp遺伝子自体におけるもしくはlpp遺伝子のプロモーター領域における少なくとも1個のヌクレオチドの欠失に基づき、細胞が、ペリプラズム性のタンパク質について高められた漏出性を有することとなるものであることを特徴とする方法。
  4. 請求項1から3までのいずれか1項記載の方法において、異種タンパク質が、真核生物のタンパク質であることを特徴とする方法。
  5. 請求項1から4までのいずれか1項記載の方法において、該タンパク質が、1つ以上のジスルフィド結合を有するか又は機能形において二量体もしくは多量体として存在することを特徴とする方法。
  6. 請求項4記載の方法において、真核生物のタンパク質が、抗体もしくは抗体フラグメント、サイトカイン、成長因子、プロテインキナーゼ又はタンパク質ホルモンであることを特徴とする方法。
  7. 請求項4から6までのいずれか1項記載の方法において、抗体フラグメントが、工業的規模で、1g/lより高い細胞外収率で製造されることを特徴とする方法。
  8. 請求項1から7までのいずれか1項記載の方法において、シグナルペプチドをコードする遺伝子が、E.コリのphoA遺伝子もしくはompA遺伝子のシグナル配列をコードする遺伝子又は配列番号3を有するシグナル配列をコードする遺伝子の群から選択されることを特徴とする方法。
  9. 請求項5から8までのいずれか1項記載の方法後に、複数の種々のサブユニットからなるタンパク質を分泌させる方法において、産生されるべきタンパク質のサブユニットの遺伝子の5′末端が、読み枠内で、タンパク質排出のためのシグナル配列の3′末端と結合されており、その際、タンパク質の異なるサブユニットの遺伝子が、異なるシグナル配列と結合されていることを特徴とする方法。
  10. 請求項1から9までのいずれか1項記載の方法において、発酵を、5lより高い容量を有する発酵器中で、特に有利には50lより高い容量を有する発酵器中で実施することを特徴とする方法。
  11. 請求項1から10までのいずれか1項記載の方法において、Ca2+イオンを、4mg/lより高い濃度で、有利には4mg/lより高く最大で5000mg/lまでの濃度で、特に有利には10mg/l〜5000mg/lの濃度で、殊に有利には40mg/l〜5000mg/lの濃度で含有する又はMg2+イオンを、48mg/lより高い濃度で、有利には48mg/lより高く最大で5000mg/lまでの濃度で含有する又はCa2+イオンとMg2+イオンとを前記の濃度で含有する発酵培地を使用することを特徴とする方法。
  12. 請求項1から11までのいずれか1項記載の方法において、発酵培地が、最少塩培地であることを特徴とする方法。
  13. 請求項1から12までのいずれか1項記載の方法において、発酵を、24〜72時間の時間にわたって実施することを特徴とする方法。
  14. lpp遺伝子中もしくはlpp遺伝子のプロモーター領域中に突然変異を有するE.コリ菌株であって、70個より多くのアミノ酸からなる分泌されるべき真核生物のタンパク質をコードする組み換え遺伝子であってE.コリ中で活性なシグナルペプチドをコードするシグナル配列と機能的に結合されている遺伝子を有することを特徴とするE.コリ菌株。
  15. 請求項14記載のE.コリ菌株であって、E.コリ中で活性のシグナルペプチドをコードするシグナル配列と機能的に結合された組み換え遺伝子が、E.コリ中で機能的な発現シグナルを、有利にはプロモーター、転写開始部位、翻訳開始部位、リボソーム結合部位及びターミネーターを備えていることを特徴とするE.コリ菌株。
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