JP3914177B2 - 能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数のバンクを有するエンジンの振動の伝達を抑制すべく制御手段でアクチュエータの作動を制御する能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
かかる能動型防振支持装置は、下記特許文献により公知である。
【0003】
この能動型防振支持装置は、アクチュエータに電流を印加して可動部材を振動させることでバネ定数を変化させるもので、そのバネ定数を設定する印加電流のピーク電流値と位相との関係を予めマップとして記憶しておき、エンジン回転数に応じて前記マップからアクチュエータに印加すべき電流のピーク電流値と位相とを求めることで、種々のエンジン回転数領域で能動型防振支持装置に有効な防振機能を発揮させるようになっている。
【0004】
【特許文献】
特開平7−42783号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の能動型防振支持装置は、各気筒の作動周期毎にエンジンの振動状態を推定し、その振動状態に基づいて次の気筒の作動周期におけるアクチュエータの作動を制御しているため、フロントバンクおよびリヤバンクを有するV型エンジンでは、フロントバンクの気筒の作動周期に推定した振動状態に基づいて、それに続くリヤバンクの気筒の作動周期におけるアクチュエータの作動を制御し、あるいはリヤバンクの気筒の作動周期に推定した振動状態に基づいて、それに続くフロントバンクの気筒の作動周期におけるアクチュエータの作動を制御することになる。
【0006】
この場合、フロントバンクの気筒の作動による振動状態と、リヤバンクの気筒の作動による振動状態とが同じであれば問題はないが、両者の振動状態が大きく異なる場合には、エンジンの実際の振動状態と、その振動を緩衝するためのアクチュエータの制御との間にずれが発生し、能動型防振支持装置が有効な防振機能を発揮できなくなる可能性がある。
【0007】
例えば、図9(A)に示すように、理論上はフロントバンクの作動による振動波形とリヤバンクの作動による振動波形とは完全な逆位相になるはずであるが、図9(B)に示すように、実際にはエンジンの両バンクが完全に対称な構造ではないため、両者の振動波形は完全な逆位相にならずに位相ずれが発生する。従って、フロントバンクおよびリヤバンクの一方のバンクの振動状態に基づいて、他方のバンクの作動周期におけるアクチュエータの制御を行うと、能動型防振支持装置が不適切な作動を行う可能性がある。
【0008】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、複数のバンクを備えたエンジンの能動型防振支持装置に有効な防振機能を発揮させることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、複数のバンクを有するエンジンの振動の伝達を抑制すべく制御手段でアクチュエータの作動を制御する能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御装置において、前記制御手段は、各々のバンクが作動したときのエンジンの振動状態を推定し、所定のバンクが作動したときのエンジンの振動状態に基づいて、前記所定のバンクが次回作動するときのアクチュエータの作動を制御し、また前記制御手段は、各々のバンクの振幅の差を算出し、その差が第1閾値以下のときには、直前に作動したバンクの振動状態に基づいて今回のアクチュエータの作動を制御することを特徴とする、能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御装置が提案される。
【0010】
上記構成によれば、エンジンの複数のバンクのうち、所定のバンクが作動したときのエンジンの振動状態に基づいて、前記所定のバンクが次回作動するときのアクチュエータの作動を制御するので、各々のバンクの作動時のエンジンの振動状態が異なる場合でも、アクチュエータの作動を該アクチュエータが作動するときの実際のエンジンの振動状態に基づいて制御することが可能となり、能動型防振支持装置の防振機能を有効に発揮させることができる。
【0012】
また特に各々のバンクの振幅の差が第1閾値以下のとき、つまりバンク毎の振幅の差が小さいときは、直前に作動したバンクの振動状態に基づいて今回のアクチュエータの作動を制御するので、エンジンの運転状態の過渡期においても能動型防振支持装置を応答性良く制御することができる。
