JP2008069924A - 自動車電装部品用転がり軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】経時的な封孔特性(機械的特性、電気的特性)などの物性の劣化を抑制することで、軸受の軌道面および転動体の表面に生じる電食の発生を防ぐ。
【解決手段】自動車電装部品の金属製固定部材または軸に嵌合する転がり軸受の嵌合面に封孔処理されたセラミック溶射被膜を有し、封孔処理するための封孔処理剤は、エポキシ基含有成分と硬化剤とを含み、重合性ビニル基含有溶剤を含まず、上記エポキシ基含有成分が、1分子中に含まれるエポキシ基の数が3個以上のポリグリシジルエーテル化合物を必須成分とし、1分子中に含まれるエポキシ基の数が2個のアルキレンジグリシジルエーテル化合物および環状脂肪族ジエポキシ化合物から選ばれた少なくとも1つを含む混合物であり、上記硬化剤を除くエポキシ基含有成分全体に対して、ポリグリシジルエーテル化合物が 10〜80 重量%配合された封孔処理剤である。
【選択図】図1

Description

本発明は自動車に搭載される電装補機類の駆動用ベルトやその他のベルトのテンショナ用、或いはアイドラプーリ等として使用されるプーリ、およびオルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、コンプレッサー、ファンカップリング装置、水ポンプなどの電装補機に用いられるエンジン電装補機および自動車電装部品用の自動車電装部品用転がり軸受に関する。
エンジン電装補機および自動車電装部品に使用される転がり軸受において、自動車電装部品の運転時に発生する静電気が引き起こす軸受転走面などの早期剥離を防ぐ目的で、軸受の外輪や内輪の少なくとも金属製固定部材または軸が嵌合される面に絶縁性の被膜を設け、軸受の内外輪間を転動体を介して流れる電流を遮断する試みが行なわれている(特許文献1)。
この特許文献1においては、転がり軸受とそれが圧入されるプーリ内径などの部位との間に絶縁体を介在させ、ベルトとプーリ間で発生する静電気の伝達を防いでいる。この方式は、絶縁体に樹脂材料を選択することで、スリーブ形状やシート形状、コーティングなど種々の絶縁被膜形状を選択することができる。しかし、何れの方法もプーリ部材への組付けが煩雑であったり、近年のエンジンの高出力化によるベルト張力の増加により、樹脂材料に負荷される荷重が増大しており、高い信頼性が得られないという問題があった。また、樹脂材料の特徴として長期間荷重が加わるとクリープ現象が発生し、嵌め合い部に隙間が生じ、水分や砂塵などの異物の混入を引き起こし、長期の信頼性低下の原因となる場合があった。
また、絶縁被膜が樹脂被膜の場合、金型内に被処理物をインサートし絶縁性の樹脂材料を射出成型する製造方法で絶縁層が形成される。しかしながら、金属と比べ熱伝導率が低い樹脂材料は、軸受運転時の発熱を金属製固定部材に逃がすために、熱伝導率の高いフィラーを高濃度に樹脂中に配合しなければならない。その結果樹脂材料の溶融粘度は増加し、射出成型時の金型内への充填性が劣るため、絶縁被膜層を薄く設計することが困難となり、結果的に転がり軸受の寸法精度が保てない問題があった。
さらに、絶縁被膜に用いられる樹脂材料は総じて金属と比較し、機械的物性や寸法安定性や、高温時の耐クリープ特性が大きく劣るため、これら特性を必要領域まで確保するために設計面での工夫を要し、転がり軸受製品の設計自由度を低下させる原因ともなっていた。さらに各転がり軸受品番ごとに専用の射出成型金型を準備する必要があり、製品の製造コスト面でも不利であった。
一方、絶縁被膜をセラミック系材料を用いた溶射被膜とした場合、樹脂被膜とは異なり、上記に示すような懸念事項は緩和され、運転条件が厳しい自動車電装補機などの電装部品用の軸受に好適な製品とすることができると考えられる。
しかしながら、セラミック系材料を用いた溶射被膜はその被膜形成の過程で生じる空隙や間隙、ボイド等の気孔を有している。気孔の中で、あるものは基材表面から基材素地に通じる連通孔の形態を示し、被膜表層が接している環境と、被膜が被覆されている基材とを連通している。この連通孔を通じて、溶射被膜外部に接触した気体や液体が基材素地まで浸透、拡散したりする現象がみられる。その結果、溶射材自身が腐食劣化したり、素地基材が炭素鋼などの場合は、被膜と基材の接触界面で、基材が選択的に腐食劣化して、溶射被膜の基材に対する接合性が損なわれ剥離したりする場合がある。また、転がり軸受と、この転がり軸受が嵌合される金属製固定部材との間の絶縁性を確保しようとすると、セラミックス溶射被膜は、上述の気体や液体の浸透拡散現象によって絶縁破壊され、所望の絶縁抵抗が発揮されなくなる場合もある。その結果、電装部品用のモータ等に使用される転がり軸受の転動体と軌道輪との間に電食現象が生じる懸念があった。
