以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態(第1〜第6の実施形態)について詳説する。
〔第1の実施形態〕
まず、本発明に係る画像形成装置の一実施形態であるインクジェット記録装置について説明する。図1は、インクジェット記録装置の概略を示す全体構成図である。図1に示すように、このインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数の記録ヘッド12K、12C、12M、12Yを有する印字部12と、各記録ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のインク吐出面(ノズル面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置されている。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラー31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のインク吐出面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が平面をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラー31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のインク吐出面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバー34が設けられており、この吸着チャンバー34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラー31、32の少なくとも一方にモータ(不図示)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1において、時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は、図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラー線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いる態様も考え
られるが、印字領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラーが接触するので、画像が滲み易いという問題がある。従って、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹きつけ、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている。印字部12を構成する各記録ヘッド12K、12C、12M、12Yは、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の搬送方向(紙搬送方向)に沿って上流側(図1の左側)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した記録ヘッド12K、12C、12M、12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各記録ヘッド12K、12C、12M、12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部12によれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する記録ヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各記録ヘッド12K、12C、12M、12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは図示を省略した管路を介して各記録ヘッド12K、12C、12M、12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各記録ヘッド12K、12C、12M、12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)
がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列とからなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色の記録ヘッド12K、12C、12M、12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹きつける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラー45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
このようにして生成されたプリント物は、排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(不図示)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に、本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成されている。また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
