JP2008063291A - 薬効成分複合化微粒子水分散液およびその製造方法、並びに口腔用組成物 - Google Patents

薬効成分複合化微粒子水分散液およびその製造方法、並びに口腔用組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】口腔への適用に際し、口腔内細部への浸入性、口すすぎ後の滞留性、口腔内における水溶性薬効成分化合物の滞留性、製剤中での分散・安定性を確保することのできる薬効成分複合化微粒子水分散液および口腔用組成物を提供する。
【解決手段】アニオン性官能基を有する分子量30以上1000以下の水溶性薬効成分化合物を、水媒体中で、体積平均粒径1nm〜1μm以下の炭酸カルシウムの微粒子に、水溶性薬効成分化合物:炭酸カルシウム=1:9〜9:1の質量比で吸着させることにより薬効成分複合化微粒子水分散液を得る。また、この薬効成分複合化微粒子水分散液を含有させて口腔用組成物を得る。
【選択図】 図1

Description

本発明は、炭酸カルシウム微粒子に水溶性薬効成分化合物を担持させてなる薬効成分複合化微粒子が水に分散されてなる薬効成分複合化微粒子水分散液およびその製造方法、並びに該薬効成分複合化微粒子水分散液を有してなる口腔用組成物に関する。本発明は、さらに詳しくは、口腔内への滞留性、製剤中での安定性および水溶性薬効成分化合物の滞留性に優れ、分散安定性が良好な薬効成分複合化微粒子水分散液およびその製造方法と、該薬効成分複合化微粒子水分散液を含有することによりプラークへの浸透・滞留が良好であり、さらに水溶性薬効成分化合物の滞留によって、う蝕、歯周病、口臭などの口腔内トラブルを予防・改善することのできる口腔用組成物とに関する。
従来、薬効成分をカルシウム系化合物によって保持して口腔内に薬効成分を作用させる口腔用組成物が種々提案されている。
例えば、10〜50m2/gのBET比表面積を有し、一次粒子の体積平均粒径が1μm以下である微細炭酸カルシウムと、デキストラナーゼとを併用した口腔用組成物が、特許文献1に開示されている。
この口腔用組成物は、微細炭酸カルシウムとデキストラナーゼと他の成分とを単に混合することにより形成されているため、口腔用組成物中の微細炭酸カルシウム粒子が再凝集して粒径が粗大化しやすく、そのために表面積が低下して、薬効成分の炭酸カルシウムへの吸着効率が不充分となる場合がある。
また、水難溶性薬効成分と乳化剤および体積平均粒径1μm以下の炭酸カルシウムとを含有する、体積平均粒径が5μm以下の炭酸カルシウム被覆水難溶性薬効成分微粒子、およびこれを含有する口腔用組成物が、特許文献2に開示されている。
この技術では、薬効成分が油分などの水難溶性物質であり、この水難溶性物質を炭酸カルシウム微粒子で被覆して、水中に分散させている。したがって、薬効成分が水溶性である場合には、水溶性薬効成分が水相に溶出してしまうため、薬効成分微粒子自体を形成することができず、目的を達することができない。
また、ポリマーマトリックス中に平均粒子径50μm以下のハイドロキシアパタイトまたは炭酸カルシウムを担持した複合材料を有効成分とする止血用組成物が、特許文献3,4に開示されている。さらに、有機物と、0.5μm以下のアパタイト粉体とを複合してなるアパタイト・有機物複合体が特許文献5に開示され、カルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物と、粒径500nm以下の水難溶性カルシウム塩の微粒子とを含有する水分散液、化粧料およびカルシウム補強剤が、特許文献6〜9に開示されている。
上記特許文献3〜9に開示の技術では、有効成分は高分子化合物に限定されており、組成物の粘度が高くなり、口腔用途に使用した場合、プラーク内部など口腔内細部への浸透、滞留効率には限界がある。また、リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイトはプラークへの付着性が低く、薬効成分の口腔内滞留性が低いという課題が残る。
また、ハイドロキシアパタイト微粒子を固体成分とし、微粒子表面に抗炎症性物質あるいは抗アレルギー性物質を吸着してなる口腔清浄剤組成物が、特許文献10に開示されている。
この技術では、ハイドロキシアパタイトはプラークへの付着性が低く、薬効成分の口腔内滞留性が低いという課題が残る。
また、多孔質の炭酸カルシウムに薬効成分を含浸して用いることが、特許文献11に提案されている。しかし、薬効成分を炭酸カルシウムに含浸させているだけでは、水中や製剤中にて薬効成分が溶出しやすく、薬効成分の安定性に課題が残る。
また、炭酸カルシウムと薬効成分を含む歯磨きが、特許文献12に開示されている。
この技術では、炭酸カルシウム粒子は平均粒径が1μm以上の粒子が使用されており、また炭酸カルシウム粒子と薬効成分を配合しているだけで、薬効成分の炭酸カルシウムへの担持効率が不充分であるため、薬効成分のプラークへの浸透、滞留性および口腔内滞留性が不充分であるという課題が残る。
また、レチノイン酸を炭酸カルシウムで被覆したレチノイン酸ナノカプセルが、特許文献13に開示されている。
この技術では、炭酸カルシウムを反応によって生成させる必要があり、副生成物が生じ、例えば、口腔用組成物として使用する場合、他の配合成分の安定性に悪影響を及ぼす懸念がある。また、ナノカプセルが再凝集により粒径が粗大化してしまい、薬効成分のプラークへの浸透、滞留性および口腔内滞留性が不充分になるという懸念がある。また、反応によって形成させた炭酸カルシウムの膜厚が小さすぎるため、水中で炭酸カルシウムが溶解する懸念がある。よって、口腔用組成物として使用する場合、炭酸カルシウムによる薬効成分のプラークへの浸透、滞留性および口腔内滞留性が低下するという課題が残る。
特開平11−35438号公報 特開2006−43689号公報 特開2004−81739号公報 特開2004−26653号公報 特開平7−101708号公報 特開2001−31877号公報 特開2001−302431号公報 特開2001−299280号公報 特開平9−289877号公報 特開2000−53550号公報 特開平11−310522号公報 特開2002−47158号公報 特開2004−161739号公報
本発明は、前記従来の口腔用組成物における問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、水溶性薬効成分化合物を水溶媒中において安定して保持し、口腔内への滞留性が高く、かつ口腔内のプラークへの浸透性および水溶性薬効成分化合物の滞留性に優れた薬効成分複合化微粒子水分散液およびその製造方法、並びに該薬効成分複合化微粒子水分散液を含有してなる口腔用組成物を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明にかかる薬効成分複合化微粒子水分散液は、炭酸カルシウム微粒子に水溶性薬効成分化合物が担持されてなる薬効成分複合化微粒子が水中に分散されてなる薬効成分複合化微粒子水分散液であって、前記水溶性薬効成分化合物がアニオン性官能基を有するとともに分子量が30以上1000以下であり、前記薬効成分複合化微粒子の体積平均粒径が5nm〜1μmであり、前記薬効成分複合化微粒子における水溶性薬効成分化合物と炭酸カルシウムとの質量比(水溶性薬効成分化合物:炭酸カルシウム)が1:9〜9:1であることを特徴とする。
前記構成の薬効成分複合化微粒子水分散液において、前記炭酸カルシウムの体積平均粒径が1nm〜1μmであることが、好ましい。
前記構成の薬効成分複合化微粒子水分散液は、アニオン性官能基を有する分子量30以上1000以下の水溶性薬効成分化合物を水分中に溶解または分散させて薬効成分水溶液または水分散液を得る薬効成分化合物液調製工程と、炭酸カルシウムの微粒子凝集体を水に分散させた後、前記微粒子凝集体を粉砕することにより体積平均粒径1nm〜1μmの炭酸カルシウム微粒子が水中に分散されてなる炭酸カルシウム微粒子水分散液を得る炭酸カルシウム微粒子水分散液調製工程と、前記薬効成分水溶液または水分散液と前記炭酸カルシウム微粒子水分散液とを混合して薬効成分化合物:炭酸カルシウム=1:9〜9:1の比で前記炭酸カルシウムに前記水溶性薬効成分化合物が担持された薬効成分複合化微粒子を得る薬効成分複合化微粒子調製工程とを経て得られたものである。
本発明にかかる薬効成分複合化微粒子水分散液の製造方法は、アニオン性官能基を有する分子量30以上1000以下の水溶性薬効成分化合物を水分中に溶解または分散させて薬効成分水溶液または水分散液を得る薬効成分化合物液調製工程と、炭酸カルシウムの微粒子凝集体を水に分散させた後、前記微粒子凝集体を粉砕することにより体積平均粒径1nm〜1μmの炭酸カルシウム微粒子が水中に分散されてなる炭酸カルシウム微粒子水分散液を得る炭酸カルシウム微粒子水分散液調製工程と、前記薬効成分水溶液または水分散液と前記炭酸カルシウム微粒子水分散液とを混合して、水溶性薬効成分化合物:炭酸カルシウム=1:9〜9:1の比で前記炭酸カルシウムに前記水溶性薬効成分化合物が担持された薬効成分複合化微粒子を得る複合化微粒子調製工程と、を有することを特徴とする。
本発明の口腔用組成物は、前記薬効成分複合化微粒子水分散液を含有してなることを特徴とする。
