JP2008069407A - ポリ乳酸成形品の製造方法 - Google Patents

ポリ乳酸成形品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熱的影響をポリ乳酸基材に与えることなく、しかも水分の影響による膜剥離の問題を生じることなく、密着性に優れ、しかもガスバリア性に優れ、水分透過性も低い蒸着膜が表面に形成されたポリ乳酸成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】脂肪族不飽和基を有し且つ分子中に酸素を有していない有機ケイ素化合物(例えばトリメチルビニルシラン)と、脂肪族不飽和炭化水素(例えばエチレン或いはアセチレン)との混合ガスを反応性ガスとして使用し、該反応性ガスをポリ乳酸基材上に供給してのプラズマCVDにより、ポリ乳酸基材上に蒸着膜を形成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、プラズマCVD法により蒸着膜が表面に形成されているポリ乳酸成形品の製造方法に関する。
従来、各種基材の特性を改善するために、その表面にプラズマCVD法による蒸着膜を形成することが行われており、包装材料の分野では、容器などのプラスチック基材に対して、プラズマCVD法により蒸着膜を形成させて、ガス遮断性を向上させることが公知である。例えば、有機ケイ素化合物と酸素との混合ガスを反応ガスとして用い、プラズマCVD法によりPETボトルなどのプラスチック容器の表面に、酸化ケイ素の蒸着膜を形成させることによってガスバリア性を高めることが行われている。
ところで、上記のような酸化ケイ素膜は、プラスチック基板に対する密着性に乏しいという欠点があるため、プラスチック基板の表面に密着層を形成した後にケイ素酸化物の蒸着膜を形成することが必要である。例えば、特許文献1には、ケイ素酸化物の蒸着膜を形成するに先立って、有機ケイ素化合物濃度の高い反応ガスを使用して或いは低出力条件を採用してプラズマCVDを行うことにより、炭素元素(C)成分に富んだ密着層をプラスチック基板の表面に形成することが提案されている。
また、ケイ素酸化物の蒸着膜は水分に対するバリア性が低いという欠点もある。このため、特許文献2には、非晶質のダイヤモンド状炭素膜(DLC膜)を形成した後にケイ素酸化物の膜を形成することが提案されている。
特開2005−97678号 特開2005−88452号
ところで、最近では、各種分野で生分解性プラスチックとして代表的なポリ乳酸が環境問題などの観点から注目されており、包装材料の分野でも、ポリ乳酸製の容器が実用に供されている。従って、ポリ乳酸成形品についても前述した蒸着膜を形成することにより、ガスバリア性等の特性を改善する試みが行われている。
しかしながら、ポリ乳酸は、ガラス転移点(Tg)が58℃、融点(Tm)が170℃であり、ポリエチレンテレフタレート(PET)と比較すると熱的特性が劣っている(PETのTgは70℃、Tmは170℃)。また、ポリ乳酸は、PETに比して水に対する親和性が高いという性質を有している。このため、酸化ケイ素膜やDLC膜をポリ乳酸成形品の表面に直接形成するのが困難となっているのが現状である。
即ち、酸化ケイ素膜は、バリア性を発現するためには、高出力(通常、マイクロ波で600W以上の出力で4sec以上の蒸着)条件で成膜する必要があるが、高出力条件での蒸着では、蒸着過程で発生する熱により、ポリ乳酸基材の熱変形や熱劣化が生じ、特にポリ乳酸容器に蒸着膜を形成した場合には、ボトル内に異臭が発生するなどの問題が発生してしまう。また、ポリ乳酸基材との密着性の問題もある。
この場合、特許文献1の技術を適用して、ポリ乳酸基材の表面に低出力で炭素に富んだ密着層を厚く形成し、この密着層により、酸化ケイ素膜(バリア層)の蒸着時に発生する熱を基材に影響させなくするため、密着層を厚くする手段も考えられるが、未だ原因は不明であるものの、バリア層が積層した形態であっても密着層を厚くすればするほどバリア性そのものが急激に低下するという問題があり、このような密着層を厚くすることで酸化ケイ素膜(バリア層)形成時の熱を断熱することは困難である。
