JP2008071773A - GaN系半導体発光ダイオードの製造方法 - Google Patents

GaN系半導体発光ダイオードの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】通電によって急速に劣化することのないGaN系LEDを製造するための方法を提供することを目的とする。
【解決手段】MOVPE法によって単結晶基板上にGaN系半導体からなる複数の単結晶層を成長させて積層する工程を有し、該工程が下記(イ)〜(ニ)の工程を含む、GaN系半導体発光ダイオードの製造方法:(イ)n型GaN系半導体層13bを、表面にピットが形成されるように900℃以下の温度で成長させる工程;(ロ)n型GaN系半導体層13bの上に、活性層14を、表面にピットが形成されるように900℃以下の温度で成長させる工程;(ハ)活性層14の上に、その表面にピットが形成されるように900℃以下の温度で、GaN系半導体層15aを、アンドープで、または、その少なくとも一部にp型不純物を添加しながら、成長させる工程;(ニ)GaN系半導体層15aの表面に存在するピットを埋め込む工程。
【選択図】図1

Description

本発明は、MOVPE法(有機金属化合物気相成長法)によって単結晶基板上にGaN系半導体からなる複数の単結晶層を成長させて積層する工程を有する、GaN系半導体発光ダイオードの製造方法に関する。
GaN系半導体は、化学式AlInGa1−a−bN(0≦a≦1、0≦b≦1、0≦a+b≦1)で表される化合物半導体で、窒化ガリウム系化合物半導体、3族窒化物系化合物半導体、窒化物半導体などとも称される。GaN系半導体は、例えば、GaN、InGaN、AlGaN、AlInGaN、AlN、InNなど、任意の組成のものを含む。また、上記化学式において、3族元素の一部をB(ホウ素)、Tl(タリウム)などで置換したもの、また、N(窒素)の一部をP(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)、Bi(ビスマス)などで置換したものも、GaN系半導体に含まれる。
GaN系半導体を用いて、n型層とp型層とで活性層を挟んだpn接合型の発光素子構造を構成してなる発光ダイオード(LED)が公知である。本明細書では、このようなLEDをGaN系半導体発光ダイオード、GaN系LEDなどと呼ぶ。図4は、GaN系LEDの典型的な構造を示す断面図である。図4に示すGaN系LED100において、101は、サファイア等からなる単結晶基板であり、その上には、GaN系半導体材料からなるバッファ層102を介して、n型層103、活性層104、p型層105が順に積層されている。n型層103は、Si(ケイ素)、Ge(ゲルマニウム)等のn型不純物を添加したGaN、AlGaN等で形成される。活性層104は、InGaN等のInを含むGaN系半導体結晶からなる量子井戸層を備えた、量子井戸構造とされる。p型層105は、Mg(マグネシウム)、Zn(亜鉛)等のp型不純物を添加した、GaN、AlGaN等で形成される。106は負電極で、エッチングによって部分的に露出されたn型層103の表面に形成されている。p型GaN系半導体層105上には、透光性を有する正電極107が形成されている。正電極107の上面の一部にはボンディングパッド(図示せず)が形成される。
図4に示すGaN系LED101は、単結晶基板101上に、MOVPE法を用いて、バッファ層102からp型層105までの各層を順次成長させることによって、製造される。このとき、従来の製造方法では、バッファ層102の形成後、1000℃以上の成長温度(基板温度)でn型層103を成長させ、次に、基板温度を下げて、650℃〜850℃の成長温度でInGaN層を含む活性層104を成長させた後、再び基板温度を上げて、1000℃以上の成長温度で、p型層105を成長させていた。
特開2003−218396号公報
ダイサー、スクライバーなどを用いてウェハから切り出されるGaN系LEDチップは、通常、0.3mm〜0.4mm角というサイズに形成される。このようなサイズのLEDチップに対して、使用時には20mA〜40mAの順方向電流が流される。従来の製造方法により製造されたGaN系LEDにおいては、完成したばかりのチップに順方向電流を連続して流すと、数時間のうちにpn接合部の劣化が急速に進行し、逆方向電流(素子に逆方向電圧を印加したときに流れる電流)が、初期値(連続通電を行う前の値)から大きく増加するという問題があった。このような通電による急速劣化は、とりわけ、単結晶基板としてサファイア基板のような異種基板(GaN系半導体とは異なる材料からなる単結晶基板)を用いたGaN系LEDにおいて、顕著であった。
