JP2008057559A - 能動型防振支持装置の制御装置 - Google Patents

能動型防振支持装置の制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 気筒休止運転が可能なエンジンの運転状態の遷移時において、能動型防振支持装置の防振機能を効果的に発揮させる。
【解決手段】 エンジンの気筒休止運転状態に応じて能動型防振支持装置の作動を制御するACM制御電子制御ユニットU2が、エンジンの気筒休止運転状態の切換を制御する気筒休止制御電子制御ユニットU1から受信した切換後の気筒休止運転状態を示す切換態様信号と、気筒休止切換の開始時期(ステージ「19」)を示す切換開始時期信号と、気筒休止切換開始から気筒休止切換終了までの気筒休止切換期間(15ステージ)を示す切換期間信号とに基づいて能動型防振支持装置の作動を制御するので、前記気筒休止切換期間が変化したような場合でも、気筒休止運転状態が実際に切り換わるタイミングに合わせて能動型防振支持装置の制御を切り換えて遷移時の防振性能を確保することができる。
【選択図】 図5

Description

本発明は、気筒休止運転が可能なエンジンと、エンジンの気筒休止運転状態の切換を制御する第1制御手段と、エンジンを支持する能動型防振支持装置と、エンジンの気筒休止運転状態に応じて能動型防振支持装置の作動を制御する第2制御手段とを備えた能動型防振支持装置の制御装置に関する。
全筒運転と気筒休止運転とを切り換え可能なエンジンにおいて、気筒休止時における何れかの気筒のエンジン振動量の変化量が閾値以上になった場合、あるいは気筒休止時における各気筒のエンジン振動量の差が閾値以上になった場合に、能動型防振支持装置(ACM)の作動を停止させることで気筒休止時における振動の増加を防止するものが、下記特許文献1により公知である。
特開2004−36435号公報
ところで、全筒運転状態および気筒休止運転状態間の切換時や、異なる態様の気筒休止運転状態間の切換時に、電子制御ユニットが切換指令信号を出力してから実際に運転状態が切り換わるまでの間には、バルブ休止機構を作動させる油圧アクチュエータの応答遅れによるタイムラグが存在する。従って、切換指令信号を出力してから所定のタイムラグを見越して、元の運転状態に対応する能動型防振支持装置の制御から新たな運転状態に対応する能動型防振支持装置の制御にタイミング良く切り換えないと、能動型防振支持装置がエンジンの実際の振動状態に対応する防振機能を発揮することができず、運転状態の遷移時における振動の伝達が増加する問題がある。
そこで従来は、前記タイムラグのデータをACM制御電子制御ユニットに予め記憶させておき、気筒休止制御電子制御ユニットから切換信号を受信したACM制御電子制御ユニットが前記タイムラグのデータに基づいてエンジンの運転状態が実際に切り換わるタイミングを算出し、このタイミングに基づいて能動型防振支持装置の作動を新たな運転状態に対応するものに切り換えていた。
しかしながら、前記タイムラグは油圧ポンプが発生する油圧の大きさにより変化するため、その変化が発生する度に気筒休止制御電子制御ユニットおよびACM制御電子制御ユニット間のコリレーションが取れなくなり、エンジンの運転状態の遷移時における能動型防振支持装置の防振機能が低下する可能性があった。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、気筒休止運転が可能なエンジンの運転状態の遷移時において、能動型防振支持装置の防振機能を効果的に発揮させることを目的する。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、気筒休止運転が可能なエンジンと、エンジンの気筒休止運転状態の切換を制御する第1制御手段と、エンジンを支持する能動型防振支持装置と、エンジンの気筒休止運転状態に応じて能動型防振支持装置の作動を制御する第2制御手段とを備えた能動型防振支持装置の制御装置において、第2制御手段は、第1制御手段から受信した切換後の気筒休止運転状態を示す切換態様信号と、気筒休止切換の開始時期を示す切換開始時期信号と、気筒休止切換開始から気筒休止切換終了までの気筒休止切換期間を示す切換期間信号とに基づいて能動型防振支持装置の作動を制御することを特徴とする能動型防振支持装置の制御装置が提案される。