【0013】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記制御手段は、各々のバンクの振幅の差を算出し、その差が第2閾値以上のときには、今回作動する気筒と同じ気筒が前回作動したときの振動状態に基づいて今回のアクチュエータの作動を制御することを特徴とする、能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御装置が提案される。
【0014】
上記構成によれば、各々のバンクの振幅の差が第2閾値以上のとき、つまり気筒の失火等により前記振幅の差の大小を実質的に判断できないときに、今回作動する気筒と同じ気筒が前回作動したときの振動状態に基づいて今回のアクチュエータの作動を制御するので、防振機能を確保しながら能動型防振支持装置の作動を支障なく継続することができる。
【0015】
尚、実施例のフロントバンクBfおよびリヤバンクBrは本発明のバンクに対応し、実施例の電子制御ユニットUは本発明の制御手段に対応する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0017】
図1〜図8は本発明の一実施例を示すもので、図1は能動型防振支持装置の縦断面図、図2は図1の2−2線断面図、図3は図1の3−3線断面図、図4は図1の要部拡大図、図5はV型エンジンを支持する能動型防振支持装置の配置を示す図、図6はフロントバンクおよびリヤバンクの気筒の点火順序を説明する図、図7は実施例の作用を説明するタイムチャート、図8は能動型防振支持装置の駆動指令値決定ルーチンのフローチャートである。
【0018】
図1〜図4に示す能動型防振支持装置(ACM)Mは、自動車のエンジンE(本実施例でV型4サイクル6気筒エンジン)を車体フレームFに弾性的に支持するためのもので、エンジンEのクランクシャフトの回転に伴って出力されるクランクパルスを検出するクランクパルスセンサSaが接続された電子制御ユニットUによって制御される。このクランクパルスはクランクシャフトの1回転につき24回、つまりクランクアングルの15°毎に1回出力される。
【0019】
能動型防振支持装置Mは軸線Lに関して実質的に軸対称な構造を有するもので、エンジンEに結合される板状の取付ブラケット11に溶接した内筒12と、この内筒12の外周に同軸に配置された外筒13とを備えており、内筒12および外筒13には厚肉のゴムで形成した第1弾性体14の上端および下端がそれぞれが加硫接着により接合される。中央に開口15bを有する円板状の第1オリフィス形成部材15と、上面が開放した樋状の断面を有して環状に形成された第2オリフィス形成部材16と、同じく上面が開放した樋状の断面を有して環状に形成された第3オリフィス形成部材17とが溶接により一体化されており、第1オリフィス形成部材15および第2オリフィス形成部材16の外周部が重ね合わされて前記外筒13の下部に設けたカシメ固定部13aに固定される。
【0020】
膜状のゴムで形成された第2弾性体18の外周が第3オリフィス形成部材17の内周に加硫接着により固定されており、この第2弾性体18の内周に加硫接着により固定されたキャップ部材19が、軸線L上に上下動可能に配置された可動部材20に圧入により固定される。外筒13のカシメ固定部13aに固定されたリング部材21にダイヤフラム22の外周が加硫接着により固定されており、このダイヤフラム22の内周に加硫接着により固定されたキャップ部材23が前記可動部材20に圧入により固定される。
【0021】
しかして、第1弾性体14および第2弾性体18間に液体が封入された第1液室24が区画され、第2弾性体18およびダイヤフラム22間に液体が封入された第2液室25が区画される。そして第1液室24および第2液室25は、第1〜第3オリフィス形成部材15,16,17により形成された上部オリフィス26および下部オリフィス27によって相互に連通する。
【0022】
上部オリフィス26は第1オリフィス形成部材15および第2オリフィス形成部材16間に形成される環状の通路であって、その一部に設けられた隔壁26aの一側において第1オリフィス形成部材15に連通孔15aが形成され、前記隔壁26aの他側において第2オリフィス形成部材16に連通孔16aが形成される。従って、上部オリフィス26は、第1オリフィス形成部材15の連通孔15aから第2オリフィス形成部材16の連通孔16aまでの略1周の範囲に亘って形成される(図2参照)。
【0023】
下部オリフィス27は第2オリフィス形成部材16および第3オリフィス形成部材17間に形成される環状の通路であって、その一部に設けられた隔壁27aの一側において第2オリフィス形成部材16に前記連通孔16aが形成され、前記隔壁27aの他側において第3オリフィス形成部材17に連通孔17aが形成される。従って、下部オリフィス27は、第2オリフィス形成部材16の連通孔16aから第3オリフィス形成部材17の連通孔17aまでの略1周の範囲に亘って形成される(図3参照)。