本発明の口腔用組成物の特徴は、水溶性薬効成分化合物とその他の成分とを混合する前に、炭酸カルシウム微粒子と水溶性薬効成分化合物とを接触させ、炭酸カルシウム微粒子の表面に水溶性薬効成分化合物を被覆させて、薬効成分複合化微粒子を形成させることにある。この薬効成分複合化微粒子においては、水溶性薬効成分化合物は炭酸カルシウム微粒子に確実に担持されており、他方において、炭酸カルシウム微粒子は、水溶性薬効成分化合物によって被覆されており、各微粒子の表面活性が低下する。その結果、水溶性薬効成分化合物をその表面に担持した炭酸カルシウム微粒子は、水溶媒中において再凝集しにくくなっており、口腔内の滞留、口腔内のプラークへの浸透および滞留が良好となる。プラークへ浸透した薬効成分複合化微粒子はプラーク内にて高濃度の水溶性薬効成分化合物を滞留させる。
すなわち、本発明の薬効成分複合化微粒子水分散液および口腔用組成物によれば、口腔内のプラークへの水溶性薬効成分化合物の浸透性および滞留性を向上させることができる。また、本発明の薬効成分複合化微粒子水分散液および口腔用組成物は、口腔内のプラークへの水溶性薬効成分化合物の滞留性に優れる。さらに、本発明の口腔用組成物によれば、う蝕や歯周病に対して速やか且つ持続的に水溶性薬効成分化合物の効果を発揮させ、口腔内トラブルを効果的に予防または改善することができる。
以下に、本発明の実施形態について説明する。
本発明にかかる薬効成分複合化微粒子水分散液は、(B)炭酸カルシウム微粒子に(A)水溶性薬効成分化合物が担持されてなる薬効成分複合化微粒子が水中に分散されてなる構成を有する。
(A)水溶性薬効成分化合物
本発明において、炭酸カルシウム微粒子に担持させる水溶性薬効成分化合物は、アニオン性官能基を有し、分子量が30以上1000以下である。
(A1)アニオン性官能基
アニオン性官能基の配合効果は、炭酸カルシウム微粒子への水溶性薬効成分化合物の吸着性が向上する点にある。炭酸カルシウムのカルシウムと、アニオン性官能基との間に、キレート効果による吸引力が働くためと考えられる。また、この水溶性薬効成分化合物の炭酸カルシウム表面への担持によって、炭酸カルシウム微粒子の活性な表面が水溶性薬効成分化合物によって被覆されることになる。その結果、炭酸カルシウム微粒子同士が再凝集しにくくなるので、水溶媒中における炭酸カルシウム微粒子の分散安定性が向上する。
上記アニオン性官能基としては、具体的には、カルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基などを挙げることができ、これらの中では、カルボキシル基、スルホン酸基を好ましく用いることができる。
(A2)水溶性薬効成分化合物の分子量
本発明において、「分子量が30〜1000の水溶性薬効成分化合物」とは、分子量が30以上1000以下であり、かつ該水溶性薬効成分化合物10質量%を90質量%の水に添加した時、25℃において完全に溶解する化合物を意味する。
なお、該水溶性薬効成分化合物が分子量分布を有する化合物である場合には、前記規定の分子量は数平均分子量で表されるものとする。
かかる水溶性薬効成分化合物としては、殺菌剤、抗菌剤、フッ化物、アルカリ金属モノフルオロホスフェート、水溶性無機リン酸化合物、界面活性剤、抗炎症剤、ビタミン類、植物抽出物、抗生物質、過酸化物、メイラード反応抑制物質、香料などが挙げられる。
前記分子量が30〜1000の水溶性薬効成分化合物として、具体的には、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン[(ADAEG)、アルキルは、C1225およびC1429などであり、このADAEGは分子量分布を有する。本化合物の数平均分子量の測定方法については、後述する。市販品としては、商品名:レボンLAG−40(三洋化成(株)製)など]、N−アシルサルコシン塩[N−ラウロイルサルコシンナトリウム(分子量293.38)、N−ラウロイルサルコシンカリウム(分子量309.49)、N−ミリストイルサルコシンナトリウム(分子量321.43)など]、N−アシルグルタミン酸塩[N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウム(分子量385.54)など]、N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム(分子量371.52)、N−ラウロイル−N−メチルタウリンナトリウム(分子量343.46)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩[ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(分子量376.48)。市販品としては、商品名:NIKKOL SBL−2N−27(日光ケミカルズ(株)製)など]、グリチルリチン酸三ナトリウム(分子量888.88)、グリチルリチン酸ジカリウム(分子量899.91)、グリチルリチン酸二ナトリウム(分子量866.89)、グリチルリチン酸モノアンモニウム(分子量839.96)、α−グリチルリチン酸モノアンモニウム(分子量839.97)、トラネキサム酸(分子量157.21)、ε−アミノカプロン酸(分子量131.17)、アスコルビン酸(分子量176.13)、アズレンスルホン酸ナトリウム(分子量318.37)、ラウリル硫酸ナトリウム(分子量288.38)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(分子量348.5)、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム(分子量330.41)、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、酢酸ベタイン、イミダゾリニウムベタイン、シキミ酸(分子量203.1)、キナ酸(分子量192.17)、サリチル酸ナトリウム(分子量160.10)、レシチンなどが挙げられる。これらは単独で、又は二種以上を組み合わせて使用できる。
前記具体的な水溶性薬効成分化合物のうち、口腔領域で使用可能なものが好ましく、かかる口腔用途に好ましい化合物としては、具体的には、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン(ADAEG)、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムを挙げることができる。
前記好適な水溶性薬効成分化合物を用いることにより、う蝕、歯周病、口臭、歯面への色素沈着などの口腔内トラブルを予防又は改善を図ることができる。
本発明の水溶性薬効成分化合物は、前述のように、分子量は30以上1000以下であることが好ましいが、さらに好ましくは、100以上700以下である。
分子量が30未満となると、炭酸カルシウム微粒子への水溶性薬効成分化合物の吸着性が低下し、薬効成分複合化微粒子の分散安定性が低下することがあるので、好ましくない。一方、分子量が1000を超えると、薬効成分複合化微粒子の水分散液が増粘することになり、この増粘により、口腔用途に使用した場合、プラーク内部など口腔内細部への浸透、滞留効率が低下することがあるので、好ましくない。
(B)炭酸カルシウム微粒子
本発明に用いられる炭酸カルシウム微粒子は、前記水溶性薬効成分化合物を水媒体中において安定的に保持し、口腔の細部に滞留させ、口腔内のプラーク内に効率的に放出させる役目を果たす水溶性薬効成分化合物の担体であり、体積平均粒径が1nm〜1μmであることが好ましい。
本発明において水溶性薬効成分化合物の担体として用いられる炭酸カルシウム微粒子の体積平均粒径は、前述のように、好ましくは1nm〜1μmであるが、さらに好ましくは5nm〜500nmであり、特に好ましくは10nm〜300nmである。
体積平均粒径が1nm未満となると、水溶媒中の炭酸カルシウムの大部分が水に溶解してしまうことがあり、炭酸カルシウムによる水溶性薬効成分化合物担持効果が得られなくなる場合があり、好ましくない。他方、体積平均粒径が1μmを超えると、水溶媒中における薬効成分複合化微粒子の分散安定性が低下することがある。さらに、口腔用途に使用した場合、プラーク内部など口腔内細部への浸透、滞留効率が低下することがある。
(C)薬効成分複合化微粒子
本発明において、水溶性薬効成分化合物は、炭酸カルシウム微粒子によって担持されており、その結果、水媒体中に安定に分散する薬効成分複合化微粒子が形成されている。この薬効成分複合化微粒子における水溶性薬効成分化合物の担持量は、水溶性薬効成分化合物と炭酸カルシウムとの質量比で示すと、水溶性薬効成分化合物:炭酸カルシウム=1:9〜9:1であることが、好ましい。
本発明において、「薬効成分複合化微粒子」とは、炭酸カルシウム微粒子の表面に、分子量30以上1000以下の水溶性薬効成分化合物のアニオン性官能基が吸着し、水溶性薬効成分化合物が炭酸カルシウム微粒子の表面を覆って、水溶性薬効成分化合物と炭酸カルシウム微粒子とが複合化している状態の水溶性薬効成分化合物担体粒子を意味する。
本発明の薬効成分複合化微粒子における水溶性薬効成分化合物の担持量を水溶性薬効成分化合物:炭酸カルシウムの質量比で示すと、好ましくは1:9〜9:1であるが、さらに好ましくは1:7〜5:1であり、特に好ましくは1:5〜1:1である。
