JP2005179290A - 歯磨剤組成物及びその製造方法 - Google Patents

Abstract

【解決手段】 （ａ）グルカナーゼ、（ｂ）脂肪酸炭素数が７〜１１の脂肪酸のトリグリセライド、（ｃ）アルキル基の炭素数が１４〜１８で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が３〜８のポリオキシエチレンアルキルエーテルとエチレンオキサイドの平均付加モル数が１０〜３０のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなるノニオン界面活性剤、（ｄ）香料を０．５〜０．９質量％含有し、成分（ｂ）／成分（ｄ）が質量比で０．１０〜０．４８でありかつ成分（ｂ）がカプセルに包埋されていないことを特徴とする歯磨剤組成物。
【効果】 本発明は、デキストラナーゼ等のグルカナーゼとノニオン界面活性剤と香料を含有する歯磨剤組成物において、香料による口腔内の刺激を抑え、かつ香り立ちを良好にすると共に、酵素の安定性を確保できるもので、各種剤型に調製して幅広く使用することができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、グルカナーゼとノニオン界面活性剤と香料を含有する歯磨剤組成物に関し、更に詳しくは、口腔内刺激を抑え、かつ香り立ちを良好にすると共に、酵素の安定性の確保できる歯磨剤組成物及びその製造方法に関する。

口腔疾患の２大原因であるう蝕、歯周病の原因は歯垢であり、日常の口腔清掃手段として歯刷子とその補助の目的から歯磨剤が使われている。

歯磨剤の基本成分には、基材成分として、研磨剤、湿潤剤、粘結剤、発泡剤等が配合されている。基材成分以外には、例えばグルカナーゼ等の各種酵素、殺菌剤、抗炎症剤、歯石抑制剤、フッ素化合物等の有効成分が配合され、有用性が認められている。

近年、う蝕、歯周病の原因である歯垢を特異的かつ効果的に分解除去する手段として、歯垢分解酵素を歯磨剤に配合し、ブラッシングする方法が提案され、その酵素の歯磨剤への配合手段についても多くの技術が開示されている。このような酵素配合歯磨剤は、幼児・子供等のブラッシング技術の未熟練者にとって、ブラッシング技術を補助し、効果的に歯垢を除去できる手段として特に有効であるといえる。

しかし、タンパク質である酵素を歯磨剤に配合する場合、発泡剤等の基材成分がタンパク質変性作用を持つ場合があるため、酵素の安定性が低下し、歯垢分解作用を著しく低減化させてしまう場合があり、歯磨剤中での酵素安定性の確保という課題があった。

一方、歯磨剤には上記基材成分以外の成分として香料が好適に配合されている。香料には歯磨剤の基材成分からくる基材臭のマスキングの他、使用前の香り立ち、ブラッシング中や使用後の清涼感の付加等、歯磨き行為を気持ちよくかつ円滑に行うための重要な成分であるが、同時に口腔内の粘膜を刺激する作用があることも知られている。

生活者ニーズが多様化する現在、歯磨剤に対して香料の強い清涼感や刺激を求める声もあるが、一方で口腔粘膜過敏の人や幼児・子供等にとっては、一般向けの歯磨剤の刺激では強すぎて、刺激のマイルドな低刺激性の歯磨剤が望まれている。

しかしながら、こうした香料による口腔内の刺激を抑えるために単純に香料配合量を減らす又は配合しない場合、香り立ちが低くなり、基材臭による違和感を生じる場合がある。特にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のノニオン界面活性剤を用いた場合、基材臭による違和感や香り立ちの低下が起こり易い。

このように、う蝕、歯周病の原因である歯垢を分解除去する効果を持つグルカナーゼ等の酵素を安定配合し、かつ口腔内の刺激を抑え、かつ香り立ちの良い歯磨剤組成物は、ブラッシング技術に未熟練でかつ口腔内の刺激に弱い幼児・子供だけでなく口腔粘膜の敏感な大人まで広く有用であるにもかかわらず、こうした課題すべてを充分に満足させる観点から解決を試みた例はなかった。

例えば、酵素を配合した口腔用組成物において、ポリオキシエチレンステアリルエーテルとポリエチレングリコールを配合し、辺縁部歯垢の除去力を高めたもの（特許文献１：特開２００１−３０２４８１号公報）が開示されているが、酵素安定性は向上するものの、実施例で用いられている１．０質量％以上の香料配合量では、刺激に弱い幼児・子供には刺激が強く、香料配合量を０．９質量％以下にした場合には、酵素の安定性と口腔内の刺激を抑え、かつ香り立ちの良さを両立するのには充分満足できるレベルではなかった。