【0024】
以上のことから、第1液室24および第2液室25は、直列に接続された上部オリフィス26および下部オリフィス27によって相互に連通する。
【0025】
外筒13のカシメ固定部13aには、能動型防振支持装置Mを車体フレームFに固定するための環状の取付ブラケット28が固定されており、この取付ブラケット28の下面に前記可動部材20を駆動するためのアクチュエータ29の外郭を構成するアクチュエータハウジング30が溶接される。
【0026】
アクチュエータハウジング30にはヨーク32が固定されており、ボビン33に巻き付けられたコイル34がアクチュエータハウジング30およびヨーク32に囲まれた空間に収納される。環状のコイル34の内周に嵌合するヨーク32の筒状部32aに有底円筒状のベアリング36が嵌合する。コイル34の上面に対向する円板状のアーマチュア38がアクチュエータハウジング30の内周面に摺動自在に支持されており、このアーマチュア38の内周に形成した段部38aがベアリング36の上部に係合する。アーマチュア38はボビン33の上面との間に配置した皿ばね42で上方に付勢され、アクチュエータハウジング30に設けた係止部30aに係合して位置決めされる。
【0027】
ベアリング36の内周に円筒状のスライダ43が摺動自在に嵌合しており、可動部材20から下方に延びる軸部20aが、ベアリング36の上底部を緩く貫通してスライダ43の内部に固定したボス44に接続される。ベアリング36の上底部とスライダ43との間にコイルばね41が配置されており、このコイルばね41でベアリング36は上向きに付勢され、スライダ43は下向きに付勢される。
【0028】
アクチュエータ29のコイル34が消磁状態にあるとき、ベアリング36に摺動自在に支持されたスライダ43にはコイルばね41の弾発力が下向きに作用するとともに、ヨーク32の底面との間に配置したコイルばね45の弾発力が上向きに作用しており、スライダ43は両コイルばね41,45の弾発力が釣り合う位置に停止する。この状態からコイル34を励磁してアーマチュア38を下方に吸引すると、段部38aに押されてベアリング36が下方に摺動することによりコイルばね41が圧縮される。その結果、コイルばね41の弾発力が増加してコイルばね45を圧縮しながらスライダ43が下降するため、スライダ43にボス44および軸部20aを介して接続された可動部材20が下降し、可動部材20に接続された第2弾性体18が下方に変形して第1液室24の容積が増加する。逆にコイル34を消磁すると、可動部材20が上昇して第2弾性体18が上方に変形し、第1液室24の容積が減少する。
【0029】
しかして、自動車の走行中に低周波数のエンジンシェイク振動が発生したとき、エンジンEから入力される荷重で第1弾性体14が変形して第1液室24の容積が変化すると、上部オリフィス26および下部オリフィス27を介して接続された第1液室24および第2液室25間で液体が行き来する。第1液室24の容積が拡大・縮小すると、それに応じて第2液室25の容積が縮小・拡大するが、この第2液室25の容積変化はダイヤフラム22の弾性変形により吸収される。このとき、上部オリフィス26および下部オリフィス27の形状および寸法、並びに第1弾性体14のばね定数は前記エンジンシェイク振動の周波数領域で低ばね定数および高減衰力を示すように設定されているため、エンジンEから車体フレームFに伝達される振動を効果的に低減することができる。
【0030】
尚、上記エンジンシェイク振動の周波数領域では、アクチュエータ29は非作動状態に保たれる。
【0031】
前記エンジンシェイク振動よりも周波数の高い振動、即ちエンジンEのクランクシャフトの回転に起因するアイドル時の振動や気筒休止時の振動が発生した場合、第1液室24および第2液室25を接続する上部オリフィス26および下部オリフィス27内の液体はスティック状態になって防振機能を発揮できなくなるため、アクチュエータ29を駆動して防振機能を発揮させる。
【0032】
図5に示すように、V型4サイクル6気筒のエンジンEはフロントバンクBfおよびリヤバンクBrを備えており、そのフロント側およびリヤ側がそれぞれ前記能動型防振支持装置M,Mによって支持される。そして、フロント側およびリヤ側の能動型防振支持装置M,Mのアクチュエータ29,29を作動させて防振機能を発揮させるべく、電子制御ユニットUはクランクパルスセンサSaからの信号に基づいてアクチュエータ29,29に対する通電を制御する。
【0033】