次に、本発明に係る液滴吐出ヘッドの一実施形態である記録ヘッドの構造について説明する。尚、インク色ごとに設けられている各記録ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって記録ヘッドを示すものとする。
図2は、記録ヘッド50の構造例を示す平面透視図である。記録紙面上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、記録ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例の記録ヘッド50は、図2に示したように、インク滴の吐出口であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)53を千鳥でマトリクス状(2次元的)に配置させた構造を有し、これにより、記録ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給インクの流入口(供給口)54が設けられている。
図3は1つの液滴吐出素子(1つのノズル51に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図2中3−3線に沿う断面図)である。また、図4はノズル周辺部の拡大断面図である。これらの図に示すように、記録ヘッド50のインク吐出面50aはノズルプレート60(60A)によって構成されている。ノズルプレート60には複数の円筒状のノズル51が形成されるとともに、各ノズル51が形成される位置にそれぞれノズル径より大径のザグリ部(凹部)62がノズルプレート表面60a側(インク吐出面50a側)に開口するように形成されている。なお、ノズルプレート裏面60b側には、各ノズル51が形成される位置にザグリ部62と略同径の凸部64がそれぞれ形成されている。
このように各ノズル51のインク吐出側開口周辺にノズルプレート表面60aより凹んだザグリ部62が形成されたノズルプレート60によれば、後述するワイピング動作時や紙詰まり時においてもノズル51(特に、インク吐出側開口)の破損や変形を防ぐことができ、安定吐出が可能となる。なお、本実施形態においては、ザグリ部62及び凸部64の平面形状はノズル形状と同様の円形状に構成されているが、これに限定されず、例えば、多角形状や楕円形状であってもよい。本実施形態のノズルプレート60(60A)の製造方法は後で詳説する。
ノズルプレート裏面60b側に接合される流路プレート66には、圧力室52とノズル51の連通路(ノズル流路)68の一部を構成する貫通孔68aが形成されている。本実施形態において、貫通孔68aの内径をD1、凸部64の外径(R部を含む最大外径)をD2とするとき、図4に示すように、D1>D2を満たすように構成されていることが好ましい。例えば、図5に示すように、D1<D2の場合には流路プレート66とノズルプレート60の接合が凸部64で行われるので、流路プレート66とノズルプレート60の間に空間が生じてしまい、接合時の荷重がかからずに不安定な接合状態となる。このため、図4に示すように、D1>D2となるように構成することで、流路プレート66とノズルプレート60の接合が凸部64以外で行われるようになり、流路プレート66とノズルプレート60の安定接合を実現することができる。また、余剰接着剤がノズル51まで流れだすのを凸部64で防ぐこともできるという効果も得られる。
圧力室52は、ノズル流路68を介してノズル51に連通するとともに、圧力室52の一端に形成される供給口54を介して共通流路55に連通する。また、共通流路55はインク供給源たるインクタンク(不図示)に連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
圧力室52の一壁面(図3において上壁面)は振動板56で構成されており、振動板56上の圧力室52に対応する位置(即ち、振動板56を挟んで圧力室52に対向する位置)には、個別電極57を備える圧電素子58が設けられている。なお、振動板56が圧電素子58に対する共通電極を兼ねている。また、振動板56上には配線基板70が接合されており、配線基板70に形成される配線(不図示)を介して圧電素子58に所定の駆動信号が供給される。
かかる構成により、圧電素子58に所定の駆動信号が供給されると、圧電素子58の変形に応じて圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力変化により圧力室52内のインクが加圧され、その圧力室52に連通するノズル51からインク滴が吐出される。インク吐出後、駆動信号の供給が解除されると、新しいインクが共通流路55から供給口54を通って圧力室52に供給される。
なお、本実施形態では、ピエゾ素子に代表される圧電素子58の変形によってインク液滴を飛ばす方法が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式には限定されず、ピエゾ方式に代えて、ヒータ等の発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式等でもよい。