炭酸カルシウムに対する水溶性薬効成分化合物の担持量が、炭酸カルシウム9質量部に対して1質量部未満となると、炭酸カルシウム微粒子に吸着する水溶性薬効成分化合物の量が少なくなり、炭酸カルシウム微粒子の表面を水溶性薬効成分化合物によって十分に覆うことができなくなり、炭酸カルシウム微粒子同士の凝集を防止しにくくなる。その結果、炭酸カルシウム微粒子の分散安定性が低下することがあるので、好ましくない。一方、炭酸カルシウムに対する水溶性薬効成分化合物の担持量が、炭酸カルシウム1質量部に対して9質量部を超えると、炭酸カルシウム微粒子に吸着する水溶性薬効成分化合物の量が過剰になり、炭酸カルシウムによるプラークへの付着性が低下することがあるので、好ましくない。
なお、薬効成分複合化微粒子における上記質量比は、調製時に適用されるものであるが、本発明の調製法の特徴上、生成した薬効成分複合化微粒子においても同一質量比が実現される。厳密には、薬効成分複合化微粒子水分散液において、少量の炭酸カルシウム微粒子が水に溶解するが、溶解による変化量はごく僅かであるため、上記の好適質量比からは逸脱することはない。
このアニオン性官能基を有する分子量30以上1000以下の水溶性薬効成分化合物が、仕込み量に対して、体積平均粒径5nm〜1μmの薬効成分複合化微粒子に吸着している割合を、複合化効率として、数値化して示すと、好ましい複合化効率は、80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。この複合化効率は、80%未満となると、水溶性薬効成分化合物のプラークへの付着性が不充分となり、水溶性薬効成分化合物の口腔内滞留性が低下するので、好ましくない。
(D)薬効成分複合化微粒子水分散液
本発明の薬効成分複合化微粒子水分散液は、炭酸カルシウム微粒子の表面に水溶性薬効成分化合物が被覆する形で担持されてなる薬効成分複合化微粒子が、水に分散されてなる薬液である。前述のように、薬効成分複合化微粒子においては、炭酸カルシウム微粒子は、水溶性薬効成分化合物により被覆されているので、微粒子同士が再凝集しにくく、安定して分散している。また、水溶性薬効成分化合物は、炭酸カルシウム微粒子の表面を覆うようにして、炭酸カルシウム微粒子に確実に担持され、水媒体中においても、炭酸カルシウム微粒子から解離することがない。したがって、本発明の薬効成分複合化微粒子水分散液をそのまま、好ましくは必要に応じて他の成分を混合して口腔用組成物として、口腔内に投与すれば、薬効成分複合化微粒子は容易にプラークへ浸透し、プラーク内に滞留し、プラーク内にて高濃度の水溶性薬効成分化合物を滞留させる。
本発明の薬効成分複合化微粒子水分散液における薬効成分複合化微粒子の配合量は、水分散液中の薬効成分複合化微粒子の濃度で示すと、1〜20質量%であることが好ましく、さらに好ましくは5〜15質量%である。
薬効成分複合化微粒子の濃度が1質量%未満となると、薬効成分複合化微粒子による作用、効果が充分に得られないことがあるので、好ましくない。一方、薬効成分複合化微粒子の濃度が20質量%を超えると、水分散液の粘度が上昇し、物性が悪化することがあるので、好ましくない。
本発明の薬効成分複合化微粒子水分散液中に分散している薬効成分複合化微粒子の体積平均粒径は、水溶性薬効成分化合物の担持量や、炭酸カルシウム微粒子の体積平均粒径や、炭酸カルシウム微粒子の凝集の程度などの諸条件の組み合わせによって、変動するが、好ましくは5nm〜1μmであり、さらに好ましくは10nm〜500nmであり、特に好ましくは15nm〜300nmである。
水分散液中に分散している薬効成分複合化微粒子の体積平均粒径が、5nm未満となると、炭酸カルシウムが水に溶解されて部分的に消失することがあり、炭酸カルシウムによる水溶性薬効成分化合物の担持効果が得られなくなる場合があるので、好ましくない。一方、水分散液中に分散している薬効成分複合化微粒子の体積平均粒径が、1μmを超えると、薬効成分複合化微粒子の質量が増加して水媒体中における分散安定性が低下し始めるので、好ましくない。また、粒径が大きくなることにより、口腔用途に使用した場合、プラーク内部など口腔内細部への浸透が困難になり、口腔内滞留効率が低下し始めるので、好ましくない。
本発明の薬効成分複合化微粒子水分散液の25℃におけるpHは、好ましくは6〜9であり、さらに好ましくは7〜9である。
水分散液中の薬効成分複合化微粒子の25℃におけるpHが6未満となると、炭酸カルシウム微粒子が溶解しやすくなり、水分散液中の薬効成分複合化微粒子の安定性が低下する可能性があるので、好ましくない。一方、このpHが9を超えると、水分散液を口腔用組成物として使用する場合、使用性や味が悪くなる場合があるので、好ましくない。
(E)口腔用組成物
本発明の口腔用組成物は、前記薬効成分複合化微粒子水分散液に口腔投与に必要な他の成分を混合してなる組成物である。
本発明の口腔用組成物は、本発明の薬効成分複合化微粒子水分散液を含有することにより、う蝕、歯周病、口臭、歯面への色素沈着などの口腔内トラブルを予防又は改善することができる。本発明の口腔用組成物の剤形としては、洗口剤、歯磨剤が可能であり、好ましくは洗口剤として実用に供することができる。
本発明の口腔用組成物において、必須成分である薬効成分複合化微粒子水分散液に加えて、一般的な口腔用組成物に通常用いられ、かつ上記必須成分と反応しない任意成分として、その他の添加剤を配合できる。
前記その他の添加剤としては、口腔用組成物を歯磨剤とする場合は、例えば、研磨剤、粘結剤、界面活性剤、湿潤剤、香料、甘味剤、防腐剤、各種有効成分、着色剤等を配合でき、これら成分と水とを混合して製造することができる。
上記研磨剤としては、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、リン酸水素カルシウム無水和物、リン酸水素カルシウム2水和物、ピロリン酸カルシウム、上記薬効成分複合化微粒子の調製に用いた炭酸カルシウムとは別に、製剤に通常用いられる炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、第4リン酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤等が挙げられる。
これらの研磨剤の配合量は、歯磨剤(口腔用組成物)全体の2〜20質量%、特に5〜15質量%とすることが好ましい。
上記粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カラギーナン、グアガム、アルギン酸、モンモリロナイト、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、トラガントガム、カラヤガム、ビーガム、キサンタンガム等が挙げられる。
これらの配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができるが、歯磨剤(口腔用組成物)全体の0.1〜2質量%、特に0.3〜1質量%が好適である。
上記界面活性剤としては、上記薬効成分複合化微粒子の調製に用いた水溶性薬効成分化合物とは別に、製剤に通常用いられるアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、およびカチオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウム等のN−アシルグルタミン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、α−オレフィンスルフォン酸ナトリウムなどがあげられる。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン[エチレンオキサイドの平均付加モル数(平均付加EO)40モル]硬化ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの糖アルコール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのエーテル型の活性剤、ラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド類があげられる。カチオン性界面活性剤としては、アルキルアンモニウム、アルキルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。両性の界面活性剤としては、酢酸ベタイン、イミダゾリニウムベタイン、レシチンなどがあげられる。
これらの界面活性剤の配合量は、歯磨剤(口腔用組成物)全体の0.1〜5質量%、特に0.1〜2質量%とすることが好ましい。
上記湿潤剤としては、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコ−ル、キシリトール、マルチトール、ラクチット等が挙げられる。
これらの配合量は、歯磨剤(口腔用組成物)全体の5〜50質量%、特に20〜45質量%とすることが好ましい。
上記甘味剤としては、サッカリンナトリウム等、防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