図6に示すように、エンジンEはフロントバンクBfに♯1、♯2および♯3の3個の気筒を備えるとともに、リヤバンクBrに♯4、♯5および♯6の3個の気筒を備える。6個の気筒♯1〜♯6の点火順序は、♯1→♯4→♯2→♯5→♯3→♯6であって、両バンクBf,Brの気筒が交互に爆発するようになっている。
【0034】
次に、図8のフローチャートに基づいて、能動型防振支持装置Mの制御の内容を説明する。
【0035】
先ず、ステップS1で気筒の作動周期、つまりフロントバンクBfの♯1、♯2、♯3の何れかの気筒およびリヤバンクBrの♯4、♯5、♯6の何れかの気筒が爆発する作動周期におけるエンジンEの振動状態を推定する。実施例の4サイクル6気筒のエンジンEでは、クランクシャフトが2回転する間に6回の爆発が起きるため、その作動周期はクランクアングルで120°周期となり、クランクシャフトの2回転に6個の作動周期P1〜P6が含まれる。そのうち、フロントバンクBfの作動周期はP1,P3,P5であり、リヤバンクBrの作動周期はP2,P4,P6である(図7参照)。
【0036】
即ち、120°のクランクアングルを有する作動周期において、クランクアングルの15°毎に出力される8個のクランクパルスを読み込み、クランクパルスの時間間隔を演算する。続いて前記15°のクランクアングルをクランクパルスの時間間隔で除算することでクランク角速度ωを演算し、そのクランク角速度ωを時間微分してクランク角加速度dω/dtを演算し、更にエンジンEのクランクシャフト回りのトルクTqを、エンジンEのクランクシャフト回りの慣性モーメントをIとして、
Tq=I×dω/dt
により演算する。このトルクTqはクランクシャフトが一定の角速度ωで回転していると仮定すると0になるが、膨張行程ではピストンの加速により角速度ωが増加し、圧縮行程ではピストンの減速により角速度ωが減少してクランク角加速度dω/dtが発生するため、そのクランク角加速度dω/dtに比例したトルクTqが発生することになる。そして時間的に隣接するトルクの最大値および最小値を判定し、そのトルクの最大値および最小値の偏差、つまりトルクの変動量としてエンジンEの振動状態(振幅)を推定する。
【0037】
以上のようにして、前記ステップS1で作動周期P1〜P6の各々におけるエンジンEの振動状態が推定されると、ステップS2で前記エンジンEの振動状態に基づいて能動型防振支持装置Mの制御パラメータを検索し、ステップS3で能動型防振支持装置Mの駆動タイミングを決定する。能動型防振支持装置Mの駆動タイミングとは、所定の作動周期が始まる時期と、その作動周期における能動型防振支持装置Mの駆動が始まる時期との時間差に相当する。
【0038】
続くステップS4でフロントバンクBfおよびリヤバンクBrの能動型防振支持装置Mを駆動する振幅を、前記エンジンEの振動状態に基づいて決定する。ここでフロントバンクBfの振幅AFRは、フロントバンクBfの作動周期P1,P3,P5におけるエンジンEの振動状態に基づいて決定され、リヤバンクBrの振幅ARRは、リヤバンクBrの作動周期P2,P4,P6におけるエンジンEの振動状態に基づいて決定される。
【0039】
続くステップS5で作動周期が連続する両バンクBf,Brの能動型防振支持装置Mの振幅AFR,ARRの差DLTAMPを算出する。例えば、フロントバンクBfの作動周期P1と、それに続くリヤバンクBrの作動周期P2との間の振幅差DLTAMPは、今回(作動周期P2)のリヤバンクBrの振幅ARR(n)から前回(作動周期P1)のフロントバンクBfの振幅AFR(n−1)を減算した値の絶対値として算出される。
【0040】
DLTAMP=|ARR(n)−AFR(n−1)|
またリヤバンクBrの作動周期P2と、それに続くフロントバンクBfの作動周期P3との間の振幅差DLTAMPは、今回(作動周期P3)のフロントバンクBfの振幅AFR(n)から前回(作動周期P2)のリヤバンクBrの振幅ARR(n−1)を減算した値の絶対値として算出される。
【0041】
DLTAMP=|AFR(n)−ARR(n−1)|
続くステップS6で振幅差DLTAMPを第1閾値ΔA1と比較し、振幅差DLTAMPが第1閾値ΔA1以下であるとき、つまり両バンクBf,Brの振幅差DLTAMPが小さいときには、従来から行われているように、ステップS7で前回の作動周期の振幅に基づいて今回の作動周期における能動型防振支持装置Mのアクチュエータ29の作動を制御する。
【0042】
具体的には、作動周期P1において推定したフロントバンクBfの振幅AFRに基づいて、次のリヤバンクBrの作動周期P2におけるリヤバンクBrの能動型防振支持装置Mを制御し、作動周期P2において推定したリヤバンクBrの振幅ARRに基づいて、次のフロントバンクBfの作動周期P3におけるフロントバンクBfの能動型防振支持装置Mを制御し、作動周期P3において推定したフロントバンクBfの振幅AFRに基づいて、次のリヤバンクBrの作動周期P4におけるリヤバンクBrの能動型防振支持装置Mを制御し、これを以下同様に継続する。