図6はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。同図において、インクタンク80は記録ヘッド50にインクを供給する基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インクタンク80の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。なお、図6のインクタンク80は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
インクタンク80と記録ヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ82が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。図6には示さないが、記録ヘッド50の近傍又は記録ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、記録ヘッド50の内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズル近傍のインク粘度の上昇、乾燥を防止するための手段としてのキャップ84と、記録ヘッド50のインク吐出面50aの清掃手段としてのクリーニングブレード86とが設けられている。これらキャップ84及びクリーニングブレード86を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によって記録ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から記録ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ84は、図示せぬ昇降機構によって記録ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ84を所定の上昇位置まで上昇させ、記録ヘッド50に密着させることにより、インク吐出面50aをキャップ84で覆う。
クリーニングブレード86は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構により記録ヘッド50のインク吐出面50aに摺動可能である。インク吐出面50aにインク滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード86をインク吐出面50aに摺動させる、いわゆるワイピング動作を行うことでインク滴等を拭き取る。
印字中又は待機中において、特定のノズルの使用頻度が低くなり、ノズル近傍のインク粘度が上昇した場合、その劣化インクを排出すべくキャップ84に向かって予備吐出が行われる。
また、記録ヘッド50内(圧力室52内)のインクに気泡が混入した場合、記録ヘッド50にキャップ84を当て、吸引ポンプ87で記録ヘッド50内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク88へ送液する。この吸引動作は、初期のインクの記録ヘッド50への装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。
記録ヘッド50は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用のアクチュエータ(圧電素子58)が動作してもノズル51からインクが吐出しなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(圧電素子58の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、インク受けに向かって圧電素子58を動作させ、粘度が上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。また、インク吐出面50aの清掃手段として設けられているクリーニングブレード86等のワイパーによってインク吐出面50aの汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作(ワイピング動作)によってノズル内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
また、ノズル51や圧力室52に気泡が混入したり、ノズル近傍のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなるため、以下に述べる吸引動作を行う。
すなわち、ノズル51や圧力室52のインク内に気泡が混入した場合、或いはノズル近傍のインク粘度があるレベル以上に上昇した場合には、圧電素子58を動作させてもノズルからインクを吐出できなくなる。このような場合、記録ヘッド50のインク吐出面50aに、圧力室52内のインクをポンプ等で吸い込む吸引手段としてキャップ84を当接させて、気泡が混入したインク又は増粘インクを吸引する動作が行われる。
次に、本発明に係る第1の実施形態としてのノズルプレート60Aの製造方法について説明する。図7はノズルプレート60Aを製造するための工程順序を示した図である。また、図8は図7に示した各工程を説明するための図である。以下、図7に従って、図8を参照しながら各工程を説明する。