そこで、軸受の内外輪の両方もしくは何れか一方の他部材と接する部位に溶射被膜を形成し、その後何らかの封孔処理を施し、被膜の環境遮断性を高める封孔処理を行ない、軸受を絶縁させる手法が行なわれてきた。従来から広く知られる一般的な封孔処理方法として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂等の合成樹脂を有機溶剤に溶解させた封孔処理剤を溶射被膜に塗布する方法がある。しかし、この方法では、溶射被膜表面に塗布されるだけで細孔の底部までは浸透しない。したがって形状(寸法)精度を保つために、封孔処理後に溶射被膜表面を研削あるいは研磨などで除去した場合、溶射被膜に対する封孔処理効果はほとんど期待できないことがある。また、使用している過程で、機械の振動や温度上昇の繰り返しに伴う軸受位置の微小変位に起因して合成樹脂の塗膜が摩耗し、封孔処理の効果が持続しない場合も見られる。
一方、封孔処理を施すことで、金属基材と溶射被膜材との密着力を向上させようとする試みもしばしば行なわれる。一般的な溶射被膜は、被膜を製膜させたい表面とは化学的な結合を形成するのではなく、機械的な締結力(アンカー効果、投錨効果などという。)が主となって基材との密着力を構成する。特に鉄道車両用モータの転がり軸受など、金属基材からなる寸法精度の要求が厳しい機械部品表面に対し溶射を適用する場合、これら機械部品の表面は研摩で仕上げることが多く、表面粗さRaが1μm 未満になっていることが多い。よって、これら金属部品の表面に溶射を行なう場合、ショットブラストあるいはタンブラー処理などの公知の表面改質手法にて、表面粗さRaを1μm 以上程度まで増大させる処理を行なうことが多い。この手法により、ある程度溶射被膜と基材との間の接着力の向上は可能であるが、表面改質の程度次第では基材の寸法精度が悪化したり、表層部の焼き鈍りが起こることで基材材質の物性が低下するなどの弊害が起こりうる。結果的に、この手法による密着力の向上手法には限界がある。
そこで、物理的な密着力を補助するために化学的な接着力を併用するよう努力がなされてきたが、上記に示す一般的な封孔処理方法では、溶射被膜表面に塗布されるだけで細孔の底部の基材界面まで浸透しないため、溶射被膜の最外表面近傍のセラミックス粒子間の接着力のみを高めるだけに留まってしまい、金属基材と溶射被膜材との間で化学的な接着力を発揮させるには到らないという問題がある。
これらを改善する方法として、例えば、封孔処理剤に、可視光線により硬化する光硬化性樹脂を利用する方法(特許文献2)、電着塗料により、塗料粒子の電気泳動現象で溶射被膜の細孔中に析出・充填させようとする方法(特許文献3)、ガラス質物質を形成するB23を添加した溶射材を母材表面に溶射した後、溶射被膜を加熱してB23を溶融させ、溶射被膜中に発生している間隙に充填する方法(特許文献4)、溶射材料中にガラス質物質を形成するB23を添加して被膜を形成し、その後の加熱処理で溶融B23が気孔充填作用を行なうもの(特許文献4)などが知られている。しかし、これらの方法は、加圧または減圧工程に加え、いずれも特殊な装置や煩雑な工程を必要とするなど、工業的生産方法に適さないという問題がある。
特開2001−200915号公報 特開平5−106014号公報 特開平6−212391号公報 特開平10−259469号公報
本発明は、かかる問題に対処するためになされたものであり、気孔(間隙)に対する浸透性および充填性に優れ、溶射被膜材の間隙が実質的に全て充填されている状態まで封孔処理を施すことができ、経時的な封孔特性(機械的特性、電気的特性)などの物性の劣化を抑制することで、早期剥離の原因となる、軸受の軌道面および転動体間に流れる電流を防いだ、自動車電装部品に使用される自動車電装部品用転がり軸受の提供を目的とする。
本発明の自動車電装部品用転がり軸受は、自動車電装部品の金属製固定部材または軸に嵌合する転がり軸受の嵌合面に封孔処理されたセラミック溶射被膜を有する。封孔処理するための封孔処理剤は、エポキシ基含有成分と硬化剤とを含み、重合性ビニル基含有溶剤を含まず、上記エポキシ基含有成分が、1分子中に含まれるエポキシ基の数が3個以上のポリグリシジルエーテル化合物を必須成分とし、1分子中に含まれるエポキシ基の数が2個のアルキレンジグリシジルエーテル化合物および環状脂肪族ジエポキシ化合物から選ばれた少なくとも1つを含む混合物であり、上記硬化剤を除くエポキシ基含有成分全体に対して、ポリグリシジルエーテル化合物が 10〜80 重量%配合された封孔処理剤であることを特徴とする。
また、封孔処理するための封孔処理剤を構成するエポキシ基含有成分は、更に1分子中に含まれるエポキシ基の数が1個のモノグリシジルエーテル化合物を含むことを特徴とする。
本発明の自動車電装部品用転がり軸受は、セラミック溶射被膜を封孔処理するための封孔処理剤として、上記所定の封孔処理剤を用いるので、溶射被膜の気孔(間隙)を密に充填することができる。そのため、基材と溶射被膜間の密着力を向上させ、更に大気中の水分の侵入を防止し、酸化物セラミックス溶射被膜の固有の値を低減させることなく、絶縁抵抗値および耐電圧特性の低下を抑制できる。その結果、本発明の自動車電装部品用転がり軸受は、長期間にわたって電食の原因となる、電流の伝達を抑制でき、長期間高い電食防止効果を有する。