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであり、通電によって急速に劣化することのないGaN系LEDを製造するための方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、MOVPE法を用いてGaN系半導体層を成長させる際の条件、とりわけ、活性層と、活性層の上下に配置される単結晶層を成長させる際の条件が、得られるGaN系LEDに通電したときに生じる劣化と関係していることを見出し、本発明の製造方法を完成させるに至った。
本発明の製造方法は、次の特徴を有する。
(1)MOVPE法によって単結晶基板上にGaN系半導体からなる複数の単結晶層を成長させて積層する工程を有し、該工程が下記(イ)〜(ニ)の工程を含む、GaN系半導体発光ダイオードの製造方法。
(イ)n型GaN系半導体層を、表面にピットが形成されるように900℃以下の温度で成長させる工程
(ロ)前記(イ)の工程で成長させたn型GaN系半導体層の上に、GaN系半導体からなる活性層を、表面にピットが形成されるように900℃以下の温度で成長させる工程
(ハ)前記(ロ)の工程で成長させた活性層の上に、その表面にピットが形成されるように900℃以下の温度で、GaN系半導体層を、アンドープで、または、その少なくとも一部にp型不純物を添加しながら、成長させる工程
(ニ)前記(ハ)の工程で成長させたGaN系半導体層の表面に存在するピットを埋め込む工程
(2)前記(ニ)の工程では、3族原料を供給することなく、5族原料を供給しながらGaN系半導体層の温度を上昇させて、その表面に存在するピットを埋め込む、前記(1)に記載の製造方法。
(3)前記(ニ)の工程では、3族原料および5族原料を供給しながらGaN系半導体層の温度を上昇させて、その表面に存在するピットを埋め込む、前記(1)に記載の製造方法。
(4)前記(イ)の工程では、n型GaN系半導体層を、表面にピットが形成されるように900℃以下の温度で、50nm以上の厚さ成長させる、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)前記(イ)の工程では、n型GaN系半導体層をアンドープで成長させる、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)前記(イ)の工程では、n型GaN系半導体層を、その少なくとも一部にn型不純物を添加しながら成長させる、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(7)前記(イ)の工程では、n型GaN系半導体層の成長の途中で、n型不純物の添加量を増加または減少させる、前記(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)前記(イ)の工程では、n型GaN系半導体層の中に、n型不純物の濃度が相対的に低い部分と、n型不純物の濃度が相対的に高い部分とを、交互に形成する、前記(6)に記載の製造方法。
(9)前記活性層の発光波長が420nm以下であり、かつ、前記(イ)の工程で成長させるn型GaN系半導体層が、Inを含まないGaN系半導体結晶からなるn型GaN系半導体層である、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10)前記(ハ)の工程で成長させるGaN系半導体層がInGa1−xN(0≦x≦1)層を含む、前記(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法。
(11)前記活性層の発光波長が420nm以下であり、かつ、前記(ハ)の工程で成長させるGaN系半導体層が、GaN層とAlGaN層とを交互に積層した構造を有する、前記(10)に記載の製造方法。
本発明の製造方法によれば、通電により急速に劣化することのない、信頼性の高いGaN系LEDを得ることができる。
以下に、本発明の具体的な実施形態を、実施例を用いて説明する。なお、MOVPE法によるGaN系半導体結晶の成長技術は既によく知られており、使用する装置(成長炉、制御系、配管系)、原材料、キャリアガス、基本的な成長条件などの詳細については、公知の技術を適宜参照することができる。
(実施例)
実施例として、図1に示すGaN系LED10を作製し、逆方向電流の評価を行った。