まず、マスク作製工程(ステップS102)として、図8(a)に示すように、透明基板100及び不透明金属膜102から成る露光用マスク104を作製する。具体的には、紫外光を透過する材料(例えば、石英、ガラスなど)で構成される透明基板100を用意し、ウェットエッチングやドライエッチング等の方法で透明基板100に凸部100aを形成する。凸部100aはノズルプレート60Aのザグリ部62A(図4参照)を形成するための型となるものであり、所定のザグリ形成位置にそれぞれ凸部100aを形成する。なお、凸部100aを有する透明基板100をあらかじめ用意してもよい。続いて、透明基板100の凸部100a側に不透明金属膜102を成膜し、ノズルパターンに従ってパターニングする。不透明金属膜102は紫外光を遮断する金属膜であり、例えば、Cr膜が好適である。不透明金属膜102の成膜方法としては、スパッタリング、真空蒸着などの各種方法を用いることができる。また、パターニング方法として、フォトリソグラフィ法を用いることにより、不透明金属膜102を高精度に形成できる。なお、不透明金属膜102の開口領域102aは凸部100aの中央部(ノズル形成位置)に形成され、ノズル51のインク吐出側の開口形状と同一形状、即ち、円形状に構成される。このようにして凸部100aを有する透明基板100及び不透明金属膜102から成る露光用マスク104を得ることができる。なお、本製造方法においては露光用マスク104の再利用が可能であり、既に露光用マスク104が作製されている場合には本工程(マスク作製工程)は不要である。
次に、レジスト形成工程(ステップS104)として、図8(b)に示すように、露光用マスク104上にレジスト(感光性樹脂)106を形成する。具体的には、露光用マスク104の不透明金属膜102側にスピンコーター等によりネガ型のレジスト(ネガレジスト)106を塗布する。レジスト106の厚さはノズルプレート60Aの厚さに対応し、少なくとも凸部100a上のレジスト106の厚さがノズルプレート60Aの厚さよりも厚くなるように構成する。
次に、露光工程(ステップS106)として、図8(c)に示すように、露光用マスク104上のレジスト106に対して露光を行う。具体的には、露光用マスク104に対し垂直な紫外光(UV光)を露光用マスク104の透明基板100側から不透明金属膜102を介してレジスト106に照射する。これにより、図示するように、不透明金属膜102の開口領域102aに対応する円柱状のレジスト領域106aが感光される。なお、透明基板100側から照射された紫外光は不透明金属膜102で遮断されるため、他のレジスト領域は感光されない。続いて、現像工程(ステップS108)として、レジスト106の現像を行うと、図8(d)に示すように、露光用マスク104上には円柱状のレジスト106aがパターニングされた状態となる。
次に、電鋳工程(ステップS110)として、図8(e)に示すように、不透明金属膜102上にNi電鋳法により金属層(電鋳層)108を形成する。そして最後に、剥離工程(ステップS112)として、有機溶媒等によりレジスト106aの除去を行った後、露光用マスク104を金属層108から剥離する。これにより、図8(f)に示すように、金属層108から成るノズルプレート60Aを得ることができる。なお、このようにして得られたノズルプレート60Aを、図3や図4に示したように、流路プレート66に接合することによって本実施形態の記録ヘッド50を得ることもできる。
ノズルプレート60Aには、レジスト106aの外部形状に対応する円筒状(ストレート状)のノズル51Aが形成されるとともに、透明基板100の凸部100aの外部形状に対応するザグリ部62Aが形成される。また、ノズルプレート60Aのインク吐出側の面は金属層108の不透明金属膜102との接合面に相当する。また、金属層108から剥離された露光用マスク106は再利用可能である。
本実施形態において、現像工程後、撥液層形成工程を行ってから電鋳工程を行うようにしてもよい。具体的には、図9(a)に示すように、不透明金属膜102上に撥液めっきで撥液層110を形成してから、撥液層110上にNi電鋳法で金属層108を形成する。これにより、図9(b)に示すように、金属層108及び撥液層110から成るノズルプレート60A′を得ることができる。金属層108と撥液層110を一連の工程で形成することができ、ノズルプレート60Aの完成後に撥液処理を行う場合に比べて工数を減らすことができる。また、撥液めっきとしてフッ素樹脂を含有する複合めっきを用いる場合には剥離工程後に加熱処理を行うことが好ましく、撥液性を高めることができる。また、撥液めっきで撥液性能が不十分な場合はノズルプレート作製後に別な撥液膜を形成するようにしてもよい。
また、図10に示すように、電鋳工程後、金属層108上に流路プレート66を接合してから剥離工程を行うようにしてもよい。また、流路プレート66上に他のプレート部材(圧力室52や共通流路55の構成部材)を更に接合してから剥離工程を行うようにしてもよい。これにより、金属層108の厚さが薄い場合でもハンドリングが容易になる。また、ダミー基板を用いて貼り替える必要もなく工数が減る。
また、流路プレート66とノズルプレート60Aの安定接合を実現するために、図4で説明したように、流路プレート66に形成される貫通孔68aの内径D1は凸部64の外径D2より大きく構成されていることが好ましい(即ち、D1>D2)。これにより、流路プレート66とノズルプレート60Aの接合性が高まるとともに、凸部64によって余剰接着剤がノズル51A側に流れ出すのを防ぐことができる。
本実施形態に係るノズルプレート60Aの製造方法によれば、凸部100aを有する透明基板100及び不透明金属膜102から成る露光用マスク104を用いることによって、ノズル51A及びザグリ部62Aを同時に一括形成することができるので、工数が減少し、生産性が向上する。また、露光用マスク104は再利用することができるので、ノズル51Aやザグリ部62Aを再現性良く高精度に形成することが可能となる。