一方、特許文献2に開示されているようなDLC膜などの炭化水素系膜は、低出力且つ短時間で成膜することができるため、蒸着に際してのポリ乳酸基材の熱変形、熱劣化等の問題を生じることはない。しかしながら、この場合には、ポリ乳酸の水に対する親和性によって生じる問題がある。即ち、構成原子から、O/C比を算出すると、ポリ乳酸のO/C比は0.7で、PETの0.4よりもより親水性を示す。このため、化学的に油性である炭化水素系蒸着膜は、熱的影響を与えることなく成膜することはできるが、水などの極性物質による膜剥離の問題を生じてしまう。例えば、内表面に炭化水素系蒸着膜を形成したポリ乳酸製容器に水などの極性内容物を充填し保存すると、蒸着膜が剥離して脱離してしまうこととなる。この場合、炭化水素系蒸着膜の上に酸化ケイ素膜を設けた2層構造としても、やはり、水などの極性内容物を充填し保存すると、ポリ乳酸基材表面と炭化水素系蒸着膜間で剥離が生じ、蒸着膜が脱離してしまう。
従って、本発明の目的は、熱的影響をポリ乳酸基材に与えることなく、しかも水分の影響による膜剥離の問題を生じることなく、密着性に優れ、しかもガスバリア性に優れ、水分透過性も低い蒸着膜が表面に形成されたポリ乳酸成形品の製造方法を提供することにある。
本発明によれば、脂肪族不飽和基を有し且つ分子中に酸素を有していない有機ケイ素化合物と脂肪族不飽和炭化水素または芳香族炭化水素との混合ガスを反応性ガスとして使用し、該反応性ガスをポリ乳酸基材上に供給してのプラズマCVDにより、ポリ乳酸基材上に蒸着膜を形成することを特徴とするポリ乳酸成形品の製造方法が提供される。
本発明においては、
(1)前記反応性ガスは、前記有機ケイ素化合物を40乃至80モル%の量で含有していること、
(2)前記有機ケイ素化合物として、トリメチルビニルシランを使用すること、
(3)前記脂肪族不飽和炭化水素として、エチレンまたはアセチレンを使用すること、
(4)プラズマCVDによる蒸着膜の形成を、出力300乃至500Wでのマイクロ波により行うこと、
が好適である。
本発明においては、反応性ガスをポリ乳酸基材上に供給してのプラズマCVDにより、ポリ乳酸基材表面に蒸着膜を形成するに際し、反応性ガスとして、脂肪族不飽和基を有し且つ分子中に酸素を有していない有機ケイ素化合物と、脂肪族不飽和炭化水素または芳香族炭化水素との混合ガスを用いるため、例えば酸化ケイ素膜を成膜する場合に比して、低出力で成膜が可能であり、成膜に際してポリ乳酸基材に与える熱的影響を有効に回避することができ、ポリ乳酸の熱変形、熱劣化を確実に防止することができる。
また、上記のような混合ガスを用いて得られる蒸着膜は、構成元素としてSi及びCの2種を含むものであるが、後述する実施例から明らかな通り、ポリ乳酸基材に対する密着性や水分及び酸素に対するバリア性に優れ、しかも、水分による膜剥離も有効に防止されており、さらにはSiの水中への溶出も有効に抑制されている。即ち、本発明により形成される蒸着膜は、酸化ケイ素膜と炭化水素系膜の両方の利点を併せ持ち、且つ両者の欠点が解消されている。本発明により、このような膜特性が発現する理由は明確に解明されていないが、おそらく、反応性ガスとして使用する有機ケイ素化合物及び炭化水素化合物の何れもがラジカル重合性の不飽和結合を分子中に含んでいるため、反応性ガス(混合ガス)中でこれら化合物の相溶化が分子レベルで向上しており、且つ、有機ケイ素化合物の反応による成分がアンカー材として機能し、このような成分中に水分に対するバリア性の高い炭化水素化合物の反応による成分が導入されているためではないかと考えられる。
また、本発明においては、反応性ガスとして、酸素の如き酸化性ガスを使用していないばかりか、有機化合物や炭化水素化合物中にも酸素元素は含まれていない。この結果、成膜時における酸化によるポリ乳酸基材の劣化も有効に回避することができる。
<ポリ乳酸基材>