また、炭素数が７〜１１の脂肪酸のトリグリセライドを歯磨剤中に配合した例として、カプセルに内容液として炭素数が７〜１１の脂肪酸のトリグリセライドが含まれ、被膜物質に寒天もしくはジュランガムを用いたカプセルを歯磨剤中に配合したもの（特許文献２：特開平８−１６９８１２号公報、特許文献３：特開平８−３２５１２７号公報、特許文献４：特開平９−２４１１３９号公報、特許文献５：特開平１０−６７６２５号公報）が開示されている。これらは、カプセル製造のための芯物質として炭素数７〜１１の脂肪酸のトリグリセライドを用いているものであるが、このようにカプセルに包埋された状態では、歯磨剤の使用前の香り立ち向上や口腔内の刺激を抑制する効果は発現しなかった。

更に、イブプロフェンなどの抗炎症剤の合成樹脂容器への吸着を防止する目的で脂肪酸のトリグリセライドとノニオン界面活性剤を配合したもの（特許文献６：特開平７−２６７８３８号公報）が開示されているが、デキストラナーゼのように合成樹脂に吸着しない親水性酵素の安定性は充分に満足するレベルではなく、また香料の香り立ちや口腔内の刺激抑制についても明らかにされていない。

以上のように、グルカナーゼ等の酵素を安定配合し、口腔内での刺激が低く、かつ香り立ちの良い歯磨剤組成物は子供から大人まで広く有用であるにもかかわらず、その全てを満足させるべく課題の解決を試みた例はなく、これらを同時に満足させ得る歯磨剤組成物を実現させることが求められていた。

なお、本出願人は、酵素安定性と発泡性の改善を目的に、課題解決策として酵素と特定のノニオン界面活性剤とラウリル硫酸ナトリウムを配合したもの（特願２００３−２００４９２号）も提案している。

特開２００１−３０２４８１号公報 特開平８−１６９８１２号公報 特開平８−３２５１２７号公報 特開平９−２４１１３９号公報 特開平１０−６７６２５号公報 特開平７−２６７８３８号公報

本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、グルカナーゼ等とノニオン界面活性剤と香料を含有する歯磨剤組成物の香料による口腔内の刺激を抑え、かつ香り立ちを良好にすると共に、酵素の安定性を確保できる歯磨剤組成物を提供することを目的とする。

本発明者は上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、デキストラナーゼ等のグルカナーゼ及び炭素数が１４〜１８のアルキル基を有しエチレンオキサイドの平均付加モル数が３〜８であるポリオキシエチレンアルキルエーテルとエチレンオキサイドの平均付加モル数が１０〜３０であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなるノニオン界面活性剤を含有する歯磨剤において、脂肪酸炭素数が７〜１１の脂肪酸のトリグリセライドと、香料０．５〜０．９質量％を配合し、上記脂肪酸のトリグリセライド／香料を質量比で０．１０〜０．４８とし、上記脂肪酸のトリグリセライドをカプセル化することなく歯磨剤中に配合することにより、口腔内の刺激を抑え、かつ香り立ちを良好にすると共に、酵素安定性が確保された歯磨剤組成物が得られることを知見した。またこの場合、アルキル基の炭素数が１４〜１８で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が３〜８のポリオキシエチレンアルキルエーテルとエチレンオキサイドの平均付加モル数が１０〜３０のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とを予め混合してノニオン界面活性剤混合物を調製すると共に、脂肪酸炭素数が７〜１１の脂肪酸のトリグリセライドと香料とを予め混合溶解したトリグリセライド・香料混合物を調製し、これらノニオン界面活性剤混合物とトリグリセライド・香料混合物を他成分と混合することにより、上記効果がより有効に発揮される歯磨剤組成物が得られることを知見し、本発明をなすに至った。