自動車の補機駆動ベルトのベルトテンショナーとして使用されるアイドラプーリの一例を図1に、用いられている転がり軸受を図2にそれぞれ示す。図1はアイドラプーリの構造の断面図であり、図2は電装部品用深溝玉軸受の断面図である。
このプーリは、鋼板プレス製のプーリ本体8と、プーリ本体8の内径に嵌合された深溝玉軸受1とで構成される。プーリ本体8は、内径円筒部8a、内径円筒部8aの一端から外径側に延びたフランジ部8b、フランジ部8bから軸方向に延びた外径円筒部8c、内径円筒部8aの他端から内径側に延びた鍔部8dからなる環体である。内径円筒部8aの内径には、玉軸受1の外輪3が嵌合され、外径円筒部8cの外径にはエンジンによって駆動されるベルトと接触するプーリ周面8eが設けられている。このプーリ周面8eをベルトに接触させることにより、プーリがアイドラとしての役割を果たす。
玉軸受1はプーリ本体8の内径円筒部8aの内径に嵌合された外輪3、図示されていない固定軸に嵌合される内輪2、内・外輪2、3の転送面2a、3a間に組み込まれた複数の転動体4、転動体4を円周等間隔に保持する保持器5、グリース6aを密封する一対のシール部材6で構成され、内輪2および外輪3はそれぞれ一体に形成されている。玉軸受1のプーリ本体8の内径に嵌合される面と、固定軸に嵌合される面にはそれぞれ封孔処理されたセラミック溶射被膜7が形成されている。
上記のように、外輪と金属製固定部材等とが接触する面、および、内輪と軸等とが接触する面の少なくとも一方に封孔処理されたセラミック溶射被膜7を形成することにより絶縁性能が担保され、電食を防ぐことができる。
外輪外周面等への封孔処理されたセラミック溶射被膜7の形成方法を説明する。被膜7の形成は、まず、外輪3の外周面に溶射法により溶射セラミックス被膜を形成する。
溶射セラミックス被膜は、鋼等の基材金属の表面に酸化物セラミックス、炭化物サーメット等の溶射材を公知の溶射方法で形成する。
溶射材として用いる酸化物セラミックスとしてはアルミナ、ジルコニア、チタニア等を、炭化物サーメットとしてはクロム炭化物、タングステン炭化物等を、それぞれ挙げることができる。
なお、溶射セラミック被膜の形成において、溶射被膜と基材金属の密着性を高めるために、ニッケルなどの金属粉末を最下層に溶射することができる。また、溶射セラミック被膜が受ける外部からの機械的衝撃を緩和する目的で、金属被膜を最表層に形成することができる。
溶射方法としては、例えばプラズマ溶射法、高速ガス炎溶射法等を用いることができる。溶射被膜の膜厚は、溶射材料の種類や得られる溶射被膜被覆部材の用途に応じて適宜設定することができるが、通常、炭素鋼を基材として、溶射材をアルミナとした場合、20〜2000μm 程度、好ましくは 50〜1000μm 程度である。
セラミック溶射被膜への封孔処理は、処理される溶射被膜を形成している粒子境界融着構造により封孔処理剤の浸透・充填性が左右される。このため、溶射被膜の粒子境界融着構造および封孔後の溶射被膜の要求特性に適した最適な封孔処理剤を選択するのが望ましい。
例えば、後述する本発明で使用される封孔処理剤は、形成された溶射被膜の気孔率が 10%以下である場合の封孔処理に用いることが好ましい。また、該封孔処理剤は、溶射材としてセラミック粉末や炭化物サーメット等を用いてプラズマ溶射、高速ガス炎溶射法によって形成した溶射被膜の気孔率 10 %以下である場合の封孔処理に用いることが好ましい。該封孔処理剤を用いてこれら溶射被膜に封孔処理を施した場合、非常に優れた絶縁特性などの封孔効果を発揮し、表層を、例えば 200μm 程度、研削除去しても封孔効果を確認することができる。
後述する封孔処理剤を用いることにより、溶射被膜の気孔(間隙)がエポキシ基を重合して得られる樹脂で実質的に全て充填されるので、間隙のない連続被膜表面を有する溶射被膜被覆部材を得ることができる。
ここで、溶射被膜の気孔(間隙)が「実質的に全て充填されている」とは、溶射被膜表面に塗膜形状で存在している封孔処理剤により形成された層(封孔処理剤に含まれる成分の硬化物などからなる)を含めた溶射被膜の最外層部分(例えば、表面から厚さ 0.2 mm程度)を研削・研磨して除去した後、JIS H 8666に基づく染色浸透試験において、着色が見られないことを意味する。
封孔処理は、溶射後の溶射被膜に対し速やかに施すことが好ましい。溶射被膜は、粒子径分布のある多数の粒子が粒子間表層のみで融着して形成された被膜である。必然的に粒子境界に間隙が生成するため、被膜形成の直後から粒子境界の間隙をぬって水分や異物が侵入するなど、環境条件の影響を受けることが多い。したがって封孔効率の低下を防ぐには溶射後、溶射被膜の封孔処理をできる限り早く施すことが望ましい。
封孔処理方法としては、溶射被膜への封孔処理剤の塗布、封孔処理剤への溶射被膜の浸漬等、公知の方法を用いることができる。その後、所定の硬化条件で硬化することにより封孔処理されたセラミック溶射被膜を得ることができる。