本発明において、蒸着膜を形成するポリ乳酸基材の形態は、特に制限されず、フィルム乃至シートであってもよいし、またボトル、カップ、チューブ等の容器やその他の成形品の形であってよく、その用途に応じて、適宜の形態を有するものであってもよい。勿論、二軸延伸ブロー成形など、その成形手段なども制限されない。また、ポリ乳酸は、ポリ−L−乳酸或いはポリ−D−乳酸の何れであってもよく、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の溶融ブレンド物でもよく、また、これらの共重合体であってもよい。さらには、生分解性が損なわれない限り、グリコール酸などとの共重合体であってもよいし、ポリグリコール酸、酢酸セルロースなどがブレンドされていてもよい。
<反応性ガス>
本発明においては、反応性ガスとして有機ケイ素化合物と炭化水素化合物との混合ガスを用いてのプラズマCVDによって、上記のポリ乳酸基材の表面に蒸着膜を形成する。
有機ケイ素化合物としては、脂肪族不飽和基を有し且つ分子中に酸素原子を有していないものが使用される。即ち、有機ケイ素化合物であっても、分子中に脂肪族不飽和基を有していないものを用いた場合には、脂肪族不飽和炭化水素または芳香族炭化水素との分子レベルでの相溶性を確保できず、この結果、酸化ケイ素膜と炭化水素系膜の両方の利点を有している蒸着膜を得ることはできない。例えば、得られる蒸着膜は、ポリ乳酸基材との密着性が低く、水分による膜剥離も生じやすくなり、さらには、酸素に対するバリア性や水分に対するバリア性も低いものとなってしまう。また、分子中に酸素原子を有している有機ケイ素化合物(例えばシロキサンなど)を用いた場合には、該有機ケイ素化合物が酸素源となっての酸化反応が生じ、ポリ乳酸基材が酸化劣化してしまい、さらには悪臭の発生などを生じてしまう。これは、反応性ガスとして、酸素等の酸化性ガスを用いた場合も同様である。
本発明において、脂肪族不飽和基を有しかつ分子中に酸素原子を有していない有機ケイ素化合物としては、このような条件を満足するガス化が容易なものを使用することができ、例えば、下記式(1):
(R−Si(R4−n (1)
式中、Rは、ビニル基、アリル基などの脂肪族不飽和基を有する基であり、
は、アルキル基、アリール基、アラルキル基などの脂肪族若しくは芳香族の炭化水素基であり、
nは、1乃至4の整数である、
で表されるシラン化合物を使用することができる。このようなシラン化合物としては、ビニルトリメチルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどが挙げられるが、最も好適なものは、ガス化が容易であるという観点から、トリメチルビニルシランである。
また、上記のような有機ケイ素化合物と併用される炭化水素化合物は、分子中に不飽和基を有するものであり、不飽和脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素が使用される。例えば、メタン、エタンなどの不飽和基を有していない炭化水素を上記の有機ケイ素化合物と併用した場合には、上記有機得ケイ素化合物との分子レベルでの相溶性を確保できないため、蒸着膜の膜特性は不満足なものとなってしまう。
本発明において、不飽和脂肪族炭化水素としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のアルケン類、アセチレン、メチルアセチレンなどのアルキン類、ブタジエン、ペンタジエン等のアルカジエン類、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロアルケン類を挙げることができ、芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタレン、フェナントレンなどを例示することができる。本発明においては、膜特性などの観点から、不飽和脂肪族炭化水素が好適であり、特に、エチレン、アセチレンが最も好適である。