まず、C面を主面とする直径2インチのサファイア基板11を準備し、これをMOVPE装置の成長炉内に設けられたサセプタに装着した。そして、水素ガスを成長炉内に供給しながら、このサファイア基板を1100℃以上に加熱して、基板表面の有機汚染を除去した。それから、基板温度を500℃に下げ、原料としてトリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)およびアンモニアを供給して、AlGaNからなる低温バッファ層12aを、約20nm成長させた。低温バッファ層12aの成長後、基板温度を1000℃に上げ、TMG、アンモニアを供給して、高温バッファ層であるアンドープGaN層12bを約2μm成長させた。なお、アンドープで成長させたGaN系半導体は、弱いn型となることが知られている。アンドープGaN層12bの成長後、成長温度を保ったまま、TMG、アンモニアに加えて更にシラン(SiH)を供給し、Si濃度約5×1018cm−3のn型GaNコンタクト層13aを約3μm成長させた。このようにして、n型GaNコンタクト層13aの成長までを完了させたウェハの断面図を、図2(a)に示す。
n型GaNコンタクト層13aの成長後、有機金属原料およびシランの供給を停止し、アンモニアを成長炉内に流しながら、基板温度を750℃に下げた。基板温度が安定したら、再び、TMG、アンモニアを供給して、アンドープの低温単結晶GaN層13bを200nm成長させた。750℃という、一般的に用いられている単結晶GaN層の成長温度よりも低い温度で成長させたことにより、この低温単結晶GaN層13bの表面には、開口部の形状が略正六角形で、その対角線方向の幅が0.1μm〜0.2μm程度のピットが形成された。このピットは、原子間力顕微鏡(AFM)などを用いて観察することができた。図2(b)に、低温単結晶GaN層13bの成長完了後のウェハの断面を模式的に示す。
低温単結晶GaN層13bの成長後、基板温度を750℃に保持したまま、原料としてTMG、トリメチルインジウム(TMI)、シラン、アンモニアを用いて、膜厚10nmのSiドープGaN障壁層と、膜厚3nmのアンドープInGaN井戸層(発光波長400nm)とを交互に積層した、多重量子井戸構造の活性層14を形成した。このときのキャリアガスの主成分は窒素ガスとした。なお、本発明の製造方法では、活性層14の最下層および最上層のそれぞれを、井戸層と障壁層のいずれとしてもよいが、本実施例では活性層14を6層の井戸層と7層の障壁層とから構成し、その最上層および最下層をいずれも障壁層とした。成長時の基板温度を750℃としたことにより、活性層14の表面には開口部形状が略正六角形のピットが形成された。図2(c)は、活性層14の成長完了後のウェハの断面図である。活性層14の表面におけるピットの密度が、低温単結晶GaN層13bの表面に観察されたピットの密度と略同じであったことと、活性層14の表面のピットの開口部の幅とから、活性層14の表面のピットの殆どは、図2(c)に模式的に示すように、低温単結晶GaN層13bの表面に形成されたピットが埋め込まれないで、活性層14に引き継がれたものであると考えられる。
活性層14の成長後、基板温度を750℃に保持したまま、TMG、TMA、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)およびアンモニアを原料として供給し、Mg濃度約8×1019cm−3のp型AlGaN/GaNクラッド層15aを50nm成長させた。この層を成長させる際には、TMGとCpMgとアンモニアとを連続的に供給しながら、TMAを断続的に供給して、膜厚がそれぞれ5nmであるAl0.1Ga0.9N層およびGaN層を交互に成長させた。成長時の基板温度を750℃という低い温度としたことにより、p型AlGaN/GaNクラッド層15aの表面には開口部形状が略六角形のピットが形成された。図3(d)は、p型AlGaN/GaNクラッド層15aの成長完了後のウェハの断面図である。p型AlGaN/GaNクラッド層15aの表面におけるピットの密度が、低温単結晶GaN層13bおよび活性層14の表面で観察されたピットの密度と略同じであったことと、p型AlGaN/GaNクラッド層15aの表面のピットの開口部の幅とから、p型AlGaN/GaNクラッド層15aの表面のピットの殆どは、図3(d)に模式的に示すように、低温単結晶GaN層13bの表面に形成されたピットが埋め込まれないで、活性層14を通して、p型AlGaN/GaNクラッド層15aに引き継がれたものであると考えられる。