封孔処理方法は、封孔処理剤が溶射被膜底部まで浸透し充填性が向上することにより、粒子間境界の間隙が確実に埋められることで粒子間の個々の結合力や、基材との密着力が増大し、粒子間境界の間隙を全て埋めることができる。このため大気中における環境水分や異物の侵入が遮断され、酸化物セラミックス溶射被膜の固有の値を低減させることなく、絶縁抵抗値および絶縁破壊値の低下を抑制することができる。また得られた封孔処理済みの溶射被膜は表面を研削または研磨などした場合にも露出する間隙が存在しない。したがって、得られた溶射被膜被覆部材は、機械的強さや基材との密着強さが高められ、更に絶縁抵抗値および絶縁破壊値など電気特性が向上する溶射被膜を電装部品用転がり軸受の外輪外周面等形成するので、金属製固定部材等と軸受とが絶縁され、電食の発生を防ぐことができる。
後述する封孔処理剤を用いて封孔処理を施すと、溶射被膜の間隙が封孔処理剤で実質的に全て充填された後、溶射被膜表層を隠蔽する形で封孔処理剤による塗膜状の薄い層が形成される。この塗膜状の薄い層を有する被覆部材はそのまま使用することもできるが、被覆部材の寸法精度を保つためには、研削砥石、研磨紙、不織布バフなどを用いて溶射被膜の表面を研削・研磨してかかる層を除去することができる。
本発明の自動車電装部品用転がり軸受は、軸受構成部材表面にセラミック溶射膜を形成し、エポキシ基含有成分と硬化剤とを含み、重合性ビニル基含有溶剤を含まない封孔処理剤で封孔処理を施す。
上記エポキシ基含有成分は、1分子中に含まれるエポキシ基の数が3個以上のポリグリシジルエーテル化合物を必須成分とし、1分子中に含まれるエポキシ基の数が2個のアルキレンジグリシジルエーテル化合物および環状脂肪族ジエポキシ化合物から選ばれた少なくとも1つを含む混合物であり、上記エポキシ基含有成分は、硬化剤を除く、エポキシ基含有成分全体に対して、ポリグリシジルエーテル化合物の配合割合が 10〜80 重量%である。上記エポキシ基含有成分は、更に1分子中に含まれるエポキシ基の数が1個のモノグリシジルエーテル化合物を含むことができる。
本発明に用いる封孔処理剤は、エポキシ基含有成分と硬化剤とを含み、重合性ビニル基含有溶剤を含まない、溶射被膜の封孔処理剤であって、上記エポキシ基含有成分が所定のポリグリシジルエーテル化合物を主成分とする混合物であるので、封孔処理剤における溶剤の揮発による空隙の発生を効果的に抑制し、溶射被膜材の間隙が実質的に全て充填されている状態まで封孔処理を施すことができる。
複数のポリグリシジルエーテル化合物の混合物は、分子構造が類似するので相溶性に優れるため、相分離などが生じるおそれがないことから気孔内に容易に浸透することができる。このため溶射被膜材の封孔状態や経時的な封孔特性の劣化のおそれを回避でき、使用時における溶射被膜の剥離や亀裂発生などの破損を防止し、破損部位から侵入する通電物質の皮膜内への侵入を防ぐ。そして、軸受の内外輪間の電位差の発生を防ぐことで、軌道面および転動体表面への電食の発生を防ぐことで、結果的に電装部品用軸受の寿命を向上させることができる。
また、本発明に用いる封孔処理剤は、溶射被膜の気孔(間隙)に対する浸透性および充填性に優れるものであるため、封孔処理後に溶射被膜表層部分を研削あるいは研磨除去した場合でも封孔処理剤の浸透・充填層が十分存在し、その結果被膜の基材保護性を研摩後であっても大幅に向上させ、更に機械的性質、電気的性質などの物性も高いまま維持させることができる。
これは優れた浸透性および充填性により粒子境界に侵入した封孔処理剤が粒子境界を適切に充填し、優れた接着力により粒子境界と強固に接着し、かつ重合性ビニル基含有溶剤を含まないので、溶剤の揮発による空隙の発生を効果的に抑制することにより、溶射被膜材の間隙が実質的に全て充填されている状態まで封孔処理を施すことができたことによると考えられる。本発明はこのような知見に基づき完成されたものである。
本発明に用いる封孔処理剤は、1分子中に含まれるエポキシ基の数が3個以上のポリグリシジルエーテル化合物を必須成分とし、この必須成分に加えて、1分子中に含まれるエポキシ基の数が2個のアルキレンジグリシジルエーテル化合物および/または1分子中に含まれるエポキシ基の数が2個の環状脂肪族ジエポキシ化合物を含む混合物である。ポリグリシジルエーテル化合物および環状脂肪族ジエポキシ化合物はその分子内にオキシラン環が解裂して形成される繰り返し単位を含まない化合物である。本発明の混合物は硬化剤と反応して硬化物を形成する。
1分子中に含まれるエポキシ基の数が3個以上のポリグリシジルエーテル化合物としては、トリグリシジルエーテル化合物、テトラグリシジルエーテル化合物等が挙げられる。ポリグリシジルエーテル化合物の例としては、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルを挙げることができる。
これらの中で、封孔処理剤の粘度を下げる観点から、トリグリシジルエーテル化合物が好ましく、特にトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルが好ましい。
1分子中に含まれるエポキシ基の数が2個のアルキレンジグリシジルエーテル化合物としては、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルを挙げることができる。