また、上記の有機ケイ素化合物と炭化水素との混合ガス(反応性ガス)中の有機ケイ素化合物濃度は、40乃至80モル%、特に45乃至75モル%の範囲にあるのがよい。有機ケイ素化合物濃度が、上記範囲外であるときには、おそらく両化合物の相溶性のバランスが低下する結果として、酸素に対するバリア性、水分に対するバリア性などの膜特性が低下し、さらにはクラックなどの発生により膜表面があれた状態となりやすく、特に有機ケイ素化合物濃度が上記範囲よりも低いときには、水分の存在下での膜剥離を生じやすくなり、且つ酸素に対するバリア性が低くなる傾向があり、特に有機ケイ素化合物濃度が上記範囲よりも高いときには、低出力で蒸着膜の形成が困難となり、ポリ乳酸基材の熱変形を生じやすくなってしまう。
尚、本発明では、上記の有機ケイ素化合物と炭化水素との混合ガスを反応性ガスとして使用するが、このような反応性ガスとともに、希釈剤として各種のキャリアガスを用いることもできる。このようなキャリアガスとしては、例えば、アルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを例示することができる。
<蒸着膜の形成>
上述した混合ガスを反応性ガスとして用いての蒸着は、プラズマCVDにより行われ、例えば、マイクロ波や高周波を利用してのグロー放電によるプラズマCVDにより、ポリ乳酸基材表面に蒸着膜が形成される。尚、高周波による場合には、膜を形成すべきポリ乳酸基材を一対の電極基板で挟持する必要があるため、立体容器形状のポリ乳酸基材に蒸着膜を形成するときには、マイクロ波によるプラズマCVDを実行することが好適である(即ち、一対の電極基板により容器壁を挟持するためには、装置構造が複雑になってしまう)。
このようなプラズマCVDは、例えば、所定の真空度に保持されたチャンバー内に成膜すべきポリ乳酸基材を配置し、該基材の成膜面側に所定の反応ガスを供給し、且つ所定の出力でマイクロ波を供給することにより、成膜することができる。高周波の場合には、ポリ乳酸基材を一対の電極の間に保持し、上記と同様、反応ガスを供給しながら所定の出力で高周波を印加することにより、成膜することとなる。
本発明において、マイクロ波或いは高周波を利用してのグロー放電により蒸着膜を形成する場合には、低出力で成膜を行うべきである。即ち、高出力で成膜を行うと、ポリ乳酸基材の熱変形を生じてしまうこととなるため、低出力で成膜を行うことにより、ポリ乳酸基材の熱変形を防止するのである。従って、マイクロ波によりプラズマCVDを行う場合には、その出力を300乃至500Wの範囲とするのがよく、高周波による場合は、その出力を300乃至600Wの範囲とするのがよい。
尚、前述した混合ガスを反応性ガスとして用いて行う場合には、上記のような低出力で成膜した場合にも、酸素に対するバリア性の高い蒸着膜を形成することができるのであり、これが、本発明の大きな利点である。例えば、酸素原子を分子中に有する有機ケイ素化合物と酸化性ガスとの混合ガスを反応性ガスとして用いて酸化ケイ素膜を形成する場合、上記のような低出力では、酸素バリア性の高い蒸着膜を形成することができず、必然的に高出力で成膜を行うことが必要となり、この結果、ポリ乳酸基材の熱変形を生じてしまうこととなる。
また、形成される蒸着膜の厚みは蒸着時間に比例し、従って、目的とする酸素等に対するガスバリア性や水分に対するバリア性などの諸特性を確保できる程度の厚みの蒸着膜が形成されるような時間、蒸着を行えばよい。例えば、出力によっても異なるが、通常、蒸着時間を2秒以上とすることにより、5nm以上の厚みの蒸着膜を形成することができ、ポリ乳酸基材の酸素バリア性や水分バリア性を有効に高め、水分中へのSiの溶出も抑制されている。