p型AlGaN/GaNクラッド層15aの成長後、有機金属原料の供給を停止し、アンモニアおよび水素を供給しながら、基板温度を1025℃に上げた。このときの昇温速度を110℃/分とし、約2.5分かけて昇温を行うことにより、p型AlGaN/GaNクラッド層15aの表面のピットが埋め込まれ、その表面は平坦性の高い状態となった。3族原料を外部から供給しないにもかかわらず、ピットが埋め込まれたのは、昇温によりマストランスポート現象が生じたためと考えられる。図3(e)は、昇温後のウェハの断面を模式的に示したものである。この図では、p型AlGaN/GaNクラッド層15aを構成している物質のみが移動したかのように描いているが、昇温時には低温単結晶GaN層13bや活性層14を構成している物質の移動も生じた可能性がある。
基板温度を1025℃に上げた後、TMG、CpMgおよびアンモニアを原料として供給し、Mg濃度約1×1020cm−3のp型GaNコンタクト層15bを200nm成長させた。図3(f)は、p型GaNコンタクト層15bの成長完了後のウェハの断面図である。
p型GaNコンタクト層15bの成長後、成長炉内にアンモニアを流しながら基板温度を室温まで降下させ、ウェハをMOVPE装置から取り出した。そして、p型層に不純物として添加したMgを活性化させるために、公知のアニーリング処理を行った。その後、反応性イオンエッチング法を用いて、p型GaNコンタクト層15b、p型AlGaN/GaNクラッド層15a、活性層14、低温単結晶GaN層13bの一部を除去して、n型GaNコンタクト層13aを露出させ、その表面に、負電極16を形成した。負電極16は、スパッタリング法を用いてTiW合金層とAu層をこの順に形成して積層した積層膜とした。また、p型GaNコンタクト層15b上に、電子ビーム蒸着法を用いてITO(インジウム錫酸化物)からなる正電極17を形成した。正電極17上の一部には、スパッタリング法を用いてTiW合金層とAu層をこの順に形成して積層した積層膜からなるボンディングパッド(図示せず)を形成した。その後、スクライバーを用いた公知の方法により、ウェハから個々の素子を切り出してLEDチップとした。チップのサイズは0.35mm角とした。
上記のようにして得たLEDチップをステム上に実装し、逆方向に5Vの電圧を印加して、通電前の初期状態における逆方向電流を測定したところ、0.05μA未満であった。次に、このLEDチップに、順方向に100mAの電流を50時間連続して流した後、再び、逆方向に5Vの電圧を印加して逆方向電流を測定したところ、0.5μA未満であった。
(比較例)
n型GaNコンタクト層の成長後、低温単結晶GaN層を成長させないで、基板温度750℃で活性層を成長させるとともに、活性層の成長終了後、基板温度を750℃から1025℃に上げてからp型AlGaN/GaNクラッド層を成長させたことを除いて、上記実施例と同様にして、GaN系LEDチップを作製した。このLEDチップの通電前の初期状態における逆方向電流の値は実施例のLEDチップと同程度であったが、通電を行うと急速に劣化が生じ、順方向に100mAの電流を5時間(上記実施例の10分の1の通電時間)連続して流した後、逆方向に5Vの電圧を印加して逆方向電流を測定したところ、1μAを大きく超えていた。
(その他の実施形態)
本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
上記実施例では単結晶基板としてC面サファイア基板を用いているが、限定されるものではなく、本発明の製造方法には、窒化物半導体のエピタキシャル成長に適用可能な公知の単結晶基板を任意に使用することができる。本発明の効果が顕著に現れるのは、サファイア基板(C面、A面、R面)、SiC基板(6H、4H、3C)、Si基板、GaAs基板、GaP基板、スピネル基板、ZnO基板、NGO(NdGaO)基板、LGO(LiGaO)基板、LAO(LaAlO)基板、ZrB基板、TiB基板などの異種基板を用いた場合であるが、GaN基板、AlGaN基板、AlN基板などのGaN系半導体基板の使用が妨げられるものではない。GaN系半導体結晶のラテラル成長を発生させるために、単結晶基板の結晶成長面にはSiOなどからなるマスクパターンを形成してもよいし、また、単結晶基板の結晶成長面を凹凸状に加工してもよい。なお、GaN系半導体層の成長に用いる単結晶基板を、最終製品であるGaN系LEDの構造中に残すことは必須ではなく、GaN系半導体層の成長に用いた後、この基板をLED構造から除去することもできる。