1分子中に含まれるエポキシ基の数が2個の環状脂肪族ジエポキシ化合物は、脂環式化合物の環を形成する炭素原子において、隣接する2つの炭素原子がオキシラン環を形成している、いわゆる脂環式エポキシ化合物であって、オキシラン環を2つ含む脂環式ジエポキシ化合物、例えば、1,2,8,9−ジエポキシリモネンが挙げられる。封孔処理剤の粘度を低下させつつ処理物の物性の低下を効果的に防止する好ましい化合物である。また、水素添加ビスフェノールA、テトラヒドロフタル酸のジグリシジルエーテルなどの脂環式化合物のジグリシジルエーテルも使用することができる。
本発明で使用できる封孔処理剤は、取り扱い性の向上や、溶射被膜材への更なる浸透性向上の目的で、1分子中に含まれるエポキシ基の数が1個のモノグリシジルエーテル化合物を配合することができる。1分子中に含まれるエポキシ基の数が1個のモノグリシジルエーテル化合物としては、ブチルグリシジルエーテルなどのアルキルモノグリシジルエーテル、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル等、公知のモノグリシジルエーテル化合物を挙げることができる。
トリグリシジルエーテル化合物は、溶射被膜と金属基材との間の接着力を飛躍的に高める封孔処理剤成分として使用できる。同時に該化合物自体の粘度が低いために、後述するジグリシジルエーテル化合物等と混合することによって、キシレン、メチルエチルケトンなどの有機溶剤や、重合性ビニル基含有溶剤などの添加を必要とせず、封孔剤に対し、充分な浸透性を付与できる。
また、樹脂中に含む塩素イオン量を 0.5 重量%以下とすることで、湿潤雰囲気下における絶縁抵抗などの電気特性の低下や、基材の腐食性などが抑えられる。
トリグリシジルエーテル化合物の 25℃における粘度は 500 mPa・s 以下であることが好ましい。500 mPa・s をこえると浸透性に劣る。
封孔処理剤としての混合物全体に対して、トリグリシジルエーテル化合物の配合割合が 10〜80 重量%であることが好ましく、より好ましくは 20〜50 重量%である。10 重量%未満のときは、封孔液自体の粘度を低く設定できるため、硬化物の浸透性は高まるものの、一方ではトリグリシジルエーテル化合物の接着性向上効果が得られにくくなるため、基材との接着力は減少する。また、トリグリシジルエーテル化合物の配合割合が 80 重量%をこえるときは封孔処理剤の粘度が高くなるため浸透性に劣る。
1分子中に含まれるエポキシ基の数が2個のアルキレンジグリシジルエーテル化合物は、それ自体が低粘度のエポキシ化合物であるため、ポリグリシジルエーテルへの添加によって封孔剤の粘度を低下させることができるため好ましい。また、1,2,8,9−ジエポキシリモネンに示されるような環状脂肪族ジエポキシ化合物の添加も好ましい。これら化合物は、硬化反応時にエポキシ分子と共重合することで一体化するため、配合による硬化物の物性低下や、硬化時の体積減少を防ぐことができるため好ましい。
アルキレンジグリシジルエーテル化合物の 25℃における粘度は 30 mPa・s 以下であることが好ましい。30 mPa・s をこえると封孔剤の粘度が上昇するため浸透性が劣る。混合物全体に対して、アルキレンジグリシジルエーテル化合物の配合割合が 10〜80 重量%であることが好ましく、より好ましくは 50〜80 重量%である。10 重量%未満のときは封孔剤の粘度低減効果が小さくなり、封孔剤の浸透性を高めることができない。また、80 重量%をこえると、封孔剤の浸透性は高まるが、相対的に硬化時に高密度の架橋構造を形成する役割を持つトリグリシジルエーテル化合物の配合割合が、相対的に減少するため、硬化後のエポキシ樹脂の物性は低下する。
アルキレンジグリシジルエーテル化合物は、上記トリグリシジルエーテル化合物と所定量混合することで、トリグリシジルエーテル化合物単体の持つ基材密着力や、分子の架橋密度、樹脂硬度を大幅に低下させることなく、封孔処理剤の浸透度を確保することで溶射被膜用の封孔処理剤として充分な機能が発現させることができる。
1分子中に含まれるエポキシ基の数が1個のモノグリシジルエーテル化合物は単官能基を介して樹脂の一部と結合することができる。また、それ自身が低粘度のエポキシ化合物であるため封孔処理剤の粘度を低下させることができ、一方で、硬化後の樹脂内部の残留応力の低減や、硬化速度の調整効果を与えることができる。モノグリシジルエーテル化合物の配合量は、混合物全体に対して、0〜50 重量%とすることが好ましい。モノグリシジルエーテル化合物の添加量が 50 重量%をこえると、揮発量が増加したり、トリグリシジルエーテル化合物の量が相対的に減少し、硬化後樹脂の架橋密度が不足し、物性が大きく低下したり硬化物が形成しにくくなる。またポリグリシジルエーテル化合物の配合量も減少するため、溶射被膜と基材間の密着力が小さくなる。
上記グリシジルエーテル化合物の混合物に対して硬化剤が配合される。硬化剤としては、酸無水物類および脂肪族アミン化合物、脂環式アミン化合物、芳香族アミン化合物などのアミン化合物類、イミダゾール類などの公知のエポキシ樹脂用硬化剤を単体あるいは組合せて使用することができる。