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、第1制御手段は、前記切換開始時期信号に代えて該信号がバッファーに記憶されたバッファー記憶時期を示すバッファー記憶時期信号を送信するとともに、前記切換期間信号に代えてバッファー記憶時期から気筒休止切換終了までの第2切換期間を示す第2切換期間信号を送信することを特徴とする能動型防振支持装置の制御装置が提案される。
また請求項3に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、第1制御手段は、前記気筒休止切換期間がエンジンの1回転の周期よりも長い場合に前記バッファー記憶時期信号および前記第2切換期間信号を送信することを特徴とする能動型防振支持装置の制御装置が提案される。
請求項1の構成によれば、エンジンの気筒休止運転状態に応じて能動型防振支持装置の作動を制御する第2制御手段は、エンジンの気筒休止運転状態の切換を制御する第1制御手段から受信した切換後の気筒休止運転状態を示す切換態様信号と、気筒休止切換の開始時期を示す切換開始時期信号と、気筒休止切換開始から気筒休止切換終了までの気筒休止切換期間を示す切換期間信号とに基づいて能動型防振支持装置の作動を制御するので、前記気筒休止切換期間が変化したような場合でも、気筒休止運転状態が実際に切り換わるタイミングに合わせて能動型防振支持装置の制御を切り換えて遷移時の防振性能を確保することができる。また第2制御手段に前記気筒休止切換期間を記憶しておく必要がないので、前記気筒休止切換期間が変化する度に第1、第2制御手段間のコリレーションを再設定する必要がなくなり、第2制御手段の汎用性が向上する。
また請求項2の構成によれば、第1制御手段から第2制御手段に、切換開始時期信号に代えて該切換開始時期信号がバッファーに記憶されたバッファー記憶時期信号を送信し、かつ切換期間信号に代えてバッファー記憶時期から気筒休止切換終了までの第2切換期間を示す第2切換期間信号を送信するので、気筒休止切換開始から気筒休止切換終了までの気筒休止切換期間が長い場合でも、気筒休止切換終了時期の算出結果がクランクシャフトの1回転の周期分だけずれる事態を回避することができる。
また請求項3の構成によれば、気筒休止切換期間がエンジンの1回転の周期よりも長い場合に第1制御手段から第2制御手段にバッファー記憶時期信号および第2切換期間信号を送信するので、気筒休止切換終了時期の算出結果がクランクシャフトの1回転の周期分だけずれる事態を確実に防止することができる。
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。
図1〜図6は本発明の実施の形態を示すもので、図1は能動型防振支持装置の制御系のブロック図、図2は能動型防振支持装置の縦断面図、図3は図2の3部拡大図、図4は能動型防振支持装置の制御手法を説明するフローチャート、図5は作用を説明するタイムチャート(その1)、図6は作用を説明するタイムチャート(その2)である。
図1に示すように、V型6気筒エンジンEは、6気筒を全て作動させる全筒運転と、一方のバンクの3気筒を休止して他方のバンクの3気筒を作動させるL3気筒休止運転状態と、各バンクの1気筒を休止させて残りの2気筒を作動させるV4気筒休止運転状態と切り換え可能である。エンジンEは前後一対の能動型防振支持装置(ACM:アクティブ・コントロール・マウント)Mを介して車体フレームFに支持されており、エンジンEの運転に伴って発生する振動が車体フレームFに伝達するのを防止する。
エンジンEの全筒運転、L3気筒休止運転およびV4気筒休止運転の切り換えは気筒休止制御電子制御ユニットU1により制御され、能動型防振支持装置Mの作動はACM制御電子制御ユニットU2により制御される。エンジンEの振動は運転状態(全筒運転、L3気筒休止運転およびV4気筒休止運転)に応じて変化し、その運転状態に応じて能動型防振支持装置Mの作動を制御すべく、気筒休止制御電子制御ユニットU1はACM制御電子制御ユニットU2に接続される。