なお、本発明における酵素の安定化の確保は、炭素数が１４〜１８のアルキル基を有しエチレンオキサイドの平均付加モル数が３〜８であるポリオキシエチレンアルキルエーテルとエチレンオキサイドの平均付加モル数が１０〜３０であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含む界面活性剤混合物の複合ミセル中に、脂肪酸炭素数が７〜１１の脂肪酸のトリグリセライドを可溶化させることにより、界面活性剤混合物の配向が安定化すると共に、界面活性剤が上記脂肪酸のトリグリセライドを含む可溶化ミセル表面近傍に固定化されることで、界面活性剤に由来するタンパク質変性能が抑えられるためと推定され、本発明によれば上記特定成分を組み合わせて配合することにより、優れた酵素安定性を確保できるものである。

また、本発明における口腔内の刺激の低減は、上記脂肪酸のトリグリセライドと香料０．５〜０．９質量％を配合することにより、上記脂肪酸のトリグリセライドによって香料が希釈され、香料が口腔内に直接高濃度で作用することを防止すると共に、油脂である上記脂肪酸のトリグリセライドが口腔粘膜を保護するため刺激を低減させると推定される。

香り立ちの向上は、上記脂肪酸のトリグリセライド／香料が質量比で０．１０〜０．４８となるように希釈されることで、炭素数が１４〜１８のアルキル基を有しエチレンオキサイドの平均付加モル数が３〜８であるポリオキシエチレンアルキルエーテルとエチレンオキサイドの平均付加モル数が１０〜３０であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含む界面活性剤混合物の複合ミセルにより歯磨剤中により細かく均一に香料が分散されることで、香り立ちが向上するものと推定され、本発明によれば、上記特定成分を組み合わせて配合することにより、口腔内の刺激の低減と香り立ちの向上を同時に確保できるものである。

これにより、グルカナーゼ及び炭素数が１４〜１８のアルキル基を有しエチレンオキサイドの平均付加モル数が３〜８であるポリオキシエチレンアルキルエーテルとエチレンオキサイドの平均付加モル数が１０〜３０であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなるノニオン界面活性剤と香料を配合した歯磨剤組成物の酵素安定性を確保すると共に口腔内の刺激を抑え、かつ香り立ちを良好にするという課題を解決し得る。

従って、本発明は、
［１］（ａ）グルカナーゼ、（ｂ）脂肪酸炭素数が７〜１１の脂肪酸のトリグリセライド、（ｃ）アルキル基の炭素数が１４〜１８で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が３〜８のポリオキシエチレンアルキルエーテルとエチレンオキサイドの平均付加モル数が１０〜３０のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなるノニオン界面活性剤、（ｄ）香料を０．５〜０．９質量％含有し、成分（ｂ）／成分（ｄ）が質量比で０．１０〜０．４８でありかつ成分（ｂ）がカプセルに包埋されていないことを特徴とする歯磨剤組成物、及び
［２］［１］記載の歯磨剤組成物を製造する方法であって、（ｃ）成分のアルキル基の炭素数が１４〜１８で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が３〜８のポリオキシエチレンアルキルエーテルとエチレンオキサイドの平均付加モル数が１０〜３０のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とを予め混合してノニオン界面活性剤混合物を調製すると共に、（ｂ）成分の脂肪酸炭素数が７〜１１の脂肪酸のトリグリセライドと（ｄ）成分の香料とを予め混合溶解したトリグリセライド・香料混合物を調製し、これらノニオン界面活性剤混合物とトリグリセライド・香料混合物を他成分と混合することを特徴とする［１］記載の歯磨剤組成物の製造方法
を提供する。

本発明は、デキストラナーゼ等のグルカナーゼとノニオン界面活性剤と香料を含有する歯磨剤組成物において、香料による口腔内の刺激を抑え、かつ香り立ちを良好にすると共に、酵素の安定性を確保できるもので、各種剤型に調製して幅広く使用することができる。

本発明の歯磨剤組成物は、練歯磨、液状歯磨、液体歯磨等の歯磨類として調製できるもので、グルカナーゼ、特定のポリオキシエチレンアルキルエーテルと特定のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなるノニオン界面活性剤、脂肪酸炭素数が７〜１１の脂肪酸のトリグリセライド、香料０．５〜０．９質量％を含有し、上記脂肪酸のトリグリセライド／香料が質量比で０．１０〜０．４８であり、上記脂肪酸のトリグリセライドがカプセルに包埋されていないものである。

本発明で使用されるグルカナーゼとしては、口腔用組成物に慣用のもの、一般的には、多糖類の加水分解酵素が用いられ、デキストラナーゼ、ムタナーゼ等が挙げられる。中でも特にデキストラナーゼが歯垢形成抑制効果の点から好ましい。