単結晶基板と、発光素子構造を構成するコンタクト層、活性層などのGaN系半導体層との間には、上記実施例のように、格子不整を緩和するためのバッファ層を介在させることが好ましい。上記実施例では、GaN系半導体材料からなる低温バッファ層と高温バッファ層とを併用しているが、限定されるものではなく、従来公知の種々のバッファ層を任意に用いることができる。
本発明の製造方法における主要な特徴のひとつは、表面にピットが形成されるように900℃以下の温度で成長した、n型のGaN系半導体からなる単結晶層を、活性層を成長させる際の下地層とすることである。この下地層(以下、「低温下地層」ともいう。)は、上記実施例のように、良好な品質の結晶を作製し易いGaNで形成することが最も好ましいが、限定されるものではなく、InGaN、AlGaN、AlInGaNなどで形成してもよい。また、組成の異なるGaN系半導体結晶を積層した構造としてもよい。低温下地層は活性層に隣接することから、バンドギャップの小さい結晶で形成すると、活性層で発生する光を強く吸収し、それによってLEDの発光効率が低下する恐れがある。従って、特に、活性層で発生させる光の波長が紫色より短波長(420nm以下)である場合には、低温下地層をInを含まないGaN系半導体結晶で形成することが好ましい。
低温下地層は、表面にピットが形成されるように、900℃以下の温度で成長させる。低温下地層の特に好ましい成長温度は、650℃〜850℃である。
低温下地層の膜厚は、好ましくは50nm以上であり、より好ましく100nm以上であり、特に好ましくは200nm以上である。低温下地層の膜厚が50nmより小さいと、通電によるLEDの急速劣化を防止する効果が小さくなる。低温下地層の膜厚に特に上限はなく、例えば、n型コンタクト層(通常、1μm〜5μmの厚さに形成する)に、低温下地層を兼用させることもできる。n型コンタクト層とは別個に低温下地層を形成する場合には、低温下地層の膜厚を大きくし過ぎると、成長に要する時間が長くなることから、低温下地層の好ましい膜厚は1μm以下であり、より好ましい膜厚は0.5μm以下である。
低温下地層への、Si、Geなどのn型不純物の添加は任意に行うことができる。低温下地層の全体にn型不純物を添加する場合、添加量が多くなる程、通電による素子の急速劣化を防止する効果が小さくなる傾向があるので、低温下地層のn型不純物濃度は、1×1018cm−3以下とすることが好ましく、5×1017cm−3以下とすることがより好ましい。一方で、低温下地層を設けると、素子の静電破壊への耐性が低くなる傾向が生じるが、n型不純物を添加して低温下地層の抵抗を低くすると、恐らくは、素子内部の電界が均一化されることによって、この問題が改善される。通電による素子の急速劣化を防止する効果が低くなり過ぎず、かつ、素子の静電破壊への耐性も低くなり過ぎない実施形態として、低温下地層中に、n型不純物濃度が相対的に低い部分(アンドープで成長される部分であってもよい)と、n型不純物濃度が相対的に高い部分とを設ける実施形態が挙げられる。そのためには、低温下地層を、n型不純物の添加量を変化させながら成長させればよい。具体的には、低温下地層の成長途中で、n型不純物の添加量を増加(または減少)させて、低温下地層をn型不純物の濃度の異なるふたつの層を含む積層構造とする実施形態が挙げられる。あるいは、低温下地層中に、n型不純物の濃度が相対的に高い層と相対的に低い層とを交互に形成する実施形態が挙げられる。この実施形態において、n型不純物濃度を相対的に高くする部分には、n型不純物を5×1017cm−3以上の濃度、特に、1×1018cm−3以上の濃度に添加することが好ましく、他方、n型不純物濃度を相対的に低くする部分は、n型不純物濃度を5×1017cm−3以下、特に、1×1017cm−3以下とすることが好ましい。
上記実施例では、低温下地層をn型コンタクト層の直上に形成したが、必須ではなく、n型コンタクト層の全部または一部に低温下地層を兼用させてもよいし、n型コンタクト層の上に、キャリア閉じ込め機能を有するクラッド層を介して、低温下地層を形成してもよい。また、低温下地層に、キャリア閉じ込め機能を有するクラッド層を兼用させても構わない。
本発明の製造方法において、活性層の構造に特に限定はないが、好ましくは量子井戸構造とし、特に好ましくは、上記実施例のように、多重量子井戸構造とする。その場合、発光再結合が起こり易くするために、井戸層はInを含むGaN系半導体で形成することが好ましい。本発明の製造方法では、活性層を、その表面にピットが形成されるように、900℃以下の温度で成長させる。活性層の好ましい成長温度は、650℃〜850℃である。なお、必須ではないが、上記実施例のように、活性層の成長温度を低温下地層と同じとすれば、基板温度の調節に要する時間を削減できるという利点が得られる。