気筒休止制御電子制御ユニットU1には、エンジンEのクランクシャフトの回転に伴って出力されるクランクパルス信号を検出するクランクパルスセンサSaと、各気筒のTDCパルス信号を検出するTDCパルスセンサSbとが接続される。本実施の形態のエンジンEでは、クランクパルス信号はクランクシャフトの1回転につき24回、つまりクランクアングルの15°毎に1回出力され、またTDCパルス信号はクランクシャフトの2回転につき6回、つまりクランクアングルの120°毎に1回出力される。
気筒休止制御電子制御ユニットU1は、クランクパルス信号およびTDCパルス信号に基づいてエンジンEの燃料噴射弁の作動を制御するとともに エンジンEのバルブ休止機構の油圧アクチュエータの作動を制御することで全筒運転、L3気筒休止運転およびV4気筒休止運転を切り換える。エンジンEの振動は全筒運転時、L3気筒休止運転時およびV4気筒休止運転時で変化するため、ACM制御電子制御ユニットU2はエンジンEの運転状態に応じて能動型防振支持装置Mの作動を制御する。その際に、ACM制御電子制御ユニットU2には、気筒休止制御電子制御ユニットU1から前記クランクパルス信号およびTDCパルス信号に加えて、後述するACM制御信号が入力される。
図2および図3に示すように、エンジンEを車体フレームFに弾性的に支持するために用いられる能動型防振支持装置Mは、軸線Lに関して実質的に軸対称な構造を有するもので、概略円筒状の上部ハウジング11の下端のフランジ部11aと、概略円筒状の下部ハウジング12の上端のフランジ部12aとの間に、上面が開放した概略カップ状のアクチュエータケース13の外周のフランジ部13aと、環状の第1弾性体支持リング14の外周部と、環状の第2弾性体支持リング15の外周部とが重ね合わされてカシメにより結合される。このとき、下部ハウジング12のフランジ部12aとアクチュエータケース13のフランジ部13aとの間に環状の第1フローティングラバー16を介在させ、かつアクチュエータケース13の上部と第2弾性体支持部材15の内面との間に環状の第2フローティングラバー17を介在させることで、アクチュエータケース13は上部ハウジング11および下部ハウジング12に対して相対移動可能にフローティング支持される。
第1弾性体支持リング14と、軸線L上に配置された第1弾性体支持ボス18とに、厚肉のラバーで形成した第1弾性体19の下端および上端がそれぞれが加硫接着により接合される。第1弾性体支持ボス18の上面にダイヤフラム支持ボス20がボルト21で固定されており、ダイヤフラム支持ボス20に内周部を加硫接着により接合されたダイヤフラム22の外周部が上部ハウジング11に加硫接着により接合される。ダイヤフラム支持ボス20の上面に一体に形成されたエンジン取付部20aがエンジンEに固定される。また下部ハウジング12の下端の車体取付部12bが車体フレームFに固定される。
上部ハウジング11の上端のフランジ部11bにストッパ部材23の下端のフランジ部23aがボルト24…およびナット25…で結合されており、ストッパ部材23の上部内面に取り付けたストッパラバー26にダイヤフラム支持ボス20の上面に突設したエンジン取付部20aが当接可能に対向する。能動型防振支持装置Mに大荷重が入力したとき、エンジン取付部20aがストッパラバー26に当接することで、エンジンEの過大な変位が抑制される。
第2弾性体支持リング15に膜状のラバーで形成した第2弾性体27の外周部が加硫接着により接合されており、第2弾性体27の中央部に埋め込むように可動部材28が加硫接着により接合される。第2弾性体支持リング15の上面と第1弾性体19の外周部との間に円板状の隔壁部材29が固定されており、隔壁部材29および第1弾性体19により区画された第1液室30と、隔壁部材29および第2弾性体27により区画された第2液室31とが、隔壁部材29の中央に形成した連通孔29aを介して相互に連通する。
第1弾性体支持リング14と上部ハウジング11との間に環状の連通路32が形成されており、連通路32の一端は連通孔33を介して第1液室30に連通し、連通路32の他端は連通孔34を介して、第1弾性体19およびダイヤフラム22により区画された第3液室35に連通する。
次に、前記可動部材28を駆動するアクチュエータ41の構造を説明する。