また、ノズルプレート60Aのインク吐出側の面は金属層108の不透明金属膜102との接合面に相当するので、不透明金属膜104のパターニング精度に応じてノズル51A(特に、インク吐出側開口部分)の高精度化が可能であり、安定吐出を実現することができる。
〔第2の実施形態〕
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。以下、第1の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
図11は、第2の実施形態としてのノズルプレート60Bの製造工程を説明するための図である。本実施形態のノズルプレート60Bには、図11(f)に示すように、第1の実施形態と同様のノズル51B及びザグリ部62Bが形成されるとともに、これらの周辺部に表裏面にそれぞれ開口する2つの溝部220、222が形成される。以下、ノズルプレート60Bの製造方法について図11を参照しながら説明する。
まず、マスク作製工程として、図11(a)に示すように、凸部200aを有する透明基板200上に、第1の実施形態と同様に、凸部200aの中央部(ノズル形成位置)にノズル形状に対応する開口領域202aが形成されるように不透明金属膜202をパターニングする。この際、凸部200aの周辺領域の一部には、不透明金属膜202の代わりに半透過膜210(本発明の透過部に相当)を形成する。半透過膜210は、高屈折率材料と低屈折材料とを交互に積層形成した、いわゆる光学多層膜からなるものである。積層される高屈折材料と低屈折材料の膜厚を調整することにより、所定の波長で、所望の透過率を得ることができる。高屈折材料としては、Al2O3(酸化アルミニウム)や、TiO2(酸化チタン)が用いられ、低屈折材料としては、SiO2(酸化シリコン)やMgF2(フッ化マグネシウム)が用いられる。半透過膜210は、これらの材料をスパッタリングや真空蒸着といった手法により交互に成膜することにより形成する。本実施形態では、露光光として用いられる紫外光の透過率が30%となるような材料及び膜厚を選定して構成されている。このようにして透明基板200、不透明金属膜202、及び半透過膜210から成る露光用マスク204を得ることができる。
次に、レジスト形成工程として、図11(b)に示すように、露光用マスク204の不透明金属膜202側にスピンコーター等によりネガ型のレジスト(ネガレジスト)206を塗布する。続いて、露光工程として、図11(c)に示すように、露光用マスク204に対し垂直な紫外光(UV光)を露光用マスク204の透明基板200側から照射する。これにより、不透明金属膜202の開口領域202aに対応する円柱状のレジスト領域206aは開口領域202aを通過した紫外光によって感光される。これに対し、半透過部210においては紫外光を所定比率(本実施形態では30%)しか透過しないため、照射された紫外光はレジスト206を貫通することはなく、半透過部210の透過率に応じた深さ(高さ)の円柱状のレジスト領域206bが感光される。なお、他のレジスト領域は不透明金属膜202により紫外光が遮断されるため感光されない。その後、現像工程として、レジスト206の現像を行うと、図11(d)に示すように、露光用マスク204上に高さの異なる円柱状のレジスト206a、206bがパターニングされた状態となる。
次に、電鋳工程として、図11(e)に示すように、不透明金属膜202上にNi電鋳法で金属層208を形成する。この際、金属層208にはレジスト206bの上方に凹部208aが形成される。そして最後に、剥離工程として、有機溶媒等によりレジスト206a、206bの除去を行った後、露光用マスク204を金属層208から剥離すると、図11(f)に示すように、金属層208から成るノズルプレート60Bを得ることができる。このノズルプレート60Bには、第1の実施形態と同様にレジスト206a及び凸部200aの外部形状にそれぞれ対応するノズル51B及びザグリ部62Bが形成されるとともに、レジスト206bの外部形状に対応する第1の溝部220がインク吐出側に開口するように形成され、また、凹部208aに相当する第2の溝部222が第1の溝部220とは反対側に開口するように形成される。
本実施形態に係るノズルプレート60Bの製造方法によれば、半透過膜210が一部に形成された露光用マスク204を用いることで、ノズル51Bやザグリ部52Bとともに、それぞれ反対側に開口する第1の溝部220、及び第2の溝部224を同時に一括形成することが可能であり、工数を削減することができる。インク吐出側に開口する第1の溝部220は、ノズルプレート表面60aに付着したインクのトラップ溝として機能し、ワイピング動作時のインク除去性を向上させることができる。また、第1の溝部220とは反対側に開口する第2の溝部222は、余剰接着剤の逃げ溝として機能し、ノズルプレート60Bと流路プレート66との安定した接合が可能となる。また、第2の溝部222がノズル流路68内部に配置されるように構成しておくことで、余剰接着剤を要因とする吐出不良を防止することができる。
〔第3の実施形態〕
次に、本発明に係る第3の実施形態について説明する。以下、既述した各実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
図12は、第3の実施形態としてのノズルプレート60Cの製造工程を説明するための図である。本実施形態のノズルプレート60Cには、図12(f)に示すように、第1の実施形態と同様のノズル51C及びザグリ部62Cが形成されるとともに、これらの周辺部に貫通孔320が形成される。以下、ノズルプレート60Cの製造方法について図12を参照しながら説明する。