【0043】
このように、今回の作動周期における能動型防振支持装置Mの制御を、その直近の前回の作動周期におけるエンジンEの振動状態に基づいて行うので、エンジンEの運転状態が変化する過渡期における能動型防振支持装置Mの制御の応答性を高めることができる。
【0044】
尚、実施例の如くフロントバンクBfの振幅AFRに基づいてリヤバンクBrの能動型防振支持装置Mを制御する代わりに、フロントバンクBfの能動型防振支持装置Mを制御しても良く、あるいはフロントバンクBfおよびリヤバンクBrの両方の能動型防振支持装置Mを制御しても良い。同様に、実施例の如くリヤバンクBrの振幅ARRに基づいてフロントバンクBfの能動型防振支持装置Mを制御する代わりに、リヤバンクBrの能動型防振支持装置Mを制御しても良く、あるいはフロントバンクBfおよびリヤバンクBrの両方の能動型防振支持装置Mを制御しても良い。
【0045】
一方、前記ステップS6で振幅差DLTAMPが第1閾値ΔA1を超えており、かつステップS8で振幅差DLTAMPが第2閾値ΔA2未満であるとき、つまり振幅差DLTAMPがある程度大きいときには、ステップS9で前々回の作動周期の振幅に基づいて今回の作動周期における能動型防振支持装置Mのアクチュエータ29の作動を制御する。
【0046】
具体的には、図7に示すように、作動周期P3におけるフロントバンクBfの能動型防振支持装置Mを制御を、前々回のフロントバンクBfの作動周期P1において推定したフロントバンクBfの振幅AFRに基づいて行い、作動周期P5におけるフロントバンクBfの能動型防振支持装置Mを制御を、前々回のフロントバンクBfの作動周期P3において推定したフロントバンクBfの振幅AFRに基づいて行う。また作動周期P4におけるリヤバンクBrの能動型防振支持装置Mを制御を、前々回のリヤバンクBrの作動周期P2において推定したリヤバンクBrの振幅ARRに基づいて行い、作動周期P6におけるリヤバンクBrの能動型防振支持装置Mを制御を、前々回のリヤバンクBrの作動周期P4において推定したリヤバンクBrの振幅ARRに基づいて行う。
【0047】
図8のフローチャートのステップS6,S7のように、フロントバンクBfおよびリヤバンクBrの振幅差DLTAMPが小さいときには、フロントバンクBfの振幅AFRおよびリヤバンクBrの振幅ARRがほぼ同じであることから、フロントバンクBfの振幅AFRに基づいてリヤバンクBrの作動周期に能動型防振支持装置Mを制御し、リヤバンクBrの振幅ARRに基づいてフロントバンクBfの作動周期に能動型防振支持装置Mを制御しても支障はない。
【0048】
しかしながら、フロントバンクBfおよびリヤバンクBrの振幅差DLTAMPがある程度大きいときに上記制御を行うと、実際のエンジンEの振動状態に即した能動型防振支持装置Mの制御が不可能になって防振機能が損なわれる可能性がある。そこで、前々回の作動周期のフロントバンクBfの振幅AFRに基づいて今回の作動周期のフロントバンクBfの能動型防振支持装置Mの制御を行い、かつ前々回の作動周期のリヤバンクBrの振幅ARRに基づいて今回の作動周期のリヤバンクBrの能動型防振支持装置Mの制御を行うことで、能動型防振支持装置Mが作動するときの実際のエンジンEの振動状態、つまり実際の振動の振幅や位相に即した能動型防振支持装置Mの制御を可能にして防振機能を確保することができる。
【0049】
尚、実施例の如くフロントバンクBfの振幅AFRに基づいてフロントバンクBfの能動型防振支持装置Mを制御する代わりに、リヤバンクBrの能動型防振支持装置Mを制御しても良く、あるいはフロントバンクBfおよびリヤバンクBrの両方の能動型防振支持装置Mを制御しても良い。同様に、実施例の如くリヤバンクBrの振幅ARRに基づいてリヤバンクBrの能動型防振支持装置Mを制御する代わりに、フロントバンクBfの能動型防振支持装置Mを制御しても良く、あるいはフロントバンクBfおよびリヤバンクBrの両方の能動型防振支持装置Mを制御しても良い。
【0050】
前記ステップS8で振幅差DLTAMPが第2閾値ΔA2以上であるとき、つまり振幅差DLTAMPが極めて大きいときには、気筒の失火が発生したものと推定されるため、ステップS10で前回同一気筒が作動したとき、つまりクランクシャフトの2回転前の同一の作動周期の振幅AFR,ARRに基づいて、今回の作動周期の能動型防振支持装置Mの制御を実行する。例えば、作動周期P1のフロントバンクBfの能動型防振支持装置Mの制御を、クランクシャフトの2回転前の同一の作動周期P1の振幅AFRに基づいて行うことになる。