アクチュエータケース13の内部に固定コア42、コイル組立体43およびヨーク44が下から上に順次取り付けられる。コイル組立体43は、円筒状のコイル46と、コイル46の外周を覆うコイルカバー47とで構成される。コイルカバー47には、アクチュエータケース13および下部ハウジング12に形成した開口13b,12cを貫通して外部に延出するコネクタ48が一体に形成される。
コイルカバー47の上面とヨーク44の下面との間にシール部材49が配置され、コイルカバー47の下面とアクチュエータケース13の上面との間にシール部材50が配置される。これらのシール部材49,50によって、アクチュエータケース13および下部ハウジング12に形成した開口13b,12cからアクチュエータ41の内部空間61に水や塵が入り込むのを阻止することができる。
ヨーク44の円筒部44aの内周面に薄肉円筒状の軸受け部材51が上下摺動自在に嵌合しており、この軸受け部材51の上端には径方向内向きに折り曲げられた上部フランジ51aが形成されるとともに、下端には径方向外向きに折り曲げられた下部フランジ51bが形成される。下部フランジ51bとヨーク44の円筒部44aの下端との間にセットばね52が圧縮状態で配置されており、このセットばね52の弾発力で下部フランジ51bを弾性体53を介して固定コア42の上面に押し付けることで、軸受け部材51がヨーク44に支持される。
軸受け部材51の内周面に概略円筒状の可動コア54が上下摺動自在に嵌合する。前記可動部材28の中心から下向きに延びるロッド55が可動コア54の中心を緩く貫通し、その下端にナット56が締結される。可動コア54の上面に設けたばね座57と可動部材28の下面との間に圧縮状態のセットばね58が配置されており、このセットばね58の弾発力で可動コア54はナット56に押し付けられて固定される。この状態で、可動コア54の下面と固定コア42の上面とが、円錐状のエアギャップgを介して対向する。ロッド55およびナット56は固定コア42の中心に形成された開口42aに緩く嵌合しており、この開口42aはシール部材59を介してプラグ60で閉塞される。
次に、上記構成を備えた能動型防振支持装置Mの作用について説明する。
自動車の走行中に低周波数のエンジンシェイク振動が発生したとき、エンジンEからダイヤフラム支持ボス20および第1弾性体支持ボス18を介して入力される荷重で第1弾性体19が変形して第1液室30の容積が変化すると、連通路32を介して接続された第1液室30および第3液室35間で液体が行き来する。第1液室30の容積が拡大・縮小すると、それに応じて第3液室35の容積が縮小・拡大するが、この第3液室35の容積変化はダイヤフラム22の弾性変形により吸収される。このとき、連通路32の形状および寸法、並びに第1弾性体19のばね定数は前記エンジンシェイク振動の周波数領域で低ばね定数および高減衰力を示すように設定されているため、エンジンEから車体フレームFに伝達される振動を効果的に低減することができる。
尚、上記エンジンシェイク振動の周波数領域では、アクチュエータ41は非作動状態に保たれる。
前記エンジンシェイク振動よりも周波数の高い振動、即ちエンジンEのクランクシャフトの回転に起因するアイドル時の振動や気筒休止時の振動が発生した場合、第1液室30および第3液室35を接続する連通路32内の液体はスティック状態になって防振機能を発揮できなくなるため、アクチュエータ41を駆動して防振機能を発揮させる。
次に、能動型防振支持装置Mの定常運転時、つまり全筒運転時、L3気筒休止運転時およびV4気筒休止運転時の制御を具体的に説明する。
図4のフローチャートにおいて、先ずステップS1でクランクパルスセンサSaからクランクアングルの15°毎に出力されるクランクパルスを読み込むとともに、TDCパルスセンサSbからクランクアングルの120°毎に出力されるTDCパルスを読み込み、ステップS2で前記読み込んだクランクパルスを基準となるTDCパルスと比較することでクランクパルスの時間間隔を演算する。続くステップS3で前記15°のクランクアングルをクランクパルスの時間間隔で除算することでクランク角速度ωを演算し、ステップS4でクランク角速度ωを時間微分してクランク角加速度dω/dtを演算する。続くステップS5でエンジンEのクランクシャフト回りのトルクTqを、エンジンEのクランクシャフト回りの慣性モーメントをIとして、
Tq=I×dω/dt