上記香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及びこれら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。
その他、各種有効成分としては、上記本発明の薬効成分複合化微粒子の調製に用いた水溶性薬効成分化合物とは別に、製剤に通常用いられる成分として、モノフルオロリン酸ナトリウム、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、デキストラナーゼ、ムタナーゼ等のグルカナーゼ、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、アスコルビン酸、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸及びその塩類、塩化ナトリウム、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、酢酸dl−トコフェノール、α−ビサボロール、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト、アミラーゼ、メトキシエチレン、無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エピジヒドロコレステリン、クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、トウキ軟エキス、オウバクエキス、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物が挙げられる。なお、上記その他の有効成分は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量配合することができる。
上記着色剤としては、青色1号、黄色4号、緑色3号、二酸化チタン等を通常量で配合することができる。
本発明の口腔用組成物を洗口剤とする場合も、上記粘結剤、湿潤剤、界面活性剤、香料及び有効成分等を同様に配合することができる。
本発明の口腔用組成物の25℃におけるpHは、口腔内及び人体に安全性上問題ない範囲であれば、特に限定されるものではないが、含有する薬効成分複合化微粒子の安定性の面から、望ましくはpH6〜9であり、さらに望ましくは7〜9である。
口腔用組成物の25℃におけるpHが6未満の場合には、炭酸カルシウム微粒子が溶解しやすく、含有する薬効成分複合化微粒子の安定性が低下する可能性があり、逆にpHが9を超える場合には、使用性や味が悪くなる場合がある。必要に応じて、pH調整剤として、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等を適量配合し得る。
(F)薬効成分複合化微粒子水分散液の製造方法
本発明にかかる薬効成分複合化微粒子水分散液の製造方法は、アニオン性官能基を有する分子量30以上1000以下の水溶性薬効成分化合物を水分中に溶解または分散させて薬効成分水溶液または水分散液を得る(F1)薬効成分化合物液調製工程と、炭酸カルシウムの微粒子凝集体と水とから体積平均粒径1nm〜1μmの炭酸カルシウム微粒子が水中に分散されてなる炭酸カルシウム微粒子水分散液を得る(F2)炭酸カルシウム微粒子水分散液調製工程と、前記薬効成分水溶液または水分散液と前記炭酸カルシウム微粒子水分散液とを混合して、水溶性薬効成分化合物:炭酸カルシウム=1:9〜9:1の比で前記炭酸カルシウムに前記水溶性薬効成分化合物が担持された薬効成分複合化微粒子を得る(F3)薬効成分複合化微粒子調製工程と、を有する。
(F1)薬効成分化合物液調製工程
アニオン性官能基を有する分子量30以上1000以下の水溶性薬効成分化合物を、水分中に添加し、撹拌により溶解または分散させる。この時、いかなる装置を用いて溶解または分散させてもよいが、水分が気泡を巻き込まないようにする。
(F2)炭酸カルシウム微粒子水分散液調製工程
炭酸カルシウムを体積平均粒径1nm〜1μmに微粒化するのは、体積平均粒径1nm〜1μmに微粒化できれば、いかなる装置を用いて調製しても構わないが、例えば、慣用の微粒化装置を用いて粉砕することにより調製することができる。このような微粒化装置を具体的に挙げると、ビーズミルやボールミル、各種メディアレスミル、超音波分散機などを用いることができる。本発明に用いることができる微粒化装置としては、例えば、ウルトラアペックスミル(商品名:寿工業(株)製)、フィルミックス(商品名:プライミクス(株)製)、ディスコプレックス(商品名:ホソカワアルピネ社製)、ACM−Aパルベライザ(商品名:ホソカワミクロン(株)製)、ナノカット(商品名:(株)マツボー製)、CLEAR SS−5、クレアミックス(商品名:エムテクニック(株)製)、超音波分散機UH−600SR(商品名:(株)エスエムテー製)、超音波ホモジナイザー(商品名:Dr.Hielscher社製)等が挙げられる。
炭酸カルシウムの微粒子凝集体を水に分散させた後、炭酸カルシウムの微粒子凝集体を上記粉砕装置により粉砕して体積平均粒径1nm〜1μmの炭酸カルシウム微粒子とし、炭酸カルシウム微粒子水分散液を得る(炭酸カルシウム微粒子水分散液調製工程)。しかし、この炭酸カルシウム微粒子水分散液調製工程は、これに限定されず、炭酸カルシウムを体積平均粒径1nm〜1μmに調製し、炭酸カルシウム微粒子とした後、水に分散させることにより調製してもよい。
(F3)薬効成分複合化微粒子調製工程
上記工程(F1)で得られた薬効成分水溶液または水分散液と、上記工程(F2)で得られた炭酸カルシウム微粒子水分散液とを、水溶性薬効成分化合物:炭酸カルシウム=1:9〜9:1の比で混合することにより、体積平均粒径5nm〜1μmの薬効成分複合化微粒子の水分散液を得る(複合化工程)。この混合は、上記工程(F1)と工程(F2)でそれぞれ得られた水溶液または水分散液を均一撹拌できる混合装置を用いることにより行なうことができる。
上記混合装置としては、パドルミキサー、プロペラミキサーなどの撹拌装置が挙げられ、スターラーチップによる撹拌でも行うことができる。また、工程(F2)で使用する粉砕装置と同じ装置を用い、炭酸カルシウム微粒子水分散液に、工程(F1)で得られた薬効成分水溶液または水分散液を添加してもよい。この時、炭酸カルシウム微粒子水分散液を調製した装置に薬効成分水溶液または水分散液を添加し、同じ装置で混合を行うことが好ましい。同じ装置で混合することにより、炭酸カルシウム微粒子の微粒化、さらに水溶性薬効成分化合物の炭酸カルシウム微粒子への吸着を、換言すれば、炭酸カルシウム微粒子と水溶性薬効成分化合物との複合化を同時に行うことができ、工程の簡略化が可能となる。
本発明においては、薬効成分複合化微粒子が形成されていること、炭酸カルシウムの体積平均粒径、水溶性薬効成分化合物の分子量、薬効成分複合化微粒子における水溶性薬効成分化合物の担持量、薬効成分複合化微粒子の体積平均粒径が重要なパラメータとなっている。これらパラメータの確認方法を以下に示す。
(薬効成分複合化微粒子の確認方法)
前記工程(F3)で得られた水分散液を、透過型電子顕微鏡(TEM)観察することにより、水溶性薬効成分化合物が炭酸カルシウム微粒子の表面に吸着していることを確認することでき、この確認により薬効成分複合化微粒子が形成されていることが確認できる。
(炭酸カルシウムの体積平均粒径の測定方法)
前記工程(F2)で得られた炭酸カルシウム微粒子水分散液を、粒度分布測定装置[例えば、動的光散乱法型の粒度分析計(例えば、日機装株式会社のナノトラック粒度分布測定装置あるいはマイクロトラック粒度分布測定装置)]により測定したり、または透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、所定個数(例えば、10個)の炭酸カルシウム微粒子それぞれの粒径を測定し、算術平均により算出する。
(分子量分布を有する水溶性薬効成分化合物の数平均分子量の測定方法)
例えば、アニオン性官能基を有する水溶性薬効成分化合物が、この分子内のアルキル基がそれぞれ異なる化合物からなる混合物である場合、この分子量は1H−NMR測定により求めることができる。すなわち、秤量した水溶性薬効成分化合物と秤量した内部標準とをNMRチューブに入れ、溶媒(重メタノールなど)を添加し、これを1H−NMR測定する。この測定により求められた水溶性薬効成分化合物の添加量、および内部標準の分子量と添加量から、水溶性薬効成分化合物の分子量が算出される。
(薬効成分複合化微粒子における水溶性薬効成分化合物の担持量の測定方法)
前記工程(F3)で得られた水分散液の水相に溶解または分散している水溶性薬効成分化合物の含有量を測定し、これを薬効成分複合化微粒子水分散液全体に含まれる水溶性薬効成分化合物の含有量から減算する。この減算により得られた差の量が炭酸カルシウム微粒子に担持されている水溶性薬効成分化合物量である。
(薬効成分複合化微粒子の体積平均粒径の測定方法)
前記工程(F3)で得られた薬効成分複合化微粒子水分散液を、粒度分布測定装置[例えば、動的光散乱法型の粒度分析計(例えば、日機装株式会社のナノトラック粒度分布測定装置あるいはマイクロトラック粒度分布測定装置)]により測定するか、または透過型電子顕微鏡(TEM)観察により所定個数(例えば、10個)の薬効成分複合化微粒子それぞれの粒径を測定して、算術平均により算出する。