前記デキストラナーゼとしては、ケトミウム属、ペニシリウム属、アスペルギルス属、スピカリア属、ラクトバチルス属、セルビブリオ属等に属する公知のデキストラナーゼ生成菌により公知の方法により得られるデキストラナーゼはもちろん、他の微生物により生産されるデキストラナーゼも使用することができる。

デキストラナーゼは、歯磨剤組成物１ｇ当たり０．５〜５００単位（ここで、１単位とはデキストランを基質として反応を行った場合、１分当たりグルコース１μｍｏｌに相当する遊離還元糖を生じる酵素量をいう）で、その配合量は例えば１００００単位／ｇのデキストラナーゼを用いた場合、歯磨剤組成中０．００５〜５質量％となることが好ましく、特に０．０１５〜２質量％であることがより好ましい。配合量が０．００５質量％未満であると満足な歯垢形成抑制効果が得られない場合があり、５質量％を超えると歯垢形成抑制効果は殆んど変化がなくなる場合がある。

本発明の歯磨剤組成物に配合されるポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、下記式（１）
Ｒ−Ｏ−（ＥＯ）_nＨ （１）
（Ｒは炭素数が１４〜１８のアルキル基、ｎは３〜８、ＥＯは酸化エチレンを表す。）
で示されるものが使用される。

上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、炭素数が１４〜１８、より好ましくは炭素数１８のアルキル基を有するもので、アルキル基の炭素数が１４未満では基材臭が強く、香り立ちが損なわれ、またアルキル基の炭素数が１８を超える場合には歯磨使用中に独特の異味・油っぽさが生じる問題がある。

また、炭素数１４〜１８のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルのエチレンオキサイドの平均付加モル数は３〜８、好ましくは５〜８の範囲である。平均付加モル数が３未満では、未反応アルコール等の異臭のため香り立ちが損なわれ、平均付加モル数が８を超えると酵素安定性の効果が低下する。

このようなポリオキシエチレンアルキルエーテルとして具体的には、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルが挙げられ、酵素安定性の点から特にポリオキシエチレンステアリルエーテルが好ましい。

上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量は、歯磨剤組成物全体の０．３〜３質量％、特に０．４〜１．５質量％が好ましい。配合量が０．３質量％未満では酵素安定性の効果が低い場合があり、３質量％を超えると独特のベタツキが発生し、使用感に問題が生じる場合がある。

次に、本発明におけるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、エチレンオキサイドの平均付加モル数が１０〜３０、好ましくは１５〜２５のものが使用される。平均付加モル数が１０モル未満では歯磨剤の外観が劣化し、平均付加モル数が３０モルを超える場合にはトリグリセライドの可溶化能が低下し、香り立ちが損なわれる。

上記ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の配合量は、歯磨剤組成物全体の０．４〜５質量％、特に０．５〜２質量％とすることが好ましい。配合量が０．４質量％未満では酵素安定性の効果が低い場合があり、５質量％を超えると独特の苦味が発現し、使用感に問題が生じる場合がある。

更に、上記したポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の配合比は、質量比で１：９〜９：１、特に３：７〜７：３の範囲とすることが望ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリオキシエチレン硬化ヒマシ油との配合比が１：９より小さいと充分な酵素安定性の効果が確保できない場合があり、配合比が９：１より大きいとやはり充分な酵素安定性の効果が確保できず、かつ歯磨剤としての発泡性が得られなくなる場合がある。

また、上記したポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の配合量は合計で、０．７〜６質量％、特に０．９〜３質量％となることが望ましい。配合量の合計が０．７質量％未満では充分な酵素安定性の効果が確保できない場合があり、６質量％を超えると香り立ちの低下、苦味などの使用感の問題を生じる場合がある。

本発明における脂肪酸炭素数が７〜１１の脂肪酸のトリグリセライドとしては下記式（２）
Ｒ¹Ｏ−ＣＨ₂−ＣＨ（ＯＲ²）−ＣＨ₂−ＯＲ³ （２）
（Ｒ¹、Ｒ²、Ｒ³は、Ｒ⁴ＣＯ−で表される。また、Ｒ⁴は炭素数が６〜１０のアルキル基である。）
で示されるものが使用される。