により演算する。このトルクTqはクランクシャフトが一定の角速度ωで回転していると仮定すると0になるが、膨張行程ではピストンの加速により角速度ωが増加し、圧縮行程ではピストンの減速により角速度ωが減少してクランク角加速度dω/dtが発生するため、そのクランク角加速度dω/dtに比例したトルクTqが発生することになる。
続くステップS6で時間的に隣接するトルクの最大値および最小値を判定し、ステップS7でトルクの最大値および最小値の偏差、つまりトルクの変動量としてエンジンEを支持する能動型防振支持装置Mの位置における振幅を演算する。そしてステップS8でアクチュエータ41のコイル46に印加する電流のデューティ波形を決定するとともに、前記振幅のボトム位置をTDCパルスと比較することで電流のデューティの出力タイミングを決定する。
その結果、能動型防振支持装置Mは以下のようにして防振機能を発揮する。
即ち、エンジンEが車体フレームFに対して下向きに移動し、第1弾性体19が下向きに変形して第1液室30の容積が減少したとき、それにタイミングを合わせてアクチュエータ41のコイル46を励磁すると、エアギャップgに発生する吸着力で可動コア54が固定コア42に向けて下向きに移動し、可動コア54にロッド55を介して接続された可動部材28に引かれて第2弾性体27が下向きに変形する。その結果、第2液室31の容積が増加するため、エンジンEからの荷重で圧縮された第1液室30の液体が隔壁部材29の連通孔29aを通過して第2液室31に流入し、エンジンEから車体フレームFに伝達される荷重を低減することができる。
続いてエンジンEが車体フレームFに対して上向きに移動し、第1弾性体19が上向きに変形して第1液室30の容積が増加したとき、それにタイミングを合わせてアクチュエータ41のコイル46を消磁すると、エアギャップgに発生する吸着力が消滅して可動コア54が自由に移動できるようになるため、下向きに変形した第2弾性体27が自己の弾性復元力で上向きに復元する。その結果、第2液室31の容積が減少するため、第2液室31の液体が隔壁部材29の連通孔29aを通過して第1液室30に流入し、エンジンEが車体フレームFに対して上向きに移動するのを許容することができる。
次に、能動型防振支持装置Mの作動状態の切換時、つまり全筒運転、L3気筒休止運転およびV4気筒休止運転の切換時の制御を具体的に説明する。気筒休止制御電子制御ユニットU1からエンジンEの運転状態(全筒運転、L3気筒休止運転およびV4気筒休止運転)の切換指令が出力されてから実際にエンジンEの運転状態が切り換わるまでにはタイムラグが発生する。その理由は、エンジンEの運転状態の切り換えはバルブ休止機構を作動させる油圧アクチュエータを介して行われ、油圧アクチュエータの作動には所定の時間が必要だからである。この応答遅れ時間は油圧アクチュエータを作動させる油圧の大きさによって決まり、前記油圧はエンジンEにより駆動される油圧ポンプにより発生するため、油圧ポンプの回転数(エンジン回転数)が応答遅れ時間に影響を与えることになる。
図5に示すように、クランクパルスセンサSaはクランクシャフトの回転角の15°毎(クランクシャフトの1回転につき24回)にクランクパルス信号を出力し、そのクランクパルス信号は気筒休止制御電子制御ユニットU1およびACM制御電子制御ユニットU2に入力される。クランクパルス信号は、クランクシャフトの1回転を周期として「0」、「1」、「2」、「3」・・・・「22」、「23」の24個のステージに対応する信号から成り、気筒休止制御電子制御ユニットU1およびACM制御電子制御ユニットU2に入力されるクランクパルス信号は同期している。ここで、1個のステージはクランクシャフトの回転角の15°に対応する。
エンジンEの運転状態の切り換えの一例としてL3気筒休止運転からV4気筒休止運転への切換制御について説明する。ステージ「19」において気筒休止制御電子制御ユニットU1からエンジンEのバルブ休止機構の油圧アクチュエータにL3気筒休止運転→V4気筒休止運転の切り換えを指令する指令信号が出力されると、それから2ステージ遅れたステージ「21」において、L3気筒休止運転→V4気筒休止運転の切り換えを示す切換態様信号aと、その切換態様信号aが出力されたステージの番号(本実施の形態ではステージ「19」)を示す切換開始時期信号bと、その切換開始時期信号bの出力から何ステージ後にV4気筒休止運転への切り換えが終了するかを示す切換期間信号c(本実施の形態では15ステージ)とが、ACM制御電子制御ユニットU2に向けて送信される。