まず、マスク作製工程として、図12(a)に示すように、凸部300aを有する透明基板300上に、第1の実施形態と同様にして不透明金属膜302をパターニングする。この際、凸部300aの中央部(ノズル形成位置)に開口領域302aを形成するだけでなく、凸部300a周辺領域の一部に開口領域302b(本発明の透過部に相当)を形成する。このようにして透明基板300及び不透明金属膜302から成る露光用マスク304を得ることができる。
次に、レジスト形成工程として、図12(b)に示すように、露光用マスク304の不透明金属膜302側にスピンコーター等によりネガ型のレジスト(ネガレジスト)306を塗布する。続いて、露光工程として、図12(c)に示すように、露光用マスク304に対し垂直な紫外光(UV光)を露光用マスク304の透明基板300側から照射する。これにより、不透明金属膜302の開口領域302a、302bにそれぞれ対応する円柱状のレジスト領域306a、306bは、開口領域302a、302bを通過した紫外光によってそれぞれ感光される。なお、他のレジスト領域は不透明金属膜302により紫外光が遮断されるため感光されない。その後、現像工程として、レジスト306の現像を行うと、図12(d)に示すように、露光用マスク304上に円柱状のレジスト306a、306bがパターニングされた状態となる。
次に、電鋳工程として、図12(e)に示すように、不透明金属膜302上にNi電鋳法で金属層308を形成する。そして最後に、剥離工程として、有機溶媒等によりレジスト306a、306bの除去を行った後、露光用マスク304を金属層308から剥離すると、図12(f)に示すように、金属層308から成るノズルプレート60Cを得ることができる。このノズルプレート60Cには、第1及び第2の実施形態と同様にレジスト306a及び凸部300aの外部形状にそれぞれ対応するノズル51C及びザグリ部62Cが形成されるとともに、レジスト306bの外部形状に対応する円筒状の貫通孔320が形成される。
本実施形態に係るノズルプレート60Cの製造方法によれば、ノズル51Cやザグリ部62Cとともに、貫通孔320を同時に一括形成することが可能であり、工数を削減することができる。また、ノズルプレート60Cの表裏面を貫通する貫通孔320はインク吐出側ではインクのトラップ溝として機能するとともに、その反対側では余剰接着剤の逃げ溝として機能するので、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
〔第4の実施形態〕
次に、本発明に係る第4の実施形態について説明する。以下、既述した各実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
図13は、第4の実施形態としてのノズルプレート60Dの製造工程を説明するための図である。本実施形態のノズルプレート60Dには、図13(f)に示すように、インク吐出側に向かって先細となるテーパ状のノズル51Dとザグリ部62Dが形成される。以下、ノズルプレート60Dの製造方法について図13を参照しながら説明する。
まず、マスク作製工程として、図13(a)に示すように、凸部400aを有する透明基板400及び不透明金属膜402から成る露光用マスク404を作製する。次に、レジスト形成工程として、図13(b)に示すように、露光用マスク404の不透明金属膜402側にスピンコーター等によりネガ型のレジスト(ネガレジスト)406を塗布する。ここまでの工程は第1の実施形態と同様である。
次に、露光工程として、図13(c)に示すように、露光用マスク404の透明基板400側から紫外光を照射する際、紫外光の照射方向に対して露光用マスク404及びレジスト406から成る基板410を斜めの所定角度θ〔度〕に傾斜させた状態で、基板410に垂直な軸Pを中心として基板410を回転させながら行う。このような傾斜回転露光を行うことにより、基板410の傾斜角度θに応じたテーパ柱状のレジスト領域406aが感光される。なお、他のレジスト領域は不透明金属膜402により紫外光が遮断されるため感光されない。その後、現像工程として、レジスト406の現像を行うと、図13(d)に示すように、露光用マスク404上にテーパ柱状のレジスト406aがパターニングされた状態となる。
次に、電鋳工程として、図13(e)に示すように、不透明金属膜402上にNi電鋳法で金属層408を形成する。そして最後に、剥離工程として、有機溶媒等によりレジスト406aの除去を行った後、露光用マスク404を金属層408から剥離すると、図13(f)に示すように、金属層408から成るノズルプレート60Dを得ることができる。このノズルプレート60Dには、レジスト406aの外部形状に対応するテーパ状のノズル51Dと、凸部400aの外部形状に対応するザグリ部62Dとが形成される。
本実施形態に係るノズルプレート60Dの製造方法によれば、露光工程において上述した傾斜回転露光を行うことにより、ザグリ部62Dとともにインク吐出側に向かって先細となるテーパ状のノズル51Dを同時に一括形成することができる。また、このようなテーパ状のノズル51Dでは、インクに対する流体抵抗が低減し、リフィル速度も向上するので、高粘度インクによる高周波吐出を実現することが可能になる。また、傾斜回転露光における露光条件(紫外線強度、傾斜角度、回転速度など)を制御することで、任意のテーパ角度のノズル形状を容易に実現することができる。
〔第5の実施形態〕