本発明の製造方法では、活性層の直上に、GaN系半導体からなる単結晶層を、表面にピットが形成されるように、900℃以下の温度で成長させる。この単結晶層(以下「低温上部層」ともいう。)は、上記実施例のように、p型不純物を添加して成長させてもよいし、アンドープで成長させてもよく、また、部分的にp型不純物を添加して成長させてもよい。低温上部層の好ましい成長温度は、650℃〜850℃である。必須ではないが、上記実施例のように、低温上部層の成長温度を活性層と同じとすれば、温度調節に要する時間を削減できるという利点が得られる。
低温上部層の表面のピットを埋め込むには、基板温度を好ましくは950℃以上、特に好ましくは1000℃以上の温度に昇温させる。その際、マストランスポート現象を発生させるには、低温上部層をGaNまたはInGaNを用いて構成することが好ましい。低温上部層に十分なキャリア閉じ込め機能を付与しつつ、マストランスポート現象を発生させるには、低温上部層を、GaN層またはInGaN層と、AlGaN層とを交互に積層した構造とすることが好ましい。低温上部層の表面のピットの埋め込みを、マストランスポート現象を利用して行うことは必須ではなく、3族原料と5族原料を供給して新たなGaN系半導体結晶を成長させることにより行ってもよい。低温上部層と比べて高い成長温度を用いることにより、新たに成長するGaN系半導体結晶は、低温上部層の表面のピットを埋め込んで成長する。特に、低温上部層をAlGaNのみで構成した場合には、マストランスポート現象が発生し難いので、その表面のピットを埋め込む工程では、3族原料および5族原料の供給を行うことが望ましい。低温上部層は活性層に隣接することから、バンドギャップの小さい結晶で形成すると、活性層で発生する光を強く吸収し、それによってLEDの発光効率が低下する恐れがある。従って、特に、活性層で発生させる光の波長が紫色より短波長(420nm以下)である場合には、低温上部層をInを含まないGaN系半導体結晶で形成することが好ましい。
低温上部層の膜厚は、例えば、5nm〜500nmとすることができる。上記実施例では、低温上部層がキャリア閉じ込め機能を有するp型クラッド層を兼用しているが、必須ではなく、例えば、低温上部層を形成し、昇温によってその表面のピットを埋め込んだ後、その上に、キャリア閉じ込め機能を有するクラッド層を形成してもよい。あるいは、低温上部層が、p型クラッド層の機能を有する層と、p型コンタクト層の機能を有する層とを含むように、構成することもできる。
低温上部層の成長後、基板温度を上昇させて、その表面のピットを埋め込む際の、昇温の仕方は任意であり、上記実施例のように一定の速度で昇温させてもよいし、昇温速度を途中で変化させてもよい。あるいは、ピットが埋め込まれるまで、一定温度で一定時間保持するようにしてもよいし、ピットが埋め込まれた後に、一定温度で一定時間保持するようにすることもできる。ピットを埋め込む工程では、低温上部層が分解して消失することのないよう、5族原料を供給し続けることが好ましい。マストランスポート現象を促進して、低温上部層の表面の平坦化が短時間で生じるようにするには、水素ガスを供給することも好ましい。
上記実施例では、p型AlGaN/GaNクラッド層の表面のピットを埋めるために基板温度を1025℃に上げた後、その基板温度のままでp型GaNコンタクト層を成長させているが、必須ではなく、p型GaNコンタクト層の成長は、基板温度を更に上げて行ってもよいし、あるいは、基板温度を再び下げてから行ってもよい。また、p型GaNコンタクト層の成長途中で基板温度を変化させてもよい。一例として、p型GaNコンタクト層の成長途中で、基板温度を800℃以下まで下げることによって、p型GaNコンタクト層の表面をテクスチャ化することができる。そのようにすると、p型GaNコンタクト層と正電極との接触面積を大きくできるため、LEDの順方向電圧を下げるうえで有利である他、正電極を透光性として、活性層で生じる光を該透光性の正電極の表面から素子外部に取出す構成としたときには、光取り出し効率が高くなるという利点も得られる。