切換期間信号cは、切り換えの態様である全筒運転→L3気筒休止運転、全筒運転→V4気筒休止運転、L3気筒休止運転→全筒運転、L3気筒休止運転→V4気筒休止運転、V4気筒休止運転→全筒運転、V4気筒休止運転→L3気筒休止運転のそれぞれについて予め設定されているが、そのときのエンジン回転数、つまり油圧ポンプが発生する油圧の大きさにより変化する。なぜならば、バルブ休止機構の油圧アクチュエータの作動応答性は油圧が低いときに遅くなり、油圧が高いときに早くなるからである。
気筒休止制御電子制御ユニットU1がステージ「19」において切換指令を出力すると、上記三つの信号、つまり切換態様信号a、切換開始時期信号bおよび切換期間信号cは、それよりも2ステージ遅れたステージ「21」においてACM制御電子制御ユニットU2に向けて送信され、それよりも6ステージ遅れたステージ「3」においてACM制御電子制御ユニットU2に受信される。
ACM制御電子制御ユニットU2が気筒休止制御電子制御ユニットU1から信号a,b,cを受信したときのステージが「3」であったとすると、ACM制御電子制御ユニットU2は、受信した切換開始時期信号b=「19」であることから、切換指令が出力されたステージ「19」から信号a,b,cが受信されたステージ「3」までに8ステージが経過していることを演算する。更にACM制御電子制御ユニットU2は、切換指令の出力から切り換えが終了するまでの期間を示す切換期間信号cの15ステージから、切換指令の出力から信号a,b,cが受信されるまでの期間である上記8ステージを減算することで、信号a,b,cが受信されたステージ「3」から前記減算値である7ステージ後のステージ「10」において切り換えが終了することを演算する。
これにより、ACM制御電子制御ユニットU2はL3気筒休止運転→V4気筒休止運転の切り換えが終了するステージ「10」において能動型防振支持装置Mの作動をL3気筒休止運転のものからV4気筒休止運転のものに切り換えることで、実際のエンジンEの振動状態に応じた防振機能を能動型防振支持装置Mに発揮させることができる。
このように、ACM制御電子制御ユニットU2に各切換態様に応じた油圧アクチュエータの作動応答時間を予め記憶させておかなくても、切換開始時期信号bおよび切換期間信号cを気筒休止制御電子制御ユニットU1からACM制御電子制御ユニットU2が受信して能動型防振支持装置Mの制御を切り換えることができる。その結果、油圧アクチュエータの作動応答時間が変更されたような場合でも、その度に気筒休止制御電子制御ユニットU1およびACM制御電子制御ユニットU2間のコリレーションを取る必要がなくなるだけでなく、エンジンEの気筒休止運転の態様の種類が増加して油圧アクチュエータの数が増加したような場合でも、ACM制御電子制御ユニットU2に連なるハーネスの数や入力ポートの数を増やす必要がなくなり、汎用性を高めてコストダウンに寄与することができる。
図5で説明した例は、切換指令の出力から切り換えが終了するまでの切換期間がクランクシャフトの1回転の周期(24ステージ)よりも小さいために問題がないが、切換期間が24ステージ以上に長くなると、エンジンEの運転状態が切り換わるステージの番号を演算して求めても、そのステージの番号が次回のステージのものなのか、次々回のステージのものなのかが識別できず、適切なタイミングで能動型防振支持装置Mの制御を切り換えることができなくなる可能性がある。
図6に示すタイムチャートは上述のような場合に対応するもので、切換期間信号cがクランクシャフトの1回転の周期(24ステージ)以上の場合(実施の形態では39ステージ)には、ステージ「19」において切換指令が出力されると、三つの信号が10ステージ遅れのステージ「5」において一旦バッファに記憶され、更に8ステージ遅れのステージ「13」においてACM制御電子制御ユニットU2に向けて送信される。この場合の三つの信号は切換態様信号aと、バッファー記憶時期信号b′と、第2切換期間信号c′とである。