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明する。以下に説明する実施例は、本発明を好適に説明する例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではない。
以下の実施例1〜9は本発明にかかる薬効成分複合化微粒子水分散液の実施例であり、比較例1〜8はそれに対応する比較例である。
(実施例1)
炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製、商品名「ポアカル−N」)25gを純水437.5gに分散させた。これをビーズミル(寿工業(株)製、商品名「ウルトラアペックスミルUAM−015」)の原液タンクに仕込み、分散させながらミル内に供給して(流量10kg/hr)、ZrO2のφ0.1mmビーズを用いて30分間粉砕を行なった(ミル回転数4,350rpm)。これにより炭酸カルシウム微粒子を得た。
さらに、水溶性薬効成分化合物として塩酸アルキルジアミノエチルグリシン(以下、ADAEGと記載)の水溶液(三洋化成(株)製、商品名「レボンLAG−40」、有効成分濃度40質量%)37.5gを前記炭酸カルシウム微粒子が貯留されている原液タンクに添加し、さらに45分間粉砕を行った(ミル回転数4,350rpm)。粉砕後、ADAEGと炭酸カルシウム微粒子との複合化微粒子の水分散液(薬効成分複合化微粒子水分散液)500gを得た。
(炭酸カルシウム微粒子の体積平均粒径)
上記炭酸カルシウム微粒子の体積平均粒径は、上記炭酸カルシウムの粉砕条件に対し、炭酸カルシウムとともに分散剤としてクエン酸三ナトリウム(純正化学(株)製)を水難溶性無機カルシウム塩の重量に対して3倍量添加(凝集防止剤として)して粉砕を行い、得られた炭酸カルシウム微粒子の水分散液のうち2mLを動的光散乱式マイクロトラックUPA−150(商品名:日機装(株)製)で10分間計測することにより求めた。測定の結果、体積平均粒径は20nmであった。
(薬効成分複合化微粒子の体積平均粒径)
得られた薬効成分複合化微粒子水分散液のうち2mLを動的光散乱式マイクロトラックUPA−150(商品名:日機装(株)製)で10分間計測した結果、体積平均粒径は0.21μmであった。
(複合化の確認)
得られた薬効成分複合化微粒子水分散液を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより、水溶性薬効成分化合物が炭酸カルシウム微粒子に吸着していることを確認した。その結果を図1に示す。
図1は、前記薬効成分複合化微粒子をウルトラミクロトームを用いてスライスし、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影した写真である。透過型電子顕微鏡(TEM)観察は、得られた薬効成分複合化微粒子の水分散液の適量に、2%四酸化オスミウム水溶液を添加し、水分をエタノール、プロピレンオキサイド・エポキシ樹脂で順に置換し、ウルトラミクロトームを用いてスライス後、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM)観察した。図1に示すように、体積平均粒径1nm〜1μmの炭酸カルシウム微粒子の表面にADAEGが吸着している。すなわち、水溶性薬効成分化合物が炭酸カルシウム微粒子に複合化されていることが分かる。この写真の微粒子は、体積平均粒径5nm〜1μmの薬効成分複合化微粒子である。
(ADAEGの数平均分子量)
上記ADAEG(アニオン性官能基を有する分子量30以上1000以下の水溶性薬効成分化合物)の水溶液(三洋化成(株)製、商品名「レボンLAG−40」、有効成分濃度40質量%)50mgと内部標準1,1,2,2−テトラクロロエタン(分子量167.86)4mgとをNMRチューブに入れ、重メタノール約0.4mLを溶媒として添加した。これを1H−NMR測定した。6.5ppmのピークが1,1,2,2−テトラクロロエタンであり、この積分値を2とし、ADAEGの0.9ppmのピーク面積(3H)を求めたところ、積分値は8.024であった。この値からADAEGの数平均分子量を算出した結果、313.61であった。
(炭酸カルシウムの分析)
得られた薬効成分複合化微粒子水分散液約1gに水を加えて100mLにした。このうち1mLを採取し、1mol/L塩酸(和光純薬工業(株)製)を約0.3mL加えて完全に溶解させ、さらに水を加えて10mLにした。このうち1mLを採取し、原子吸光用塩化ランタン溶液(和光純薬工業(株)製)を0.5mL加え、水で全量を10mLとした。この溶液に関して、原子吸光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ製、商品名「日立Z−5310」)を用いて溶液中のカルシウム濃度を測定し、炭酸カルシウム分子量100.09、およびカルシウム原子量40.08から、薬効成分複合化微粒子水分散液に含まれる炭酸カルシウムの量を算出した。
(複合化効率(%))
得られた薬効成分複合化微粒子に担持されている水溶性薬効成分化合物量を求め、この実際の担持量と、水溶性薬効成分化合物(ADAEG)の仕込量とから、複合化効率を、以下のようにして、求めた。
(薬効成分複合化微粒子水分散液中の水溶性薬効成分化合物(ADAEG)量)
得られた薬効成分複合化微粒子水分散液のうち約200mgと、内部標準とする1,1,2,2−テトラクロロエタン約4mgとをNMRチューブに入れ、重メタノール約0.4mLを溶媒として添加した。これを1H−NMR測定し、ADAEGの量を分析した。6.5ppmのピークが1,1,2,2−テトラクロロエタンであり、この積分値を2とし、ADAEGの0.9ppmのピーク面積(3H)を求めた。この値から薬効成分複合化微粒子水分散液中のADAEGの含有量を算出した結果、3.0質量%であった。
(薬効成分複合化微粒子水分散液中の、炭酸カルシウムと複合化していないADAEG量)
得られた薬効成分複合化微粒子水分散液のうち20gを遠心分離(10000G、1hr)し、上清のうち5gを分取した。この上清を0.10μmポアのフィルターを通して濾過し、濾液を得た。この濾液のうち約400mgと、内部標準とする1,1,2,2−テトラクロロエタン約4mgとをNMRチューブに入れ、重メタノール約0.4mLを溶媒として添加した。これをNMR測定した。6.5ppmのピークが1,1,2,2−テトラクロロエタンであり、この積分値を2とし、ADAEGの0.9ppmのピーク面積(3H)を求めた。この値から濾液中のADAEGの含有量を算出した。さらに、濾液中のADAEG含有量から、薬効成分複合化微粒子水分散液中の、炭酸カルシウムに吸着していないADAEGの量を算出した結果、0.01質量%であった。
(薬効成分複合化微粒子に担持されている水溶性薬効成分化合物(ADAEG)量)
得られた水分散液の水相に溶解または分散している水溶性薬効成分化合物の含有量を、薬効成分複合化微粒子水分散液全体に含まれる水溶性薬効成分化合物の含有量から減算して、炭酸カルシウム微粒子の表面に吸着している水溶性薬効成分化合物担持量を求めた。
上記担持量を、薬効成分複合化微粒子水分散液全体に含まれる水溶性薬効成分化合物の含有量で除した値が、仕込みの水溶性薬効成分化合物の量に対して、炭酸カルシウム微粒子の表面に吸着した割合であり、さらに100を掛けた値が複合化効率である。このようにして求めた複合化効率は、99.7%であった。
以下に、前記実施例1に準じて、実施例2〜6、および比較例1〜5を示すが、これらにおいて、カルシウム粒子の体積平均粒径、水溶性薬効成分化合物の分子量、薬効成分複合化微粒子の体積平均粒径、複合化効率は、前記実施例1に示した測定方法に準じて測定した。
例えば、アニオン性官能基を有する分子量30以上1000以下の水溶性薬効成分化合物が、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、およびポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムの場合、上記分析法と同様に1H−NMR測定を行い、N−ラウロイルサルコシンナトリウムの0.9ppmのピーク面積(3H)、およびポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムの0.9ppmのピーク面積(3H)を求め、この値から、薬効成分複合化微粒子水分散液中の水溶性薬効成分化合物量、炭酸カルシウムと複合化していない水溶性薬効成分化合物量、および炭酸カルシウムに吸着している水溶性薬効成分化合物量、および複合化効率を算出した。
(実施例2)
純水を412.5g、ADAEGの水溶液(三洋化成(株)製、商品名「レボンLAG−40」)を62.5g使用した以外は、実施例1と同様に操作を行い、ADAEGと炭酸カルシウム微粒子とを複合化した薬効成分複合化微粒子の水分散液500gを得た。
(実施例3)
炭酸カルシウムの水分散液の粉砕時間を5分間とし、さらにADAEGの水溶液を添加した後の粉砕時間をさらに5分間とした以外は、実施例1と同様に操作を行い、ADAEGと炭酸カルシウム微粒子との薬効成分複合化微粒子の水分散液500gを得た。
(実施例4)