本発明においては、上記のようにしてポリ乳酸基材表面に、該基材の熱変形を生じることなく、蒸着膜を形成することができ、該蒸着膜は、構成元素としてSi及びCの2種を含み、さらにはHを含有しており、ポリ乳酸基材に対する密着性が良好であり、既に述べたように、酸素バリア性、水分バリア性に優れ、また水分存在下で膜剥離を生じることもなく、また水分中へのSiの溶出も有効に防止されている。また、このような蒸着膜を形成した場合には、さらに、蒸着を行い、それ自体公知の酸化ケイ素膜やDLC等の炭化水素膜を、本発明に従って形成された蒸着膜の上に形成することもできる。例えば、酸化ケイ素膜を形成する場合、分子中に酸素原子を含む有機ケイ素化合物や該有機ケイ素化合物と酸化性ガスとを反応性ガスを用いて高出力で蒸着を行った場合においても、本発明にしたがって形成された蒸着膜が熱遮断層をして機能するため、ポリ乳酸基材の熱変形を有効に回避し、酸素バリア性をさらに高めることができる。また、エチレンやアセチレン、或いはその他の炭化水素を用いてDLC等の炭化水素系蒸着膜を形成した場合には、水分存在下での膜剥離を生じることなく、水分に対するバリア性をさらに向上させ、また水分中へのSiの溶出を一層有効に防止することもできる。勿論、酸化ケイ素膜及び炭化水素系膜の両方を、任意の順序で、本発明にしたがって形成された蒸着膜の上に形成することも可能である。
上記のようにしてポリ乳酸基材の表面に蒸着膜を形成することにより製造されるポリ乳酸成形品は、ポリ乳酸基材の熱変形が抑制されているばかりか、酸素や水分に対するバリア性が良好であり、しかも水分存在下での膜剥離も防止され、Siの水分中への溶出も抑制されているため、特に、ボトルのような容器、特に水分含有の飲料等の液が充填される容器に、好適に適用される。この場合、蒸着膜は、最も好適には、容器の内面に形成されているのがよい。
本発明を次の例で説明するが、本発明はいかなる意味においても、次の例に制
限されるものではない。
尚、実施例及び比較例で作成された蒸着ボトルの各種特性の評価は、以下のようにして行った。
(水分バリア性)
蒸着膜を内面に被覆したポリ乳酸ボトルに、イオン交換水400mlを室温充填し、ゴム栓で密栓後、重量測定し、37℃25%RH環境下に7日保存後の全重量から一日当たりの水分透過量を求めた。
(酸素バリア性)
水分バリア性評価後のボトルからイオン交換水を排出後、室温で3日間、倒立静置保存した後、乾燥し、脱気グローボックスに挿入し、窒素置換した。窒素置換後、ゴム栓で密栓し、37℃、25%RH環境下に7日保存した。ガスタイトシリンジでボトル内空気を1ml採取し、酸素測定用ガスタイトクロマトグラフィーにて酸素濃度を測定した。
(蒸着膜の密着性)
蒸着膜を内面に被覆したポリ乳酸ボトルに室温で400mlイオン交換水を充填後 37℃、25%RH環境下に14日間ボトルを保存した後、ボトル外面からボトル内容液を目視検査し、ボトル内にせん光性を示す透明フレークが浮遊していた場合、蒸着膜が剥離したと判断した。
また、上記保存後のボトルから充填水を1ml採取し、原子吸光測定装置(Rigaku 蛍光X線分析装置(XRF))にて充填水に溶出したSi原子濃度を測定した。
(水保存後の膜状態の観察)
蒸着膜を内面に被覆したポリ乳酸ボトルに室温で400mlのイオン交換水を充填後、37℃、25%RH環境下に14日間保存し、ボトルから充填水を排出させた。水排出後のボトルにつき、ボトル内面に残る水滴の状態を外観観察し、あばた状に水滴が残った場合、不均一な水濡れ性ボトルとした。水滴が残らない濡れ性の良好なボトルを均一濡れ性ボトルとした。また、外観観察から蒸着膜表面があれている場合シルバーと表記した。(シルバーは蒸着膜のクラックやクレイズによる表面粗さに由来している。)
(ボトルの熱変形性)
蒸着膜形成後のボトルを目視で観察し、蒸着膜形成前のボトル形状の変形の有無を評価した。
<実施例1>
(蒸着試験システム)
周波数2.45GHz、最大出力1.2KWのマイクロ波電源、直径106mm、高さ500mmの金属型筒状プラズマ処理室、処理室を真空にする油回転式ポンプ、マイクロ波を発信器からプラズマ処理室に導入する矩形導波管を有する装置を用いた。
(蒸着前処理)
上記装置のプラズマ処理室内に、内容積が470mlのポリ乳酸ボトルをセット後、ボトル外部の真空度を4KPa、ボトル内部真空度を10PKaとした。ガス供給管は、外径15mm、長さ150mmの多孔構造を有する焼結性ステンレス供給管を用いた。
(密着層形成)