酸無水物類としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物およびその誘導体等を挙げることができる。
アミン化合物類としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの鎖状脂肪族ポリアミン、N−アミノエチルピペラジン、イソホロンジアミンなどの環状脂肪族ポリアミン、キシリレンジアミンなどの脂肪芳香族アミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルアミンなどの芳香族アミンおよびその誘導体等を挙げることができる。
これらの中で 25℃における粘度が 50 mPa・s 以下の酸無水物硬化剤や、25℃における粘度が 10 mPa・s 以下の脂肪族アミン系硬化剤は、添加によって封孔処理剤系全体の粘度を顕著に低下できるため、好適な硬化剤となる。特に封孔処理剤のポットライフを長くすることができ、また硬化時の収縮率が小さく、電気特性に優れる酸無水物硬化剤が好ましい。酸無水物硬化剤の配合量は、エポキシ基1当量に対して 0.80〜0.95 当量とすることが好ましい。
本発明に使用できる封孔処理剤には、その他材料として界面活性剤を添加できる。特に効果のある界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤やシリコン系界面活性剤が挙げられ、特に公知のフッ素系界面活性剤の使用が好ましい。本発明において、公知のアニオン性、カチオン性、ノニオン性および両性の界面活性剤を使用できる。本発明の封孔処理剤に、フッ素系界面活性剤を配合する場合は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。また、シリコーンオイルなど界面活性効果や浸透効果を高める添加剤であれば、発明の特徴を妨げない範囲で使用できる。
アニオン性界面活性剤としては、スルホン酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル等を使用できる。カチオン性界面活性剤としては、第四級アンモニウム塩、アミノハロゲン塩等を使用できる。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンエステル型、ポリオキシエチレンエーテル型、ソルビタンエステル型等を使用できる。両性界面活性剤としては、イミダゾリン型、ベタイン型等を使用できる。
実施例1〜実施例5および比較例1〜比較例7
表1で用いた材料を以下に示す。
(1)グリシジルエーテル化合物または環状脂肪族ジエポキシ化合物
(1−1)トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル:ナガセケムテックス社製、デナコールEX−321L、粘度; 500 mPa・s (25℃)
(1−2)フェニレンジグリシジルエーテル:ナガセケムテックス社製、デナコールEX−201、粘度; 240 mPa・s (25℃)
(1−3)アルキレンジグリシジルエーテル:ジャパンエポキシレジン社製、YED216M、粘度; 15 mPa・s (25℃)
(1−4)アルキレンモノグリシジルエーテル:ジャパンエポキシレジン社製、YED111E、粘度; 7 mPa・s (25℃)
(1−5)環状脂肪族ジエポキシ化合物:ダイセル化学工業社製、セロキサイド3000、粘度; 10 mPa・s (25℃)
(2)エポキシ樹脂
(2−1)ビスフェノールF型エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン社製、エピコート806、粘度; 2000 mPa・s (25℃)
(3)硬化剤、硬化促進剤
(3−1)酸無水物系硬化剤:大日本インキ化学工業社製、エピクロンB−570、粘度; 40 mPa・s (25℃)
(3−2)イミダゾール系硬化促進剤:四国化成工業社製、OR−2E4MZ
(4)重合性ビニル基含有溶剤
(4−1)スチレンモノマー:和光純薬社製、試薬
表1に示す各成分を室温で充分に撹拌混合し、混合樹脂中の気泡を抜くため30分静置して封孔処理剤を得た。得られた封孔処理剤の評価を焼成後重量減少率試験により行なった。
<焼成後重量減少率試験>
得られた封孔処理剤を、140℃×2 時間の条件で充分に乾燥させ、異物付着のない(容量 3 ml )のガラス製容器に約 2 g 秤量し、焼成前秤量値とした。その後、ガラス容器の口を開放したまま、80℃×1 時間予備焼成し、その後 120℃×2 時間焼成を行ない、焼成後の重量を測定し焼成後秤量値とし、下記の式にしたがって封孔処理剤の重量減少率を計測した。測定結果を表1に示す。なお、測定結果に対する判定基準は、重量減少率が 1 %をこえると溶射被膜に残存する微小空隙内で硬化後に空隙部を生じたり、発生ガスによって硬化物中の残留気泡の発生が多くなったりする懸念があるため「不可」と判定され、1 %以下を「可」と判定できる。また、「未硬化」は上記焼成条件において固体状にならなかった場合である。

焼成後重量減少率(%)=100×(焼成前秤量値−焼成後秤量値)/焼成前秤量値