純水を462.5g、ADAEGの水溶液(三洋化成(株)製、商品名「レボンLAG−40」)を12.5g使用した以外は、実験例1と同様に操作を行い、ADAEGと炭酸カルシウム微粒子との薬効成分複合化微粒子の水分散液500gを得た。
(実施例5)
炭酸カルシウムを5g、純水を432.5g、ADAEGの水溶液(三洋化成(株)製、商品名「レボンLAG−40」)を62.5g使用した以外は、実験例1と同様に操作を行い、ADAEGと炭酸カルシウム微粒子との薬効成分複合化微粒子の水分散液500gを得た。
(実施例6)
純水を460g、アニオン性官能基を有する分子量30以上1000以下の水溶性薬効成分化合物としてN−ラウロイルサルコシンナトリウム(東京化成工業(株)製)を15g使用した以外は、実施例1と同様に操作を行い、N−ラウロイルサルコシンナトリウムと炭酸カルシウム微粒子とを複合化した薬効成分複合化微粒子の水分散液500gを得た。
(実施例7)
純水を450g、アニオン性官能基を有する分子量30以上1000以下の水溶性薬効成分化合物としてN−ラウロイルサルコシンナトリウム(東京化成工業(株)製)を25g使用した以外は、実施例1と同様に操作を行い、N−ラウロイルサルコシンナトリウムと炭酸カルシウム微粒子とを複合化した薬効成分複合化微粒子の水分散液500gを得た。
(実施例8)
純水を419g、アニオン性官能基を有する分子量30以上1000以下の水溶性薬効成分化合物としてポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムの水溶液(日光ケミカルズ(株)製、商品名「NIKKOL SBL−2N−27」、有効成分濃度27質量%)を56g使用した以外は、実施例1と同様に操作を行い、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムと炭酸カルシウム微粒子とを複合化した薬効成分複合化微粒子の水分散液500gを得た。
(実施例9)
純水を382g、アニオン性官能基を有する分子量30以上1000以下の水溶性薬効成分化合物としてポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムの水溶液(日光ケミカルズ(株)製、商品名「NIKKOL SBL−2N−27」、有効成分濃度27質量%)を93g使用した以外は、実施例1と同様に操作を行い、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムと炭酸カルシウム微粒子とを複合化した薬効成分複合化微粒子の水分散液500gを得た。
(比較例1)
1Lビーカーにて、炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製ポアカル−N)25gを純水437.5gに分散させた。さらに、ADAEGの水溶液(三洋化成(株)製、商品名「レボンLAG−40」)37.5gを添加し、スターラーチップ(4cm長)で10分間撹拌を行った(500rpm)。このようにして、ADAEGと炭酸カルシウム微粒子との混合液500gを得た。
(比較例2)
炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製、商品名「ポアカル−N」)25gを純水437.5gに分散させた。これをビーズミル(寿工業(株)製、商品名「ウルトラアペックスミルUAM−015」)の原液タンクに仕込み、分散させながらミル内に供給して(流量10kg/hr)、ZrO2のφ0.1mmビーズを用いて5分間粉砕を行なった(ミル回転数4,350rpm)。この分散液を取り出して1Lビーカーに入れ、ADAEGの水溶液(三洋化成(株)製、商品名「レボンLAG−40」、有効成分濃度40質量%)37.5gと混合し、スターラーチップ(4cm長)で10分間撹拌を行った(回転数500rpm)。撹拌後、ADAEGと炭酸カルシウム微粒子との薬効成分複合化微粒子の水分散液500gを得た。
(比較例3)
純水を470g、ADAEGの水溶液(三洋化成(株)製、商品名「レボンLAG−40」)を5g使用した以外は、実施例1と同様に操作を行い、ADAEGと炭酸カルシウム微粒子との薬効成分複合化微粒子の水分散液500gを得た。
(比較例4)
炭酸カルシウムを5g、純水を338.75g、ADAEGの水溶液(三洋化成(株)製、商品名「レボンLAG−40」)を156.25g使用した以外は、実施例1と同様に操作を行い、ADAEGと炭酸カルシウム微粒子との薬効成分複合化微粒子の水分散液500gを得た。
(比較例5)
純水を460g、アニオン性官能基を有する分子量30以上1000以下の水溶性薬効成分化合物としてN−ラウロイルサルコシンナトリウム(東京化成工業(株)製)を15g使用した以外は、比較例1と同様に操作を行い、N−ラウロイルサルコシンナトリウムと炭酸カルシウム微粒子との混合液500gを得た。
(比較例6)
純水を419g、アニオン性官能基を有する分子量30以上1000以下の水溶性薬効成分化合物としてポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムの水溶液(日光ケミカルズ(株)製、商品名「NIKKOL SBL−2N−27」、有効成分濃度27質量%)を56g使用した以外は、比較例1と同様に操作を行い、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムと炭酸カルシウム微粒子との混合液500gを得た。
(比較例7)
炭酸カルシウムの代わりに、リン酸カルシウム(白石カルシウム(株)製、商品名「メカール−P」)を使用した以外は、実施例1と同様に操作を行い、ADAEGとリン酸カルシウム微粒子との薬効成分複合化微粒子の水分散液500gを得た。
なお、上記リン酸カルシウム微粒子の体積平均粒径は、前記実施例1おける炭酸カルシウム微粒子の体積平均粒径と同様に測定した。測定の結果、体積平均粒径は11nmであった。
(比較例8)
ADAEGの水溶液(三洋化成(株)製レボンLAG−40)37.5gと、純水462.5gを混合、撹拌し、均一なADAEG水分散液500gを得た。
前記実施例1〜9において製造した薬効成分複合化微粒子水分散液の組成および諸特性を下記(表1A)および(表1B)に示し、前記比較例1〜8において製造した薬効成分複合化微粒子水分散液の組成および諸特性を下記(表2A)および(表2B)に示した。
表1A、表1B、表2A、表2Bに見るように、実施例では、体積平均粒径1nm〜1μmの炭酸カルシウム微粒子と、アニオン性官能基を有する分子量が30以上1000以下の水溶性薬効成分化合物とが複合化した、体積平均粒径5nm〜1μmの薬効成分複合化微粒子水分散液が得られることがわかった。
以下に示す実施例10〜18では、本発明にかかる口腔用組成物として洗口剤を調製した。また、これら実施例10〜18の説明に続いて、これら実施例10〜18に対応する比較例9〜16を示す。
(実施例10)
口腔用組成物として、下記(表3)に示す組成の洗口剤を調製した。まず、スリーワンモーターと回転羽根を有する撹拌機を装着したステンレス製容器に、規定量の精製水を投入し、下記(表3)に示す配合成分のうち前記実施例1で調製した薬効成分複合化微粒子水分散液と、水溶性成分(ポリオキシエチレン(平均EO付加モル数40)硬化ヒマシ油とエタノール以外)を撹拌しながら投入、分散させた(A液)。一方、スリーワンモーターと回転羽根を有する撹拌機を装着した別のステンレス製容器に、規定量のエタノールを投入し、ポリオキシエチレン(平均EO付加モル数40)硬化ヒマシ油をエタノールに溶解させた溶液を撹拌しながら投入、溶解させた(B液)。A液を含む容器に、B液を加え、10分撹拌し、洗口剤を得た。得られた洗口剤の25℃におけるpHを測定したところ、8.0であった。
(実施例11)
薬効成分複合化微粒子水分散液として、前記実施例2で調製した薬効成分複合化微粒子水分散液を4.1%(洗口剤中のADAEG含量として0.2%)を用いた以外は、実施例10と同様にして洗口剤を調製した。得られた洗口剤の25℃におけるpHは7.9であった。
(実施例12)
薬効成分複合化微粒子の水分散液として、実施例3で調製した薬効成分複合化微粒子の水分散液を6.5%(洗口剤中のADAEG含量として0.2%)を用いた以外は、実施例10と同様に洗口剤を調製した。得られた洗口剤の25℃におけるpHは7.9であった。
(実施例13)
薬効成分複合化微粒子の水分散液として、実施例4で調製した薬効成分複合化微粒子水分散液を20%(洗口剤中のADAEG含量として0.2%)を用いた以外は、実施例10と同様にして洗口剤を調製した。得られた洗口剤の25℃におけるpHは8.0であった。
(実施例14)
薬効成分複合化微粒子の水分散液として、実施例5で調製した薬効成分複合化微粒子水分散液を4.1%(洗口剤中のADAEG含量として0.2%)を用いた以外は、実施例10と同様にして洗口剤を調製した。得られた洗口剤の25℃におけるpHは7.4であった。
(実施例15)
薬効成分複合化微粒子水分散液として、前記実施例6で調製した薬効成分複合化微粒子水分散液を13.8%(洗口剤中のN−ラウロイルサルコシンナトリウム含量として0.4%)を用いた以外は、実施例10と同様にして洗口剤を調製した。得られた洗口剤の25℃におけるpHは8.1であった。
(実施例16)