トリメチルビニルシラン(TMVS)を80sccm、エチレンガス(ET)を80sccm混合ガスを導入後、マイクロ波発信器より330Wの出力でマイクロ波を発信させ、ポリ乳酸ボトル内にプラズマを発生させ、蒸着時間4.0secのプラズマ処理を行い(熱量換算で1320J相当)、密着層となる蒸着膜をポリ乳酸ボトルの内面に形成し、蒸着膜形成後、ボトルを大気解放し、プラズマ蒸着処理機よりボトルを取り出した。
上記のようにして密着層となる蒸着膜が形成されたポリ乳酸ボトルの各種評価を前述した方法により行い、その結果を表1に示した。
<実施例2>
混合ガス組成を、トリメチルビニルシラン(TMVS)を10sccm、エチレンガス(ET)を10sccmに変更した以外は、実施例1と全く同様にして密着層となる蒸着膜を形成し、そのボトルの各種特性を評価した。結果を表1に示す。
<実施例3>
混合ガス組成を、トリメチルビニルシラン(TMVS)を3.0sccm、エチレンガス(ET)を3.0sccmとし、且つ蒸着時間を0.5secに変更してのプラズマ処理(熱量換算で165J相当)を行った以外は、実施例1と全く同様にして密着層となる蒸着膜を、ポリ乳酸ボトルの内面に形成した。
次いで、ヘキサメチレンジシロキサン(HMDSO)を3.0sccm、酸素ガスを30sccm混合ガスをボトル内部に導入し、マイクロ波発信器より、酸化ケイ素膜表面にクラックやクレイズを発生させない400W出力でマイクロ波を発信させポリ乳酸ボトル内にプラズマを発生させ、蒸着時間3.0secのプラズマ処理を行い(熱量換算で1200J相当)、バリア層となる第2層の蒸着膜を、密着層となる蒸着膜の上に形成した。
上記のようにして密着層となる蒸着膜とバリア層となる第2層の蒸着膜とが形成されたポリ乳酸ボトルの各種評価を前述した方法により行い、その結果を表1に示した。
<実施例4>
密着層(第1層)となる蒸着膜形成時のガス組成を、トリメチルビニルシラン(TMVS)を4.0sccm、エチレンガス(ET)を2.0sccmとした以外は実施例3と全く同様にして、密着層となる蒸着膜とバリア層となる第2層の蒸着膜とが形成されたポリ乳酸ボトルを作製し、各種評価を前述した方法により行い、その結果を表1に示した。
<実施例5>
密着層(第1層)となる蒸着膜形成時のガス組成を、トリメチルビニルシラン(TMVS)を3.0sccm、アセチレンガス(AC)を3.0sccmとした以外は実施例3と全く同様にして、密着層となる蒸着膜とバリア層となる第2層の蒸着膜とが形成されたポリ乳酸ボトルを作製し、各種評価を前述した方法により行い、その結果を表1に示した。
<実施例6>
密着層(第1層)となる蒸着膜形成時のガス組成を、トリメチルビニルシラン(TMVS)を3.0sccm、エチレンガス(AC)を3.0sccmに変更し、且つバリア層(第2層)となる蒸着膜形成時のガス組成をアセチレン80sccmとする以外は、実施例3と全く同様にして、密着層となる蒸着膜とバリア層となる第2層の蒸着膜とが形成されたポリ乳酸ボトルを作製し、各種評価を前述した方法により行い、その結果を表1に示した。
Figure 2008069407
<比較例1>
実施例1で用いた密着層となる蒸着膜形成前のポリ乳酸ボトルについて、各種評価を前述した方法により行い、その結果を表2に示した。
<比較例2>
密着層となる蒸着膜を形成せず、直ちに、アセチレンガス80sccmガス流量で、マイクロ波発信器の出力400Wマイクロ波を発信させ、蒸着時間3.0secのプラズマ処理(熱量換算で1200J相当)を行った以外は、実施例3と全く同様にして、バリア層となる蒸着膜を形成し、このボトルについて、各種評価を前述した方法により行い、その結果を表2に示した。
<比較例3>
密着層(第1層)となる蒸着膜形成時のガスとして、エチレンガス(ET)6.0sccmを用いた以外は、実施例3と全く同様にして、密着層となる蒸着膜とバリア層となる第2層の蒸着膜とが形成されたポリ乳酸ボトルを作製し、各種評価を前述した方法により行い、その結果を表2に示した。
<比較例4>