本発明の製造方法により製造されるGaN系LEDにおいて、通電による急速劣化が抑制されるメカニズムの詳細は明らかではないが、従来のGaN系LED、とりわけ、異種基板上にGaN系半導体層を成長させたGaN系LEDにおいては、発光部を構成するGaN系半導体が強い歪みを受けており、通電により発光部で発熱が生じると、熱と歪みの作用によって欠陥の数が急激に増加し、これが逆方向電流の増加を引き起こしていた可能性がある。これに対して、本発明の製造方法により得られるGaN系LEDは、製造されたままの状態で発光部の歪みが緩和されたものとなっており、そのために、通電による劣化が生じ難い可能性が考えられる。
本発明の製造方法により製造されるGaN系半導体発光ダイオードの構造の一例を示す断面図である。 本発明の製造方法を説明するための図である。 本発明の製造方法を説明するための図である。 GaN系半導体発光ダイオードの典型的な構造を示す断面図である。
符号の説明
11 サファイア基板
12 バッファ層
13 n型層
13b n型GaNコンタクト層
14b 低温単結晶GaN層(低温下地層)
14 活性層
15 p型層
15a p型AlGaN/GaNコンタクト層(低温上部層)
15b p型GaNコンタクト層
16 負電極
17 正電極

Claims (11)

  1. MOVPE法によって単結晶基板上にGaN系半導体からなる複数の単結晶層を成長させて積層する工程を有し、該工程が下記(イ)〜(ニ)の工程を含む、GaN系半導体発光ダイオードの製造方法。
    (イ)n型GaN系半導体層を、表面にピットが形成されるように900℃以下の温度で成長させる工程
    (ロ)前記(イ)の工程で成長させたn型GaN系半導体層の上に、GaN系半導体からなる活性層を、表面にピットが形成されるように900℃以下の温度で成長させる工程
    (ハ)前記(ロ)の工程で成長させた活性層の上に、その表面にピットが形成されるように900℃以下の温度で、GaN系半導体層を、アンドープで、または、その少なくとも一部にp型不純物を添加しながら、成長させる工程
    (ニ)前記(ハ)の工程で成長させたGaN系半導体層の表面に存在するピットを埋め込む工程
  2. 前記(ニ)の工程では、3族原料を供給することなく、5族原料を供給しながらGaN系半導体層の温度を上昇させて、その表面に存在するピットを埋め込む、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記(ニ)の工程では、3族原料および5族原料を供給しながらGaN系半導体層の温度を上昇させて、その表面に存在するピットを埋め込む、請求項1に記載の製造方法。
  4. 前記(イ)の工程では、n型GaN系半導体層を、表面にピットが形成されるように900℃以下の温度で、50nm以上の厚さ成長させる、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記(イ)の工程では、n型GaN系半導体層をアンドープで成長させる、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記(イ)の工程では、n型GaN系半導体層を、その少なくとも一部にn型不純物を添加しながら成長させる、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  7. 前記(イ)の工程では、n型GaN系半導体層の成長の途中で、n型不純物の添加量を増加または減少させる、請求項6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 前記(イ)の工程では、n型GaN系半導体層の中に、n型不純物の濃度が相対的に低い部分と、n型不純物の濃度が相対的に高い部分とを、交互に形成する、請求項6に記載の製造方法。
  9. 前記活性層の発光波長が420nm以下であり、かつ、前記(イ)の工程で成長させるn型GaN系半導体層が、Inを含まないGaN系半導体結晶からなるn型GaN系半導体層である、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
  10. 前記(ハ)の工程で成長させるGaN系半導体層がInGa1−xN(0≦x≦1)層を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
  11. 前記活性層の発光波長が420nm以下であり、かつ、前記(ハ)の工程で成長させるGaN系半導体層が、GaN層とAlGaN層とを交互に積層した構造を有する、請求項10に記載の製造方法。

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