【0051】
これにより、気筒の失火等によりフロントバンクBfおよびリヤバンクBrの振幅差DLTAMPの大小が実質的に判定不能になっても、能動型防振支持装置Mの制御を支障なく継続することができる。
【0052】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0053】
例えば、能動型防振支持装置Mは液体を封入したものに限定されず、ピエゾ素子を用いたものであっても良い。
【0054】
また実施例では自動車のエンジンEを支持する能動型防振支持装置Mを例示したが、本発明の能動型防振支持装置Mは自動車以外のエンジンの支持に適用することができる。
【0055】
また実施例ではV型6気筒のエンジンEを例示したが、本発明は複数のバンクを有するものであればV型、水平対向型、X型等の任意の形式の多気筒エンジンに適用することができる。
【0056】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、エンジンの複数のバンクのうち、所定のバンクが作動したときのエンジンの振動状態に基づいて、前記所定のバンクが次回作動するときのアクチュエータの作動を制御するので、各々のバンクの作動時のエンジンの振動状態が異なる場合でも、アクチュエータの作動を該アクチュエータが作動するときの実際のエンジンの振動状態に基づいて制御することが可能となり、能動型防振支持装置の防振機能を有効に発揮させることができる。
【0057】
また特に各々のバンクの振幅の差が第1閾値以下のとき、つまりバンク毎の振幅の差が小さいときは、直前に作動したバンクの振動状態に基づいて今回のアクチュエータの作動を制御するので、エンジンの運転状態の過渡期においても能動型防振支持装置を応答性良く制御することができる。
【0058】
また請求項2に記載された発明によれば、各々のバンクの振幅の差が第2閾値以上のとき、つまり気筒の失火等により前記振幅の差の大小を実質的に判断できないときに、今回作動する気筒と同じ気筒が前回作動したときの振動状態に基づいて今回のアクチュエータの作動を制御するので、防振機能を確保しながら能動型防振支持装置の作動を支障なく継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】能動型防振支持装置の縦断面図
【図2】図1の2−2線断面図
【図3】図1の3−3線断面図
【図4】図1の要部拡大図
【図5】V型エンジンを支持する能動型防振支持装置の配置を示す図
【図6】フロントバンクおよびリヤバンクの気筒の点火順序を説明する図
【図7】実施例の作用を説明するタイムチャート
【図8】能動型防振支持装置の駆動指令値決定ルーチンのフローチャート
【図9】 フロントバンクおよびリヤバンクの振幅の差を説明する図
【符号の説明】
Bf フロントバンク(バンク)
Br リヤバンク(バンク)
E エンジン
U 電子制御ユニット(制御手段)
ΔA1 第1閾値
ΔA2 第2閾値
29 アクチュエータ
Claims (2)
- 複数のバンク(Bf,Br)を有するエンジン(E)の振動の伝達を抑制すべく制御手段(U)でアクチュエータ(29)の作動を制御する能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御装置において、
前記制御手段(U)は、各々のバンク(Bf,Br)が作動したときのエンジン(E)の振動状態を推定し、所定のバンク(Bf,Br)が作動したときのエンジン(E)の振動状態に基づいて、前記所定のバンク(Bf,Br)が次回作動するときのアクチュエータ(29)の作動を制御し、
また前記制御手段(U)は、各々のバンク(Bf,Br)の振幅の差を算出し、その差が第1閾値(ΔA1)以下のときには、直前に作動したバンク(Bf,Br)の振動状態に基づいて今回のアクチュエータ(29)の作動を制御することを特徴とする、能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御装置。 - 前記制御手段(U)は、各々のバンク(Bf,Br)の振幅の差を算出し、その差が第2閾値(ΔA2)以上のときには、今回作動する気筒と同じ気筒が前回作動したときの振動状態に基づいて今回のアクチュエータ(29)の作動を制御することを特徴とする、請求項1に記載の能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御装置。
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