密着層(第1層)となる蒸着膜形成時のガス組成を、ヘキサジメチルシロキサン(HMDSO)を3.0sccmとエチレンガス(ET)を3.0sccmに変更した以外は、実施例3と全く同様にして、密着層となる蒸着膜とバリア層となる第2層の蒸着膜とが形成されたポリ乳酸ボトルを作製し、各種評価を前述した方法により行い、その結果を表2に示した。
<実施例7>
密着層(第1層)となる蒸着膜形成時のガス組成を、トリメチルビニルシラン(TMVS)を2.0sccm、エチレンガス(ET)を4.0sccmに変更した以外は、実施例3と全く同様にして、密着層となる蒸着膜とバリア層となる第2層の蒸着膜とが形成されたポリ乳酸ボトルを作製し、各種評価を前述した方法により行い、その結果を表2に示した。この実施例7では、水保存時における蒸着膜の剥離がやや生じ且つ膜表面の荒れが認められたが、酸素や水分に対するバリア性は、他の比較例で形成された膜と同等以上であり、特に酸素に対するバリア性はかなり高いレベルにあった。
<実施例8>
密着層(第1層)となる蒸着膜形成時のガス組成を、トリメチルビニルシラン(TMVS)を5.0sccm、エチレンガス(ET)を1.0sccmと変更した以外は、実施例3と全く同様にして、密着層となる蒸着膜とバリア層となる第2層の蒸着膜とが形成されたポリ乳酸ボトルを作製し、各種評価を前述した方法により行い、その結果を表2に示した。この実施例8では、膜表面の荒れが認められたが、水保存時における膜剥離は生ぜず、また、酸素や水分に対するバリア性も、他の比較例で形成された膜よりも高いレベルにあった。
<比較例5>
密着層(第1層)となる蒸着膜形成時のガス組成を、ヘキサジメチルシロキサン(HMDSO)を3.0sccm、アセチレンガス(AC)を3.0sccmに変更した以外は、実施例3と全く同様にして、密着層となる蒸着膜とバリア層となる第2層の蒸着膜とが形成されたポリ乳酸ボトルを作製し、各種評価を前述した方法により行い、その結果を表2に示した。
<比較例6>
密着層(第1層)となる蒸着膜形成時のガス組成を、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を6.0sccmとし且つマイクロ波出力510Wで0.5secのプラズマ処理(熱量換算で255J相当)に変更して密着層を形成し、次に、バリア層(第2層)となる蒸着膜形成時のガス組成を、ヘキサメチレンジシロキサン(HMDSO)を3.0sccm、酸素ガスを30sccmの混合ガスとし且つマイクロ波出力580Wで3.0secのプラズマ処理(熱量換算で1740J相当のプラズマ処理)に変更して、バリア層となる第2層の蒸着膜を形成した以外は、実施例3と全く同様にして、密着層となる蒸着膜とバリア層となる第2層の蒸着膜とが形成されたポリ乳酸ボトルを作製し、各種評価を前述した方法により行い、その結果を表2に示した。
尚、この例では、密着層となる蒸着膜形成時に、ポリ乳酸ボトルの変形が生じていた。
Figure 2008069407

Claims (5)

  1. 脂肪族不飽和基を有し且つ分子中に酸素を有していない有機ケイ素化合物と脂肪族不飽和炭化水素または芳香族炭化水素との混合ガスを反応性ガスとして使用し、該反応性ガスをポリ乳酸基材上に供給してのプラズマCVDにより、ポリ乳酸基材上に蒸着膜を形成することを特徴とするポリ乳酸成形品の製造方法。
  2. 前記反応性ガスは、前記有機ケイ素化合物を40乃至80モル%の量で含有している請求項1に記載のポリ乳酸成形品の製造方法。
  3. 前記有機ケイ素化合物として、トリメチルビニルシランを使用する請求項1または2に記載のポリ乳酸成形品の製造方法。
  4. 前記脂肪族不飽和炭化水素として、エチレンまたはアセチレンを使用する請求項1乃至3の何れかに記載のポリ乳酸成形品の製造方法。
  5. プラズマCVDによる蒸着膜の形成を、出力300乃至500Wでのマイクロ波により行う請求項1乃至4の何れかに記載の製造方法。
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