次に、φ20 mm×25 mm のSUJ2製試験片(以下「試験片基材」と記す)を準備し、その円筒端面に膜厚 400 μm のアルミナセラミック溶射被膜を大気プラズマ溶射法により形成した。
溶射面の表面に室温雰囲気下において、ポリアミド製ブラシを用いて表1に示す封孔処理剤を塗布し 30 分静置した。その後ポリエチレン製のヘラで表面付着分の過剰な封孔処理剤を掻き取った状態をもって、封孔処理剤の塗布済み試験片とした。その後、これら塗布済み試験片を 80℃×1 時間予備焼成し、その後 120℃×2 時間焼成を行ない、封孔処理剤を硬化させた。次に、セラミック平面と平行にダイヤモンド砥石を用いて研削除去を行なった。研削除去量は、下記に示す2水準を設定した。
(1)表層部の硬化樹脂層を重点的に除去する目的でセラミック部を約 10 μm 研削除去した。
(2)硬化試験片の表面から約 200 μm の深さまでの樹脂浸透層を除去する目的で、約 200 μm 研削除去した。
表面を研削除去して得られた硬化試験片を用いて以下に示す浸透性試験、密着力試験、絶縁抵抗試験、耐電圧特性試験により浸透性、密着力、絶縁抵抗値、耐電圧特性を測定した。
<浸透性試験>
硬化試験片の浸透性試験は、封封孔処理を施した硬化試験片基材9の被膜面10に対しJIS H 8666に基づくフェロキシル試験を適用して行なった。フェロキシル試験の概略を図3に示す。試験条件は、図3に示す試験液を浸漬させたろ紙11、スズ板12、ウエイト13の形状が試験片に合わせたもの(φ16 mm )となっている点を除き、試験液組成、試験面圧、放置時間等の条件はすべてJIS H 8666に準拠した。ろ紙11が着色することは、溶射被膜10に試験片基材9と外部空間とを連結する連通孔があるため、フェロキシル試験溶液が試験片基材9の鉄イオンに接触して青色に呈色したことを示す。判定基準は、元来白色であったろ紙11の表面に青色の斑点が 1 個以上見られたものを「斑点あり」とし、青色の斑点が 0 個であったものを「斑点無し」とし、浸透性測定結果を表1に併記する。
<密着力試験>
密着力試験の概略を図4に示す。焼成後の表層部分を 200μm 研削除去した硬化試験片基材9に対し、高粘度エポキシ系接着剤を介して引張治具14(接着部の形状:φ16 mm )をエポキシ接着面10aで接着し、引張圧縮試験機にて矢印方向に引っ張って単位面積あたりの溶射被膜10の密着力を測定した。測定結果を表1に併記する。判定基準は、密着力が 2 MPa 以上で「可」、2 MPa より下回ると「不可」と判定される。
<絶縁抵抗試験>
絶縁抵抗試験の概略を図5に示す。硬化試験片基材9を 80℃の温水に 1 時間浸漬後、配線17に取り付けた 1000 V DC絶縁抵抗計16を用いて、溶射被膜10表面と試験片基材9間の絶縁抵抗を測定した。15は電極である。測定結果を表1に併記する。判定基準は、2000 MΩ以上(表中に>2000 として表示)の抵抗率を示す場合は「可」、2000 MΩより下回る抵抗率の場合は「不可」と判定される。
<耐電圧特性試験>
耐電圧特性試験の概略を図6に示す。溶射被膜10と試験片基材9との間の配線17に取り付けた高電圧発生装置18によりDC 5 kV の電圧を印加してモニタ19により耐電圧特性を評価した。15は電極である。測定結果を表1に併記する。判定基準は、DC 5 kV を 5 分間印加させ、絶縁破壊を生じなかったら「可」、絶縁破壊を生じた場合「不可」とした。
次に、自動車電装部品用転がり軸受として使用できる深溝玉軸受6204(以下「軸受試験片20」と記す)の製作を行なった。
製作方法の詳細を下記に示す。
(1)6204軸受外輪試験片を準備し、石油ベンジンを用い防錆油などを異物を充分に除去する。
(2)外輪内周面にショットブラスト粉が入り込まないように、円盤状のマスキング治具を取付け、回転装置に軸受試験片を取付ける。
(3)軸受試験片を 10 rpm で回転させながら、円筒外周面および両側の端面にアルミナセラミック溶射被膜を大気プラズマ溶射法により、膜厚が 400 μm となるように形成した。なお、この時、軸受内部より乾燥空気を吹きつけ冷却を行なった。
(4)マスキング治具とワークとの間をダイヤモンド砥石で縁切りし、マスキング治具を分離する。
(5)軸受試験片の溶射面の表面に室温雰囲気下において、ポリアミド製ブラシを用いて表1に示す各封孔処理剤を塗布し 30 分静置した。その後ポリエチレン製のヘラで表面付着分の過剰な封孔処理剤を掻き取る。その後、これら試験片を 80℃×1 時間予備焼成し、その後 120℃×2 時間焼成を行ない、封孔処理剤を硬化させた。
(6)ダイヤモンド砥石を用いて軸受試験片の外形および幅面の研削除去を行なった。研削による溶射面の除去量は、約 200 μm とした。
軸受試験片の外径および幅面の表面を研削除去して得られた試験片を用い、以下に示す絶縁抵抗試験および耐電圧特性試験を行なった。
<軸受試験片による絶縁抵抗試験>