次に、本発明に係る第5の実施形態について説明する。以下、既述した各実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
図14は、第5の実施形態としてのノズルプレート60Eの製造工程を示した説明図である。本実施形態のノズルプレート60Eには、図14(g)に示すように、変形テーパ状のノズル51E、及びザグリ部62Eが形成される。以下、ノズルプレート60Eの製造方法について図14を参照しながら説明する。
まず、マスク作製工程として、図14(a)に示すように、凸部500aを有する透明基板500及び不透明金属膜502から成る露光用マスク504を作製する。次に、レジスト形成工程として、図14(b)に示すように、露光用マスク504の不透明金属膜502側にスピンコーター等によりネガ型のレジスト(ネガレジスト)506を塗布する。ここまでの工程は第1の実施形態と同様である。
次に、第1の露光工程として、図14(c)に示すように、露光用マスク504の透明基板500側から紫外光を照射する際、紫外光の照射方向に対して露光用マスク504及びレジスト506から成る基板510を斜めの所定角度θ1〔度〕に傾斜させた状態で、基板510に垂直な軸Pを中心として基板510を回転させながら行う。このような傾斜回転露光を行うことにより、第4の実施形態と同様に、紫外光の照射方向に対する基板510の傾斜角度θ1に応じたテーパ状のレジスト領域506aが感光される。
次に、第2の露光工程として、図14(d)に示すように、紫外光の照射方向に対する基板510の傾斜角度をθ1〔度〕からθ2〔度〕(但し、θ2<θ1)に変更し、基板520の回転を停止した状態で露光用マスク504の透明基板500側から紫外光を照射する。このような傾斜露光を行うことにより、紫外光の照射方向に対する基板510の傾斜角度θ2に応じた第1の露光工程で感光されたレジスト領域506aの外側の一部領域508bが感光される。なお、第2の露光工程は、第1の露光工程の前に行ってもよいし、第1の露光工程の途中で行ってもよい。
次に、現像工程として、レジスト506の現像を行うと、図14(e)に示すように、露光用マスク506上には、変形テーパ状のレジスト506cがパターニングされた状態となる。なお、レジスト506c形状はレジスト508a、508bを結合した形状に相当する。このようなレジスト508cの側壁面は、テーパ角度θ1′〔度〕で規定される第1の傾斜面512と、テーパ角度θ2′〔度〕(但し、θ2′<θ1′)で規定される第2の傾斜面514とから構成されている。また、レジスト506cの上面形状は、同図の上段に示すように、第2の傾斜面514側が突起状となった変形円形状(或いは、変形楕円状)となる。なお、レジスト506cの下面形状は、特に図示しないが不透明金属膜502の開口領域502aと同様の円形状となる。
次に、電鋳工程として、図14(f)に示すように、不透明金属膜502上にNi電鋳法で金属層508を形成する。そして最後に、剥離工程として、有機溶媒等によりレジスト506cの除去を行った後、露光用マスク504を金属層508から剥離すると、図14(g)に示すように、金属層508から成るノズルプレート60Eを得ることができる。
このノズルプレート60Eには、凸部500aの外部形状に対応するザグリ部62Eとともに、レジスト506cの外部形状に対応し、その内壁面がテーパ角度θ1′で規定される第1の傾斜面516及びテーパ角度θ2′で規定される第2の傾斜面518より構成されるノズル51Eが形成される。ノズル51Eのインク供給側開口の平面形状は、同図の上段に示すように、第2の傾斜面518側が突起状となった変形円形状(或いは、変形楕円状)となる。一方、ノズル51Eのインク吐出側開口の平面形状は、同図の下段に示すように、不透明金属膜502の開口領域502aに対応する円形状となる。このようにノズル51Eはノズル軸に対して軸対象でない形状となり、また、同図の中段に示したノズルプレート60Eの断面(ノズル対称面)に対して面対称な形状となる。
このように異なるテーパ角度θ1′、θ2′でそれぞれ規定される第1及び第2の傾斜面516、518によって内壁面が構成される変形テーパ状のノズル51Eを備えたノズルプレート60Eを用いることにより、次のような効果を得ることができる。
例えば、図15に示すノズルプレート60Eの断面(ノズル対称面)と紙搬送方向が平行になるように構成される場合、ノズル形状の誤差によって各ノズル51E-1、51E-2の吐出方向が紙搬送方向にばらつくことはあっても、紙搬送方向に垂直な方向(紙面に対して表裏方向)へのばらつきを抑えることが可能となる。即ち、各ノズル51E-1、51E-2の吐出方向のばらつきを同一方向に限定することができるようになる。また、紙搬送方向のばらつきについては、ノズルプレート60Eを記録ヘッド50に組み込んだ後の検査工程において、各ノズル51E-1、51E-2の吐出角度θA、θBを測定し、記録媒体の搬送速度、記録媒体と記録ヘッド50の距離などから、記録媒体上で各ノズル51E-1、51E-2の着弾位置が所望の範囲に収まるように吐出タイミングを制御するようにすればよい。つまり、図16に示すように、ノズル51Eから吐出されたインク滴が所望の着弾位置より紙搬送方向下流側にずれる場合には吐出タイミングを遅く設定し、これとは逆に紙搬送方向上流側に着弾位置がずれる場合には吐出タイミングを早く設定するようにすればよい。このように吐出タイミングの調整で着弾位置精度の向上が可能である。