薬効成分複合化微粒子水分散液として、前記実施例7で調製した薬効成分複合化微粒子水分散液を8.0%(洗口剤中のN−ラウロイルサルコシンナトリウム含量として0.4%)を用いた以外は、実施例10と同様にして洗口剤を調製した。得られた洗口剤の25℃におけるpHは8.0であった。
(実施例17)
薬効成分複合化微粒子水分散液として、前記実施例8で調製した薬効成分複合化微粒子水分散液を6.8%(洗口剤中のポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム含量として0.2%)を用いた以外は、実施例10と同様にして洗口剤を調製した。得られた洗口剤の25℃におけるpHは8.0であった。
(実施例18)
薬効成分複合化微粒子水分散液として、前記実施例9で調製した薬効成分複合化微粒子水分散液を4.1%(洗口剤中のポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム含量として0.2%)を用いた以外は、実施例10と同様にして洗口剤を調製した。得られた洗口剤の25℃におけるpHは7.9であった。
(比較例9)
薬効成分複合化微粒子水分散液の替わりに、前記比較例1で調製したADAEGと炭酸カルシウム微粒子との混合液を6.6%(洗口剤中のADAEG含量として0.2%)を用いた以外は、実施例10と同様にして洗口剤を調製した。得られた洗口剤の25℃におけるpHは8.2であった。
(比較例10)
薬効成分複合化微粒子水分散液の替わりに、比較例2で調製した薬効成分複合化微粒子水分散液を6.5%(洗口剤中のADAEG含量として0.2%)を用いた以外は、実施例10と同様にして洗口剤を調製した。得られた洗口剤の25℃におけるpHは8.1であった。
(比較例11)
薬効成分複合化微粒子水分散液の替わりに、比較例3で調製した薬効成分複合化微粒子水分散液を50%(洗口剤中のADAEG含量として0.2%)を用いた以外は、実施例10と同様にして洗口剤を調製した。得られた洗口剤の25℃におけるpHは9.5であった。
(比較例12)
薬効成分複合化微粒子水分散液の替わりに、比較例4で調製した薬効成分複合化微粒子水分散液を1.6%(洗口剤中のADAEG含量として0.2%)を用いた以外は、実施例10と同様にして洗口剤を調製した。得られた洗口剤の25℃におけるpHは7.3であった。
(比較例13)
薬効成分複合化微粒子水分散液の替わりに、前記比較例5で調製したN−ラウロイルサルコシンナトリウムと炭酸カルシウム微粒子との混合液を13.4%(洗口剤中のN−ラウロイルサルコシンナトリウム含量として0.4%)を用いた以外は、実施例10と同様にして洗口剤を調製した。得られた洗口剤の25℃におけるpHは8.3であった。
(比較例14)
薬効成分複合化微粒子水分散液の替わりに、前記比較例6で調製したポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムと炭酸カルシウム微粒子との混合液を6.8%(洗口剤中のポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム含量として0.2%)を用いた以外は、実施例10と同様にして洗口剤を調製した。得られた洗口剤の25℃におけるpHは8.2であった。
(比較例15)
薬効成分複合化微粒子水分散液の替わりに、前記比較例7で調製したADAEGとリン酸カルシウム微粒子との薬効成分複合化微粒子水分散液を6.6%(洗口剤中のADAEG含量として0.2%)を用いた以外は、実施例10と同様にして洗口剤を調製した。得られた洗口剤の25℃におけるpHは7.4であった。
(比較例16)
薬効成分複合化微粒子水分散液の替わりに、前記比較例8で調製したADAEGの水分散液を6.6%(洗口剤中のADAEG含量として0.2%)を用いた以外は、実施例10と同様にして洗口剤を調製した。得られた洗口剤の25℃におけるpHは7.3であった。
以下に示す実施例19〜27では、本発明にかかる口腔用組成物として歯磨剤を調製した。また、これら実施例19〜27の説明に続いて、これら実施例19〜27に対応する比較例17〜23を示す。
(実施例19)
口腔用組成物として下記(表4)に配合成分の歯磨剤を調製した。まず、精製水中に水溶成分(70%ソルビトール、モノフルオロリン酸ナトリウム、サッカリンナトリウム)を常温で混合溶解させてA相を調製した。一方、プロピレングリコール中に、グリセリン、キサンタンガムを常温で溶解・分散させてB相を調製した。次に、撹拌中のA相の中にB相を添加混合し、C相を調製した。C相中に、前記実施例1で調製した薬効成分複合化微粒子水分散液と、香料、無水ケイ酸、ラウリル硫酸ナトリウム等を添加し、1.5Lニーダー(石山工作所製)を用い常温で混合し、4kPaまで減圧し脱泡を行い、歯磨剤1.0kgを得た。得られた歯磨剤の25℃におけるpHは7.6であった。
(実施例20)
薬効成分複合化微粒子水分散液として、前記実施例2で調製した薬効成分複合化微粒子水分散液を4.1%(歯磨剤中のADAEG含量として0.2%)を用いた以外は、実施例19と同様にして歯磨剤を調製した。得られた歯磨剤の25℃におけるpHは7.5であった。
(実施例21)
薬効成分複合化微粒子の水分散液として、実施例3で調製した薬効成分複合化微粒子水分散液を6.5%(歯磨剤中のADAEG含量として0.2%)を用いた以外は、実施例19と同様にして歯磨剤を調製した。得られた歯磨剤の25℃におけるpHは7.5であった。
(実施例22)
薬効成分複合化微粒子の水分散液として、実施例4で調製した薬効成分複合化微粒子水分散液を20%(歯磨剤中のADAEG含量として0.2%)を用いた以外は、実施例19と同様にして歯磨剤を調製した。得られた歯磨剤の25℃におけるpHは7.6であった。
(実施例23)
薬効成分複合化微粒子の水分散液として、実施例5で調製した薬効成分複合化微粒子水分散液を4.1%(歯磨剤中のADAEG含量として0.2%)を用いた以外は、実施例19と同様にして歯磨剤を調製した。得られた歯磨剤の25℃におけるpHは7.2であった。
(実施例24)
薬効成分複合化微粒子水分散液として、前記実施例6で調製した薬効成分複合化微粒子水分散液を13.8%(歯磨剤中のN−ラウロイルサルコシンナトリウム含量として0.4%)を用いた以外は、実施例19と同様にして歯磨剤を調製した。得られた歯磨剤の25℃におけるpHは7.7であった。
(実施例25)
薬効成分複合化微粒子水分散液として、前記実施例7で調製した薬効成分複合化微粒子水分散液を8.0%(歯磨剤中のN−ラウロイルサルコシンナトリウム含量として0.4%)を用いた以外は、実施例19と同様にして歯磨剤を調製した。得られた歯磨剤の25℃におけるpHは7.6であった。
(実施例26)
薬効成分複合化微粒子水分散液として、前記実施例8で調製した薬効成分複合化微粒子水分散液を6.8%(歯磨剤中のポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム含量として0.2%)を用いた以外は、実施例19と同様にして歯磨剤を調製した。得られた歯磨剤の25℃におけるpHは7.6であった。
(実施例27)
薬効成分複合化微粒子水分散液として、前記実施例9で調製した薬効成分複合化微粒子の水分散液を4.1%(歯磨剤中のポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム含量として0.2%)を用いた以外は、実施例19と同様にして歯磨剤を調製した。得られた歯磨剤の25℃におけるpHは7.5であった。
(比較例17)
薬効成分複合化微粒子水分散液の替わりに、前記比較例1で調製したADAEGと炭酸カルシウム微粒子との混合液を6.6%(歯磨剤中のADAEG含量として0.2%)を用いた以外は、実施例19と同様にして歯磨剤を調製した。得られた歯磨剤の25℃におけるpHは7.7であった。
(比較例18)
薬効成分複合化微粒子水分散液の替わりに、前記比較例2で調製したADAEGと炭酸カルシウム微粒子との複合化微粒子水分散液を6.5%(歯磨剤中のADAEG含量として0.2%)を用いた以外は、実施例19と同様にして歯磨剤を調製した。得られた歯磨剤の25℃におけるpHは7.7であった。
(比較例19)
薬効成分複合化微粒子水分散液の替わりに、前記比較例4で調製したADAEGと炭酸カルシウム微粒子との薬効成分複合化微粒子水分散液を1.6%(歯磨剤中のADAEG含量として0.2%)を用いた以外は、実施例19と同様にして歯磨剤を調製した。得られた歯磨剤の25℃におけるpHは7.2であった。
(比較例20)
薬効成分複合化微粒子水分散液の替わりに、前記比較例5で調製したN−ラウロイルサルコシンナトリウムと炭酸カルシウム微粒子との混合液を13.4%(歯磨剤中のN−ラウロイルサルコシンナトリウム含量として0.4%)を用いた以外は、実施例19と同様にして歯磨剤を調製した。得られた歯磨剤の25℃におけるpHは7.7であった。
(比較例21)
薬効成分複合化微粒子水分散液の替わりに、前記比較例6で調製したポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムと炭酸カルシウム微粒子との混合液を6.8%(歯磨剤中のポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム含量として0.2%)を用いた以外は、実施例19と同様にして歯磨剤を調製した。得られた歯磨剤の25℃におけるpHは7.8であった。