切換態様信号aは図5のタイムチャートで説明したものと同じである。バッファー記憶時期信号b′は前記切換開始時期信号bに対応するもので、切換開始時期信号bは切換指令が出力されたステージの番号を示すのに対し、バッファー記憶時期信号b′は三つの信号がバッファに記憶されときのステージの番号(ステージ「5」)を示している。また第2切換期間信号c′は前記切換期間信号cに対応するもので、切換期間信号cが切換指令が出力されてから切り換えが終了するまでの期間であるのに対し、第2切換期間信号c′は三つの信号がバッファに記憶されたときから切り換えが終了するまでの期間(29ステージ)を示している。
図6の実施の形態では、バッファー記憶時期信号b′はステージ「5」を示している。また三つの信号がバッファに記憶されてから切り換えが終了するまでの第2切換期間は、切換期間の39ステージから、ステージ「19」→ステージ「5」までの10ステージを減算した29ステージとなる。バッファーがステージ「5」において三つの信号を送信してからACM制御電子制御ユニットU2が三つの信号を受信するステージ「23」までは18ステージであるため、三つの信号を受信してから切り換えが終了するまでの期間が11ステージであること、つまりステージ「10」において切り換え制御が終了することが算出される。
以上のように、切換期間cがクランクシャフトの1回転の周期(24ステージ)よりも長い場合には、気筒休止制御電子制御ユニットU1からACM制御電子制御ユニットU2に、前記切換開始時期信号bに代えてバッファー記憶時期信号b′を送信し、かつ前記切換期間信号cに代えてバッファー記憶時期から気筒休止切換終了までの第2切換期間を示す第2切換期間信号c′を送信するので、気筒休止切換終了時期の算出結果がクランクシャフトの1回転の周期分だけずれる事態を回避することができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、実施の形態ではエンジンEの運転状態を全筒運転状態、L3気筒休止運転状態、V4気筒休止運転状態の三種類に切り換えているが、エンジンEの運転状態はそれに限定されるものではない。
また実施の形態ではクランクパルス信号はクランクシャフトの回転角の15°毎に出力されるが、それに限定されるものではない。
能動型防振支持装置の制御系のブロック図 能動型防振支持装置の縦断面図 図2の3部拡大図 能動型防振支持装置の制御手法を説明するフローチャート 作用を説明するタイムチャート(その1) 作用を説明するタイムチャート(その2)
符号の説明
E エンジン
M 能動型防振支持装置
U1 気筒休止制御電子制御ユニット(第1制御手段)
U2 ACM制御電子制御ユニット(第2制御手段)
a 切換態様信号
b 切換開始時期信号
b′ バッファー記憶時期信号
c 切換期間信号
c′ 第2切換期間信号

Claims (3)

  1. 気筒休止運転が可能なエンジン(E)と、エンジン(E)の気筒休止運転状態の切換を制御する第1制御手段(U1)と、エンジン(E)を支持する能動型防振支持装置(M)と、エンジン(E)の気筒休止運転状態に応じて能動型防振支持装置(M)の作動を制御する第2制御手段(U2)とを備えた能動型防振支持装置の制御装置において、
    第2制御手段(U2)は、第1制御手段(U1)から受信した切換後の気筒休止運転状態を示す切換態様信号(a)と、気筒休止切換の開始時期を示す切換開始時期信号(b)と、気筒休止切換開始から気筒休止切換終了までの気筒休止切換期間を示す切換期間信号(c)とに基づいて能動型防振支持装置(M)の作動を制御することを特徴とする能動型防振支持装置の制御装置。
  2. 第1制御手段(U1)は、前記切換開始時期信号(b)に代えて該信号がバッファーに記憶されたバッファー記憶時期を示すバッファー記憶時期信号(b′)を送信するとともに、前記切換期間信号(c)に代えてバッファー記憶時期から気筒休止切換終了までの第2切換期間を示す第2切換期間信号(c′)を送信することを特徴とする、請求項1に記載の能動型防振支持装置の制御装置。
  3. 第1制御手段(U1)は、前記気筒休止切換期間がエンジン(E)の1回転の周期よりも長い場合に前記バッファー記憶時期信号(b′)および前記第2切換期間信号(c′)を送信することを特徴とする、請求項2に記載の能動型防振支持装置の制御装置。
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