軸受試験片による絶縁抵抗試験の概略を図7に示す。軸受試験片20を 80℃の温水に 1 時間浸漬後乾燥布で拭取り、常温まで放冷後、締め代 20 μm となるような金属製固定部材22に圧入し、幅面固定蓋21をボルト止めして固定する。配線17に取り付けた 1000 V DC絶縁抵抗計16を用いて、軸受試験片20と金属製固定部材22間の絶縁抵抗を測定した。測定結果を表1に併記する。判定基準は、2000MΩ以上(表中に>2000 として表示)の抵抗率を示す場合は「可」、2000 MΩより下回る抵抗率の場合は「不可」と判定される。
<軸受試験片による耐電圧特性試験>
耐電圧特性試験の基本的な構成は、上記軸受試験片による絶縁抵抗試験と同様であるため図示を省略する。軸受試験片20を金属製固定部材22に取り付け、両部材間に取り付けた高電圧発生装置18によりDC 3 kV の電圧を印加してモニタにより耐電圧特性を評価した。測定結果を表1に併記する。判定基準は、DC 3 kV を1 分間印加させ、絶縁破壊を生じなかったら「可」、絶縁破壊を生じた場合「不可」とした。
Figure 2008069924
表1に示すように、各実施例の封孔処理剤は重量減少率が 1 %を下回る。比較例2、6、7は比較的揮発しやすい2官能エポキシ成分や単官能エポキシ成分量が多いため、浸透性は問題ないものの、硬化後の化合物に欠陥が生じ物性が低下したと考える。特に比較例2、6は高密度な架橋点を硬化物中に形成する役割を持つ、3官能エポキシ成分の含有量が少なかったため、加熱時の熱量および硬化反応時の反応熱によって2官能および単官能エポキシ成分の揮発が進行したものと考える。また、比較例1は、本硬化条件においては硬化物を形成しなかった。
研削除去量 200 μm 時において、各実施例の封孔処理を施した試験片の密着力は、比較例5と7を除く全ての比較例よりも高い。本発明の封孔処理剤の組成であれば、溶射被膜の気孔(間隙)を充填することにとどまらず、試験片基材界面まで浸透し、封孔処理剤の持つ固有の接着性も有効に発揮したと考えられる。
研削除去量 200 μm 時において、各実施例の絶縁抵抗値は 2000 MΩ以上となり、比較例3、4、5は 1 MΩ以下であった。各実施例は、被膜内への水分の侵入によると考えられる導通現象を、封孔処理により防止することによって、アルミナ本来の絶縁抵抗値の低下が抑制されたものと考えられる。比較例5は硬化物を形成することができたが、用いた2官能エポキシ化合物が高粘度の芳香族エポキシ化合物であったため基材界面部までの浸透は図れなかったと考える。また、比較例2、6は粘度が充分に低いため浸透性が確保され、被膜内への水分の侵入は防ぐことができたが、3官能グリジジルエーテル基の量が少ないため、充分な密着力が得られなかった。
また、各実施例の試験片は何れも 10 分間安定して絶縁性が維持されたが、全ての比較例の試験片は、電圧印加の直後に火花放電が生じ、絶縁破壊が生じた。
本発明の自動車電装部品用転がり軸受は、セラミック溶射被膜を封孔処理するための封孔処理剤として、所定の封孔処理剤を用いるので、長期間にわたって電食の原因となる、電流の伝達を抑制でき、長期間高い電食防止効果を有する。その結果、自動車電装部品の軸受等に好適に利用できる。
アイドラプーリの構造の断面図である。 電装部品用深溝玉軸受の断面図である。 フェロキシル試験の概略を示す図である。 密着力試験の概略を示す図である。 絶縁抵抗試験の概略を示す図である。 耐電圧特性試験の概略を示す図である。 軸受試験片による絶縁抵抗試験の概略を示す図である。
符号の説明
1 電装部品用深溝玉軸受
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 封孔処理されたセラミック溶射被膜
8 プーリ本体
9 試験片基材
10 封孔処理済み溶射被膜
11 フェロキシル試験溶液付きろ紙
12 スズ板
13 ウェイト
14 引張治具
15 電極
16 絶縁抵抗計
17 配線
18 高電圧発生装置
19 モニタ
20 軸受試験片
21 幅面固定蓋
22 金属製固定部材

Claims (2)

  1. 自動車電装部品の金属製固定部材または軸に嵌合する転がり軸受の嵌合面に封孔処理されたセラミック溶射被膜を有する自動車電装部品用転がり軸受であって、
    前記封孔処理するための封孔処理剤は、エポキシ基含有成分と硬化剤とを含み、重合性ビニル基含有溶剤を含まず、前記エポキシ基含有成分は、1分子中に含まれるエポキシ基の数が3個以上のポリグリシジルエーテル化合物を必須成分とし、1分子中に含まれるエポキシ基の数が2個のアルキレンジグリシジルエーテル化合物および環状脂肪族ジエポキシ化合物から選ばれた少なくとも1つを含む混合物であり、前記硬化剤を除く、前記エポキシ基含有成分全体に対して、ポリグリシジルエーテル化合物が 10〜80 重量%配合された封孔処理剤であることを特徴とする自動車電装部品用転がり軸受。
  2. 前記エポキシ基含有成分は、更に1分子中に含まれるエポキシ基の数が1個のモノグリシジルエーテル化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の自動車電装部品用転がり軸受。
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