Ｒ¹、Ｒ²、Ｒ³は単一のものでも２種以上でも良いが、好ましくは炭素数が８の脂肪酸基（オクタン酸基）と炭素数が１０の脂肪酸基（デカン酸基）、特にトリグリセライド中の総脂肪酸基中での炭素数が８の脂肪酸基（オクタン酸基）と炭素数が１０の脂肪酸基（デカン酸基）の比率が１：９〜９：１の比率で存在するものがより好ましい。炭素数が１１を超える脂肪酸基の場合、歯磨剤に油脂独特の油っぽさを与えてしまう場合があり、また、炭素数が７未満の脂肪酸基の場合、口腔粘膜に刺激を与える場合がある。

また、本発明における香料による口腔内の刺激抑制及び香り立ちの向上効果を発現させるには、上記脂肪酸のトリグリセライドと香料が特定の比率で配合されることが必要である。具体的には上記脂肪酸のトリグリセライド／香料が質量比で０．１０〜０．４８、より好ましくは０．２３〜０．４６であることが望ましい。上記脂肪酸のトリグリセライド／香料が質量比で０．１０未満の場合には口腔内の刺激を抑える効果が低下する場合があり、０．４８を超える場合には香料が希釈されすぎるため逆に香り立ちを低下させる場合がある。

更に、本発明における脂肪酸炭素数が７〜１１の脂肪酸のトリグリセライドは、カプセルの被膜物質に包埋されることなく配合されることが必要であり、更に歯磨剤中に可溶化状態で存在することが好ましい。カプセルに包埋された状態では、歯磨剤中の界面活性剤などを固定化し、タンパク変性を抑制する効果や、また香料成分を希釈・分散する機能が得られないため、グルカナーゼ等の酵素安定性の向上、口腔内刺激の低減、香り立ちの向上が得られない。

また、本発明における脂肪酸のトリグリセライドは、単独で歯磨剤中に配合することもできるが、より好ましくは、香料と予め混合溶解した後に歯磨剤に配合することで、口腔内刺激の低減、香り立ちの向上効果がより顕著に発現される。

次に、本発明における香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料及び、これら天然香料の加工処理（前留部カット、後留部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等）した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、３−ｌ−メントキシプロパン−１，２−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、Ｎ−置換−パラメンタン−３−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。好ましくは、口腔内の刺激と香り立ちの点から、オレンジ油、レモン油、ライム油、マンダリン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、及び、これらを加工処理したものから選ばれる１種又は２種以上の香料の合計が香料組成中５〜５０質量％である。また、口腔内の刺激の点からペパーミント油、スペアミント油、ハッカ油、及び、これらを加工処理したものから選ばれる１種又は２種以上の香料の合計が香料組成中０〜５質量％にすることが好ましい。

香料の合計配合量は、歯磨剤組成中に０．５〜０．９質量％、より好ましくは０．５〜０．７質量％使用する。０．５質量％未満の場合には、充分な香り立ちが発現せず、０．９質量％を超える場合には、香料による口腔内の刺激が強くなり、刺激に敏感な子供などにとって刺激が強いものになってしまう。

上記香料は、更にエタノール、プロピレングリコール等の溶剤を適宜配合した香料組成物として用いることができる。なお、本発明において、香料とは、これら溶剤を含まない香料素材、その混合物をいい、香料組成物とはこれに溶剤を配合したものをいう。

本発明の歯磨剤組成物は、通常、研磨剤、湿潤剤、水を含有するが、その剤型に応じ、上記必須成分に加えて任意成分としてその他の添加剤を配合できる。

練歯磨の場合は、例えば研磨剤、湿潤剤、粘結剤、上記以外の界面活性剤、甘味剤、防腐剤、グルカナーゼ以外の各種有効成分、着色剤等を配合でき、これら成分と水とを混合して製造することができる。

研磨剤としては、シリカゲル、沈降シリカ、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、第２リン酸カルシウム２水和物及び無水和物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第３リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、第３リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、第４リン酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤等が挙げられるが、特にシリカゲル、沈降シリカ、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤が好ましい。
これらの研磨剤の配合量は、歯磨剤組成物全体の２〜４０質量％、特に１０〜３０質量％とすることが好ましい。

湿潤剤としては、ソルビット、グリセリン、プロピレングリコ−ル、キシリット、マルチット、ラクチット等が挙げられるが、特にソルビット、キシリットが好ましい。
これらの配合量は、歯磨剤組成物全体の５〜５０質量％、特に２０〜４５質量％とすることが好ましい。

粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、グアガム、アルギン酸ナトリウム、カチオン化セルロース、モンモリロナイト、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
これらの配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量配合することができる。

界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、上記成分（ｃ）以外の非イオン性界面活性剤等を配合し得、具体的にはラウリル硫酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、Ｎ−アシルサルコシネート、Ｎ−アシルグルタメート、２−アルキル−Ｎ−カルボキシメチル−Ｎ−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、Ｎ−アシルタウレート、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、プルロニック等が挙げられ、特に歯磨剤の発泡性の点からラウリル硫酸ナトリウムが好ましい。これら界面活性剤の配合量は、歯磨剤組成物全体の０．４〜３質量％、特に０．６〜２質量％の範囲であることが好ましい。

甘味剤としては、サッカリンナトリウム等、防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。

グルカナーゼ以外の各種有効成分としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化第一錫、フッ化ストロンチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、アスコルビン酸、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸及びその塩類、塩化ナトリウム、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、酢酸ｄｌ−トコフェノール、α−ビサボロール、イソプロピルメチルフェノール、クロロヘキシジン塩類、塩化セチルピリジニウム、アズレン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト、アミラーゼ、メトキシエチレン、無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エピジヒドロコレステリン、塩化ベンゼトニウム、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、トウキ軟エキス、オウバクエキス、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物が挙げられる。
なお、上記有効成分は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量配合することができる。

着色剤としては、青色１号、黄色４号、二酸化チタン等を通常量で配合することができる。

本発明では、上記特定のポリオキシエチレンアルキルエーテルと特定のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とを予め混合分散させて界面活性剤混合物を調製し、この界面活性剤混合物と、他成分を用いて、常法にて調製することができる。上記界面活性剤混合物を予め調製することなくポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合した場合は、著しく泡立ちが抑えられること、及び、製剤中に不溶性ツブが発生し、外観が劣化する場合がある。また上述したように、脂肪酸炭素数が７〜１１の脂肪酸のトリグリセライドと香料も、予め混合したものを他成分と配合することが好ましい。

なお、上記特定のポリオキシエチレンアルキルエーテルと特定のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油との混合は、４０〜８０℃で加熱することで均一な混合物として調製でき、室温ではろう状の固形物として保管できる。また、上記脂肪酸のトリグリセライドと香料との混合は、常温で均一な混合物として調製できる。

本発明の歯磨剤組成物を収容する容器の材質は特に制限されず、通常、歯磨剤組成物に使用される容器を使用できる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等のプラスチック容器等が使用できる。

以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。

下記表１〜３に示す組成の歯磨剤組成物を下記製造法により調製した。なお、下記実施例において、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は予め所定量秤量し、６０℃で混合し、得られた界面活性剤混合物として用いた。また、脂肪酸トリグリセライドと香料とを予め混合させる場合は、予め所定量秤量し、室温で混合した混合物として用いた。

（製造法）
＜１＞精製水中に粘結剤、プロピレングリコール、ノニオン界面活性剤、酵素を除く水溶
性成分を常温で混合溶解させたＡ相を調製する。
＜２＞プロピレングリコール中に粘結剤を常温で分散させたＢ相を調製する。
＜３＞撹拌中のＡ相の中にＢ相を添加混合し、更にノニオン界面活性剤混合物を６０℃で
添加混合し、Ｃ相を調製する。
＜４＞Ｃ相中に、脂肪酸のトリグリセライドと香料（又は脂肪酸のトリグリセライドと香
料との混合物）、酵素、研磨剤等の水溶性成分以外の成分を１．５Ｌニーダー（石
山商店製）を用いて常温で混合し、減圧による脱泡を行い、歯磨剤組成物を得た。

表１〜３に示した歯磨剤組成物をポリエチレン製のチューブ（ＰＣクリニカライオンチューブ）に充填し、４０℃で１ヵ月保存試験を実施し、酵素（デキストラナーゼ）の残存活性を下記方法により測定した。
デキストラナーゼ活性は、歯磨１．０ｇを採取し、１０ｍＭリン酸緩衝液（ｐＨ７）２５ｍｌを加えて混合分散し、遠心上清１ｍｌを酵素反応液とし、２％デキストラン溶液２ｍｌを酵素基質とし、４０℃で２０分間反応を行い、分解した還元糖量をソモギーネルソン法にて測定し、以下の基準で評価した。
（酵素安定性の評価基準）
◎：酵素の残存活性（対製造直後の酵素活性）９０％以上
○：酵素の残存活性（対製造直後の酵素活性）８０％以上９０％未満
△：酵素の残存活性（対製造直後の酵素活性）６０％以上８０％未満
×：酵素の残存活性（対製造直後の酵素活性）６０％未満