(比較例22)
薬効成分複合化微粒子水分散液の替わりに、前記比較例7で調製したADAEGとリン酸カルシウム微粒子との薬効成分複合化微粒子水分散液を6.6%(歯磨剤中のADAEG含量として0.2%)を用いた以外は、実施例19と同様にして歯磨剤を調製した。得られた歯磨剤の25℃におけるpHは7.4であった。
(比較例23)
薬効成分複合化微粒子水分散液の替わりに、前記比較例8で調製したADAEGの水分散液を6.6%(歯磨剤中のADAEG含量として0.2%)を用いた以外は、実施例19と同様にして歯磨剤を調製した。得られた歯磨剤の25℃におけるpHは7.3であった。
(洗口剤、歯磨剤の評価)
前記実施例10〜18および比較例9〜16の洗口剤と、前記実施例19〜27および比較例17〜23の歯磨剤の評価を以下のようにして行った。
(短時間殺菌効果確認実験)
直径7mm×厚さ3.5mmのハイドロキシアパタイト(HA)板(ペンタックス(株)製)を、0.45μmのフィルターで濾過したヒト無刺激唾液で4時間処理した。このHA板をモデル歯垢作成の担体に用いた。
上記HA担体をう蝕原因菌であるミュータンス菌(Streptococcus mutans ATCC25175)を含むTHB(Todd Hewitt Broth)培地(Becton and Dickinson社製)1mLに投入し、37℃、嫌気状態(80vol% 窒素、10vol% 二酸化炭素、10vol% 水素)で1日培養し、HA担体表面に人工プラークを形成させた。
上記人工プラークが形成されたHA担体を、生理食塩水で2回洗浄後、前記実施例10〜18および比較例9〜16の洗口剤:純水=10:1希釈液1mL、前記実施例19〜27および比較例17〜23の歯磨剤:純水=1:3希釈液1mLに投入し、3分間振蕩した。なお、歯磨剤:純水の1:3希釈液及び洗口剤:純水の10:1希釈液とは、歯磨き時及び洗口剤使用時に歯磨剤及び洗口剤が唾液によって希釈されることを想定して設定したものである。
前記振蕩の後、各HA担体を、2mLの生理食塩水で2回洗浄し(洗口剤の場合、洗浄せずに処置液を吸い取り)、1質量%のグルコース水溶液1mLに投入し、37℃で10分間インキュベートした。その後、各HA担体を滅菌生理食塩水1mLで超音波処理(200μA、10秒間)によりモデル歯垢(人工プラーク)を分散し、その分散液をTHB寒天平板に50μL塗沫、嫌気的条件下で培養した。培養後、各寒天平板上に生育したコロニーを計測し、残存するミュータンス菌の菌数(cfu)を求め、下記の基準に従って判定した。
(殺菌効果判定基準)
◎:生菌数が106未満
○:生菌数が106以上107未満
△:生菌数が107以上108未満
×:生菌数が108以上
(薬効成分複合化微粒子の口腔粘膜モデルへの滞留性確認実験)
底面にI型コラーゲンコートを施した6穴シャーレ(住友ベークライト(株)製、商品名「スミロンセルタイトC−1プレート6F」)に、前記短時間殺菌効果確認実験と同様に各実施例および比較例の洗口剤:純水=10:1希釈液10mL、歯磨剤:純水=1:3希釈液10mLを投入し、3分間振蕩した。その後、前記各6穴シャーレを、10mLの生理食塩水で10回洗浄し、1mol/L塩酸(和光純薬工業(株)製)2mLを滴下し、5分間放置して、各6穴シャーレのコラーゲン膜に吸着していた薬効成分複合化微粒子を酸溶解させた。その後、溶解したカルシウムを、原子吸光光度計(日立Z−5310、(株)日立ハイテクノロジーズ製)により、分析した。分析の結果得られた各6穴シャーレ(ウエル)に滞留していたカルシウムの質量を下記判定基準により4段階に分けて、薬効成分複合化微粒子の口腔内滞留性を評価した。
(滞留性判定基準)
◎:Caとして60μg/ウェル以上
○:Caとして40μg/ウェル以上60μg/ウェル未満
△:Caとして20μg/ウェル以上40μg/ウェル未満
×:Caとして20μg/ウェル未満
(総合評価)
以下の基準に従って、実施例および比較例の口腔組成物の総合評価を行った。
(総合評価判定基準)
◎:短時間殺菌効果と口腔内滞留性がともに◎
○:短時間殺菌効果と口腔内滞留性がともに○以上(いずれも◎を除く)
△:短時間殺菌効果と口腔内滞留性の少なくとも一方が△で、かつ×が1項目もない
×:短時間殺菌効果と口腔内滞留性の少なくとも一方が×
短時間殺菌効果確認実験、薬効成分複合化微粒子の口腔粘膜モデルへの滞留性確認実験、および総合評価の各結果を、下記(表5A)(表5B)および(表6A)(表6B)にまとめた。すべての実験とも各群N=3で行ない、その平均値を表に示す。
上記(表5A)(表5B)および(表6A)(表6B)に見るように、本発明の体積平均粒径5nm〜1μmの薬効性分複合化微粒子水分散液を含有する口腔用組成物は、複合化微粒子の体積平均粒径が1μmを超えるものや、水溶性薬効成分化合物と炭酸カルシウムとの質量比が1:9〜9:1を外れているものや、炭酸カルシウムをリン酸カルシウムで代替したもの、水溶性薬効成分化合物が炭酸カルシウム微粒子と複合化されていないものと比較し、短時間殺菌効果、および口腔内滞留性に優れていることが確認された。これは、本発明の薬効成分複合化微粒子の体積平均粒径が極めて小さく、かつよりプラークへの吸着性の高い炭酸カルシウムと複合化しているために、口腔内のプラークへの浸透性および滞留性が高まり、これにより水溶性薬効成分化合物の滞留性も高まったものと考察される。
本発明の薬効成分複合化微粒子水分散液および口腔用組成物によれば、口腔内のプラークへの水溶性薬効成分化合物の浸透性および滞留性を向上させることができる。また、本発明の薬効成分複合化微粒子水分散液および口腔用組成物は、口腔内のプラークへの水溶性薬効成分化合物の滞留性に優れる。さらに、本発明の口腔用組成物によれば、う蝕や歯周病に対して速やか且つ持続的に水溶性薬効成分化合物の効果を発揮させ、口腔内トラブルを効果的に予防または改善することができる。
本発明にかかる薬効成分複合化微粒子水分散液中の薬効成分複合化微粒子をスライスし、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影した写真により示した薬効成分複合化微粒子の断面構成図である。
符号の説明
1 アニオン性官能基を有する水溶性薬効成分化合物
2 炭酸カルシウムの微粒子
3 薬効成分複合化微粒子

Claims (5)

  1. 炭酸カルシウム微粒子に水溶性薬効成分化合物が担持されてなる薬効成分複合化微粒子が水中に分散されてなる薬効成分複合化微粒子水分散液であって、
    前記水溶性薬効成分化合物がアニオン性官能基を有するとともに分子量が30以上1000以下であり、前記薬効成分複合化微粒子の体積平均粒径が5nm〜1μmであり、該薬効成分複合化微粒子における水溶性薬効成分化合物と炭酸カルシウムとの質量比(水溶性薬効成分化合物:炭酸カルシウム)が1:9〜9:1であることを特徴とする薬効成分複合化微粒子水分散液。
  2. 前記炭酸カルシウムの体積平均粒径が1nm〜1μmであることを特徴とする請求項1に記載の薬効成分複合化微粒子水分散液。
  3. アニオン性官能基を有する分子量30以上1000以下の水溶性薬効成分化合物を水分中に溶解または分散させて薬効成分水溶液または水分散液を得る薬効成分化合物液調製工程と、炭酸カルシウムの微粒子凝集体を水に分散させた後、前記微粒子凝集体を粉砕することにより体積平均粒径1nm〜1μmの炭酸カルシウム微粒子が水中に分散されてなる炭酸カルシウム微粒子水分散液を得る炭酸カルシウム微粒子水分散液調製工程と、前記薬効成分水溶液または水分散液と前記炭酸カルシウム微粒子水分散液とを混合して水溶性薬効成分化合物:炭酸カルシウム=1:9〜9:1の比で前記炭酸カルシウムに前記水溶性薬効成分化合物が担持された薬効成分複合化微粒子を得る薬効成分複合化微粒子調製工程とを経て得られたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の薬効成分複合化微粒子水分散液。
  4. アニオン性官能基を有する分子量30以上1000以下の水溶性薬効成分化合物を水分中に溶解または分散させて薬効成分水溶液または水分散液を得る薬効成分化合物液調製工程と、
    炭酸カルシウムの微粒子凝集体を水に分散させた後、前記微粒子凝集体を粉砕することにより体積平均粒径1nm〜1μmの炭酸カルシウム微粒子が水中に分散されてなる炭酸カルシウム微粒子水分散液を得る炭酸カルシウム微粒子水分散液調製工程と、
    前記薬効成分水溶液または水分散液と前記炭酸カルシウム微粒子水分散液とを混合して、水溶性薬効成分化合物:炭酸カルシウム=1:9〜9:1の比で前記炭酸カルシウムに前記水溶性薬効成分化合物が担持された薬効成分複合化微粒子を得る薬効成分複合化微粒子調製工程と、
    を有することを特徴とする薬効成分複合化微粒子水分散液の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬効成分複合化微粒子水分散液を含有してなることを特徴とする口腔用組成物。
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