なお、本実施形態においては、第2の露光工程において露光用マスク504及びレジスト506から成る基板510を回転させずに停止させた状態で露光を行っているが、本発明はこれに限定されず、例えば、紫外線強度、紫外線の照射方向に対する基板510の傾斜角度θ、基板510の回転数や回転速度などの露光条件を適宜変化させながら露光を行うようにしてもよい。
〔第6の実施形態〕
次に、本発明に係る第6の実施形態について説明する。以下、既述した各実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
図17は、第6の実施形態としてのノズルプレート60Fの製造工程を示した説明図である。本実施形態のノズルプレート60Fには、図17(g)に示すように、インク吐出側に向かって先細となるテーパ状のノズル51Fとザグリ部62Fが形成される。以下、ノズルプレート60Fの製造方法について図17を参照しながら説明する。
まず、マスク作製工程として、図17(a)に示すように、凸部600aを有する透明基板600及び所定形状にパターニングされた不透明金属膜602から成る露光用マスク604を作製する。この際、不透明金属膜602を後工程で行う無電解めっきに対して触媒活性を有する金属で構成する。不透明金属膜602として使用可能な金属を一例として表1に示す。
表1に示すように、無電解Niめっきの場合はAuやNiなどを用いることができ、無電解Cuめっきの場合はCuやAuなどを用いることができる。また、無電解Snめっきの場合、CuやFe、Alなどを用いることができる。本実施形態においては、既述した他の実施形態とは異なり、透明基板600上に形成される不透明金属膜602を電鋳時の給電層として用いる必要がないため、遮光性が失われない限り薄くすることが可能であり、例えば、80nm未満の厚さに薄く形成することが可能である。なお、不透明金属膜602は複数層でもよい。この場合、表面となる層を無電解めっきに対して触媒活性を有する金属で構成すればよい。
次に、レジスト形成工程として、図17(b)に示すように、露光用マスク604の不透明金属膜602側にスピンコーター等によりネガ型のレジスト(ネガレジスト)606を塗布する。続いて、露光工程として、図17(c)に示すように、第4の実施形態と同様の傾斜回転露光を行う。即ち、露光用マスク604の透明基板600側から紫外光を照射する際、紫外光の照射方向に対して露光用マスク604及びレジスト606から成る基板610を斜めの所定角度θ〔度〕に傾斜させた状態で、基板610に垂直な軸Pを中心として基板610を回転させながら行う。これにより、紫外光の照射方向に対する基板610の傾斜角度θに応じたテーパ柱状のレジスト領域606aが感光される。その後、現像工程として、レジスト606の現像を行うと、図17(d)に示すように、露光用マスク604上にテーパ柱状のレジスト606aがパターニングされた状態となる。
次に、無電解めっき工程として、図17(e)に示すように、不透明金属膜602上に無電解めっき層620を形成する。無電解めっきは、その原理上、電流分布の影響を受けないため、不透明金属膜602上に均一厚さの無電解めっき層620を形成することができる。本実施形態においては、無電解めっき層620を電鋳時の給電層として用いる。
次に、電鋳工程として、図17(f)に示すように、無電解めっき層620上に金属層(電鋳層)608を形成する。電鋳層608としては各種金属を使用できるが、異種金属の接触腐食を防ぐため、電鋳層608は無電解めっき層620と同一金属であることが好ましい。また、無電解めっき層620の最大抵抗値が所定値以下、好ましくは、5[Ω]以下となるように無電解めっき層620の厚さを構成することで電鋳の最適化が図られ、均一厚さの電鋳層608を精度良く形成することができる。
最後に、剥離工程として、有機溶媒等によりレジスト608aの除去を行った後、露光用マスク604を無電解めっき層620から剥離する。これにより、図17(f)に示すように、電鋳層(金属層)608及び無電解めっき層620の2層から成るノズルプレート60Fを得ることができる。ノズルプレート60Fには、レジスト606aの外部形状に対応するテーパ状のノズル51Fと、凸部600aの外部形状に対応するザグリ部62Fとが形成される。なお、剥離後の露光用マスク604は再利用することができる。
本実施形態のノズルプレート60Fの製造方法によれば、電鋳時の給電層として、透明基板600上の不透明金属膜602ではなく、不透明金属膜602上に形成した無電解めっき層620を用いることにより、一方では不透明金属膜602の厚さを薄くすることができるのでパターニング精度を高めることができ、他方では無電解めっき層620を厚くすることができるので均一厚さの電鋳層608を形成することができる。従って、高精度なノズル51Fが高密度に形成されたノズルプレート60Fを大面積で一括生産することが可能となる。これにより、コストダウンも可能となる。
以上、本発明のノズルプレートの製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法、及び画像形成装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
10…インクジェット記録装置、50…記録ヘッド、50a…インク吐出面、51…ノズル、52…圧力室、54…インク供給口、55…共通液室、58…圧電素子、60…ノズルプレート、62…ザグリ部、66…流路プレート、68…ノズル流路、100…透明基板、102…不透明金属膜、104…露光用マスク、106…レジスト、108…金属層、110…撥液層