また、表１〜３に示した歯磨剤組成物について、１０名の被験者により、適量を歯刷子にとり、約３分間ブラッシングさせた。歯磨後に各被験者に歯磨剤の香り立ち及び口腔内の刺激について以下の基準で官能評価し、平均値を求めた。
なお、対照サンプルとして比較例１のサンプルを使用し、これを基準とし評価を行った。
香り立ち
（評点）
３点：対照サンプルと比較して香り立ちが良好
２点：対照サンプルと比較して香り立ちがやや良好
１点：対照サンプルと比較して香り立ちが同等、又は対照サンプルと比較して香り立
ちが悪い
（香り立ち評価基準）
◎：香り立ち平均点 ２．０点以上
○：香り立ち平均点 １．５点以上２．０点未満
×：香り立ち平均点 １．５点未満
口腔内の刺激の程度
（評点）
３点：対照サンプルと比較して刺激が弱い
２点：対照サンプルと比較して刺激がやや弱い
１点：対照サンプルと比較して刺激が同等、又は対照サンプルと比較して刺激が強い
（口腔内の刺激評価基準）
◎：口腔内の刺激平均点 ２．０点以上
○：口腔内の刺激平均点 １．５点以上２．０点未満
×：口腔内の刺激平均点 １．５点未満
以下に結果を示す。なお、表１〜４中の配合量を表す数値はいずれも質量％である。

＊カプセル化
カプセル内容液として、香料組成物（［表４］の香料Ｊ）７５質量％、成分（ｂ）２５質量％、被膜形成物質として、寒天５０質量％、グリセリン４５質量％、精製水５質量％を用い、滴下法（特開平８−３２５１２７号公報記載の寒天粒子製造例１の方法参照）によりカプセル（親油成分包埋寒天粒子）を製造した。
このカプセル（被膜率［カプセル全質量中の被膜形成物質の質量％］２０質量％、平均粒子径１０００μｍ）を、歯磨組成中に１．０質量％配合した。

表１，２から明らかのように、実施例１〜１０においてデキストラナーゼと特定のポリオキシエチレンアルキルエーテルと特定のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び脂肪酸炭素数が７〜１１の脂肪酸のトリグリセライドを配合した歯磨剤組成物は、酵素の安定性が良好であると共に、口腔内の刺激が低減し、かつ香り立ちも良好であった。一方、特定のポリオキシエチレンアルキルエーテル、特定のポリオキシエチレングリコール、脂肪酸炭素数が７〜１１の脂肪酸のトリグリセライドを少なくとも一つ含まない組成は、酵素の安定性、香料の香り立ち、口腔内の刺激の少なくともいずれかの点で充分な効果が発揮されていない。

更に、表３から明らかのようにいずれの香料組成によっても、本発明の効果は発現する。

Claims (2)

1. （ａ）グルカナーゼ、（ｂ）脂肪酸炭素数が７〜１１の脂肪酸のトリグリセライド、（ｃ）アルキル基の炭素数が１４〜１８で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が３〜８のポリオキシエチレンアルキルエーテルとエチレンオキサイドの平均付加モル数が１０〜３０のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなるノニオン界面活性剤、（ｄ）香料を０．５〜０．９質量％含有し、成分（ｂ）／成分（ｄ）が質量比で０．１０〜０．４８でありかつ成分（ｂ）がカプセルに包埋されていないことを特徴とする歯磨剤組成物。
2. 請求項１記載の歯磨剤組成物を製造する方法であって、（ｃ）成分のアルキル基の炭素数が１４〜１８で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が３〜８のポリオキシエチレンアルキルエーテルとエチレンオキサイドの平均付加モル数が１０〜３０のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とを予め混合してノニオン界面活性剤混合物を調製すると共に、（ｂ）成分の脂肪酸炭素数が７〜１１の脂肪酸のトリグリセライドと（ｄ）成分の香料とを予め混合溶解したトリグリセライド・香料混合物を調製し、これらノニオン界面活性剤混合物とトリグリセライド・香料混合物を他成分と混合することを特徴とする請求項１記載の歯磨剤組成物の製造方法。